説明

脳内神経電気発生源を位置特定および弁別することによって脳の動的機能画像を表現するための方法および装置、ならびにそれらの使用法

本発明は、脳の動的機能画像を表現するための方法に関する。本発明は、特定の期間にわたって、被験者の頭皮(S)上に配置された1組の電極{Ei}N1から、脳活動の複数の電気生理学的信号{eSi}N1を獲得するステップ(A)と、脳の1組の連続断面からなる3次元画像{Ck}K1から、脳ボリューム内における1組の神経電気発生源{g→jkk}JK11を位置特定し、逆問題を適用するステップ(B)と、弁別神経ネットワークグループ{RNdk}K1を検出するために、神経電気発生源を含む活性領域で、複数の周波数帯において、電気生理学的信号/神経電気発生源の対の間に存在する同調性を弁別するステップ(C)とから成る。本発明は、誘発性または非誘発性機能異常の非侵襲的研究にとって有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳内神経電気発生源を位置特定および弁別することによって脳の動的機能画像を表現するための方法および装置に関し、それらの使用法にも関する。
【背景技術】
【0002】
人の脳の働きはいずれも、機能ネットワークをなす、脳内空間に空間的に分布する多数の神経ネットワーク間の協力の結果である。
【0003】
現在、近年の進歩にも関わらず、EEG(脳波記録法)、MEG(脳磁気図記録法)、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)、PET(陽電子放出断層撮影法)などの主な脳画像法は、脳活性化領域に限ったマップを提供できるに過ぎず、これらの領域とその活性化因子の間の相互作用を直接考慮することはできない。
【0004】
これらの機能ネットワークを特徴付けるには、関与する脳領域を識別すること、それらの間の相互作用メカニズムを理解すること、およびそのような相互作用の正確な定量化を必要とする。
【0005】
前述の画像法によって生成された脳活動マッピングのみに基づいて、前述の神経ネットワークの動作を観測することはできない。
【0006】
領域が同時に活性化していることを観測するだけでは、それらの領域が同じ機能的、病理学的、または認知的プロセスに携わっていると結論付けるのに十分ではないので、同時に活性化しているすべての脳領域のうちで、同じ機能ネットワークに関与している脳領域を弁別することはできない。
【0007】
同様の目的を有する現在知られているすべての手法は、2つの脳内領域間の結合の存在は、それらの神経電気的活動の間の相互関係に反映されなければならないという考えに基づいている。
【0008】
一群のニューロン、例えば、皮質コラムの活動は、2つのタイプの生理学的測定、すなわち、
1)秒当たりの神経放電の比率による時間的符号化、または
2)同じ機能ネットワークに関与する脳領域の振動活動の同期の符号化
によって特徴付けることができる。
【0009】
上述のタイプの生理学的測定のうち第2のタイプの応用に関する研究が行われた。
【0010】
第1の応用は、M. LE VAN QUYEN、J. MARTINERIE、F. VARELA、M. BAULACに付与された米国特許第6,442,421号および第6,507,754号の主題である。
【0011】
その応用は、基本的には、表面脳波図に基づいて、てんかん発作を予測する方法および装置に関する。
【0012】
第2の応用は、CNRS(国立科学研究センタ)名義の仏国特許出願第2 845 883号の主題である。
【0013】
この第2の応用は、脳表面撮影図に基づいて認知状態を特徴付けることに関する。
【0014】
上述の応用は、満足のゆくものであることが分っている。しかし、ある期間のリアルタイム分析を統計的に確証するプロセスに基本的に基づいている点で、上述の応用には限界があるように思える。
【特許文献1】米国特許第6,442,421号明細書
【特許文献2】米国特許第6,507,754号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第2 845 883号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、脳内空間全体において脳内神経電気発生源を位置特定および弁別することによる、脳の動的機能画像の真の表現を確立することを可能にする、方法および装置を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、脳の複数の動的機能画像を確立することを可能にし、それによって、それら動的機能画像の1つまたは複数が、同じ機能的、病理学的、または認知的プロセスに関連付けられ得る、方法および装置を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、脳の1つまたは複数の動的機能画像を確立することを可能にし、機能ネットワークを形成する脳活動領域の神経電気活動に関する時間情報および空間情報の両方を特徴付けることを可能にする、方法および装置を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、特に、機能的、病理学的、または認知的プロセス状態における脳領域の機能的統合および機能的接続についての真の非侵襲的画像法を提供することを可能にする、脳の動的機能画像を表現するための方法および装置を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、特に、1つまたは複数の誘発性または非誘発性の脳の機能的異常状態を発生させる物質、薬物、または薬剤のシグネチャであって、動的機能画像の形態で表現されるシグネチャを特徴付けることを可能にする、本発明の方法および装置に基づいたツールを提供することである。
【0020】
最後に、本発明のさらなる目的は、警戒、注意散漫、眠気など、特定の認知状態のシグネチャであって、動的機能画像の形態で表現されるシグネチャを特徴付けることを可能にする、本発明の方法および装置に基づいたツールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
脳内神経電気発生源を位置特定および弁別することによって脳の動的機能画像を表現するための本発明の方法は、特定の記録時間中に、脳活動によって発出および/または誘導された複数の電気生理学的信号を、脳を保護する頭蓋の頭皮のほぼ一面に散在させられた複数の電極から獲得するステップと、脳活動分析データベースを構成するために、前記電気生理学的信号をデジタル化するステップと、連続断面から構成される脳の3次元画像から電極の位置の電子マップを獲得することによって、脳ボリューム内のすべての神経電気発生源を位置特定するステップと、それらの電極上の電気生理学的信号を記録するステップとから少なくとも成る点で特筆すべきである。3次元脳画像、電気生理学的信号、および位置の電子マップから得られる大脳皮質の区分化に基づいた逆問題の適用は、脳内神経電気発生源の空間的位置が決定されることを可能にし、神経電気発生源を含む活性領域の間から、前記神経電気発生源のあらゆる対の間に存在する同調性の量を計算することを可能にする。この定量化は、弁別神経ネットワークグループを検出し、動的機能画像を表現する基準状態のデータベースを構成するために、複数の周波数帯について達成される。
【0022】
本発明の方法は、特定の記録時間中に獲得された動的機能画像について、前記機能画像を複数の機能画像のうちの1つのクラスの機能画像と一致させるステップからさらに成り、機能画像の複数のクラスのうちの各クラスが、被験者の脳の脳状態を特徴付ける点でも特筆すべきである。
【0023】
本発明を使用して得られる脳の動的機能画像は、各断面が前記脳の個別画像を表現する連続断面から構成される前記脳の3次元画像と、少なくとも1つの個別画像における、マーカによって表される神経電気信号の少なくとも1つの神経電気発生源であって、各神経電気発生源が、前記個別画像におけるその位置、その電流密度、およびその神経電気信号発出方向によって特徴付けられ、現在の個別画像のすべての神経電気発生源が、先行および/または後続する個別画像の神経電気発生源と隣接し、脳の前記動的機能画像を表現する機能状態を弁別する神経ネットワークの1グループを構成する、特定の一致時間にわたる実質的に同じ神経電気信号発出方向および同調性を有する、少なくとも1つの神経電気発生源とを含む点で特筆すべきである。
【0024】
脳の動的機能画像を表現するための本発明の装置は、特定の記録時間中に、脳活動によって発出および/または誘導された複数の電気生理学的信号を、脳を保護する頭蓋の頭皮のほぼ一面に散在させられた複数の電極から獲得するため、ならびに脳活動分析データベースを構成するために、これらの電気生理学的信号を保存およびバックアップするための少なくとも1つの回路と、連続断面から構成される脳の3次元画像を獲得するための回路と、電極の位置、前記脳の3次元画像、および大脳皮質の区分化から、脳内ボリューム内の脳内神経電気信号のすべての神経電気発生源の位置を計算するため、ならびに逆問題の適用を計算するためのモジュールと、弁別神経ネットワークグループを検出し、前記動的機能画像を表現する基準状態のデータベースを構築するために、神経電気発生源を含む活性領域の間で、複数の周波数帯において、神経電気発生源の対の間に存在する同調性の量を弁別するためのモジュールとを含む点で特筆すべきである。
【0025】
本発明の方法および装置は、特に、薬物、薬剤を摂取し、機能的および/または臨床的状態を分類し、それらを合理的な方法で特定の病理学的または認知的状態に関係付けることによる、誘発性または非誘発性の機能異常の研究など、きわめて多様な状況における、人間の脳の非侵襲的機能研究において用途を見出す。
【0026】
本発明の方法および装置は、以下の説明を読み、図面を検討することで、より良く理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
脳の動的機能画像を表現するための本発明の方法は、図1a、図1b、および後続の図を参照して以下で説明される。
【0028】
図1aは、本発明の方法が適用される被験者の頭部全体を示す、垂直対称面における断面図である。
【0029】
示された切断平面は、非限定的な例として選択されたもので、これ以外にも任意の断面が使用できる。
【0030】
図1aに示されるように、Ckは、上述の切断平面における脳Cおよび頭部全体の断面を示し、したがって、この断面は、図1aの平面において表される。
【0031】
被験者の頭部、特に頭皮Sには、脳Cを保護する頭蓋の頭皮Sの一面に散在させられた複数の電極が取り付けられる。例えば、複数の電極:
【数1】

