説明

自動二輪車用排気マフラー

【課題】エンジンからの排ガスを導く排気管に通じる第1膨張室を形成する第1ケースと、第1膨張室からの排ガスが導入される第2膨張室を形成する第2ケースとを備える自動二輪車用排気マフラーにおいて、コスト増大を招く加工を不要として外板鳴りを防止しつつ、スペース効率の向上および容量増大を容易に可能とする。
【解決手段】第1ケース98が円筒状に構成され、椀状に形成されて相互に対向する一対のケース半体103,104の周縁部が結合されて第2ケース99が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの排ガスを導く排気管に通じる第1膨張室を形成する第1ケースと、第1膨張室からの排ガスが導入される第2膨張室を形成する第2ケースとを備える自動二輪車用排気マフラーに関する。
【背景技術】
【0002】
このような排気マフラーは、たとえば特許文献1および特許文献2等で既に知られている。
【特許文献1】特公平7−76527号公報
【特許文献2】特公平6−50052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1および2で開示されたものでは、第1膨張室を形成する第1ケースが、相互に対向する一対のケース半体の周縁部を結合して構成され、第2膨張室を形成する第2ケースが、その一部を円筒体として構成されている。しかるに、第1膨張室に導入される排気圧は比較的高いため、一対のケース半体の周縁部を結合して成る構造の第1ケースでは排気脈動によって外板鳴りが生じ易く、外板鳴りを防止するために第1ケースの剛性を高めておく必要がある。このため特許文献1および2で開示されたものでは、第1ケースを構成する両ケース半体が凹凸を有するように成形されており、加工コストの増大を招いている。
【0004】
このような課題を解決するために、第1および第2ケースをともに管剛性の高い円筒形状に構成することも考えられ、そうすると外板鳴りに対しては効果的であるが、排気マフラーの必要容量に対するスペース効率が劣ることになり、特にスクータ系の自動二輪車には適用が困難である。また排気マフラーのケーシングを第1および第2ケースに分けずに単一の円筒形状とすることも可能であるが、このような排気マフラーでは、必要容量を確保しようとするとケーシングの外径が大きくなり、車体幅からはみ出してしまい、また長さにも制限があるので、容量増大に限界がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、コスト増大を招く加工を不要として外板鳴りを防止しつつ、スペース効率の向上および容量増大を容易に可能とした自動二輪車用排気マフラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、エンジンからの排ガスを導く排気管に通じる第1膨張室を形成する第1ケースと、第1膨張室からの排ガスが導入される第2膨張室を形成する第2ケースとを備える自動二輪車用排気マフラーにおいて、第1ケースが円筒状に構成され、椀状に形成されて相互に対向する一対のケース半体の周縁部が結合されて第2ケースが構成されることを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、第1ケースと、第1ケースの上部に結合される第2ケースとが、第2ケースの上部外周を後輪の外周にほぼ対応して彎曲した円弧状に形成して前記後輪の側方に配置され、後輪を上方から覆うリヤフェンダ部に、前記第1および第2ケースを上方から覆うマフラープロテクタ部が一体に連設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記請求項1記載の発明によれば、導入される排気圧が高い第1膨張室を形成する第1ケースが管剛性の高い円筒状に構成されるので、コスト増大を招く加工を不要として外板鳴りを効果的に防止することができ、しかも第1膨張室よりも排気圧が低下した排ガスが導入される第2膨張室を形成する第2ケースが、椀状である一対のケース半体の周縁部が結合されて成るものであるので、第2ケースでの外板鳴りの対応を最小限とすることが可能であり、容量増大も容易に可能であるので、第1および第2ケースを有する排気マフラー全体の容量増大を容易とし、スペース効率も高めることができる。
【0009】
また請求項2記載の発明によれば、後輪を覆うリヤフェンダ部と一体のマフラープロテクタ部で排気マフラーを覆うことができ、コンパクトな外観を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図6は本発明の一実施例を示すものであり、図1はスクータ型自動二輪車の側面図、図2は図1の2−2線断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は排気マフラーを図3の4矢視方向から見た背面図、図5は図3の5−5線断面図、図6は図4の6−6線断面図である。
