説明

自動分析装置及びその検出方法

【課題】 試料容器に供給された試料を簡単な構成で精度よく検出できる自動分析装置及びその検出方法を提供する。
【解決手段】 校正試料を試料容器71に供給する校正試料ポンプ72と、試料容器71内に供給された校正試料をイオンセンサユニット81に吸引する吸引ポンプ82と、試料容器71内に供給された校正試料が供給量V1以上である時に、校正試料と接触する一対の電極76a,76bと、試料容器71内に供給された校正試料を電極76a,76b間に直流電圧を印加して検出する検出器75と、検出器75と電極76a,76bを接続する切換器77とを備え、切換器77は、校正試料ポンプ74により試料容器71内に校正試料が供給される毎に、電極76a,76b間に印加する直流電圧の極性を交互に切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に含まれている成分を分析する自動分析装置及びその検出方法に関わり、特にヒトの血液や尿などに含まれる成分を自動的に分析する自動分析装置及びその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目などを対象とし、ほとんどの項目は反応容器に分注した被検試料と分析を行う各項目に該当する試薬との混合液の反応によって生ずる色調などの変化を、光の透過量を測定することにより、被検試料中の様々な被測定物質の濃度や酵素の活性を測定する。
【0003】
一方、生化学検査項目の内のナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオンなどの電解質の項目では、反応容器又は試料容器への分注により供給される被検試料とこの被検試料を希釈する試薬との混合液や、試料容器に供給されるその混合液の基準となる正常値範囲の電解質濃度に設定された校正試料をイオン選択性電極を用いて起電力を測定することにより、被検試料中の電解質濃度を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような電解質項目の測定では、試料容器に供給された校正試料や混合液が測定可能な量よりも少ないと、イオン選択性電極内に吸引しても前の被検試料測定用の校正試料又は混合液が残り、残った校正試料又は混合液を測定してしまうことがある。前に残った被検試料及びその後に測定される被検試料が健常者のものであると、健常者の被検試料に含まれる電解質濃度の範囲は他の項目に比べて狭いので、前の被検試料の測定結果とは気付かずに診断してしまう恐れがある。
【0005】
この問題を回避するために、試料容器には校正試料や混合液を検出するための検出部が設けられている。検出部は、直流電源に接続された一対の電極と、この電極を用いて電解質など含まれる試料を検出する検出器とからなり、電極が試料と接触したときに電極間に流れる電流を検出することで試料を検出する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−251799号公報
【特許文献2】特開昭57−37266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電極間に直流電圧を印加して校正試料などを検出する場合、電極間の一方向に電流が流れるので、電極表面に電極反応に基づいた様々な析出物が付着し蓄積して電極間の抵抗を増大させる恐れがあるため定期的なメンテナンスを必要としていた。
【0007】
また、電極間に交流電圧を印加すると電極表面への析出物の蓄積は低減できるものの、新たに交流電圧発生用及び検出用の回路を設ける必要があり、検出部の回路が大型化し、また回路が複雑になってしまう問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、試料容器に供給された試料を簡単な構成で精度よく検出できる自動分析装置及びその検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る本発明の自動分析装置は、サンプルと試薬とを容器に供給してその混合液を測定する自動分析装置において、前記サンプル又は前記試薬又は前記混合液を測定するために用いる試料の少なくともいずれかを前記容器に供給する供給手段と、前記供給手段により前記容器内に供給された前記サンプルと前記試薬の混合液又は前記試料を吸引する吸引手段と、前記供給手段により前記容器内に供給された前記混合液又は前記試料が所定量以上である時に、前記混合液又は前記試料と接触する一対の電極と、前記供給手段により前記容器内に供給された前記混合液又は前記試料を、前記電極間に直流電圧を印加して検出する検出手段と、前記供給手段により前記容器内に前記サンプル又は前記試薬又は前記試料の少なくともいずれかが供給される