説明

脱酸素システム

【課題】 処理水の溶存酸素濃度を低減することである。
【解決手段】 通水量が低流量と高流量とに選択可能な複数台の膜式の脱気装置1A,1B,1Cと、処理水を使用する負荷機器3と、脱気装置1A,1B,1Cの運転台数の制御器4とを備える脱酸素システムであって、制御器4は、複数台を同じ高流量に制御する第一制御状態と、複数台を低流量と高流量とに制御する第二制御状態と、複数台を同じ低流量に制御する第三制御状態とを行う。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給水中の溶存酸素を低減する脱酸素システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などに代表される冷熱機器への給水系統では、前記冷熱機器の接水部分が給水中の溶存酸素により腐食し、前記冷熱機器が破損することを防止する目的で脱気装置が使用されている。
【0003】
前記脱気装置としては、酸素は透過するが液体は透過しない特性を有する中空糸状の高分子膜の多数本を束ねてハウジング内に収容し、これらの各高分子膜の両端部を樹脂剤で封止した構造の脱酸素モジュールを使用し、前記各高分子膜の一側へ被処理液を供給し、前記各高分子膜の他側を減圧することにより、被処理液に含まれる溶存酸素を低減させる構成の膜式脱気装置が知られている。
【0004】
こうした膜式脱気装置の複数台を互いに並列に接続して、脱気装置にて生成される処理水を処理水量または脱気装置の出口側の圧力に基づき脱気装置の運転台数を制御する脱酸素システムが特許文献1にて知られている。
【0005】
特許文献1の脱酸素システムは、台数を制御することで、省エネを実現できるが、処理水の溶存酸素濃度は全く考慮されていない。
【0006】
また、複数台の脱気装置を備え、処理水の溶存酸素濃度の低減を考慮した脱酸素システムも存在するが、この脱酸素システムは、図5に示す如く、処理水タンクの水位に応じて、複数台の脱気装置を同時に、被処理水の供給量を多くした100%運転制御と、前記供給量を少なくした60%運転と、前記供給量を零とする停止とに制御するものである。
【0007】
【特許文献1】実開平5−2702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする主たる課題は、処理水の溶存酸素濃度を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、それぞれ被処理水の供給量が低流量と高流量とに選択可能な複数台の膜式の脱気装置と、この脱気装置にて生成される処理水を使用する負荷機器と、前記脱気装置の運転台数を制御する制御手段とを備える脱酸素システムであって、前記制御手段は、前記脱気装置の複数台をそれぞれ高流量に制御する第一制御状態と、前記脱気装置の複数台を低流量と高流量とに制御する第二制御状態と、前記脱気装置の複数台をそれぞれ低流量に制御する第三制御状態とを行うことを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、前記第二制御状態を設けているので、低流量での膜脱気処理による処理水量が増加して、全体として処理水の溶存酸素濃度を低減できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第二制御を行う複数の脱気装置間で低流量とする脱気装置を固定することなく交代させることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前記第二制御状態で低流量とする脱気装置が固定されないので、特定の脱気装置において低流量による膜の詰まりが生ずることを防止することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、処理水の溶存酸素濃度が低減された脱酸素システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などの冷熱機器における腐食の抑制,ビル,マンションなどの給水配管における赤水発生の防止,あるいは半導体製造工場の部品洗浄設備における超音波洗浄の効率化などの目的で使用される膜式の脱気装置を複数台並列に接続した脱酸素システムにおいて好適に実施される。この脱酸素システムは、脱気システムと称することができる。
