説明

自動ドアの開閉制御方法

【課題】建物の空調管理上、人がドアから離れる方向に移動する場合には、ドアを速やかに閉じてドアの開時間を可及的に短時間とする。
【解決手段】ドア1が設置されている通路面F上に存在する物体(人)の有無を検知する複数の光センサ20と、各光センサ20から出力される物体検知・非検知の出力信号に基づいてドア1に開閉用の制御信号を与える制御手段30とを備え、各センサ20により通路面Fの少なくとも片側通路面上にドア1と平行な複数の監視列L1〜L5を設定し、制御手段30は、各光センサ20から出力される物体検知信号の時系列が、人がドア1から離れる方向の順序である場合にドア1に閉信号を与えるにあたって、ドア1が開いている状態で、ドア1に直近の監視列L1を監視する光センサ21の出力信号が物体検知のONから物体非検知のOFFに転じた後に、ドア1に閉信号を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドアの開閉制御方法に関し、さらに詳しく言えば、物体(人)がドアから離れる方向に移動する場合において、速やかにドアを閉じるようにした自動ドアの開閉制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動ドアは、通路上を移動する物体(ここでは「人」とする。)を検知するセンサを有し、そのセンサ出力によってドアを自動的に開閉するが、特許文献1には、人がドアに対して近づく方向と離れる方向とを判別し得る方向性検知機能を有する自動ドアの開閉制御方法が提案されている。
【0003】
その一例を図10の模式図により説明すると、ドア1が設置されている通路面F上に、ドア1と平行に複数列,この例では5つの監視列(列状の監視領域)L1〜L5が設定される。なお、図10には、ドア1の片側の通路面しか設けられていないが、他方の通路面側にも同様な監視列が設定されてよい。
【0004】
各監視列L1〜L5は、ドア1の例えば無目等に設けられる図示しない光センサにより設定される。光センサは、通路面Fに向けて光(赤外線)を照射する発光素子と、通路面Fからの反射光を受光する受光素子を対として備え、この例では5つの光センサが各監視列L1〜L5ごとに光の照射角度を変えて無目等に配置される。
【0005】
受光素子の受光量は、監視列内に人Aがいる検知時と人Aがいない非検知時とで変動するため、光センサ(受光素子)からは、その受光量に応じた信号が出力される。説明の便宜上、監視列内に人Aがいる検知時の出力信号をONとし、人Aがいない非検知時の出力信号をOFFとする。
【0006】
光センサの出力信号は、図示しない制御手段に与えられる。制御手段は、各光センサからの出力信号(ON,OFF)の現れ方により、ドア1に対する人Aの方向性を検知するとともにドア1を開閉する。
【0007】
すなわち、各光センサから出力されるON信号の時系列が、監視列L5→L4→L3→L2→L1の順序であれば、人Aがドア1に近づく方向に移動していると判断し、図示しないドアエンジンにドア開信号を出力する。
【0008】
これに対して、各光センサから出力されるON信号の時系列が、監視列L1→L2→L3→L4→L5の順序であれば、図10の(a)〜(g)に示すように、人Aがドア1から離れる方向に移動していると判断し、ドアエンジンにドア閉信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−311060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、建物の空調管理上、特に建物の玄関ドア等では、その開時間はできるだけ短時間であることが好ましい。
【0011】
しかしながら、上記従来の方向性検知機能では、人Aがドア1から離れる方向に移動していると判断してドア閉信号を出力する場合、図10(g)に示すように、人Aが最外側の監視列L5を通過し、全監視列L1〜L5内に人Aがいないことを確認してから、ドア閉信号を出力するようにしているため、その分、ドアの開時間が長くなってしまう。
【0012】