毎に、前記電極間に印加する前記検出手段からの直流電圧の極性を交互に切換える切換え手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る本発明の自動分析装置の検出方法は、サンプルと試薬とを容器に供給してその混合液を測定する自動分析装置の検出方法において、前記サンプル又は前記試薬又は前記混合液を測定するために用いる試料の少なくともいずれかを前記容器に供給手段により供給し、前記供給手段により前記容器内に供給された前記サンプルと前記試薬の混合液又は前記試料を吸引手段により吸引し、前記供給手段により前記容器内に供給された前記混合液又は前記試料が所定量以上である時に、前記混合液又は前記試料と接触する一対の電極に直流電圧を印加して前記容器内の前記混合液又は前記試料を検出手段により検出し、前記供給手段により前記容器内に前記サンプル又は前記試薬又は前記試料が供給される毎に、前記電極間に印加する前記検出手段からの直流電圧の極性を切換え手段により交互に切換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試料容器に試料が供給される毎に、試料容器内の試料を検出するための一対の電極間に印加する直流電圧の極性を交互に切換えることにより、電極の表面を長期に亘って安定に保つことができる。これにより、試料容器内の試料を長期間に亘って精度よく検出、測定することができる。また、メンテナンスにかかる手間を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図5を参照して説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、様々な項目の標準試料や被検試料毎に選択された項目の測定を行う分析部18と、分析部18の測定動作の制御を行う分析制御部20と、標準試料や被検試料の測定により分析部18から出力される標準試料のデータや被検試料のデータを処理して検量線の作成や分析データの生成を行うデータ処理部30と、データ処理部30からの検量線や分析データを出力する出力部40と、各項目の標準試料や検量線などの分析条件の入力や、各種コマンド信号を入力する操作部50と、分析制御部20、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0014】
図2は、分析部18の斜視図である。この分析部18は、標準試料や被検試料に含まれる各項目の成分に対して選択的に反応する第1試薬やこの第1試薬と対の第2試薬が入った試薬ボトル7と、試薬ボトル7を収納する試薬ラック1と、第1試薬の入った試薬ボトル7を収納した試薬ラック1を収納する試薬庫2と、第2試薬の入った試薬ボトル7を収納した試薬ラック1を収納する試薬庫3と、円周上に複数の反応容器4を配置した反応ディスク5と、各項目の標準試料や被検試料などのサンプルを収容するサンプルカップ17をセットするディスクサンプラ6とを備えている。
【0015】
そして、1サイクル毎に、試薬庫2、試薬庫3、及びディスクサンプラ6は夫々回動し、反応ディスク5は回転して分析制御部20により制御された位置に停止する。
【0016】
また、分析部18は、1サイクル毎に、試薬庫2,3の図示しない第1及び第2試薬吸引位置の試薬ボトル7から第1及び第2試薬を吸引した後、図示しない第1及び第2試薬吐出位置に停止した反応容器4に吐出する第1及び第2試薬分注プローブ14,15と、ディスクサンプラ6の分析制御部20に制御された位置のサンプルカップ17からサンプルを吸引した後、図示しないサンプル吐出位置に停止した反応容器4に吐出する分注プローブ16とを備えている。
【0017】
そして第1試薬分注プローブ14、第2試薬分注プローブ15、及び分注プローブ16を回動及び上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、及び分注アーム10を備えている。
【0018】
更に、1サイクル毎に、図示しない撹拌位置に停止した反応容器4内におけるサンプルと第1試薬との混合液や、サンプルと第1試薬と第2試薬との混合液を撹拌する撹拌ユニット11と、サンプルと第1試薬との混合液を含む反応容器4を図示しない電解質試料吸引位置から吸引してナトリウムイオン、カリウムイオン、及び塩素イオンなどの電解質項目を測定する電解質測定ユニット19と、サンプルと第1試薬との混合液又はサンプルと第1試薬と第2試薬との混合液を含む反応容器4を図示しない測光位置から測定する測光ユニット13と、洗浄・乾燥位置に停止した反応容器4内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器4内を洗浄・乾燥する洗浄ユニット12とを備えている。
【0019】
