説明

自動二輪車

【課題】本発明は、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置を設けることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】自動二輪車10には、車体フレーム11と、この車体フレーム11に設けられている乗員シート34と、この乗員シート34の下方に配置されバッテリ52が収納されているバッテリボックス51と、このバッテリボックス51の上方で、乗員シート34の下方で、且つ、車体フレーム11の構成要素としてのシートレール14の下方に配置され車両の位置情報を測定するとともにこの位置情報を無線送信する盗難対策装置63と、が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難対策装置が備えられている自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難対策装置として、車両に盗難検出センサと警報装置とを設け、車両が盗まれたときに、警報装置により警報音を発生するものがある。あるいは、盗難検出センサをエンジン制御部に接続し、エンジンを始動不能にするものがある。その他、上記要素に加えて、車両に全地球測位システム(GPS)と携帯電話通信部を設け、GPSで盗まれた車両の位置を探知し、携帯電話通信部で車両の位置情報を携帯電話などに送信するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1(図1、図4)参照。)。
【0003】
特許文献1の図1において、自動二輪車に、車体フレーム1(符号は、同公報のものを流用する。以下同じ。)が設けられ、この車体フレーム1の後部に、物入れボックス5が取り付けられている。
【0004】
特許文献1の図4において、物入れボックス5の内側に、盗難対策装置20が配置され、この盗難対策装置20を避けるように、物入れボックス5に、2つのヘルメットH1、H2が収納されている。
【0005】
しかし、上記物入れボックス5内に盗難対策装置20が設けられているので、物入れボックス5内の収納容量が小さくなる。
同様に、物入れボックスを備えていない自動二輪車においても、盗難対策装置を設けると、物品を配置するスペースが減少し、物品の配置の自由度に影響がでる場合がある。
物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置を設けることができる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−362448公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置を設けることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、前輪を操向自在に支持するとともに、後輪を揺動自在に支持する車体フレームと、この車体フレームの前部に設けられている燃料タンクと、この燃料タンクの後方で車体フレームに設けられている乗員シートと、この乗員シートの下方に設けられているバッテリと、車両の位置情報を測定するとともにこの位置情報を無線送信する盗難対策装置と、が備えられている自動二輪車において、盗難対策装置は、バッテリの上方で、乗員シートおよび車体フレームの下方に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、バッテリは、車幅方向中心に対し一方の側に配置されるとともに、盗難対策装置は、車両を上方から見たときに、車体フレームから一部が露出するように配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、盗難対策装置は、端子部が、車両前方または後方に向くように配置され、この端子部からサブハーネスが車体長手方向に延ばされ、このサブハーネスの先端が、車体長手方向に延ばされているメインハーネスに合流されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、バッテリは、バッテリボックスに収納され、このバッテリボックスは、樹脂によって形成され、このバッテリボックスに盗難対策装置を支える支持部が一体的に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、車幅方向中心に対して一方の側に前記バッテリが配置され、他方の側にエアクリーナケースが配置され、このエアクリーナケースは、車両を側方から見たときに、バッテリおよび盗難対策装置と重なるように配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