は、被験者の頭皮の一面にほぼ規則的に散在させられたN個の電極を含む。
【0032】
例えば、図1aに示されるように、Oは、切断平面Ckに配置された恣意的な基準点を示し、Oxyzは、所与の座標系を示し、その座標系に対する極座標r、θ、φによって、脳Cの任意の点Pを識別するためのものである。
【0033】
したがって、本発明の方法を実施するため、各電極Eiが、本発明の方法が実施されることを可能にするために、EEGおよび/またはMEGタイプの電気生理学的信号esiを拾うことは明らかである。
【0034】
図1bを参照すると、図1aを参照して与えられた説明に鑑みて、本発明の方法は、ステップAの間および特定の記録時間Dの間に、複数の電気生理学的信号:
【数2】

を獲得するステップを含む点で特筆すべきである。
【0035】
これらの電気生理学的信号は、脳Cの脳活動によって発出および/または誘導され、複数の電極:
【数3】

から拾われる。これらの電気生理学的信号は、脳活動分析データベースDBeを構成するためにデジタル化され、記憶システムは、M(t)で示される。
【0036】
上述の電気生理学的信号esiの性質に関して、上述のような脳活動によって直接発生される信号に加えて、追加の信号が同時に獲得でき、その信号は、被験者の眼球の動きによって発生される信号、心臓活動信号、または記録時間中に保存され得る他の任意の電気生理学的信号から成ることができることに留意されたい。
【0037】
その後、これらの信号はすべて、データベースDBeを構成するために、上述のように組織される。
【0038】
図1bに表されるように、ステップAの後には、被験者の脳活動に対応する脳ボリューム内の1組の神経電気発生源を位置特定するステップBが続く。
【0039】
これは、有利には、図1aに示されるように患者の頭皮に配置される電極:
【数4】

の位置の電子マップと、1組の連続断面:
【数5】

から構成される脳Cの3次元画像とを獲得することに基づいて達成される。
【0040】
特に、獲得電極Eiの知られた位置と、もちろん、1組の断面:
【数6】

によって形成される脳Cの3次元画像とを与えた場合、以下で説明されるように、大脳皮質の区分化が得られ、電極の位置がそのモデル上で特定されることは明らかである。
【0041】
その後、脳ボリューム内のすべての神経電気発生源が、逆問題の適用によって位置特定され、逆問題は、大脳皮質内の局所電流密度を取得し、特に、1組の電極:
【数7】

によって送られた、電気生理学的信号esiから得られた電圧測定値M(t)に基づいて、大脳皮質を区分化することとして定義される。
【0042】
したがって、逆問題の適用は、1組の電気生理学的信号:
【数8】

から電極の位置の電子マップを決定し、もちろん、大脳皮質の区分化を提供する連続断面から構成される脳の3次元画像から脳内神経電気信号の神経電気発生源の空間的位置を決定することを可能にする。
【0043】
図1bでは、ステップBにおいて、
【数9】