電解質測定ユニット19は、電解質試料吸引位置に停止した反応容器4から電解質項目の標準試料や電解質項目の選択された被検試料を含む混合液を吸引し、この混合液を測定して標準試料データや被検試料データを生成した後、データ処理部30に出力する。
【0020】
測光ユニット13は、回転移動する反応容器4に測光位置から光を照射して、標準試料や被検試料を含む混合液を透過した光を吸光度に変換した標準試料データや被検試料データを生成した後、データ処理部30に出力する。
【0021】
その後、混合液の測定を終了して洗浄・乾燥された反応容器4は、再び測定に使用される。
【0022】
分析制御部20は、試薬庫2、試薬庫3、及びディスクサンプラ6の夫々回動、反応ディスク5の回転、分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、及び撹拌ユニット11の夫々回動及び上下移動、洗浄ユニット12の上下移動、撹拌ユニット11の撹拌駆動などを行う機構及び各機構の制御部を備えている。
【0023】
また、サンプル分注プローブ16からサンプルを吸引及び吐出させる分注ポンプ、第1及び第2試薬分注プローブ14,15から第1及び第2試薬を吸引及び吐出させる各試薬ポンプ、洗浄ユニット12から反応容器4内洗浄用の洗浄液を供給及び吸引させるための洗浄ポンプ及び反応容器4内を乾燥させるための乾燥ポンプなどの各種ポンプ及び各種ポンプの制御部を備えている。
【0024】
更に、電解質測定ユニット19の各ユニットを動作させる機構及び制御部を備えている。
【0025】
図1のデータ処理部30は、分析部18から出力された標準試料データや被検試料データから検量線の作成や分析データを生成する演算部31と、演算部31で作成及び生成された検量線及び分析データなどを保存する記憶部32とを備えている。
【0026】
演算部31は、分析部18の電解質測定ユニット19や測光ユニット13から出力された各項目の標準試料データから検量線の作成や、作成された検量線を用いて分析データの生成を行った後、作成した検量線や生成した分析データを記憶部32に保存すると共に出力部40に出力する。
【0027】
記憶部32は、ハードディスクなどを備え、演算部31から出力された検量線を項目毎に保存し、分析データを被検試料毎に保存する。
【0028】
出力部40は、データ処理部30から出力された検量線、分析データなどを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、データ処理部30から出力された検量線、分析データなどを予め設定されたフォーマットに基づいて、プリンタ用紙に印刷出力する。表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、各項目の標準試料や検量線などの分析条件を設定するための画面の表示や、データ処理部30から出力された検量線、分析データなどの表示を行う。
【0029】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各項目の標準試料や検量線などの分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検体の被検試料毎の測定する項目の選択、各項目の標準試料測定操作、被検試料測定操作などの様々な操作が行われる。
【0030】
システム制御部60は、図示しないCPUと記憶回路を備え、操作部50から供給される操作者のコマンド信号、各項目の標準試料や検量線などの分析条件、被検体情報、被検試料毎の測定項目などの情報を記憶した後、これらの情報に基づいて、分析部18を構成する各ユニットを一定サイクルの所定のシーケンスで測定動作させる制御、或いは検量線の作成、分析データの生成と出力に関する制御などシステム全体の制御を行なう。
【0031】
次に、図1乃至図4を参照して、電解質測定ユニット19の構成の詳細を説明する。図3は、電解質測定ユニット19の構成を示した図である。
【0032】
この電解質測定ユニット19は、電解質項目の標準試料や被検試料などのサンプルと電解質項目の試薬との混合液中及びこの混合液の基準として用いる校正試料中の各電解質に選択的に応答して各電解質の濃度に応じた起電力を発生するイオンセンサユニット81と、サンプル測定毎にイオンセンサユニット81に校正試料を供給する校正部70と、反応容器4内の混合液及び校正部70の校正試料をイオンセンサユニット81内に吸引すると共に排液タンク82aに排出する吸引ポンプ82と、イオンセンサユニット81の起電力を測定する信号処理部83とを備えている。
【0033】
