説明

自光式標識構体

【課題】従来の道路標識や看板などの自光式標識構体は、薄型のエッジライト方式の導光板を用いる場合には、表示面を均一に光らせるために、導光板に凹凸を設けたり、2枚の導光板の間に光を反射し散乱する散乱体を塗布するなど、製造に工数がかかりコスト高となる問題があった。
【解決手段】本件発明では、導光板と、導光板の少なくとも1辺に並んで配列される複数のLEDと、導光板面上に配置され、LEDの並び方向に対して直交配向されたグラスファイバーを含む拡散板と、からなる自光式標識構体を提供する。これにより、薄型の標識であって、LEDの光が効率よくかつ均一に視認面から照射される自光式標識構体が提供可能となる。また、本件発明の自光式標識構体は、構造が簡単であり、製造コストを低く抑えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、道路工事現場における注意を喚起するための標識や、店舗などに設置する看板などにおいて、LEDを用いた自光式の標識に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路標識や道路工事現場における標識、店舗などに設置する看板などは、蛍光灯や電球により、標識や看板の外側から標識や看板に対して光を照射する、光照射式として、夜間の視認性を向上させたり、標識や看板の内部に、蛍光灯や電球を配置した内照式として視認性を向上させたりするものが一般的であった。このように、標識や看板を蛍光灯や電球の光により明るくすることで、視認性を向上させることが可能となった。しかし、これらの標識や看板は、通常の標識や看板に比べて大きさが大きくなり、設置場所などが制限される。
【0003】
また、近年これらの光照射式や内照式の光源に、蛍光灯や電球に変わって消費電力の小さいLEDを利用したものが、提案されている。特許文献1に示した発明では、道路標識の背面に大量のLEDを配置した内照式の道路標識が提案されている。特許文献1では、道路標識の背面一面にLEDを配置することで、光の斑を無くし、明るく視認性のよい道路標識となっている。しかし、特許文献1に示した道路標識では、LEDを大量に使うため、非常に高価な道路標識となってしまう。また、背面にLEDを配置するためのスペースが必要となり、大きな道路標識となってしまう。
【0004】
そこで、特許文献2の照明装置や特許文献3の光源装置および表示装置に示したように、LEDを導光板の側端縁に配置するエッジライト方式が提案されている。特許文献2や特許文献3に示した導光板を用いた装置では、LEDの数が少なくてすみ、薄型の標識や看板が可能となる。
【特許文献1】特開2007−169977
【特許文献2】特開2047−041622
【特許文献3】特開2006−236749
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2で示した照明装置では、樹脂製の導光板を2枚一組とし、両導光板の間に、光を反射し散乱する散乱体が塗布した導光板が用いられており、製造に工数がかかってしまう。また、特許文献3の光源装置及び表示装置では、導光板表面に凹凸が形成されており、このような凹凸を形成するための工程が必要となる。特許文献2や3に示した装置では、このように、製造工程が煩雑であり、製造される装置のコストを高めてしまうため、大量に用いられる標識などには向かないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題に鑑み、本件発明では次の自光式標識構体を提供する。すなわち、第一の発明としては、導光板と、導光板の少なくとも1辺にならんで配列される複数のLEDと、導光板面上に配置され、LEDの並び方向に対して直交配向されたグラスファイバーを含む拡散板と、からなる自光式標識構体を提供する。
【0007】
第二の発明としては、拡散板は導光板面上に接着剤を介して貼付けされている第一の発明に記載の自光式標識構体を提供する。
【0008】
第三の発明としては、標識視認面に透過型反射シートを配置した第一の発明または第二の発明に記載の自光式標識構体を提供する。
【0009】
第四の発明としては、標識裏面に全反射板を配置した第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載の自光式標識構体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本件発明のより、薄型の標識であって、LEDの光が効率よくかつ均一に視認面から照射される自光式標識構体が提供可能となる。また、本件発明の自光式標識構体は、構造が簡単であり、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0012】
実施形態1は、主に請求項1および請求項2などに関する。実施形態2は主に請求項3などに関する。実施形態3は主に請求項4などに関する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0013】
本実施形態は、導光板の周囲にLEDが配置された導光板において、導光板面上に、LEDから発せられる光の方向に対して、直交するようにグラスファイバーが配向した拡散板を配置したことを特徴とする自光式標識構体である。LEDから発せられる光の方向に対して、直交するようにグラスファイバーを含む拡散板を配置することによって、LEDから発せられる光が拡散され、自光式標識構体を、均一に発光させることが可能となる。
【0014】
図1に本実施形態の自光式標識構体を使用したときの一例を示した。本実施形態の自光式標識構体(0101)は、自光式標識構体を台座(0102)などによって起立状態にし、道路工事や店舗の前などに設置され、標識や看板として使用される。
