説明

腐食を低減する組成物およびその使用

本発明は、水硬性組成物のための少なくとも1種類の減水剤と、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよびN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種類のアミノアルコールとを含む組成物に関する。本発明は、この組成物の、鋼材、特にプレキャスト部材の鋼製型枠またはコンクリート構造物の補強鋼材の腐食を低減するための使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材、特にプレキャスト部材の鋼製型枠またはコンクリート構造物の補強鋼材の腐食抑制剤の分野に関する。本発明は、特に、水硬性組成物のための少なくとも1種類の減水剤と、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよびN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種類のアミノアルコールとを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製型枠はセメントを打設するための型枠であり、プレキャスト部材とも称されるコンクリート建設部材を製造するため、その中に生コンクリートが入れられる。コンクリートの硬化後、鋼製型枠は一般に元通りに取り外される。鋼製型枠の腐食は、大きな問題であり、コンクリートの品質、特にコンクリート表面の品質の低下に繋がることがあり、例えば、打放しコンクリートに望ましくない錆の跡を残すことがある。錆を抑制するため、一般に、鋼製型枠を使用する前に、離型油とも称されるコンクリート離型剤が塗付される。これらの離型油には、それが腐食、およびそれゆえ錆の発生を限られた程度しか抑制できず、且つ、そのことに加えて、使用する毎にそれを各鋼製型枠に個々に塗布しなければならないという欠点があるが、それは不経済でもあり環境にも負担をかける。
【0003】
鋼材は建設物に補強材として広く普及している。特に重要なのはコンクリート用鋼材である。鋼材は水硬性材料に入れられ、これを強化する。鋼材は、特に綱状で、特に棒または格子として使用され、専門家はしばしば補強材または鉄筋と呼ぶ。水硬性材料中に存在する鋼材の腐食は、経済的に非常に重要である。鋼製補強材の腐食によってその強度、および、それゆえコンクリートの強度が低下する。さらにまた、例えば、酸化鉄または水和酸化鉄のような腐食生成物は、腐食されていない鋼材自体よりも大きい体積を有する。その結果として、コンクリート中に圧力が生じ、それはコンクリート片全体の亀裂または剥落に繋がる可能性がある。
【0004】
生コンクリートに、例えば、亜硝酸塩、アミン、アルカノールアミン、これらと無機酸または有機酸またはリン酸エステルとの混合物、などの腐食抑制剤を添加すること、あるいは、硬化した鉄筋コンクリートの表面を浸透性腐食抑制剤で処理することが知られている。しかし、その作用を発揮できるようにするためには、腐食抑制剤を多量に使用しなければならないが、これは経済的にも生態学的にも欠点となり得る。
【0005】
いわゆるコンクリート減水剤の使用はかなり以前から知られている。例えば、(特許文献1)、または(特許文献2)から、エステル側鎖および場合によってはアミド側鎖を有する(メタ)アクリレート−ポリマーがコンクリート減水剤として適していることが知られている。ここで、このコンクリート減水剤はセメントに添加剤として添加され、またはセメントに粉砕前に添加され、大幅な流動化、或いは、それから製造されるコンクリートまたはモルタルの水の必要量の低減に導く。
【特許文献1】EP 1 138 697 B1
【特許文献2】EP 1 061 089 B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服する、腐食を低減するための組成物、特に鋼製型枠または補強鋼材の腐食を低減するための組成物を提供することである。意外なことには、水硬性組成物のための少なくとも1種類の減水剤と、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよびN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種類のアミノアルコールとを含む組成物が、鋼製型枠または補強鋼材の腐食を抑制するか、または低減するのに非常に適していることが分かった。それに加えて、このような組成物は優れた施工性および高い安定性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、水硬性組成物のための少なくとも1種類の減水剤と、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよびN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種類のアミノアルコールとを含むか、またはそれらからなる組成物に関する。少なくとも1種類の減水剤と、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールとを含むか、またはそれらからなる組成物が特に好ましい。N−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンはまた、2−[(3−アミノプロピル)メチルアミノ]エタノール(CAS番号41999−70−6)とも称される。
【0008】
本発明による組成物の少なくとも1種類のアミノアルコールは、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、またはN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミン、または、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールとN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンとの混合物である。
【0009】
減水剤は、水硬性組成物を流動化させるのに適したもの、または水硬性組成物の水の必要量を低減するのに適しているものである。本発明において、「減水剤(Verflussiger)」には、高性能減水剤(Superverflussiger)が含まれ、これは流動化剤(Fliessmittel)と称されることも多い。
【0010】
好ましい実施形態では、減水剤はポリカルボキシレート、好ましくはポリカルボキシレートエーテル(PCE)を含有するか、またはそれからなる。好ましくは、ポリカルボキシレートは、式(I):
【化1】

