説明

自動二・三輪車の起立装置

【課題】 車高を調整することにより、フートレストを駐車スタンドとして用いることができる自動二・三輪車の起立装置を提供すること。
【解決手段】 車体10aの路面Rに対する高さを調整する車高調整機構20、連結部材30を備えた連結部間距離調整機構およびフートレスト調整機構40を備え、車体10aが各調整機構の作動により下降したときに、フートレストの接地部材44a,44bが路面に接地して車体10aを起立状態に保持できるようにした。また、連結部材を、上下方向に平行して設けられた伸縮軸状部材31,32で構成し、伸縮軸状部材31,32を、それぞれ嵌合筒31a,32aと嵌合軸31b,32bで構成した。さらに、嵌合筒31a,32aに横架部材35を掛け渡し、横架部材35と後輪懸架装置との間に油圧緩衝器37を掛け渡して固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高調整機構を備えた自動二・三輪車の起立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車においては、駐車用スタンドが設けられ、また、旋回時等に車体を左右に揺動させながら走行する自動三輪車においては、車体を静止状態に保持するロック機構が設けられている。そして、この自動二・三輪車を静止状態にする際には、駐車スタンドを接地させて起立状態にしたり、ロック機構を作動させたりすることが行われている。このような自動二・三輪車の中に、運転中に運転者が足を置くためのフートレストを駐車スタンドとして利用できるようにした自動二輪車がある(例えば、特許文献1参照)。この自動二輪車では、車体フレームのエンジン懸架ブラケットにエンジンユニットが連結され、このエンジンユニットの後部に後輪が取り付けられている。また、エンジンユニットの下面に駐車スタンドが上下方向に回転可能な状態で取り付けられている。
【0003】
このように構成されているため、エンジンユニットの整備や修理等のメンテナンス時に、エンジンユニットを車体から取り外すと、後輪と駐車スタンドもエンジンユニットと一緒に車体から取り外される。このため、エンジンユニットを車体から取り外したときに、車体後部の下部に位置するフートレストを駐車スタンドの代わりに接地させて車体を支持させるようにしている。また、車体の左右に一対の補助輪を設けて接地させることにより、車体を起立状態に保持できるようにした二輪車もある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−238455号公報
【特許文献2】特開昭59−199383号公報
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の自動二輪車では、通常時に用いる駐車スタンドと、メンテナンス時に駐車スタンドとして用いるフートレストの双方が必要になる。また、特許文献2に記載の二輪車では、二輪車が大型化するとともに、部品点数が増え、コストも高くなる。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、車高を調整することにより、フートレストを駐車スタンドとして用いることができる自動二・三輪車の起立装置を提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置の構成上の特徴は、車体の前後にそれぞれ前輪と後輪が設けられているとともに、車体の下部側の左右に一対のフートレストが設けられた自動二・三輪車の起立装置であって、車体の路面に対する高さを調整する車高調整機構を備え、車体が車高調整機構の作動により下降したときにフートレストが路面に接地して車体を起立状態に保持できるようにしたことにある。
【0007】
本発明に係る自動二・三輪車の起立装置では、車高調整機構を利用して従来から自動二・三輪車に備わっているフートレストを駐車スタンドの代わりに路面に接地させるようにしたため、駐車スタンドを別途設ける必要がなくなる。これによって、自動二・三輪車が小型化されるとともに、部品点数が減少して安価につく。また、フートレストが接地したときに、車高が低くなるため、運転者が乗車し易くなる。すなわち、本発明に係る自動二・三輪車は、車高を低くした状態で運転者が乗車し、そののち車高調整機構を作動させることにより車高を高くして走行に適した状態にすることができる。なお、本発明に係る自動三輪車は、旋回時等に左右に揺動しながら走行することができるもので、静止したときに、起立装置なしでは、安定した起立状態になり難いものとする。
【0008】
また、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置の他の構成上の特徴は、車高調整機構を、前輪を支持する前輪懸架装置および後輪を支持する後輪懸架装置のうちの少なくとも一方に設けたことにある。これによると、元々、衝撃吸収のために車高を変化させる機構を、各懸架装置が具備しているため、この部分に車高調整機構を設けることにより車高調整機構を単純な構造にすることができる。車高調整機構を前輪懸架装置に設けた場合には、車体前部側が低くなってフートレストが接地するようになり、車高調整機構を後輪懸架装置に設けた場合には、車体後部側が低くなってフートレストが接地するようになる。また、車高調整機構を前輪懸架装置と後輪懸架装置との双方に設けた場合には、車体全体が低くなってフートレストが接地するようになる。
【0009】
また、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置のさらに他の構成上の特徴は、前輪を支持する前輪懸架装置を支持するヘッドパイプと、車体の後部に設けられたリヤアームを支持する車体本体とを連結部材で連結し、車高調整機構を、連結部材におけるヘッドパイプ側のヘッドパイプ側連結部と車体本体側の車体本体側連結部との互いの位置を少なくとも上下方向に変位させながら調整できる連結部間距離調整機構で構成したことにある。これによると、連結部間距離調整機構を、車高を調整するための車高調整機構としてだけでなく、前輪のキャスタ角や前輪と後輪との間の距離、いわゆるホイールベースを調整する機構としても利用できる。
