説明

膜形成装置及び膜形成方法

【課題】フットプリントを縮小すると共に処理ラインの長さを短縮し、装置コストの低減および生産性の向上を実現する。
【解決手段】被処理基板Gを水平方向に搬送すると共に、前記基板の幅方向に長い吐出口を有するノズルから前記塗布液を吐出し、前記基板上に塗布膜を形成する塗布処理手段6と、前記塗布膜が形成された前記基板を第1の加熱温度で加熱する第1の加熱処理手段11と、前記第1の加熱処理手段により加熱された前記基板を、前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度で加熱する第2の加熱処理手段12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成装置及び膜形成方法に関し、特に太陽電池パネルの受光面に反射防止膜を形成する膜形成装置及び膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、n型シリコンとp型シリコンとが積層された半導体構造を有し、この半導体に所定波長の光が当たると、光電効果により電気が発生する。この太陽電池は、太陽光などの光を効率よく吸収するために、通常、そのパネル(太陽電池パネルと呼ぶ)の受光面を反射防止膜で被覆している。
従来から太陽電池パネルに反射防止膜を形成する方法としては、例えば、特許文献1に開示されるように、プラズマCVD法により水素を含有する窒化シリコン膜を前記パネルに形成する技術などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−340358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラズマCVD法により反射防止膜を形成する場合、真空排気設備が必要になるなど、設備が大規模になるため、コストが嵩張るという課題がある。
前記課題を解決するものとして、所定の塗布液を太陽電池パネルに塗布し、塗布膜を焼成することにより反射防止膜を形成する方法がある。この方法によれば、真空環境でなくともパネル上に反射防止膜を形成することができ、コストを低減することができる。
【0005】
前記塗布膜形成によりパネル上に反射防止膜を形成する装置として、本願出願人は、従来、図11に示すようなレイアウト構成の膜形成装置50を用いている。
図11の膜形成装置50においては、先ずローダ51により、被処理基板である例えば長方形のガラス基板Gが1枚ずつロータリ・インパス装置52に供給される。
ロータリ・インパス装置52は、ローダ51から供給されたガラス基板Gの向きを(例えば短辺側が前後方向になるよう)変え、スクラブ洗浄ユニット53に搬入する。
スクラブ洗浄ユニット53に搬入されたガラス基板Gは、ブラシ洗浄により洗浄処理され、その後、ヒータを有する乾燥ユニット54により基板面に残る洗浄液を乾燥させる処理が施される。
【0006】
次いでガラス基板Gは、搬送ロボット55により塗布処理ユニット56に搬入され、この塗布処理ユニット56において基板幅方向に延びるスリット状のノズル口を有するノズル56aが基板Gの被処理面上を走査することによって前記被処理面に反射防止膜用の塗布膜が塗布形成される。
塗布膜形成されたガラス基板Gは、搬送ロボット57により塗布処理ユニット56から搬出されると共に減圧乾燥ユニット58に搬入される。
減圧乾燥ユニット58においては、ガラス基板Gはチャンバ(図示せず)内に収容され、前記チャンバ内が所定圧まで減圧されることによって、溶媒の大部分が除去される。
【0007】
減圧乾燥処理が施されたガラス基板Gは、搬送ロボット59により取り出されてパスユニット60に渡され、コンベア搬送により熱処理ユニット61に搬入される。
熱処理ユニット61において、ガラス基板Gは例えばコロ搬送されながらヒータ(図示せず)により所定温度に加熱され、被処理面上の塗布膜が焼成されて反射防止膜が形成される。また、ガラス基板Gは、熱処理ユニットを搬出されると直ぐさま冷却ユニット62により所定温度まで冷却され、コンベア搬送によりロータリ・インパス装置63に渡され、ロータリ・インパス装置63によりローダ51に戻される。
【0008】
しかしながら、図11に示す膜形成装置50にあっては、前記の一連の処理を実施するにあたり、3台もの搬送ロボットが必要となり、その結果、フットプリントが増大し、処理ラインの全長が長くなるという課題があった。
