説明

膵リパーゼ阻害剤

【課題】本発明の課題は、生体内での脂質の消化吸収に必須の膵リパーゼの作用を阻害することにより脂肪の吸収を効果的に阻害して、肥満、高脂血症などの予防や治療に有効な安全性の高い抗肥満剤や、肥満の抑制又は予防用飲食品を提供すること。
【解決手段】マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種を溶媒により抽出することにより得られる成分の1又は2以上を有効成分とする膵リパーゼ阻害剤、脂肪吸収阻害剤、及び抗肥満剤とする。また、これらを飲食品に添加して肥満の抑制又は予防用飲食品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵リパーゼ阻害剤、脂肪吸収阻害剤、抗肥満剤等に関し、より詳しくは、マテ葉等のハーブ植物、アムラ果実等の果実類及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種を溶媒により抽出することにより得られるエキス成分の1又は2以上を有効成分とする膵リパーゼ阻害剤、脂肪吸収阻害剤、抗肥満剤及び前記エキス成分を含有する飲食品等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国を含め先進諸外国では食生活が豊かになり、カロリーや脂質の過剰摂取や運動不足により、肥満,高脂血症,糖尿病,高血圧症などに罹患する人が増加し、これらは重大な疾患の原因の1つとされており、健康上大きな問題となっている。30歳代の男性は3人に1人が過体重か肥満であり、40〜50歳代では4割近くが肥満である。また、60歳以上の女性で、肥満が多いといわれている。このような情勢にあって、我が国では、「食育基本法」が平成17年7月15日施行され、正しい食生活を推進するよう行政指導が行われることとなった。
【0003】
肥満は、摂取エネルギーと消費エネルギーのアンバランスを特徴とするエネルギー代謝異常であり、結果として脂肪細胞に中性脂肪が過剰に蓄積した状態と定義され、様々な肥満合併症を引き起こし、その対策が急務とされている。肥満の治療・予防の手段として、従来、食事内容を低カロリ−や低脂肪のものに変えるなどして摂取カロリ−を低減させること、運動などして消費カロリ−を増やすこと、あるいは、薬物や食品成分に由来する生理活性物質を摂取することなどが行われている。このようなことを考慮しても、余剰のエネルギーだけを最小限度にとどめ、エネルギー源以外の栄養成分はできるだけ除去しない食生活を長期にわたり続けることは実際にはかなり難しい。また、薬物の服用は副作用やコスト上の問題があり、例えば、米国など多くの国で膵リパーゼ阻害薬としてオリルスタットが最近臨床的に使われているが、この薬剤は、突然の便意、脂肪便等の副作用が指摘されている。さらに、食品成分に由来する生理活性物質、例えば、培焼デキストリン(例えば、特許文献1参照),分岐脂肪酸(例えば、特許文献2参照),大豆又は穀類由来の膵リパ−ゼインヒビタ−(例えば、特許文献3参照)等が知られているが、これらの摂取は、摂取時の風味,食感が損なわれ、摂取しても有効性は低く、大量の摂取を必要とし、ときとして、緩下作用などの副作用が生ずる。
【0004】
従来、グアーガム,ローカストビーンガム,タラガムなどの、ガラクトースとマンノースから構成されるガラクトマンナンの酵素分解物に脂質低下作用があることも知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
また、コンニャクマンナン,グアーガム,キサンタンガムなどの高粘度多糖類を高圧ホモジナイザーで低粘性化(200cps以下)した低粘度多糖類にもコレステロール値上昇抑制作用が保持されること(例えば、特許文献5参照)や、キシログルカン分解物を有効成分とする脂質増加抑制剤(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【0006】
一方、古くから、植物等に由来する成分が抗肥満剤或いはリパーゼ阻害剤として有用であることが知られてきているが、最近では、その安全性が見直され、それに関連する報告も多い。例えば、ブドウ種子、カキ葉、プーアル茶、オトギリソウ、リンゴ、タラ、ウラジロガシ、バナバ葉、アカメガシワ、サンシュユ、訶子、トチュウ葉から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物を有効成分とする抗肥満剤(例えば、特許文献7参照)や、ウワウルシ、西洋サクラソウ、ボダイジュ、アスパラガス、イチョウ、ウアナルポマチョ、オオアワダチソウ等の植物及びローヤルゼリーから成る群より選ばれる少なくとも1種を含有するリパーゼ阻害剤(例えば、特許文献8参照)、同じく植物由来のベルゲニンと、少なくともフォルスコリン及び/又はアスチルビンとを含有する肥満抑制剤(例えば、特許文献9参照)、アージュン、アカラカラ、アサフォフェティダ、アショカ、アムラ、アルゴドエイロ、アルメキシア、アレクリム等天然由来の植物のリパーゼ阻害剤(たとえば、特許文献10参照)、マンシュウウコギから抽出単離される化合物である3,4-seco-lupane型トリテルペノイドサポニンを有効成分とするリパーゼ阻害活性剤(例えば、特許文献11参照)等が報告されている。
