説明

膜分離活性汚泥処理装置

【課題】膜分離活性汚泥処理装置において、分離膜の強度および耐洗浄力を高め、かつ、生物膜および分離膜への散気制御および分離膜の洗浄をそれぞれ適正時期に行えるようにする。
【解決手段】曝気槽内に微生物の担体となる生物膜と、四弗化エチレン樹脂製の分離膜を備えた膜分離モジュールを配置し、かつ、該曝気槽内に前記微生物の活性状態をモニタリングする生物膜用モニタ手段および、分離膜への懸濁成分の付着状態をモニタリングする分離膜用モニタ手段と、前記生物膜に向けて散気する生物膜用散気管と、前記膜分離モジュールに向けて散気する分離膜用散気管を配置し、前記生物膜用モニタ手段でモニタリングしながら前記生物膜用散気管からの散気を制御する制御手段と、前記分離膜用モニタ手段でモニタリングしながら分離膜への洗浄液の供給を制御する手段とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離活性汚泥処理装置に関し、生活排水や工業排水等の下水処理を行うものである。
【背景技術】
【0002】
膜分離活性汚泥法による水処理は、凝集フロックを沈殿槽で沈殿させる活性汚泥法と比較して、分離膜でフロックやスケール等からなる懸濁物質を迅速に膜分離できる利点があり、従来より膜分離活性汚泥処理装置が提供されている。
【0003】
活性汚泥法を採用した処理装置では、微生物で被処理水中の有機物の処理を効率良く行うため、活性汚泥中の微生物の活性状態を観察して、散気の調節や微生物の添加を行う必要がある。そのため、従来は、活性汚泥槽内の液をくみ取り、くみ取った液を顕微鏡やBOD、COD計等で計測している。また、槽内の泡の状態や槽内の液の色から作業員が目視により感覚的に判断している場合が多い。
また、特開平6−28453号公報等では、曝気槽内にモニタ手段を付設して、常時、微生物の活性状態をモニタリングする装置も提供され、モニタリング結果に応じて散気量、汚泥の吸引圧力、微生物の添加等を制御している。
【0004】
膜分離活性汚泥法を用いた処理装置において、曝気槽内に生物膜と共に配置する分離膜は、従来、塩素化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜を用いたものや、特開2004−182919号公報(特許文献2)のようにポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂からなる多孔質膜が用いられている場合が多い。
このように、従来汎用されている分離膜はポリオレフィン系樹脂が多く、そのほか、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース、ポリスルホン等から形成されている。
【0005】
前記分離膜からなる膜分離モジュールを用いて高濁度排水の処理を継続すると、膜表面及び膜間に、被処理液中に含まれる懸濁成分が堆積し、さらには、膜閉塞を生じて、透過流量の低下が生じる。
特に、膜分離活性汚泥法のような高汚濁性水処理においては、処理液の粘度が高いうえ、生物処理特有の粘着性のある堆積物による膜の汚れ(バイオファウリング)が発生するため、一般の排水系の濾過に比べて、濾過膜に懸濁成分が堆積しやすく、堆積物の付着や目詰まりによる透過流量の低下が顕著である。そのため、膜モジュールを用いた濾過装置は、通常、運転時には散気管から加圧空気を送り、エアバブリング等で排水の流れを作り、これによる堆積物の剥離や濾過膜の揺動による機械的負荷による堆積物を取り除く清浄操作(散気処理)が行われる。
そのため、膜モジュール及びこれを構成する濾過膜エレメントには高い濾過性能を有することに加えて、長期間運転時の機械的負荷に耐えうる強度と、特に酸化剤や酸・アルカリに対して優れた耐薬品性を兼ね備えていることが要望されている。
しかしながら、前記した従来用いられている分離膜は、高濃度の酸やアルカリからなる洗浄液に対する耐薬品性は十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−28453号公報