また、処理ラインの全長が長くなる上に、塗布処理ユニット56及び減厚乾燥ユニット58では、搬送ロボット55,57,59により1枚ずつガラス基板Gの搬入出作業を行う必要があるため、タクトタイムが長くなり、生産性が低下するという課題があった。
さらに従来は、熱処理ユニット61において基板G上の塗布膜を焼成する際、その表面から乾燥が進むために、膜内部の焼成が中途半端となる、或いは、膜全体を完全に焼成するための熱処理ユニットの長さが長くなるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、太陽電池パネルの受光面に反射防止膜を形成する膜形成装置において、装置のフットプリントを縮小すると共に処理ラインの長さを短縮し、装置コストの低減および生産性の向上を実現することのできる膜形成装置及び膜形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明に係る膜形成装置は、太陽電池パネルを構成する被処理基板に所定の塗布液を塗布し、形成された塗布膜を焼成することにより反射防止膜を形成する膜形成装置であって、前記被処理基板を水平方向に搬送すると共に、前記基板の幅方向に長い吐出口を有するノズルから前記塗布液を吐出し、前記基板上に塗布膜を形成する塗布処理手段と、前記塗布膜が形成された前記基板を第1の加熱温度で加熱する第1の加熱処理手段と、前記第1の加熱処理手段により加熱された前記基板を、前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度で加熱する第2の加熱処理手段とを備えることに特徴を有する。
尚、前記塗布処理手段により塗布膜が形成された被処理基板を収容すると共に、前記塗布膜に対し所定のガス流を吹き付けることにより塗布膜中の溶剤の蒸発を促進させる乾燥バッファ手段を備え、前記乾燥バッファ手段により塗布膜中の溶剤が蒸発された前記基板は、前記第1の加熱処理手段と前記第2の加熱処理手段とにより順に加熱処理されることが望ましい。
また、前記乾燥バッファ手段は、被処理基板を収容可能な棚部が上下に複数段設けられたバッファ部と、前記バッファ部の一側面側から対向する他側面側に向けて所定のガス流を形成するガス流形成手段とを備えることが好ましい。
【0011】
このように、被処理基板への塗布膜形成において、前記基板を平流し搬送しながら塗布処理を行うことによって、従来のような搬送ロボットによる塗布処理ユニットへの基板の搬入出作業を省略することができる。また、塗布膜中の溶剤を蒸発させるために、一時的に基板を収容するバッファにおいて所定のガス流を吹き付ける構成とすることで、従来の減圧乾燥処理を省略することができる。
即ち、搬送ロボットの数が削減され、減圧乾燥ユニットのような大掛かりな装置が不要となるため、フットプリントを縮小し、コストを低減することができると共に、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
更に、基板上の塗布膜を焼成するために第1の加熱温度と、それより高い第2の加熱温度の2段階の加熱処理を行う構成としたため、中途半端に焼成されることなく塗布膜内部まで完全に焼成することができる。
【0012】
また、前記第1の加熱処理手段と前記第2の加熱処理手段とは、それぞれ被処理基板を平流し搬送可能な処理棚が上下に複数段設けられ、前記各処理棚に搬入された前記基板は、前記第1の加熱処理手段から前記第2の加熱処理手段まで水平方向に搬送されながら順に加熱処理が施されることが望ましい。
このように構成することにより、複数の被処理基板に対し同時に焼成処理を行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0013】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る膜形成方法は、太陽電池パネルを構成する被処理基板に所定の塗布液を塗布し、形成された塗布膜を焼成することにより反射防止膜を形成する膜形成方法であって、前記被処理基板を水平方向に搬送すると共に、前記基板の幅方向に長い吐出口を有するノズルから前記塗布液を吐出し、前記基板上に塗布膜を形成するステップと、前記塗布膜が形成された前記基板を第1の加熱温度で加熱するステップと、前記第1の加熱温度で加熱処理された前記基板を、前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度で加熱するステップとを含むことに特徴を有する。