【0010】
また、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置のさらに他の構成上の特徴は、前輪を支持する前輪懸架装置を支持するヘッドパイプと、後輪を支持する後輪懸架装置の構成部材であるリヤアームを支持する車体本体とを連結部材で連結し、前輪懸架装置および後輪懸架装置のうちの少なくとも一方に設けた懸架装置側車高調整機構、連結部材におけるヘッドパイプ側のヘッドパイプ側連結部と車体本体側の車体本体側連結部との互いの位置を少なくとも上下方向に変位させながら調整できる連結部間距離調整機構および一対のフートレストの路面に対する距離を変更可能にするフートレスト調整機構のうちの少なくとも二つの調整機構を自動二・三輪車に設けて、少なくとも二つの調整機構の作動によりフートレストが路面に接地して車体を起立状態に保持できるようにしたことにある。
【0011】
この場合の懸架装置側車高調整機構、連結部間距離調整機構およびフートレスト調整機構は、それぞれフートレストの高さを上下に調整できる機構である。本発明によると、自動二・三輪車が、懸架装置側車高調整機構、連結部間距離調整機構およびフートレスト調整機構のうちの少なくとも二つの調整機構を備えており、その少なくとも二つの調整機構を同時に作動させることができるため、それぞれの調整機構によるフートレストの高さ調整量を加算することができる。このため、個々の調整機構を小型化できる。
【0012】
また、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置のさらに他の構成上の特徴は、連結部材を伸縮自在に組み付けられた2個の軸状部材からなる伸縮軸状部材で構成して、伸縮軸状部材を、ヘッドパイプ側連結部よりも車体本体側連結部が下方になるように傾斜させて設置し、伸縮軸状部材を、ヘッドパイプおよび車体本体に対して揺動できないようにしたことにある。
【0013】
これによると、前輪のキャスタ角を略一定にしたまま前輪と後輪との間の距離を調整することができる。また、ヘッドパイプと車体本体とが連結部材によって強固に連結されるようになり車体の剛性が向上する。また、連結部材を、上下方向に平行して設けられた一対の伸縮軸状部材で構成することができ、これによると、車体の剛性をさらに向上することができる。さらに、車体の車幅方向の寸法が小さくなるため、運転者が楽な姿勢で乗車できる。
【0014】
また、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置のさらに他の構成上の特徴は、連結部材を、伸縮自在に組み付けられた2個の軸状部材からなる伸縮軸状部材を上下方向に平行して設けた一対のもので構成し、一対の伸縮軸状部材を、両ヘッドパイプ側連結部よりも両車体本体側連結部が下方になるように傾斜させて設置し、両伸縮軸状部材をヘッドパイプに対して上下方向に揺動可能にし、両伸縮軸状部材のうちの一方の伸縮軸状部材を車体本体側に対して上下方向に揺動可能にし、他方の伸縮軸状部材を車体本体側に対して揺動できないようにしたことにある。
【0015】
これによると、連結部材を構成する2個の伸縮軸状部材、ヘッドパイプおよび車体本体とでリンク機構が構成されるため、一方の伸縮軸状部材の長さと、他方の伸縮軸状部材の長さとを異なる長さにして、前輪のキャスタ角や前輪と後輪との間の距離を大きく変更することができる。この結果、車体の形状を大きく変化させることができる。
【0016】
また、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置のさらに他の構成上の特徴は、連結部材を構成する一対の伸縮軸状部材の所定部分に横架部材を掛け渡して固定し、横架部材とリヤアームとの間に伸縮可能な油圧緩衝器を掛け渡して固定したことにある。
【0017】
これによると、連結部材を構成する一対の伸縮軸状部材に横架部材を掛け渡して固定することにより、車体の剛性がさらに向上する。また、油圧緩衝器の一端部が横架部材を介して連結部材に強固に支持される。さらに、油圧緩衝器の一端部を支持する部材を一対の伸縮軸状部材に掛け渡される横架部材として利用したため、油圧緩衝器の一端部を支持する部材または横架部材を別途設ける場合と比較して、起立装置が小型化されるとともに、部品点数が減少して安価につく。また、車体の車幅方向の寸法が小さくなるため、運転者が楽な姿勢で乗車できる。
【0018】
また、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置のさらに他の構成上の特徴は、一対の伸縮軸状部材を、それぞれ嵌合筒と嵌合筒の内部に摺動自在に嵌合する嵌合軸との嵌合部材で構成して、一対の伸縮軸状部材におけるそれぞれの一方の端部をヘッドパイプに連結して他方のそれぞれの端部を車体本体に連結し、嵌合部材のうちの車体本体に連結した嵌合部材どうしを横架部材で連結したことにある。これによると、連結部材を構成する一対の伸縮軸状部材の伸縮調整と、油圧緩衝器の伸縮調整とが独立して行われるようになるため、油圧緩衝器を伸縮調整することなく連結部材を伸縮させることができる。
【0019】