<実施形態1 構成>
【0015】
図2の(a)に本実施形態の自光式標識構体の斜視概念図を示した。本実施形態の自光式標識構体は、導光板(0201)と、導光板の少なくとも1辺にならんで配列される複数のLED(0202)と、導光板面上に配置され、LEDの並び方向に対して直交配向されたグラスファイバー(0203)を含む拡散板(0204)と、からなる。本実施形態の自光式標識構体(0205)を使用する場合には、(b)のように、台座(0206)に起立させて使用する。
【0016】
導光板は、アクリル、塩化ビニル、ポリカーボネートやガラスなど、光を透過する透明な板であって、その表面は溝や凹凸などを有さない均一な面となっている。また本実施形態の導光板は、赤や青などに着色されていても良い。
【0017】
LEDは、導光板の少なくとも1辺に複数並んで配置されている。LEDは導光板の辺に接するように配置され、エッジライト方式のバックライトと同様の位置にLEDが配置されている。図2の(a)のように、LEDを導光板の一辺のみに配置しても良いが、導光板の幅が広い場合には、一辺に並べたLEDのみでは、光が弱くなる可能性もあるので、図3の(a)のように、互いに対向する二辺にLED(0301、0302)を配置するとよい。また、(b)のように、導光板の四辺全てにLED(0303、0304、0305、0306)を配置しても良いが、一部のLEDが、後述するように拡散板のグラスファイバーの方向に直行するため、好ましくはない。尚LEDが発する光は、白色以外の色でも良く、自光式標識構体の仕様用途に応じて、赤や青など変化させてもよい。また、LEDは、単色のみではなく複数の発光色を組み合わせてもよい。
【0018】
拡散板は、グラスファイバーを含み、導光板面上に配置されている。図4に拡散板の部分拡大概念図を示した。拡散板(0401)はグラスファイバー(0402)を含んでおり、そのグラスファイバーは特定の方向に配向するように配置されている。また、拡散板は、ポリプロピレンやポリエステルなどからなる基材に、ガラス製のグラスファイバーを含んでいる。尚拡散板に含まれるグラスファイバーの代わりに、ポリエステルなどの繊維を用いても良いが、光の透過性などの点から、ガラス製のグラスファイバーが最も好ましい。また、拡散板の基材となるポリプロピレンやポリエステルは無色透明であっても良いが、光が透過すれば良く、赤や青、オレンジ、黄色などに着色されていても良い。拡散板に含まれるグラスファイバーは、多数の極めて細いガラス繊維が束となって構成され、直径が略0.1から0.7ミリメートル程度の繊維状であって、複数のグラスファイバー繊維が、平行に配置され、拡散板1センチメートル当たり、略20から25本程度の割合で拡散板に含まれている。尚、本件明細書で示した図面において、グラスファイバーについては、説明のため配置される本数や、サイズなど一部を簡略化して記載している。
【0019】
拡散板は、拡散板に含まれるグラスファイバーの並び方向が、LEDの並びに対して直交するように配置する。図5に拡散板(0501)に含まれるグラスファイバー(0502)の並び方向(A)が、LED(0503)の並び方向(B)に対して、直交する場合(a)と平行な場合(b)の概念図を示した。(b)のように、LEDの並び方向と、グラスファイバーの並び方向を平行にすると、LEDから発せられる光が、導光板全体に拡散されず、LEDと導光板が接する付近を中心とした一部分のみが集中的に明るくなってしまう。一方、(a)のように、LEDの並び方向と、グラスファイバーとの並び方向を直交させると、LEDから発せられる光が、導光板全体に拡散され、導光板全体が均一に明るくなる。
【0020】
また、拡散板は、導光板に密着していることが望ましい。拡散板と導光板の間に隙間が存在する場合、LEDから発せられる光が、拡散板へと導かれず、暗くなってしまう。そこで、拡散板を導光板面上に接着剤を介して貼付けすることで、拡散板と導光板を密着させるとよい。このとき、拡散板の導光板と接する一面に、接着剤などが塗布されていても良いし、図6のように、導光板(0601)と拡散板(0602)の間に両面テープ(0603)のような、両面が粘着性を持ったシートを介して導光板と拡散板を密着させても良い。尚拡散板と導光板を密着させるための接着剤は、可能な限り、導光板から拡散板へ導かれる光が透過するのを妨げない材料であることが望ましい。
【0021】
拡散板は、導光板の一面に配置しても良いし、図7の(a)に示したように、導光板(0701)を挟んで対向する二面に拡散板(0702、0703)を配置しても良い。このときの自光式標識構体の断面図を(b)に示した。導光板の両面に拡散板を配置することで、導光板の両面から光(0704、0705)が発せられ、両面から視認可能な標識構体となる。
<実施形態1 効果>
【0022】
本実施形態により、薄型であり且つ安価な自光式標識構体を提供可能となる。LEDから発せられる光の方向に対して、直交するようにグラスファイバーを含む拡散板を配置することによって、LEDから発せられる光が拡散され、自光式標識構体を、均一に発光させることが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0023】
本実施形態は、実施形態1の自光式標識構体を基本として、さらに標識視認面に透過型反射シートを配置したことを特徴とする自光式標識構体である。本実施形態の自光式標識構体のように、標識視認面に透過型反射シートを配置することで、自光式標識構体に配置されたLEDによる自光以外に、自動車などのヘッドライトが照射によって明るく光らせることが可能となる。特に、工事現場における標識など、安全対策として設置された標識の場合、何らかのトラブルによってLEDが発光しなかった場合など、透過型反射シートを配置することで、ヘッドライトを反射し、視認性を悪化させることがない。