の少なくとも1種類のポリマーAを含有するか、またはそれらからなる。
【0011】
式中、Mはそれぞれ互いに独立に、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、2価または3価の金属イオン、アンモニウムイオン、または有機アンモニウム基を表す。「互いに独立に」の用語は、ここで、および以下でそれぞれ、1つの置換基が同一の分子内で異なる使用可能な意味を有し得ることを意味する。したがって、例えば、式(I)のポリマーAにカルボン酸基とカルボン酸ナトリウム基を同時に有することができる、即ち、これらの場合、Rは、互いに独立に、HであってもNaであってもよい。
【0012】
当業者であれば、第一に、イオンMが結合しているのはカルボキシレートであること、第二に、多価イオンMは対イオンによって電荷が釣り合っていなければならないことが明らかである。
【0013】
さらに、置換基Rは、それぞれ互いに独立に、水素またはメチルを表す。即ち、ポリマーAは、置換されたポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、またはポリ((メタ)−アクリレート)である。
【0014】
さらに、置換基RおよびRは、それぞれ互いに独立に、C〜C20アルキル、シクロアルキル、アルキルアリールまたは−[AO]−Rを表す。式中、Aは、C〜Cアルキレン基を表し、Rは、C〜C20アルキル基、シクロヘキシル基、またはアルキルアリール基を表し、nは2〜250、特に8〜200、特に好ましくは11〜150の値を表す。
【0015】
さらに、置換基Rは、それぞれ互いに独立に、−NH、−NR、−ORNRを表す。式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、H、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、もしくはアリール基、またはヒドロキシアルキル基、または、アセトキシエチル基(CH−CO−O−CH−CH−)、もしくはヒドロキシイソプロピル基(HO−CH(CH)−CH−)、もしくはアセトキシイソプロピル基(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)を表し、または、RおよびRは一緒になって−NRの窒素がその一部である環を形成してモルホリン環またはイミダゾリン環を構成する。さらに、式中、置換基RおよびRは、それぞれ互いに独立に、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基、またはヒドロキシアルキル基を表し、Rは、直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキレン基、特にC〜Cアルキレンの異性体、特にエチレン、プロピレン、イソプロピレン、または−C(CH−CH−を表す。
【0016】
最後に、記号a、b、cおよびdは、式(I)のポリマーA中のこれらの構成要素のモル比を表す。これらの構成要素は、互いに、
a/b/c/d=(0.05〜0.9)/(0.05〜0.9)/(0〜0.8)/(0〜0.5)、
特に、a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.5)/(0〜0.1)、
好ましくは、a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.3)/(0〜0.06)、
の比で存在し、合計a+b+c+d=1である。合計c+dは、好ましくは0より大きい。
【0017】
典型的には、式(I)のポリマーAの含有率は、減水剤の重量を基準にして、10〜100重量%、特に25〜50重量%である。
【0018】
ポリマーAは、以下の各モノマー:
【化2】

