腐食電位センサ
【課題】寿命をさらに延ばすことができる腐食電位センサを提供する。
【解決手段】腐食電位センサ10は、電極11、酸化イットリウム被覆層14、管状の絶縁体15、及び管状の金属筐体18を備えている。絶縁体15の両端部に、電極11及び金属筐体18がろう付けにより接続される。リード線19が、絶縁体15及び金属筐体18内を通り、電極11の内面に接続される。酸化イットリウム被覆層14は、腐食電位センサ10の周方向の全面に亘り、ろう付け部13、絶縁体15及びろう付け部16の外表面を連続して覆っている。酸化イットリウム被覆層14は、CVD装置を用いて形成される。
【解決手段】腐食電位センサ10は、電極11、酸化イットリウム被覆層14、管状の絶縁体15、及び管状の金属筐体18を備えている。絶縁体15の両端部に、電極11及び金属筐体18がろう付けにより接続される。リード線19が、絶縁体15及び金属筐体18内を通り、電極11の内面に接続される。酸化イットリウム被覆層14は、腐食電位センサ10の周方向の全面に亘り、ろう付け部13、絶縁体15及びろう付け部16の外表面を連続して覆っている。酸化イットリウム被覆層14は、CVD装置を用いて形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食電位センサに係り、特に、原子力プラント運転期間中に原子炉冷却水に接する金属材料の腐食電位を測定するのに好適な腐食電位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの稼働率向上の観点から、原子炉の炉内構造物及び圧力境界部材を構成する構造材料(ステンレス鋼、ニッケル基合金)及び配管を構成する材料(ステンレス鋼、低合金鋼、炭素鋼)の応力腐食割れや流動加速腐食を抑制することは、重要な課題である。
【0003】
応力腐食割れは、材料、応力及び腐食環境の3因子が特定の条件になった場合に発生するが、一因子を特定の条件から改善することにより抑制することができる。流動加速腐食も、材料及び腐食環境が特定の条件になった場合に発生し、一因子を特定の条件から改善することにより抑制することができる。
【0004】
応力腐食割れに対する腐食環境改善技術の従来技術の一例として、水素注入がある。原子炉内では、中性子やγ線により原子炉内の冷却水が放射線分解して、酸素及び過酸化水素が発生する。酸素及び過酸化水素を含んでいる冷却水が腐食環境を形成する。水素注入は、水素を注入した給水が原子炉内に供給されることによって、その水素を冷却水に含まれる酸素及び過酸化水素と反応させ、冷却水中の酸素及び過酸化水素の濃度を低減させる技術である。この水素注入は、原子炉の腐食環境を改善する技術である。一方、流動加速腐食に関する腐食環境改善技術の一例として酸素注入がある。給水中の酸素濃度が10μg/L以下になると、給水が流れる炭素鋼製の給水配管は給水による流動加速腐食により減肉する。酸素注入は給水に酸素を注入して、給水配管の流動加速腐食を抑制する技術である。
【0005】
腐食環境改善技術の改善効果の確認は、例えば、対象となる構造部材の腐食電位を測定することによって行われる。沸騰水型原子炉では、腐食電位を0.23V(SHE)以下に低減すると、応力腐食割れの発生を抑制できることが報告されている(R.L. Cowan, et al., "Experience with hydrogen water chemistry in boiling water reactors", Water Chemistry of Nuclear Reactor Systems 4, Bournemouth, U.K., Oct. 13-17, 1986, Vol.1, p.29 (1986)参照)。また、酸素を注入して腐食電位を0.2V(SHE)以上に増加させると流動加速腐食を抑制できることが報告されている(佐藤智徳 他、日本原子力学会「2005年秋の大会」、八戸工業大学、Aug.13-15, 2005, p.458 (2005)参照)。なお、V(SHE)とは標準水素電極に対する電位である。
【0006】
腐食電位を測定する腐食電位センサは、例えば、特開平3−17545号公報、特開2004−170421号公報、特開平11−148909号公報及び特開2000−147184号公報等に記載されている。
【0007】
特開平3−17545号公報は、白金を電極として使用する腐食電位センサを記述している。この腐食電位センサは、白金表面で水素の酸化還元反応を生じさせることにより電位を発生させる。
【0008】
特開2004−170421号公報は、ジルカロイ製の電極を使用する腐食電位センサを記載している。原子炉内の冷却水と接触するこのジルカロイ製電極の腐食により電位が発生する。ジルカロイ製電極は、銀ろう材にてセラミック絶縁体に取り付けられ、セラミック絶縁体はアダプタスリーブに活性ろう材により接合される。中心導線がジルカロイ製電極に接続される。特開2004−170421号公報は、さらに、ジルカロイ製電極の一部及びアダプタスリーブと共にセラミック絶縁体を、断熱層及び腐食保護層として機能するマグネシア部分安定化ジルコニウムまたはイットリア部分安定化ジルコニウムのプラズマ溶射で被覆することを記載している。
【0009】
特開平11−148909号公報に記載された腐食電位センサは、白金製の電極、サファイア製のセラミック絶縁体及び移行スリーブを有する。セラミック絶縁体の一端部に電極が取り付けられ、セラミック絶縁体の他端部に移行スリーブが取り付けられる。サファイア製のセラミック絶縁体の溶解を防止するため、マグネシア安定化ジルコニウムまたはイットリア安定化ジルコニウムで形成される皮膜が、そのセラミック絶縁体の表面、及びセラミック絶縁体と電極及び移行スリーブの隣接部分を覆っている。
【0010】
特開2000−147184号公報は、白金電極に単結晶イットリニア安定化ジルコニウム製の電気絶縁体の一端部を取り付け、この電気絶縁体の他端部に外部スリーブを取り付けた腐食電位センサを記載している。
【0011】
【特許文献1】特開平3−17545号公報
【特許文献2】特開2004−170421号公報
【特許文献3】特開平11−148909号公報
【特許文献4】特開2000−147184号公報
【非特許文献1】R.L. Cowan, et al., "Experience with hydrogen water chemistry in boiling water reactors", Water Chemistry of Nuclear Reactor Systems 4, Bournemouth, U.K., Oct. 13-17, 1986, Vol.1, p.29 (1986)
【非特許文献2】佐藤智徳 他、日本原子力学会「2005年秋の大会」、八戸工業大学、Aug.13-15, 2005, p.458 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
腐食電位センサを用いて腐食電位を長時間に亘って測定するためには、絶縁体、絶縁体と電極の接合部、及び絶縁体とスリーブの接合部の耐食性を向上させることが重要な課題である。測定対象部位に取り付けられるスリーブと電極が電気的に繋がると、測定対象部位の腐食電位を測定することができなくなる。絶縁体、絶縁体と電極の接合部、及び絶縁体とスリーブの接合部が腐食してセンサ内に水が入ると、電極とスリーブが電気的につながってしまい、腐食電位が測定できなくなる。
【0013】
腐食電位センサの腐食減肉を防止するため、前述したように、マグネシア部分安定化ジルコニウム、イットリア部分安定化ジルコニウム、マグネシア安定化ジルコニウムまたはイットリア安定化ジルコニウムで、絶縁体の表面、及び絶縁体と電極及びスリーブの各接合部を覆うことが行われている。さらには、絶縁体自体を単結晶イットリニア安定化ジルコニウムで作成している。マグネシア及びイットリニアは、1100℃付近に変態があるジルコニアのき裂発生を防止するための添加剤として用いられている(特許第2602192号公報、及び無機化学ハンドブック、1008頁から1009頁、無機化学ハンドブック編集委員会、1986年8月25日、技報堂出版株式会社発行を参照)。すなわち、ジルコニアは、1100℃付近に変態があるため、結晶が単斜晶から正方晶に転移する。このときの急激な体膨張に起因したジルコニアにおけるき裂の発生を防止するため、マグネシア、イットリニアなどの安定化剤を加えてジルコニアの結晶構造を全体的にまたは部分的に安定化することが行われている。このような安定化によって上記したイットリア安定化ジルコニアなどが得られる。
【0014】
但し、イットリア安定化ジルコニアは、原子炉内の冷却水等の200℃付近の高温水に長時間さらされると、結晶構造が正方晶から単斜晶への構造転移により破損する可能性がある。
【0015】
本発明の目的は、寿命をさらに延ばすことができる腐食電位センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、電極と、電極に接合される絶縁体と、絶縁体に接合される管状の金属筐体と、絶縁体及び金属筐体の内側に配置されて電極に接続される導線とを備え、
電極と絶縁体の第1接合部の外面、絶縁体と金属筐体の第2接合部の外面及び絶縁体の外面のうち少なくとも第1接合部及び第2接合部の各外面を、連続した酸化イットリウム層で覆ったことにある。
【0017】
水との接触により腐食しやすい第1接合部及び第2接合部の各外面が少なくとも連続した腐食速度の小さい酸化イットリウム層で覆われているので、第1接合部及び第2接合部の腐食を著しく抑制することができる。このため、腐食電位センサの寿命をさらに延ばすことができる。さらに、絶縁体の外面を連続した酸化イットリウム層で覆うことによって、絶縁体の腐食も抑制することができ、腐食電位センサの寿命をさらに延ばすことができる。
【0018】
