説明

自動ステップ可変減衰器および無線通信装置

【課題】動作を開始してから最終的なステップ減衰値が確定するまでの時間を短縮できる自動ステップ可変減衰器および無線通信装置を提供する。
【解決手段】電波信号の受信信号を制御信号に応じた減衰量でステップ状に減衰させるステップ可変減衰器122と、電波信号の受信信号の入力に対してステップ可変減衰器122と並列に配置され、入力した受信信号の電力を、受信信号の強度を示す強度信号に変換する検波器121と、検波器121による強度信号と複数の閾値との高低の比較結果に応じた上記制御信号を生成し、生成した制御信号を上記ステップ可変減衰器に出力するコンパレータ部124とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、無線通信機やテレビジョン(TV)システムの受信機におけるフロントエンド部に適用可能な自動ステップ可変減衰器およびこれを適用した無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線受信機においては幅広いレンジのRF受信信号を受信可能とするため、可変利得機能を備えている。
通常、そのレンジをできるだけ大きくとることができるようにするためには可変機能を一つの素子に集約させず、複数の素子に分散させることが多い。
【0003】
可変利得機能素子としては、主に1倍以上の利得を持っているか否かで可変利得増幅器と可変減衰器に大別される。
特に、後者は主に抵抗やスイッチなどのパッシブ素子で構成できることから通常線形性が高く、受信機のフロントエンドに実装することにより過大なRF受信信号が入力されたときに信号を劣化させずに可変利得機能が得られる。
【0004】
たとえば受信機信号経路において、3つの可変利得機能を持つ素子を備えたLow-IF型無線受信機が知られている。この場合、自動ステップ可変減衰器、低雑音可変利得増幅器、IF可変利得増幅器が可変利得機能素子に当たる。
この主の技術として、受信機のフロントエンド部に自動ステップ可変減衰器を実装した自動利得制御回路が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-286654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した公知例では、自動ステップ可変機能を実現するために検波器をステップ減衰器の後段に実装するフィードバック系である。
フィードバック系は検波器が動作する信号ダイナミックレンジが小さくて済むという長所がある。
【0007】
しかし、自律的に動作する回路においては、ステップが切り替わる度に検波器へのRF信号入力が変化するため、出力が安定するまでの時間が必要となり、動作を開始してから最終的なステップ減衰値が確定するまでの時間が長くなる傾向にある。
たとえば地上アナログTV受信機に上記システムを利用する場合、受信機チャネル設定期間(この間は後段の受信機および復調器が利得設定などの初期設定を行うためTV画像への出力がない)に自動ステップ減衰器の減衰値が確定している必要がある。
チャネル設定完了後にステップ減衰器が切り替わると、画像にノイズが入るため好ましくない。
【0008】
本技術は、動作を開始してから最終的なステップ減衰値が確定するまでの時間を短縮できる自動ステップ可変減衰器および無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術の第1の観点の自動ステップ可変減衰器は、電波信号の受信信号を制御信号に応じた減衰量でステップ状に減衰させるステップ可変減衰器と、電波信号の受信信号の入力に対して上記ステップ可変減衰器と並列に配置され、入力した受信信号の電力を、当該受信信号の強度を示す強度信号に変換する検波器と、上記検波器による上記強度信号と複数の閾値との高低の比較結果に応じた上記制御信号を生成し、生成した上記制御信号を上記ステップ可変減衰器に出力するコンパレータ部とを有する。
【0010】
本技術の第2の観点の無線通信装置は、電波信号の受信信号をステップ状に減衰させる自動ステップ可変減衰器と、上記自動ステップ可変減衰器から出力された受信信号を所定の利得をもって増幅する低雑音増幅器と、を有し、上記自動ステップ可変減衰器は、電波信号の受信信号を制御信号に応じた減衰量でステップ状に減衰させるステップ可変減衰器と、電波信号の受信信号の入力に対して上記ステップ可変減衰器と並列に配置され、入力した受信信号の電力を、当該受信信号の強度を示す強度信号に変換する検波器と、上記検波器による上記強度信号と複数の閾値との高低の比較結果に応じた上記制御信号を生成し、生成した上記制御信号を上記ステップ可変減衰器に出力するコンパレータ部と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、動作を開始してから最終的なステップ減衰値が確定するまでの時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る自動ステップ可変減衰器を採用した無線通信装置の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る自動ステップ可変減衰器の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る検波器の入出力特性を示す図である。
【図4】本実施形態に係るステップ可変減衰器の構成例を示す回路図である。
【図5】図4のステップ可変減衰器の制御信号と減衰領域の対応の一例を示す図である。
【図6】検波器の出力電圧によりヒステリシスコンパレータ部の各コンパレータの閾値が変化する様子を示す図である。
【図7】上側(高レベル側)閾値シフト機能を有する場合であって、検波器の出力電圧によりヒステリシスコンパレータ部の各コンパレータの閾値が変化する様子を示す図である。
【図8】上側(高レベル側)閾値シフト機能が必要となる場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施形態を図面に関連付けて説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.無線通信装置の構成例
2.自動ステップ可変減衰器の構成例
2.1 検波器の構成例
2.2 ステップ可変減衰器の構成例
2.3 基準電圧発生部の構成例
2.4 ヒステリシスコンパレータ部の構成例
2.5 上側(高レベル側)閾値シフト機能部の構成例
【0014】
<1.無線通信装置の構成例>
図1は、本実施形態に係る自動ステップ可変減衰器を採用した無線通信装置の構成例を示す図である。
【0015】
図1の無線通信装置10は、一例として無線受信機であるLow−IF型チューナのフロントエンド部の構成例を示している。
無線通信装置10は、図1に示すように、アンテナ11、自動ステップ可変減衰器12、レジスタ設定部13、低雑音可変増幅器(LNA)14、およびバンドパスフィルタ(BPF)15−1〜15−n(図1ではn=3)を有する。
無線通信装置10は、ローカル(局部)発振器16、分周器17、ミキサ18−1,18−2、ポリフェーズフィルタ19、およびIF可変利得増幅器20を有する。
【0016】