は、1組の脳内神経電気信号発生源を示す。
【0044】
特に、脳内神経電気信号の各神経電気発生源は、振幅、すなわち局所電流密度ばかりでなく、上述のような脳Cの各点P(r,θ,φ)における向きでも定義されることは明らかである。
【0045】
本発明の方法によれば、ステップBが実行された後、各時間t、階層kの各連続断面において、したがって、最終的には、脳内ボリューム全体において、脳内発生源のすべてが利用可能である。
【0046】
図1aに示されるように、ステップBの後には、被験者の脳活動から生じる機能ネットワークを構成する弁別神経ネットワークグループを検出するために、脳の活性領域の間で、特に神経電気発生源を含む各断面Ckから、複数の周波数帯において、神経電気発生源の対の間に存在する同調性の量を弁別するステップCが続く。
【0047】
図1bでは、ステップCにおいて、
【数10】

が、同調性を弁別するこの動作を象徴的に示す。
【0048】
上記の関係において、RNdkは、例えば、断面Ckについての、上述の機能ネットワークに対応する弁別神経ネットワークグループを示す。
【0049】
上述のステップCの実行に続き、本発明のプロセスの実行を完了した後、すなわち、ステップDにおいて、個別動的機能画像によって形成され得る機能画像が利用可能であり、個別動的機能画像の各々は、少なくとも1つの活性神経電気発生源:
【数11】

と、弁別神経ネットワークグループまたはグループの部分RNdkとに自らを関連付ける断面Ckの1つに対応することができる。この理由で、
【数12】

は、個別機能画像を示す。
【0050】
各機能画像は、各々が断面Ckの1つに対応する個別動的機能画像の集合の、例えば、断面の方向に対して任意の向きを有することができる表現平面上への射影または交わりに対応することができる。
【0051】
図1cは、異なる神経電気発生源:
【数13】

がその中に表現される連続断面Ck-1、Ck、およびCk+1によって形成される複数の機能画像を示しており、各発生源は、上述の座標系Oxyzに対して位置特定され、各神経電気発生源は、振幅、すなわち電流密度と、元の座標系に結び付けられた座標系Px'y'z'に対する向きとで定義される。
【0052】
図1cを参照すると、弁別神経ネットワークグループは、個別画像内に、したがって、連続断面Ck-1、Ck、およびCk+1内に存在する、神経電気発生源のグループから成り、これらの発生源は、同様の向きを有し、図1bのステップCに関連して定義された同調性基準を満たす。
【0053】
記録時間Dの間に獲得された各機能画像について、本発明の方法は、その機能画像を機能画像の複数のクラスの1つに一致させ、機能画像のその複数のクラスの各クラスは、以下で説明されるように、被験者の脳の脳状態を特徴付ける。
【0054】
したがって、図2を参照すると、複数の電気生理学的信号:
【数14】

を獲得および処理するステップは、100ミリ秒未満の最大記録遅延でリアルタイムに達成される。
【0055】
上述の図2を参照すると、記録時間Dは、時間範囲に関して設定され得るパラメータであり、記録時間は、1つまたは複数の認知状態に関係する脳の機能画像を記録および表現するための20分のオーダの最短記録時間と、脳の1つまたは複数の誘発性または非誘発性機能異常状態に関係する脳の機能画像を記録および表現するための、図2においてD=x日で示される、数日の記録時間Dとの間にある。誘発性異常状態は、薬物、薬剤、または例えば誤って摂取した他の任意の物質によって誘発できる。
【0056】
明らかに、特に100ミリ秒未満の最大記録遅延を与えた場合、電気生理学的信号esiは、この目的にとって十分なサンプリング周波数を使用して記録される。
【0057】
保存データ、すなわち、上で言及され、データベースDBeを構成するデータM(t)の使用に関して言えば、保存データは、図2で表されるような記録時間中に、活性領域の間で、神経電気発生源からの電気生理学的信号の対の間に存在する同調性の量を弁別するために、以下の方法で使用できる。
【0058】
その場合、上述の信号の使用は、図2にやはり表されるように、1つまたは複数の認知状態に関係する脳の機能画像を表現するために、持続時間fが50ミリ秒から2秒であるスライディング時間窓にわたって、また脳の1つまたは複数の誘発性または非誘発性機能異常状態に関係する脳の機能画像を表現するために、持続時間が5秒から20秒であるスライディング時間窓にわたって、この弁別を達成することから成る。
【0059】
神経電気発生源:
【数15】

を位置特定するステップBが、図3を参照して以下でより詳細に説明される。
【0060】
最初に、手順の説明が、図3を参照して与えられる。
【0061】
頭皮電位の計算を制御する積分方程式の離散化は、測定値M(t)と、振幅、すなわち脳ボリューム内に分布する神経電気発生源の電流密度との間の瞬時線形関係を確立する。したがって、加法性雑音の存在下では、問題は、保存信号M(t)がそれから起こる皮質電流または電流密度Jの分布を推定することと、したがって、例えば医療画像法における他の多くの画像再構成アプリケーションの方法で逆問題を解くことである。
【0062】
源、すなわち、導電ボリュームの外部表面において測定される電磁界の神経電気発生源を推定する問題には、単一解が存在しない。
【0063】
この問題は、J. Hadamard的な意味で根本的に不適切に規定された問題である。したがって、本発明の方法は、管理された解剖学的制約および電気生理学的制約を課し、一意的な推定が得られることを保証する推定法を使用することを提案する。
【0064】
対応する推定法が、図3を参照して以下で説明される。
【0065】
図3を参照すると、保存測定値の組M(t) = G(r,θ,φ)J(t)が利用可能であり、ここで、
・M(t)は、取得された記録、すなわち、例えば頭皮の表面における電位の値の形式を取る電気生理学的信号の値の組を示し、
・G(r,θ,φ)は、脳内ボリュームの各局所点における頭皮上に存在する表面電気生理学的信号:
【数16】

と、対応する推定局所電流密度:
【数17】

との間の伝達行列を示す。
【0066】
図3に示されるように、位置特定ステップBは、実質組織の区分化および表面メッシュによって導入される個々の解剖学的構造から生じる制約を適用するステップから成るステップBを実行することを伴う。
【0067】
この操作は、上述のメッシュmuが取得されることを可能にする1組の連続断面:
【数18】