上記の目的は、上記の第1接合部の外面、及び上記の第2接合部の外面を、酸化イットリウム層の替りに、連続した金属ジルコニウム層及びジルコニウムのアモルファス層のいずれかで覆うことによっても達成できる。水との接触により腐食しやすい第1接合部及び第2接合部の各外面が少なくとも連続した腐食速度の小さい金属ジルコニウム層及びジルコニウムのアモルファス層のいずれかで覆われているので、第1接合部及び第2接合部の腐食を著しく抑制することができる。このため、腐食電位センサの寿命をさらに延ばすことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、腐食電位センサの寿命をさらに延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明者らは、腐食電位センサの寿命をいかにして延ばすかについて検討を行った。このため、絶縁材であるサファイアに種々の化合物を化学気相成長法(CVDと称する)により被覆して得られた各試験片を高温高圧水に浸漬して、それらの試験片の腐食試験を行った。この腐食試験の結果を図4に示す。その腐食試験には、99.99wt%の単結晶サファイアに、酸化ジルコニウム、炭化シリコン及び酸化イットリウムをCVDにより別々に0.5〜1μmの厚みで被覆した各試験片を用いた。CVDによる被覆の形成は、被覆を比較的低温で形成することができ、被覆対象材への熱的負荷が小さいという利点がある。各試験片を溶存酸素8mg/kgを含む280℃の高温高圧水に400時間さらして、各試験片の腐食速度を求めた。さらに、それらの被覆のない99.99wt%の単結晶サファイア単独の試験片も用いた。なお、酸化ジルコニウム及び炭化シリコンは高温水中で腐食しにくいと報告されている材料である(N. Hiraide and K. Sugimoto, Boshoku-Gijyutsu, 37, p.415 (1988)及びM. Yoshimura, et al., J.Mater. Res., 1, p.100 (1986)を参照)。この結果、単結晶サファイアに酸化イットリウムを被覆した試験片の腐食速度は、被覆しなかった試験片のそれの1/3に低減された。従って、酸化イットリウムは、絶縁材であるサファイアの耐食性向上に好適な材料であることが実験により確認された。酸化イットリウムは、ジルコニアのように高温水中で構造転移を起こさないため、構造転移による破損も生じない。なお、酸化イットリウムを被覆した試験片は、酸化ジルコニウム及び炭化シリコンをそれぞれ被覆した各試験片よりも腐食速度が小さくなった。
【0021】
さらに、発明者らは、金属ジルコニウム、及び絶縁材のメタライズに使用されるタングステンを高温水に浸漬して同様な腐食試験を行った。この腐食試験の結果を図5に示す。金属ジルコニウム及びタングステンを、溶存酸素8mg/kgを含む280℃の高温高圧水に400時間さらして、腐食速度を求めた。図5に示すように、金属ジルコニウムがタングステンよりも腐食速度が小さく、耐食性に優れることが分かった。金属ジルコニウムは、腐食するとZrO2になって水中に溶出せずに表面に残り、保護膜として作用する。このように、ZrO2が生成されることによって、図5に示すように金属ジルコニウムの重量が若干増加するのである。金属ジルコニウム、絶縁材として使用されるサファイア及びジルコニア、及びスリーブ(金属筐体)に使用されるFe−29Ni−17Co合金の各線膨張率の温度依存性を、図6に示す。被覆材料と被覆される部材(絶縁材及びスリーブ)の線膨張率が異なると、温度が変化したときに応力がかかって被覆材料が剥離する可能性がある。金属ジルコニウムは、絶縁材であるサファイア及びやジルコニア、及びスリーブに使用されるFe−29Ni−17Co合金と線膨張率が近いため、温度変化時しても剥離しにくい。以上のことから、金属ジルコニウムも、絶縁体と電極の接合部、及びスリーブと絶縁体の接合部の耐食性向上に好適な材料である。金属ジルコニウムの絶縁材外表面等への被覆は、CVDを用いて行うことが望ましい。ジルコニウムのアモルファスでも、金属ジルコニウムと同様な特性が得られた。なお、ジルコニウムのアモルファスは、ジルコニウムを、CVDを用いて被覆される部材の表面に被覆することによって形成される。
【0022】
金属ジルコニウムの腐食電位の、酸素濃度に対する依存性を、図7に示す。発明者らは、金属ジルコニウムを280℃の高温高圧水にさらして、外部参照電極を用いて金属ジルコニウムの腐食電位を測定した。金属ジルコニウムは、酸素濃度に依存せずに高温水中で一定の電位を生じるため腐食電位センタの電極材として使用できることが分かった。この方法により、金属ジルコニウムを、腐食電位センサの電極材として用い、さらに、絶縁材と電極の接合部、及びスリーブと絶縁材の接合部の腐食抑制のための被覆材として用いることによって、腐食電位センサの寿命を長くすることが可能である。
【0023】
以上の発明者らの検討結果に基づいて成された本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の好適な一実施例である実施例1の腐食電位センサを、図1〜図3を用いて以下に説明する。本実施例の腐食電位センサ10は、例えば、沸騰水型原子炉(BWR)プラントに適用される。まず、腐食電位センサ10が適用されるBWRプラントの概略構成を、図2を用いて説明する。
【0025】
BWRプラントは、原子炉30、給水系、再循環系、主蒸気系、タービン37、復水器38及び原子炉浄化系を備える。原子炉30は、原子炉圧力容器31(RPVという)を有し、炉心32がRPV31内に配置されている。複数の燃料集合体(図示せず)が炉心32内に装荷されている。給水系は復水器38とRPV31を連絡する給水配管39を有する。給水ポンプ40が給水配管39に設けられる。主蒸気系は、RPV31とタービン37を連絡する主蒸気配管36を有する。再循環系は、RPV31に連絡される再循環系配管34、及び再循環系配管34に設けられた再循環ポンプ35を有する。RPV31及び再循環系は原子炉格納容器46内に設置されている。原子炉浄化系は、再循環系配管34と給水配管36に接続される浄化系配管41、及び浄化系配管41に設けられた浄化系ポンプ42及び浄化装置43を有する。水素注入装置45が給水配管36に接続される。
【0026】
RPV31内の冷却水(炉水)は、炉心32内で燃料集合体に含まれる核燃料物質の核分裂によって発生する熱で加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV31から排出されて主蒸気配管36を通ってタービン37に供給され、タービン37を回転させる。タービン37に連結された発電機が回転されて電力が発生する。タービン37から排出された蒸気は、復水器38で凝縮されて水になる。この凝縮水である給水が、給水ポンプ40で昇圧され、給水配管39を通ってRPV31に供給される。水素が、水素注入装置45から給水配管39内を流れる給水に注入され、給水と共にRPV31内に導かれる。炉水はこの水素を含んでいる。
【0027】
蒸気にならなかった大部分の炉水は、RPV31内に設置された気水分離器(図示せず)によって蒸気から分離される。分離された炉水は、RPV31と炉心32の間に形成されるダウンカマ33内を下降して、再循環系配管34内に流入する。再循環ポンプ35は、この炉水を昇圧する。昇圧された炉水は、ダウンカマ33内に設置されたジェットポンプ(図示せず)内に噴出され、ダウンカマ33内の炉水をジェットポンプ内に吸い込む。ジェットポンプから吐出された炉水は、炉心32に供給される。給水配管39によって導かれた水素を含む給水は、気水分離器によって分離された炉水とダウンカマ33内で混合される。再循環系配管34内に流入した炉水の一部は、浄化系配管41に導かれ、浄化系配管41に設けられた浄化装置43によって浄化される。この浄化装置43から排出された炉水は、浄化系配管41及び給水配管39を通ってRPV31内に戻される。RPV31の底部に接続されたボトムドレン配管44が炉浄化系配管41に接続される。
【0028】
腐食電位センサ10は、再循環系配管34及びボトムドレン配管44にそれぞれ設置される。再循環系配管34に設置された腐食電位センサ10を腐食電位センサ10a、ボトムドレン配管44に設置された腐食電位センサ10を腐食電位センサ10bと称する。腐食電位センサ10a,10bは、それぞれ後述する腐食電位センサ10の構成を有する。
【0029】
本実施例の腐食電位センサ10の具体的な構成を、図1を用いて説明する。腐食電位センサ10は、電極11、酸化イットリウム被覆層14、円筒状の絶縁体15、円筒状の金属筐体(スリーブ)18を備えている。電極11は白金で構成される。電極11は、白金以外に、金属ジルコニウムまたはタングステンによって構成しても良い。絶縁体15はサファイアで構成される。ジルコニアによって絶縁体15を構成することも可能である。金属筐体18は環状のFe−29Ni−17Co合金によって構成されている。金属筐体18は、Fe−29Ni−17Co合金以外に、Fe−42Ni合金またはFe−36Ni合金によって構成しても良い。絶縁体15の両端部に、電極11及び金属筐体18がそれぞれ接続される。絶縁体15の一端部の、電極11との接合面には、メタライズ処理されたメタライズ処理部12が形成されている。絶縁体15の他端部の、金属筐体18との接合面には、メタライズ処理されたメタライズ処理部17が形成されている。先端が封鎖されてキャップ状になっている電極11は、その内面がメタライズ処理部12に接触した状態で、絶縁体15にろう付けにて接合される。13が電極11と絶縁体15のろう付け部である。金属筐体15は、その内面がメタライズ処理部17に接触した状態で、絶縁体15にろう付けにて接合される。16が電極11と絶縁体15のろう付け部である。リード線19が、絶縁体15及び金属筐体18内を通り、電極11の内面に接続される。封鎖部であるリード線引き出し冶具20が、金属筐体18の他端部に取り付けられて金属筐体18を封鎖する。リード線19はリード線引き出し冶具20を貫通して金属筐体18の外部、すなわち、腐食電位センサ10の外部に取り出される。
【0030】
リード線引き出し冶具20として、MIケーブル(MIはMineral Insulatedの略)が使用される。金属筐体18は、絶縁体15との接合部がFe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかであれば、それ以外の部分をステンレス鋼としてもよい。この場合、金属筐体18は、Fe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかとステンレス鋼を接合して構成される。絶縁体15の両端部のメタライズ処理には、タングステン、チタン及びモリブデン−マンガンのいずれかが使用される。
【0031】
酸化イットリウム被覆層14は、腐食電位センサ10の周方向の全面に亘り、ろう付け部13、絶縁体15及びろう付け部16の外表面を連続して覆っている。ろう付け部13,16が炉水と接しないように、酸化イットリウム被覆層14は、ろう付け部13,16の付近で電極11及び金属筐体18の一部の外表面を覆っている。酸化イットリウム被覆層14の形成によって、ろう付け部13,16及び絶縁体15は炉水と接触することはない。このような酸化イットリウム被覆層14の形成は、CVD装置を用いて行われる。リード線19が電極11に接続されて電極11及び金属筐体18が絶縁体15にろう付けされた、腐食電位センサ10の中間製品を、CVD装置(図示せず)内に入れる。CVD装置内において、プラズマ化されて生成されたイットリウムのイオンをろう付け部13,16及び絶縁体15の吸着させることによって、酸化イットリウム被覆層14を形成する。この酸化イットリウム被覆層14の厚みは、0.5〜1μm程度である。