イオンセンサユニット81は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び塩素イオンなどの各電解質項目に対して選択的に応答して電位を発生する各イオン選択性電極及び一定の電位を発生して各イオンセンサの基準となる参照電極とにより構成される流通型複合電極81aと、この流通型複合電極81aの流通口の入り口側に接続される吸引ノズル81bとを備えている。
【0034】
そして、流通型複合電極81aのナトリウムイオン選択性電極と参照電極の間、カリウムイオン選択性電極と参照電極の間、塩素イオン選択性電極と参照電極の間などの各電極の間には、混合液や校正試料中の各電解質項目の濃度に応じた起電力が発生する。
【0035】
校正部70は、校正試料を一時蓄える試料容器71と、試料容器71内に校正試料を供給する校正試料ポンプ72と、試料容器71内に供給された校正試料を検出する検出部73と、試料容器71から不用になった校正試料を吸引して外部に排出する排液ポンプ74とを備えている。校正試料ポンプ72、検出部73、及び排液ポンプ74は、分析制御部20により制御される。
【0036】
試料容器71は、吸引ポンプ82によりイオンセンサユニット81内に吸引される校正試料を一時蓄えるために設けられている。
【0037】
校正試料ポンプ72は、サンプル測定毎に校正試料ボトル72aから校正試料を吸引して吸引ポンプ82の吸引量よりも多い供給量V1以上の校正試料を試料容器71内に供給する。
【0038】
検出部73は、試料容器71に配置された一対の電極76a,76bと、電極76a,76b間に直流電圧を印加して試料容器71内の校正試料を検出する検出器75と、検出器75から電極76a,76b間に印加する直流電圧の極性を校正試料供給毎に交互に切換える切換器77とを備えている。
【0039】
排液ポンプ74は、吸引ポンプ82の吸引動作後に試料容器71内に残った不用な校正試料を供給量V1よりも多い排出量V2の吸引量で試料容器71内から吸引して外部に排出する。
【0040】
吸引ポンプ82は、分析制御部20により制御され、反応容器4内の混合液及び試料容器71内の校正試料をイオンセンサユニット81内に吸引すると共にイオンセンサユニット81内の校正試料や混合液を排液タンク82aに排出する。そして、試料容器71内に供給された校正試料が供給量V1よりも少ないと、イオンセンサユニット81内に空気が吸引されて精度よく起電力の測定ができなくなるのを避けるため、検出部73の検出信号に基づいて試料容器71内の供給量V1よりも少ない校正試料を吸引しないようになっている。
【0041】
信号処理部83は、イオンセンサユニット81内に吸引された混合液や校正試料の各電解質項目の起電力を測定し、その測定した起電力の信号を増幅した後に、デジタル信号に変換して標準試料データ、被検試料データ、校正試料データなどを生成する。そして、生成した各データをデータ処理部30の演算部31に出力する。
【0042】
図4は、検出部73の構成の詳細を示した図である。検出部73の電極76a,76bは、例えばステンレス鋼などの耐腐食性に優れた導電性材料からなり、校正試料ポンプ72により供給量V1以上の校正試料が試料容器71内に供給されたときに電極76a,76bの各先端部が校正試料と接触する高さに夫々離間して配置されている。
【0043】
検出器75は、電極76a,76b間に電圧Vcを印加するための直流電源DCと、この直流電源DCと接続されたトランジスタTRとを備えている。トランジスタTRのエミッタEの端子は、直流電源DCの端子に接続されている。トランジスタTRのベースBの端子は、切換器77に接続されている。トランジスタTRのコレクタCの端子は、抵抗Rを介してグランドGNDの端子に接続され、コレクタC端子の信号は、試料容器71内の校正試料を検出するための検出信号として分析制御部20に出力される。
【0044】
切換器77は、電極76a,76b間に印加する検出器75からの電圧Vcの極性を切換える信号を得るためのトランジスタTRのベースB端子に接続された三路スイッチSW1と、グランドGND端子に接続された三路スイッチSW2とを備え、各スイッチSW1,SW2は互いに連動して切換駆動し、分析制御部20により制御される。
【0045】
そして、試料容器71内に校正試料が供給される毎に、スイッチSW1を介して電極76a,76bの一方の電極をトランジスタTRのベースB端子に接続すると、スイッチSW2はスイッチSW1と連動して他方の電極をグランドGND端子と接続し、電極76a,76b間に印加する電圧Vcの極性を交互に切換える。また、校正試料の検出動作が終了すると、スイッチSW1,SW2は開状態に操作され、電極76a,76bを検出器75から電気的に遮断する。
【0046】
次に、検出部73及び分析制御部20の動作を説明する。校正試料ポンプ72がサンプルを測定するための校正試料供給動作をした時に、電極76aは切換器77のスイッチSW1により検出器75におけるトランジスタTRのベースB端子及びグランドGND端子の一方の端子に接続され、電極76bはスイッチSW2により他方の端子に接続される。そして、電極76a,76b間に電圧Vcが印加される。