【0015】
この発明の実施形態は、それぞれ処理水の供給量が低流量と高流量とに選択可能な複数台の膜式の脱気装置と、この脱気装置にて生成される処理水を使用する負荷機器と、前記脱気装置の運転台数を制御する制御手段とを備える脱酸素システムであって、前記制御手段は、前記脱気装置の複数台をそれぞれ高流量に制御する第一制御状態と、前記脱気装置の複数台を低流量と高流量とに制御する第二制御状態と、前記脱気装置の複数台をそれぞれ低流量に制御する第三制御状態とを行うことを特徴とするに係る脱酸素システムである。
【0016】
この脱酸素システムにおいては、前記負荷機器における処理水の要求量が増加すると、前記制御手段は、前記複数の脱気装置を第一制御状態とし、処理水の要求量が低下すると前記第二制御状態とし、さらに処理水の要求量が低下すると前記第三制御状態とし、さらに前記要求量が低下すると全ての前記脱気装置への被処理水の供給(通水)を停止する。このように、前記第二制御状態を設けているので、前記第二制御状態を設けていないシステムと比較して、全体として処理水の溶存酸素濃度が低減される。
【0017】
つぎに、この実施の形態の各構成要素について説明する。前記各脱気装置は、膜式脱気装置であり、気体透過膜あるいは気体分離膜を用いた,いわゆる膜式脱気装置であり、特定の構造のものに限定されない。この膜式脱気装置は、気体透過膜を、管状,中空糸状,プリーツ状,スパイラル形状(のり巻き形状)等の形状に成形し、この状態で適宜の容器に収容して1個の構成部品とした,いわゆる膜モジュールとして使用する。前記各脱気装置は、被処理水の供給量が低下すると溶存酸素濃度が低下する特性を有している。
【0018】
前記膜モジュールの内部は、液相側と気相側とに区画されており、液相側には、脱気処理を行う被処理水(原水と称することもでき、井戸水,水道水,各種工業用水,その他液状製品等を含む)を供給する給水ポンプを備えた被処理水供給ラインと、脱気処理後の処理水を貯留する処理水タンクへ供給する処理水供給ラインとが接続されている。
【0019】
また、気相側には、この区画内を真空吸引するための減圧手段に真空吸引ラインが接続されている。そして、前記膜モジュール内における被処理水の流通過程において、気体透過膜を介して真空吸引することにより、被処理水中の溶存気体を吸引除去し、脱気された処理水を処理水供給ラインから処理水タンクへ供給するように構成されている。前記減圧手段は、好ましくは、水封式真空ポンプとするが、これに限定されるものではない。前記減圧手段は、好ましくは、前記各脱気装置毎に設けるが、前記各脱気装置に共通の減圧手段を設けることができる。
【0020】
前記負荷機器は、好ましくは、蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などに代表される冷熱機器とするが、これに限定されるものではなく、ビル,マンションなどの建造物内に配設された給水設備や半導体製造工場の部品洗浄設備や食品用機器および食品関係設備を含むものである。
【0021】
前記制御手段は、好ましくは、前記各脱気装置に設けた制御器と別個に設けた制御器とするが、別個に制御器を設けることなく、前記各脱気装置の各制御器を相互通信可能に信号ラインまたはネットワークにて接続し、前記各脱気装置の各制御器間の信号のやりとりで、前記各脱気装置の制御を行うように構成するか、前記各脱気装置の制御器の信号を取り込み負荷機器を制御する制御器により制御を行うように構成することができる。
【0022】
この制御手段による制御は、予め記憶された処理手順により実行される。この処理手順は、前記負荷機器の処理水要求量に関連する処理水要求情報に基づき、前記脱気装置の複数台をそれぞれ同じ高流量に制御する第一制御状態と前記脱気装置の複数台を低流量と高流量に制御する第二制御状態と前記脱気装置の複数台をそれぞれ同じ低流量に制御する第三制御状態とを行う制御プログラムを含むものである。
【0023】
前記脱気装置は、2台以上とするが、その台数を増す毎に、前記第二制御状態の組み合わせを多くすることができる。すなわち、2台の場合の前記第二制御状態は、高流量および低流量の1種類しかないが、3台の場合は、高流量,高流量および低流量の組み合わせと、高流量,低流量および低流量の組み合わせとの2種類が存在するので、必要に応じて2種類の制御状態を選択できるように構成することができる。