【0007】
【特許文献1】特開平3−247258号公報
【特許文献2】特開平3−247258号公報
【特許文献3】特開平4−327536号公報
【特許文献4】特開平2−229117号公報
【特許文献5】特公平4−29646号公報
【特許文献6】特開平7−147934公報
【特許文献7】特開平9−227398号公報
【特許文献8】特開2003−192605号公報
【特許文献9】特開2004−91464号公報
【特許文献10】特開2005−8572号公報
【特許文献11】特開2006−22095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、人体に安全で副作用のない、主として植物由来の膵リパーゼ阻害活性、脂肪吸収阻害活性及び高い抗肥満効果を有する、膵リパーゼ阻害剤、脂肪吸収阻害剤、抗肥満剤、及びこれらを含む飲食品等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来、生薬とされている植物の根、茎、葉、花をはじめ、その他の植物、ミツバチに関連した産物であるプロポリス等111種類を選びこれらの抽出物(抽出エキス)について、肥満に影響するリパーゼ阻害活性の有無を測定したところ、これら111種類のうち2種類のマテ葉、2種類の月見草種子、プロポリス、アムラ果実、ヨモギ葉、シソ葉、生コーヒー豆種子、カシス果実、メリッサ葉、赤ブドウ葉の各抽出物が75%以上の高い阻害活性を示した。そこで、これら12種類の抽出物の濃度を変えて膵リパーゼ阻害活性を測定し、検討したところ、これら12種には濃度依存的な膵リパーゼ阻害活性がみられた。さらに、12種類について検討し、その中から6種類が動物実験による生体内での脂肪吸収阻害作用のあることを確認し、抗肥満剤として使用可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、〔1〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分とする膵リパーゼ阻害剤や、〔2〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有する膵リパーゼ阻害活性組成物や、〔3〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分とする脂肪吸収阻害剤に関する。
【0011】
また本発明は、〔4〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有する脂肪吸収阻害活性組成物や、〔5〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分とする抗肥満剤や、〔6〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有する抗肥満剤活性組成物に関する。
【0012】
さらに本発明は、〔7〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有する肥満の抑制又は予防用飲食品や、〔8〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有し、抗肥満作用を有するものであって、肥満の抑制又は予防のために用いられる旨の表示を付した飲食品や、〔9〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を飲食品に配合することを特徴とする肥満の抑制又は予防用飲食品の製造方法や、〔10〕マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を、肥満の抑制又は予防用飲食品の配合剤として使用する方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、生体内での脂質の消化吸収に必須の膵リパーゼの作用を阻害することにより脂肪の吸収を効果的に阻害して、肥満、高脂血症などの予防や治療に