無線通信装置10は、自動ステップ可変減衰器12,低雑音可変増幅器14、およびIF可変利得増幅器20の3つの可変利得機能素子を含んで構成されている。
無線通信装置10は、3つの可変利得素子により、たとえば合計80dB以上の可変利得ダイナミックレンジを持ち、広範囲なレンジの入力信号レベルに対して最適な出力レベルを維持することができる。
また、無線通信装置10は、入力部にパッシブ素子で構成されている自動ステップ可変減衰器12が実装されている。これにより、大きな妨害波が入力される際には歪を発生させることなく、歪を発生し易いアクテイブ素子から構成されている低雑音可変増幅器14への信号を低減させることができる。
【0017】
自動ステップ可変減衰器12は、受信信号電力および妨害波電力に応じた最適な減衰量を自動的に選択し、選択した減衰量をもって、アンテナ11で受信した無線受信信号(RF信号)を減衰させ、その減衰信号S12を低雑音可変増幅器14に出力する。
自動ステップ可変減衰器12は、受信初期設定後も完全に減衰量を固定せず、受信処理設定(チャネル切替など)後は、閾値を切り替えて受信動作中の不要なステップ切替動作を防止する機能を有している。
自動ステップ可変減衰器12は、レジスタ設定部13に設定される受信装置チャネル設定完了信号に応じた上側閾値シフト信号S13に応答して、上側(高レベル側)閾値をシフトする機能を有する。なお、受信装置チャネル設定完了信号は外部の制御系により供給される。
この自動ステップ可変減衰器12の具体的な構成および機能については後で詳述する。
【0018】
低雑音可変増幅器14は、自動ステップ可変減衰器12の出力信号S12を所定の利得をもって増幅し、増幅した信号S14をBPF15−1〜15−n(図1ではn=3)に出力する。
【0019】
BPF15−1〜15−nは、低雑音可変増幅器14の出力信号S14からそれぞれ所定周波数帯域の信号を抽出してミキサ18−1,18−2に出力する。
【0020】
ミキサ18−1,18−2は、BPF15(−1〜n)の出力受信信号とローカル発振器16の発振信号を分周器17で分周した信号とをミキシングして、中間周波信号(IF信号)を生成、生成したIF信号をポリフェーズフィルタ19に出力する。
【0021】
ポリフェーズフィルタ19は、IF信号の不要な成分を除去し、IF可変利得増幅器20に出力する。
IF可変利得増幅器20は、IF信号を所定の利得をもって増幅する。
【0022】
<2.自動ステップ可変減衰器の構成例>
次に、自動ステップ可変減衰器12の具体的な構成および機能について詳述する。
図2は、本実施形態に係る自動ステップ可変減衰器の構成例を示す図である。
【0023】
自動ステップ可変減衰器12は、図2に示すように、検波器121、ステップ可変減衰器122、基準電圧発生部123、ヒステリシスコンパレータ部124、および上側(高レベル側)閾値シフト機能部125を含んで構成されている。
【0024】
<2.1 検波器の構成例>
検波器121は、電波受信信号(RF信号)の入力に対してステップ可変減衰器122と並列に配置され(ステップ可変減衰器122の前段に配置され)、入力したRF信号(電波信号)の電力を電圧などのその強度を示す強度信号に変換する。
検波器121は、変換した信号S121をヒステリシスコンパレータ部124に出力する。
検波器121は、抵抗素子R1およびキャパシタC1の時定数に応じた電圧信号(強度信号)S121を生成する。
【0025】
図3は、本実施形態に係る検波器の入出力特性を示す図である。
図3において、横軸がRF入力電力[dBm]を、縦軸が検波器121の出力電圧(V)をそれぞれ表している。
【0026】
図3に示すように、検波器121からは、RF信号の電力に応じて単調増加で電圧信号S121が出力される。
検波器121の出力は、RF信号印加前はほぼ0Vの出力となり、RF信号が入力された瞬間から内蔵の時定数により出力電圧が増加していく動作となる。
本実施形態ではフィードバック系ではないため、検波器に入力されるRF信号がステップ状に変化することはない。
検波器121の時定数は、ステップ可変減衰器122の適切な減衰値を設定する動作が全て受信機チャネル設定期間に完了するように適切な値に選択されている。
【0027】
<2.2 ステップ可変減衰器の構成例>
ステップ可変減衰器122は、ヒステリシスコンパレータ部124によりフィードフォワード系信号として供給される制御信号CTLに応じて、RF信号(受信信号)をステップ状に減衰させる。
本実施形態のステップ可変減衰器122は、一例として5dBごとに5段階に切り替える可変減衰器として形成されている。
ステップ可変減衰器122は、制御信号CTLに応じて減衰値として0dBを基準として5dB,10dB,15dB,20dBの5dBごとに5段階に切り替える。
ステップ可変減衰器122は、制御端子T1〜T4を有する。
4つの制御端子T1〜T4が配置されているのは、一例としてヒステリシスコンパレータ部124による制御信号CTLが4つ(4ビット)の信号Vc1〜Vc4を含むからである。
制御端子T1に制御信号Vc1が供給され、制御端子T2に制御信号Vc2が供給され、制御端子T3に制御信号Vc3が供給され、制御端子T4に制御信号Vc4が供給される。
【0028】
図4は、本実施形態に係るステップ可変減衰器の構成例を示す回路図である。
図4のステップ可変減衰器122は、抵抗素子R11〜R14、抵抗素子Rs11、Rs12、Rs21、Rs22、Rs31、Rs32、Rs41、Rs42、およびノードND11,ND12を有する。
ステップ可変減衰器122は、nチャネルの電界効果トランジスタ(FET)により形成されたスイッチトランジスタST11〜ST14、スイッチトランジスタSs11、Ss12、Ss21、Ss22、Ss31、Ss32、Ss41、Ss42を有する。
ステップ可変減衰器122は、インバータINV1〜INV8、RF信号の入力端子TI、RF信号の出力端子TOを有する。
【0029】
制御端子T1に対してインバータINV1およびINV5が直列に接続され、制御端子T2に対してインバータINV2およびINV6が直列に接続されている。制御端子T3に対してインバータINV3およびINV7が直列に接続され、制御端子T4に対してインバータINV4およびINV8が直列に接続されている。
ノードND11が入力端子TIに接続され、ノードND12が出力端子TOに接続されている。そして、抵抗素子R11の一端がノードND11に接続され、他端がノードND12に接続されている。
スイッチトランジスタST11のドレインがノードND11に接続され、ソースがノードND12に接続され、ゲートがインバータINV5の出力に接続されている。
抵抗素子R12の一端がノードND11に接続され、他端がスイッチトランジスタST12のドレインに接続されている。スイッチトランジスタST12のソースがノードND12に接続され、ゲートがインバータINV6の出力に接続されている。
抵抗素子R13の一端がノードND11に接続され、他端がスイッチトランジスタST13のドレインに接続されている。スイッチトランジスタST13のソースがノードND12に接続され、ゲートがインバータINV7の出力に接続されている。