【特許文献2】特開2004−182919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、曝気槽内に生物膜と分離膜とを配置した膜分離活性汚泥処理装置において、生物膜および分離膜への散気制御および分離膜の洗浄をそれぞれ適正時期に行えるようにし、分離膜の目詰まりの発生を低減し、長期間安定して稼働できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、
曝気槽内に微生物の担体となる生物膜と、四弗化エチレン樹脂製の分離膜を備えた膜分離モジュールを配置し、
前記曝気槽内に前記微生物の活性状態をモニタリングする生物膜用モニタ手段と、分離膜への懸濁成分の付着状態をモニタリングする分離膜用モニタ手段と、
前記生物膜に向けて散気する生物膜用散気管と、前記膜分離モジュールに向けて散気する分離膜用散気管を配置し、
前記生物膜用モニタ手段でモニタリングしながら前記生物膜用散気管からの散気を制御すると共に、前記分離膜用モニタ手段でモニタリングしながら分離膜への洗浄液の供給を制御することを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置を提供している。
【0009】
前記のように、本発明の膜分離活性汚泥処理装置では、生物膜と共に曝気槽内に配置する分離膜を四弗化エチレン樹脂(以下、PTFEと称す)で形成していることを特徴とする。PTFEは耐薬品性、化学安定性、高強度、滑り易く懸濁成分が付着しにくい非粘着性、低摩擦係数、不燃性、耐候性に優れた特性を備え、特に、高濃度のアルカリ液や酸性液を洗浄液として用いることができる。該PTFE製の分離膜として、住友電工ファインポリマー(株)製「ポアフロン(登録商標)メンブレン」シリーズを好適に用いることができる。
このように、膜分離活性汚泥処理装置の曝気槽内にPTFE製の分離膜からなる膜分離モジュールを吊設することにより、分離膜の表面に難溶解性成分が蓄積しても高濃度のアルカリ液や酸性液を洗浄液として用いることで目詰まりを低減でき、長期間安定して高い透過流速を維持して水処理することができる。
【0010】
また、生物膜の散気管と分離膜の散気管とは区別し、生物膜への散気は生物膜の活性状況をモニタ手段で検出しながら必要時に行う一方、分離膜への散気は洗浄時以外の稼働時に常時行って、分離膜が懸濁成分により目詰まりが発生するのを低減している。
このように、生物膜用散気管と分離膜用散気管と分離することで、これら散気管から噴射する噴射時間、エア量およびエア噴射圧を、生物膜と分離膜とにそれぞれ適したものに制御することができる。
さらに、分離膜の洗浄は、分離膜用モニタ手段でモニタリングして分離膜表面への懸濁成分の付着状態に応じて洗浄しているため、分離膜の透過流速を高速に維持することができる。
【0011】
前記PTFE製の分離膜は単層または複層の中空糸とし、前記膜分離モジュールは中空糸膜モジュールとしている。
具体的には、例えば、PTFE製の複層の中空糸としては特許第385186号に記載した多孔質複層中空糸等が好適に用いられ、また、中空糸を集束した膜分離モジュールとしては、特許第3077260号公報および前記特許第385186号に記載した中空糸膜モジュールが好適に用いられる。
または、前記四弗化エチレン樹脂製の分離膜は単層または複層の平膜とし、前記膜分離モジュールは平膜モジュールとしてもよい。
【0012】
前記のように分離膜を延伸PTFE多孔質膜で構成すると、強度、耐久性、耐食性に優れ、高濁度排水処理において極めて有用性を発揮することができる。さらに、延伸PTFE多孔質膜は押出および延伸工程を経て製造されるため、高度な分子配向により微細孔を高気孔率にすることができる。よって、透過水量が多い高性能の濾過膜としながら、散気処理で揺れを発生させても、分離膜に亀裂や破断が発生せず、優れた耐久性を有する。