有効な安全性の高い抗肥満剤や、肥満の抑制又は予防用飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の膵リパーゼ阻害剤、脂肪吸収阻害剤、及び抗肥満剤としては、マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分とするものであれば特に制限されるものでなく、本発明の膵リパーゼ阻害活性組成物、脂肪吸収阻害活性組成物、及び抗肥満剤活性組成物としては、マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有するものであれば特に制限されるものでなく、通常これらは、サプリメント、医薬、食品添加物等として用いられる。
【0015】
上記マテ(yerba mate;学名:Ilex paraguariensis)は、ブラジル、パラグァイ、アルゼンチン三国に接するイグアスの滝を中心に半径500kmも生育する常緑樹で、モチノキ科モチノキ属に属する植物の一種であり、その葉は茶として飲用されているもので、マテ茶には、マティン、タンニン、クエン酸、ビタミンA、B、B、C、鉄、カルシウムが含まれている。本発明においては、マテ葉を用いるが、その葉を乾燥して用いることが好ましく、乾燥葉を必要に応じて粉砕してもよい。
【0016】
上記アムラ(学名:Embica offinalis、Gaertn.)は、アーマラキーとも呼ばれるトウダイグサ科の木の名前で、野生ではインド、インドシナ、台湾、中国南部の海抜1500m以上の山の斜面に生えている。樹高3〜8mの落葉亜高木、葉は小枝に2列に互生し、葉身は長さ約10mm、幅約2〜3mmの長方形、花は黄色で小さく、4〜5月に咲く。果実は球形で、やや6角形で、サイズは平均18〜25mmである。果実、種、葉、根、幹、花にいたるまで薬として利用され、果実は収穫時は薄い黄緑色をしており乾燥すると黒色となる。乾燥しても栄養成分の劣化が起こりにくいため、乾燥したものが流通している。本発明においては、生の果実を用いることができるが、乾燥果実を用いることが好ましく、乾燥果実を必要に応じて粉砕してもよい。
【0017】
上記カシスは、ヨーロッパ原産のユキノシタ科の植物で、和名は黒(フサ)スグリといい、ベリーの一種である。カシスはブルーベリーより乾燥と寒さに強く、寒い北方や高山でも元気に生育するので、スカンジナビア半島の北部に多く見かけられる。初夏に収穫されるカシスの果実は直径8〜10mm程度の濃い紫色をした球形で、酸味が強い。カシスにはビタミンCを始め、ビタミンEやマグネシウム、鉄などのミネラルが豊富に含まれ、また、抗酸化物質であるポリフェノールの1種である青紫色の天然色素アントシアニンが含まれている。本発明においては、生の果実を用いることができるが、乾燥果実を用いることが好ましく、乾燥果実を必要に応じて粉砕してもよい。
【0018】
上記ヨモギは、別名モチグサ、ツクロイグサとも言われ、昔から葉は薬用として食べたり飲んだりされていた。薬用部分は、葉や根であり、葉は5〜7月に採集される。高血圧、動脈硬化、胃腸病、頭痛、神経痛、貧血には内服され、腰痛、腹痛、冷え症、痔には、干したヨモギの葉を入浴剤として使用されている。本発明においては、葉の部分を用いるものであり、乾燥したヨモギ葉を用いることが好ましい。また、必要に応じて粉砕した乾燥ヨモギ葉を用いることもできる。
【0019】
上記メリッサ(学名:Melissa officinalis)は、別名レモンバームとも呼ばれ、地中海地方原産の植物で、この精油の大部分はフランスで生産されている。メリッサは、鉄分を含んだ土壌を好み、草丈60センチ程になり、少し毛が生え、へりにぎざぎざをもつ小さい葉をつけ、花は黄色がかった花をつける。花と葉は水蒸気蒸留して精油を得、主要成分は、シトロネラール、シトラールであり、作用として強壮、鎮痙、消炎、緩和がある。本発明では、葉の部分を用いるものであり、乾燥した葉を用いることが好ましい。また、必要に応じて粉砕した乾燥メリッサ葉を用いることもできる。
【0020】
上記プロポリスは、蜂蜜が採取した樹液に唾液や分泌物等を混ぜて作る樹脂状の物質であって、巣各部の補強等に使用されており、このプロポリスは、フラボノイド、p−クマル酸、カフェー酸等の有機酸やそのエステル類、芳香油、蜜蝋、種々のミネラル及びビタミン類等の多くの有効成分を含有する。従来から、プロポリスは、その薬理作用として免疫増強作用、抗菌作用及び抗酸化作用を持つといわれており、最近では、制がん効果や老化防止効果を有することが分かってきている。本発明においては、プロポリスの乾燥粉末を用いることが好ましい。
【0021】