抵抗素子R14の一端がノードND11に接続され、他端がスイッチトランジスタST14のドレインに接続されている。スイッチトランジスタST14のソースがノードND12に接続され、ゲートがインバータINV8の出力に接続されている。
【0030】
抵抗素子Rs11の一端がノードND11および入力端子TIに接続され、他端がスイッチトランジスタSs11のドレインに接続されている。スイッチトランジスタSs11のソースが基準電位VSS(ここでは接地電位GND)に接続され、ゲートがインバータINV1の出力に接続されている。
抵抗素子Rs12の一端がノードND12および出力端子TOに接続され、他端がスイッチトランジスタSs12のドレインに接続されている。スイッチトランジスタSs12のソースが基準電位VSS(ここでは接地電位GND)に接続され、ゲートがインバータINV1の出力に接続されている。
抵抗素子Rs21の一端がノードND11および入力端子TIに接続され、他端がスイッチトランジスタSs21のドレインに接続されている。スイッチトランジスタSs21のソースが基準電位VSS(ここでは接地電位GND)に接続され、ゲートがインバータINV2の出力に接続されている。
抵抗素子Rs22の一端がノードND12および出力端子TOに接続され、他端がスイッチトランジスタSs22のドレインに接続されている。スイッチトランジスタSs22のソースが基準電位VSS(ここでは接地電位GND)に接続され、ゲートがインバータINV2の出力に接続されている。
抵抗素子Rs31の一端がノードND11および入力端子TIに接続され、他端がスイッチトランジスタSs31のドレインに接続されている。スイッチトランジスタSs31のソースが基準電位VSS(ここでは接地電位GND)に接続され、ゲートがインバータINV3の出力に接続されている。
抵抗素子Rs32の一端がノードND12および出力端子TOに接続され、他端がスイッチトランジスタSs32のドレインに接続されている。スイッチトランジスタSs32のソースが基準電位VSS(ここでは接地電位GND)に接続され、ゲートがインバータINV3の出力に接続されている。
抵抗素子Rs41の一端がノードND11および入力端子TIに接続され、他端がスイッチトランジスタSs41のドレインに接続されている。スイッチトランジスタSs41のソースが基準電位VSS(ここでは接地電位GND)に接続され、ゲートがインバータINV4の出力に接続されている。
抵抗素子Rs42の一端がノードND12および出力端子TOに接続され、他端がスイッチトランジスタSs42のドレインに接続されている。スイッチトランジスタSs42のソースが基準電位VSS(ここでは接地電位GND)に接続され、ゲートがインバータINV4の出力に接続されている。
【0031】
図4のステップ可変減衰器122は、いわゆるπ型の抵抗減衰器を構成し、どの状態でも入力インピーダンスが一定となり、かつ5dBステップの減衰量が得られるよう適切な抵抗値が選ばれている。
【0032】
図5は、図4のステップ可変減衰器の制御信号と減衰領域の対応の一例を示す図である。
図5において、Hはスイッチングトランジスタが導通(オン)するハイレベル(論理1)を示し、Lはスイッチングトランジスタが非導通(オフ)となるローレベル(論理0)を示している。本実施形態においては、Hレベルは第1のレベルに相当し、Lレベルは第2のレベルに相当する。
【0033】
制御端子T1〜T4に供給される制御信号Vc1,Vc2,Vc3,Vc4が(H,H,H,H)である場合、インバータINV1〜INV4の出力がLレベルとなり、インバータINV5〜INV8の出力がHレベルとなる。その結果、スイッチトランジスタST11(ST12〜ST14)がオンとなり、スイッチトランジスタSs11〜Ss42がオフとなる。
この場合、スイッチトランジスタST11により入力端子TIと出力端子TOが接続されるバイパス状態となり、減衰値は0dBである。
【0034】
制御端子T1〜T4に供給される制御信号Vc1,Vc2,Vc3,Vc4が(L,H,H,H)である場合、インバータINV2〜INV4,INV5の出力がLレベルとなり、インバータINV1,INV6〜INV8の出力がHレベルとなる。その結果、スイッチトランジスタST12〜ST14、Ss11,Ss12がオンとなり、スイッチトランジスタST11,Ss21〜Ss42がオフとなる。
この場合、抵抗素子R12〜R14、Rs11,Rs12がπ型の抵抗減衰器を形成し、減衰値は5dBとなる。
【0035】
制御端子T1〜T4に供給される制御信号Vc1,Vc2,Vc3,Vc4が(L,L,H,H)である場合、次のようになる。
この場合、インバータINV3,INV4,INV5,INV6の出力がLレベルとなり、インバータINV1,INV2,INV7,INV8の出力がHレベルとなる。その結果、スイッチトランジスタST13,ST14、Ss11,Ss12、Ss21,Ss22がオンとなり、スイッチトランジスタST11,ST12、Ss31〜Ss42がオフとなる。
この場合、抵抗素子R13,R14、Rs11,Rs12、Rs21,Rs22がπ型の抵抗減衰器を形成し、減衰値は10Bとなる。
【0036】
制御端子T1〜T4に供給される制御信号Vc1,Vc2,Vc3,Vc4が(L,L,L,H)である場合、次のようになる。
この場合、インバータINV4,INV5,INV6、INV7の出力がLレベルとなり、インバータINV1,INV2,INV3,INV8の出力がHレベルとなる。その結果、スイッチトランジスタST14、Ss11,Ss12、Ss21,Ss22、Ss31、Ss32がオンとなり、スイッチトランジスタST11,ST12,ST13、Ss41、Ss42がオフとなる。
この場合、抵抗素子R14、Rs11,Rs12、Rs21,Rs22、Rs31,Rs32がπ型の抵抗減衰器を形成し、減衰値は15Bとなる。
【0037】
制御端子T1〜T4に供給される制御信号Vc1,Vc2,Vc3,Vc4が(L,L,L,L)である場合、次のようになる。
この場合、インバータINV5,INV6,INV7、INV8の出力がLレベルとなり、インバータINV1,INV2,INV3,INV4の出力がHレベルとなる。その結果、スイッチトランジスタSs11,Ss12、Ss21,Ss22、Ss31、Ss32、Ss41,Ss42がオンとなり、スイッチトランジスタST11,ST12,ST13、ST14がオフとなる。
この場合、抵抗素子Rs11,Rs12、Rs21,Rs22、Rs31,Rs32、Rs41,Rs42がπ型の抵抗減衰器を形成し、減衰値は20Bとなる。
【0038】
このように、図4のステップ可変減衰器122は、図5に示す5状態をもつ動作をする。
ステップ可変減衰器122においては、過剰な大きさのRF入力信号がシステムに入力された場合にもステップ可変範囲内においては5dB以内の範囲で次段の低雑音可変増幅器に出力される信号レベルが調節されることになる。
【0039】
<2.3 基準電圧発生部の構成例>
基準電圧発生部123は、ヒステリシスコンパレータ部124に比較用電圧を与えるための基準電圧である閾値電圧Vth0,Vth1〜Vth5を生成する。
基準電圧発生部123は、図2に示すように、電源側に接続された電流源I21、電流源I21と基準電位VSS(接地電位GND)間に直列に接続された抵抗素子R21〜R26、およびノードND21〜ND26を有する。