【0047】
試料容器71内に供給された校正試料が供給量V1以上であると、電極76a,76bの先端部は校正試料と接触し、検出器75のトランジスタTRのコレクタ端子Cには、電極76a,76b間の距離、校正試料の電気伝導度、電極76a,76bの先端部の校正試料との接触面積などに応じた検出電圧V1以上の検出信号が発生する。
【0048】
また、試料容器71内の校正試料が供給量V1未満であると、電極76a,76bの先端部は校正試料と接触しないので、コレクタ端子Cには電極76a,76b間の導通しない極めて大きな抵抗に応じた検出電圧V1未満の検出信号が発生する。
【0049】
この検出信号は、分析制御部20に出力される。分析制御部20は、検出器75からの検出信号に基づいて、試料容器71内の校正試料が測定可能な量か否かを判定する。
【0050】
そして、このとき検出信号が検出電圧V1未満の電圧である場合、試料容器71内に測定可能である量の校正試料が入っていないと判定し、校正試料の供給に対応したサンプルの測定に対してエラー情報を生成して出力部40に出力する。
【0051】
また、検出信号が検出電圧V1以上である場合、試料容器71内に測定可能な量の校正試料が入っていると判定し、引き続き吸引ポンプ82によるイオンセンサユニット81内への校正試料の吸引動作が行われる。
【0052】
更に、校正試料吸引動作の後の検出器75からの検出信号に基づいて、試料容器71内の校正試料がイオンセンサユニット81内に吸引されたか否かを判定する。
【0053】
そして、検出信号が検出電圧V1以上である場合、校正試料がイオンセンサユニット81内に吸引されなかったと判定し、校正試料の吸引に対応したサンプルの測定に対してエラー情報を生成して出力部40に出力する。また、検出信号が検出電圧V1未満である場合、校正試料がイオンセンサユニット81内に吸引されたと判定する。
【0054】
分析制御部20が校正試料の供給及び吸引動作時における校正試料を検出する動作を終了した後、切換器77の互いに連動するスイッチSW1,SW2により電極76a,76bは検出器75から遮断される。遮断の後に行われる次のサンプル測定時の校正試料の検出時には、電極76aはスイッチSW1により検出器75の前記他方の端子に接続され、電極76bはスイッチSW1と連動するスイッチSW2により前記一方の端子に接続される。そして、分析制御部20は、前のサンプル測定時と同様に、検出器75からの検出信号に基づいて校正試料の供給及び吸引に関する判定を行う。
【0055】
このように、試料容器71に校正試料が供給される毎に、電極76a,76b間に印加する直流電圧の極性を交互に切換えることにより、電極76a,76bへの析出物の付着を低減することができる。
【0056】
以下、図1乃至図5を参照して、実施例に係る自動分析装置100の動作を説明する。図5は、自動分析装置100の動作の一例を示したフローチャートである。自動分析装置100には、予め電解質項目の標準試料測定操作による測定動作により作成された電解質項目の検量線がデータ処理部30の記憶部32に保存されている。
【0057】
操作部50からn個の被検試料A1乃至Anに対応する被検体ID、被検体名などの被検体情報を入力し、各被検試料A1乃至Anに対して例えば電解質項目だけを選択入力する。そして、各被検試料A1乃至Anを収容したサンプルカップ17をディスクサンプラ6にセットした後に、操作部50から被検試料測定操作が行われると、自動分析装置100は被検試料A1乃至Anの測定動作を開始する(ステップS1)。
【0058】
システム制御部60は、分析制御部20、データ処理部30、及び出力部40に指示をして、各被検試料A1乃至Anの電解質項目を、被検試料A1、被検試料A2、・・・、被検試料Anの順に測定するための動作をさせる。その指示に基づいて分析制御部20は、分析部18の各ユニットを制御して各被検試料A1乃至Anの電解質項目の測定動作をさせる。
【0059】
分析部18のサンプル分注プローブ16は、ディスクサンプラ6の各サンプルカップ17から各被検試料A1乃至Anを吸引して反応容器4に吐出する。第1試薬分注プローブ14は、試薬庫2の試薬ボトル7から電解質項目の第1試薬を吸引して、各被検試料A1乃至Anの入った各反応容器4に第1試薬を吐出する。攪拌ユニット11は、各反応容器4内の各被検試料A1乃至Anと第1試薬との混合液を攪拌する。
【0060】
