自動制動装置
【課題】車両の走行状態や運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性に合わせてタイミングよくブレーキを自動作動させることのできる自動制動装置を実現する。
【解決手段】自動制動装置に、自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離Lが前記操舵回避距離より短くなるとブレーキ15を自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段5と、を備え、走行状態検出手段5の検出結果に基づいて、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になると判断される場合には、自動ブレーキ作動手段によるブレーキ15の自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【解決手段】自動制動装置に、自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離Lが前記操舵回避距離より短くなるとブレーキ15を自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段5と、を備え、走行状態検出手段5の検出結果に基づいて、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になると判断される場合には、自動ブレーキ作動手段によるブレーキ15の自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキを自動作動させる自動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、自車両の走行する道路の状況(ガードレールや対向車両等)を考慮して操舵回避距離(特許文献1の図4のXb)を算出し、自車両から障害物までの実距離(特許文献1のLf)が操舵回避距離より短くなると自動ブレーキ又は警報を作動することにより、現実の道路状況に合わせてタイミングよく運転者に対する運転支援を行うことができるように構成された車両走行支援装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、運転者が運転に直接関係しない操作をしているときには、運転者が前方の障害物や路面摩擦係数を認識し難い状態にあるとして自動減速のタイミングを早めるように構成された車両減速装置が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−138623号公報(図2、図3及び図5参照)
【特許文献2】特開2002−19490号公報(図2及び図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の車両走行支援装置においては、カメラ(特許文献1の14)によって撮影した映像やナビゲーション装置(特許文献1の22)からの情報に基づいて、自動ブレーキ又は警報を作動するように構成されており、車両の走行状態(例えば車速、操舵操作量、路面摩擦係数、ヨーレート、タイヤの空気圧、横加速度等)や運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性は自動ブレーキ又は警報の作動に考慮されていない。
【0006】
また、特許文献2の車両減速装置においては、運転者による電装品の操作に基づいて自動減速のタイミングを早めるように構成されており、運転者による電装品の操作が行われていない状態での車両の走行状態は自動減速のタイミングを早めるために考慮されておらず、運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性は、運転者による電装品の操作が行われているか否かに関わらず自動減速のタイミングを早めるために考慮されていない。
【0007】
従って、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術では、車両の走行状態の相違によって、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になるおそれがあり、障害物への衝突の回避が遅くなるおそれがある。具体的には、例えば車速が速い状態で操舵により障害物への衝突を回避すると車速が遅い場合に比べ自車両が不安定になるおそれがあり、このような状態では、運転者は操舵による障害物への衝突の回避に躊躇し、又は運転者が思うように操舵による障害物への衝突の回避を行うことができずに、障害物への衝突の回避が遅くなるおそれがある。
【0008】
また、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術では、運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性の相違によって、車両の動きが運転者の意図する動きと合致せずに、障害物への衝突の回避が適切な時期にできないおそれがある。具体的には、例えば運転者が操舵入力をしているにも関わらず車両の経年劣化や故障等によって車両が運転者の意図する動きをしない場合や、部品交換や修理等によって車両の走行状態の応答特性が改善されて運転者が意図した以上に車両が操舵されてしまう場合には、障害物への衝突の回避が適切な時期にできないおそれがあり、また、運転者が制動入力をしているにも関わらず荷物等の積載による車両総重量の増減等によって運転者の意図する制動ができない場合には、障害物への衝突の回避が適切な時期にできないおそれがある。
本発明は、車両の走行状態や運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性に合わせてタイミングよくブレーキを自動作動させることのできる自動制動装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、自動制動装置を次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備え、前記走行状態検出手段の検出結果に基づいて、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になると判断される場合には、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0010】
(作用)
本発明の第1特徴によると、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になると判断される走行状態で、ブレーキの自動作動開始時期を早めることができる。