【0024】
前記処理水要求情報としては、前記各脱気装置と前記負荷機器との間に処理水タンクを設ける場合は、この処理水タンク内の水位情報とすることができ、この処理水タンクを設けない場合は、前記負荷機器側の直接情報とすることができる。この直接情報としては、前記負荷機器をボイラ(蒸気ボイラおよび温水ボイラを含む)とした場合は、好ましくは、前記ボイラの水管の水位情報とするが、これに限定されるものではなく、前記ボイラへの補給水量情報,前記ボイラの運転時間情報,前記ボイラへの給水ポンプの稼働時間と情報することができ、前記負荷機器を蒸気ボイラとした場合は、蒸気ヘッダ内の圧力情報,蒸気使用量情報とすることができる。
【0025】
また、前記処理水タンクを設ける場合であっても、前記水位情報に加えて、前記直接情報を加味した制御を加えることができる。この直接情報を加味した制御は、たとえば、前記処理水要求量が少ない時、前記水位が低いにも拘わらず前記供給量を少なくする制御状態を選択することを意味する。
【0026】
前記各脱気装置の高流量と低流量の制御は、流量調整手段によって行われ、高流量を被処理水の供給量の100%供給とした場合、好ましくは、低流量を50〜60%の供給量とするが、これに限定されるものではない。また、流量制御の段階を2段階でなく、高流量,中流量,低流量のように3以上の段階に制御するように構成することができる。この3段階以上の流量制御が可能な場合は、前記第二制御状態をさらに複数の制御状態に分けることができる。
【0027】
前記流量調整手段は、前記各脱気装置の脱気モジュールに対して第一弁と第二弁を並列に接続して、前記第一弁と前記第二弁の開閉により、前記両弁を開くことで高流量とし、前記第一弁を閉じることで低流量とするように構成することができるが、これに限定されるものではない。すなわち、前記第一弁および前記第二弁に流量調整機能を持たせるのではなく、第一弁と並列に第二弁および流量調整部材を接続して、これらの弁の開閉により
流量制御を行うことができる。前記第一弁および前記第二弁は、好ましくは、前記各脱気装置内に設けるが、前記各脱気装置外に設けることもできる。
【0028】
また、前記各脱気装置毎に給水ポンプを設けて、前記各給水ポンプの運転停止を制御することで前記高流量と低流量の制御を行うように構成することができる。この場合、各給水ポンプの回転数制御手段を備えることにより、きめ細かい流量制御を行うことができる。
【0029】
さらに、この実施の形態においては、好ましくは、前記第二制御状態において低流量とする脱気装置とする脱気装置を固定することなく交代(ローテーション)させるように構成する。これは、つぎの理由による。前記第二制御状態においては、高流量とする脱気装置と低流量とする脱気装置とが存在するため、低流量とする脱気装置を固定すると、当該脱気装置は低流量運転時間が長くなる。低流量運転は、膜式の脱気装置においては、目詰まり原因となるが、低流量とする脱気装置を固定せずローテーションすることで、特定の脱気装置が目詰まりすることを防止できる。ローテーションの方法は、好ましくは、処理水供給量が所定値に達する毎とするが、これに限定されるものではなく、一定時間間隔などの所定時間間隔で定期的にローテーションを行うように構成することができる。
【実施例1】
【0030】
以下、この発明の実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この実施例1に係る脱酸素システムの概略構成図であり、図2〜4は、同実施例1の互いに異なる運転制御パターンを説明する図である。
【0031】
(実施例1の構成)
この実施例1に係る脱酸素システムは、互いに並列に接続される同じ構成の3台の脱気装置1(第一〜第三脱気装置1A,1B,1Cからなり、たとえば各脱気装置の最大容量を5.0t/hとする。)と、この各脱気装置1にて生成される処理水を貯留する処理水タンク2と、この処理水タンク2内の処理水を使用する負荷機器としての6台の蒸気ボイラ3,3,…(たとえば、各蒸気ボイラの最大容量を2.5t/hとする。)と、前記処理水タンク2の水位情報に基づいて前記各脱気装置1の運転状態を制御する第一制御器4とを主要部として備える。
【0032】