<実施形態2 構成>
【0024】
本実施形態の自光式標識構体は、標識視認面に透過型反射シートが配置されている。図8に本実施形態の自光式標識構体の概念図を示した。
【0025】
透過型反射シート(0801)は、図8に示したように、LED(0802)から発せられ導光板(0803)から導かれる光(0804)を透過し、且つ自動車のヘッドライトなど、標識視認面に当たった光(0805)を反射するシートである。標識に視認面に透過型反射シートを配置することで、標識視認面に記載された文字や絵図などの視認性が向上する。また、本実施形態の自光式標識構体のように、標識視認面に透過型反射シートを配置することで、万が一、何らかのトラブルが発生してLEDが発光しない場合、透過型反射シートを配置しない場合、自光式標識構体の視認性が著しく悪化するが、透過型反射シートを配置することで、自動車のヘッドライトの光が、透過型反射シートに反射し、自光式標識構体の視認性を確保することが可能となる。
【0026】
ここで、標識視認面とは、本実施形態の自光式標識構体において、歩行者や自動車などに対して視覚的に伝達する内容を記載した面であって、伝達する内容を文字や絵図などによって表現し、記載された面である。また、LEDから発せられた光を、導光板を介して自光式標識構体外部へ放出する面でもある。
<実施形態2 効果>
【0027】
本実施形態の自光式標識構体により、万が一、何らかのトラブルが発生してLEDが発光しない場合、透過型反射シートを配置することで、自動車のヘッドライトの光が、透過型反射シートに反射し、自光式標識構体の視認性を確保することが可能となる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0028】
本実施形態の自光式標識構体は、実施形態1および実施形態2の自光式標識構体にさらに、標識裏面に全反射板を配置したことを特徴としている。標識裏面に全反射板を配置することで、LEDから発せられる光を、すべて標識視認面から放出することが可能となり、自光式標識構体の視認性が向上する。
<実施形態3 構成>
【0029】
本実施形態の自光式標識構体は、標識裏面に全反射板を配置している。図9に標識裏面に全反射板を有する自光式標識構体の概念図を示した。本実施形態の自光式標識構体は、拡散板(0901)が配置された標識視認面(0902)に対して、導光板(0903)を挟んだ向かい側である標識裏面(0904)に、全反射板(0905)を配置している。全反射板は、LED(0906)から発せられる光(0907)を反射し、導光板を介して標識視認面から自光式標識構体の外部へ放出する。標識裏面に全反射板を配置しない場合、LEDから発せられる光の一部は、標識裏面から放出され、無駄となってしまう。そこで、標識裏面に全反射板を配置することで、LEDから発せられる光をすべて、標識視認面から放出することが可能となり、自光式標識構体の視認性が向上する。
【0030】
全反射板は、導光板に対向する面が、光を全反射する性質を持つ面で構成されている。光を全反射する面は、金属を磨き上げたり、樹脂や金属、ガラスなどに金属を蒸着やメッキした鏡面であったり、プリズムやガラスビーズを埋め込んだ反射材などであってもよい。
<実施形態3 効果>
【0031】
本実施形態の自光式標識構体のように、標識裏面に全反射板を配置することで、LEDから発せられる光をすべて、標識視認面から放出することが可能となり、自光式標識構体の視認性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1の自光式標識構体の設置例を説明する概念図
【図2】実施形態1の自光式標識構体を説明する概念図
【図3】実施形態1の自光式標識構体一例を説明する概念図
【図4】実施形態1の自光式標識構体を説明する概念図
【図5】実施形態1の自光式標識構体を説明する概念図
【図6】実施形態1の自光式標識構体を説明する概念図
【図7】実施形態1の自光式標識構体を説明する概念図
【図8】実施形態2の自光式標識構体を説明する概念図
【図9】実施形態3の自光式標識構体を説明する概念図
【符号の説明】
【0033】
0201 導光板
0202 LED
0203 グラスファイバー
0204 拡散板
0205 自光式標識構体
0206 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板と、
導光板の少なくとも1辺に並んで配列される複数のLEDと、
導光板面上に配置され、LEDの並び方向に対して直交配向されたグラスファイバーを含む拡散板と、
からなる自光式標識構体。
【請求項2】
拡散板は導光板面上に接着剤を介して貼付けされている請求項1に記載の自光式標識構体。
【請求項3】
標識視認面に透過型反射シートを配置した請求項1または2に記載の自光式標識構体。
【請求項4】
標識裏面に全反射板を配置した請求項1から3のいずれか一に記載の自光式標識構体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−156997(P2009−156997A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333336(P2007−333336)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(593065590)株式会社エスエスシー (51)
【Fターム(参考)】