特に、前記のように、延伸PTFE多孔質膜は殆どの薬品に犯されない化学的安定性を有し、耐食性に優れている。一般的に、比表面積の大きい多孔質膜は、バルク体に比べて薬品に浸食されやすく強度も小さいが、延伸PTFE多孔質膜は有機・無機の酸、アルカリ、酸化剤、還元剤及び有機溶剤等のほとんど全ての有機・無機薬品に対して不活性であり、耐薬品性に極めて優れる。そのため、従来のポリオレフィンやポリエチレン等からなる分離膜のように洗浄薬剤が制約されず、堆積物の種類に応じて種々の化学薬品を選択して、必要時には高濃度にて濾過膜の洗浄を長期に渡り行なうことができる。例えば、バイオファウリングを完全に溶解除去・殺菌するために、塩酸や過酸化水素水などの強酸化剤の高濃度溶液を使用でき、排水中の油分等を除去するために、次亜塩素酸ナトリウムや水酸化ナトリウム等の強アルカリ水溶液を使用することができる。
【0013】
前記PTFE製の分離膜は、例えば、濾過面の平均孔径が0.01μm以上、平均膜厚が10μm以上、好ましくは0.1〜10mm、気孔率が40〜90%、JIS K 7113に規定の引張強度が10N/mm以上としていることが好ましい。
前記平均孔径は0.01μm以上、上限は10μm以下、さらに、5.0μm以下であることが好ましい。該平均孔径はPMI社製パームポロメーター(型番 CFP-1200A)により測定している。
該延伸PTFE製の分離膜は、活性汚泥を含む排水や微小な粒子を含む排水を原水とする場合では、粒子径0.5μmである粒子の粒子捕捉率が90%以上としていることが好ましい。
前記平均膜厚はダイアルゲージにより測定している。前記気孔率はASTM D792に記載の方法で測定している。
さらに、PH10以上の強アルカリ洗浄液およびPH3以下の強酸性洗浄液に対する耐性を有するものとしていることが好ましい。
【0014】
濾過膜として用いる延伸多孔質PTFEとは、PTFEが重量比80%以上のことを指し、更に好ましくは90%以上である。
併用する熱可塑性のフッ素樹脂はPFA、FEP、ETFE、PCTFE、PVDF、PVF等が挙げられ、その中でもPTFEの融点ピーク以上(327℃以上)でも比較的分解速度が低いFEPが好ましく、更にはPFAがより好ましい。
【0015】
前記微生物の担体となる生物膜も、PTFE製の多孔質体で形成し、該多孔質体の表面および空孔に微生物を付着することが好ましい。該PTFE製多孔質体からなる担体は強度を有するため、散気時および洗浄時に破損せず、かつ、付着させる微生物の量に応じて空孔を容易に設けることができる。なお、担体として小粒または糸状の充填材を隙間をあけて保持した担体とし、これら充填材の表面や充填材の隙間に好気性の微生物を付着させてもよい。
生物膜は固定床、揺動床、流動床のいずれでも良いが、固定床とすることが好ましい。固定床とすると、その下方に生物膜用散気管を分離膜用散気管と区別して配管し、生物膜に適した散気を供給することができる。なお、凝集剤を添加してもよい。
【0016】
前記膜分離モジュールに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、これらの混合液からなる洗浄用薬液を供給する自動洗浄装置を付設し、
前記自動洗浄装置に前記分離膜用モニタ手段と接続した制御手段を設けている。
【0017】
前記分離膜用モニタ手段としては、分離膜の内外差圧を検出する手段から構成しても良いが、分離膜表面を撮影する撮像素子および該撮像素子と接続された画像処理装置とで構成してもよい。
分離膜の洗浄は、従来は予め設定した設定期間経過後に行われている場合が多いが、前記のように、撮像素子で分離膜表面の懸濁成分の付着状態を撮影し、撮影した映像信号を画像処理すると、分離膜の洗浄時期を的確に把握することができる。
【0018】
また、自動洗浄装置から、逆洗水と、クロスフローで前記洗浄用薬液とを、交互に前記分離膜に供給して洗浄することが好ましい。
前記のように、PTFEは耐薬品性がポリオレフィンやポリエチレン等より優れているため、高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、これらの混合液からなる洗浄用薬液を用いて洗浄することができる。よって、分離膜の表面に付着、蓄積する難溶解性成分を溶解できる。さらに、PTFE製の分離膜は表面平滑性が良く滑りやすいため、洗浄液により分離膜表面に付着する浮遊した懸濁成分(MLSS)を除去しやすい利点もある。