電解質測定ユニット19の吸引ポンプ82は、電解質試料吸引位置に停止した反応容器4から被検試料Ai(i=1)の混合液をイオンセンサユニット81内に吸引する。信号処理部83は、イオンセンサユニット81の被検試料Aiの各電解質項目に応じた起電力を測定した後、被検試料Aiのデータを生成してデータ処理部30の演算部31に出力する(ステップS2)。
【0061】
校正部70の校正試料ポンプ72は、校正試料ボトル72aから被検試料Aiの校正試料を吸引して試料容器71に供給する動作をする(ステップS3)。この供給動作の時に、電極76a,76b間に検出部73の検出器75からの電圧Vcが印加される。
【0062】
そして、被検試料Aiのiが奇数である場合(ステップS4のはい)、電極76aは検出器75の一方の端子に接続され、電極76bはスイッチSW2により他方の端子に接続されて電極76a,76b間に電圧Vcが印加される(ステップS5)。
【0063】
また、被検試料Aiのiが偶数である場合(ステップS4のいいえ)、電極76aはスイッチSW1により検出器75の前記他方の端子に接続され、電極76bはスイッチSW2により前記一方の端子に接続されて電極76a,76b間に電圧Vcが印加される(ステップS6)。
【0064】
電極76a,76b間に電圧Vcが印加された後に、検出器75からの検出信号が検出電圧V1以上である場合(ステップS7のはい)、分析制御部20は、試料容器71内に測定可能量の被検試料Aiの校正試料が供給されたと判定し、ステップS8に移行する。
【0065】
また、検出信号が検出電圧V1未満である場合(ステップS7のいいえ)、分析制御部20は試料容器71内に測定可能量の被検試料A1の校正試料が供給されなかったと判定し、ステップS10に移行する。
【0066】
イオンセンサユニット81は、イオンセンサユニット移動機構により図3のL1方向に水平移動し、ステップS7のはいの後に校正試料吸引位置まで下降する。吸引ポンプ82は、試料容器71からイオンセンサユニット81内に被検試料Aiの校正試料を吸引する動作をする。
【0067】
この吸引動作の後に、検出器75からの検出信号が検出電圧V1未満である場合(ステップS8のはい)、分析制御部20は、イオンセンサユニット81内に被検試料Aiの校正試料が吸引されたと判定し、ステップS9に移行する。
【0068】
また、検出信号が検出電圧V1以上である場合(ステップS8のいいえ)、イオンセンサユニット81内に被検試料Aiの校正試料が吸引されなかったと判定し、ステップS10に移行する。
【0069】
ステップS8のはいの後に、電極76a,76bは、切換器77のスイッチSW1,SW2により検出器75から遮断される(ステップS9)。
【0070】
ステップS7又はS8のいいえの後に、電極76a,76bは、切換器77のスイッチSW1,SW2により検出器75から遮断される(ステップS10)。
【0071】
ステップS9の後にイオンセンサユニット81は被検試料Aiの校正試料の各電解質項目の濃度に応じた起電力を発生し、信号処理部83は被検試料Aiの校正試料の起電力を測定して被検試料Aiの校正試料データを生成した後、演算部31に出力する。演算部31は、信号処理部83から出力された被検試料Aiのデータから校正試料データを差し引いた値を求める。次いで、記憶部32から電解質項目の検量線を読み出して、その検量線を用いて求めた値から被検試料A1の電解質項目の分析データを生成した後、記憶部32に保存すると共に出力部40に出力する(ステップS11)。
【0072】
ステップS10の後に、分析制御部20は、例えば「被検試料Aiの校正試料を測定できません」などの被検試料Aiのエラー情報を生成した後、記憶部32に保存すると共に出力部40に出力する(ステップS12)。
【0073】
そして、被検試料Aiのiがnよりも小さい場合(ステップS13のいいえ)、ステップS2に戻る。
【0074】
また、被検試料Aiのiがnである場合(ステップS13のはい)、出力部40にデータ処理部30からの被検試料Anの分析データが出力された時点で、システム制御部60が分析制御部20、分析データ処理部30、及び出力部40に動作停止の指示をすることにより、被検試料A1乃至Anの電解質項目を分析するための被検試料分析動作が終了する(ステップS14)。
【0075】
以上述べた本発明の実施例によれば、校正試料が試料容器に供給される毎に、試料容器内の校正試料を検出するための一対の電極に印加する直流電圧の極性を交互に切換える切換器を設けることにより、簡単な構成で電極76a,76bへの析出物の付着を低減することが可能となり、電極の表面を長期に亘って安定に保つことができる。これにより、試料容器内の試料を長期間に亘って精度よく検出できるので、精度よく測定することができる。また、メンテナンスにかかる手間を低減することができる。