このようなステップを実施することにより、搬送ロボットの数が削減され、減圧乾燥ユニットのような大掛かりな装置が不要となるため、フットプリントを縮小し、コストを低減することができると共に、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
更に、基板上の塗布膜を焼成するために第1の加熱温度と、それより高い第2の加熱温度の2段階の加熱処理を行う構成としたため、中途半端に焼成されることなく塗布膜内部まで完全に焼成することができる。
【0014】
また、前記被処理基板上に塗布膜を形成するステップと、前記基板を第1の加熱温度で加熱するステップとの間において、前記塗布膜が形成された被処理基板を収容すると共に、前記塗布膜に対し所定のガス流を吹き付けることにより塗布膜中の溶剤の蒸発を促進させるステップを含むことが望ましい。
このように第1の加熱処理の前に、所定のガス流を吹き付けることによる塗布膜中の溶剤の蒸発促進処理を行うことにより、より短時間に完全な焼成処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽電池パネルの受光面に反射防止膜を形成する膜形成装置において、装置のフットプリントを縮小すると共に処理ラインの長さを短縮し、装置コストの低減および生産性の向上を実現することのできる膜形成装置及び膜形成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る膜形成装置の第1の実施形態のレイアウト構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1の膜形成装置が具備する乾燥バッファユニットの平面図である。
【図3】図3は、図2の乾燥バッファユニットのC−C矢視断面図である。
【図4】図4は、図1の膜形成装置が具備するプリベークユニットと、ベークユニットと、冷却ユニットの概略構成を示す断面図である。
【図5】図5は、図4のプリベークユニット及びベークユニットが有する処理棚の概略構成を示す断面図である。
【図6】図6は、図4の冷却ユニットが有する処理棚の概略構成を示す断面図である。
【図7】図7は、図1の膜形成装置の動作の流れを示すフローである。
【図8】図8は、本発明に係る膜形成装置の第2の実施形態のレイアウト構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、本発明に係る膜形成装置の第3の実施形態のレイアウト構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、図9に示した第3の実施形態の変形例を示すブロック図である。
【図11】図11は、従来の膜形成装置のレイアウト構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる実施の形態につき、図に基づいて説明する。図1は、本発明に係る膜形成装置の第1の実施形態のレイアウト構成を示すブロック図である。
この膜形成装置100は、クリーンルームに設置され、太陽電池パネル用の例えばガラス基板(基板Gと呼ぶ)を被処理基板とし、基板上に反射防止膜を形成するための一連の処理を行うものである。
【0018】
膜形成装置100は、横長のプロセスステーション1を配置し、その長手方向(X方向)の一端部にローダ2を配置している。
ローダ2は、基板Gを多段に積み重ねるようにして複数枚収容したカセット(図示せず)を複数有し、各カセットに対し基板Gを搬入出するポートである。
プロセスステーション1は、その長手方向(X方向)に延在する平行かつ逆向きの一対のラインA,Bに各処理を工程順に配置している。
具体的には、ラインAには、ローダ2から基板Gを受け渡すロータリ・インパス装置3と、基板洗浄を行うスクラブ洗浄ユニット4と、基板洗浄液を除去するための乾燥処理ユニット5と、基板Gに反射防止膜形成のための所定の塗布膜を塗布する塗布処理ユニット6(塗布処理手段)とが配置されている。
【0019】