【0019】
前記生物膜用モニタ手段を制御装置に接続し、
前記制御装置は、前記生物膜モニタ手段から得られる凝集性微生物が成す塊(フロック)をモニタリング結果により、前記生物膜用散気管への空気供給および、その供給量をフィードバック制御すると共に、付設した微生物貯留槽から曝気槽へ微生物の供給を制御するものとしている。
【0020】
前記生物膜用モニタ手段としては、微生物を撮影する撮像素子と該撮像素子と接続された画像処理装置、MLSS計、紫外線分光計、DO濃度計、濁度計から選択される1種以上が用いられる。
【0021】
前記撮像素子と該撮像素子に接続した画像処理装置とを用いる場合、撮影された映像から画像処理装置で輝度等から微生物を検出し、該微生物の菌数や大きさ等を抽出し、例えば、予め設定した菌数等の第一閾値以下であると、前記制御手段で生物膜への散気を行うように制御し、さらに菌数が少ない第二閾値以下に達すると、微生物を曝気槽内に添加するように制御することが好ましい。
【0022】
前記のように、撮像素子および画像処理装置と共に、あるいは撮影手段に代えて、前記MLSS計、紫外線分光計、DO濃度計、濁度計を1種以上併用して用いてもよい。特に、複数種を併用すると高精度に微生物の活性状態をモニタリングすることができる。
【0023】
具体的には、前記生物膜と分離膜とは前記曝気槽内の両側に間隔をあけて配置し、該生物膜と分離膜に挟まれた間に、MLSS計、DO濃度計およびPH計を配置し、かつ、生物膜と分離膜とに夫々近接させて撮像素子を配置することが好ましい。
前記PH計を配置すると、高濃度のアルカリや酸の洗浄液を用いて分離膜を洗浄した時の曝気槽内の液体のPHを検出でき、微生物に適したPH5乃至PH8となるように中性の洗浄水を添加することができる。
【0024】
このように、常時、生物膜の微生物をモニタ手段でモニタリングし、該モニタリングの結果に応じて生物膜用散気管から散気を供給すると、微生物による排水中の好気性有機物の処理を効率よく行うことができる。
かつ、分離膜に対して、生物膜用散気管とは区別して設けた分離膜用散気管から濾過処理時には洗浄時を除いて散気を常時行うことで、分離膜の目詰まりの発生を低減できる。 さらに、分離膜のモニタ手段で分離膜表面への懸濁成分をモニタリングしながら分離膜の洗浄を行うため、分離膜の透過流量を維持することができる。
【0025】
また、前記生物膜用散気管および分離膜用散気管と共に、曝気槽内に旋回流を発生させる散気管を設けてもよい。
このように、曝気槽内に旋回流れを発生させると、懸濁成分を効率よく分離膜で捕捉することができる。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明の膜分離活性汚泥処理装置では、曝気槽内に生物膜と並設する分離膜として、耐薬品性を有すると共に強度が大きいPTFE製の分離膜を用いることにより、懸濁成分が付着して目詰まりが発生しやすい分離膜の効果的な洗浄を行え、長期間安定して稼働することができる。
かつ、生物膜の微生物の活性状態をモニタリングするモニタ手段を設け、モニタリングの結果に応じて、分離膜用散気管と区別して設けた生物膜用散気管の散気をフィードバックで自動制御するため、生物膜の微生物に適時酸素を供給して微生物の活性化を図ることができる。
さらに、分離膜への懸濁成分の付着状態をモニタリングするモニタ手段を設け、所要時期に分離膜を洗浄しているため、分離膜の透過流量を常時高流量に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態の膜分離活性汚泥処理装置の全体図である。
【図2】中空糸膜分離モジュールを示し、(A)は斜視図、(B)は一部拡大断面図である。
【図3】第二実施形態の平膜の膜分離モジュールを示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1および図2に第一実施形態の膜分離活性汚泥処理装置を示す。該処理装置は下水や工場排水等の高濁度の懸濁成分を含む原水を浄化処理するものである。