明では、盗難対策装置は、位置情報を検出するGPSと、検出された前記位置情報を送信する携帯電話通信部と、盗難時に車体に加えられた振動を検出する加速度センサと、これらのGPS、携帯電話通信部及び加速度センサを統合制御する制御部と、これらのGPSおよび携帯電話通信部に電力を供給する内部電源とを1つのハウジング内に備えることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明では、盗難対策装置は、盗難を検知した場合に、エンジンの始動を停止するエンジン停止機能と、灯火器を作動させて警報を発する警報機能とを有し、盗難対策装置を車体に備える電装系統に接続することにより、エンジン停止機能および警報機能が作動可能であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明では、ハウジングは、ボックス状に形成され、ボックスの最も大きな面が水平又は水平に近い状態で配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、盗難対策装置は、バッテリと乗員シートの間に配置されている。
本発明では、デッドスペースとして扱われることが多かったバッテリと乗員シートの間に盗難対策装置を配置したので、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置を設けることができる。
【0017】
加えて、バッテリに盗難対策装置を近づけて配置することができるので、バッテリから盗難対策装置へ給電するケーブルの長さを短くすることができ、電気的損失を低減させることが可能になる。
【0018】
さらに、バッテリと盗難対策装置を、車体フレームの下方に集中配置したので、車両マスの集中化を図ることができ、運動性能を向上できる。
【0019】
請求項2に係る発明では、盗難対策装置は、車両を上方から見たときに、車体フレームから一部が露出するように配置されている。
本発明では、盗難対策装置は、車体フレームから一部が露出するように配置されているので、盗難対策装置の送受信感度を良好に保つことができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、盗難対策装置の車体長手方向に、サブハーネスが接続される端子部を備え、この端子部からサブハーネスが車体長手方向に延ばされ、このサブハーネスの先端が、車体長手方向に延ばされているメインハーネスに合流されている。
【0021】
端子部の向き、サブハーネスの向きおよびメインハーネスの向きは、いずれも、車体長手方向に沿う向きであるので、サブハーネスの屈曲を抑えることができる。サブハーネスの屈曲が抑えられれば、サブハーネスの長さを短縮することができる。サブハーネスの長さが短縮されれば、車両におけるサブハーネスの占有スペースを減らし、軽量化を図ることが可能になる。
【0022】
請求項4に係る発明では、盗難対策装置の支持部は、樹脂製のバッテリボックスに一体的に形成されている。
【0023】
本発明では、バッテリボックスで盗難対策装置を支持させるようにしたので、別個にステーを設ける必要がなく、部品点数の増加を抑えることができる。加えて、バッテリボックスは、樹脂により形成したので、容易に形成することができ、併せて、支持部の軽量化を容易に図ることができる。
【0024】
請求項5に係る発明では、車幅方向中心に対して一方の側にバッテリが配置され、他方の側にエアクリーナケースが配置され、このエアクリーナケースは、車両を側方から見たときに、バッテリおよび盗難対策装置と重なるように配置されている。かかる配置であれば、バッテリの上方のデッドスペースを有効に利用して盗難対策装置を配置することができる。バッテリの上方のデッドスペースを有効に活用することにより、車両の大型化を回避しつつ盗難対策を図ることができる。
【0025】
請求項6に係る発明では、盗難対策装置が、位置情報を検出するGPSと、検出された位置情報を送信する携帯電話通信部と、盗難時に車体に加えられた振動を検出する加速度センサと、これらのGPS、携帯電話通信部および加速度センサを統合制御する制御部と、これらのGPSおよび携帯電話通信部に電力を供給する内部電源とを1つのハウジング内に備える。盗難対策装置のシステムが1つのハウジング内に収納されているため、車両への組付性を向上させることができる。この場合に、ハウジングが大型化しても、上記のような盗難対策装置配置構造を採用することで、車両全体の大型化を回避することができる。
【0026】
請求項7に係る発明では、盗難対策装置が、盗難を検知した場合に、エンジンの始動を停止するエンジン停止機能と、灯火器を作動させて警報を発する警報機能とを有し、盗難対策装置を車体に備える電装系統に接続することにより、エンジン停止機能および警報機能を作動可能とした。車体に備える電装系統に盗難対策装置を接続することにより、エンジン停止機能と警報機能とを作動させることができるため、新たな機能部品を配置したり、配線を増やしたりする必要がない。
