説明

臓器の区分けのための相互作用的なICPアルゴリズム

臓器の画像を区分けするシステム及び方法は、前記臓器の表面モデルを選択する段階と、前記臓器の画像の表面上の複数の点を選択する段階と、前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換する段階とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臓器の区分けのためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
区分け(Segmentation)は、画像から解剖学的構造を抽出する過程である。医学の分野における多くのアプリケーションは、CT、MRI及び他の医用画像の形態を通して取得される体積の(volumetric)画像において、標準的な生体構造の区分けを必要とする。臨床医又は他の専門家は、治療計画のために区分けをよく用いる。
【0003】
区分けは、手動で実行され得る。ここで臨床医は、個々の画像の断片(slice)を調査し、それぞれの断片において関係のある臓器の二次元の輪郭を描く。次に、手描きの輪郭は、その関係する臓器の三次元表現を生成するために組み合わされる。あるいは、臨床医は、臨床医の関与なしに、画像の断片を調査して関係のある臓器の二次元の輪郭を決定する自動区分けアルゴリズムを用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像の断片の手描きによる輪郭を用いる区分けは、しかしながら、多大な時間を必要とし、一般的な正確さはおよそ2から3ミリメートル以下ほどである。輪郭を手描きするとき、臨床医は、しばしば多くの画像を調査する必要がある。また、手描きによる輪郭は、臨床医によって異なり得る。さらに、自動化アルゴリズムは、全ての標準的な区分けの課題を解くためには、しばしば十分に信頼できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における方法は、臓器を区分けする方法であって:前記臓器の表面モデルを選択する段階と;前記臓器の画像の表面上の複数の点を選択する段階と;前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換する段階と;を有する。
【0006】
本発明におけるシステムは、臓器を区分けするシステムであって、選択されるべき表面モデルの編集物を保管するメモリと;ユーザが、前記メモリから表面モデルを選択し、前記臓器の画像の表面上の複数の点を選択できるよう構成されるユーザインターフェースと;前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換するプロセッサと;を有する。
【0007】
本発明におけるコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、プロセッサにより実行可能な命令のセットを含むコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、コンピュータに:前記臓器の表面モデルを選択する段階と;前記臓器の画像の表面上の複数の点を選択する段階と;前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換する段階と;を実行させるための前記命令のセットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一つの例示的な実施形態に従うシステムの概略図である。
【図2】一つの例示的な実施形態に従う臓器の区分けの方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで説明される例示的な実施形態は、以下の説明及び添付される図面への参照とともに、さらに理解されることができる。ここで、同様の要素は、同一の参照要素と共に参照される。例示的な実施形態は、臓器の区分けのためのシステム及び方法に関する。特に、例示的な実施形態は、医用画像技術(例えば、MRI、CT)を通して取得される体積の医用画像の中に見られるように、臓器の表面に関して複数の点の有限の組を選択することにより、臓器の区分けを行う。
【0010】
図1における一つの例示的な実施形態に示されるように、システム100は、プロセッサ102とメモリ104を有する。メモリ104は、区分けされることのできる様々な臓器の表面モデルの編集物(compilation)を保管することのできる、あらゆるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。一つの例において、メモリ104は、様々な臓器の表面モデルの編集物を含むデータベースを保管する。表面モデルは、区分けされている臓器の代表的なプロトタイプ又はその臓器の多数の代表的なサンプルのうちの平均であり得る。ユーザは、ユーザインターフェース106を通じてメモリ104から代表モデルの一つを選択する。ユーザによりユーザインターフェース106を通じて入力されたあらゆるデータに一致する、選択されたモデルは、プロセッサ102を用いて処理され、ディスプレイ108上に表示される。当業者は、システム100はパーソナルコンピュータ、サーバー又はあらゆる他の処理装置であることを理解するだろう。
【0011】
図2は、CT、MRI又は他の医用画像スキャンから取得される画像からの臓器の画像に基づいて臓器を区分けするための方法200を示す。方法200のステップ210は、メモリ104から、区分けされるべき臓器の表面モデルを選択する。表面モデルは、臓器の代表的なプロトタイプ又は複数の代表的なサンプルの平均であり得る。一度表面モデルが選択されると、表面モデルはディスプレイ108上に表示される。表面モデルが画像の中で適切に位置づけられ、ディスプレイ108上に表示される。
【0012】