また、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置のさらに他の構成上の特徴は、一対の伸縮軸状部材を、それぞれ嵌合筒と嵌合筒の内部に摺動自在に嵌合する嵌合軸との嵌合部材で構成して、一対の伸縮軸状部材におけるそれぞれの一方の端部をヘッドパイプに連結して他方のそれぞれの端部を車体本体に連結し、嵌合部材のうちのヘッドパイプに連結した嵌合部材どうしを横架部材で連結したことにある。これによると、連結部材を伸縮調整するだけで、同時に、車高を連結部材の伸縮と同じ方向に調整するよう油圧緩衝器を伸縮調整することができるので、その分、一対のフートレストと路面との間の距離を大きく調整することができる。
【0020】
また、本発明に係る自動二・三輪車の起立装置のさらに他の構成上の特徴は、車高調整機構の作動を制御してフートレストを路面に接地させる制御装置と、自動二・三輪車が走行状態であるか否かを検出する走行状態検出手段とを備え、自動二・三輪車が走行状態であることを走行状態検出手段が検出したときに、フートレストを路面に接地させないように制御装置が車高調整機構を制御するようにしたことにある。これによると、自動二・三輪車が走行しているときに、フートレストが接地することを防止できる。また、この場合の走行状態とは、実際に自動二・三輪車が走行しているときだけでなく、メインスイッチをオン状態にして、走行開始ができる状態にあるときも含むものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1および図2は、同実施形態に係る起立装置を備えた自動二輪車10を示している。この自動二輪車10は、前輪11aと後輪11bとからなる一対の車輪と、これら一対の車輪が取り付けられた車体10aとを備えている。そして、車体10aは、ヘッドパイプ12、車体本体13および一対のアームからなるリヤアーム14等のフレーム部を備えており、ヘッドパイプ12と車体本体13とは、連結部材30によって連結されている。また、車体10aの後部側上部にシート15が形成され、車体10aの車体本体13の下部に、運転者D(図10参照)が足を置くための一対のフートレスト部40a,40bを備えたフートレスト調整機構40が設けられている。
【0022】
前輪11aは、図3に示したように、下方が二股に分岐した前輪懸架装置としてのフロントフォーク16の下端部に回転可能に支持されている。すなわち、フロントフォーク16の両下端部は、前輪11aを軸支する水平中心軸17の両側部分を支持しており、これによって、前輪11aは、水平中心軸17を中心として回転可能になっている。また、前輪11aの中心部には、前輪11aを回転駆動させるための駆動モータ18aとディスクブレーキ18bとが設けられ、フロントフォーク16の外側部における水平中心軸17の両端部に対応する部分には、足を乗せることのできるステップとしても使用できる緩衝部材17a,17bがそれぞれ外側に突出した状態で設けられている。
【0023】
また、フロントフォーク16の上端部は、本発明の懸架装置側車高調整機構としての車高調整機構20を介してヘッドパイプ12内に配置されたステアリング軸21に連結されている。このステアリング軸21は、ヘッドパイプ12内に、ヘッドパイプ12の軸周り方向に回転可能な状態で取り付けられており、上端部がヘッドパイプ12から突出して上方に延びている。そして、車高調整機構20が備える伸縮軸部24,25の上部側を構成する筒状支持部24a,25aの上端部に、ハンドル22a,22bが連結されている。このため、ハンドル22a,22bを回転操作して、ステアリング軸21を軸回り方向に回転させると、ステアリング軸21の回転量に応じて前輪11aは左右に方向を変える。
【0024】
また、ハンドル22a,22bの左右両端には、グリップ29a,29bが設けられている。グリップ29aは、ハンドル22aに固定され、手で持つための把持部として使用される。そして、グリップ29bは、ハンドル22bに固定され、軸回り方向に回転可能な状態で設けられており、手で持つための把持部として使用される外、駆動モータ18aおよび後述する後輪11bに設けられた駆動モータ56aの回転速度を調節するためのアクセル操作子を構成する。また、グリップ29a,29bの近傍には、それぞれ、グリップ29a,29bから離れるように付勢され、グリップ29a,29b側に引っ張られることにより、ディスクブレーキ18bまたは後述するディスクブレーキ56bを制御して前輪11aまたは後輪11bの回転を抑制するブレーキレバー23a,23bが設置されている。
【0025】
車高調整機構20は、左右一対の伸縮軸部24,25と、伸縮軸部24,25間に設置されたアクチュエータ26とを備えている。伸縮軸部24,25は、それぞれ伸縮軸部24,25の上部側を構成する筒状支持部24a,25aと、筒状支持部24a,25a内に設置され、筒状支持部24a,25aの下端開口から下方に向かって進退可能になった進退部24b,25bとで構成されている。そして、筒状支持部24a,25aの上部側部分と下部側部分とにそれぞれ取付部材27a,27bが掛け渡され、この取付部材27a,27bの中央にステアリング軸21が掛け渡されて固定されている。そして、取付部材27aにアクチュエータ26が固定されている。
【0026】
アクチュエータ26は下方に向って進退可能な進退軸26aを備えており、進退軸26aの下端部に、正面視が逆U字状で側面視がL字状に形成された接続部材28が固定されている。そして、接続部材28の両下端部28a,28bに、進退部24b,25bの下端部が固定されている。このため、アクチュエータ26が作動して進退軸26aが上下方向に進退すると、接続部材28および進退部24b,25bが進退軸26aの上下動に追従して上下に移動する。したがって、アクチュエータ26を作動させて、伸縮軸部24,25の長さを変更することにより、ハンドル22a,22bの路面Rからの高さ、すなわち、車体10aの前部側部分の路面Rからの高さを任意の高さに調整することができる。
【0027】