【0027】
また、上記したように盗難対策装置を配置することにより、車両の基本配線への盗難対策装置の接続が、短い専用配線で済むため、車両の軽量化およびコンパクト化を図ることができる。
【0028】
請求項8に係る発明では、ハウジングが、ボックス状に形成され、ボックスの最も大きな面が水平又は水平に近い状態で配置されているので、盗難対策装置内の機能部品の配置を最適化した上で、GPSおよび携帯電話通信部のアンテナの面積を確保することができ、送受信を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明に係る自動二輪車の要部左側面図である。
【図3】本発明に係る盗難対策装置の取付構造を説明する分解斜視図である。
【図4】本発明に係る盗難対策装置およびその関連部品を示す説明図である。
【図5】本発明に係る盗難対策装置のブロック図である。
【図6】本発明に係る自動二輪車の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中および実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1において、自動二輪車10は、車体フレーム11がヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延びているメインフレーム13と、このメインフレーム13の後部上部から後方に延びているシートレール14と、ヘッドパイプ12から斜め下後方に延びているフロントフレーム15と、このフロントフレーム15の後方に設けられメインフレーム13の後部から略下方に延びているダウンフレーム16と、このダウンフレーム16の下部とシートレール14の間に掛け渡したサブフレーム17と、から構成され、フロントフレーム15とダウンフレーム16とにエンジン18が取り付けられている車両である。
【0032】
ヘッドパイプ12から斜め前下方に、フロントフォーク21が延びており、このフロントフォーク21の下端部に前輪22が取り付けられ、フロントフォーク21の上端部に前輪22を操向する操向ハンドル23が取り付けられている。
【0033】
ダウンフレーム16に、車幅方向にピボット軸25が設けられ、このピボット軸25から後方にスイングアーム26が揺動自在に延びており、このスイングアーム26の後端部に、後輪27が取り付けられ、このスイングアーム26の後部からシートレール14に向けクッションユニット28が延びており、クッションユニット28の上端部は、シートレール14に設けられているクロス部材31に取り付けられている。つまり、車体フレーム11は、エンジン18を取り付け、前輪22を操向自在に支持するとともに、後輪27を揺動自在に支持する部材である。ダウンフレーム16の下端部に、メインスタンド32が取り付けられている。
【0034】
メインフレーム13の前部には、燃料タンク33が跨るように取り付けられ、この燃料タンク33の後方で車体フレーム11に設けられているシートレール14に、乗員が着座する乗員シート34が取り付けられている。乗員シート34は、2人乗り可能なタンデムシートである。
【0035】
エンジン18の前部は、エンジンハンガ35を介してフロントフレーム15に取り付けられている。エンジン18の後部に、エンジン18へ混合気を供給するスロットル弁36が連結され、このスロットル弁36の後部に、エレメントを収納したエアクリーナケース37が連結されている。
エンジン18に、出力軸41が設けられ、この出力軸41と後輪27の間に駆動力伝達用のチェーン42が設けられ、このチェーン42によってエンジン18の駆動力が後輪27に伝達される。
【0036】
フロントフォーク21にフロントフェンダ44が設けられ、ヘッドパイプ12の前部にフロントカウル45が取り付けられ、このフロントカウル45にヘッドライト46が取り付けられている。
【0037】
また、ダウンフレーム16とシートレール14とサブフレーム17とで囲まれる領域に、バッテリボックス51が配置され、このバッテリボックス51にバッテリ52が収納され、バッテリボックス51の側方に、車体の側方を覆うサイドカバー53が設けられている。ダウンフレーム16は、車体フレーム11の略中央部から下方に延びている部材である。
【0038】
シートレール14の後部に、乗員が把持可能なグラブレール56が取り付けられ、乗員シート34を止めるシートステー57が取り付けられるとともに、リヤフェンダ58が取り付けられており、シートレール14の側方に、車体の後部を覆うリヤカウル61が設けられている。