前記各脱気装置1は互いに並列に接続され、軟水器5と被処理水ライン(以下、ラインは、経路または流路と称することができる。)6,6,…によってそれぞれ接続されている。前記各脱気装置1と前記処理水タンク2とは、前記各脱気装置1から処理水を供給する第一処理水ライン7,7,…によって接続されている。
【0033】
前記各蒸気ボイラ3は、互いに並列接続され、前記処理水タンク2とは、前記各脱気装置1から処理水を供給する第二処理水ライン8,8,…によって接続されている。また、前記各蒸気ボイラ3は、それぞれ第一蒸気ライン9,9,…と、蒸気ヘッダ10と、第二蒸気ライン11とにより蒸気使用設備(図示省略)と接続されている。
【0034】
前記各脱気装置1は、周知の構成の膜式脱気装置であるが、供給された被処理水を脱気処理する脱気手段としての膜モジュール(図示省略)と、前記膜モジュール内を真空吸引する水封式真空ポンプ(図示省略)などを備えている。前記膜モジュールは、中空糸状の気体透過膜(図示省略)を容器に収容したものとして構成されており、膜モジュールの内部は気体透過膜により液相側と気相側に区画されている。この膜モジュールは、その液相側には前記各被処理水ライン6が接続されており、またその気相側には真空吸引ライン(図示省略)を介して前記水封式真空ポンプが接続されている。したがって、前記膜モジュ
ール内における原水の流通過程において、前記水封式真空ポンプにより気体透過膜を介して膜モジュール内を真空吸引し、被処理水中の溶存気体を吸引除去し、脱気処理された処理水を前記各第一処理水供給ライン7を介して前記処理水タンク2へ供給する構成となっている。
【0035】
そして、前記各脱気装置1には、前記膜モジュールへの被処理水の供給量を100%通水の高流量と60%通水の低流量とに制御する流量調整手段としての流量調整装置12を内蔵している。この流量調整装置12は、互いに並列接続される第一弁13および第二弁14とから構成され、前記第一弁13および前記第二弁14を開くことにより前記高流量とし、前記第一弁13を閉じ前記第二弁14を開くことで、前記低流量とするように構成している。この実施例1では、前記第二弁14が流量調整機能をなす。
【0036】
つぎに、この実施例1の制御構成について説明する。前記各脱気装置1は、前記第一弁13,前記第二弁14,前記水封式真空ポンプなどを制御する個別制御器としての第二制御器15を備える。そして、前記第一制御器4は、前記処理水タンク2に設けた水位センサ16の水位情報に基づき、予め記憶され第一制御プログラムに従い、前記各第二制御器15に指令を送ることによって、前記各脱気装置1を高流量運転,低流量運転,停止に制御して、図2〜図4に示す第一制御状態,第二制御状態1,2,第三制御状態,第四制御状態を実現する。前記制御状態は、制御運転と称することができる。
【0037】
図2の制御パターンにつき説明し、図3および図4の制御パターンは脱気装置が異なるのみであるので、その説明を省略する。図2を参照して、前記第一制御状態は、前記処理水タンク2内の水位が異常低水位である第一水位LLよりも高い第二水位L2以下の場合、前記各脱気装置1A,1B,1Cを全て高流量に制御する。
【0038】
前記第二制御状態は、この実施例1では第二制御状態1と第二制御状態2の2種類ある。前記第二制御状態1は、前記処理水タンク2内の水位が第二水位L2よりも高い第三水位L1から第二水位L2の間にある場合、前記各脱気装置1A,1B,1Cをそれぞれ高流量,高流量,低流量に制御する。前記第二制御状態2は、前記処理水タンク2内の水位が第三水位L1よりも高い第四水位Lから第三水位L1の間にある場合、前記各脱気装置1A,1B,1Cをそれぞれ高流量,低流量,低流量に制御する。
【0039】
また、前記第三制御状態は、前記処理水タンク2内の水位が第四水位Lよりも高い第五水位Hから第四水位Lの間にある場合、前記各脱気装置1A,1B,1Cを全て低流量に制御する。さらに、前記第四制御状態は、前記処理水タンク2内の水位が第五水位H以上にある場合、前記各脱気装置1A,1B,1Cへの被処理水供給量を全て零の停止に制御する。
【0040】
前記水位センサ16は、水圧を利用して水位を検出する構成のもので、前記処理水タンク2の底部近傍に設置し、前記処理水タンク2内の処理水の水位を検出し、この検出信号を前記第一制御器4へ出力する。
【0041】