のラジカル重合によって、または、式(III):
【化3】

のポリカルボン酸のいわゆるポリマー類似体変換反応によって製造することができる。
【0019】
ポリマー類似体変換反応では、ポリカルボン酸を、適切なアルコール、アミンを用いてエステル化またはアミド化する。ポリマー類似体変換反応の詳細は、例えば、EP1 138 697 B1の7頁20行目〜8頁50行目ならびにその実施例に、またはEP1 061 089 B1の4頁54行目〜5頁38行目ならびにその実施例に開示されている。その変形態様では、EP1 348 729 A1の3頁〜5頁、ならびにその実施例に記載されているように、ポリマーAを固体凝集体の状態で製造することができる。
【0020】
ポリマーの特に好ましい実施形態は、c+d>0、特にd>0のものであることが分かった。R基としては、特に−NH−CH−CH−OHが特に有利であることが分かった。このようなポリマーAは、化学的に結合したエタノールアミンを有するが、それは脱離され得る。エタノールアミンは、極めて有効な腐食抑制剤である。腐食抑制剤が化学的結合されているため、臭いは、それが単に混合されている場合と比較して大幅に低減されている。さらに、このようなポリマーAはまた非常に優れた減水剤特性を示すことも確認された。
【0021】
別の好ましい実施形態では、本発明による組成物の減水剤は、少なくとも1種類の多糖類、ビニル系コポリマー、または少なくとも1種類のスルホン酸塩(好ましくは、リグニンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、またはメラミンスルホン酸塩をベースにするもの)を含有するか、またはそれらからなる。ビニル系コポリマーは、好ましくは、ポリビニルアルコールまたはポリビニルエーテルをベースにするものである。好ましくは、減水剤は、リグニンスルホン酸Na、Ca、もしくはMg、ナフタリンスルホン酸Na、Ca、もしくはMg、メラミンスルホン酸NaもしくはCa、スルホン化メラミン−もしくはナフタリン−ホルムアルデヒド縮合体を含有するか、それらからなるか、またはそれらをベースにする。リグニンスルホン酸Naまたはナフタリンスルホン酸Naが特に好ましい。
【0022】
別の実施形態では、本発明による組成物は、さらなる添加剤、好ましくは溶媒、特に水を含有することができる。好ましくは、本発明による組成物は、分散体、特に水性分散体、または溶液、特に水溶液である。
【0023】
使用される溶媒として適しているのは、水および有機溶媒である。溶媒の選択は、技術的観点からの考慮だけでなく、生態学的観点、例えば、毒性、水質汚染分類(Wasseegefardungsklassen)、または生分解性なども考慮して行われる。
【0024】
有用な有機溶媒は、アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、多価アルコール(エチレングリコール、グリセリンなど)、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコールなど)、およびエーテルアルコール(ブチルグリコール、メトキシプロパノールなど)、およびアルキルポリエチレングリコールであり、アルデヒド、エステル、エーテル、アミド、またはケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン、炭化水素、特にメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、ヘプタン、シクロヘキサン、キシロレン、トルエン、ホワイトスピリット、ならびにこれらの混合物も適している。酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはヘプタン、ならびにこれらの混合物が好ましい。
【0025】
水は溶媒として特に好ましい。さらに、水の含有率が50重量%より高い、好ましくは65重量%より高い、特に80重量%より高い、水とアルコールとの混合物が好ましい。
【0026】
リグニンスルホン酸Naまたはナフタリンスルホン酸Naと、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールと、水とからなる組成物が特に好ましい。
【0027】
さらなる添加剤の例は、コンクリート技術で周知の混和剤、特に界面活性剤、熱および光に対する安定剤、離型剤、6価クロム溶出低減剤(Chromatreduzierer)、着色剤、脱泡剤、促進剤、遅延剤、別の腐食抑制剤、空気連行物質または脱気物質、起泡剤、ポンプ圧送助剤、粘度調整剤、疎水剤、またはチキソトロープ剤、収縮低減剤である。
【0028】
アミノアルコールの含有率は、組成物の総重量を基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0029】
少なくとも1種類の減水剤の含有率は、組成物の総重量を基準にして、10〜99.9重量%、好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは80〜90重量%である。
【0030】
水または溶媒の含有率は、組成物の総重量を基準にして、0〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。
【0031】