【0039】
次に、バッテリボックスおよびその周辺部の構成について説明する。
図2において、乗員シート34の下方に、バッテリ52を収納するバッテリボックス51が設けられている。バッテリボックス51は、シートレール14の下方に配置されている。
【0040】
バッテリボックス51には、バッテリ52の周囲を囲い支持するとともに収納する囲い部64と、この囲い部64の周囲に設けたフランジ部65と、このフランジ部65に設け車体フレーム11の側に複数の締結部材66によって取り付けられる複数の取付部67と、囲い部の上面69に上方に突設され盗難対策装置63を支持する複数の支持部71と、囲い部64に掛け渡され囲い部64に収納されるバッテリ52を囲い部64に保持するバッテリバンド72と、が設けられている。囲い部の上面69に、盗難対策装置63が取り付けられている。バッテリボックス51は、囲い部の上面69が水平になるように設けられている。
【0041】
盗難対策装置63は、ダウンフレーム16とシートレール14とサブフレーム17とから構成された三角領域内に配置され、車幅方向外方側はサイドカバー(図1、符号53)で覆われている。したがって、盗難対策装置63が外観上露出することはなく、盗難抑止効果を高めるとともに、盗難対策装置63の保護を部品点数を増加させることなく行うことができる。
盗難対策装置の端子部73に、後述するコネクタが接続される。このコネクタは、コネクタ保持ブーツカバー75で覆われている。
【0042】
すなわち、自動二輪車10において、乗員シート34の下方にバッテリ52が設けられ、このバッテリ52の上方で、乗員シート34の下方で、且つ、車体フレーム11の構成部材としてのシートレール14の下方に、盗難対策装置63が配置されている。盗難対策装置63は、車両の位置情報を測定するとともにこの位置情報を無線送信するものである。盗難対策装置63の詳細については後述する。
【0043】
エアクリーナケース37は、乗員シート34の下方に設けられており、車両を側方から見たときに、バッテリ52および盗難対策装置63と重なるように配置されている。つまり、車両を左側から見たときに、バッテリボックス51および盗難対策装置63の裏側に、バッテリボックス51と重なるようにエアクリーナケース37が配置されている。
【0044】
次に盗難対策装置の取付構造について説明する。
図3において、バッテリボックス51は、前述したように、囲い部64と、この囲い部64の周囲に設けたフランジ部65と、このフランジ部65に設け車体フレーム11の側に取り付けられる複数の取付部67と、囲い部の上面69に上方に突設され盗難対策装置63を支持する支持部71と、が備えられている。支持部71は、囲い部の上面69の左右端部に設けられている第1突設部133および第2突設部134と、上面69の前端部に設けられている第3突設部135と、からなる。
【0045】
バッテリボックス51は、樹脂によって形成され、このバッテリボックス51に盗難対策装置63を支える支持部71が一体的に形成されている。そして、支持部71に、盗難対策装置63が取付可能になっている。
【0046】
かかる構成であれば、盗難対策装置の支持部71を、例えば、ステーなどの別部材で形成する必要がないので、部品点数の増加を抑えることができる。加えて、バッテリボックス51は、樹脂により形成したので、容易に形成することができ、併せて、支持部71の軽量化を容易に図ることができる。
【0047】
盗難対策装置のハウジング111は、その周囲が弾性部材112によって縦横に囲われ、この弾性部材112に3つの凸部113が設けられ、これらの凸部113に、支持部71が係合可能な位置に係合穴114が設けられている。係合穴114は、第1突設部133と係合する第1係合穴136と、第2突設部134と係合する第2係合穴(図4、符号137)と、第3突設部135と係合する第3係合穴138と、からなる。
【0048】
そして、ハウジング111に弾性部材112を取り付け、この弾性部材112に設けた第1〜第3係合穴136、137、138を第1〜第3突設部133、134、135に各々差し込むことで、盗難対策装置63をバッテリボックス51に取り付けるようにした。
次図にて、盗難対策装置のハウジング111および弾性部材112の詳細について説明する。
【0049】
図4(a)において、盗難対策装置63の平面図が示されており、図4(b)において、図4(a)の4(b)矢視図が示されている。
ハウジング111は、上面121と下面122と前面123と後面124と左面125と右面126とからなる直方体のケース体であり、後面124に、コネクタ127、128が接続される端子部73、74が設けられている。
【0050】