また、前記第一制御プログラムは、前記各脱気装置1の目詰まりを防止するローテーション(交代)プログラムを含んでいる。このローテーションプログラムは、図2において、流量制御状態をそのままとして、第一脱気装置1A,第二脱気装置1B,第三脱気装置1Cの位置を定期的に順次移動させる。結果として、図2の制御パターン,図3の制御パターン,図4の制御パターンを定期的に順次実行するように構成している。
【0042】
また、前記各蒸気ボイラ3は、高燃焼と低燃焼と運転停止との3位置燃焼制御や各蒸気ボイラ3へ処理水を供給するための給水ポンプ(図示省略)制御を個別に行う第三制御器
17をそれぞれ備え、各第三制御器17は、ボイラの台数制御を行う第四制御器18と接続されている。そして、前記第四制御器18は、前記蒸気使用設備からの蒸気要求量に基づき、予め記憶した第二制御プログラムにより、前記蒸気ボイラ3,3,…の台数制御を行うように構成されている。前記第二台数制御プログラムは周知のものとすることができ、たとえば、前記蒸気要求量を蒸気ヘッダ10の圧力を検出する圧力センサ19を設け、この検出圧力値に応じて前記蒸気ボイラ3,3,…の運転台数を設定するプログラムとすることができる。
【0043】
この実施例1においては、前記軟水器5へ原水を供給する原水供給ライン20に原水の硬度を検出する硬度センサ21および原水の温度を検出する温度センサ22を設け、これらのセンサによる検出信号を前記第一制御器4に入力して前記各脱気装置1を制御するように構成している。なお、前記原水供給ライン20またはその上流に前記軟水器5へ原水を圧送するためのポンプシステム(図示省略)を備えている。
【0044】
(実施例1の動作)
つぎに、前記実施例1に係る前記脱酸素システムの動作について説明する。まず、前記原水供給ライン20により供給される原水は、前記軟水器5において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、被処理水として前記第一処理水ライン6を通して前記各脱気装置1へ供給される。脱気により生成された処理水は、前記第二処理水ライン7を通して前記処理水タンク2へ供給され、ここに貯留される。
【0045】
前記各蒸気ボイラ3稼働により、前記蒸気ボイラ3,3,…の燃焼台数に応じて処理水の要求量が変化する。この要求量に応じた量の処理水が前記処理水タンク2から必要とする前記各蒸気ボイラ3へ供給される。この各蒸気ボイラ3への処理水の供給により、前記処理水タンク2内の水位が変動する。
【0046】
今、前記制御パターンが図2のパターンであるとし、前記処理水タンク2内の水位が、前記各蒸気ボイラ3における処理水の要求量の増加により前記第二水位L2以下となると、図2に示すように前記第一制御器4は、前記各脱気装置1A,1B,1Cを全て高流量に制御する前記第一制御状態とする。この制御により、前記各脱気装置1にて多量の処理水が生成され、前記処理水タンク2内へ処理水が補給される。
【0047】
そして、前記処理水タンク2内の水位が第三水位L1から第二水位L2の間となると、前記第一制御器4は、前記各脱気装置1A,1B,1Cをそれぞれ高流量,高流量,低流量に制御する前記第二制御状態1とする。この第二制御状態1では、前記第三脱気装置1Cが低流量とされるので、前記第三脱気装置1Cから供給される処理水の溶存酸素濃度が低下する。よって、全体として処理水の溶存酸素濃度を低減することができる。
【0048】
また、前記処理水タンク2内の水位が第四水位Lから第三水位L1の間にある場合、前記第一制御器4は、前記各脱気装置1A,1B,1Cをそれぞれ高流量,低流量,低流量に制御する前記第二制御状態2とする。この第二制御状態2では、前記第二脱気装置1B,前記第三脱気装置1Cが低流量とされるので、前記第三脱気装置1B,1Cから供給される処理水の溶存酸素濃度が低下し、さらに処理水の溶存酸素濃度を低減することができる。
【0049】
また、前記処理水タンク2内の水位が第五水位Hから第四水位Lの間にある場合、前記第一制御器4は、前記各脱気装置1A,1B,1Cを全て低流量に制御する前記第三制御状態とする。この第三制御状態における処理水の溶存酸素濃度は、前記第二制御状態2よりもさらに低減される。
【0050】
さらに、水位が上昇して、前記処理水タンク2内の水位が第五水位H以上にある場合、前記第一制御器4は、前記各脱気装置1A,1B,1Cへの被処理水供給量を全て零の停止に制御する前記第四制御状態とする。