別の態様では、本発明は、本発明による組成物と、さらに少なくとも1種類の水硬性結合材とを含有するか、またはそれらからなる水硬性組成物に関する。水硬性結合材は、好ましくは、例えば、セメント、石膏、フライアッシュ、シリカフューム、クリンカ、高炉スラグ微粉末、石灰石フィラーまたは生石灰などの鉱物性結合材料である。好ましい水硬性結合材は、少なくとも1種類のセメント、特に、欧州規格EN197に準拠した少なくとも1種類のセメント、または、無水物、半水和、もしくは二水和石膏の形態の硫酸カルシウム;または水酸化カルシウムを含む。ポルトランドセメント、スルホアルミン酸系セメント、およびアルミナセメント、特にポルトランドセメントが好ましい。セメントの混合物を使用すると、特に優れた特性が得られることがある。急速な硬化のために、好ましくは急結性セメント結合材(Schnellbindemittel)が使用されるが、これは、少なくとも1種類のアルミナセメント、または、例えば、アルミネート供与クリンカなどの別のアルミネート源、および、場合によって、無水物、半水和、もしくは二水和石膏の形態の硫酸カルシウム;および/または水酸化カルシウムを含有する。水硬性結合材の成分として、セメント、特にポルトランドセメントが好ましい。特にクロム酸塩の少ない(chromatarmer)セメントが特に好ましい。
【0032】
本発明による組成物は、好ましくは、本発明による組成物の含有率が、水硬性結合材の重量を基準にして0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%、特に好ましくは0.4〜1.5重量%となるように水硬性結合材に配合される。
【0033】
本発明による組成物は、アミノアルコールである2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールまたはN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンと、少なくとも1種類の減水剤との混合によって製造されるが、ここで、順番、即ち、最初にアミノアルコールを添加するかまたは最初に減水剤を添加するかは重要でない。水性組成物または水溶液の製造は、減水剤の製造時に、特に式(I)のポリマーAの製造時に水または有機溶媒を添加することによって実施するか、あるいは、減水剤、アミノアルコール、または、減水剤およびアミノアルコールを、水または有機溶媒と一緒に混合することによって実施する。好ましくは、減水剤を、水または有機溶媒と、好ましくは水と、一緒に混合し、続いてアミノアルコールを添加する。本発明による組成物は、透明または不透明な溶液としてまたは分散体(エマルションまたは懸濁液)として存在し得る。
【0034】
水硬性組成物の製造時に、本発明による組成物は、好ましくは、水硬性組成物、好ましくは無水のコンクリート混合物に、練混ぜ水と同時に添加されるか、または、練混ぜ水の添加後に最後に水硬性組成物に混入される。
【0035】
別の態様では、本発明は、鋼材の腐食、特にプレキャスト部材の鋼製型枠またはコンクリート構造物の補強鋼材の腐食を低減または抑制するための本発明による組成物の使用に関する。本発明による組成物は、プレキャスト部材の製造に使用される鋼製型枠の腐食を低減または抑制するために特に適している。
【0036】
別の態様では、本発明は、プレキャスト部材の鋼製型枠またはコンクリート構造物の補強鋼材の腐食を低減または抑制するための2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび/またはN−アミノプロピルモノメチルエタノールアミンの使用に関する。
【0037】
別の態様では、本発明は、プレキャスト部材の鋼製型枠またはコンクリート構造物の鋼製補強材の腐食を低減する方法に関し、ここで、本発明による組成物は生コンクリートに添加され、生コンクリートは鋼材と接触させられる。
【0038】
本発明の別の対象は、鋼製型枠の腐食に対してまたは鋼製補強材の腐食に対して保護されたコンクリート構造物であり、それは少なくとも1種類の本発明による組成物を含む。コンクリート構造物は、有利には、地上建設または地下建設の建設物または建設部材、特に建築物またはトンネル、道路または橋梁、特にプレキャスト部材から造られる建設物である。
【0039】
従って、本発明の別の対象は、また、本発明による組成物を含むプレキャスト部材である。プレキャスト部材は、例えば、管、壁版、天井版若しくは床版、配管部材、支柱、橋桁、橋セグメント、梁、階段、または踊り場である。
【0040】
本発明による組成物は、水硬性組成物のための減水剤として、および鋼材のための腐食抑制剤として同時に作用するという利点を有する。これによって、腐食防止は、減水剤の使用によりコンクリートの製造時に必要な練混ぜ水の量が減少し、それによって水/セメント比(w/c比)が低下するため、アミノアルコールによる腐食抑制作用を超えてさらに改善される。水/セメント比が低いほど、コンクリートと接触する鋼製型枠または鋼製補強材は腐食しにくい。
【0041】
この実施形態によれば、もはや減水剤または腐食抑制剤を後で添加混合する必要はなく、そのためセメントの使用時の作業工程が省かれる。従って、このようなセメントは「すぐに使用できる」製品であり、これは大量に製造することができる。
【0042】
本発明による組成物の別の利点は、腐食抑制剤を直接、水硬性組成物中に入れることができ、鋼製金型または鋼製補強材を使用する前に、鋼製型枠または鋼製補強材に腐食抑制剤を塗布する必要がないことである。これによって腐食防止が改善され、時間が節約される。
【実施例】
【0043】
実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0044】
1.1使用した原料
【表1】