【0032】
酸化イットリウムは導電性でないため、酸化イットリウム被覆層14を電極11の一端部と金属筐体18の一端部に跨って形成しても、電極11と金属筐体18が電気的に導通することはない。
【0033】
腐食電位センサ10のBWRプラントへの取り付け構造を、図3を用いて詳細に説明する。腐食電位センサ10a,10bの取り付け構造は同じであるため、腐食電位センサ10aを用いて説明する。腐食電位センサ10aを設置する取付け管部47を、再循環系配管34の測定対象箇所に分岐管状に取付ける。腐食電位センサ10aは、電極11が再循環系配管34の中心軸を向くように配置されて取付け管部47内に挿入され、取り付け管部47に取付けられる。取付け管部47の端部と腐食電位センサ10aの間は、再循環系配管34内を流れる炉水が漏洩しないように、シール部材にてシールされている。リード線19は取付け管部47の外部に達し、エレクトロメータ27に接続される。エレクトロメータ27に接続される他のリード線48は再循環系配管34に接続される。電極11と再循環系配管34は電気的に接触されていない。腐食電位センサ10bは、ボトムドレン配管44に設けられた取付け管部47(図示せず)に、腐食電位センサ10aと同様に取付けられる。
【0034】
腐食電位センサ10aは、電極11と再循環系配管34の間で発生する電位差を検出する。この電位差はエレクトロメータ27により測定され、エレクトロメータ27は測定した電位差に基づいて電極11近傍の再循環系配管34の腐食電位が求められる。
【0035】
本実施例は、ろう付け部13、絶縁体15及びろう付け部16の外表面を、腐食速度が著しく小さい酸化イットリウム被覆層14で連続して覆っているので、図4に示すように、ろう付け部13,16及び絶縁体15の耐食性を著しく向上させることができる。腐食電位センサ10a,10bの寿命を著しく延ばすことができ、長時間に亘って腐食電位を測定することができる。
【0036】
従来例の腐食電位センサに用いられたイットリニア安定化ジルコニアは、200℃の高温水に長時間さらすと、結晶構造が正方晶から単斜晶に構造転移により破損する可能性がある。しかしながら、酸化イットリウム被覆層14は、280℃の炉水に長時間さらされても構造転移を起こさないので、構造転移による破損が生じない。このため、酸化イットリウム被覆層14で覆われているろう付け部13,16及び絶縁体15の腐食は著しく低減される。
【0037】
また、従来例は、イットリニア部分安定化ジルコニウムのプラズマ溶射により腐食電位センサの絶縁体の外表面に、イットリニア部分安定化ジルコニウムの被覆を形成している。この溶射は、ミクロンオーダーの、イットリニア部分安定化ジルコニウムの粒子を吹き付けるので、絶縁体等の外表面に形成される被覆層ではその粒子間に隙間が生じ、絶縁体の腐食の原因となる炉水が浸透する可能性がある。また、高温でその粒子を絶縁体等の外表面に吹き付けるので、絶縁体等に熱的負荷がかかる。
【0038】
これに対し、本実施例は、CVD装置を用いて絶縁体14等の外表面に低温で酸化イットリウム被覆層14を形成するので、この被覆層14を形成する絶縁体14等に熱的負荷を与えることはない。また、酸化イットリウム被覆層14に、イットリニア部分安定化ジルコニウム被覆層のように粒子間に隙間が生じることもない。したがって、酸化イットリウム被覆層14を通して炉水が浸透することもない。
【0039】
再循環系配管34及びボトムドレン配管44にそれぞれ設置された腐食電位センサ10は著しく寿命が伸びるので、腐食電位センサ10交換の頻度が3年に1回程度になる。ちなみに、従来例は1年に1回程度交換していた。この腐食電位センサの交換は配管を切断することによって行われる。このため、腐食電位センサ10を用いた場合は、腐食電位センサ10の交換により発生する放射性廃棄物量を低減することができる。
【0040】
ろう付け部13,16が絶縁体15よりも腐食しやすいので、ろう付け部13,16のそれぞれの外表面、及びそれらの近傍における電極11、絶縁体15及び金属筐体18の部分の外表面を、連続した酸化イットリウム被覆層14で覆い、絶縁体15の外表面の大部分に酸化イットリウム被覆層14を形成しなくても良い。このような構造でも従来の腐食電位センサよりも寿命が長くなる。
【0041】
腐食電位センサ10は腐食電位を長時間に亘って測定することができるので、炉心流量などのBWRプラント運転条件が変化した場合でも、腐食環境改善技術を最適化でき、より経済的に腐食環境改善技術を運用できる。具体的には、腐食環境改善技術として水素注入技術を適用する場合、腐食電位を測定しながら水素注入濃度を制御することにより、注入する水素量を必要最低限の量に制御できる。
【実施例2】
【0042】
本発明の他の実施例である実施例2の腐食電位センサを、図8を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Aは、実施例1の腐食電位センサ10と異なり、電極11Aがキャップ状の絶縁体15A内に配置されている。電極11Aは、金属及び金属酸化物の混合物により構成される。絶縁体15Aの一端部は、金属筐体18との接合面にメタライズ処理部17が形成されている。このメタライズ処理部17の内側に挿入された金属筐体18が、メタライズ処理部17において絶縁体15Aとろう付けにより接合される。この接合によりろう付け部16が形成される。リード線19が電極11Aに接して金属筐体18内を通りリード線引き出し冶具20より外部に取り出される。
【0043】
絶縁体15Aは、酸素透過性の絶縁材で構成する必要があり、ジルコニアで製作することが望ましい。電極11Aを構成する金属と金属酸化物の混合物としては、銅と酸化銅、ニッケルと酸化ニッケル、銀と酸化銀、水銀と酸化水銀等のいずれかを用いることが好ましい。金属筐体18は、実施例1と同様な材料で構成される。
【0044】
本実施例は、酸化イットリウム被覆層14が腐食電位センサ10の周方向の全面に亘り、ろう付け部16の外表面を連続して覆っている。ろう付け部16が炉水に接しないように、酸化イットリウム被覆層14は、ろう付け部16付近で絶縁体15A及び金属筐体18のそれぞれの一部の外表面も覆っている。酸化イットリウム被覆層14はCVD装置を用いて形成される。酸化イットリウム被覆層14の厚みは0.5〜1μm程度である。
【0045】
本実施例も、実施例1と同様な効果を得ることができる。本実施例は、電極11Aを金属(例えば、ジルコニウム)と金属酸化物の混合物で構成しているので、金属だけで構成する場合よりも、電極11Aの寿命を延ばすことができる。
【0046】
本実施例のろう付け部16を、酸化イットリウム被覆層14の替りに金属ジルコニウム被覆層を形成しても良い。このジルコニウム被覆層は、CVD装置を用いて形成され、厚みが0.5〜1μm程度である。
【実施例3】
【0047】
本発明の他の実施例である実施例3の腐食電位センサを、図9を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Bは、実施例1の腐食電位センサ10の酸化イットリウム被覆層14を金属ジルコニウム被覆層50に替えた構成を有する。金属ジルコニウム被覆層50は、腐食電位センサ10Bの周方向の全面に亘り、ろう付け部13,16のそれぞれの外表面を連続して覆っている。金属ジルコニウム被覆層50は、さらに、ろう付け部13,16の付近で電極11、絶縁体15及び金属筐体18の一部の外表面を覆っている。ろう付け部13,16のそれぞれの外表面を覆った各金属ジルコニウム被覆層50は、互いに接触していない。これは、電極11と金属筐体18が電気的につながるのを防止するためである。金属ジルコニウム被覆層50はCVD装置を用いて形成される。その被覆層50の厚みは0.5〜1μm程度あれば十分である。CVD以外ではにめっきにより金属ジルコニウム被覆層50はめっきによって形成することも可能である。
【0048】
本実施例は、ろう付け部13,16のそれぞれを腐食速度が小さい金属ジルコニウム被覆層50が連続して覆っているので、ろう付け部13,16の腐食を抑制することができる。ろう付け部13,16は絶縁体15よりも腐食しやすいので、ろう付け部13,16を金属ジルコニウム被覆層50で覆うことによって、腐食電位センサ10Bの寿命を著しく延ばすことができる。ただし、腐食電位センサ10Bの寿命は、腐食電位センサ10よりも短くなる。本実施例における絶縁体15としては、サファイヤまたはジルコニアが用いられる。
【0049】
金属ジルコニウム被覆層50も280℃の炉水に長時間さらされても構造転移を起こさないので、構造転移による破損が生じない。このため、金属ジルコニウム被覆層50で覆われているろう付け部13,16及び絶縁体15の腐食は著しく低減される。
【0050】
本実施例において、金属ジルコニウム被覆層50をジルコニウムのアモルファス層に替えても良い。ジルコニウムのアモルファス層は、CVDを用いて形成することができる。
【実施例4】
【0051】
本発明の他の実施例である実施例4の腐食電位センサを、図10を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Cは、実施例3の腐食電位センサ10Bの絶縁体15の外表面に酸化イットリウム被覆層14を形成した構成を有する。腐食電位センサ10Bと同様にして、ろう付け部13,16のそれぞれの外表面、及びそれらの周辺部付近で電極11、絶縁体15及び金属筺体18の一部の各外表面にそれぞれ連続した金属ジルコニウム被覆層50を形成する。その後、絶縁体15の外表面に連続した酸化イットリウム被覆層14を形成する。腐食電位センサ10Cでは、酸化イットリウム被覆層14は、ろう付け部13,16を覆った各金属ジルコニウム被覆層50の一部と重なり、腐食電位センサ10Cの周方向の全面に亘り、絶縁体15の外表面を連続して覆っている。金属ジルコニウム被覆層50及び酸化イットリウム被覆層14はCVD装置を用いて形成される。それぞれの被覆層の厚みは0.5〜1μm程度である。
【0052】
本実施例は、実施例1及び3で生じる効果を得ることができる。
【実施例5】
【0053】