に基づいている。
【0068】
ステップBの後には、以下の式を適用して逆問題を解くことによって局所電流密度を計算するステップBが続き、式中で、λは正則化項、Iは単位行列である。
【0069】
【数19】

【0070】
したがって、ステップBの後、与えられた時間における、座標がr、θ、φである脳内ボリューム内の任意の点での局所電流密度が利用可能である。
【0071】
上記の式において、
【数20】

・Gtは、伝達行列G(r,θ,φ)を表す行列Gの転置伝達行列を示し、
・(GtG)#は、伝達行列Gの擬似逆行列を示す。
【0072】
本発明の方法および装置の使用に適用される電流密度値の推定スピード制約と、独立で同一の分布に従うガウス雑音を仮定することとのため、空間解像度と計算時間の間の妥協に関して満足できる解は、残差のエネルギーおよび神経電流のノルムを最小化する解であり、結果の推定法は、最小2乗の意味で最小ノルムを有する不偏推定法である。
【0073】
ステップBの後には、皮質表面のメッシュ上の個々の電流源の形式で、機能パラメータの位置、すなわち、神経電気発生源:
【数21】

の振幅および向きを計算するステップBが続く。
【0074】
図3のステップBでは、この操作は、記号表現によって以下のように表される。
【0075】
【数22】

【0076】
したがって、活性領域が利用可能であり、各活性領域は、少なくとも1つの神経電気発生源を含む。
【0077】
ステップBの実行に関して言えば、測定値M(t)を含む物理的モデルは、オームの法則を3つの次元に分解することに依存する。使用される生理学的周波数での電磁界伝播現象を無視することは正当と認められる。その後、対応するモデルが、元の座標系を用いる球面幾何学の文脈で分析的に、または骨組織および頭皮Sのエンベロープの特殊な幾何学を考えることによって数値的に達成できる。
【0078】
図1bを参照して上で説明された同調性弁別ステップCの1つの具体的な実施が、図4(a)から図4(d)を参照して以下でより詳細に説明される。
【0079】
一般的に言って、上述の図を参照すると、ある周波数帯において神経電気発生源を含む活性領域内の神経電気発生源の対の間に存在する同調性の量を弁別するステップが、1対の神経電気発生源からの2つの信号の間のPLS同期を、それらの信号間の位相差の円分散、またはその位相差の正規化シャノンエントロピを用いて、統計的に評価するステップから少なくとも成ることに留意されたい。
【0080】
図4(a)から図4(d)を参照して与えられる説明の前に、理論的正当化が以下で与えられる。
【0081】
一般的に言って、信号の瞬時位相は、解析信号の助けによって計算できる。解析信号の概念は、1946年にGaborによって導入され、最近、実験データに適用されている。
【0082】
したがって、上述の概念に準拠すると、恣意的な信号s(t)、すなわち、任意の保存電気生理学的信号M(t)について、解析信号zは、以下の式によって定義される複素時間依存関数である。
【0083】
【数23】

【0084】
上記の式(1)では、関数:
【数24】

は、下記の形式を取る、s(t)のヒルベルト変換である。
【0085】
【数25】

【0086】
ヒルベルト変換において、P.V.は、コーシーの主値の意味で積分が計算されることを示す。信号S(t)の瞬時振幅A(t)および瞬時位相F(t)は、上記の式(1)によって一意に定義される。
【0087】
式(2)を参照すると、
【数26】

は、信号s(t)と1/πの畳み込み積と考えられる。
【0088】
その結果、信号s(t)へのヒルベルト変換の適用は、単位振幅応答と、すべての周波数についてπ/2だけシフトされた位相応答とを有するフィルタリングの適用と等価である。
【0089】
上述の変換プロセスは、理論的には、広い周波数帯を有する信号に適用できるが、そのような環境では、位相の概念があまり明白でなく、実際には、フィルタリングによって得られた狭帯域信号だけが使用される。
【0090】
その結果、フィルタリングが、特定の周波数帯において適用される。それにも関わらず、多くの周波数帯が保持できるが、同じ周波数帯が、1:1同調性にある2つの信号に対して使用される。n:m同調性を研究するために、その他の周波数帯が使用できる。2つの信号の間のPLS同調性は、円分散と、信号間の位相差またはその位相差の正規化シャノンエントロピとの2つの指標を用いて、統計的に評価される。
【0091】
円分散は、下記式:
【0092】
【数27】