【0012】
先ず図1において、このスクータ型の自動二輪車はハイブリッド型のものであり、その車体フレームFは、前輪WFを下端部で軸支するフロントフォーク11を操向可能に支承するヘッドパイプ12と、該ヘッドパイプ12から後下がりに延びる前部フレーム13と、前部フレーム13の下端から左右に分岐して後方に略水平に延びる一対の中間部フレーム14…と、それらの中間部フレーム14…の後端から後上がりに延びる一対の後部フレーム15…とを備え、フロントフォーク11の上部にはバー状の操向ハンドル16が連結される。
【0013】
前記両後部フレーム15…の前後方向中間部には、パワーユニットPの前部が揺動可能に支承されており、前記両後部フレーム15…の一方およびパワーユニットP間にはリヤクッション17が設けられ、パワーユニットPの後部には後輪WRが軸支される。
【0014】
図2において、パワーユニットPは、後輪WRに駆動力を付与可能としてたとえば水冷式単気筒に構成される4サイクルのエンジンEと、該エンジンEの出力を無段階に変速可能なVベルト式の無段変速機18と、エンジンEおよび無段変速機18間に介装される発進クラッッチ19と、前記後輪WRに駆動力を付与し得る電動モータ20と、電動モータ20および後輪WR間に設けられる動力伝達手段21と、前記無段変速機18および動力伝達手段21間に介装される一方向クラッチ22とを備える。
【0015】
エンジンEのエンジン本体25は、後輪WRの回転軸線と平行な回転軸線を有するクランクシャフト26を回転自在に支承するクランクケース27と、クランクケース27に結合されるシリンダブロック28と、クランクケース27と反対側でシリンダブロック28に結合されるシリンダヘッド29と、シリンダブロック28と反対側でシリンダヘッド29に結合されるヘッドカバー30とを備える。
【0016】
シリンダブロック28は、該シリンダブロック28に設けられるシリンダボア31の軸線が自動二輪車の進行方向に沿ってわずかに前上がりとして略水平となるように配置される。シリンダボア31にはピストン32が摺動自在に嵌合されており、該ピストン32はコネクティングロッド33を介してクランクシャフト26に連結される。
【0017】
シリンダヘッド29およびピストン32間には燃焼室34が形成され、燃焼室34に臨む点火プラグ35が、自動二輪車の進行方向前方を向いた状態でシリンダヘッド29の左側側面に取付けられる。シリンダヘッド29およびヘッドカバー30間には、クランクシャフト26の軸線と平行な軸線を有してシリンダヘッド29に回転自在に支承されるカムシャフト36を含む動弁機構37が、燃焼室34への混合気の吸気ならびに燃焼室34からの排気を制御するための図示しない吸気弁および排気弁を開閉駆動するようにして収容され、自動二輪車の進行方向前方を向いた状態でカムシャフト36の右端部には、クランクシャフト26からの回転動力が調時伝動手段38により1/2に減速されて伝達される。
【0018】
クランクシャフト26の右端部は、クランクケース27およびシリンダブロック28の右側面に取付けれられる取付けベース39を液密にかつ回転自在に貫通するものであり、取付けベース39からの突出部でクランクシャフト26にはアウターロータ41が固定され、このアウターロータ41と協働してACGスタータモータ40を構成するインナーステータ42が、前記アウターロータ41で囲繞されるようにして取付けベース39に固定される。
【0019】
ACGスタータモータ40よりも外方でクランクシャフト26には冷却ファン43が固着されており、この冷却ファン43をACGスタータモータ40との間に挟む位置にラジエータ44が配置され、このラジエータ44は、冷却ファン43を囲繞するシュラウド45を介して前記クランクケース27およびシリンダブロック28に取付けられる。またラジエータ44は、前記シュラウド45に取付けられるラジエータカバー46で覆われており、ラジエータカバー46には、前記冷却ファン43によって外部から冷却空気を導入するためのグリル47…がラジエータ44に対向して形成される。さらに前記ラジエータ44を通過した空気を外部に排出するための排出口48が、前記冷却ファン43の側方でシュラウド45に設けられる。
【0020】