また、ローダ2とは反対側の端部であって、ラインA,Bの間には、前記塗布膜中の溶剤を蒸発促進させる乾燥バッファユニット7(乾燥バッファ手段)が設けられ、その前後には、それぞれ搬送ロボット8,9が配備されている。
また、ラインBには、基板Gを所定の高さに昇降移動させると共に搬送するリフトコンベア10と、多段に構成され、各段で基板Gを搬送しながら第1の加熱処理を行うプリベークユニット11(第1の加熱処理手段)と、続けて第2の加熱処理を行うベークユニット12(第2の加熱処理手段)とが配置されている。
【0020】
更に、ベークユニット12の後段には、同様に多段に構成され、基板Gを所定温度まで冷却する冷却ユニット13と、所定の高さに昇降移動して冷却ユニット13により冷却された基板Gを受け取り後段に渡すリフトコンベア14と、リフトコンベア14から受け取った基板Gを所定方向に回転させてローダ2に戻すロータリ・インパス装置15とが配置されている。尚、前記の各ユニット間には、必要に応じて基板搬送のためのコンベア装置20及びパスユニット21が配備されている。
【0021】
前記塗布処理ユニット6は、コンベア搬送により搬入された基板Gを、続けて処理面を水平な状態で水平方向に搬送する(以後、平流し搬送と記載する)ためのコロ搬送部6aと、コロ搬送部6aにより平流し搬送される基板Gに対し、基板幅方向に長いスリット状の吐出口(図示せず)から所定の塗布液を基板面に吐出するノズル6bとを有している。
即ち、コロ搬送部6aにより平流し搬送される基板Gの前端側から後端側まで、相対的にノズル6bが走査され、基板面に塗布液が所定の膜厚で塗布されるように構成されている。
【0022】
また、乾燥バッファユニット7は、図2(平面図)及び図3(図2のC−C矢視断面図)に模式的に示すように、基板収容可能な棚部16aが上下に多段(図では8段)に設けられたケーシング16(バッファ部)を有し、各段に基板Gを収容可能となされている。各基板Gは、各段において複数並列に配置された支持棒17上に載置される。
前記ケーシング16において、搬送ロボット8,9にそれぞれ臨む側は開口しており、その開口を介してロボットアーム(図示せず)が進退し、所望の段に対して基板Gの搬入出が可能となされている。
【0023】
また、前記ケーシング16において、左右両側の面は、例えば基板面に合わせて平行に形成されたスリット、或いは多数の連通孔が設けられている(図示せず)。そして、一方の側面には、所定温度の不活性ガスを、所定速度で噴出するガス噴出部18が設けられ、他方の側面には、前記ガス噴出部18から噴出された不活性ガスを吸引するガス吸引部19が設けられている。このように一方にガス噴出部18が設けられ、他方にガス吸引部19が設けられることにより、その間に安定した流速のガス流が形成される(即ち、ガス噴出部18、ガス吸引部19によりガス流形成手段が構成される)。
【0024】
尚、より好ましくは、前記ケーシング16の一側面側と、それに対向する他側面側とに、ガス噴出部18とガス吸引部19とを共に設け、形成されるガス流の方向を例えば所定時間毎に切り替えることが望ましい。そのように構成することにより、各段に載置された基板G上の塗布膜に対して、より均一にガス流を吹き付けることができる。
また、前記ガス噴出部18とガス吸引部19とにより形成されるガス流の温度は、周囲の雰囲気温度(室温、例えば25℃)に近いほど好ましく、それにより塗布膜表面に急激な乾燥を防止し、塗布膜内部から効果的に溶媒を蒸発させることができる。
【0025】
また、リフトコンベア10、14の間に順に配置されるプリベークユニット11と、ベークユニット12と、冷却ユニット13とは、図4に模式的に示すように、それぞれ基板Gを平流し搬送可能な処理棚が上下方向に多段(図では4段)に設けられている。
プリベークユニット11は、基板進行方向にユニット11a,11bの2基が配置され、前段のユニット11aは、基板温度が所定温度となるまで第1の加熱温度(例えば100℃〜150℃)で基板Gを加熱し、後段のユニット11bは、昇温された基板温度を維持するものである。ここで、基板Gの処理温度を例えば100℃とする場合、後段のユニット11bは100℃に設定される。そして、前段のユニット11aは、基板Gが短時間で100℃に到達するように、100℃よりも高い150℃に設定される。
【0026】