基準電圧発生部123において、抵抗素子R21と抵抗素子R22との接続点によりノードND21が形成され、抵抗素子R22と抵抗素子R23との接続点によりノードND22が形成されている。
抵抗素子R23と抵抗素子R24との接続点によりノードND23が形成され、抵抗素子R24と抵抗素子R25との接続点によりノードND24が形成されている。
抵抗素子R25と抵抗素子R26との接続点によりノードND25が形成され、抵抗素子R26と電流源I21との接続点によりノードND26が形成されている。
【0040】
基準電圧発生部123は、直列抵抗によりノードND22にヒステリシスコンパレータ部124で電力検出を開始する電圧(PstartV)である第1の閾値電圧Vth1を発生する。
基準電圧発生部123は、直列抵抗によりノードND23にヒステリシスコンパレータ部124で電力検出を開始する電圧PstartVより5dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+5dB)である第2の閾値電圧Vth2を発生する。
基準電圧発生部123は、直列抵抗によりノードND24にヒステリシスコンパレータ部124で電力検出を開始する電圧PstartVより10dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+10dB)である第3の閾値電圧Vth3を発生する。
基準電圧発生部123は、直列抵抗によりノードND25にヒステリシスコンパレータ部124で電力検出を開始する電圧PstartVより15dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+15dB)である第4の閾値電圧Vth4を発生する。
基準電圧発生部123は、直列抵抗によりノードND26にヒステリシスコンパレータ部124で電力検出を開始する電圧PstartVより20dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+20dB)である第5の閾値電圧Vth5を発生する。
基準電圧発生部123は、直列抵抗によりノードND21にヒステリシスコンパレータ部124で電力検出を開始する電圧PstartVより−5dB分低い電圧に相当する電圧(PstartV−5dB)である第0の閾値電圧Vth0を発生する。
【0041】
基準電圧発生部123は、発生した第0〜第5の閾値電圧Vth0〜Vth5を、上側閾値シフト機能部125を介してヒステリシスコンパレータ部124に出力する。
【0042】
<2.4 ヒステリシスコンパレータ部の構成例>
ヒステリシスコンパレータ部124は、検波器121で検波された基本的に単調増加する電圧信号S121と、供給される閾値電圧Vth1〜Vth5(Vth0)との比較結果に応じた制御信号CLT(Vc1〜Vc4)を生成する。ヒステリシスコンパレータ部124は、生成した制御部信号(Vc1〜Vc4)をステップ可変減衰器122に出力する。
ヒステリシスコンパレータ部124は、電圧信号S121と最も低い電圧の閾値電圧Vth1から順番に閾値電圧Vth2〜Vth5を比較する複数のコンパレータを有する。
ヒステリシスコンパレータ部124は、最も低い閾値電圧Vth1と比較するコンパレータから出力が反転し、出力が反転したコンパレータから最初の比較に用いた比較開始用閾値電圧よりたとえば5dB分低い電圧に相当する閾値電圧に切り替えて比較動作を行う。
【0043】
図2のヒステリシスコンパレータ部124は、コンパレータCMP11〜CMP14、およびスイッチSW11〜SW18を含んで構成されている。
コンパレータCMP11はHレベルまたはLレベルをとる制御信号Vc1を出力し、コンパレータSMP12はHレベルまたはLレベルをとる制御信号Vc2を出力する。
コンパレータCMP13はHレベルまたはLレベルをとる制御信号Vc3を出力し、コンパレータSMP14はHレベルまたはLレベルをとる制御信号Vc4を出力する。
【0044】
コンパレータCMP11は、反転入力端子(−)が検波器121による電圧信号S121の供給ラインに接続され、非反転入力端子(+)がスイッチSW11およびスイッチSW12の端子aに接続されている。
スイッチSW11の端子bは、基準電圧発生部123のノードND21に接続されている。すなわち、スイッチSW11の端子bには、電力検出を開始する電圧PstartVより−5dB分低い電圧に相当する電圧(PstartV−5dB)である第0の閾値電圧Vth0が供給される。
スイッチSW12の端子bは、上側閾値シフト機能部125を介して基準電圧発生部123のノードND22またはノードND23に接続される。
すなわち、スイッチSW12の端子bには、電力検出を開始する電圧PstartVである第1の閾値電圧Vth1または開始電圧PstartVより5dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+5dB)である第2の閾値電圧Vth2が供給される。
【0045】
スイッチSW11,SW12は、コンパレータCMP11の出力により相補的にオンオフされる。具体的には、コンパレータCMP11の出力制御信号Vc1がHレベルのときはスイッチSW12がオンしスイッチSW11がオフし、LレベルのときスイッチSW12がオフしスイッチSW11がオンする。
コンパレータCMP11は、検出開始時は、反転入力端子(−)に供給される電圧信号S121と非反転入力端子(+)に供給される第1の閾値電圧Vth1とを比較する。
コンパレータCMP11は、電圧信号S121が第1の閾値電圧Vth1より低いときは制御信号Vc1をHレベルで出力し、電圧信号S121が増加して第1の閾値電圧Vth1を超えると制御信号Vc1をLレベルで出力する。
これにより、スイッチSW12がオフし、スイッチSW11がオンする。
コンパレータCMP11は、出力レベルが反転した後は、電圧信号S121と電力検出を開始する電圧PstartVより−5dB分低い電圧に相当する電圧(PstartV−5dB)である第0の閾値電圧Vth0との比較動作を行う。この第0の閾値電圧Vth0を用いた比較動作は、電圧信号S121が第0の閾値電圧Vth0より低くなりコンパレータCMP11の出力がHレベルに切り替わるまで行われる。
【0046】
コンパレータCMP12は、反転入力端子(−)が検波器121による電圧信号S121の供給ラインに接続され、非反転入力端子(+)がスイッチSW13およびスイッチSW14の端子aに接続されている。
スイッチSW13の端子bは、基準電圧発生部123のノードND22に接続されている。すなわち、スイッチSW13の端子bには、電力検出を開始する電圧PstartVである第1の閾値電圧Vth1が供給される。
スイッチSW14の端子bは、上側閾値シフト機能部125を介して基準電圧発生部123のノードND23またはノードND24に接続される。
すなわち、スイッチSW14の端子bには、電力検出を開始する電圧PstartVより5dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+5dB)である第2の閾値電圧Vth2が供給される。または、スイッチSW14の端子bには、開始電圧PstartVより10dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+10dB)である第3の閾値電圧Vth3が供給される。