【0093】
を満たし、正規化シャノンエントロピは、下記式を満たす。
【数28】

【0094】
後者の式において、エントロピは、下記式によって定義される。
【0095】
【数29】

【0096】
上記の式において、
・Mは、位相値クラスの数を示し、
・Hmax=ln(M)は、最大エントロピを示し、
・pmは、第mの位相値クラスにおける位相差の相対周波数を示し、
・lnは、自然対数を示す。
【0097】
位相値クラスの最適数は、M=exp[0.626+0.4ln(P-1)]であり、ここで、Pは、分類される位相差の数を示す。
【0098】
上述の正規化の導入を与えると、γの値は、0(一様分布または同期なし)から1(完全な同期)までである。
【0099】
上述の計算は、計算時間を短縮するために、無作為または作為サンプリングによって、すべての推定された源の対または適切な対について達成される。
【0100】
27個に等しい多くの源、すなわち、多くの神経電気発生源の場合、異なる対の数は325個であり、64個の場合、異なる対の数は1953個まで増加する。数100の源に対してこの手順を使用することは不可能である。
【0101】
実際には、本発明の方法では、リアルタイム同調性計算は、都合の良いことに100個の発生源までに制限できる。その場合、リアルタイム処理のための対象領域は、採用される実験手順と情報削減統計技法(判別分析、空間フィルタなど)の使用との関数として選択される。
【0102】
したがって、上述の図4(a)から図4(d)を参照して、図4(a)に表された原信号から始めると、記録時間Dにわたって保存された対を構成する2つの信号について、同調性弁別ステップCは、例えば、図4(b)に示されたフィルタ信号を得るために、複数の周波数帯にわたってフィルタリングを達成するステップと、その後、図4(c)に示された上述の信号間の瞬時位相差を得るために、上述のスペクトル分析を実行するステップとから成ることができる。
【0103】
その後、記録時間のその他の領域と比べて相対値が一定の実質的に最小の位相差について、同調性Sy1およびSy2が強調され得る、図4(b)に示された位相差を定量化するために、信号間の位相差またはその位相差の正規化シャノンエントロピの円分散指標に基づいた上述の統計的検討が実施できる。
【0104】
最後に、図4(d)を参照すると、神経電気発生源の対の間の同調性は、都合の良いことに、同調性時間範囲によって確立できる。これは、脳の真の動的機能画像を生成する、神経電気発生源の対の活動の時間的表現を可能にする。
【0105】
神経電気発生源が個々の動的機能画像内に、特に図1cに示されるように連続する動的機能画像内に配置される場合、本発明の方法は、図5に示されるような脳の任意の動的機能画像を得るために使用できる。
【0106】
この種の画像は、図1cを参照して説明されたような脳の個別画像を各断面が表現する連続断面から成る、脳の少なくとも1つの3次元画像を含む。図5では、図面を過度に複雑にしないために、連続断面は示されていない。
【0107】
さらに、図5に示されるように、動的機能画像は、個別画像の少なくとも1つに、また適切ならば個別画像のいくつかに、マーカによって表される脳内神経電気信号の少なくとも1つの神経電気発生源を含む。図5では、マーカは、対応する神経電気発生源が配置される点における局所電流密度を実際には表す振幅と、神経電気発生源によって発生される電流の元の座標系における向きに正確に対応する向きとをもつ有向矢印である。
【0108】
図5を参照すると、各神経電気発生源は、個別画像内の、したがって、結果の動的機能画像内の位置において、電流密度および対応する神経電気信号の発出の方向によって特徴付けられることに留意されたい。
【0109】
したがって、図1cに示されるように先行および/または後続する個別画像の神経電気発生源に近く、電気信号の発出の実質的に同じ方向と、特定の一致期間にわたる同調性とを有する、現在の個別画像の各神経電気発生源は、脳の動的機能画像を表現する機能状態を弁別する神経ネットワークグループを構成する。
【0110】
図5は、正常な被験者、すなわち、手の指について機能異常をもたず、その結果、脳の対応する脳機能異常をもたない人の、右手の指に関連付けられた神経電気発生源を有利に表現する。
【0111】
図5では、等価ダイポールを構成する神経電気発生源によって各指が表されることに留意されたい。これらの有向発生源は、皮質表面に対して垂直であり、頭部表面に対して接線方向を向き、図5に表される中心溝に配置された神経マクロコラムの活動に対応し、図5では、親指Thは、有向矢印によって表され、人差し指Iは、特定の矢印によって、中指Mは、別の平行矢印によって、薬指Aは、異なる平行矢印によって表される。
【0112】
指に関連付けられた神経電気発生源は、非常に正確な解剖学的順序で表されていることに留意されたい。
【0113】
特に、本発明の方法によって生成される機能画像は、脳内における人体の皮質表現の機能異常の迅速な検出を可能にし、その機能画像は、もちろん、機能異常のない状態を表すクラス、または反対に機能異常のクラスおよび検討中の指の1本の異常に対応するサブクラスに分類できることは明らかである。
【0114】
本発明の方法によって生成される動的機能画像をクラスのカテゴリのうちのクラスに割り当てることは、本発明の方法が決定指向弁別の目的で実施され得ることを意味する。
【0115】
これは、特に図5を参照して上で説明された例に当てはまる。
【0116】
したがって、例えば1または数秒の与えられた記録時間Dにおける、電気生理学的信号esiの特定の同調性について、得られた対応する動的機能画像を、多数の脳状態の1つを特徴付ける特定のクラスに割り当てることが可能である。
【0117】
対応する問題は、分類の問題であり、もちろん、図5を参照して上で言及された1組のクラスの事前定義を仮定する。
【0118】
この決定指向手順は、電極Eiのすべての対を考慮しなければならない。これらの条件下において、100に等しい電極の数Nと、図4(a)から図4(b)で表される処理において達成されるフィルタリングによって決定される14の周波数帯とに対して、次元p=70700の分類変数空間が得られる。
【0119】
上で示されたような大きな空間においては、安定した予測を得ることは、多数の連続した小さな空間内で働き、それらの空間の間の相互作用を考慮するためにマルチ分類器戦略を使用する、手順制約次第である。
【0120】
したがって、変数の第1の分類は、例えば最良の300のみを保持するために、例えばフィッシャ判別テストを使用して、すべての周波数帯について、選択されたクラスの間で達成される。
【0121】
その後、すべてのこれらの後者の変数について、各周波数帯ごとに、LDAまたはSVM分析が実施され、クラスの間の境界が保持される。
【0122】
この種の2値判別手順、すなわち、例えば図5を参照して上で言及されたような、2つのクラスの間の判別は、空間を70700次元から300次元まで、その後、14次元、すなわち、周波数帯当たり1次元まで縮小させる。この縮小空間上での最終分類は、LDA、NN、またはSVMなどのマルチ分類器の組み合わせを通して到達される。
【0123】
脳の動的機能画像を表現するための本発明の装置のより詳細な説明が、図6aおよび図6bを参照して以下で説明される。
【0124】
図6aを参照すると、本発明の装置が、特定の記録時間中に脳活動によって発出および/または誘導された複数の電気生理学的信号、すなわち、上で説明された信号:
【数30】

を獲得するためのリソース1を含むことに留意されたい。これらの信号は、脳Cを保護する頭蓋の一面に規則的に電極Eiを散在させるために使用時に被験者の頭皮上に配置されるキャップ10を形成する複数の電極から獲得される。
【0125】
図6aに示されるように、電極Eiおよび上述のキャップは、有利には、例えばWiFiタイプの接続によって、脳活動分析データベースを構成するために電気生理学的信号を保存およびバックアップする獲得コンピュータ11に接続できる。そのデータベースDBeは、以下で説明されるように、獲得コンピュータ11から離れて設置できる。
【0126】
やはり図6aに示されるように、本発明の装置は、連続断面から構成される脳の3次元画像、すなわち、1組の断面:
【数31】