Vベルト式の無段変速機18は、エンジン本体25の一部を側方から覆ってエンジン本体25に連設されるとともに後輪WRの左側まで延設される伝動ケース50内に収容されるものであり、伝動ケース50は、クランクケース27に一体に連なる内側ケース51と、該内側ケース51を外側から覆う外側ケース52と、外側ケース52とは反対側で内側ケース51の後部に締結される歯車ケース53とから成る。
【0021】
無段変速機18は、クランクケース27から伝動ケース50の前部内に突入するクランクシャフト26の端部に装着されるドライブプーリ54と、クランクシャフト26と平行な軸線を有して内側ケース51および歯車ケース53で回転自在に支承される出力軸57に装着されるドリブンプーリ55と、ドライブプーリ54からドリブンプーリ55に動力を伝達する無端状のVベルト56とを備える。
【0022】
ドライブプーリ54は、発進クラッッチ19を介してクランクシャフト26に装着される固定プーリ半体58と、固定プーリ半体58に対して接近・離間可能な可動プーリ半体59とを備え、Vベルト56を巻きかけるようにして固定プーリ半体58および可動プーリ半体59間に形成されるベルト溝の幅を変化せるべく前記可動プーリ半体59を軸方向に駆動させる動力が、伝動ケース50内に固定的に収容された制御用電動モータ60から歯車減速機構61を介して前記可動プーリ半体59に伝達される。
【0023】
発進クラッッチ19は、クランクシャフト26の回転数が所定値以上たとえば3000rpm以上でクランクシャフト26からの動力を前記固定プーリ半体58に伝達する遠心クラッチである。
【0024】
またドリブンプーリ55は、相対回転を可能として出力軸57を同軸に囲繞する内筒64と、軸線まわりの相対回動ならびに軸線方向の相対移動を可能として内筒64を摺動可能に嵌合せしめる外筒65と、内筒64に固定される固定プーリ半体66と、該固定プーリ半体66に対向して外筒65に固定される可動プーリ半体67と、該可動プーリ半体67および固定プーリ半体66間の相対回転位相差に応じて両プーリ半体66,67間に軸方向の分力を作用せしめるようにして内筒64および外筒65間に設けられるトルクカム機構68と、可動プーリ半体67を固定プーリ半体65に近接させる側のばね力を発揮して内筒64および可動プーリ半体67間に縮設されるばね69とを備える。
【0025】
而してドリブンプーリ55における固定プーリ半体66および可動プーリ半体67間の間隔は、前記トルクカム機構68によって生じる軸方向の力と、ばね69によって生じる軸方向の弾性力と、固定プーリ半体66および可動プーリ半体67間の間隔をあける方向に作用するVベルト56からの力とのバランスにより決定され、ドライブプーリ54において可動プーリ半体59を固定プーリ半体58に近接させることによりVベルト56のドライブプーリ54への巻き掛け半径が大きくなると、Vベルト56のドリブンプーリ55への巻き掛け半径が小さくなる。
【0026】
後輪WRに動力を付与し得る電動モータ20は、伝動ケース50における外側ケース52の後部に設けられる開口部70を塞ぐようにして該外側ケース52に固定されるモータケース71に固定されるアウターステータ72と、前記出力軸57に相対回転不能に装着されるインナーロータ73とで構成されるものであり、この電動モータ20の作動時にはその回転動力を出力軸57に伝達することができる。
【0027】
また一方向クラッチ22は、前記ドリブンプーリ55の内筒64と、電動モータ20のインナーロータ73との間に介設されるものであり、無段変速機18によってエンジンEの出力を出力軸57に伝達している状態で、内筒64からインナーロータ73に動力を伝達することが可能である。すなわち、一方向クラッチ22は、内筒64からインナロータ73に対する一方向のみの動力伝達が可能であり、回生制動時に電動モータ20が回生用の発電機として機能したとしても、インナロータ73の回転動力が内筒64に及ぶことがない。したがって、回生時にVベルト56の回転をさせずに済むので、消費電力の効率化を図ることができる。
【0028】
前記内側ケース51および歯車ケース53には、車軸74が回転自在に支承されており、伝動ケース50から突出した車軸74の端部に、後輪WRのハブ75が固着される。
【0029】
前記動力伝達手段21は、出力軸57および車軸74間に設けられる減速ギヤ列であり、出力軸57に設けられる第1ギヤ77と、出力軸57および車軸74と平行にして内側ケース51および歯車ケース53に回転自在に支承される中間軸76に設けられて第1ギヤ77に噛合する第2ギヤ78と、中間軸76に設けられる第3ギヤ79と、第3ギヤ79に噛合して車軸74に設けられる第4ギヤ80とから成る。
【0030】