また、ベークユニット12は、基板進行方向に沿ってユニット12a,12b,12c,12dの4基が配置されている。先頭のユニット12aは、基板温度が所定温度になるまで、基板Gを更に第2の加熱温度(例えば200℃〜300℃)で加熱するものである。また、後段のユニット12b,12c,12dは、昇温された基板温度を維持し、塗布膜を完全に焼成するために設けられている。ここで、基板Gの処理温度を例えば250℃とする場合、後段のユニット12b、12c、12dは250℃に設定される。そして、先頭のユニット12aは、基板Gが短時間で250℃に到達するように、250℃よりも高い300℃に設定される。
【0027】
プリベークユニット11におけるユニット11a、12bの各処理棚22、及びベークユニット12におけるユニット12a〜12dの各処理棚23は、例えば図5に示すように搬送コロ24により基板Gを搬送可能な構造となされている。
各処理棚22、23の基板搬送方向に沿った前面及び後面には、基板Gが通過可能な開口22a,23a及び開口22b、23bが設けられている。それにより、プリベークユニット11のユニット11aにあっては、各処理棚22に対し、リフトコンベア10から基板Gの搬入が可能となっている。また、その他の各処理棚22,23にあっては、コロ搬送により基板Gの搬入出が可能となっている。
また、基板Gの上方及び下方には、基板幅方向に長い短冊状のヒータ25が複数配備され、そのヒータ25の熱によりコロ搬送される基板Gが加熱される構成となっている。
尚、ヒータ25の駆動制御は、少なくともプリベークユニット11とベークユニット12とで独立に行うことができるよう構成されている。
【0028】
冷却ユニット13は、ベークユニット12で加熱された基板Gを所定温度(例えば50℃以下)まで冷却するために設けられている。
図6に示すように、冷却ユニット13の各処理棚26は、基板搬送方向に沿った前面及び後面に、基板Gが通過可能な開口26a及び開口26bが設けられている。また、各処理棚26には、プリベークユニット11及びベークユニット12と同様に複数の搬送コロ24を備えている。この構成により、ベークユニット12からコロ搬送されてきた基板Gをそのまま受け取ることが可能となっている。また、リフトコンベア14により各処理棚26から基板Gを搬出できるようになっている。
また、各処理棚26において、基板Gの上方及び下方には冷却プレート27が設けられている。この冷却プレート27には、複数のエア噴出孔27aが形成され、それらエア噴出孔27aから噴出された所定温度のエアが、基板Gの上下面に吹き付けられるように構成されている。
【0029】
続いて、この膜形成装置100による基板Gへの反射防止膜形成の一連の動作について、図7のフローに沿って説明する。
先ず、ローダ2から長方形状の基板Gを受け取ったロータリ・インパス装置3は、基板Gの長辺側が前後方向となるよう基板Gを回転し、スクラブ洗浄ユニット4に搬入する。尚、このように基板Gの長辺側を前後方向とするのは、処理ラインの全長を短くするためである。
スクラブ洗浄ユニット4では、基板Gを水平の状態のまま搬送しながら洗浄ブラシ(図示せず)によりスクラブ洗浄され、基板表面に付着している塵等が除去される(図7のステップS1)。
【0030】
スクラブ洗浄された基板Gは、平流しされて乾燥ユニット5に搬入され、ヒータ加熱により、基板表面に残る洗浄液が乾燥される(図7のステップS2)。
基板Gはコンベア搬送されて塗布処理ユニット6に搬入され、塗布処理ユニット6ではコロ搬送によりノズル6bの下を通過する。このとき、ノズル6bから反射防止膜形成のための所定の塗布液が基板G上に吐出され、基板Gの上面(被処理面)には、所定の厚さの塗布膜が形成される(図7のステップS3)。このように塗布処理ユニット6にあっては、基板Gは搬送されながら塗布液が塗布されるため、従来(図11)のような基板搬入のための搬送ロボットは必要なく、また、タクトタイムが短縮される。
【0031】
塗布膜形成された基板Gは、コンベア搬送等により搬送ロボット8に受け渡され、乾燥バッファユニット7に搬入され、一時的に収容される。この乾燥バッファユニット7では、図3に示したように複数の基板Gが収容され、例えば、周囲の雰囲気温度に略等しい温度のガス流が基板Gの上下面に形成される。それにより、基板Gに形成された塗布膜中の溶剤が効率よく蒸発促進される(図7のステップS4)。
【0032】
溶剤蒸発のために乾燥バッファユニット7に所定時間収容された基板Gは、搬送ロボット9により取り出され、パスユニット21を介してリフトコンベア10に渡される。