【0076】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えばサンプル分注プローブ及び第1試薬分注プローブにより吐出可能な位置に校正試料が供給される試料容器を配置し、サンプル分注プローブ及び第1試薬分注プローブから吐出されたサンプルと第1試薬との混合液を検出部により検出し、混合液の量が所定量以上であればイオンセンサユニット内に吸引して測定するように実施してもよい。
【0077】
また、この場合、試料容器と排液ポンプの間にイオンセンサユニットを設けて吸引ポンプ及びイオンセンサユニット移動機構を除くことにより、電解質測定ユニットを簡単な構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例による自動分析装置の構成を示す図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す図。
【図3】本発明の実施例に係る電解質測定ユニットの構成の詳細を示す図。
【図4】本発明の実施例に係る検出部の校正の詳細を示す図。
【図5】本発明の実施例に係る自動分析装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0079】
4 反応容器
18 分析部
19 電解質測定ユニット
20 分析制御部
30 データ処理部
31 演算部
32 記憶部
70 校正部
71 試料容器
72 校正試料ポンプ
72a 校正試料ボトル
73 検出部
74 排液ポンプ
75 検出器
76a,76b 電極
77 切換器
81 イオンセンサユニット
81a 流通型複合電極
81b 吸引ノズル
82 吸引ポンプ
82a 排液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルと試薬とを容器に供給してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記サンプル又は前記試薬又は前記混合液を測定するために用いる試料の少なくともいずれかを前記容器に供給する供給手段と、
前記供給手段により前記容器内に供給された前記サンプルと前記試薬の混合液又は前記試料を吸引する吸引手段と、
前記供給手段により前記容器内に供給された前記混合液又は前記試料が所定量以上である時に、前記混合液又は前記試料と接触する一対の電極と、
前記供給手段により前記容器内に供給された前記混合液又は前記試料を、前記電極間に直流電圧を印加して検出する検出手段と、
前記供給手段により前記容器内に前記サンプル又は前記試薬又は前記試料の少なくともいずれかが供給される毎に、前記電極間に印加する前記検出手段からの直流電圧の極性を交互に切換える切換え手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記切換え手段は、前記検出手段による前記容器内の前記混合液又は前記試料の検出をした後に、前記電極間に印加する前記検出手段からの直流電圧を遮断するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記切換え手段は、前記供給手段により前記容器内に前記混合液又は前記試料が供給された時に、前記電極間に前記直流電圧を印加するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記試料は、イオン選択性電極を用いて前記サンプル中の電解質を測定するための基準となる校正試料であることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
サンプルと試薬とを容器に供給してその混合液を測定する自動分析装置の検出方法において、
前記サンプル又は前記試薬又は前記混合液を測定するために用いる試料の少なくともいずれかを前記容器に供給手段により供給し、
前記供給手段により前記容器内に供給された前記サンプルと前記試薬の混合液又は前記試料を吸引手段により吸引し、
前記供給手段により前記容器内に供給された前記混合液又は前記試料が所定量以上である時に、前記混合液又は前記試料と接触する一対の電極に直流電圧を印加して前記容器内の前記混合液又は前記試料を検出手段により検出し、
前記供給手段により前記容器内に前記サンプル又は前記試薬又は前記試料が供給される毎に、前記電極間に印加する前記検出手段からの直流電圧の極性を切換え手段により交互に切換えることを特徴とする自動分析装置の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−170925(P2007−170925A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367145(P2005−367145)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】