したがって、本発明の課題は、人がドアから離れる方向に移動する場合には、ドアを速やかに閉じてドアの開時間を可及的に短時間とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、自動ドアが設置されている通路面に向けて光を照射する発光素子と上記通路面からの反射光を受光する受光素子とを対として含み、上記通路面上に存在する物体の有無を検知する複数の光センサと、上記各光センサから出力される物体検知・非検知の出力信号に基づいて上記自動ドアに開閉用の制御信号を与える制御手段とを備え、上記各センサにより上記通路面の少なくとも片側通路面上に上記自動ドアと平行な複数の監視列を設定し、上記制御手段は、上記各光センサから出力される物体検知信号の時系列が、上記物体が上記自動ドアから離れる方向の順序である場合に、上記自動ドアに閉信号を与えるにあたって、上記自動ドアが開いている状態で、上記自動ドアに直近の第1監視列を監視する第1光センサの第1出力信号が物体検知から物体非検知に転じた後に、上記自動ドアに閉信号を与えることを特徴としている。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記制御手段は、上記自動ドアが開いている状態で、まず、上記自動ドアに直近の第1監視列を監視する第1光センサの第1出力信号のみを有効とし、第2監視列以降を監視する各光センサの出力信号は無効として扱い、上記第1光センサの第1出力信号が物体検知から物体非検知に転じた後に、次列の第2監視列を監視する第2光センサの第2出力信号を有効とし、上記第2出力信号が物体検知状態であるときに、上記自動ドアに閉信号を与えることを特徴としている。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項2において、上記制御手段は、上記第2光センサの第2出力信号が物体検知から物体非検知に転じた後に、次列の第3監視列を監視する第3光センサの出力を有効とし、これを上記自動ドアから最も離れた最外側の監視列を監視する最外側光センサまで順次繰り返し、最終的に全監視列の各光センサの出力信号を有効として扱うことを特徴としている。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3において、上記制御手段は、上記第1光センサから上記最外側光センサにかけて、それらの各出力信号を順次有効として行く際、前列の監視列の光センサの出力信号が物体非検知から物体検知に転じた場合には、上記自動ドアに開信号を与えることを特徴としている。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項2ないし4のいずれか1項において、上記制御手段は、所定の光センサの物体検知とする出力信号が所定時間継続したときには、全監視列の各光センサの出力信号を有効として扱うことを特徴としている。
【0018】
また、請求項6に係る発明は、請求項2ないし5のいずれか1項において、上記制御手段は、最外側の監視列を監視する光センサの出力信号が物体検知である場合には、全監視列の各光センサの出力信号を有効として扱うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、自動ドアが開いている状態で、自動ドアに直近の第1監視列を監視する第1光センサの第1出力信号が物体検知から物体非検知に転じた後に、自動ドアに閉信号を与えるようにしたことにより、人がドアを通過しドアから離れる方向に移動し始めた時点でドアが閉められるため、ドアの開時間をより短時間とすることができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、自動ドアが開いている状態で、まず、自動ドアに直近の第1監視列を監視する第1光センサの第1出力信号のみを有効とし、第2監視列以降を監視する各光センサの出力信号は無効として扱い、第1光センサの第1出力信号が物体検知から物体非検知に転じた後に、次列の第2監視列を監視する第2光センサの第2出力信号を有効とし、第2出力信号が物体検知状態であるときに、自動ドアに閉信号を与えるようにしたことにより、安全性を確保しながら、ドアの開時間をより短時間とすることができる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、第2光センサの第2出力信号が物体検知から物体非検知に転じた後に、次列の第3監視列を監視する第3光センサの出力を有効とし、これを自動ドアから最も離れた最外側の監視列を監視する最外側光センサまで順次繰り返し、最終的に全監視列の各光センサの出力信号を有効として扱うようにしたことにより、人が通過した監視列の例えば脇から人が入りこんでも、確実に人を検知することができる。