車体本体13は、図4に示したように、後端部が連結された筒状の2個のフレーム13a,13bを一体成形により成形して形成されている。そして、フレーム13a,13bを、後部側が前部側よりも低くなるように傾斜させるとともに、上下に間隔を保った状態で平行に配置して構成されている。また、上部側に配置されたフレーム13bの下端部分には、モータ(図示せず)を備えた回転駆動部13cが設けられている。
【0028】
そして、この車体本体13とヘッドパイプ12との間が連結部材30で連結されている。連結部材30は、それぞれ対応するフレーム13a,13bと同軸的に配置されてフレーム13a,13bの前部から前方斜め上方に延びる一対の伸縮軸状部材31,32を備えている。伸縮軸状部材31,32は、それぞれ後部側に配置された円筒状の嵌合筒31a,32aと、嵌合筒31a,32a内に設置され、嵌合筒31a,32aの前端開口から前方斜め上方に向かって進退可能になった嵌合軸31b,32bとで構成されている。
【0029】
そして、嵌合筒31a,32aの後端部は、それぞれフレーム13a,13b内に挿入された状態でフレーム13a,13bに固定され、嵌合軸31b,32bの後端部は、嵌合筒31a,32a内を移動可能に設置された移動連結部材32c等(一方しか図示せず)に連結されている。また、嵌合軸31b,32bの前端部は、それぞれヘッドパイプ12に、支軸33a,33bを介して連結されている。この支軸33a,33bは、水平方向に配置されており、嵌合軸31b,32bは、支軸33a,33bを中心としてヘッドパイプ12に対して上下方向に回転(揺動)可能になっている。
【0030】
また、フレーム13a,13bの後部側内部には、一対のアクチュエータ34a,34bが並んで設けられており、このアクチュエータ34a,34bの進退軸34c(一方しか図示せず)に、移動連結部材32c等が連結されている。このため、アクチュエータ34a,34bが作動して進退軸34c等が前後方向に進退すると、移動連結部材32c等および嵌合軸31b,32bが進退軸34c等の前後動に追従して前後方向に移動する。したがって、アクチュエータ34a,34bを作動させて、伸縮軸状部材31,32の長さを変更することにより、ヘッドパイプ12と車体本体13との間の長さ、すなわち、車体10aの前後方向の長さを任意の長さに調整することができる。
【0031】
また、アクチュエータ34aは、フレーム13b内に設けられた支軸34dを中心として上下方向に回転可能になっており、フレーム13bの内周面と嵌合筒32aの外周面との間には、小さな隙間が設けられている。このため、フレーム13a,13b、伸縮軸状部材31,32およびヘッドパイプ12でリンク機構が構成され、このリンク機構を構成する各部分は、他の部分に対して変位可能になっている。なお、連結部材30、移動連結部材32c等およびアクチュエータ34a,34bで、本発明の連結部間距離調整機構が構成される。
【0032】
また、嵌合筒31a,32aの前部側部分には横架部材35が掛け渡されて固定されており、車体本体13の後端部には、支軸36aを介して回転支持部材36が回転可能な状態で取り付けられている。この横架部材35の下端部は、嵌合筒31aの下方に突出して延び、回転支持部材36の下端部は、フレーム13aの下方に突出して延びている。そして、横架部材35の下端部に、油圧緩衝器37の前端部が支軸35aを介して回転自在に連結され、回転支持部材36の下端部に油圧緩衝器37の後端部が支軸で36bを介して回転自在に連結されている。
【0033】
この油圧緩衝器37の後部側部分には、モータ38a(図6参照)の作動により伸縮する伸縮機構38が形成されており、伸縮機構38の伸縮に応じて回転支持部材36は、支軸36aを中心として前後方向に回転する。また、回転支持部材36の略中央部には、支軸39aを介して連結片39の上端部(前端部)が回転自在に連結され、連結片39の下端部(後端部)は、支軸39bを介してリヤアーム14を構成する一対のアームの前部側部分間に回転自在に連結されている。したがって、リヤアーム14は、回転支持部材36の回転にしたがって、後述するピボット41cを中心に上下に移動する。なお、リヤアーム14、回転支持部材36、連結片39および油圧緩衝器37等で後輪懸架装置が構成される。
【0034】
また、フレーム13aの下面後部の左右両側には、フートレスト調整機構40を取り付けるための一対のブラケット41a,41b(図5参照)が固定されており、このブラケット41a,41bの下端後部は、それぞれピボット41cを介してリヤアーム14を構成する一対のアームの前端部に連結されている。両ブラケット41a,41bの上部側部分には、それぞれ回転軸42a,42bが取り付けられており、この回転軸42a,42bを介して、アーム部材43a,43bの上端部がブラケット41a,41bに回転自在に連結されている。
【0035】
フートレスト部40a,40bは、それぞれアーム部材43a,43bの下部外側に設けられており、アーム部材43a,43bの下端内側には、それぞれ円板状の接地部44a,44bが設けられている。これらのアーム部材43a,43b、フートレスト部40a,40bおよび接地部44a,44bで本発明のフートレストが構成される。また、アーム部材43a,43bの略中央には、アーム部材43a,43bの長手方向に沿って延びる長穴45a,45bが設けられている。そして、ブラケット41a,41bの下部には、アーム駆動部46が取り付けられている。
【0036】
このアーム駆動部46は、図5に示したように、一対の回転体46a,46bと、回転体46a,46bを同期回転させるモータ47を備えている。回転体46a,46bは、それぞれブラケット41a,41bに固定されており、モータ47は、固定部材47cを介して回転体46aに固定されている。また、回転体46a,46bの外周部における所定部分には、アーム部材43a,43bの長穴45a,45bに係合する係合突起48a,48bが外側に向って形成され、回転体46a,46bの内部には、減速機構49a,49bが収容されている。