【0029】
曝気槽1内に一方側に生物膜2を配置し、他方側に延伸PTFE多孔質体からなる中空糸3を集束した中空糸膜分離モジュール4を配置している。
【0030】
前記生物膜2は、PTFE製の多孔質体を微生物の担体として備え、その表面および空孔に好気性の微生物を付着させた固定床式としている。
なお、微生物を付着する担体として、小粒または糸状の充填材を隙間をあけて保持した担体とし、これら充填材の表面や充填材の隙間に好気性の微生物を付着させたものでもよい。かつ、生物膜は固定床とすることが好ましいが、底部に多孔質の保持枠で保持した揺動床、流動床でもよい。
前記生物膜2の下方には生物膜2に向けて散気する生物膜用散気管5を配管している。
【0031】
前記中空糸膜分離モジュール4は、濾過液の集水管6で吊り下げて曝気槽1内に配置している。該中空糸膜分離モジュール4の下方に中空糸膜分離モジュール4に向けて散気する分離膜用散気管7を配管している。
【0032】
前記生物膜用散気管5に接続する空気供給管8および分離膜用散気管7に接続する空気供給管9はそれぞれポンプP1,P2を介してブロア10と連結し、ポンプP1,P2を独立して制御している。
【0033】
さらに、曝気槽1の中空糸膜分離モジュール4の配置側の隅部に旋回流発生用の散気管12を配置し、該散気管12をポンプP3を介してブロア10と接続している。
また、必要に応じて、曝気槽1の底面に沈降した余剰汚泥を引き抜く汚泥吸引用配管を設けている。
【0034】
前記生物膜2と中空糸膜分離モジュール4との間には、MLSS計15、DO(溶存酸素)計16、PH計17を吊り下げている。
前記MLSS計15は微生物の活性状態を常時モニタリングするモニタ手段として機能させるものである。
前記MLSS計は発光部と受光部を搭載したプローブ型のMLSS検出部を備え、透過光散乱光比較方式で曝気槽1内における懸濁成分(MLSS)を検出できるものである。
【0035】
さらに、生物膜2を撮影する発光部と受光部を有するプローブ型の撮像素子50を曝気槽1内の生物膜2に近接して配置すると共に、中空糸膜分離モジュール4を撮影する同様のプローブ型の撮像素子51を中空糸膜分離モジュール4に近接して配置している。
前記撮像素子50、51は画像処理装置53と接続している。該画像処理装置53で撮像素子50で撮影した微生物の映像信号より、微生物の活性状態を演算処理して微生物の菌数を測定している。かつ、撮像素子51で撮影した中空糸3の外面に付着する懸濁成分の映像信号より、中空糸3の目詰まり状態を測定している。
【0036】
前記MLSS計15、DO計16、画像処理装置53は制御手段18と接続し、該制御手段18で前記生物膜用散気管5に接続したポンプP1を制御している。即ち、MLSS計15で検出した懸濁成分より微生物の活性状態、DO計16で検出した曝気槽内の液の溶存酸素量、および撮像素子50で撮影した生物膜2の状態から生物膜2への散気時期および散気量、散気圧を判断して、散気をフィードバック制御している。
【0037】
前記中空糸膜分離モジュール4は、図2に示すように、多数本の延伸PTFE製の中空糸3をそれぞれU形状に2つ折りして隙間をあけて並設し、これら中空糸3の上端を封止固定材24で連結固定している。該封止固定材24には、各中空糸3の中空部と連通する集水部24aを設け、該集水部24aに集水ヘッダー25を外嵌固定し、該集水ヘッダー25を前記集水管6と接続して曝気槽1内に吊り下げている。一方、各中空糸3の下端の湾曲部には支持棒26を通してU形状を保持している。支持棒26の両端は保持枠27で保持している。
このように、中空糸膜分離モジュール4では中空糸3の下端を封止固定材に固定していないことより、下方に配管する分離膜用散気管7からの散気が中空糸3の隙間に流入し易くしている。
【0038】
前記集水管6は吸引ポンプP4と接続し、中空糸3の中空部へ透過した濾過液を吸引しており、本実施形態の分離膜は吸引濾過式としている。
【0039】
前記中空糸は本実施形態では多孔質複層中空糸を用いている。該複層の中空糸は支持層となる多孔質延伸PTFEチューブの外周面に濾過層となる多孔質延伸PTFEシートを密着させて巻き付けて複層とし、強度を高めている。