本発明の他の実施例である実施例5の腐食電位センサを、図11を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Dは、実施例3の腐食電位センサ10Bにおいて、電極11及びろう付け部13を覆う金属ジルコニウム被覆層50の替りに電極基部51及び金属ジルコニウム被覆層50Aを設けた構成を有する。電極基部51は、金属筐体18に用いられるFe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかによって作成されている。金属ジルコニウム被覆層50Aは、電極基部51、ろう付け部13及びろう付け部13の近傍の絶縁体15の各外表面をそれぞれ連続して覆っている。本実施例におけるろう付け部13は電極基部51と絶縁体15のろう付け部である。リード線19は電極基部51に接続されている。
【0054】
Fe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金は絶縁体15に用いられるサファイアまたはジルコニアとの接合性が良く他の金属及び合金よりも剥がれ難い。このため、絶縁体15と接合される電極基部51及び金属筐体18をFe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかによって作成することにより、電極基部51及び金属筐体18と絶縁体15の接合部がより剥がれにくくなり、腐食電位センサ10Dの寿命をより長くすることができる。
【0055】
電極基部51に用いられるFe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金はいずれも炉水の水質に依存して発生する電位が異なるため、電極基部51は適正な電極として作用しない。このため、本実施例は、電極基部51の外表面全面に金属ジルコニウム被覆層50Aを形成している。この金属ジルコニウム被覆層50Aは、ろう付け部13の外表面及びろう付け部13の近傍の絶縁体15の外表面も連続して覆っている。このような金属ジルコニウム被覆層50Aは、電極、及びろう付け部13の腐食を抑制する保護層として機能する。金属ジルコニウム被覆層50Aの替りに白金被覆層を、電極基部51の外表面、ろう付け部13の外表面及びろう付け部13の近傍の絶縁体15の外表面に連続して形成しても良い。
【0056】
本実施例は、実施例3の腐食電位センサ10Bで生じる効果を得ることができる。本実施例は、電極基部51を用いているので、電極基部51と絶縁体15の接合部がより剥がれにくくなり、腐食電位センサ10Dの寿命をより長くすることができる。
【実施例6】
【0057】
本発明の他の実施例である実施例6の腐食電位センサを、図12を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Eは、実施例5の腐食電位センサ10Dにおいて、電極基部51の先端に電極11Bを接合した構成を有する。電極11Bは実施例1における電極11と同じ材料で構成される。一方の金属ジルコニウム被覆層50は、電極基部51の外表面、電極基部51近傍の電極11Bの外表面、電極基部51と絶縁体15のろう付け部13の外表面、及びろう付け部13近傍の絶縁体15の外表面をそれぞれ覆っている。すなわち、金属ジルコニウム被覆層50は、腐食電位センサ10Dの周方向の全面に亘り、それらの外表面を連続して覆っている。
【0058】
本実施例は、実施例3の腐食電位センサ10Bで生じる効果を得ることができる。電極基部51は、まず、一端が電極11Bと接合され、その後、他端部が絶縁体15と接合される。逆に、電極基部51と絶縁体15を接合した後に、電極基部51と電極11Bを接合すると、電極基部51と絶縁体15のろう付け部13に熱的負荷及び機械的応力がかかり、ろう付け部13が破損される。電極基部51と電極11Bの接合を先に行うことによって、そのような問題が生じなくなる。なお、電極基部51と電極11Bの接合は、金属同士の接合であるため、電極基部51と絶縁体15の接合よりも強固になる。このため、電極基部51と電極11Bの接合を電極基部51と絶縁体15の接合によりも先に行っても、電極基部51と電極11Bの接合部に悪影響を与えることはない。
【実施例7】
【0059】
本発明の他の実施例である実施例7の腐食電位センサを、図13を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Fは、実施例5の腐食電位センサ10Dにおいて、金属ジルコニウム被覆層50Aと金属ジルコニウム被覆層50の間に、実施例4と同様に酸化イットリウム被覆層14を形成した構成を有する。この酸化イットリウム被覆層14は、腐食電位センサ10Cと同様に、絶縁体15の外表面を連続して覆っている。の腐食電位センサ10Bの絶縁体15の外表面に酸化イットリウム被覆層14を形成した構成を有する。
【0060】
本実施例は、腐食電位センサ10Dで生じる効果を得ることができる。さらに、酸化イットリウム被覆層14が絶縁体15の外表面を覆っているので、絶縁体15の腐食を抑制することができる。このため、本実施例の腐食電位センサ10Fの寿命は腐食電位センサ10Dよりも長くなる。
【0061】
実施例6の腐食電位センサ10Eにおいても、本実施例と同様に、2つの金属ジルコニウム被覆層50の間で絶縁体15の外表面に酸化イットリウム被覆層14を形成しても良い。
【0062】
実施例5及び6において、各金属ジルコニウム被覆層の替りに、酸化イットリウム被覆層をそれぞれ形成することも可能である。この場合には、絶縁体15の外表面にも酸化イットリウム被覆層を形成することが望ましい。
【0063】
以上に述べた各腐食電位センサは、加圧水型原子力プラント、火力プラント及び化学プラントにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の腐食電位センサの縦断面図である。
【図2】図1に示す腐食電位センサを取付けるBWRプラントの概略構成図である。
【図3】図1に示す腐食電位センサの、図2に示す再循環系配管への取付け状態を示す詳細構成図である。
【図4】絶縁材であるサファイア表面に各種材料の被覆層を形成した各試験片の腐食速度の測定結果を示す説明図である。
【図5】ジルコニウム及びタングステンの腐食速度の測定結果を示す説明図である。
【図6】各種材料の線膨張率の温度依存性を示す特性図である。
【図7】高温水中でのジルコニウムの腐食電位と溶存酸素濃度との関係を示す特性図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の腐食電位センサの縦断面図である。
【図9】本発明の他の実施例である実施例3の腐食電位センサの縦断面図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例4の腐食電位センサの縦断面図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例5の腐食電位センサの縦断面図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例6の腐食電位センサの縦断面図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例7の腐食電位センサの縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10,10A〜10F…腐食電位センサ、11,11A,11B…電極、12,17…メタライズ処理部、13,16…ろう付け部、14…酸化イットリウム被覆、15,15A…絶縁体、18…金属筐体、19…リード線、27…エレクトロメータ、50,50A…金属ジルコニウム被覆層、51…電極基部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食電位センサに係り、特に、原子力プラント運転期間中に原子炉冷却水に接する金属材料の腐食電位を測定するのに好適な腐食電位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの稼働率向上の観点から、原子炉の炉内構造物及び圧力境界部材を構成する構造材料(ステンレス鋼、ニッケル基合金)及び配管を構成する材料(ステンレス鋼、低合金鋼、炭素鋼)の応力腐食割れや流動加速腐食を抑制することは、重要な課題である。
【0003】
応力腐食割れは、材料、応力及び腐食環境の3因子が特定の条件になった場合に発生するが、一因子を特定の条件から改善することにより抑制することができる。流動加速腐食も、材料及び腐食環境が特定の条件になった場合に発生し、一因子を特定の条件から改善することにより抑制することができる。
【0004】
応力腐食割れに対する腐食環境改善技術の従来技術の一例として、水素注入がある。原子炉内では、中性子やγ線により原子炉内の冷却水が放射線分解して、酸素及び過酸化水素が発生する。酸素及び過酸化水素を含んでいる冷却水が腐食環境を形成する。水素注入は、水素を注入した給水が原子炉内に供給されることによって、その水素を冷却水に含まれる酸素及び過酸化水素と反応させ、冷却水中の酸素及び過酸化水素の濃度を低減させる技術である。この水素注入は、原子炉の腐食環境を改善する技術である。一方、流動加速腐食に関する腐食環境改善技術の一例として酸素注入がある。給水中の酸素濃度が10μg/L以下になると、給水が流れる炭素鋼製の給水配管は給水による流動加速腐食により減肉する。酸素注入は給水に酸素を注入して、給水配管の流動加速腐食を抑制する技術である。
【0005】
腐食環境改善技術の改善効果の確認は、例えば、対象となる構造部材の腐食電位を測定することによって行われる。沸騰水型原子炉では、腐食電位を0.23V(SHE)以下に低減すると、応力腐食割れの発生を抑制できることが報告されている(R.L. Cowan, et al., "Experience with hydrogen water chemistry in boiling water reactors", Water Chemistry of Nuclear Reactor Systems 4, Bournemouth, U.K., Oct. 13-17, 1986, Vol.1, p.29 (1986)参照)。また、酸素を注入して腐食電位を0.2V(SHE)以上に増加させると流動加速腐食を抑制できることが報告されている(佐藤智徳 他、日本原子力学会「2005年秋の大会」、八戸工業大学、Aug.13-15, 2005, p.458 (2005)参照)。なお、V(SHE)とは標準水素電極に対する電位である。
【0006】