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、第1光センサから最外側光センサにかけて、それらの各出力信号を順次有効として行く際、前列の監視列の光センサの出力信号が物体非検知から物体検知に転じた場合には、自動ドアに開信号を与えるようにしたことにより、ドアから離れる方向に移動している人が途中でUターンしてドア側に引き返す際の安全性が確保される。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、所定の光センサの物体検知とする出力信号が所定時間継続したときには、全監視列の各光センサの出力信号を有効として扱うようにしたことにより、ドアに近づく人がいる場合、その人を最外側の光センサで検知することができ、ドアに近づく人に対する安全性が高められる。
【0024】
また、請求項6に係る発明によれば、最外側の監視列を監視する光センサの出力信号が物体検知である場合には、全監視列の各光センサの出力信号を有効として扱うようにしたことにより、請求項5と同じく、ドアに近づく人に対する安全性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す模式図。
【図2】ドア通路面上に設定される各監視列を示す模式的な斜視図。
【図3】本発明の実施形態が備えるドア開閉の制御系を示す概略的なブロック図。
【図4】本発明の実施形態における基本的な動作を説明するための模式図。
【図5】本発明の実施形態における安全対策を説明するための模式図。
【図6】本発明の実施形態における安全対策を説明するための模式図。
【図7】本発明の実施形態における安全対策を説明するための模式図。
【図8】本発明の実施形態における安全対策を説明するための模式図。
【図9】本発明の効果を説明するための説明図。
【図10】従来技術の方向性検知機能を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図1ないし図9により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
まず、図1,図2を参照して、本発明によると、基本的な構成として、ドア1に対する物体(人)の移動方向を検知(方向性検知)するため、ドア1の通路面F上に複数の監視列が設定される。監視列の列幅にもよるが、監視列は3列以上であることが好ましい。
【0028】
ドア1は引き戸式であり、この実施形態では、ドア1に対して平行に例えば5列の監視列L1〜L5が設定される。監視列L1がドア1に対して最も近く、監視列L5が最外側でドア1から最も離れている。なお説明上、監視列L1〜L5を区別する必要がない場合には、総称として監視列Lとする。
【0029】
図1,図2には、ドア1の通路面Fの片側通路面にのみ監視列Lが設けられている状態が示されているが、他方の通路面にも同様に方向性検知のための監視列Lが設けられてもよいし、もしくは他方の通路面側のドアセンサは、タッチセンサやマットセンサであってもよい。また、図示しないが、ドア1の方立間にはドアレール上の人を検知する安全ビームが設けられている。
【0030】
通路面F上に監視列L1〜L5を設定するため、5つの光センサ21〜25が用いられる。すなわち、光センサ21,22,23,24,25が、それぞれ、監視列L1,L2,L3,L4,L5に対応している。
【0031】
なお説明上、光センサ21〜25を区別する必要がない場合には、総称として光センサ20とする。図1には、作図の都合上、光センサ21〜25が個別的に示されているが、実際には、一体としてセンサボックス内に収納され、例えば無目1aもしくは天井面等のドア1よりも高い位置に設置される。
【0032】
図3を参照して、各光センサ20は反射型センサで、通路面Fに向けて光(赤外線)を照射する発光素子210と、通路面Fからの反射光を受光する受光素子220とを対として備える。
【0033】
図3に示すように、各監視列Lに8スポットが含まれる場合、一例として、各光センサ20の発光部側には、2発光素子と4分割レンズの組み合わせが採用され、同様に、受光部側にも、2受光素子と4分割レンズの組み合わせが採用される。
【0034】
図3のドア開閉の制御系には、制御手段30が含まれている。制御手段30は、CPU(中央演算処理ユニット)やマイクロコンピュータ等が用いられる。発光素子210は、発光素子駆動回路211を介して制御手段30により駆動される。
【0035】