伝動ケース50における外側ケース52の前記ドライブプーリ54に対向する部分の側壁には、伝動ケース50内に冷却空気を取り入れるための外気取り入れ口81が設けられており、前記ドライブプーリ54の外方でクランクシャフト26の端部には外気取り入れ口81から取り入れた冷却空気を伝動ケース50内に分散させるための冷却ファン82が取付けられる。
【0031】
前記外気取り入れ口81を外側から覆うようにしてフィルタケース83が外側ケース52の外面に取付けられており、このフィルタケース83に設けられる吸入口84からフィルタケース83内に導入された外気は、フィルタケース83内に設けられたフィルタエレメント85を通過することによって浄化され、前記外気取り入れ口81から伝動ケース50内に吸入される。
【0032】
図3を併せて参照して、前記エンジンEの吸気系88は、外部の空気を浄化するエアクリーナ89と、エアクリーナ89からの浄化された空気を導く吸気ホース90と、吸気ホース90の下流端に接続される気化器91と、エンジンEにおけるシリンダヘッド29の上部側面および気化器91間を結ぶ吸気管92とを備えるものであり、エアクリーナ89は、自動二輪車の進行方向前方を向いた状態で後輪WRの左側でパワーユニットPの上方から後方にかけて配置される。
【0033】
またエンジンEの排気系94は、シリンダヘッド29の下部側面に上流端が接続されるとともに自動二輪車の進行方向前方を向いた状態で後輪WRの右側に向けて後方に延設される排気管95と、パワーユニットPとの間に後輪WRを挟むようにして後輪WRの右側に配置されて前記排気管95の下流端に接続される排気マフラー96とを備える。
【0034】
図4〜図6を併せて参照して、排気マフラー96のケーシング97は、前後方向に延びる円筒体100の前端および後端が半球状のエンドキャップ101,102で閉じられて成る円筒状の第1ケース98と、一対の相互に対向する椀状のケース半体103,104の周縁部が自動二輪車の前後方向に沿う結合面で結合されて成るとともに第1ケース98の上部に結合される第2ケース99とから成り、第2ケース99は、側面視で第1ケース98から上方に膨らんだ形状に形成されており、第2ケース99の上部外周99aは、後輪WRの外周にほぼ対応して彎曲した円弧状に形成される。
【0035】
第1ケース98の円筒体100内には、多数の小孔105…が穿孔された内管106が同軸に挿入固定されており、円筒体100および内管106間には吸音材107が充填される。また内管106の後方寄り内面には円板状の隔壁板108の外周が固着されており、この隔壁板108により第1ケース98内は、前方の第1膨張室109と後方の第3膨張室111とに区画される。
【0036】
また第2ケース99を構成するケース半体103,104の内面には、多数の小孔が穿孔された内壁部材112,113の複数箇所および外周縁が溶接されており、ケース半体103,104および内壁部材112,113間には吸音材114,115が充填される。而して第2ケース98内には、第2ケース98の一部内面、前記内壁部材112,113および第1ケース97の上部外面で規定される第2膨張室110が、第1および第3膨張室109,111の上方に位置するようにして形成される。
【0037】
排気管95で導かれた排ガスは第1導管116によって第1膨張室109に導入されるものであり、この第1導管116は、第1ケース98における円筒体100の軸線と平行に延びる第1および第2直管部116a,116cと、略U字状に彎曲して第1および第2直管部116a,116c間を結ぶ曲管部116bとを一体に備えるものであり、第1ケース98の前端のエンドキャップ101および隔壁板108の下部を貫通して第1膨張室109内を第1ケース98の軸線と平行に延びる第1直管部116aの上流端が排気管95の下流端に接続され、第2直管部116cは隔壁板108の上部を貫通して第1膨張室109内を前方に延びるとともに下流端が開放され、曲管部116bは、第1直管部116aの下流端および第2直管部116cの上流端間を結んで第3膨張室111内に配置される。
【0038】
第1導管116で第1膨張室109に導入された排ガスは第2導管117によって第2膨張室110に導かれるものであり、この第2導管117は、第1ケース98の後端のエンドキャップ102および隔壁板108を貫通するようにして略C字状に彎曲形成され、第2導管117の上流端は第1膨張室109に開放され、第2導管117の下流端は第2膨張室110に開放される。
【0039】
第2導管117で第2膨張室110に導入された排ガスは、第3導管118によって第3膨張室111に導かれるものであり、この第3導管118は、第3膨張室111内に配置される上流端を前方に向けて開放するようにして略J字状に形成されており、下流端が第3膨張室111に開放するようにして第1ケース98の後端のエンドキャップ102を貫通する。また第3膨張室111の排ガスは排出管119を経て外部に排出される。