本発明で抽出に用いる溶媒としては特に制限されず、有機溶媒、例えば、水に溶ける有機溶媒などが用いられ、例えば、アルコール、アルコール水溶液、アセトン、アセトニトリル等を挙げることができる。アルコールとしては、例えば、エタノールを好適に挙げることができる。その他、溶媒として水を用いることもできる。そして、プロポリスでは、有機溶媒抽出法のみならず、水抽出法、超臨界抽出法等による抽出法を組み合わせて抽出することもできる。
【0022】
既に市販されている抽出物を用いる場合は、蒸留水を混合し、遠心分離して得られた上清を各種濃度に調整する。また、生葉・果実の場合は、乾燥、粉末化して、エタノールを加えスターラーで撹拌しながら室温で一晩抽出する。抽出液をろ過し、ろ液を減圧濃縮後、凍結乾燥することにより各抽出物を得る。水抽出の場合は、乾燥物に蒸留水を加え、スターラーで撹拌しながら室温で一晩抽出し、抽出液をろ過し、ろ液を凍結乾燥することにより抽出物を得る。プロポリスは、有機溶媒により、或いは、有機溶媒、水抽出法、超臨界抽出法等による抽出法を組み合わせて抽出する。
【0023】
本発明の膵リパーゼ阻害剤、脂肪吸収阻害剤、抗肥満剤は、経口用の健康サプリメントや経口用の医薬品として、また本発明の膵リパーゼ阻害活性組成物、脂肪吸収阻害活性組成物、及び抗肥満剤活性組成物は、経口用の健康サプリメントや食品添加物(配合剤)として用いられる。経口用の健康サプリメントとして用いる場合は、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、マルチトール、ソルビトール、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、アミノ酸類、色素、香料、保存料等を適宜配合することができ、例えば、粉末、顆粒、カプセル剤、錠剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で食事の前後に経口的に摂取することができる。
【0024】
医薬品として用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。また、粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができる。また、投与量は、肥満の程度、患者の体重、投与形態等により適宜選定することができるが、食事の前後に摂取することが好ましい。
【0025】
本発明においては、マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種を溶媒により抽出することにより得られる成分を肥満の抑制又は予防を目的として飲食品に添加して、飲食することができる。本発明の肥満の抑制又は予防用飲食品としては、マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有するものであれば特に制限されない。
【0026】
また、本発明は、マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有し、抗肥満作用を有するものであって、肥満の抑制又は予防のために用いられる旨の表示を付した飲食品を包含する。ここで、「表示を付した飲食品」とは、飲食品の容器や取り扱い説明書に表示を付した飲食品のみならず、容器や取り扱い説明書に表示を付していなくても、この飲食品の紙媒体上及びウェブ上に掲載されたこの飲食品についての広告文や音声による広告等により、同様の表示をしている場合も含む。
【0027】
さらに本発明の肥満の抑制又は予防用飲食品の製造方法としては、マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を飲食品に配合する方法であれば特に制限されず、本発明のマテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物の使用方法としては、肥満の抑制又は予防用飲食品の配合剤として使用する方法であれば特に制限されず、上記配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。
【0028】
上記飲食品としては、例えば、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜を挙げることができる。
【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
(試料溶液の調製)
1)市販の抽出物
市販の抽出物96種類各100mgに蒸留水10mLを加えて混合し、遠心分離(3,000rpm、15min)して得られた上清を各種濃度に調製し、試験に用いた。