【0051】
このように、この実施例1では、前記第二制御状態1,2を設けているので、前記第二制御状態を設けていないシステムと比較して、前記処理水タンク2に貯留される処理水の溶存酸素濃度を低減することができるとともに、必要以上に前記処理水タンク2内に処理水を貯留することがなく、よりきめ細かい水位制御を行うことができる。
【0052】
また、この実施例1においては、前記第一制御器4は、定期的に前記第二制御状態1,2で低流量とする脱気装置を固定することなく図3および図4に示すようにローテーションさせる。
【0053】
かりに、前記第一制御器4が、図2の制御パターンに固定して制御するとすると、前記第一脱気装置1Aは、前記第二制御状態1,2において低流量となることがなく、前記第二脱気装置1Bは、第三水位L1から第四水位Lの間で前記第二制御状態2において低流量となり、前記第三脱気装置1Cは、第四水位Lから第五水位Hの間で前記第二制御状態1,2において低流量となる。よって、流量の観点から膜の目詰まりが生じやすいのは、前記第三脱気装置1C、前記第二脱気装置1B,前記第一脱気装置1Aの順となる。
【0054】
しかるに、この実施例1では、制御パターンを図2〜図4のように変化させるので、特定の脱気装置の目詰まりを防止することができる。
【0055】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、たとえば、前記の目詰まり防止プログラムは、前記各脱気装置1当たりの連続低流量時間をt1分となるように構成することができる。すなわち、前記第二制御状態1の場合は、t1分毎にローテーションを行い、前記第二制御状態2の場合は、t1/2分毎にローテーションを行うとともに、前記第三制御状態の場合は、低流量運転がt1分継続すると、全脱気装置1高流量運転とし、これを所定時間継続後、低流量運転に切り換える。このようにローテーション制御と低流量運転が所定時間の継続毎に高流量運転へ切り換える切換制御とを組み合わせることで、効果的な目詰まり防止を行うことができる。
【0056】
また、前記ローテーションを行うことなく、前記切換制御のみで目詰まり防止を行うことができるが、前記ローテーション制御を行うものと比較して、目詰まり防止のために高流量運転することにより処理水の溶存酸素濃度が低下するというデメリットがある。さらに、前記脱気装置1の台数や前記流量調整装置12の構成は、種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の実施例1に係る脱酸素システムの概略構成図である。
【図2】同実施例1の制御パターンを説明する図である。
【図3】同実施例1の異なる制御パターンを説明する図である。
【図4】同実施例1の異なる制御パターンを説明する図である。
【図5】同実施例1の対比例の制御パターンを説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
1(1A,1B,1C) 脱気装置
2 処理水タンク
3 蒸気ボイラ(負荷機器)
4 第一制御器(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ被処理水の供給量が低流量と高流量とに選択可能な複数台の膜式の脱気装置と、この脱気装置にて生成される処理水を使用する負荷機器と、前記脱気装置の運転台数を制御する制御手段とを備える脱酸素システムであって、
前記制御手段は、前記脱気装置の複数台をそれぞれ高流量に制御する第一制御状態と、前記脱気装置の複数台を低流量と高流量とに制御する第二制御状態と、前記脱気装置の複数台をそれぞれ低流量に制御する第三制御状態とを行うことを特徴とする脱酸素システム。
【請求項2】
前記第二制御を行う複数の脱気装置間で低流量とする脱気装置を固定することなく交代させることを特徴とする請求項1に記載の脱気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−188567(P2008−188567A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28696(P2007−28696)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】