腐食電位を測定する腐食電位センサは、例えば、特開平3−17545号公報、特開2004−170421号公報、特開平11−148909号公報及び特開2000−147184号公報等に記載されている。
【0007】
特開平3−17545号公報は、白金を電極として使用する腐食電位センサを記述している。この腐食電位センサは、白金表面で水素の酸化還元反応を生じさせることにより電位を発生させる。
【0008】
特開2004−170421号公報は、ジルカロイ製の電極を使用する腐食電位センサを記載している。原子炉内の冷却水と接触するこのジルカロイ製電極の腐食により電位が発生する。ジルカロイ製電極は、銀ろう材にてセラミック絶縁体に取り付けられ、セラミック絶縁体はアダプタスリーブに活性ろう材により接合される。中心導線がジルカロイ製電極に接続される。特開2004−170421号公報は、さらに、ジルカロイ製電極の一部及びアダプタスリーブと共にセラミック絶縁体を、断熱層及び腐食保護層として機能するマグネシア部分安定化ジルコニウムまたはイットリア部分安定化ジルコニウムのプラズマ溶射で被覆することを記載している。
【0009】
特開平11−148909号公報に記載された腐食電位センサは、白金製の電極、サファイア製のセラミック絶縁体及び移行スリーブを有する。セラミック絶縁体の一端部に電極が取り付けられ、セラミック絶縁体の他端部に移行スリーブが取り付けられる。サファイア製のセラミック絶縁体の溶解を防止するため、マグネシア安定化ジルコニウムまたはイットリア安定化ジルコニウムで形成される皮膜が、そのセラミック絶縁体の表面、及びセラミック絶縁体と電極及び移行スリーブの隣接部分を覆っている。
【0010】
特開2000−147184号公報は、白金電極に単結晶イットリニア安定化ジルコニウム製の電気絶縁体の一端部を取り付け、この電気絶縁体の他端部に外部スリーブを取り付けた腐食電位センサを記載している。
【0011】
【特許文献1】特開平3−17545号公報
【特許文献2】特開2004−170421号公報
【特許文献3】特開平11−148909号公報
【特許文献4】特開2000−147184号公報
【非特許文献1】R.L. Cowan, et al., "Experience with hydrogen water chemistry in boiling water reactors", Water Chemistry of Nuclear Reactor Systems 4, Bournemouth, U.K., Oct. 13-17, 1986, Vol.1, p.29 (1986)
【非特許文献2】佐藤智徳 他、日本原子力学会「2005年秋の大会」、八戸工業大学、Aug.13-15, 2005, p.458 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
腐食電位センサを用いて腐食電位を長時間に亘って測定するためには、絶縁体、絶縁体と電極の接合部、及び絶縁体とスリーブの接合部の耐食性を向上させることが重要な課題である。測定対象部位に取り付けられるスリーブと電極が電気的に繋がると、測定対象部位の腐食電位を測定することができなくなる。絶縁体、絶縁体と電極の接合部、及び絶縁体とスリーブの接合部が腐食してセンサ内に水が入ると、電極とスリーブが電気的につながってしまい、腐食電位が測定できなくなる。
【0013】
腐食電位センサの腐食減肉を防止するため、前述したように、マグネシア部分安定化ジルコニウム、イットリア部分安定化ジルコニウム、マグネシア安定化ジルコニウムまたはイットリア安定化ジルコニウムで、絶縁体の表面、及び絶縁体と電極及びスリーブの各接合部を覆うことが行われている。さらには、絶縁体自体を単結晶イットリニア安定化ジルコニウムで作成している。マグネシア及びイットリニアは、1100℃付近に変態があるジルコニアのき裂発生を防止するための添加剤として用いられている(特許第2602192号公報、及び無機化学ハンドブック、1008頁から1009頁、無機化学ハンドブック編集委員会、1986年8月25日、技報堂出版株式会社発行を参照)。すなわち、ジルコニアは、1100℃付近に変態があるため、結晶が単斜晶から正方晶に転移する。このときの急激な体膨張に起因したジルコニアにおけるき裂の発生を防止するため、マグネシア、イットリニアなどの安定化剤を加えてジルコニアの結晶構造を全体的にまたは部分的に安定化することが行われている。このような安定化によって上記したイットリア安定化ジルコニアなどが得られる。
【0014】
但し、イットリア安定化ジルコニアは、原子炉内の冷却水等の200℃付近の高温水に長時間さらされると、結晶構造が正方晶から単斜晶への構造転移により破損する可能性がある。
【0015】
本発明の目的は、寿命をさらに延ばすことができる腐食電位センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、電極と、電極に接合される絶縁体と、絶縁体に接合される管状の金属筐体と、絶縁体及び金属筐体の内側に配置されて電極に接続される導線とを備え、
電極と絶縁体の第1接合部の外面、絶縁体と金属筐体の第2接合部の外面及び絶縁体の外面のうち少なくとも第1接合部及び第2接合部の各外面を、連続した酸化イットリウム層で覆ったことにある。
【0017】
水との接触により腐食しやすい第1接合部及び第2接合部の各外面が少なくとも連続した腐食速度の小さい酸化イットリウム層で覆われているので、第1接合部及び第2接合部の腐食を著しく抑制することができる。このため、腐食電位センサの寿命をさらに延ばすことができる。さらに、絶縁体の外面を連続した酸化イットリウム層で覆うことによって、絶縁体の腐食も抑制することができ、腐食電位センサの寿命をさらに延ばすことができる。
【0018】
上記の目的は、上記の第1接合部の外面、及び上記の第2接合部の外面を、酸化イットリウム層の替りに、連続した金属ジルコニウム層及びジルコニウムのアモルファス層のいずれかで覆うことによっても達成できる。水との接触により腐食しやすい第1接合部及び第2接合部の各外面が少なくとも連続した腐食速度の小さい金属ジルコニウム層及びジルコニウムのアモルファス層のいずれかで覆われているので、第1接合部及び第2接合部の腐食を著しく抑制することができる。このため、腐食電位センサの寿命をさらに延ばすことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、腐食電位センサの寿命をさらに延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明者らは、腐食電位センサの寿命をいかにして延ばすかについて検討を行った。このため、絶縁材であるサファイアに種々の化合物を化学気相成長法(CVDと称する)により被覆して得られた各試験片を高温高圧水に浸漬して、それらの試験片の腐食試験を行った。この腐食試験の結果を図4に示す。その腐食試験には、99.99wt%の単結晶サファイアに、酸化ジルコニウム、炭化シリコン及び酸化イットリウムをCVDにより別々に0.5〜1μmの厚みで被覆した各試験片を用いた。CVDによる被覆の形成は、被覆を比較的低温で形成することができ、被覆対象材への熱的負荷が小さいという利点がある。各試験片を溶存酸素8mg/kgを含む280℃の高温高圧水に400時間さらして、各試験片の腐食速度を求めた。さらに、それらの被覆のない99.99wt%の単結晶サファイア単独の試験片も用いた。なお、酸化ジルコニウム及び炭化シリコンは高温水中で腐食しにくいと報告されている材料である(N. Hiraide and K. Sugimoto, Boshoku-Gijyutsu, 37, p.415 (1988)及びM. Yoshimura, et al., J.Mater. Res., 1, p.100 (1986)を参照)。この結果、単結晶サファイアに酸化イットリウムを被覆した試験片の腐食速度は、被覆しなかった試験片のそれの1/3に低減された。従って、酸化イットリウムは、絶縁材であるサファイアの耐食性向上に好適な材料であることが実験により確認された。酸化イットリウムは、ジルコニアのように高温水中で構造転移を起こさないため、構造転移による破損も生じない。なお、酸化イットリウムを被覆した試験片は、酸化ジルコニウム及び炭化シリコンをそれぞれ被覆した各試験片よりも腐食速度が小さくなった。
【0021】
さらに、発明者らは、金属ジルコニウム、及び絶縁材のメタライズに使用されるタングステンを高温水に浸漬して同様な腐食試験を行った。この腐食試験の結果を図5に示す。金属ジルコニウム及びタングステンを、溶存酸素8mg/kgを含む280℃の高温高圧水に400時間さらして、腐食速度を求めた。図5に示すように、金属ジルコニウムがタングステンよりも腐食速度が小さく、耐食性に優れることが分かった。金属ジルコニウムは、腐食するとZrO2になって水中に溶出せずに表面に残り、保護膜として作用する。このように、ZrO2が生成されることによって、図5に示すように金属ジルコニウムの重量が若干増加するのである。金属ジルコニウム、絶縁材として使用されるサファイア及びジルコニア、及びスリーブ(金属筐体)に使用されるFe−29Ni−17Co合金の各線膨張率の温度依存性を、図6に示す。被覆材料と被覆される部材(絶縁材及びスリーブ)の線膨張率が異なると、温度が変化したときに応力がかかって被覆材料が剥離する可能性がある。金属ジルコニウムは、絶縁材であるサファイア及びやジルコニア、及びスリーブに使用されるFe−29Ni−17Co合金と線膨張率が近いため、温度変化時しても剥離しにくい。以上のことから、金属ジルコニウムも、絶縁体と電極の接合部、及びスリーブと絶縁体の接合部の耐食性向上に好適な材料である。金属ジルコニウムの絶縁材外表面等への被覆は、CVDを用いて行うことが望ましい。ジルコニウムのアモルファスでも、金属ジルコニウムと同様な特性が得られた。なお、ジルコニウムのアモルファスは、ジルコニウムを、CVDを用いて被覆される部材の表面に被覆することによって形成される。
【0022】
金属ジルコニウムの腐食電位の、酸素濃度に対する依存性を、図7に示す。発明者らは、金属ジルコニウムを280℃の高温高圧水にさらして、外部参照電極を用いて金属ジルコニウムの腐食電位を測定した。金属ジルコニウムは、酸素濃度に依存せずに高温水中で一定の電位を生じるため腐食電位センタの電極材として使用できることが分かった。この方法により、金属ジルコニウムを、腐食電位センサの電極材として用い、さらに、絶縁材と電極の接合部、及びスリーブと絶縁材の接合部の腐食抑制のための被覆材として用いることによって、腐食電位センサの寿命を長くすることが可能である。
【0023】