前記濾過膜を形成する延伸PTFE多孔質シートは、1軸延伸、2軸延伸で得られたものでもよいが、PTFE未焼結粉末と液状潤滑剤のペースト押出によって得られる成形体を2軸延伸して得られた多孔質シートを焼結して得られたものであることが好ましい。2軸延伸とすることで、空孔を囲む繊維状骨格の強度を高めることができる。
また、濾過膜と支持膜とは未焼結状態のPTFE多孔質膜を焼結一体化することにより、容易に積層体を形成することができる。
【0040】
なお、中空糸3は前記複層中空糸に限定されず、単層でもよい。
中空糸3は濾過面の平均孔径が0.01μm以上10μm以下、平均膜厚(複層では濾過層と支持層を加えた厚さ)が10μm以上、好ましくは0.1〜10mm、気孔率が40〜90%、内径が0.3〜10mm、IPAバブルポイントを10〜200kPaの範囲としている。
さらに、中空糸3はJIS K 7113に規定の引張強度が10N/mm以上としている。
さらに、PTFE製の中空糸3はPH10以上の強アルカリ洗浄液およびPH3以下の強酸性洗浄液に対する耐性を有する。
【0041】
前記中空糸膜分離モジュール4の洗浄用として自動洗浄装置30を付設している。
該自動洗浄装置30は高圧の水と空気とを中空糸3の内部に供給する逆洗水の供給部31と、薬液をクロスフローで中空糸3の表面に供給する薬液供給部32とを備えている。薬液は次亜塩素酸ナトリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液の混合液を用いている。
【0042】
前記自動洗浄装置30は、前記画像処理装置53と接続した制御部33を備えている。即ち、前記撮像素子51で撮影して画像処理装置53で処理した測定結果に基づき、中空糸3の表面に付着する懸濁成分の付着率(付着面積)が閾値を越えると、制御部33は逆洗水の供給部31と薬液供給部32とから交互に洗浄水を供給する制御を行っている。
なお、中空糸3の内外差圧を検出する測定器を付設し、該測定器を前記制御部33に接続し、内外差圧が閾値以上に達すると洗浄を開始する手段を併用してもよい。
さらに、前記制御部33を前記PH計17と接続し、曝気槽1内の液が微生物の増殖に適した中性(pH5−8)となるように、中性の水からなる逆洗浄液を供給している。
【0043】
さらに、曝気槽1の槽外に微生物添加槽40を付設し、配管41を介して曝気槽1に微生物を添加できるようにしている。配管41にはポンプP5を付設し、該ポンプP5を前記MLSS計に接続した制御手段18で制御し、曝気槽1内の微生物が減少すると、微生物添加槽40より曝気槽1内に微生物を供給できるようにしている。
【0044】
前記構成からなる膜分離活性汚泥処理装置では、曝気槽1内に投入される下水あるいは工場排水からなる原水は、固定床式の生物膜2の微生物と付着する。該生物膜2から剥離した懸濁成分は、中空糸膜分離モジュール4で捕捉でき、原水の浄化処理を行うことができる。
【0045】
前記膜分離活性汚泥方式で原水を処理する際、生物膜2を前記撮像素子50で微生物の状態を撮影すると共に、前記MLSS計15で懸濁成分を測定し、さらに、DO計16で原水の溶存酸素量をモニタリングしながら、生物膜用散気管5へ供給する空気量をフィードバック制御しているため、微生物の増殖を図ることができ、長期間安定して膜分離活性汚泥法で水処理できる。
【0046】
また、中空糸膜分離モジュール4には、分離膜用散気管7から常時散気を行っているため、中空糸3の表面が懸濁成分で目詰まりが発生するのを低減できる。
かつ、中空糸3の表面への懸濁成分の付着状態も撮像素子51で撮影して常時モニタリングし、所要時期に洗浄液を供給して洗浄しているため、分離膜の透過流速を低下させない。
特に、本発明では中空糸3をPTFEで形成しているため、高濃度の洗浄液で洗浄でき、難溶性の懸濁成分を除去できると共に、平滑性が良いため、洗浄液でスムーズに懸濁成分を除去できる。かつ、PH計17で曝気槽1内の液のPHを常時検出し、微生物の増殖に適した中性になるように、自動洗浄装置30から中性の水を逆洗水として供給しているため、薬液による微生物の悪影響を発生させない。