【0040】
第1ケース98の後端のエンドキャップ102の下部には、該エンドキャップ102を貫通する排出外管120が固着されており、排出外管120の両端から両端部を突出させるようにして該排出外管120を同軸に貫通する前記排出管119の外面に排出外管120の両端が固着される。すなわち排出管119は排出外管120を介して第1ケース98のエンドキャップ102に支持される。しかも排出外管120で覆われる部分で排出管119には多数の小孔121…が穿設されており、排出管119および排出外管120間には吸音材122が充填される。
【0041】
ところで、排気マフラー96のケーシング97には、該ケーシング97から前方に張り出すようにして支持ブラケット123が設けられており、この支持ブラケット123がエンジン本体25に締結される。而して排気マフラー96は、パワーユニットPの一部を構成する電動モータ20との間に後輪WRを挟むようにして後輪WRの右側方に配置されるとともに、車体フレームFの前後方向に沿う排気マフラー96の中心位置Cが前記電動モータ20の回転軸線すなわち出力軸57の軸線よりも図2で明示するように距離Lだけ前記前後方向に沿う後方に位置するようにして配置される。
【0042】
前記吸気系88の少なくとも一部であるエアクリーナ89と、前記排気系94の一部を構成する排気マフラー96と、前記パワーユニットPのうち電動モータ20が配設される伝動ケース50と、後輪WRとは共通のカバー125で覆われるものであり、このカバー125は、後輪WRを覆うリヤフェンダ部125aと、パワーユニットPの伝動ケース50および吸気系88のエアクリーナ89を覆うようにしてリヤフェンダ部125aの左側に連設される左カバー部125bと、排気系94の前記排気マフラー96を覆うようにしてリヤフェンダ部125aの右側に連設されるマフラープロテクタ部125cとを一体に有して、合成樹脂により形成される。
【0043】
しかも排気マフラー96が備える第1膨張室109の下部は、前記カバー125におけるマフラープロテクタ部125cの下端開口縁に近接した上方に配置される。
【0044】
図2に注目して、パワーユニットPの電動モータ20は、車体フレームFの幅方向一側、この実施例では左側でモータケース71の少なくとも一部を伝動ケース50の側面から外部に露出させるようにして配置されるのであるが、車体フレームFの幅方向一側に臨む前記カバー125の側面すなわちカバー125の左カバー部125bには、前記モータケース71のうち前記伝動ケース50から露出した部分を走行風で冷却するための吸気側および排気側通気孔126,127が設けられる。
【0045】
前記電動モータ20よりも自動二輪車の進行方向前方側で前記カバー125の左カバー部125bに吸気側通気孔126が設けられ、前記電動モータ20よりも自動二輪車の進行方向後方側で前記左カバー部125bに排気側通気孔127が設けられる。
【0046】
ところでカバー125の左カバー部125bには、電動モータ20に対応した円形の開口部128が設けられるとともに、その開口部128を外側から覆うように配置される円形の覆い部129が一体に設けられており、吸気側通気孔126は、左カバー部125bおよび覆い部129の前端間に形成され、排気側通気孔127は、左カバー部125bおよび覆い部129の後端間に形成される。
【0047】
さらに電動モータ20よりも自動二輪車の進行方向前方側でカバー125の左カバー部125bには、後方側すなわち前記覆い部129側に向かうにつれて凹み量を大とするようにして内方に凹んだ案内凹部130が、後方に向かうにつれて幅を広げるようにして設けられ、該案内凹部130の後端に連なるように吸気側通気孔126が配置される。
【0048】
再び図1に注目して、ヘッドパイプ12の前方は合成樹脂から成るフロントカウル131で覆われ、操向ハンドル16は、その両端のグリップ132…を除いて合成樹脂から成るハンドルカバー134で覆われる。またヘッドパイプ12の後方は合成樹脂から成るセンターカウル135で覆われ、センターカウル135の両側には、フロントカウル131およびセンターカウル135に連なる合成樹脂製のレッグシールド136…がそれぞれ配置される。
【0049】
また車体フレームFが備える左右一対の中間部フレーム14…上には、合成樹脂製のフロアパネル137がセンターカウル135の後方に配置されるようにして固定されており、そのフロアパネル137の両側には合成樹脂製のサイドアンダーカウル138,138がそれぞれ結合される。