弾性部材112は、ハウジング111の左面125と上面121と右面126と下面122とを囲う第1保持部131と、第1保持部131から前方に延設されハウジング111の上面121と前面123と下面122とを囲う第2保持部132と、からなる部材であり、左面125に沿って第1保持部131に、第1係合穴136を有する第1凸部146が設けられ、右面126に沿って第1保持部131に、第2係合穴137を有する第2凸部147が設けられ、前面123に沿って第2保持部132に、第3係合穴138を有する第3凸部148が設けられている。これらの第1係合穴136、第2係合穴137、第3係合穴138は、各々、支持部(図3、71)に係合される。
【0051】
かかる第1係合穴136、第2係合穴137および第3係合穴138を備えた弾性部材112にハウジング111が拘束されているので、この弾性部材112により車両の振動が吸収され、盗難対策装置63に車両の振動を伝達され難くすることができる。加えて、ハウジング111を支持部71に確実に固定することができる
図4(c)において、図4(b)の4(c)−4(c)線断面図が示されており、盗難対策装置63の後面に、コネクタ127、128が接続される端子部73、74が備えられている。
【0052】
次に、盗難対策装置の構成について説明する。
図5において、盗難対策装置63は、位置情報を検出する全地球測位システム151(GPS151)と、盗難時に車体に加えられた振動を検出する加速度センサ153と、これらの全地球測位システム151からの位置情報JP、加速度センサ153からの加速度信号SAを統合制御する制御部154と、この制御部154交信指令SCに基づいて携帯電話基地局156へ位置情報JPを送信する携帯電話通信部152と、制御部154からのエンジン制御信号SECに基づきエンジン(図1、符号18)の点火装置167に点火停止信号SSSを送って点火装置167の作動を停止させる、即ち、エンジン18を停止させるエンジン制御部157と、制御部154からの警報制御信号SACに基づき警報装置63(ヘッドランプ、ウインカ、テールランプなどの灯火器、ホーン)に警報信号SAを送って灯火器、ホーンを作動させる警報装置168と、GPS151、制御部154、携帯電話通信部152、エンジン制御部157および警報発生部158へ電力を供給する内部電源155とからなり、これらの全地球測位システム151および携帯電話通信部152に電力を供給する内部電源155とを1つのハウジング111内に備える。GPS151、制御部154、携帯電話通信部156、エンジン制御部157および警報発生部158へは、車体側のバッテリ(図1、符号52)からも電力供給が可能である。
【0053】
1つのハウジング111内に盗難対策装置63のシステムが収納されているため、車両への組付性を向上させることができる。この場合に、ハウジング111が大型化しても、上記のような盗難対策装置配置構造を採用することで、車両全体の大型化を回避することができる。
【0054】
すなわち、盗難対策装置63は、盗難を検知した場合に、エンジン18の始動を停止するエンジン停止機能と、灯火器としてのヘッドライト46を作動させて警報を発する警報機能とを有し、盗難対策装置63を車体に備える電装系統に接続することにより、エンジン停止機能および警報機能が作動可能である。
【0055】
上記構成によれば、例えば、ヘッドライト46やエンジン制御部154など車体に備える電装系統に盗難対策装置63を接続することにより、エンジン停止機能と警報機能とを作動させることができるため、新たな機能部品を配置したり、配線を増やしたりする必要がなく既存の部品を盗難対策装置63の一部として有効に活用することができる。
【0056】
図2および図6において、車幅方向中心Cに対して一方の側としての左側にバッテリ52が配置され、他方の側としての右側にエアクリーナケース37が配置され、このエアクリーナケース37は、車両を側方から見たときに、バッテリ52および盗難対策装置63と重なるように配置されている。
上記配置であれば、バッテリ52の上方のデッドスペースを有効に利用して盗難対策装置63を配置することができ、車両の大型化を回避しつつ盗難対策を図ることができる。
なお、車幅方向中心に対し、左側にエアクリーナケースを配置し、右側に、バッテリおよび盗難対策装置を配置することは差し支えない。
【0057】
バッテリ52は、車幅方向中心Cに対し左側に配置されるとともに、盗難対策装置63は、車両を上方から見たときに、車体フレーム11から一部が露出するように配置されている。盗難対策装置63は、車体フレーム11から一部が露出するように配置されているので、盗難対策装置63の送受信感度を良好に保つことができる。
【0058】