一方、受光素子220からは、その受光量に応じた信号が出力され、制御手段30に与えられる。受光素子220の受光量は、監視列L内に人がいる検知時と、人がいない非検知時とで変動する。
【0036】
この実施形態の説明でも、説明の便宜上、監視列L内に人がいる検知時の出力信号をONとし、人がいない非検知時の出力信号をOFFとする。なお、受光素子220の出力信号を光センサ20の出力信号と言うことがある。
【0037】
制御手段30は、各光センサ20の出力信号に基づいて、ドアエンジン11のリレースイッチ12を制御する。この例において、リレースイッチ12がオンの時、ドアエンジン11にドア開信号が出され、リレースイッチ12がオフの時、ドアエンジン11にドア閉信号が出される。
【0038】
また、制御手段30は、光センサ21〜25からのON信号の現れ方によって方向性を検知する。すなわち、先の従来例で説明したのと同じく、各光センサ20から出力されるON信号の時系列が、光センサ25(監視列L5)→光センサ24(監視列L4)→光センサ23(監視列L3)→光センサ22(監視列L2)→光センサ21(監視列L1)の順序であれば、人がドア1に近づく方向に移動していると判断し、リレースイッチ12をオンにして、ドアエンジン11にドア開信号を出力する。
【0039】
これに対して、各光センサ20から出力されるON信号の時系列が、光センサ21(監視列L1)→光センサ22(監視列L2)→光センサ23(監視列L3)→光センサ24(監視列L4)→光センサ25(監視列L5)の順序であれば、人がドア1から離れる方向に移動していると判断し、リレースイッチ12をオフにして、ドアエンジン11にドア閉信号を出力する。
【0040】
本発明において、制御手段30は、図4(a)〜(g)に示すように、人Aがドア1から離れる方向に移動する場合、それを検知してドア1の開時間をより短くするため、次のような制御を行う。
【0041】
なお、図4の各図(a)〜(g)において、ドア1の右側が室内側で、ドア1の左側が室外側であるとする。そして、その室外側に、図1で説明したように、各光センサ20(21〜25)が設けられ、その通路面F上に各監視列L(L1〜L5)が設定されているものとする。
【0042】
まず、図4(a)は、人Aがドア1の室内側にいて、これからドア1の外(室外側)に出ようとしている状態を示している。このとき、制御手段30は、室外側に設けられている各光センサ20からの出力信号を全て有効として扱う。
【0043】
ここで、「有効」とは、ドア開閉の制御要因に含める、という意味である。したがって、「全て有効として扱う」とは、各光センサ20からの出力信号のうちの一つでもON信号のものがあれば、ドア開信号を出すことを意味している。
【0044】
図4(a)において、人Aがドア1に近づいて、図示しない室内側ドアセンサにより検知されると、制御手段30は、ドア1を開くとともに、ドア1に直近の監視列L1を監視する光センサ21からの出力信号のみを有効として扱い、他の監視列L2〜L5の光センサ22〜25からの出力信号は無効として扱う。
【0045】
すなわち、制御手段30は、光センサ22〜25からの出力信号は、ドア開閉の制御要因に含めず無視する。図4の各図(a)〜(g)において、有効として扱われる検知光線には梨地(スマッジング)付され、無効として扱われる検知光線は破線で示している。
【0046】
この状態で、図4(b)に示すように、人Aが室外側に出て1列目の監視列L1に入ると、光センサ21の出力信号がONとなるため、制御手段30は、ドア開信号を維持する。
【0047】
次に、人Aが室外側に向けてさらに移動して、図4(c)に示す2列目の監視列L2に入り、光センサ21の出力信号が非検知のOFF信号になると、制御手段30は、1列目の光センサ21の出力信号に加えて、2列目の監視列L2を監視する光センサ22の出力信号を有効として扱い、光センサ21の出力信号がOFFで、光センサ22の出力信号がONである場合には、人Aが室外側に進行していると判断して、この時点で、ドア閉信号を出力する。
【0048】
次に、人Aがさらに移動して、図4(d)に示す3列目の監視列L3に入り、光センサ22の出力信号がOFFになると、制御手段30は、1列目,2列目の光センサ21,22の出力信号に加えて、3列目の監視列L3を監視する光センサ23の出力信号を有効として扱う。
【0049】