さらに、洗浄液を高圧で中空糸に噴射しても、PTFEは高強度があるため、中空糸の損傷や折れを発生させない利点がある。
【0047】
図4に第二実施形態を示す。
第一実施形態はPTFE製の中空糸を用いて、中空糸膜分離モジュールとしているが、第二実施形態ではPTFE製の平膜を用いた平膜エレメント61を集束した平膜式分離膜モジュール60としている点を相違させている。他の構成は第一実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0048】
平膜エレメント61は、下端を折り曲げてU形状に配置する多孔質延伸PTFE製シートからなる濾過膜62と、該濾過膜62の対向濾過部の間にポリエチレン樹脂製のネットからなる支持体63を介設し、処理液流路用の空間を確保している。
前記濾過膜62はU形状に折り曲げた状態で、対向する対向濾過部の外周縁を、上端の処理液取出口を空けて、熱融着してシールして外周封止部64を形成している。
前記処理液取出口には、集水管と接続する集水ヘッダー65を外周封止部64と固着して設けている。
【0049】
濾過膜62とする延伸PTFE多孔質膜は、単層でも良いし複層でもよい。
該濾過膜62は0.01〜20μmの空孔を備え、粒子径0.45μmの粒子捕捉率が90%以上のものを用いている。平均膜厚が5〜200μm、空孔を囲む繊維状骨格の平均最大長さを5μm以下としている。また、該濾過膜62は引張強度が10N/mm以上の強度を有している。かつ、3質量%の硫酸、4質量%の水酸化ナトリウム水溶液、有効塩素濃度10%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の各々に温度50℃で10日間浸漬しても透過水量が低下せず、損傷されない優れた耐薬品性を備えたものとしている。
【0050】
このように、平膜エレメント61の構成材は、多孔質延伸PTFEからなる濾過膜62、ネットからなる支持材63としているため、平膜エレメント61自体を容易に撓むフレキシブルなものとすることができる。かつ、濾過膜62を強度があり、平面保持力を有するPTFE製としているため、フレキシブルでありながら保形性を有する。かつ、平膜エレメント61は全体肉厚を2mmと非常に薄いものとしている。
このように、平膜エレメント61を薄く且つ撓みやすいものとしているため、下方に配置する分離膜用散気管からエアを噴出し気泡が発生すると、濾過膜62は気泡との接触で揺れが生じ、懸濁成分による目詰まりの発生を抑制することができる。
【0051】
前記のように分離膜を平膜とした場合にも、第一実施形態と同様に、生物膜モニタ手段、分離膜モニタ手段および自動洗浄装置を付設し、モニタリングしながら、生物膜用散気管から生物膜への散気を自動制御で行うと共に、分離膜の洗浄を自動で行うため、長期間安定して原水の浄化処理を行うことができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されず、生物膜用モニタ手段は撮影手段、MLSS計、DO計の並設に限定されず、いずれか1種でも良いし、紫外線分光計、濁度計を用いてもよい。また、分離膜用モニタ手段も前記撮影手段に限定されず、分離膜の内外差圧を常時モニタリングするセンサだけでもよい。
また、膜分離モジュールの構成も前記第一、第二実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1 曝気
2 生物膜
3 中空糸
4 中空糸膜分離モジュール
5 生物膜用散気管
7 分離膜用散気管
15 MLSS計
16 DO(溶存酸素)計
17 PH計17
30 自動洗浄装置
50、51 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曝気槽内に微生物の担体となる生物膜と、四弗化エチレン樹脂製の分離膜を備えた膜分離モジュールを配置し、
前記曝気槽内に前記微生物の活性状態をモニタリングする生物膜用モニタ手段と、分離膜への懸濁成分の付着状態をモニタリングする分離膜用モニタ手段と、