以上の発明者らの検討結果に基づいて成された本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の好適な一実施例である実施例1の腐食電位センサを、図1〜図3を用いて以下に説明する。本実施例の腐食電位センサ10は、例えば、沸騰水型原子炉(BWR)プラントに適用される。まず、腐食電位センサ10が適用されるBWRプラントの概略構成を、図2を用いて説明する。
【0025】
BWRプラントは、原子炉30、給水系、再循環系、主蒸気系、タービン37、復水器38及び原子炉浄化系を備える。原子炉30は、原子炉圧力容器31(RPVという)を有し、炉心32がRPV31内に配置されている。複数の燃料集合体(図示せず)が炉心32内に装荷されている。給水系は復水器38とRPV31を連絡する給水配管39を有する。給水ポンプ40が給水配管39に設けられる。主蒸気系は、RPV31とタービン37を連絡する主蒸気配管36を有する。再循環系は、RPV31に連絡される再循環系配管34、及び再循環系配管34に設けられた再循環ポンプ35を有する。RPV31及び再循環系は原子炉格納容器46内に設置されている。原子炉浄化系は、再循環系配管34と給水配管36に接続される浄化系配管41、及び浄化系配管41に設けられた浄化系ポンプ42及び浄化装置43を有する。水素注入装置45が給水配管36に接続される。
【0026】
RPV31内の冷却水(炉水)は、炉心32内で燃料集合体に含まれる核燃料物質の核分裂によって発生する熱で加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV31から排出されて主蒸気配管36を通ってタービン37に供給され、タービン37を回転させる。タービン37に連結された発電機が回転されて電力が発生する。タービン37から排出された蒸気は、復水器38で凝縮されて水になる。この凝縮水である給水が、給水ポンプ40で昇圧され、給水配管39を通ってRPV31に供給される。水素が、水素注入装置45から給水配管39内を流れる給水に注入され、給水と共にRPV31内に導かれる。炉水はこの水素を含んでいる。
【0027】
蒸気にならなかった大部分の炉水は、RPV31内に設置された気水分離器(図示せず)によって蒸気から分離される。分離された炉水は、RPV31と炉心32の間に形成されるダウンカマ33内を下降して、再循環系配管34内に流入する。再循環ポンプ35は、この炉水を昇圧する。昇圧された炉水は、ダウンカマ33内に設置されたジェットポンプ(図示せず)内に噴出され、ダウンカマ33内の炉水をジェットポンプ内に吸い込む。ジェットポンプから吐出された炉水は、炉心32に供給される。給水配管39によって導かれた水素を含む給水は、気水分離器によって分離された炉水とダウンカマ33内で混合される。再循環系配管34内に流入した炉水の一部は、浄化系配管41に導かれ、浄化系配管41に設けられた浄化装置43によって浄化される。この浄化装置43から排出された炉水は、浄化系配管41及び給水配管39を通ってRPV31内に戻される。RPV31の底部に接続されたボトムドレン配管44が炉浄化系配管41に接続される。
【0028】
腐食電位センサ10は、再循環系配管34及びボトムドレン配管44にそれぞれ設置される。再循環系配管34に設置された腐食電位センサ10を腐食電位センサ10a、ボトムドレン配管44に設置された腐食電位センサ10を腐食電位センサ10bと称する。腐食電位センサ10a,10bは、それぞれ後述する腐食電位センサ10の構成を有する。
【0029】
本実施例の腐食電位センサ10の具体的な構成を、図1を用いて説明する。腐食電位センサ10は、電極11、酸化イットリウム被覆層14、円筒状の絶縁体15、円筒状の金属筐体(スリーブ)18を備えている。電極11は白金で構成される。電極11は、白金以外に、金属ジルコニウムまたはタングステンによって構成しても良い。絶縁体15はサファイアで構成される。ジルコニアによって絶縁体15を構成することも可能である。金属筐体18は環状のFe−29Ni−17Co合金によって構成されている。金属筐体18は、Fe−29Ni−17Co合金以外に、Fe−42Ni合金またはFe−36Ni合金によって構成しても良い。絶縁体15の両端部に、電極11及び金属筐体18がそれぞれ接続される。絶縁体15の一端部の、電極11との接合面には、メタライズ処理されたメタライズ処理部12が形成されている。絶縁体15の他端部の、金属筐体18との接合面には、メタライズ処理されたメタライズ処理部17が形成されている。先端が封鎖されてキャップ状になっている電極11は、その内面がメタライズ処理部12に接触した状態で、絶縁体15にろう付けにて接合される。13が電極11と絶縁体15のろう付け部である。金属筐体15は、その内面がメタライズ処理部17に接触した状態で、絶縁体15にろう付けにて接合される。16が電極11と絶縁体15のろう付け部である。リード線19が、絶縁体15及び金属筐体18内を通り、電極11の内面に接続される。封鎖部であるリード線引き出し冶具20が、金属筐体18の他端部に取り付けられて金属筐体18を封鎖する。リード線19はリード線引き出し冶具20を貫通して金属筐体18の外部、すなわち、腐食電位センサ10の外部に取り出される。
【0030】
リード線引き出し冶具20として、MIケーブル(MIはMineral Insulatedの略)が使用される。金属筐体18は、絶縁体15との接合部がFe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかであれば、それ以外の部分をステンレス鋼としてもよい。この場合、金属筐体18は、Fe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかとステンレス鋼を接合して構成される。絶縁体15の両端部のメタライズ処理には、タングステン、チタン及びモリブデン−マンガンのいずれかが使用される。
【0031】
酸化イットリウム被覆層14は、腐食電位センサ10の周方向の全面に亘り、ろう付け部13、絶縁体15及びろう付け部16の外表面を連続して覆っている。ろう付け部13,16が炉水と接しないように、酸化イットリウム被覆層14は、ろう付け部13,16の付近で電極11及び金属筐体18の一部の外表面を覆っている。酸化イットリウム被覆層14の形成によって、ろう付け部13,16及び絶縁体15は炉水と接触することはない。このような酸化イットリウム被覆層14の形成は、CVD装置を用いて行われる。リード線19が電極11に接続されて電極11及び金属筐体18が絶縁体15にろう付けされた、腐食電位センサ10の中間製品を、CVD装置(図示せず)内に入れる。CVD装置内において、プラズマ化されて生成されたイットリウムのイオンをろう付け部13,16及び絶縁体15の吸着させることによって、酸化イットリウム被覆層14を形成する。この酸化イットリウム被覆層14の厚みは、0.5〜1μm程度である。
【0032】
酸化イットリウムは導電性でないため、酸化イットリウム被覆層14を電極11の一端部と金属筐体18の一端部に跨って形成しても、電極11と金属筐体18が電気的に導通することはない。
【0033】
腐食電位センサ10のBWRプラントへの取り付け構造を、図3を用いて詳細に説明する。腐食電位センサ10a,10bの取り付け構造は同じであるため、腐食電位センサ10aを用いて説明する。腐食電位センサ10aを設置する取付け管部47を、再循環系配管34の測定対象箇所に分岐管状に取付ける。腐食電位センサ10aは、電極11が再循環系配管34の中心軸を向くように配置されて取付け管部47内に挿入され、取り付け管部47に取付けられる。取付け管部47の端部と腐食電位センサ10aの間は、再循環系配管34内を流れる炉水が漏洩しないように、シール部材にてシールされている。リード線19は取付け管部47の外部に達し、エレクトロメータ27に接続される。エレクトロメータ27に接続される他のリード線48は再循環系配管34に接続される。電極11と再循環系配管34は電気的に接触されていない。腐食電位センサ10bは、ボトムドレン配管44に設けられた取付け管部47(図示せず)に、腐食電位センサ10aと同様に取付けられる。
【0034】
腐食電位センサ10aは、電極11と再循環系配管34の間で発生する電位差を検出する。この電位差はエレクトロメータ27により測定され、エレクトロメータ27は測定した電位差に基づいて電極11近傍の再循環系配管34の腐食電位が求められる。
【0035】
本実施例は、ろう付け部13、絶縁体15及びろう付け部16の外表面を、腐食速度が著しく小さい酸化イットリウム被覆層14で連続して覆っているので、図4に示すように、ろう付け部13,16及び絶縁体15の耐食性を著しく向上させることができる。腐食電位センサ10a,10bの寿命を著しく延ばすことができ、長時間に亘って腐食電位を測定することができる。
【0036】
従来例の腐食電位センサに用いられたイットリニア安定化ジルコニアは、200℃の高温水に長時間さらすと、結晶構造が正方晶から単斜晶に構造転移により破損する可能性がある。しかしながら、酸化イットリウム被覆層14は、280℃の炉水に長時間さらされても構造転移を起こさないので、構造転移による破損が生じない。このため、酸化イットリウム被覆層14で覆われているろう付け部13,16及び絶縁体15の腐食は著しく低減される。
【0037】
また、従来例は、イットリニア部分安定化ジルコニウムのプラズマ溶射により腐食電位センサの絶縁体の外表面に、イットリニア部分安定化ジルコニウムの被覆を形成している。この溶射は、ミクロンオーダーの、イットリニア部分安定化ジルコニウムの粒子を吹き付けるので、絶縁体等の外表面に形成される被覆層ではその粒子間に隙間が生じ、絶縁体の腐食の原因となる炉水が浸透する可能性がある。また、高温でその粒子を絶縁体等の外表面に吹き付けるので、絶縁体等に熱的負荷がかかる。
【0038】
これに対し、本実施例は、CVD装置を用いて絶縁体14等の外表面に低温で酸化イットリウム被覆層14を形成するので、この被覆層14を形成する絶縁体14等に熱的負荷を与えることはない。また、酸化イットリウム被覆層14に、イットリニア部分安定化ジルコニウム被覆層のように粒子間に隙間が生じることもない。したがって、酸化イットリウム被覆層14を通して炉水が浸透することもない。
【0039】
再循環系配管34及びボトムドレン配管44にそれぞれ設置された腐食電位センサ10は著しく寿命が伸びるので、腐食電位センサ10交換の頻度が3年に1回程度になる。ちなみに、従来例は1年に1回程度交換していた。この腐食電位センサの交換は配管を切断することによって行われる。このため、腐食電位センサ10を用いた場合は、腐食電位センサ10の交換により発生する放射性廃棄物量を低減することができる。