以後、制御手段30は、図4(e)〜(g)に示すように、人Aが移動するに伴って、残りの光センサ24,25の出力信号を順次有効とし、光センサ25の出力信号がOFFになった時点で、人Aが最後列の監視列L5から抜け出たと判断し、方向性検知動作を解除する。
【0050】
このように、人Aの移動に伴って、光センサ21〜25の出力信号を順次加算的に有効とすることにより、人Aが途中でUターンしてドア1に向けて戻ろうとする場合の安全性を確保することができる。これについて、図5により説明する。
【0051】
人Aが、図5(a)〜(d)に示すように、1列目の監視列L1〜5列目の監視列L5にまで移動したのち、図5(e)に示すように、Uターンして4列目の監視列L4に入ると光センサ24の出力信号がOFFからONとなるため、制御手段30は、ドア開信号を出す。例えば、2列目の監視列L2でUターンする場合にも同様に、制御手段30は、ドア開信号を出す。
【0052】
すなわち、方向性検知動作時において、ONからOFFになった光センサ20が再びONに転じた場合には、人が途中でUターンしたものとして、ドア開信号を出力して安全性を確保する。
【0053】
また、図8の矢印で示すように、人が監視列Lの脇から侵入した場合にも、ONからOFFになったいずれかの光センサ20が再びONに転ずるため、同様にドア開信号を出力して安全性を確保する。なお、このドア開信号の出力とともに、方向性検知動作は解除される。
【0054】
また、安全性を確保するうえで、人が途中で所定時間立ち止まった場合には、方向性検知動作を解除して、全ての光センサ20(21〜25)の出力信号を有効として扱う。これについて、図6により説明する。
【0055】
図6(b)に示すように、人Aが例えば3列目の監視列L3にまで移動し、そこで立ち止まると、4列,5列目の光センサ24,25の出力信号は無効扱いとなり、その分、検知エリアが狭くなったままとなり、ドア1に近づこうとする人がいる場合、その検知が遅くなる。
【0056】
そこで、制御手段30は、監視列L3を監視する光センサ23の出力信号が、所定時間(一例として5秒程度)の間、ON状態のままであるときには、人Aが監視列L3に立ち止まっているものと判断し、方向性検知動作を解除して、図6(c)に示すように、光センサ21〜25の出力信号を有効として扱う。
【0057】
これによれば、図6(d)に示すように、ドア1に近づこうとする人Bをドア1から最も遠い5列目の監視列L5で検知することができる。
【0058】
また、図7(a)に示すように、ドア1が開かれた際には、1列目の監視列L1を監視する光センサ21の出力信号のみが有効で、2列目〜5列目の監視列L2〜L5を監視する光センサ22〜25の各出力信号は無効扱いとなり、検知エリアが最も狭い状態となるため、ドア1に近づこうとする人がいる場合、その検知がかなり遅くなる。
【0059】
そこで、制御手段30は、例えば、1列目の監視列L1を監視する光センサ21の出力信号のみが有効としている場合において、5列目の監視列5を監視する光センサ25の出力信号がONである場合には、方向性検知動作に入ることなく、全ての光センサ20(21〜25)の出力信号を有効として扱う。
【0060】
これによれば、図7(b)に示すように、ドア1に近づこうとする人Bをドア1から最も遠い5列目の監視列L5で検知することができ、安全性が高められる。
【0061】
なお、方向性検知動作時において、例えば2列目の監視列L2に人が存在しているときに、5列目の監視列5を監視する光センサ25の出力信号がONになった場合には、方向性検知動作を解除して、全ての光センサ20(21〜25)の出力信号を有効として扱うようにしてもよい。
【0062】
次に、図9により、本発明の効果を従来例と対比して検証する。図9(a1)は自動ドア周りの構成を示す模式図。図9(a2)〜(a4)は人が移動する状況を示す模式図。図9(b)はセンサー設置高さが2m、また、図9(c)はセンサー設置高さが3mのときのドア閉時間の推移を示すグラフ(縦軸;ドア開,閉、横軸;時間(s))である。数値はすべて理論値。
【0063】
図9(a1)において、ドア1の間口は1800mm、ドア1の閉時間は閉速度0.35m/sとして約3秒。ドア1の両側にセンサーSA,SBを設置。センサーSA,SBは、ともに上記実施形態と同じく5つの光センサを備え、各通路面上に監視列L1〜L5を設定。センサーSAが室内側,センサーSBが室外側である。
【0064】