前記生物膜に向けて散気する生物膜用散気管と、前記膜分離モジュールに向けて散気する分離膜用散気管を配置し、
前記生物膜用モニタ手段でモニタリングしながら前記生物膜用散気管からの散気を制御すると共に、前記分離膜用モニタ手段でモニタリングしながら分離膜への洗浄液の供給を制御することを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項2】
前記四弗化エチレン樹脂製の分離膜は単層または複層の中空糸とし、前記膜分離モジュールは中空糸膜モジュールとし、
または、前記四弗化エチレン樹脂製の分離膜は単層または複層の平膜とし、前記膜分離モジュールは平膜モジュールとしている請求項1に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項3】
前記分離膜は、平均孔径が0.01μm以上、平均膜厚が10μm以上、JIS K 7113に規定の引張強度が10N/mm以上、PH10以上の強アルカリ洗浄液およびPH3以下の強酸性洗浄液に対する耐性を有する延伸PTFE多孔質体からなる請求項1または請求項2に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項4】
前記膜分離モジュールに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、これらの混合液からなる洗浄用薬液を供給する自動洗浄装置を付設し、
前記自動洗浄装置に前記分離膜用モニタ手段と接続した制御手段を設けている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項5】
前記自動洗浄装置から、逆洗水と、クロスフローで前記洗浄用薬液とを、交互に前記分離膜に供給している請求項4に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項6】
前記生物膜用モニタ手段を制御装置に接続し、
前記制御装置は、前記生物膜モニタ手段から得られるモニタリング結果により、前記生物膜用散気管への空気供給および、その供給量をフィードバック制御すると共に、付設した微生物貯留槽から曝気槽へ微生物の供給を制御している請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項7】
前記生物膜用モニタ手段は、微生物を撮像する撮像素子および該撮像素子と接続された画像処理装置、MLSS計、紫外線分光計、DO濃度計、濁度計から選択される1種以上であり、
前記分離膜用モニタ手段は、分離膜表面を撮影する撮像素子および該撮像素子と接続された画像処理装置とからなる請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項8】
前記生物膜と分離膜とは前記曝気槽内の両側に間隔をあけて配置し、該生物膜と分離膜に挟まれた間に、MLSS計、PH計、DO濃度計を配置し、
前記強濃度のアルカリ又は酸からなる洗浄液の供給により変化する液のPHを前記PH計で検出し、微生物の増殖に適したPHとなるように中性の洗浄液を供給し、
かつ、前記生物膜及び分離膜に近接した位置に撮像素子を配置している請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項9】
曝気槽内に旋回流を発生させる散気管を設けている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項10】
前記生物膜は四弗化エチレン樹脂製の多孔質体からなり、その表面および空孔に微生物を付着している請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−253397(P2010−253397A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107170(P2009−107170)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】