【0047】
スイッチSW13,SW14は、コンパレータCMP12の出力により相補的にオンオフされる。具体的には、コンパレータCMP12の出力制御信号Vc2がHレベルのときはスイッチSW14がオンしスイッチSW13がオフし、LレベルのときスイッチSW14がオフしスイッチSW13がオンする。
コンパレータCMP12は、検出開始時は、反転入力端子(−)に供給される電圧信号S121と非反転入力端子(+)に供給される第2の閾値電圧Vth2とを比較する。
コンパレータCMP12は、電圧信号S121が第2の閾値電圧Vth2より低いときは制御信号Vc2をHレベルで出力し、電圧信号S121が増加して第2の閾値電圧Vth2を超えると制御信号Vc2をLレベルで出力する。
これにより、スイッチSW14がオフし、スイッチSW13がオンする。
コンパレータCMP12は、出力レベルが反転した後は、電圧信号S121と第2の閾値電圧Vth2より−5dB分低い電圧に相当する電圧(PstartV)である第1の閾値電圧Vth1との比較動作を行う。この第1の閾値電圧Vth1を用いた比較動作は、電圧信号S121が第1の閾値電圧Vth1より低くなりコンパレータCMP12の出力がHレベルに切り替わるまで行われる。
【0048】
コンパレータCMP13は、反転入力端子(−)が検波器121による電圧信号S121の供給ラインに接続され、非反転入力端子(+)がスイッチSW15およびスイッチSW16の端子aに接続されている。
スイッチSW15の端子bは、基準電圧発生部123のノードND23に接続されている。すなわち、スイッチSW15の端子bには、電力検出を開始する電圧PstartVより5dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+5dB)である第2の閾値電圧Vth2が供給される。
スイッチSW16の端子bは、上側閾値シフト機能部125を介して基準電圧発生部123のノードND24またはノードND25に接続される。
すなわち、スイッチSW16の端子bには、電力検出を開始する電圧PstartVより10dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+10dB)である第3の閾値電圧Vth3が供給される。または、スイッチSW16の端子bには、開始電圧PstartVより15dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+15dB)である第4の閾値電圧Vth4が供給される。
【0049】
スイッチSW15,SW16は、コンパレータCMP13の出力により相補的にオンオフされる。具体的には、コンパレータCMP13の出力制御信号Vc3がHレベルのときはスイッチSW16がオンしスイッチSW15がオフし、LレベルのときスイッチSW16がオフしスイッチSW15がオンする。
コンパレータCMP13は、検出開始時は、反転入力端子(−)に供給される電圧信号S121と非反転入力端子(+)に供給される第3の閾値電圧Vth3とを比較する。
コンパレータCMP13は、電圧信号S121が第3の閾値電圧Vth3より低いときは制御信号Vc3をHレベルで出力し、電圧信号S121が増加して第3の閾値電圧Vth3を超えると制御信号Vc3をLレベルで出力する。
これにより、スイッチSW16がオフし、スイッチSW15がオンする。
コンパレータCMP13は、出力レベルが反転した後は、電圧信号S121と第3の閾値電圧Vth3より−5dB分低い電圧に相当する電圧(PstartV+5dB)である第2の閾値電圧Vth2との比較動作を行う。この第2の閾値電圧Vth2を用いた比較動作は、電圧信号S121が第2の閾値電圧Vth2より低くなりコンパレータCMP12の出力がHレベルに切り替わるまで行われる。
【0050】
コンパレータCMP14は、反転入力端子(−)が検波器121による電圧信号S121の供給ラインに接続され、非反転入力端子(+)がスイッチSW17およびスイッチSW18の端子aに接続されている。
スイッチSW17の端子bは、基準電圧発生部123のノードND24に接続されている。すなわち、スイッチSW17の端子bには、電力検出を開始する電圧PstartVより10dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+10dB)である第3の閾値電圧Vth3が供給される。
スイッチSW18の端子bは、上側閾値シフト機能部125を介して基準電圧発生部123のノードND25またはノードND26に接続される。
すなわち、スイッチSW18の端子bには、電力検出を開始する電圧PstartVより15dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+15dB)である第4の閾値電圧Vth4が供給される。または、スイッチSW18の端子bには、開始電圧PstartVより20dB分高い電圧に相当する電圧(PstartV+20dB)である第5の閾値電圧Vth5が供給される。
【0051】
スイッチSW17,SW18は、コンパレータCMP14の出力により相補的にオンオフされる。具体的には、コンパレータCMP14の出力制御信号Vc4がHレベルのときはスイッチSW18がオンしスイッチSW17がオフし、LレベルのときスイッチSW18がオフしスイッチSW17がオンする。
コンパレータCMP14は、検出開始時は、反転入力端子(−)に供給される電圧信号S121と非反転入力端子(+)に供給される第4の閾値電圧Vth4とを比較する。
コンパレータCMP14は、電圧信号S121が第4の閾値電圧Vth4より低いときは制御信号Vc4をHレベルで出力し、電圧信号S121が増加して第4の閾値電圧Vth4を超えると制御信号Vc4をLレベルで出力する。
これにより、スイッチSW18がオフし、スイッチSW17がオンする。
コンパレータCMP14は、出力レベルが反転した後は、電圧信号S121と第4の閾値電圧Vth4より−5dB分低い電圧に相当する電圧(PstartV+10dB)である第3の閾値電圧Vth3との比較動作を行う。この第3の閾値電圧Vth3を用いた比較動作は、電圧信号S121が第3の閾値電圧Vth3より低くなりコンパレータCMP12の出力がHレベルに切り替わるまで行われる。
【0052】
このような構成を有するヒステリシスコンパレータ部124では、検波器121の出力電圧が0Vから上昇していくに従って最も低い閾値電圧での比較動作を行うコンパレータCMP11から反転動作する。
【0053】
図6は、検波器の出力電圧によりヒステリシスコンパレータ部の各コンパレータの閾値が変化する様子を示す図である。
図6は、ヒステリシスコンパレータ部124の各コンパレータCMP11〜CMP14の動作例を時間軸により表現している。また、図6は、上側閾値シフト機能部125の上側シフト機能が発現されていないときの動作例を示している。
【0054】