ステップ220において、ユーザは、ユーザインターフェース106を通じて、区分けされている画像の表面上の複数の点を選択する。ユーザインターフェース106は、例えば、表面上の複数の点を指し示し、クリックするためのマウスを含む。複数の点は、画像化された臓器の表面から選択される。これは、ステップ230において、表面を予測するための、選択された複数の点の間に整列する点を決定するために、複数の点を内挿するためである。例えば、単純な2Dの輪郭を描画している場合に、点は内挿されることができる。これは、マウスのクリックを通じて、あるいは規則的な時間間隔において、ある特定の順番でセットされるためである。点は、あらゆる順番で、あらゆる再配列された表示である2Dの表示において、セットされることができる。当業者は、ステップ220においてあらゆる数の点が選択されるが、より多くの数の点が選択されると、区分けがより正確になることを理解するだろう。したがって、ユーザは、彼/彼女が満足する結果を得るまで点を選択し続けることができる。当業者は、複数の点を選択するために様々な方法が用いられることができることも理解するだろう。例えば、ディスプレイ108がタッチセンサ方式である場合、ユーザはディスプレイ108のスクリーンをタッチすることにより、多数の点を選択することができる。一度、画像化された臓器の表面上の複数の点が選択されると、表面モデルは、表面モデルを画像化された画像に本質的に配列する変換が発生するように、モデル空間から画像空間へとマッピングされる。変換の複雑度は、選択された点の数とともに増加する。
【0013】
変換のためのパラメータが、ICP(iterative-closest-point)アルゴリズムを用いて決定される。パラメータは、曲げエネルギー(bending energy)が、選択された複数の点が内挿されると同時に曲げエネルギーが最小化されるよう、最適化によって決定される。例えば、ステップ240は、表面モデル上の点を選択する段階を含む。表面モデル上の点は、ステップ220において選択される、画像表面上の複数の点に対応する。表面モデル上の対応する点は、画像化された臓器上の選択された複数の点のそれぞれからの、表面モデル上の最接近点(closest point)であり得る。当業者は、画像表面上の複数の点が内挿されることができることを理解するだろう。これは、内挿された点に対応する、モデルの表面上の対応する点も決定されることができるためである。ステップ250において、画像表面上の複数の点のそれぞれと、表面モデルへの対応する点のそれぞれとの距離が決定される。当業者は、画像表面上の複数の点のそれぞれと、モデルの表面上の対応する点のそれぞれとの間のユークリッド距離により定義されることを理解するだろう。ユークリッド距離とは、表面モデル上の対応する点を画像表面上の複数の点に配列するために必要とされる変換の基準である。具体的には、距離は、画像表面上の複数の点のそれぞれと、表面モデル上のそれらに対応する点との間で必要とされる移動の量によって決定される。
【0014】
ステップ260において、画像化された臓器の複数の点と、表面モデル上のそれらに対応する点との間の収束(convergence)が測定される。変換のパラメータは、反復が必要とされるかどうかを決定するために分析される。例えば、あらゆる移動が無視できるような、変換の勾配(gradient)が十分小さい(例えば、閾値より小さい)とみなされるとき、さらなる反復は不要であると決定される。当業者は、そのような無視できる勾配が、表面モデルが画像化された臓器と実質的に同様であることを示すことを理解するだろう。したがって、さらなる反復は必要でなく、区分けは完了する。しかしながら、変換のパラメータが、勾配が相当大きい(例えば、閾値より大きい)とき、ステップ270は、距離(例えば、曲げエネルギー)からエネルギー関数と、画像化された臓器上の複数の点と表面モデル上の対応する点との間の距離のための追加の変数とを生成する段階を含む。当業者は、閾値が、所定であり得るか、システム100のユーザにより選択され入力され得ることを理解するだろう。
【0015】
ステップ270において作成されたエネルギー関数の勾配は、ステップ280において計算される。例えば、エネルギー関数は、式E=E+Eにより表現されることができる。ここで、Eは画像表面の複数の点のそれぞれと、表面モデルの対応する点のそれぞれの変換との間のユークリッド距離の合計である。また、Eは曲げエネルギーであり、変換のパラメータ表現に依存する。一度この勾配が計算されると、ステップ290において、表面モデル上の対応する点のそれぞれは、表面モデルが画像化された臓器に近づくように、計算された勾配により負方向に移動される。エネルギーの勾配は、変換のパラメータに関して計算される。当業者は、複数の点が内挿されており、それに応じて対応する点がステップ240において決定されているため、表面モデルの全表面が負方向に移動し、表面モデルを画像化された臓器とより良い配列に置くことを理解するだろう。一度表面モデルが移動すると、方法200はステップ230へと戻ることができる。ここで、選択された複数の点に最も近い表面モデル上の対応する点が決定される。したがって、当業者は、反復処理が、選択された複数の点のそれぞれと、表面モデル上の対応する点との間の距離が閾値より小さくなるまで繰り返されることができることを理解するだろう。一旦複数の点からの対応する点の距離が閾値より常に小さくなると、区分けが完了するために、表面モデルは画像化された臓器と揃っているとみなされる。
【0016】
一旦区分けが完了すると、当業者は区分けされた臓器がシステム100のメモリに保存されることができることを理解するだろう。特に、区分けされた臓器は、代表的なプロトタイプとしてメモリ104内に保存されることができる。メモリ104の表面モデルが多数の代表的なプロトタイプの平均である場合、区分けされた臓器は、平均を決定するために他の代表的なプロトタイプと共に含まれて平均化されることができる。
【0017】
例示的な実施形態又はその部分は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体上に保管される、プロセッサにより実行可能な命令のセットとして実装されることができる。
【0018】