【0037】
そして、モータ47は、左右両側に延びる一対の回転軸47a,47bを備えており、回転軸47aは、固定部材47cを貫通して回転体46a内の減速機構49aに連結されている。また、回転軸47bは、直接回転体46b内の減速機構49bに連結されている。この減速機構49a,49bの減速比は、1/160に設定されており、回転軸47a,47bが160回転したときに、回転体46a,46bは1回転する。また、その際、長穴45a,45bと係合突起48a,48bとの係合により、アーム部材43a,43bが回転体46a,46bの回転に追従して回転軸42a,42bを中心として回転する。これによって、フートレスト部40a,40bおよび接地部44a,44bの位置が、上下方向および前後方向に変化する。
【0038】
車体本体13に取り付けられた回転駆動部13cと支軸36aには、それぞれシート連結部材51a,51bの下端部が回転可能に連結されている。また、車体10aの後部側上部に設けられたシート15の下部には、シート支持部材52が設けられており、シート15はこのシート支持部材52によって支持されている。そして、シート連結部材51a,51bの上端部に、シート支持部材52が、間隔を保って配置された回転支軸52a,52bを介して回転可能な状態で取り付けられている。このため、車体本体13、シート連結部材51a,51bおよびシート支持部材52でリンク機構が形成されている。したがって、回転駆動部13cのモータを作動させて、このリンク機構を、変形させることによりシート15の位置を上下方向および前後方向に変化させることができる。
【0039】
また、シート15は、シート支持部材52に固定されたシート前部15aと、シート前部15aに対する角度を変更可能な状態でシート前部15aに組み付けられたシート後部15bとで構成されており、シート後部15bは、モータ(図示せず)を備えた回転駆動部52cを介してシート支持部材52に連結されている。したがって、シート15のシート後部15bは、回転駆動部52cのモータを作動させて角度を変えることにより、運転者Dの尻部後部側を支えるために使用したり、背もたれとして使用したりすることができる。
【0040】
また、シート支持部材52の両側には、後方斜め上方に延びる一対のバッテリ収容部53a,53bが着脱自在に取り付けられている。このバッテリ収容部53a,53bは、外観をエンジン駆動式自動二輪車のマフラーに似せた円柱状に形成されており、内部にそれぞれバッテリ(図示せず)を収容できるように構成されている。また、バッテリ収容部53a,53bの後端部には、開閉蓋54a,54bが設けられており、整備のためにバッテリ収容部53a,53bからバッテリを着脱する際には、この開閉蓋54a,54bを取り外す。また、バッテリ収容部53a,53bのいずれか一方を小物入れとして用いることもできる。
【0041】
また、後輪11bは、前述したリヤアーム14の後端部に回転可能に支持されている。すなわち、リヤアーム14を構成する一対のアームの両後端部は、後輪11bの水平中心軸55の両側部分を支持しており、これによって、後輪11bは、水平中心軸55を中心として回転可能になっている。また、後輪11bの中心部には、後輪11bを回転駆動させるための駆動モータ56aとディスクブレーキ56bとが設けられ、リヤアーム14の外側部における水平中心軸55の両端部に対応する部分には、足を乗せることのできるステップとしても使用できる緩衝部材55a(一方しか図示せず)がそれぞれ外側に突出した状態で設けられている。
【0042】
また、シート15の下部には、自動二輪車10が備える駆動系を電気的に制御するコントローラ57が設けられている。このコントローラ57は、CPU、ROM、RAM等を備えており、ROMおよびRAMが記憶する各種のプログラムをCPUが実行することによって、自動二輪車10を、運転者Dの操作に応じて、形状変更させたり、走行させたりする。その際、コントローラ57は、車高調整機構20のアクチュエータ26、連結部間距離調整機構のアクチュエータ34a,34b、伸縮機構38のモータ38aおよびフートレスト調整機構40のモータ47を制御してフートレストの接地部材44a,44bを路面Rに接地させる制御も行う。
【0043】
また、図示していないが、水平中心軸55の近傍には、水平中心軸55の回転数から自動二輪車10の走行速度を検出する速度センサが設けられ、ハンドル22a,22bの近傍には、メインスイッチや、前輪11aと後輪11bとの駆動状態を切り替えるための切り替えスイッチが設けられている。さらに、アクチュエータ26等やモータ38a等の各駆動装置を作動させるための操作子等も備えている。また、コントローラ57は、速度センサの速度検出により自動二輪車10が走行中であると判定した場合には、アクチュエータ26,34a,34b、モータ38aおよびモータ47の作動のうちの所定の作動を停止させて、フートレストの接地部材44a,44bが路面Rに接地することを防止する制御も行う。なお、車高調整機構20、連結部間距離調整機構、伸縮機構38およびフートレスト調整機構40を含む車体10aで本発明の起立装置が構成される。
【0044】
この構成において、自動二輪車10に運転者Dが乗る場合には、運転者Dは、図1のようにフートレストの接地部材44a,44bが路面Rに接地して起立状態で静止した自動二輪車10のシート15に座り、メインスイッチをオン状態にする。ついで、運転者Dは両足をそれぞれフートレスト部40a,40bに乗せ、所定の操作子を操作することにより、例えば、図6に示した状態にする。図6は、図1に示した自動二輪車10から車高調整機構20および伸縮機構38を伸ばすとともに、回転駆動部13cを作動させてシート連結部材51a,51bを略垂直にした状態を示している。これによって、車体10a全体の路面Rからの高さが高くなる。