この例では、全4つのコンパレータCMP11〜CMP14の内のコンパレータCMP14を除く3つ目までのコンパレータCMP11〜CMP13の閾値電圧Vth1,Vth2,Vth3を超えるようなレベルのRF信号が入力されている。
検波器121の電圧信号S121が閾値電圧Vth1,Vth2,Vth3を超えた瞬間にコンパレータCMP11〜CMP13の閾値は5dB分低い電圧に相当する閾値電圧Vth0,Vth1,Vth2に下がる。
これにより、ノイズなどの存在によりコンパレータ状態が元に戻る動作を防止している。
本実施形態においては、ヒステリシスコンパレータ部124からはステップ可変減衰器122に対して15dB分の減衰を行う制御信号CTL(Vc1〜Vc4)が出力される。
【0055】
<2.5 上側(高レベル側)閾値シフト機能部の構成例>
図7は、上側(高レベル側)閾値シフト機能を有する場合であって、検波器の出力電圧によりヒステリシスコンパレータ部の各コンパレータの閾値が変化する様子を示す図である。
図8は、上側(高レベル側)閾値シフト機能が必要となる場合を説明するための図である。
【0056】
上側閾値シフト機能部125は、図7に示すように、上側閾値シフト信号S13をハイレベルで受けると、ヒステリシスコンパレータ部124において出力が反転していないコンパレータの閾値電圧Vthを高レベル側の閾値に切り替える機能を有する。
上側閾値シフト機能部125は、出力が反転していないコンパレータの閾値電圧Vthをシフト前の閾値電圧より5dB分高い電圧に相当する閾値電圧にシフトさせる。
本実施形態(図6の例)では、ヒステリシスコンパレータ部124において、3つのコンパレータCMP11〜CMP13の出力は反転し、閾値電圧がそれぞれVth1,Vth2,Vth3から低い側の閾値電圧Vth0,Vth1,Vth2にシフトする。
そして、上記例では、コンパレータCMP14の出力は反転していない。
この状態で、上側閾値シフト信号S13をハイレベルで受けると、上側閾値シフト機能部125は、コンパレータCMP14の第4の閾値電圧Vth4から5dB分高い電圧に相当する第5の閾値電圧Vth5にシフトさせる。
【0057】
この上側閾値シフト機能を実装する理由について説明する。
ヒステリシスコンパレータ部124内の閾値電圧を、出力が反転したコンパレータの閾値電圧を5dB低い電圧にシフトするヒステリシス動作により、常に下側(低レベル側)の閾値については5dB以上のヒステリシスマージンを持つ。
このために、多少のRF信号の入力低下の変動が発生した場合でもコンパレータの出力が元に戻ってしまうことは無いが、図8に示すように、上側の閾値についてはヒステリシスマージンが無い。
このため、受信機チャネル設定期間後に多少のRF信号入力増加が発生した場合、ステップ可変減衰器122で切り替えが発生してしまう可能性があり、その場合前述のとおり画像ノイズが発生してしまう。
図8の例では、第3の閾値電圧Vth3にぎりぎり達しない電圧で収束している状態にある場合に、微小ノイズの重畳によりコンパレータCMP13の閾値を超える可能性が大きい。
また、受信中にステップ可変減衰器122の切替動作が発生すると、画ノイズが発生する受信方式もある。
そこで、ノイズによる誤動作を防止するために、上側閾値シフト機能を実装している。
【0058】
受信機チャネル設定期間においては、上側閾値シフト信号S13がローレベルに設定されて上側閾値シフト機能はオフしており、システムの動作は前述と同様である。
受信機チャネル設定期間完了後、外部から受信機チャネル設定期間完了の信号を入力させ、上側閾値シフト信号S13がハイレベルに設定されて上側閾値シフト機能をオンさせる。
その場合にはまだ反転していないコンパレータCMP14の閾値が5dB分だけ高い側にシフトする。
これにより、上側(高レベル側)にもヒステリシスマージンが得られ、対象のRF信号入力増減に対してステップ減衰器切り替えが発生しない状態となる。
【0059】
図2の上側閾値シフト機能部125は、スイッチSW21〜SW28を含んで構成されている。
上側閾値シフト信号S13がLレベルのときはスイッチSW21、SW23、SW25、SW27がオン状態に保持され、SW22,SW24,SW26,SW28がオフ状態に保持される。
上側閾値シフト信号S13がHレベルのときはスイッチSW21、SW23、SW25、SW27がオフ状態に切り替えられ、SW22,SW24,SW26,SW28がオン状態に切り替えられる。
【0060】
接続は、スイッチSW21およびSW22の端子aが、ヒステリシスコンパレータ部124のスイッチSW12の端子bに接続されている。
スイッチSW21の端子bが基準電圧発生部123の電圧(PstartV)である第1の閾値電圧Vth1が発現するノードND22に接続されている。
スイッチSW22の端子bが電圧(PstartV+5dB)である第2の閾値電圧Vth2が発現するノードND23に接続されている。
【0061】
スイッチSW23およびSW24の端子aが、ヒステリシスコンパレータ部124のスイッチSW14の端子bに接続されている。
スイッチSW23の端子bが基準電圧発生部123の電圧(PstartV+5dB)である第2の閾値電圧Vth2が発現するノードND23に接続されている。
スイッチSW24の端子bが電圧(PstartV+10dB)である第3の閾値電圧Vth3が発現するノードND24に接続されている。
【0062】
スイッチSW25およびSW26の端子aが、ヒステリシスコンパレータ部124のスイッチSW16の端子bに接続されている。
スイッチSW25の端子bが基準電圧発生部123の電圧(PstartV+10dB)である第3の閾値電圧Vth3が発現するノードND24に接続されている。
スイッチSW26の端子bが電圧(PstartV+15dB)である第4の閾値電圧Vth4が発現するノードND25に接続されている。
【0063】
スイッチSW27およびSW28の端子aが、ヒステリシスコンパレータ部124のスイッチSW18の端子bに接続されている。
スイッチSW27の端子bが基準電圧発生部123の電圧(PstartV+15dB)である第4の閾値電圧Vth4が発現するノードND25に接続されている。
スイッチSW28の端子bが電圧(PstartV+20dB)である第5の閾値電圧Vth5が発現するノードND26に接続されている。
【0064】
上述したように、図6の例では、ヒステリシスコンパレータ部124において、3つのコンパレータCMP11〜CMP13の出力は反転し、閾値電圧がそれぞれVth1,Vth2,Vth3から低い側の閾値電圧Vth0,Vth1,Vth2にシフトする。
そして、上記例では、コンパレータCMP14の出力は反転していない。
この状態で、上側閾値シフト信号S13をハイレベルで受けると、上側閾値シフト機能部125は、スイッチSW22,SW24,SW26,SW28がオン状態に切り替わる。
このとき、スイッチSW22,SW24,SW26の接続先であるヒステリシスコンパレータ部124のスイッチSW12,SW14,SW16はオフ状態にあり、スイッチSW28の接続先であるスイッチSW18のみオン状態にある。
その結果、コンパレータCMP14の第4の閾値電圧Vth4から5dB分高い電圧に相当する第5の閾値電圧Vth5にシフトする。
【0065】
次に、上記構成を有する自動ステップ可変減衰器12の動作を説明する。