2)エタノール抽出物
14種類の植物試料(スイカ果皮、ビワ種子、マンゴー果皮・種子、パイナップル果皮・冠芽、ハネジューメロン種子・果皮、アンデスメロン果皮、パパイヤメロン果皮、ホームランメロン果皮、クインシーメロン果皮、プルーン種子、キウイフルーツ果皮)からエタノール抽出物を調製した。即ち、乾燥粉末各10gにエタノール200mL加え、スターラーで撹拌しながら室温で一晩抽出した。抽出液をろ過し、ろ液を減圧濃縮後、凍結乾燥することにより各抽出物を得た。各抽出物100mgにジメチルスルホキシド(DMSO)10mLを加えて混合し、遠心分離(3,000rpm、15min)して得られた上清を各種濃度に調製し、試験に用いた。
3)水抽出物
バラ花から水抽出物を調製した。即ち、乾燥物10gに蒸留水200mLを加え、スターラーで撹拌しながら室温で一晩抽出した。抽出液をろ過し、ろ液を凍結乾燥することにより抽出物を得た。抽出物100mgに蒸留水10mLを加えて混合し、遠心分離(3,000rpm、15min)して得られた上清を各種濃度に調製し、試験に用いた。
【0031】
(膵リパーゼ阻害活性試験)
リパーゼ阻害活性の測定には、酵素としてブタ膵リパーゼ(シグマ製)及びリパーゼキットS(大日本製薬製)を用いた。測定方法は製造者の説明書を一部改変して行った。即ち、試料溶液15μL(盲検用は蒸留水又はDMSO15μL)、酵素溶液(ブタ膵リパーゼ0.1mg/mL125mMトリス塩酸(pH7.4))4μL、発色液(0.1mg/mL5,5´−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)を含む緩衝液)50μL、エステラーゼ阻害液(3.48mg/mLフェニルメチルスルホニルフルオリド)1μLを入れて混和した後、30℃で5分間予備加温した。次に、基質液(6.69mg/mL三酪酸ジメルカプロール及び5.73mg/mLドデシル硫酸ナトリウム)5μLを加え混和後、遮光下にて30℃で20分間反応させた。その後、反応停止液100μLを添加して反応を停止した。別に、ブランクとして酵素溶液の代わりに緩衝液を加え、以下同様に操作した。それぞれの試料の吸光度を波長415nmで測定した。リパーゼ阻害活性は、以下の式を用いて算出した。
リパーゼ阻害活性(%)=100−(AT−ABT)/(AC−ABC)×100
AT :試料の吸光度
ABT:試料のブランクの吸光度
AC :盲検の吸光度
ABC:盲検のブランクの吸光度
【0032】
(結果)
111種類の抽出物について膵リパーゼ阻害活性を測定したところ、12種類の市販の抽出物、すなわち、マテ葉A、月見草種子A、プロポリス、マテ葉B、アムラ果実、ヨモギ葉、シソ葉、生コーヒー豆種子A、カシス果実、メリッサ葉、赤ブドウ葉、月見草種子Bが75%以上の高い阻害活性を示した(111種類全ての結果は省略)。そして、これら12種類の抽出物には濃度依存的な膵リパーゼ阻害活性が見られた(表1)。そこで、12種類の抽出物の中から6種類の抽出物、すなわち、マテ葉A(15%エタノールで常温抽出)、アムラ果実(50%エタノールで常温抽出)、カシス果実(70%エタノールで加温抽出)、ヨモギ葉(熱水抽出)、メリッサ葉(熱水抽出)、プロポリス(70%エタノールで常温抽出)について生体内での脂肪吸収阻害作用を検証した。
【0033】
【表1】

【実施例2】
【0034】
(脂肪吸収阻害作用)
1)実験動物
試験に用いたWistar系雄性ラットは、日本チャールズリバー社より購入した。ラットは6週齢で搬入後、1週間予備飼育して実験に供した。飼育室の環境は温度を23±1℃、湿度を55±7%の一定とし、明暗は12時間周期(明期7時〜19時)とした。ラットには市販の固形飼料(CE−2、日本クレア製)及び水道水を自由摂取させた。
2)試料の調製
実施例1において高い膵リパーゼ阻害活性を示した6種類の抽出物(マテ葉A、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、プロポリス)を試料とした。各抽出物20gを蒸留水20mLに溶解させ、これを試料溶液(1g/mL)として試験に用いた。
3)コーン油のエマルジョンの調製
コーン油(ナカライテスク製)50mLを1.67%コール酸(シグマ製)溶液50mLとともに10分間超音波処理し、この超音波処理した溶液をコーン油のエマルジョンとした。
【0035】
(脂質負荷試験)