【0045】
すなわち、車高調整機構20の伸縮軸部24,25が伸びることによって、車体10aの前部側部分の路面Rからの高さが高くなる。また、伸縮機構38が伸びることによって、回転支持部材36の下端部が後方に押されて、回転支持部材36は支軸36aを中心として後方に回転し垂直に近い状態になる。このため、リヤアーム14が連結片39を介して回転支持部材36によって回動させられ、これにともなって、リヤアーム14が連結されたブラケット41a,41bを介して車体本体13も上昇するため、車体10aの後部側部分の路面Rからの高さも高くなる。
【0046】
さらに、回転駆動部13cの作動により、シート15の車体本体13に対する高さも高くなるため、自動二輪車10は走行に適した形状になる。この場合、運転者Dは、車体10aが低くなった自動二輪車10に跨り、運転者Dが自動二輪車10に跨ったのちに、車体10aが高くなるため、運転者Dはあたかもラクダに乗るような感覚で自動二輪車10に乗車することができ興趣に富むものとなる。
【0047】
そして、運転者Dが、グリップ29bを操作すると、自動二輪車10は、そのグリップ29bの操作に応じて加速走行する。この場合、切り替えスイッチを操作することにより、または自動的に制御して、前輪11aと後輪11bとの双方を駆動させたり、一方だけを駆動させたり、さらに、前輪11aと後輪11bとの駆動トルクを代えて駆動させたりすることができる。また、自動二輪車10の走行速度を下げる場合には、ブレーキレバー23a,23bを操作して前輪11aと後輪11bとの回転駆動を抑制する。走行の際に、路面Rの凹凸等により、自動二輪車10に衝撃が加わった場合には、フロントフォーク16および油圧緩衝器37によってその衝撃が緩和される。
【0048】
そして、運転者Dの体とハンドル22a,22bとの間隔を広げて運転者Dが重心を低くした状態で自動二輪車10を運転する場合には、図7に示したように、連結部材30を伸ばすとともに、回転駆動部13cを作動させてシート連結部材51a,51bが斜め後方に向って傾くようにする。すなわち、連結部材30の伸縮軸状部材31,32が伸びることによって、車体10aの前後方向の長さが長くなる。また、回転駆動部13cの作動により、シート15の車体本体13に対する高さが低くなるとともにシート15が後方に移動するため、運転者Dは、車体10aの後部側の低い位置に体を位置させて、前方の高い位置にあるハンドル22a,22bを操作するようになる。
【0049】
さらに、運転者Dが、足を折り曲げて体を丸めた状態で運転する場合には、図8に示したように、アーム駆動部46を回転駆動させてアーム部材43a,43bが斜め後方に向って傾くようにする。すなわち、アーム駆動部46のモータ47が作動することによって、回転体46a,46bが回転し、長穴45a,45bと係合突起48a,48bとが係合しているため、アーム部材43a,43bも回転体46a,46bの回転にしたがって振り子のように移動する。
【0050】
このため、図8に示したように、アーム部材43a,43bが斜め後方に向って傾いたときに、任意の傾斜角度位置でモータ47を停止させることにより、減速機構49a,49bが大きな減速比を有することからアーム部材43a,43bをその状態に保持することができる。この状態では、フートレスト部40a,40bが運転者Dの体の真下に位置するため、運転者Dは、足を折り曲げて体を丸めた状態で運転することができる。
【0051】
また、運転者Dが、体を伸ばし上半身を後方に傾けた状態で運転する場合には、図9に示したように、アーム駆動部46を回転駆動させてアーム部材43a,43bが斜め前方に傾くようにするとともに、回転駆動部52cのモータを作動させてシート後部15bが後方の斜め上方に向って傾くようにする。この状態では、フートレスト部40a,40bが運転者Dの体の前方下部の離れた位置に位置し、シート後部15bが後方斜め上方に向って延びるため、運転者Dは、足を伸ばしシート後部15bを背もたれとして体を斜め上方に傾けた状態で運転することができる。
【0052】
さらに、運転者Dが、シート15に座らず、立った状態でアクロバット的な運転をする場合には、図10に示したように、回転駆動部52cのモータを作動させてシート後部15bをさらに回転させ、前方の斜め上方に向って傾くようにする。そして、運転者Dは、後輪11bに設けられた緩衝部材55a等の上に立ち、シート後部15bおよびバッテリ収容部53a,53bに体を支持させた状態で運転することができる。
【0053】
また、自動二輪車10の走行中に、車体10aの高さが低くなり、フートレストの接地部材44a,44bと路面Rとの距離が予め設定された所定の値になった場合には、コントローラ57の制御により、アクチュエータ26,34a,34b、モータ38aおよびモータ47の作動のうちの所定の作動が停止し、フートレストの接地部材44a,44bが路面Rに接地することを防止する。なお、この場合の接地部材44a,44bの路面Rからの高さは、アクチュエータ26等の各駆動装置の駆動状態から算出する。
【0054】
そして、自動二輪車10の走行を終了させるときには、ブレーキレバー23a,23bの操作により自動二輪車10を停止させる。ついで、所定の操作子を操作することにより、車体10aを下降させてフートレストの接地部材44a,44bを路面Rに接地させて自動二輪車10を起立状態で静止させる。そして、メインスイッチをオフ状態にする。その際に、バッテリの充電量が減少していれば、充電用の接続コード(図示せず)をバッテリに接続して、バッテリを充電する。
【0055】