を獲得するためのリソース2をさらに含む。
【0127】
図6aは、獲得コンピュータ11と、1組の神経電気発生源の位置を計算し、上述のように、前述の神経電気発生源を含む活性領域の間で、神経電気発生源の対の間に存在する同調性の量を弁別するための機能を実行する補助プロセッサユニット3とにネットワーク接続された、電子ファイルの読み取り器または受信器によって有利に構成される獲得リソース2を示している。
【0128】
したがって、3次元画像獲得リソースが、被験者の臨床的処置に責任を負うエンティティによって管理される外部データベースへのアクセス、または例えばデュアルレイヤDVDタイプの超大容量光ディスク読み取り器を介した前記エンティティへのアクセスを提供することは明らかである。
【0129】
プロセッサユニット3に関して言うと、それが獲得コンピュータ11にもネットワーク接続され、したがって、獲得コンピュータから離れて配置でき、それが特定の被験者のための獲得システムが自己充足的であり得ることを意味することに留意されたい。
【0130】
特に、本発明の方法および装置を使用して、テスト用に数日の記録時間にわたって動的機能画像を生成する場合、キャップ10は、示されたWiFiタイプ接続を用いて、獲得コンピュータ11とは独立に提供でき、獲得コンピュータ11は、プロセッサユニット3にネットワーク接続されたラップトップコンピュータから成ることができることは明らかである。
【0131】
したがって、本発明の装置は、被験者に最低限の制約を課すだけで対応する方法の使用を可能にし、被験者は、もちろん自由に動くことができ、例えば自宅など準通常の状況にいることができる。
【0132】
図6aに示されるように、例えばインターネットまたは別のネットワークを介してこのプロセッサユニットをネットワーク接続するための入力/出力ユニットI/Oに加えて、プロセッサユニット3は、中央処理装置CPUと、作業用メモリRAMと、脳活動分析データのデータベースDBeを保存するためのハードディスクタイプの記憶ユニットとを含む。
【0133】
中央処理装置3は、電極の位置とリソース2から獲得される脳の3次元画像とから1組の神経電気発生源の位置を計算するための、図6aに示される、例えばプログラム記憶モジュールM0およびM1によって形成されるモジュールをさらに含む。
【0134】
計算モジュールは、モジュールM0およびM1から成ることができ、モジュールM0は、例えばモジュールM1と共に、専ら逆問題を計算して、図3のステップBを実行し、モジュールM1は、例えば、3次元画像獲得リソース2から得られた連続断面:
【数32】