盗難対策装置63は、端子部73、74が、車両後方に向くように配置され、これらの端子部73、74からサブハーネス161、161が車体長手方向に延ばされ、このサブハーネスの先端161a、161aが、車体長手方向に延ばされているメインハーネス162に合流されている。なお、端子部73、74が、車両前方に向くように配置することは差し支えない。
【0059】
盗難対策装置63の車体長手方向に、端子部73、74を備え、これらの端子部73、74からサブハーネス161、161が車体長手方向に延ばされ、これらのサブハーネスの先端161a、161aが、車体長手方向に延ばされているメインハーネス162に合流されているので、端子部73、74の向き、サブハーネス161、161の向きおよびメインハーネス162の向きを一致させることが可能になる。そうすると、サブハーネス161、161の屈曲を抑えることができる。サブハーネス161、161の屈曲が抑えられれば、サブハーネス161、161の長さを短縮することができる。サブハーネス161、161の長さが短縮されれば、車両におけるサブハーネス161、161の占有スペースを減らし、軽量化を図ることが可能になる。
【0060】
加えて、端子部73、74は、車両後方側に設けたハウジングの後面124に配置されているので、車両走行中に、前方から飛来する雨水などにより受け得るコネクタ127、128への影響を最小限に抑えることができる。なお、エンジン18が端子部73、74の前方に配置される場合には、ハーネスへの熱影響を低減させることができる。
【0061】
以上に述べた自動二輪車の作用を次に述べる。
図2において、盗難対策装置63は、バッテリ52の上方で、且つ、乗員シート34の下方に配置されているので、盗難対策装置63とバッテリ52とを近接配置することができる。盗難対策装置63とバッテリ52とを近接配置したので、盗難対策装置63とバッテリ52とを接続するケーブル(ハーネス)の長さを短くすることができる。ハーネスの長さを短くできれば、電気的損失を低減させることが可能になる。
【0062】
また、上述したように盗難対策装置63を配置することにより、車両の基本配線への盗難対策装置63の接続が、短い専用配線で済むため、車両の軽量化およびコンパクト化を図ることができる。
【0063】
加えて、盗難対策装置63は、バッテリ52の上方で、且つ、車体フレーム11の下部に配置されている。比較的重量の大きなバッテリ52および盗難対策装置63は、車体フレーム11としてのシートレール14の下部に集中配置されているので、車両マスの集中化を図ることができる。
【0064】
さらに、盗難対策装置63は、バッテリ52と乗員シート34の間に配置されている。バッテリ52と乗員シート34の間は、従来は、デッドスペースとして扱われることが多かった。
この点、本発明では、デッドスペースとして扱われることが多かったバッテリ52と乗員シート34の間に盗難対策装置63を配置したので、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置63を設けることができる。
【0065】
また、盗難対策装置63は、ケース体としてボックス状に形成したハウジング111で覆われており、ボックスの最も大きな面であるハウジングの上面121が略水平になるように配置されている。詳細には、車体フレーム11に、バッテリボックス51が取り付けられ、このバッテリボックス51に設けられ略水平に配置されている囲い部の上面69に、ハウジング111がその上面121が略水平になるように取り付けられている。
ハウジングの上面121が水平又は水平に近い状態で配置されているので、盗難対策装置63内の機能部品の配置を最適化した上で、全地球測位システム(GPS)および携帯電話通信部のアンテナの面積を確保することができ、送受信を良好にすることができる。
【0066】
図6において、全地球測位システム(図5、符号151)および携帯電話通信部(図5、符号152)を備える盗難対策装置63の上方は、車体フレーム11で覆われていない。つまり、盗難対策装置63の上方は、金属製部材ではなく、樹脂製の乗員シート34によって覆われている。前記構成によれば、全地球測位システム151(GPS151)による人工衛星からの軌道情報の受信および携帯電話通信部152による位置情報の送信を行う際に、全地球測位システム151および携帯電話通信部152の上方に金属製部材が存在しないため、電波が遮られない。このため、送受信感度が良好になり、盗難対策装置63の配置自由度が低い自動二輪車であっても盗難対策装置63を良好に作動させることができる。
【0067】
また、盗難対策装置63は、平面視にて、燃料タンク33と乗員シート34の境界部に配置され、その一部が、燃料タンク33、車体フレームとしてのシートレール14から露出するように配置されている。したがって、運転者(乗員)が乗車する乗員シート34位置の近傍に盗難対策装置63が配置されるため、金属製の荷物などが積載される可能性のある乗員シート34後方の下方に盗難対策装置63を配置する場合と比較して、送受信感度を良好に維持することができる。