リフトコンベア10は、基板Gをプリベークユニット11におけるユニット11aの処理棚22に搬入する。尚、図4に示したようにプリベークユニット11は多段(図では4段)に構成されているため、リフトコンベア10は、乾燥バッファユニット7から次々と基板Gを受け取り、時間を空けること無く空きの処理棚22に基板Gを搬入する。
【0033】
プリベークユニット11では、基板Gはユニット11aにおいて基板温度が所定温度となるまで第1の加熱温度(例えば100℃〜150℃)で加熱され、後段のユニット11bにおいて、昇温された基板温度が維持される(図7のステップS5)。これにより、基板G上の塗布膜は、その表面から焼成が進行するのではなく、塗布膜内部から焼成が進行する。
【0034】
コロ搬送される基板Gがプリベークユニット11からベークユニット12に搬入されると、先ず、ユニット12aにおいて基板Gは前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度(例えば200℃〜300℃)で加熱され、所定温度まで昇温される。
そして、ユニット12b〜12dまで搬送される間、前記加熱温度が維持され、基板G上の塗布膜が完全に焼成されて反射防止膜が形成される(図7のステップS6)。
【0035】
また、基板Gがベークユニット12から冷却ユニット13に搬入されると、基板Gは所定温度(例えば50℃以下)まで冷却され、リフトコンベア14により取り出される(図7のステップS7)。
そして、基板Gはリフトコンベア14からロータリ・インパス装置15に渡され、基板Gの短辺が基板搬送方向の前後となるよう回転され、ローダ2に戻される。
【0036】
以上のように、本発明に係る膜形成装置の第1の実施形態によれば、基板Gへの塗布膜形成において、基板Gを平流し搬送しながら塗布処理を行うことによって、従来のような搬送ロボットによる塗布処理ユニットへの基板Gの搬入出作業を省略することができる。また、塗布膜中の溶剤を蒸発させるために、一時的に基板Gを収容するバッファにおいて所定のガス流を吹き付ける構成としたため、従来の減圧乾燥処理を省略することができる。即ち、搬送ロボットの数が削減され、減圧乾燥ユニットのような大掛かりな装置が不要となるため、フットプリントを縮小し、コストを低減することができると共に、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
更に、基板G上の塗布膜を焼成するために第1の加熱温度と、それより高い第2の加熱温度の2段階の加熱処理を行う構成としたため、中途半端に焼成されることなく塗布膜内部まで完全に焼成することができる。
【0037】
続いて、本発明に係る膜形成装置の第2の実施形態について説明する。図8は、この第2の実施形態における膜形成装置のレイアウト構成を示すブロック図である。
尚、図8に示す膜形成装置101においては、前記第1の実施形態において図1に示した膜形成装置100と、そのレイアウト構成の一部のみが異なるため、同様の機能を有する個々のユニット等は同じ符号で示し、その詳細な説明は省略する。
【0038】
プロセスステーション1は、第1の実施形態と同様に、その長手方向(X方向)に延在する平行かつ逆向きの一対のラインA,Bに各処理を工程順に配置している。
ラインAには、ロータリ・インパス装置3と、スクラブ洗浄ユニット4と、乾燥処理ユニット5と、塗布膜形成ユニット6とが図1と同様に順に配置されている。
【0039】
また、ラインAにおいて、塗布膜形成ユニット6の下流側には、エレベータバッファユニット30が配置されている。このエレベータバッファユニット30は、多段に構成されて昇降移動可能な乾燥バッファ部31と、その前後に配置された補助コンベア機構32とを有している。乾燥バッファ部31の各段は、基板Gを搬送可能なコンベア機構(図示せず)を有している。また、補助コンベア機構32は、前後ユニットの基板搬送路の高さ位置に固定され、乾燥バッファ部31が昇降移動して所定の段が補助コンベア機構32の高さに合わせられると、その段に対してコンベア搬送により基板Gの搬入出が可能な構成となっている。
また、乾燥バッファ部31は、図1に示した乾燥バッファユニット7と同様に、その左右側面にエア噴出部18とエア吸引部19とが設けられ、各段に収容された基板Gに対して所定のガス流が吹き付けられるように構成されている。