【0045】
1.2使用したポリマーA
【表2】

【0046】
表3に示すポリマーA−1は、対応するアルコールおよびアミンを用いるポリマー類似体変換反応により、ポリ(メタ)アクリル酸から周知の方法に従って製造した。このポリマーA−1はNaOHで一部中和された状態で存在する。(M=H、Na
【0047】
ポリマーAは、この実施例では水溶液として使用する。ポリマーの含有量は40重量%である。この水溶液をA−1Lと称する。以下の表に記載するA−1の濃度は、それぞれ水溶液A−1Lの含有量に基づく。
【0048】
【表3】

【0049】
2.減水剤およびアミノアルコールの鋼板上での腐食作用
セメント(CEM I 42.5R)5重量%を水95重量%と一緒に混合し、この混合物をろ過した。結果として、いわゆる「しょう液(Blutwasser)」が得られた。その後、しょう液とアミノアルコールまたは減水剤とからなる混合物、または、しょう液、アミノアルコール、および減水剤からなる混合物を製造し、この混合物各3滴を鋼板(20×20cm、ST35)上に塗布した。しょう液に添加したアミノアルコールまたは減水剤の添加量を、表4に示す。%の記載は、それぞれ、しょう液とアミノアルコール水溶液との混合物、またはしょう液と減水剤水溶液との混合物全体に基づく、アミノアルコール水溶液または減水剤水溶液の重量%である。
【0050】
【表4】

【0051】
3.モルタル混合物の鋼板上での腐食作用
標準モルタル混合物(Normmortelmischungen)(標準砂(Normsand)(規格(Norm)EN480による)1350g)、セメント(CEM I 42.5R)450g、水225g、w/c比0.5%)を、減水剤およびアミノアルコールからなる混合物と一緒に混合し、鋼板上に配置された白い帯状の濾紙(Weiβbandfilterpapier)上に厚さ1cmの層に塗布した。24時間後に、鋼板上での腐食強度を視覚的に評価した(表5)。添加量の%記載は、それぞれセメントの総重量を基準にしたアミノアルコール或いは減水剤の重量%である。
【0052】
【表5】

【0053】
4.コンクリート混合物のスランプ(Ausbreitmass)、圧縮強度、および空気量
EN934に準拠して、360kg/mのCEM I 52.5Rから、圧縮強度クラスC35/45、スランプクラスF5、最大粒度16mm(GK16)、水/セメント比(w/c比)0.45のコンクリート混合物を製造した。
【0054】
コンクリート混合物を、減水剤或いは減水剤/アミノアルコール混合物と一緒に混合し、EN12350に準拠してスランプを、EN12350に準拠して空気量を、ならびにEN12390に準拠して硬化したプリズムの圧縮強度を測定した。
【0055】
以下の減水剤およびアミノアルコールを試験した(表6):
【0056】
【表6】