【0068】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の鞍乗型車両に適用することは差し支えない。
請求項2では、盗難対策装置の端子部が、車両内方又は外方に向くように配置することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、盗難対策装置が備えられている自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0070】
10…自動二輪車、11…車体フレーム、18…エンジン、22…前輪、27…後輪、33…燃料タンク、34…乗員シート、37…エアクリーナケース、51…バッテリボックス、52…バッテリ、63…盗難対策装置、71…支持部、73…端子部、111…ハウジング、121…ボックスの最も大きな面(ハウジングの上面)、151…全地球測位システム(GPS)、152…携帯電話通信部、153…加速度センサ、154…制御部、155…内部電源、161…サブハーネス、161a…サブハーネスの先端、162…メインハーネス、C…車幅方向中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を操向自在に支持するとともに、後輪を揺動自在に支持する車体フレームと、この
車体フレームの前部に設けられている燃料タンクと、この燃料タンクの後方で前記車体フレームに設けられている乗員シートと、この乗員シートの下方に設けられているバッテリと、車両の位置情報を測定するとともにこの位置情報を無線送信する盗難対策装置と、が備えられている自動二輪車において、
前記盗難対策装置は、前記バッテリの上方で、前記乗員シートおよび前記車体フレームの下方に配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記バッテリは、車幅方向中心に対し一方の側に配置されるとともに、前記盗難対策装置は、車両を上方から見たときに、前記車体フレームから一部が露出するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記盗難対策装置は、端子部が、車両前方または後方に向くように配置され、この端子部からサブハーネスが車体長手方向に延ばされ、このサブハーネスの先端が、車体長手方向に延ばされているメインハーネスに合流されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記バッテリは、バッテリボックスに収納され、このバッテリボックスは、樹脂によって形成され、このバッテリボックスに前記盗難対策装置を支える支持部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の自動二輪車。
【請求項5】
車幅方向中心に対して一方の側に前記バッテリが配置され、他方の側にエアクリーナケースが配置され、このエアクリーナケースは、車両を側方から見たときに、前記バッテリおよび前記盗難対策装置と重なるように配置されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記盗難対策装置は、位置情報を検出するGPSと、検出された前記位置情報を送信する携帯電話通信部と、盗難時に車体に加えられた振動を検出する加速度センサと、これらのGPS、携帯電話通信部および加速度センサを統合制御する制御部と、これらのGPSおよび携帯電話通信部に電力を供給する内部電源とを1つのハウジング内に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記盗難対策装置は、盗難を検知した場合に、エンジンの始動を停止するエンジン停止機能と、灯火器を作動させて警報を発する警報機能とを有し、前記盗難対策装置を車体に備える電装系統に接続することにより、前記エンジン停止機能および前記警報機能が作動可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記ハウジングは、ボックス状に形成され、ボックスの最も大きな面が水平又は水平に近い状態で配置されていることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−20603(P2011−20603A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168502(P2009−168502)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】