このように、本発明に係る自動二輪車10では、車高調整機構20、連結部材30を備えた連結部間距離調整機構および伸縮機構38を利用して車高調整を行ったり、フートレスト調整機構40を作動させてフートレストの接地部材44a,44bを接地させて静止時の自動二輪車10を起立状態に維持したりしている。したがって、駐車スタンドを別途設ける必要がなくなり、自動二輪車10が小型化されるとともに、部品点数が減少して安価につく。また、フートレストの接地部材44a,44bが接地したときに、車高が低くなるため、運転者Dが自動二輪車10に乗車し易くなる。
【0056】
また、連結部間距離調整機構は、車高を調整するための車高調整機構としてだけでなく、前輪11aのキャスタ角やホイールベースを調整する機構としても利用できる。このため、連結部間距離調整機構と、他の車高調整機構20、伸縮機構38およびフートレスト調整機構40と組み合わせることにより、自動二輪車10の前後方向の長さ、前輪11a側と後輪11b側との高さを、それぞれ任意に変更することができ、自動二輪車10の形状を自由に変えることができる。さらに、連結部材30を一対の伸縮軸状部材31,32で構成したため、車体10aの剛性を向上することができる。
【0057】
また、連結部材30を構成する伸縮軸状部材31,32、ヘッドパイプ12および車体本体13でリンク機構が構成されるため、伸縮軸状部材31の長さと、伸縮軸状部材32の長さとを異なる長さにして、前輪11aのキャスタ角やホイールベースを大きく変更することができる。この結果、車体10aの形状を大きく変化させることができる。さらに、連結部材30を構成する伸縮軸状部材31,32に横架部材35を掛け渡して固定することにより、車体10aの剛性がさらに向上する。
【0058】
また、油圧緩衝器37の一端部を横架部材35に支持させたため、油圧緩衝器37を支持する部材または横架部材を別途設けなくて済み、起立装置が小型化されるとともに、部品点数が減少して安価につく。さらに、自動二輪車10が走行状態であることを車速センサが検出したときに、コントローラ57の制御により、アクチュエータ26,34a,34b、モータ38a,47のうちの所定のモータの作動が停止して、接地部材44a,44bが路面Rに接地することを防止することができる。
【0059】
このため、走行中に、接地部材44a,44bが路面Rに接地して、走行の妨げになったり、フートレスト調整機構40が破損したりすることを防止できる。また、図10に示したように、シート後部15bを前方の斜め上方に向くよう傾斜させたときには、バッテリ収容部53a,53bもシート後部15bと一緒に前方の斜め上方に向くように傾斜するため、運転者Dは、バッテリ収容部53a,53bを体の左右の揺れを規制するための規制部材として利用できる。
【0060】
また、本発明に係る自動二・三輪車は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、懸架装置側車高調整機構を車高調整機構20と後輪懸架装置に設けた伸縮機構38の双方で構成したが、いずれか一方だけを設けることもできる。また、前述した実施形態では、自動二輪車10が、懸架装置側車高調整機構、連結部間距離調整機構およびフートレスト調整機構40を備えているが、このうちの任意の二つの機構だけを設けて車高調整機構を構成することもできる。
【0061】
また、前述した実施形態では、支軸33a,33bおよび回転駆動部13cの部分を回転可能にして、連結部材30、車体本体13およびヘッドパイプ12でリンク機構を形成するようにしているが、ヘッドパイプ12に対して連結部材30を互いに移動できないように固定するとともに、車体本体13のフレーム13a,13bを互いに揺動できないようにすることもできる。これによると、車体10aの剛性が向上する。さらに、前述した実施形態では、横架部材35を嵌合筒31a,32aに掛け渡して、この横架部材35に油圧緩衝器37の一端部を連結しているが、この横架部材35は、嵌合軸31b,32bに掛け渡すこともできる。
【0062】
これによると、連結部材30を伸縮させるだけで、同時に、油圧緩衝器37を伸縮調整することができるので、その分、フートレストと路面Rとの間の距離を大きく調整することができる。また、油圧緩衝器37の一端部をヘッドパイプ12に連結することができ、これによっても、フートレストと路面Rとの間の距離を大きく調整することができる。さらに、前述した実施形態では、車速センサによる走行検出に基づいて、コントローラ57が、接地部材44a,44bを路面Rに接地させないよう制御しているが、この車速センサに代えて、駐車ブレーキとその状態を検出するセンサを用いることができる。
【0063】
この場合、駐車ブレーキが作動中であるか否かをセンサが検出し、駐車ブレーキが作動中でないときには、コントローラ57が、接地部材44a,44bを路面Rに接地させないように制御するようにする。また、前述した実施形態では、フートレストをフートレスト部40a,40bや接地部材44a,44b等で構成したが、接地部材44a,44bを設けず、フートレスト部40a,40bが接地するようにしてもよい。さらに、接地部材44a,44bを車輪で構成して接地した状態で回転できるようにすることもできる。また、自動二・三輪車を自動二輪車10としたが、本発明が自動三輪車を含むことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車を起立状態にした状態を示した側面図である。
【図2】自動二輪車の平面図である。
【図3】車高調整機構を示した正面図である。
【図4】連結部材とその近傍部分を示した側面図である。
【図5】フートレスト調整機構を示した断面図である。
【図6】車高を高くして走行に適した状態にした自動二輪車を示した側面図である。
【図7】車体後部側を低くした自動二輪車を示した側面図である。
【図8】フートレストを後方に位置させた状態の自動二輪車を示した側面図である。
【図9】シート後部を背もたれにした状態の自動二輪車を示した側面図である。