ドア1から1列目の監視列L1の後縁までの距離は、設置高さが2mの場合で0.4m,設置高さが3mの場合で0.5m。また、ドア1から5列目の監視列L5の後縁までの距離は、設置高さが2mの場合で2.4m,設置高さが3mの場合で3.3m。人の歩行速度は約1.0m/sとしている。
【0065】
図9(b),(c)の各グラフにおいて、実線が人が1列目の監視列L1を通過した図9(a3)の時点でドア閉信号を出力する本発明例のもので、鎖線が5列目の監視列L5を通過した図9(a4)の時点でドア閉信号を出力する従来例のものである。
【0066】
これから分かるように、本発明例によれば、従来例に比べて、ドア開からドア閉に至るまでの時間を、センサ設置高さが2mの場合には2.0秒、センサ設置高さが3mの場合には2.8秒短縮することができる。したがって、建物の空調管理の負荷を大幅に軽減することができ、省エネルギー化に貢献するところ大である。
【符号の説明】
【0067】
1 ドア
1a 無目
11 ドアエンジン
20(21〜25) 光センサ
210 発光素子
220 受光素子
30 制御手段
F 通路面
L(L1〜L5) 監視列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドアが設置されている通路面に向けて光を照射する発光素子と上記通路面からの反射光を受光する受光素子とを対として含み、上記通路面上に存在する物体の有無を検知する複数の光センサと、上記各光センサから出力される物体検知・非検知の出力信号に基づいて上記自動ドアに開閉用の制御信号を与える制御手段とを備え、上記各センサにより上記通路面の少なくとも片側通路面上に上記自動ドアと平行な複数の監視列を設定し、
上記制御手段は、上記各光センサから出力される物体検知信号の時系列が、上記物体が上記自動ドアから離れる方向の順序である場合に、上記自動ドアに閉信号を与えるにあたって、
上記自動ドアが開いている状態で、上記自動ドアに直近の第1監視列を監視する第1光センサの第1出力信号が物体検知から物体非検知に転じた後に、上記自動ドアに閉信号を与えることを特徴とする自動ドアの開閉制御方法。
【請求項2】
上記制御手段は、上記自動ドアが開いている状態で、まず、上記自動ドアに直近の第1監視列を監視する第1光センサの第1出力信号のみを有効とし、第2監視列以降を監視する各光センサの出力信号は無効として扱い、上記第1光センサの第1出力信号が物体検知から物体非検知に転じた後に、次列の第2監視列を監視する第2光センサの第2出力信号を有効とし、上記第2出力信号が物体検知状態であるときに、上記自動ドアに閉信号を与えることを特徴とする請求項1に記載の自動ドアの開閉制御方法。
【請求項3】
上記制御手段は、上記第2光センサの第2出力信号が物体検知から物体非検知に転じた後に、次列の第3監視列を監視する第3光センサの出力を有効とし、これを上記自動ドアから最も離れた最外側の監視列を監視する最外側光センサまで順次繰り返し、最終的に全監視列の各光センサの出力信号を有効として扱うことを特徴とする請求項2に記載の自動ドアの開閉制御方法。
【請求項4】
上記制御手段は、上記第1光センサから上記最外側光センサにかけて、それらの各出力信号を順次有効として行く際、前列の監視列の光センサの出力信号が物体非検知から物体検知に転じた場合には、上記自動ドアに開信号を与えることを特徴とする請求項3に記載の自動ドアの開閉制御方法。
【請求項5】
上記制御手段は、所定の光センサの物体検知とする出力信号が所定時間継続したときには、全監視列の各光センサの出力信号を有効として扱うことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の自動ドアの開閉制御方法。
【請求項6】
上記制御手段は、最外の監視列を監視する光センサの出力信号が物体検知である場合には、全監視列の各光センサの出力信号を有効として扱うことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の自動ドアの開閉制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−179219(P2011−179219A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44105(P2010−44105)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(390002668)株式会社本田電子技研 (13)
【Fターム(参考)】