【0040】
ろう付け部13,16が絶縁体15よりも腐食しやすいので、ろう付け部13,16のそれぞれの外表面、及びそれらの近傍における電極11、絶縁体15及び金属筐体18の部分の外表面を、連続した酸化イットリウム被覆層14で覆い、絶縁体15の外表面の大部分に酸化イットリウム被覆層14を形成しなくても良い。このような構造でも従来の腐食電位センサよりも寿命が長くなる。
【0041】
腐食電位センサ10は腐食電位を長時間に亘って測定することができるので、炉心流量などのBWRプラント運転条件が変化した場合でも、腐食環境改善技術を最適化でき、より経済的に腐食環境改善技術を運用できる。具体的には、腐食環境改善技術として水素注入技術を適用する場合、腐食電位を測定しながら水素注入濃度を制御することにより、注入する水素量を必要最低限の量に制御できる。
【実施例2】
【0042】
本発明の他の実施例である実施例2の腐食電位センサを、図8を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Aは、実施例1の腐食電位センサ10と異なり、電極11Aがキャップ状の絶縁体15A内に配置されている。電極11Aは、金属及び金属酸化物の混合物により構成される。絶縁体15Aの一端部は、金属筐体18との接合面にメタライズ処理部17が形成されている。このメタライズ処理部17の内側に挿入された金属筐体18が、メタライズ処理部17において絶縁体15Aとろう付けにより接合される。この接合によりろう付け部16が形成される。リード線19が電極11Aに接して金属筐体18内を通りリード線引き出し冶具20より外部に取り出される。
【0043】
絶縁体15Aは、酸素透過性の絶縁材で構成する必要があり、ジルコニアで製作することが望ましい。電極11Aを構成する金属と金属酸化物の混合物としては、銅と酸化銅、ニッケルと酸化ニッケル、銀と酸化銀、水銀と酸化水銀等のいずれかを用いることが好ましい。金属筐体18は、実施例1と同様な材料で構成される。
【0044】
本実施例は、酸化イットリウム被覆層14が腐食電位センサ10の周方向の全面に亘り、ろう付け部16の外表面を連続して覆っている。ろう付け部16が炉水に接しないように、酸化イットリウム被覆層14は、ろう付け部16付近で絶縁体15A及び金属筐体18のそれぞれの一部の外表面も覆っている。酸化イットリウム被覆層14はCVD装置を用いて形成される。酸化イットリウム被覆層14の厚みは0.5〜1μm程度である。
【0045】
本実施例も、実施例1と同様な効果を得ることができる。本実施例は、電極11Aを金属(例えば、ジルコニウム)と金属酸化物の混合物で構成しているので、金属だけで構成する場合よりも、電極11Aの寿命を延ばすことができる。
【0046】
本実施例のろう付け部16を、酸化イットリウム被覆層14の替りに金属ジルコニウム被覆層を形成しても良い。このジルコニウム被覆層は、CVD装置を用いて形成され、厚みが0.5〜1μm程度である。
【実施例3】
【0047】
本発明の他の実施例である実施例3の腐食電位センサを、図9を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Bは、実施例1の腐食電位センサ10の酸化イットリウム被覆層14を金属ジルコニウム被覆層50に替えた構成を有する。金属ジルコニウム被覆層50は、腐食電位センサ10Bの周方向の全面に亘り、ろう付け部13,16のそれぞれの外表面を連続して覆っている。金属ジルコニウム被覆層50は、さらに、ろう付け部13,16の付近で電極11、絶縁体15及び金属筐体18の一部の外表面を覆っている。ろう付け部13,16のそれぞれの外表面を覆った各金属ジルコニウム被覆層50は、互いに接触していない。これは、電極11と金属筐体18が電気的につながるのを防止するためである。金属ジルコニウム被覆層50はCVD装置を用いて形成される。その被覆層50の厚みは0.5〜1μm程度あれば十分である。CVD以外ではにめっきにより金属ジルコニウム被覆層50はめっきによって形成することも可能である。
【0048】
本実施例は、ろう付け部13,16のそれぞれを腐食速度が小さい金属ジルコニウム被覆層50が連続して覆っているので、ろう付け部13,16の腐食を抑制することができる。ろう付け部13,16は絶縁体15よりも腐食しやすいので、ろう付け部13,16を金属ジルコニウム被覆層50で覆うことによって、腐食電位センサ10Bの寿命を著しく延ばすことができる。ただし、腐食電位センサ10Bの寿命は、腐食電位センサ10よりも短くなる。本実施例における絶縁体15としては、サファイヤまたはジルコニアが用いられる。
【0049】
金属ジルコニウム被覆層50も280℃の炉水に長時間さらされても構造転移を起こさないので、構造転移による破損が生じない。このため、金属ジルコニウム被覆層50で覆われているろう付け部13,16及び絶縁体15の腐食は著しく低減される。
【0050】
本実施例において、金属ジルコニウム被覆層50をジルコニウムのアモルファス層に替えても良い。ジルコニウムのアモルファス層は、CVDを用いて形成することができる。
【実施例4】
【0051】
本発明の他の実施例である実施例4の腐食電位センサを、図10を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Cは、実施例3の腐食電位センサ10Bの絶縁体15の外表面に酸化イットリウム被覆層14を形成した構成を有する。腐食電位センサ10Bと同様にして、ろう付け部13,16のそれぞれの外表面、及びそれらの周辺部付近で電極11、絶縁体15及び金属筺体18の一部の各外表面にそれぞれ連続した金属ジルコニウム被覆層50を形成する。その後、絶縁体15の外表面に連続した酸化イットリウム被覆層14を形成する。腐食電位センサ10Cでは、酸化イットリウム被覆層14は、ろう付け部13,16を覆った各金属ジルコニウム被覆層50の一部と重なり、腐食電位センサ10Cの周方向の全面に亘り、絶縁体15の外表面を連続して覆っている。金属ジルコニウム被覆層50及び酸化イットリウム被覆層14はCVD装置を用いて形成される。それぞれの被覆層の厚みは0.5〜1μm程度である。
【0052】
本実施例は、実施例1及び3で生じる効果を得ることができる。
【実施例5】
【0053】
本発明の他の実施例である実施例5の腐食電位センサを、図11を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Dは、実施例3の腐食電位センサ10Bにおいて、電極11及びろう付け部13を覆う金属ジルコニウム被覆層50の替りに電極基部51及び金属ジルコニウム被覆層50Aを設けた構成を有する。電極基部51は、金属筐体18に用いられるFe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかによって作成されている。金属ジルコニウム被覆層50Aは、電極基部51、ろう付け部13及びろう付け部13の近傍の絶縁体15の各外表面をそれぞれ連続して覆っている。本実施例におけるろう付け部13は電極基部51と絶縁体15のろう付け部である。リード線19は電極基部51に接続されている。
【0054】
Fe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金は絶縁体15に用いられるサファイアまたはジルコニアとの接合性が良く他の金属及び合金よりも剥がれ難い。このため、絶縁体15と接合される電極基部51及び金属筐体18をFe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかによって作成することにより、電極基部51及び金属筐体18と絶縁体15の接合部がより剥がれにくくなり、腐食電位センサ10Dの寿命をより長くすることができる。
【0055】
電極基部51に用いられるFe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金はいずれも炉水の水質に依存して発生する電位が異なるため、電極基部51は適正な電極として作用しない。このため、本実施例は、電極基部51の外表面全面に金属ジルコニウム被覆層50Aを形成している。この金属ジルコニウム被覆層50Aは、ろう付け部13の外表面及びろう付け部13の近傍の絶縁体15の外表面も連続して覆っている。このような金属ジルコニウム被覆層50Aは、電極、及びろう付け部13の腐食を抑制する保護層として機能する。金属ジルコニウム被覆層50Aの替りに白金被覆層を、電極基部51の外表面、ろう付け部13の外表面及びろう付け部13の近傍の絶縁体15の外表面に連続して形成しても良い。
【0056】
本実施例は、実施例3の腐食電位センサ10Bで生じる効果を得ることができる。本実施例は、電極基部51を用いているので、電極基部51と絶縁体15の接合部がより剥がれにくくなり、腐食電位センサ10Dの寿命をより長くすることができる。
【実施例6】
【0057】
本発明の他の実施例である実施例6の腐食電位センサを、図12を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Eは、実施例5の腐食電位センサ10Dにおいて、電極基部51の先端に電極11Bを接合した構成を有する。電極11Bは実施例1における電極11と同じ材料で構成される。一方の金属ジルコニウム被覆層50は、電極基部51の外表面、電極基部51近傍の電極11Bの外表面、電極基部51と絶縁体15のろう付け部13の外表面、及びろう付け部13近傍の絶縁体15の外表面をそれぞれ覆っている。すなわち、金属ジルコニウム被覆層50は、腐食電位センサ10Dの周方向の全面に亘り、それらの外表面を連続して覆っている。
【0058】
本実施例は、実施例3の腐食電位センサ10Bで生じる効果を得ることができる。電極基部51は、まず、一端が電極11Bと接合され、その後、他端部が絶縁体15と接合される。逆に、電極基部51と絶縁体15を接合した後に、電極基部51と電極11Bを接合すると、電極基部51と絶縁体15のろう付け部13に熱的負荷及び機械的応力がかかり、ろう付け部13が破損される。電極基部51と電極11Bの接合を先に行うことによって、そのような問題が生じなくなる。なお、電極基部51と電極11Bの接合は、金属同士の接合であるため、電極基部51と絶縁体15の接合よりも強固になる。このため、電極基部51と電極11Bの接合を電極基部51と絶縁体15の接合によりも先に行っても、電極基部51と電極11Bの接合部に悪影響を与えることはない。