まず、アンテナ11を介して受信されたRF信号(無線受信信号)が検波器121において電圧や電流などのRF信号の強度を表す別の信号S121に変換される。
検波器121では、図3に示すように、RF信号により単調増加する電圧信号S121が出力される。
検波器121の出力は、RF信号印加前はほぼ0Vの出力となり、RF信号が入力された瞬間から内蔵の時定数により出力電圧が増加していく動作となる。
ここで、フィードバック系ではないため、検波器121に入力されるRF信号がステップ状に変化することはない。
【0066】
基準電圧発生部123においては、ヒステリシスコンパレータ部124における比較用の電圧を与えるための基準電圧である閾値電圧が抵抗素子と固定電流で発生される。
このとき、各閾値電圧は検波器121の変換特性に合わせてあらかじめ所望の電力を示すように設定されている。
本例ではRF信号電力において5dB毎の閾値となるように電圧が決められている。
【0067】
検波器121の出力電圧信号S121はヒステリシスコンパレータ部124に入力される。
ヒステリシスコンパレータ部では、検波器出力電圧が0Vから上昇していくに従って最も低い閾値電圧を持つコンパレータから反転動作する。
たとえば、図6の例では、全4つのコンパレータCMP11〜CMP14の内の3つ目のコンパレータCMP11〜CMP13までが閾値電圧Vth1〜Vth3を超えるようなレベルのRF信号が入力されている。
閾値電圧Vth1〜Vth3を超えた瞬間にコンパレータCMP11〜CMP13の閾値は5dB分下がり、これによりノイズなどの存在によりコンパレータ状態が元に戻る動作を防止している。
ヒステリシスコンパレータ部124からはステップ可変減衰器122に対して15dB分の減衰を行う制御信号CTL(Vc1〜Vc4)が出力される。
【0068】
ステップ可変減衰器122は、いわゆるπ型の抵抗減衰器を構成し、どの状態でも入力インピーダンスが一定となり、かつ5dBステップの減衰量が得られるよう適切な抵抗値が選ばれている。
たとえば図6の例では、最終的に15dB分のステップ減衰値となるよう動作する。
過剰な大きさのRF入力信号がシステムに入力された場合にもステップ可変範囲内においては5dB以内の範囲で次段の低雑音可変増幅器14に出力される信号レベルが調節されることになる。
以上の動作が全て受信機チャネル設定期間に完了するように検波器121における適切な時定数を選択されている。
【0069】
上記の説明は、上側閾値シフト機能を発現させない場合の動作説明であった。
上側閾値シフト機能を発現させる場合、上側閾値シフト機能部125に上側閾値シフト信号S13がハイレベルで供給される。
上側閾値シフト機能部125では、上側閾値シフト信号S13をハイレベルで受けると、ヒステリシスコンパレータ部124において出力が反転していないコンパレータの閾値電圧Vthが高レベル側の閾値に切り替えられる。
上側閾値シフト機能部125は、出力が反転していないコンパレータの閾値電圧Vthをシフト前の閾値電圧より5dB分高い電圧に相当する閾値電圧にシフトさせる。
図6および図7の例では、ヒステリシスコンパレータ部124において、3つのコンパレータCMP11〜CMP13の出力は反転し、閾値電圧がそれぞれVth1,Vth2,Vth3から低い側の閾値電圧Vth0,Vth1,Vth2にシフトする。
そして、コンパレータCMP14の出力は反転していない。
この状態で、上側閾値シフト信号S13をハイレベルで受けると、上側閾値シフト機能部125は、コンパレータCMP14の第4の閾値電圧Vth4から5dB分高い電圧に相当する第5の閾値電圧Vth5にシフトさせる。
これにより上側にもヒステリシスマージンが得られ、対象のRF信号入力増減に対してステップ減衰器切り替えが発生しない状態となる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、ステップ可変減衰器のステップ制御がフィードフォワード系のためシステムの収束時間、すなわちステップ減衰量の最終決定時間を検波器時定数選択によって単純に決定することができる。
すなわち、本実施形態の無線通信装置10は、3つの可変利得素子により、たとえば合計80dB以上の可変利得ダイナミックレンジを持ち、広範囲なレンジの入力信号レベルに対して最適な出力レベルを維持することができる。
また、無線通信装置10は、入力部にパッシブ素子で構成されている自動ステップ可変減衰器12が実装されている。これにより、大きな妨害波が入力される際には歪を発生させることなく、歪を発生し易いアクテイブ素子から構成されている低雑音可変増幅器14への信号を低減させることができる。
また、ヒステリシスマージンが適度に確保されるため、受信機チャネル設定期間完了後には多少のRF信号の変動に対してはステップ減衰切り替えの発生を防止することができるような自動ステップ可変減衰器が実現できる。
【0071】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)電波信号の受信信号を制御信号に応じた減衰量でステップ状に減衰させるステップ可変減衰器と、
電波信号の受信信号の入力に対して上記ステップ可変減衰器と並列に配置され、入力した受信信号の電力を、当該受信信号の強度を示す強度信号に変換する検波器と、
上記検波器による上記強度信号と複数の閾値との高低の比較結果に応じた上記制御信号を生成し、生成した上記制御信号を上記ステップ可変減衰器に出力するコンパレータ部と
を有する自動ステップ可変減衰器。
(2)上記コンパレータ部は、
値が段階的に異なる閾値と上記強度信号を比較する複数のコンパレータを含み、
最も低い比較開始用閾値電と比較するコンパレータから出力が反転し、出力が反転した上記コンパレータから最初の比較に用いた比較開始用閾値より低い閾値に切り替えて比較動作を行う。
上記(1)記載の自動ステップ可変減衰器。
(3)上記強度信号は、基本的に単調に増加する信号であり、
上記コンパレータ部は、
値が段階的に異なる閾値と上記強度信号を比較する複数のコンパレータを含み、
上記各コンパレータは、
上記強度信号が対応して与えられる比較開始用閾値を超えないときは制御信号を第1のレベルで出力し、上記強度信号が上記比較開始用閾値を超えると制御信号を第1のレベルを反転させた第2のレベルで出力し、
上記第2のレベルの制御信号を出力すると上記比較開始用閾値に代えて、当該比較開始用閾値より少なくとも一段階分低い閾値が与えられて当該低い閾値と上記強度信号との比較を行う
上記(1)または(2)記載の自動ステップ可変減衰器。
(4)上記コンパレータの比較開始用閾値をより高い閾値にシフトさせる閾値シフト機能部を有する
上記(2)または(3)記載の自動ステップ可変減衰器。
(5)上記閾値シフト機能部は、
上記複数のコンパレータのうち、上記強度信号と与えられた比較開始用閾値との比較の結果、出力が反転していないコンパレータの閾値を上記より高い閾値にシフトさせる
上記(4)記載の自動ステップ可変減衰器。
(6)電波信号の受信信号をステップ状に減衰させる自動ステップ可変減衰器と、
上記自動ステップ可変減衰器から出力された受信信号を所定の利得をもって増幅する低雑音増幅器と、を有し、
上記自動ステップ可変減衰器は、