【0050】
また車体フレームFの後部およびエンジンEの一部は、合成樹脂から成るとともに後部フレーム15…で支持されるリヤカバー139で覆われており、このリヤカバー139上に、乗車用シート140が開閉可能に配設される。
【0051】
ところで、前記フロアパネル137と、そのフロアパネル137の両側に結合される左右一対のサイドアンダーカウル138,138の一部とは、下方に開いた略U字状の横断面形状を有するラバーマット141を、上方から弾発的に装着することで覆われる。
【0052】
このラバーマット141により、フロアパネル137の中間部フレーム14…への固定部ならびにフロアパネル137への両サイドアンダーカウル138,138の結合部を隠すことが可能となるとともに、フロアパネル137を中間部フレーム14…に固定するために生じる凹部や孔に泥や水が溜まるのを防止することが可能であり、外観性およびメンテナンス性を高めることが可能となる。またラバーマット141の両側部でサイドアンダーカウル138,138の上部を覆うことで、サイドアンダーカウル138,138に傷が付かないように防護するプロテクション機能もラバーマット141に持たせることができる。
【0053】
しかもラバーマット141に乗車用シート140に座乗した運転者が足を置くことにより、合成樹脂製のフロアパネル137に足を直接置くよりもグリップ性を高めることができる。
【0054】
次にこの実施例の作用について説明すると、後輪WRに動力を付与し得るエンジンに連なる吸気系88の少なくとも一部であるエアクリーナ89と、前記エンジンEに連なる排気系94の一部を構成する排気マフラー96とが後輪WRとともに共通のカバー125で覆われ、そのカバー125には、前記後輪WRに動力を付与し得る電動モータ20が該電動モータ20を収容せしめた伝動ケース50とともに覆われるので、吸気系88および排気系94で生じる騒音が外部に極力漏れないようにして防音効果を得ることができるだけでなく、電動モータ20で生じる騒音も外部に極力漏れないようにして防音効果を得ることができ、さらに伝動ケース50をカバー125で保護するとともに外観デザイン性を高めることができる。
【0055】
しかも車体フレームFの前後方向に沿う排気マフラー96の中心位置Cよりも前記前後方向に沿う前方に電動モータ20の回転軸線が配置されるので、排気マフラー96が発生する熱の影響が電動モータ20に極力及ばないようにすることができる。
【0056】
また電動モータ20および排気マフラー96は後輪WRを両側から挟む位置に配置されるものであり、排気マフラー96が発生する熱の影響が電動モータ20に及ぶことをより効果的に防止することができる。
【0057】
さらに排気マフラー96は、エンジンEからの排ガスが導入される第1膨張室109と、第1膨張室109からの排ガスが導入されるようにして第1膨張室109の上方に配置される第2膨張室110とを備えるものであり、カバー125における右カバー部125cの下端開口縁に近接した上方に第1膨張室109の下部が配置されるので、走行風によって排気マフラーを冷却することが可能であり、それにより、排気マフラー96から電動モータ20に及ぶ熱の影響をより小さく抑えることができる。
【0058】
しかも排気マフラー96のケーシング97は、第1膨張室109を形成する第1ケース98と、第1膨張室109からの排ガスが導入される第2膨張室110を形成する第2ケース99とを備えるものであり、導入される排気圧が高い第1膨張室109を形成する第1ケース98が管剛性の高い円筒状に構成されるので、コスト増大を招く加工を不要として外板鳴りを効果的に防止することができる。また第1膨張室109よりも排気圧が低下した排ガスが導入される第2膨張室110を形成する第2ケース99が、椀状である一対のケース半体103,104の周縁部が結合されて成るものであるので、第2ケース99での外板鳴りの対応を最小限とすることが可能であり、容量増大も容易に可能であるので、第1および第2ケース98,99を有する排気マフラー96全体の容量増大を容易とし、スペース効率も高めることができる。
【0059】
また第1ケース98と、第1ケース98の上部に結合される第2ケース99とが、第2ケース99の上部外周99aを後輪WRの外周にほぼ対応して彎曲した円弧状に形成して後輪WRの右側方に配置され、後輪WRを上方から覆うリヤフェンダ部125aに、第1および第2ケース98,99を上方から覆うマフラープロテクタ部125cが一体に連設されるので、後輪Wrを覆うリヤフェンダ部125aと一体のマフラープロテクタ部125cで排気マフラー96を覆うことができ、コンパクトな外観を得ることができる。
【0060】