に基づいて、専らメッシュ操作を、すなわち、図3に表されたステップBを実行する。
【0135】
モジュールM2は、上で説明され、図3に表されたステップBに従って、脳内神経電気信号の1組の神経電気発生源を位置特定するために使用される。
【0136】
最後に、処理リソース3は、有利には、図面の図4(a)、4(b)、4(c)、4(d)に従った、神経電気発生源を含む活性領域で、複数の周波数帯において、信号の対の間に存在する同調性の量を弁別するための計算モジュールM3を含む。
【0137】
特に、計算モジュールM0、M1、M2、M3は、有利には、リードオンリメモリに保存され、対応する動作を実行するために中央処理装置CPUによって作業用メモリRAMにフェッチされる、プログラムモジュールとすることができる。
【0138】
そのように要求される場合、動的機能画像を表現する基準状態のデータベースは、データベースDBeをすでに含むハードディスクユニット上に保存できるが、基準状態のデータベースは、好ましくは、保存および使用のために、連続断面から構成される脳の3次元画像をすでに保存するエンティティ内に好ましくは配置される、特定のネットワーク接続リソースに転送される。
【0139】
最後に、本発明の装置は、有利には、イヤフォン42を介する聴覚刺激を、または被験者の意識状態を変更するための連続画像、例えば心理テスト画像を表示画面41上に表示することによる視覚刺激を被験者に与えるための刺激コンピュータ40を含む、被験者を刺激するためのリソース4を含むことができる。
【0140】
本発明の方法および装置の多くの臨床的および/または診断的応用が存在する。
【0141】
本発明の方法および装置は、脳ボリューム内またはその表面上に配置された元となる神経電気発生源の改善された位置を提供する。
【0142】
使用されるプロセスは、優れた時間解像度をもつ機能画像にアクセスする利点を有する。さらに、表面電極は、分布する複数の脳活動の瞬時混合を測定するが、機能画像は、脳内の対象とする各位置について再構成された時間的経過推定を生成する情報の空間デコンボリューションを達成する。本発明の方法および装置を使用することによって、検出された神経電気発生源の間で明らかにされた同調性を与えた場合、脳状態のより精細な特徴付けが、リアルタイムに取得できる。
【0143】
具体的に、ある診断結果が示された。
【0144】
てんかん発生帯外縁の近くに配置された脳内電極のある対が、α、8ヘルツ(Hz)から12Hz、β、15Hzから30Hz、γ、30Hzから70Hzの特に速い周波数帯において、発作前に同調性の著しい変化を系統的に示すことが観測された。
【0145】
さらに、これらの同期は、認知プロセス中の大規模統合現象における可能な関与のため、最近大きな注目を集めている。対応する結果は、てんかん発生帯の下にある神経集団が、発作前により大規模な力動性でそれらの関係を変化させることを暗示している。
【0146】
これらの同期変化は、その後、てんかん焦点の動的分離をもたらすことができ、その後、てんかん過程によって容易に動員される神経集団を反復的に提供する傾向にある。
【0147】
本発明の方法および装置は、その後、発作前脳活動を非常に正確に定量化する。発作を予測するこの可能性は、発作前フェーズ中に生じる神経生物学的変化の特徴付けを通して、非常に大きな診断的展望を、また適用可能であれば、治療的展望を開く。
【0148】
臨床的レベルでは、被験者に警告し、治療的介入を通して差し迫った発作を未然に防ぐ試みの可能性も、想定できる。特に、電気神経刺激が、特にパーキンソン病などの他の病状に対する有望な治療法として、最近脚光を浴びている。
【0149】
この観点から、神経活動を助長または抑制するための電気刺激による従来の治療は、所定の脳領域の機械的破壊を置き換えることができる。本発明の方法および装置の使用による発作予測の可能性が、いつ刺激を与えるべきかという問いに答えるので、ここでは鍵である。刺激は、発作前が検出された時、てんかん過程が発作の瞬間に非可逆的になる前に、てんかん過程を動揺させる目的で、与えられることができる。
【0150】
本発明の方法および装置は、認知的介入の分野でも、さらなる発展を促進することができる。ある被験者たちは、発作が始まった時に、特定の認知性または運動性の活動によって発作を止める能力について述べている。これらの現象は、脳皮質内における新しい電気的活動の出現によるてんかん過程の動揺に基づいている可能性が高いようである。したがって、認知的同期によるてんかん活動の調節も、本発明の方法および装置を使用して示された。
【0151】
最後に、ベンゾジアゼピンなどの即効性の抗てんかん薬剤を投与することによる薬理学的介入など、介入のその他の形態も想定できる。発作予測によって提供される警告および介入の可能性は、必然的にリアルタイムでの予測を含意し、計算結果および対応する検出が、即時に非オフラインで得られなければならないことを意味する。
【0152】
発作を予測する能力は、薬剤抵抗性部分てんかんを評価する前外科的段階中に実施される試験も改善する。特に、発作SPECTスキャンは、てんかん焦点がより良く位置特定され得るように、発作がまさに開始した時またはその直前に、放射性トレーサを注入するよう処置作業者に警告することによって容易にされる。その場合、入院期間は、著しく短縮され、画像システム占有時間は、最適化できる。
【0153】
最後に、てんかんの臨床的研究への応用のこの例は、特に、データをダウンロードすることによって、被験者の脳の脳状態を特徴付ける機能画像から成るトレーニングベースを変更することを通して、警戒、精神的作業負荷、または薬剤/認知相互作用の測定などの認知的活動に容易に転換できる。
【0154】
その結果、保存信号間に線形関係を仮定するという事実から生じる初期の技法の制約が、1つまたは複数の特定の周波数帯における多様な脳領域の活動の相互依存の程度を測定するのに特に適していると思われる、上で説明された位相同期プロセスを用いて、取り除かれることは明らかである。
【0155】
したがって、注目すべきことに、30Hzから50Hzまでの速い周波数帯における神経同期が、認知中およびある病状を伴う大規模統合現象におけるその可能な役割のために、最近大きな注目を集めている。
【0156】
要約すると、本発明の装置および方法は、
1)警戒、注意深さ、ストレス、努力、疲労など、
2)てんかん発作などのある病理学的状態の非常に短期間の進展、ならびに
3)薬物および/または薬剤の作用、特に中枢神経系(CNS)に作用するもの
をシグネチャによって特徴付ける目的で、人間において集められた脳波記録法(EEG)信号に基づいて、異なる脳内活動の間の相互作用を、リアルタイムに位置特定および定量化する。
【0157】
本発明の装置および方法は、これらの様々な脳状態を視覚化、分類、および比較することもできる。より正確には、本発明の装置および方法は、新しいタイプの薬物または薬剤が既知の薬物または薬剤に近いかどうかを、そのシグネチャを通してテストすることができる。この意味で、本発明の方法および装置は、新しい分子が市場に出される前に、それの作用の潜在的範囲を特定するために、きわめて有用であると思われる。
【0158】
最後に、本発明は、コンピュータによる実行のために記憶媒体に保存され、実行時に図1bから図4(d)を参照して説明されたような本発明の方法を実行する点で特筆すべきコンピュータプログラム製品と、図6aを参照して説明されたような脳の動的機能画像を表現するための装置とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1a】本発明の方法が実施されることを可能にするために頭皮に電極のネットワークが取り付けられた被験者の頭部全体の垂直対称面における例示的な断面図である。
【図1b】図1aに示された条件下において本発明の方法を実施する基本ステップのフローチャートである。
【図1c】機能ネットワークを形成する脳活動領域を構成する弁別神経ネットワークグループを示す、本発明による動的機能画像を構成する連続する個別動的機能画像の例示的な表現の図である。
【図2】電気生理学的信号を記録および分析するための窓の実施を示し、記録時間および窓の持続時間が、被験者の脳の脳状態を特徴付けることを目的として選択された機能画像クラスの関数として設定されるパラメータである、タイミング図である。
【図3】脳ボリューム内のすべての神経電気発生源を位置特定するための図1bに示されたステップの実施の詳細を例示的に示す図である。
【図4】図4は、(a)から(d)で構成される。 図4(a)は、特定の記録時間中に被験者の頭皮に配置された1対の電極によって送られたEEGタイプの原信号のタイミング図である。 図4(b)は、フィルタリング後の図4(a)からの信号のタイミング図である。 図4(c)は、図4(b)に示された信号のスペクトル分析によって得られた位相差を示す図である。 図4(d)は、記録時間にわたる図4(c)に示された信号間の位相差における変化を表し、記録時間のある範囲におけるこれらの信号間の同調性を明らかにする信号を示す図である。
【図5】正常な被験者の右手の指に関連付けられた神経電気発生源を示す脳の具体的な機能画像を示す図である。