【実施例7】
【0059】
本発明の他の実施例である実施例7の腐食電位センサを、図13を用いて説明する。本実施例の腐食電位センサ10Fは、実施例5の腐食電位センサ10Dにおいて、金属ジルコニウム被覆層50Aと金属ジルコニウム被覆層50の間に、実施例4と同様に酸化イットリウム被覆層14を形成した構成を有する。この酸化イットリウム被覆層14は、腐食電位センサ10Cと同様に、絶縁体15の外表面を連続して覆っている。の腐食電位センサ10Bの絶縁体15の外表面に酸化イットリウム被覆層14を形成した構成を有する。
【0060】
本実施例は、腐食電位センサ10Dで生じる効果を得ることができる。さらに、酸化イットリウム被覆層14が絶縁体15の外表面を覆っているので、絶縁体15の腐食を抑制することができる。このため、本実施例の腐食電位センサ10Fの寿命は腐食電位センサ10Dよりも長くなる。
【0061】
実施例6の腐食電位センサ10Eにおいても、本実施例と同様に、2つの金属ジルコニウム被覆層50の間で絶縁体15の外表面に酸化イットリウム被覆層14を形成しても良い。
【0062】
実施例5及び6において、各金属ジルコニウム被覆層の替りに、酸化イットリウム被覆層をそれぞれ形成することも可能である。この場合には、絶縁体15の外表面にも酸化イットリウム被覆層を形成することが望ましい。
【0063】
以上に述べた各腐食電位センサは、加圧水型原子力プラント、火力プラント及び化学プラントにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の腐食電位センサの縦断面図である。
【図2】図1に示す腐食電位センサを取付けるBWRプラントの概略構成図である。
【図3】図1に示す腐食電位センサの、図2に示す再循環系配管への取付け状態を示す詳細構成図である。
【図4】絶縁材であるサファイア表面に各種材料の被覆層を形成した各試験片の腐食速度の測定結果を示す説明図である。
【図5】ジルコニウム及びタングステンの腐食速度の測定結果を示す説明図である。
【図6】各種材料の線膨張率の温度依存性を示す特性図である。
【図7】高温水中でのジルコニウムの腐食電位と溶存酸素濃度との関係を示す特性図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の腐食電位センサの縦断面図である。
【図9】本発明の他の実施例である実施例3の腐食電位センサの縦断面図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例4の腐食電位センサの縦断面図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例5の腐食電位センサの縦断面図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例6の腐食電位センサの縦断面図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例7の腐食電位センサの縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10,10A〜10F…腐食電位センサ、11,11A,11B…電極、12,17…メタライズ処理部、13,16…ろう付け部、14…酸化イットリウム被覆、15,15A…絶縁体、18…金属筐体、19…リード線、27…エレクトロメータ、50,50A…金属ジルコニウム被覆層、51…電極基部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、前記電極に接合される絶縁体と、前記絶縁体に接合される管状の金属筐体と、前記絶縁体及び前記金属筐体の内側に配置されて前記電極に接続される導線とを備え、
前記電極と前記絶縁体の第1接合部の外面、前記絶縁体と前記金属筐体の第2接合部の外面及び前記絶縁体の外面のうち少なくとも前記第1接合部及び前記第2接合部の各外面を、連続した酸化イットリウム層で覆ったことを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項2】
電極と、前記電極に接合される絶縁体と、前記絶縁体に接合される管状の金属筐体と、前記絶縁体及び前記金属筐体の内側に配置されて前記電極に接続される導線とを備え、
前記電極と前記絶縁体の第1接合部の外面、及び前記絶縁体と前記金属筐体の第2接合部の外面を、連続した金属ジルコニウム層及びジルコニウムのアモルファス層のいずれかで覆ったことを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項3】
電極基部と、前記電極基部に接合される絶縁体と、前記絶縁体に接合される管状の金属筐体と、前記絶縁体及び前記金属筐体の内側に配置されて前記電極基部に接続される導線とを備え、
前記電極基部の外面、前記電極基部と前記絶縁体の第1接合部の外面、前記絶縁体と前記金属筐体の第2接合部の外面を、連続した金属ジルコニウム層及び連続した白金層で覆ったことを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項4】
電極基部と、前記電極基部の一端部に接合される電極と、前記電極基部の他端部に接合される絶縁体と、前記絶縁体に接合される管状の金属筐体と、前記絶縁体及び前記金属筐体の内側に配置されて前記電極基部に接続される導線とを備え、
前記電極基部の外面、前記電極基部と前記絶縁体の第1接合部の外面、前記絶縁体と前記金属筐体の第2接合部の外面を、連続した金属ジルコニウム層、連続したジルコニウムのアモルファス層及び連続した酸化イットリウム層のいずれかで覆ったことを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項5】
前記絶縁体の外面を酸化イットリウム層で覆った請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の腐食電位センサ。
【請求項6】
前記電極が、ジルコニウム、白金及びタングステンのいずれかによって構成されている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の腐食電位センサ。
【請求項7】
前記金属筐体が、Fe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかによって構成されている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の腐食電位センサ。
【請求項8】
前記電極基部が、Fe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかによって構成されている請求項3または請求項4に記載の腐食電位センサ。
【請求項1】
電極と、前記電極に接合される絶縁体と、前記絶縁体に接合される管状の金属筐体と、前記絶縁体及び前記金属筐体の内側に配置されて前記電極に接続される導線とを備え、
前記電極と前記絶縁体の第1接合部の外面、前記絶縁体と前記金属筐体の第2接合部の外面及び前記絶縁体の外面のうち少なくとも前記第1接合部及び前記第2接合部の各外面を、連続した酸化イットリウム層で覆ったことを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項2】
電極と、前記電極に接合される絶縁体と、前記絶縁体に接合される管状の金属筐体と、前記絶縁体及び前記金属筐体の内側に配置されて前記電極に接続される導線とを備え、
前記電極と前記絶縁体の第1接合部の外面、及び前記絶縁体と前記金属筐体の第2接合部の外面を、連続した金属ジルコニウム層及びジルコニウムのアモルファス層のいずれかで覆ったことを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項3】
電極基部と、前記電極基部に接合される絶縁体と、前記絶縁体に接合される管状の金属筐体と、前記絶縁体及び前記金属筐体の内側に配置されて前記電極基部に接続される導線とを備え、
前記電極基部の外面、前記電極基部と前記絶縁体の第1接合部の外面、前記絶縁体と前記金属筐体の第2接合部の外面を、連続した金属ジルコニウム層及び連続した白金層で覆ったことを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項4】
電極基部と、前記電極基部の一端部に接合される電極と、前記電極基部の他端部に接合される絶縁体と、前記絶縁体に接合される管状の金属筐体と、前記絶縁体及び前記金属筐体の内側に配置されて前記電極基部に接続される導線とを備え、
前記電極基部の外面、前記電極基部と前記絶縁体の第1接合部の外面、前記絶縁体と前記金属筐体の第2接合部の外面を、連続した金属ジルコニウム層、連続したジルコニウムのアモルファス層及び連続した酸化イットリウム層のいずれかで覆ったことを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項5】
前記絶縁体の外面を酸化イットリウム層で覆った請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の腐食電位センサ。
【請求項6】
前記電極が、ジルコニウム、白金及びタングステンのいずれかによって構成されている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の腐食電位センサ。
【請求項7】
前記金属筐体が、Fe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかによって構成されている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の腐食電位センサ。
【請求項8】
前記電極基部が、Fe−29Ni−17Co合金、Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかによって構成されている請求項3または請求項4に記載の腐食電位センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−42111(P2009−42111A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208260(P2007−208260)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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