【0057】
【表7】

【0058】
表7の結果から、減水剤とアミノアルコールとを有するコンクリート混合物の施工性およびコンシステンシーは、減水剤のみを有するコンクリート混合物と比較して同様程度に良好な状態を維持することが分かる。
【0059】
もちろん、本発明は示したおよび記載した実施例に限定されるものではない。本発明の前述の特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、記載された各組み合わせだけでなく、別の修正、組み合わせ、および変更でも、または単独でも使用可能であるのは自明のことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性組成物のための少なくとも1種類の減水剤と、
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよびN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種類のアミノアルコールと
を含む組成物。
【請求項2】
前記減水剤が、少なくとも1種類のポリカルボキシレート、好ましくは少なくとも1種類のポリカルボキシレートエーテルを含むか、またはそれからなることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリカルボキシレートが、式(I):
【化1】

〔式中、
Mは、それぞれ互いに独立に、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、2価または3価の金属イオン、アンモニウムイオン、または有機アンモニウム基を表し;
各Rは、他のRとは独立に、水素またはメチルであり;
およびRは、それぞれ互いに独立に、C〜C20アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、または−[AO]−R
(式中、Aは、C〜Cアルキレンであり、Rは、C〜C20アルキル、シクロヘキシル、またはアルキルアリールであり、nは2〜250である)
であり;
は、−NH、−NR、−ORNR
(式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、H、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、もしくはアリール基であるか、または
ヒドロキシアルキル基であるか、または
アセトキシエチル基(CH−CO−O−CH−CH−)、もしくはヒドロキシイソプロピル基(HO−CH(CH)−CH−)、もしくはアセトキシイソプロピル基(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)であるか、
あるいは、RおよびRが一緒になって、−NRの窒素がその一部である環を形成してモルホリン環またはイミダゾリン環を構成し、
は、C〜Cアルキレン基であり、
およびRは、それぞれ互いに独立に、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基、またはヒドロキシアルキル基である)
であり;かつ、
a、b、cおよびdは、モル比を表し、a/b/c/d=(0.05〜0.9)/(0.05〜0.95)/(0〜0.8)/(0〜0.5)であり、かつ、a+b+c+d=1である〕
の少なくとも1種類のポリマーAを含むか、またはそれからなることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
nは、8〜200、特に好ましくは、nは、11〜150であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.5)/(0〜0.1)、好ましくは、
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.3)/(0〜0.06)
であることを特徴とする、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
c+d>0であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記減水剤が、少なくとも1種類の多糖類、ビニル系コポリマー、またはスルホン酸塩、特にリグニンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、またはメラミンスルホン酸塩を含むか、またはそれらからなることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が分散体、特に水性分散体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、溶液、特に水溶液であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、さらなる添加剤、好ましくは溶媒または水をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アミノアルコールの含有率が、組成物の総重量を基準にして0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種類の減水剤の含有率が、組成物の総重量を基準にして10〜99.9重量%、好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは80〜90重量%であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物と、少なくとも1種類の水硬性結合材とを含む水硬性組成物。
【請求項14】
鋼材の腐食を低減するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
プレキャスト部材の鋼製型枠の腐食が低減されることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
コンクリート構造物の補強鋼材の腐食が低減されることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
プレキャスト部材の鋼製型枠の腐食を低減するための、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび/またはN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンの使用。
【請求項18】
コンクリート構造物の補強鋼材の腐食を低減するための、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび/またはN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンの使用。
【請求項19】
a)アミノアルコールである2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールまたはN−アミノプロピル−モノメチルエタノールアミンと、少なくとも1種類の減水剤とを混合する工程
を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を生コンクリートに添加し、前記生コンクリートを鋼材と接触させることを特徴とする、プレキャスト部材の鋼製型枠または鉄筋コンクリート構造物の鋼製補強材の腐食を低減する方法。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を含むコンクリート構造物。
【請求項22】
前記コンクリート構造物が、地上建設または地下建設の建設物または建設部材、特に建築物、道路、橋梁、またはトンネルであることを特徴とする、請求項21に記載のコンクリート構造物。
【請求項23】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を含むプレキャスト部材。

【公表番号】特表2009−529480(P2009−529480A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541747(P2008−541747)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068840
【国際公開番号】WO2007/060204
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】