【0040】
また、ラインAにおいて、エレベータバッファユニット30の下流側には、クロスコンベア33が配置されている。このクロスコンベア33は、長辺側が前後方向として搬入された基板Gを、その短辺側を前後方向として搬出するものである。
一方、ラインBには、短辺側が前後方向として搬入された基板Gを、その長辺側を前後方向として搬出するクロスコンベア34と、リフトコンベア10と、プリベークユニット11と、ベークユニット12と、冷却ユニット13と、リフトコンベア14と、ロータリ・インパス装置15とが配置されている。
【0041】
この膜形成装置101によれば、塗布膜形成ユニット6の下流にエレベータバッファユニット30を設けたことにより、バッファへの基板Gの搬入出を行う搬送ロボットを全て省くことができる。
即ち、この第2の実施形態によれば、搬送ロボットを全て省くことによりフットプリントを更に縮小し、コストを低減することができる。
【0042】
続いて、本発明に係る膜形成装置の第3の実施形態について説明する。図9は、この第3の実施形態における膜形成装置のレイアウト構成を示すブロック図である。
尚、図9に示す膜形成装置102においては、前記第1の実施形態において図1に示した膜形成装置100と、そのレイアウト構成の一部のみが異なるため、同様の機能を有する個々のユニット等は同じ符号で示し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
プロセスステーション1は、第1の実施形態と同様に、その長手方向(X方向)に延在する平行かつ逆向きの一対のラインA,Bに各処理を工程順に配置している。
ラインAには、ロータリ・インパス装置3と、スクラブ洗浄ユニット4と、乾燥処理ユニット5と、塗布膜形成ユニット6とが図1と同様に順に配置されている。
また、ラインAにおいて塗布膜形成ユニット6の下流には、ロータリ・インパス装置35と、搬送ロボット36と、乾燥バッファユニット7とが設けられている。ロータリ・インパス装置35は、長辺側が前後方向として搬入された基板Gを回転し、短辺側が前後方向とするものである。搬送ロボット36は、前記回転された基板Gを受け取り、乾燥バッファユニット7に搬入する、或いは、乾燥バッファユニット7から基板Gを受け取り、ラインB側のパスユニット21に引き渡すものである。
【0044】
一方、ラインBには、前記パスユニット21の下流側に、リフトコンベア10と、プリベークユニット11と、ベークユニット12と、冷却ユニット13と、リフトコンベア14と、ロータリ・インパス装置15とが配置されている。
【0045】
このように構成された膜形成装置102によれば、乾燥バッファユニット7への基板Gの搬入出を1台の搬送ロボット36により行うことができる。
即ち、この第3の実施形態によれば、第1の実施形態の構成(図1)と比較して、より搬送ロボットの数を削減することができ、フットプリントを縮小し、コストを低減することができる。
尚、第3の実施形態の変形例を図10に示す。図10のレイアウトは、図9の搬送ロボット36と乾燥バッファユニット7とを、ラインB側に配置したものである。この場合、パスユニット21、コンベア装置20等をより削減することができ、更にフットプリントを縮小し、処理ラインの長さを短縮することができる。
【0046】
尚、前記第1乃至第3の実施の形態においては、処理ラインの長さを短くするために、基板Gの長辺側が前後方向となるようにしているが、それに限らず、基板Gの短辺側が前後方向となるようにして、それに対応する各ユニットを構成しても、本発明による効果を充分に得ることができる。
また、乾燥バッファユニット7において、ガス噴出部18を設けたが、ガス噴出部18を設けずに、乾燥バッファユニット7の上に、周囲の雰囲気を吸引してダウンフローを形成するファンフィルタユニット(FFU)を搭載してもよい。そして、FFUにより形成されたダウンフローを乾燥バッファユニット7内に供給し、ガス吸引部19から乾燥バッファユニット7内の雰囲気を吸引する構成としてもよい。また、乾燥バッファユニット7において、ガス噴出部18、ガス吸引部19、ファンフィルタユニットのいずれも有する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 プロセスステーション
2 ローダ