様々な変更及びバリエーションが、本開示書の精神又は範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本開示書は、添付されるクレーム及びその均等物の範囲内のあらゆる変更及びバリエーションをカバーするよう意図される。
【0019】
クレームは、PCT規則6.2(b)に従って参照符号/参照番号が含まれ得ることにも注意する。しかしながら、本クレームは、参照符号/参照番号に対応する例示的な実施形態に限定されるものとみなされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器を区分けする方法であって:
前記臓器の表面モデルを選択する段階と;
前記臓器の画像の表面上の複数の点を選択する段階と;
前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換する段階と;
を有する、方法。
【請求項2】
前記変換する段階は、
前記選択された複数の点の間の点を決定し、さらに前記臓器の前記画像の表面を予測するため、前記複数の点を挿入する段階
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変換する段階は、
前記複数の点のそれぞれのために、前記表面モデル上の対応する点を決定する段階
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対応する点は、前記複数の点のそれぞれに一番近い前記表面モデル上の点である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記変換する段階は、
前記複数の点のそれぞれと前記対応する点との間の距離を決定する段階
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記距離のそれぞれが閾値より小さい場合に前記臓器の区分けが完了する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記距離の少なくとも一つが前記閾値以上である場合に前記距離の関数としてエネルギー関数を生成する、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記エネルギー関数の勾配を計算する段階
をさらに有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エネルギー関数の前記勾配の負方向に前記対応する点を移動させる段階
をさらに有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面モデルの全表面は、前記エネルギー関数の前記勾配の前記負方向に移動する、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
臓器を区分けするシステムであって、
選択されるべき表面モデルの編集物を保管するメモリと;
ユーザが、前記メモリから表面モデルを選択し、前記臓器の画像の表面上の複数の点を選択できるよう構成されるユーザインターフェースと;
前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換するプロセッサと;
を有するシステム。
【請求項12】
前記メモリからの表面モデルの編集物と、前記選択された表面モデルと、前記臓器の前記画像とのうち少なくとも一つを表示するディスプレイ
をさらに有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ユーザインターフェースは前記ディスプレイ上のタッチスクリーンである
請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記ユーザインターフェースは、前記複数の点を選択するためのマウスを含む
請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記メモリに保管される表面モデルの前記編集物は、区分けされるべき前記臓器の代表的なプロトタイプを含む
請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記メモリに保管される表面モデルの前記編集物は、区分けされるべき前記臓器の代表的なプロトタイプの平均を含む
請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換するプロセッサは、
前記選択された複数の点の間の点を決定し、さらに前記臓器の前記画像の表面を予測するため、前記複数の点を内挿する
請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換するプロセッサは、
前記複数の点のそれぞれのために、前記表面モデル上の対応する点を決定する
請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換するプロセッサは、
前記複数の点のそれぞれと前記対応する点との間の距離を決定する
請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
プロセッサにより実行可能な命令のセットを含むコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、コンピュータに:
前記臓器の表面モデルを選択する段階と;
前記臓器の画像の表面上の複数の点を選択する段階と;
前記表面モデルを前記画像上の前記複数の点に変換する段階と;
を実行させるための前記命令のセットを含むコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−523033(P2012−523033A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502836(P2012−502836)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050898
【国際公開番号】WO2010/113052
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】