またパワーユニットPの伝動ケース50には、電動モータ20が、該電動モータ20が備えるモータケース71の少なくとも一部を外部に露出させた状態で収容されており、伝動ケース50を覆うカバー125の左カバー部125bに、モータケース71のうち伝動ケース50から露出した部分を走行風で冷却するための吸気側および排気側通気孔126,127が設けられるので、走行風をカバー125の内側に導いて電動モータ20を効果的に冷却することが可能となる。
【0061】
また吸気側通気孔126は電動モータ20よりも車両の進行方向前方側でカバー125の左カバー部125bに設けられ、排気側通気孔127は電動モータ20よりも車両の進行方向後方側でカバー125の左カバー部125bに設けられるので、走行風は車両の進行方向に沿って電動モータ20の前方側で吸気側通気孔126からカバー125内に導入され、モータケース71の側面を流通した後に電動モータ20の後方の排気側通気孔127から外部に排出されるので、電動モータ20のより効果的な冷却が可能となる。
【0062】
また電動モータ20よりも車両の進行方向前方側でカバー125の左カバー部125bには後方側に向かうにつれて凹み量を大とするようにして内方に凹んだ案内凹部130が設けられ、該案内凹部130の後端に連なるように吸気側通気孔126が配置されていることにより、走行風はカバー125の案内凹部130によって吸気側通気孔126に案内されることになり、カバー125の外表面に突出部を生じさせることなく走行風をカバー125内に効果的に導くことができ、したがってカバー125を全体として小型化しつつ走行風を電動モータ20側に効果的に導いて電動モータ20を効果的に冷却することができる。
【0063】
さらに電動モータ20は、車体フレームFの幅方向左側でモータケース71の少なくとも一部を伝動ケース50の側面から外部に露出させるようにして配置され、吸気側および排気側通気孔126,127が、車体フレームFの幅方向左側に臨むカバー125の側面に設けられるので、車体フレームFの幅方向左側でカバー125の側面を通過する空気を走行風として効果的にカバー125内に導き、その走行風によって電動モータ20をより一層効果的に冷却することができる。
【0064】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】スクータ型自動二輪車の側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】排気マフラーを図3の4矢視方向から見た背面図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【符号の説明】
【0066】
95・・・排気管
96・・・排気マフラー
98・・・第1ケース
99・・・第2ケース
99a・・・第2ケースの上部外周
103,104・・・ケース半体
109・・・第1膨張室
110・・・第2膨張室
125a・・・リヤフェンダ部
125c・・・マフラープロテクタ部
E・・・エンジン
WR・・・後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)からの排ガスを導く排気管(95)に通じる第1膨張室(109)を形成する第1ケース(98)と、第1膨張室(109)からの排ガスが導入される第2膨張室(110)を形成する第2ケース(99)とを備える自動二輪車用排気マフラーにおいて、第1ケース(98)が円筒状に構成され、椀状に形成されて相互に対向する一対のケース半体(103,104)の周縁部が結合されて第2ケース(99)が構成されることを特徴とする自動二輪車用排気マフラー。
【請求項2】
第1ケース(98)と、第1ケース(98)の上部に結合される第2ケース(99)とが、第2ケース(99)の上部外周(99a)を後輪の外周にほぼ対応して彎曲した円弧状に形成して前記後輪(WR)の側方に配置され、後輪(WR)を上方から覆うリヤフェンダ部(125a)に、前記第1および第2ケース(98,99)を上方から覆うマフラープロテクタ部(125c)が一体に連設されることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車用排気マフラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−144611(P2006−144611A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334064(P2004−334064)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】