3 ロータリ・インパス装置
4 スクラブ洗浄ユニット
5 乾燥処理ユニット
6 塗布処理ユニット(塗布処理手段)
7 乾燥バッファユニット(乾燥バッファ手段)
8 搬送ロボット
9 搬送ロボット
10 リフトコンベア
11 プリベークユニット(第1の加熱処理手段)
12 ベークユニット(第2の加熱処理手段)
13 冷却ユニット
14 リフトコンベア
15 ロータリ・インパス装置
16 ケーシング(バッファ部)
16a 棚部
17 支持棒
18 ガス噴出部(ガス流形成手段)
19 ガス吸引部(ガス流形成手段)
20 コンベア装置
21 パスユニット
22 処理棚
23 処理棚
24 搬送コロ
25 ヒータ
26 処理棚
27 冷却プレート
31 乾燥バッファ部(乾燥バッファ手段)
100 膜形成装置
101 膜形成装置
102 膜形成装置
G ガラス基板(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルを構成する被処理基板に所定の塗布液を塗布し、形成された塗布膜を焼成することにより反射防止膜を形成する膜形成装置であって、
前記被処理基板を水平方向に搬送すると共に、前記基板の幅方向に長い吐出口を有するノズルから前記塗布液を吐出し、前記基板上に塗布膜を形成する塗布処理手段と、
前記塗布膜が形成された前記基板を第1の加熱温度で加熱する第1の加熱処理手段と、
前記第1の加熱処理手段により加熱された前記基板を、前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度で加熱する第2の加熱処理手段とを備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項2】
前記塗布処理手段により塗布膜が形成された被処理基板を収容すると共に、前記塗布膜に対し所定のガス流を吹き付けることにより塗布膜中の溶剤の蒸発を促進させる乾燥バッファ手段を備え、
前記乾燥バッファ手段により塗布膜中の溶剤が蒸発された前記基板は、前記第1の加熱処理手段と前記第2の加熱処理手段とにより順に加熱処理されることを特徴とする請求項1に記載された膜形成装置。
【請求項3】
前記乾燥バッファ手段は、被処理基板を収容可能な棚部が上下に複数段設けられたバッファ部と、前記バッファ部の一側面側から対向する他側面側に向けて所定のガス流を形成するガス流形成手段とを備えることを特徴とする請求項2に記載された膜形成装置。
【請求項4】
前記第1の加熱処理手段と前記第2の加熱処理手段とは、それぞれ被処理基板を平流し搬送可能な処理棚が上下に複数段設けられ、
前記各処理棚に搬入された前記基板は、前記第1の加熱処理手段から前記第2の加熱処理手段まで水平方向に搬送されながら順に加熱処理が施されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された膜形成装置。
【請求項5】
太陽電池パネルを構成する被処理基板に所定の塗布液を塗布し、形成された塗布膜を焼成することにより反射防止膜を形成する膜形成方法であって、
前記被処理基板を水平方向に搬送すると共に、前記基板の幅方向に長い吐出口を有するノズルから前記塗布液を吐出し、前記基板上に塗布膜を形成するステップと、
前記塗布膜が形成された前記基板を第1の加熱温度で加熱するステップと、
前記第1の加熱温度で加熱処理された前記基板を、前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度で加熱するステップとを含むことを特徴とする膜形成方法。
【請求項6】
前記被処理基板上に塗布膜を形成するステップと、前記基板を第1の加熱温度で加熱するステップとの間において、
前記塗布膜が形成された被処理基板を収容すると共に、前記塗布膜に対し所定のガス流を吹き付けることにより塗布膜中の溶剤の蒸発を促進させるステップを含むことを特徴とする請求項5に記載された膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−84831(P2013−84831A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224620(P2011−224620)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】