【図10】シート後部を前部側に倒した状態の自動二輪車を示した側面図である。
【符号の説明】
【0065】
10…自動二輪車、10a…車体、11a…前輪、11b…後輪、12…ヘッドパイプ、13…車体本体、14…リヤアーム、16…フロントフォーク、20…車高調整機構、24,25…伸縮軸部、30…連結部材、31,32…伸縮軸状部材、31a,32a…嵌合筒、31b,32b…嵌合軸、35…横架部材、37…油圧緩衝器、38…伸縮機構、40a,40b…フートレスト部、40…フートレスト調整機構、44a,44b…接地部、46…アーム駆動部、57…コントローラ、R…路面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後にそれぞれ前輪と後輪が設けられているとともに、前記車体の下部側の左右に一対のフートレストが設けられた自動二・三輪車の起立装置であって、
前記車体の路面に対する高さを調整する車高調整機構を備え、前記車体が前記車高調整機構の作動により下降したときに、前記フートレストが路面に接地して前記車体を起立状態に保持できるようにしたことを特徴とする自動二・三輪車の起立装置。
【請求項2】
前記車高調整機構を、前記前輪を支持する前輪懸架装置および前記後輪を支持する後輪懸架装置のうちの少なくとも一方に設けた請求項1に記載の自動二・三輪車の起立装置。
【請求項3】
前記前輪を支持する前輪懸架装置を支持するヘッドパイプと、前記車体の後部に設けられたリヤアームを支持する車体本体とを連結部材で連結し、前記車高調整機構を、前記連結部材における前記ヘッドパイプ側のヘッドパイプ側連結部と前記車体本体側の車体本体側連結部との互いの位置を少なくとも上下方向に変位させながら調整できる連結部間距離調整機構で構成した請求項1に記載の自動二・三輪車の起立装置。
【請求項4】
前記前輪を支持する前輪懸架装置を支持するヘッドパイプと、前記後輪を支持する後輪懸架装置の構成部材であるリヤアームを支持する車体本体とを連結部材で連結し、前記前輪懸架装置および前記後輪懸架装置のうちの少なくとも一方に設けた懸架装置側車高調整機構、前記連結部材における前記ヘッドパイプ側のヘッドパイプ側連結部と前記車体本体側の車体本体側連結部との互いの位置を少なくとも上下方向に変位させながら調整できる連結部間距離調整機構および前記一対のフートレストの前記路面に対する距離を変更可能にするフートレスト調整機構のうちの少なくとも二つの調整機構を、前記自動二・三輪車に設けて、前記少なくとも二つの調整機構の作動により前記フートレストが路面に接地して前記車体を起立状態に保持できるようにした請求項1に記載の自動二・三輪車の起立装置。
【請求項5】
前記連結部材を伸縮自在に組み付けられた2個の軸状部材からなる伸縮軸状部材で構成して、前記伸縮軸状部材を、前記ヘッドパイプ側連結部よりも前記車体本体側連結部が下方になるように傾斜させて設置し、前記伸縮軸状部材を、前記ヘッドパイプおよび前記車体本体に対して揺動できないようにした請求項3または4に記載の自動二・三輪車の起立装置。
【請求項6】
前記連結部材を、上下方向に平行して設けられた一対の伸縮軸状部材で構成した請求項5に記載の自動二・三輪車の起立装置。
【請求項7】
前記連結部材を、伸縮自在に組み付けられた2個の軸状部材からなる伸縮軸状部材を上下方向に平行して設けた一対のもので構成し、前記一対の伸縮軸状部材を、前記両ヘッドパイプ側連結部よりも前記両車体本体側連結部が下方になるように傾斜させて設置し、前記両伸縮軸状部材を前記ヘッドパイプに対して上下方向に揺動可能にし、前記両伸縮軸状部材のうちの一方の伸縮軸状部材を前記車体本体側に対して上下方向に揺動可能にし、他方の伸縮軸状部材を車体本体側に対して揺動できないようにした請求項3または4に記載の自動二・三輪車の起立装置。
【請求項8】
前記連結部材を構成する一対の伸縮軸状部材の所定部分に横架部材を掛け渡して固定し、前記横架部材と前記リヤアームとの間に伸縮可能な油圧緩衝器を掛け渡して固定した請求項6または7に記載の自動二・三輪車の起立装置。
【請求項9】
前記一対の伸縮軸状部材を、それぞれ嵌合筒と前記嵌合筒の内部に摺動自在に嵌合する嵌合軸との嵌合部材で構成して、前記一対の伸縮軸状部材におけるそれぞれの一方の端部を前記ヘッドパイプに連結して他方のそれぞれの端部を前記車体本体に連結し、前記嵌合部材のうちの前記車体本体に連結した前記嵌合部材どうしを前記横架部材で連結した請求項8に記載の自動二・三輪車の起立装置。
【請求項10】
前記一対の伸縮軸状部材を、それぞれ嵌合筒と前記嵌合筒の内部に摺動自在に嵌合する嵌合軸との嵌合部材で構成して、前記一対の伸縮軸状部材におけるそれぞれの一方の端部を前記ヘッドパイプに連結して他方のそれぞれの端部を前記車体本体に連結し、前記嵌合部材のうちの前記ヘッドパイプに連結した前記嵌合部材どうしを前記横架部材で連結した請求項8に記載の自動二・三輪車の起立装置。
【請求項11】
前記車高調整機構の作動を制御して前記フートレストを前記路面に接地させる制御装置と、前記自動二・三輪車が走行状態であるか否かを検出する走行状態検出手段とを備え、前記自動二・三輪車が走行状態であることを前記走行状態検出手段が検出したときに、前記フートレストを前記路面に接地させないように前記制御装置が前記車高調整機構を制御するようにした請求項1ないし10のうちのいずれか一つに記載の自動二・三輪車の起立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−106203(P2007−106203A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297368(P2005−297368)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】