電波信号の受信信号を制御信号に応じた減衰量でステップ状に減衰させて上記低雑音増幅器に出力するステップ可変減衰器と、
電波信号の受信信号の入力に対して上記ステップ可変減衰器と並列に配置され、入力した受信信号の電力を、当該受信信号の強度を示す強度信号に変換する検波器と、
上記検波器による上記強度信号と複数の閾値との高低の比較結果に応じた上記制御信号を生成し、生成した上記制御信号を上記ステップ可変減衰器に出力するコンパレータ部と、を含む
無線通信装置。
(7)上記コンパレータ部は、
値が段階的に異なる閾値と上記強度信号を比較する複数のコンパレータを含み、
最も低い比較開始用閾値電と比較するコンパレータから出力が反転し、出力が反転した上記コンパレータから最初の比較に用いた比較開始用閾値より低い閾値に切り替えて比較動作を行う。
上記(6)記載の無線通信装置。
(8)上記強度信号は、基本的に単調に増加する信号であり、
上記コンパレータ部は、
値が段階的に異なる閾値と上記強度信号を比較する複数のコンパレータを含み、
上記各コンパレータは、
上記強度信号が対応して与えられる比較開始用閾値を超えないときは制御信号を第1のレベルで出力し、上記強度信号が上記比較開始用閾値を超えると制御信号を第1のレベルを反転させた第2のレベルで出力し、
上記第2のレベルの制御信号を出力すると上記比較開始用閾値に代えて、当該比較開始用閾値より少なくとも一段階分低い閾値が与えられて当該低い閾値と上記強度信号との比較を行う
上記(6)または(7)記載の無線通信装置。
(9)上記コンパレータの比較開始用閾値をより高い閾値にシフトさせる閾値シフト機能部を有する
上記(7)または(8)記載の無線通信装置。
(10)上記閾値シフト機能部は、
上記複数のコンパレータのうち、上記強度信号と与えられた比較開始用閾値との比較の結果、出力が反転していないコンパレータの閾値を上記より高い閾値にシフトさせる
上記(9)記載の無線通信装置。
【符号の説明】
【0072】
10・・・無線通信装置、11・・・アンテナ、12・・・自動ステップ可変減衰器、121・・・検波器、122・・・ステップ可変減衰器、123・・・基準電圧発生部、124・・・ヒステリシスコンパレータ部、125・・・上側(高レベル側)閾値シフト機能部、13・・・レジスタ設定部、14・・・低雑音可変増幅器(LNA)、15−1〜15−n・・・バンドパスフィルタ(BPF)、16・・・ローカル発振器、17・・・分周器、18−1,18−2・・・ミキサ、19・・・ポリフェーズフィルタ、20・・・IF可変利得増幅器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波信号の受信信号を制御信号に応じた減衰量でステップ状に減衰させるステップ可変減衰器と、
電波信号の受信信号の入力に対して上記ステップ可変減衰器と並列に配置され、入力した受信信号の電力を、当該受信信号の強度を示す強度信号に変換する検波器と、
上記検波器による上記強度信号と複数の閾値との高低の比較結果に応じた上記制御信号を生成し、生成した上記制御信号を上記ステップ可変減衰器に出力するコンパレータ部と
を有する自動ステップ可変減衰器。
【請求項2】
上記コンパレータ部は、
値が段階的に異なる閾値と上記強度信号を比較する複数のコンパレータを含み、
最も低い比較開始用閾値電と比較するコンパレータから出力が反転し、出力が反転した上記コンパレータから最初の比較に用いた比較開始用閾値より低い閾値に切り替えて比較動作を行う。
請求項1記載の自動ステップ可変減衰器。
【請求項3】
上記強度信号は、基本的に単調に増加する信号であり、
上記コンパレータ部は、
値が段階的に異なる閾値と上記強度信号を比較する複数のコンパレータを含み、
上記各コンパレータは、
上記強度信号が対応して与えられる比較開始用閾値を超えないときは制御信号を第1のレベルで出力し、上記強度信号が上記比較開始用閾値を超えると制御信号を第1のレベルを反転させた第2のレベルで出力し、
上記第2のレベルの制御信号を出力すると上記比較開始用閾値に代えて、当該比較開始用閾値より少なくとも一段階分低い閾値が与えられて当該低い閾値と上記強度信号との比較を行う
請求項1記載の自動ステップ可変減衰器。
【請求項4】
上記コンパレータの比較開始用閾値をより高い閾値にシフトさせる閾値シフト機能部を有する
請求項2記載の自動ステップ可変減衰器。
【請求項5】
上記閾値シフト機能部は、
上記複数のコンパレータのうち、上記強度信号と与えられた比較開始用閾値との比較の結果、出力が反転していないコンパレータの閾値を上記より高い閾値にシフトさせる
請求項4記載の自動ステップ可変減衰器。
【請求項6】
電波信号の受信信号をステップ状に減衰させる自動ステップ可変減衰器と、
上記自動ステップ可変減衰器から出力された受信信号を所定の利得をもって増幅する低雑音増幅器と、を有し、
上記自動ステップ可変減衰器は、
電波信号の受信信号を制御信号に応じた減衰量でステップ状に減衰させて上記低雑音増幅器に出力するステップ可変減衰器と、
電波信号の受信信号の入力に対して上記ステップ可変減衰器と並列に配置され、入力した受信信号の電力を、当該受信信号の強度を示す強度信号に変換する検波器と、
上記検波器による上記強度信号と複数の閾値との高低の比較結果に応じた上記制御信号を生成し、生成した上記制御信号を上記ステップ可変減衰器に出力するコンパレータ部と、を含む
無線通信装置。
【請求項7】
上記コンパレータ部は、
値が段階的に異なる閾値と上記強度信号を比較する複数のコンパレータを含み、
最も低い比較開始用閾値電と比較するコンパレータから出力が反転し、出力が反転した上記コンパレータから最初の比較に用いた比較開始用閾値より低い閾値に切り替えて比較動作を行う。
請求項6記載の無線通信装置。
【請求項8】
上記強度信号は、基本的に単調に増加する信号であり、
上記コンパレータ部は、
値が段階的に異なる閾値と上記強度信号を比較する複数のコンパレータを含み、
上記各コンパレータは、
上記強度信号が対応して与えられる比較開始用閾値を超えないときは制御信号を第1のレベルで出力し、上記強度信号が上記比較開始用閾値を超えると制御信号を第1のレベルを反転させた第2のレベルで出力し、
上記第2のレベルの制御信号を出力すると上記比較開始用閾値に代えて、当該比較開始用閾値より少なくとも一段階分低い閾値が与えられて当該低い閾値と上記強度信号との比較を行う
請求項6記載の無線通信装置。
【請求項9】
上記コンパレータの比較開始用閾値をより高い閾値にシフトさせる閾値シフト機能部を有する
請求項7記載の無線通信装置。
【請求項10】
上記閾値シフト機能部は、
上記複数のコンパレータのうち、上記強度信号と与えられた比較開始用閾値との比較の結果、出力が反転していないコンパレータの閾値を上記より高い閾値にシフトさせる
請求項9記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−38509(P2013−38509A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171202(P2011−171202)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】