脂質負荷試験は、韓ら(薬学雑誌 2005;125(2)213−217)の方法に従って行った。即ち、ラットを1群5匹としてコントロール群、ブランク群、試料投与群の3群に分けて一晩絶食した後、コントロール群ではコーン油エマルジョン1mL及び蒸留水1mL、ブランク群では蒸留水2mLを非麻酔下で胃ゾンデを用いて強制経口投与した。試料投与群ではコーン油エマルジョン1mLと試料(0.25、1g/kg体重)を投与した。コーン油エマルジョン投与前、投与後1、2、3、4時間目で非麻酔下でラットの尾静脈より採血し、遠心分離(3,000rpm、15min)にて血漿を得た。血漿中の中性脂肪(TG)濃度の測定はトリグリセライド−E−テストキット(和光純薬工業製)を用いて測定した。
【0036】
(結果)
結果を図1〜6に示す。コーン油エマルジョン単独投与群では投与後直ちに血漿中TG濃度の上昇が見られ、投与後2時間目に最も高い血漿中TG濃度を示した。コーン油エマルジョンと各抽出物の同時投与群では、1g/kg体重投与群で投与後1〜2時間目まで有意な血漿中TG濃度の上昇抑制作用が見られた。また、アムラ果実及びカシス果実抽出物では0.25g/kg体重投与群でも投与後1時間目に血漿中TG濃度の上昇抑制作用が見られた。さらに、コントロール群の曲線下面積を100とした際の各抽出物濃度群の値を求めたところ、全ての抽出物投与群はコーン油エマルジョン単独投与群よりも低い脂肪吸収率であったことがわかった(表2)。以上のことから、6種類の抽出物(マテ葉A、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、プロポリス)は、生体内で膵リパーゼの働きを抑えることにより脂肪吸収阻害作用を示すことがわかった。脂肪吸収阻害作用が確認できた以上、6種の抽出物には、抗肥満効果を有することが明らかとなった。
【0037】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のマテ葉抽出物の血漿中TG濃度上昇抑制作用を示す図である。
【図2】本発明のアムラ果実抽出物の血漿中TG濃度上昇抑制作用を示す図である。
【図3】本発明のカシス果実抽出物の血漿中TG濃度上昇抑制作用を示す図である。
【図4】本発明のヨモギ葉抽出物の血漿中TG濃度上昇抑制作用を示す図である。
【図5】本発明のメリッサ葉抽出物の血漿中TG濃度上昇抑制作用を示す図である。
【図6】本発明のプロポリス抽出物の血漿中TG濃度上昇抑制作用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分とする膵リパーゼ阻害剤。
【請求項2】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有する膵リパーゼ阻害活性組成物。
【請求項3】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分とする脂肪吸収阻害剤。
【請求項4】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有する脂肪吸収阻害活性組成物。
【請求項5】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分とする抗肥満剤。
【請求項6】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有する抗肥満剤活性組成物。
【請求項7】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有する肥満の抑制又は予防用飲食品。
【請求項8】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を有効成分として含有し、抗肥満作用を有するものであって、肥満の抑制又は予防のために用いられる旨の表示を付した飲食品。
【請求項9】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を飲食品に配合することを特徴とする肥満の抑制又は予防用飲食品の製造方法。
【請求項10】
マテ葉、アムラ果実、カシス果実、ヨモギ葉、メリッサ葉、及びプロポリスから選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を、肥満の抑制又は予防用飲食品の配合剤として使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−50301(P2008−50301A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228284(P2006−228284)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000113067)プリマハム株式会社 (72)
【Fターム(参考)】