【図6a】脳の動的機能画像を表現するための本発明の装置の例示的な機能ブロック図である。
【図6b】電気生理学的信号を獲得するための電極が取り付けられたフレキシブルキャップを示す図である。
【符号の説明】
【0160】
1 リソース
10 キャップ
11 獲得コンピュータ
2 リソース
3 補助プロセッサユニット
4 リソース
40 刺激コンピュータ
41 表示画面
42 イヤフォン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳内神経電気発生源を位置特定および弁別することによって脳の動的機能画像を表現する方法であって、
特定の記録時間中に、脳活動によって発出および/または誘導された複数の電気生理学的信号を、脳を保護する頭蓋の頭皮のほぼ一面に散在させられた複数の電極から獲得し、脳活動分析データベースを構成するために、前記電気生理学的信号をデジタル化するステップと、
連続断面から構成される脳の3次元画像から前記電極の位置の電子マップを獲得することにより、前記3次元画像から得られた大脳皮質の区分化に基づいて、前記電気生理学的信号、前記電極の位置の前記電子マップ、および前記脳の前記3次元脳画像の少なくとも1つから、前記脳内神経電気信号の前記神経電気発生源の空間的位置を決定するための逆問題の適用から、脳ボリューム内のすべての前記神経電気発生源を位置特定するステップと、
弁別神経ネットワークグループを検出し、前記動的機能画像を表現する基準状態のデータベースを構成するために、神経電気発生源を含む活性領域で、複数の周波数帯において神経電気発生源の対の間に存在する同調性の量を弁別するステップと、
から少なくとも成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記特定の記録時間中に獲得された動的機能画像について、前記機能画像を機能画像の複数のクラスのうちの1つのクラスの機能画像と一致させるステップからさらに成り、機能画像の前記複数のクラスのうちの各クラスが、被験者の脳の脳状態を特徴付けることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の電気生理学的信号を獲得するステップが、100ミリ秒未満の最大記録遅延でリアルタイムに達成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記記録時間が、1つまたは複数の認知状態に関係する脳の機能画像を記録および表現するための20分のオーダの最短記録時間から、脳の1つまたは複数の誘発性または非誘発性機能異常状態に関係する脳の機能画像を記録および表現するための数日の時間範囲に関して設定され得るパラメータであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
活性領域で神経電気発生源の対の間に存在する同調性の量を弁別するステップが、1つまたは複数の認知状態に関係する脳の機能画像を表現するためには、持続時間が15ミリ秒から2秒であるスライディング時間窓、また脳の1つまたは複数の誘発性または非誘発性機能異常状態に関係する脳の機能画像を表現するためには、持続時間が5秒から20秒である時間一致スライディング時間窓にそれぞれわたって、前記記録時間中に達成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの前記電気生理学的信号、前記電極の位置の前記電子マップ、および脳の前記3次元脳画像から、前記脳内神経電気信号の前記神経電気発生源の空間的位置を決定するための逆問題の適用が、
実質組織の区分化および表面メッシュによって導入される個々の解剖学的構造から導かれる制約を適用するステップと、
電気生理学的信号のマルチモード処理によって皮質電流を推定するステップと、
皮質表面のメッシュ、少なくとも1つの神経電気発生源を含む活性領域上の個別電流源の形式で、前記神経電気発生源の位置および機能パラメータを計算するステップと、
から少なくとも成ることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
神経電気発生源を含む前記活性領域で、ある周波数帯において、神経電気発生源の対の間に存在する同調性の量を弁別するステップが、1対の神経電気発生源からの2つの信号の間のPLS同期を、それらの信号間の位相差の円分散、またはその位相差の正規化シャノンエントロピを用いて、統計的に評価するステップを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
同調性が、神経電気発生源の前記対の活動の時間的表現を可能にする同調性時間範囲において確立されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
脳の動的機能画像であって、
各断面が前記脳の個別画像を表現する連続断面から構成される前記脳の3次元画像と、
少なくとも1つの個別画像における、マーカによって表される脳内神経電気信号の少なくとも1つの神経電気発生源であって、各神経電気発生源が、前記個別画像におけるその位置、その電流密度、およびその神経電気信号発出方向によって特徴付けられ、現在の個別画像のすべての神経電気発生源が、先行および/または後続する個別画像の神経電気発生源と隣接し、脳の前記動的機能画像を表現する機能状態を弁別する神経ネットワークの1グループを構成する、特定の一致時間にわたる実質的に同じ神経電気信号発出方向および同調性を有する、少なくとも1つの神経電気発生源と、
を少なくとも含むことを特徴とする脳の動的機能画像。
【請求項10】
複数の認知状態に関係する機能画像について、前記時間一致時間が、50ミリ秒から2秒であることを特徴とする、請求項9に記載の機能画像。
【請求項11】
1つまたは複数の誘発性または非誘発性機能異常状態に関係する機能画像についての前記時間一致時間が、5秒から20秒であることを特徴とする、請求項9に記載の機能画像。
【請求項12】
脳の動的機能画像を表現するための装置であって、
特定の記録時間中に、脳活動によって発出および/または誘導された複数の電気生理学的信号を、脳を保護する頭蓋の頭皮のほぼ一面に散在させられた複数の電極から獲得するため、ならびに脳活動分析データベースを構成するために、前記電気生理学的信号を保存およびバックアップするための手段と、
連続断面から構成される脳の3次元画像を獲得するための手段と、
大脳皮質の区分化を生成するために、前記電極の位置、および前記脳の前記3次元画像から、脳内神経電気信号の神経電気発生源の位置を計算するため、ならびに逆問題の適用を計算するための手段と、
弁別神経ネットワークグループを検出し、前記動的機能画像を表現する基準状態のデータベースを構築するために、神経電気発生源を含む活性領域で、複数の周波数帯において、電気生理学的信号-神経電気発生源の対の間に存在する同調性の量を弁別するための手段と、を少なくとも含むことを特徴とする装置。
【請求項13】
複数の電気生理学的信号を獲得する前記手段が、前記電極を構成する電磁気センサを取り付けられ、被験者の頭蓋の頭皮に押し当てられるセンサのネットワークを形成する、フレキシブルキャップを少なくとも含むことを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記被験者の視覚的および/または聴覚的刺激のための手段をさらに含むことを特徴とする、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
コンピュータによる実行のために記憶媒体に保存されるコンピュータプログラム製品であって、コンピュータによる実行中に、脳の動的機能画像を表現するための請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行することを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
警戒、注意深さ、ストレス、努力、疲労に、ある病理学的状態の非常に短期間の進展に、または中枢神経系に作用する薬物および/もしくは薬剤の作用に関係する状態のグループの間で異なる脳状態をシグネチャによって特徴付けるための、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法、請求項9から11のいずれか1項に記載の脳の動的機能画像、脳の動的機能画像を表現するための請求項12から14のいずれか1項に記載の装置、および請求項15に記載のコンピュータプログラム製品の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2009−502224(P2009−502224A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522004(P2008−522004)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001679
【国際公開番号】WO2007/010114
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】