【0011】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、車両の走行状態に合わせてタイミングよくブレーキを自動作動させることができ、運転者がブレーキの自動作動に依存してしまうことを防止できる。また、ブレーキの自動作動開始時期を早めることで、障害物への衝突を回避する可能性を高めることができる。
【0012】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、自動制動装置を次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、運転者の操舵入力又は制動入力を検出する入力検出手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備え、
前記入力検出手段により検出した運転者の操舵入力又は制動入力に対する前記走行状態検出手段により検出した自車両の走行状態の応答特性を判定し、この判定結果に基づき前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0013】
(作用)
本発明の第2特徴によると、操舵入力又は制動入力に対する走行状態の応答特性の判定結果に基づいてブレーキの自動作動開始時期を変更することができる。その結果、運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性の相違によって、車両の動きが運転者の意図する動きと合致していなくても、障害物への衝突の回避を適切な時期に行うことができる。
【0014】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性に合わせてタイミングよくブレーキを自動作動させることができ、運転者がブレーキの自動作動に依存してしまうことを防止できる。また、ブレーキの自動作動開始時期を変更することで、障害物への衝突を回避する可能性を高めることができる。
【0015】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段を備え、
前記操舵回避距離が前記制動回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において、前記制動回避距離より短くかつ前記操舵回避距離より長い所定距離よりも、自車両と障害物との実距離が短くなったときに、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0016】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、自車両の障害物への衝突が制動によっては回避できず操舵によって回避できる所定距離で、自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めることができる。その結果、運転者がブレーキの自動作動に違和感を覚えることを防止でき、運転者がブレーキの自動作動に依存してしまうことを更に防止できる。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、運転フィーリングを良好に維持しながら自車両と障害物との衝突を回避できる。
【0018】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第2特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段を備え、
前記操舵回避距離が前記制動回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において、前記制動回避距離より短くかつ前記操舵回避距離より長い所定距離よりも、自車両と障害物との実距離が短くなったときに、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0019】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、自車両の障害物への衝突が制動によっては回避できず操舵によって回避できる所定距離で、自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更することができる。その結果、運転者がブレーキの自動作動に違和感を覚えることを防止でき、運転者がブレーキの自動作動に依存してしまうことを更に防止できる。
【0020】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、運転フィーリングを良好に維持しながら自車両と障害物との衝突を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔車両の制御装置の構成〕
図1に、本発明に係る自動制動装置を備えた車両のブロック図を示す。図1に示すように、車両に、カメラ1、レーダ2、ヨーレートセンサ3、操舵角センサ4、車速センサ5、横加速度センサ6、路面センサ7及び圧力センサ8、ブレーキセンサ9等の検出機器類が実装されている。
【0022】
カメラ1は、例えば車室内のルームミラーのステー等(図示せず)に配設されており、車両の前方を撮影できるように構成されている。カメラ1によって撮影された映像は画像処理装置(図示せず)によって処理されて、ECU10において車両前方の障害物、車両が走行する走行レーンを区画する白線、ガードレール等を検出できるように構成されている。
【0023】
レーダ2は、図示しないが車両前部の複数箇所に左右に並設されており、このレーダ2によって車両前方にレーザ光を投光し先行車等の障害物に当たって反射したレーザ光を受信して、自車両と障害物との実距離、障害物の左右方向の位置及び障害物に対する自車両の相対速度を検出する。すなわち、レーダ2は、自車両と障害物との実距離を検出する実距離検出手段として機能し、かつ自車両と障害物との相対速度を検出する相対速度検出手段として機能する。なお、以下の説明において、実距離を車間距離Lと称す。
【0024】
ヨーレートセンサ3は、車両の重心位置近傍に配設されており、車両に作用するヨーレートを検出する。操舵角センサ4は、ハンドルの操舵軸(図示せず)に組み付けられており、基準位置からの操舵軸の回転角を測定することにより左右の前輪の操舵角を算出して、運転者のハンドルの操作量(操舵操作量)及びハンドルの操作速度(操舵操作速度)を検出する。
【0025】
車速センサ5及び横加速度センサ6は、車両に組み付けられており、車速及び車両に作用する横方向の加速度をそれぞれ検出する。また、路面センサ7も自車両に組み付けられており、この路面センサ7によって車両が走行する路面の摩擦係数(μ)を検出できる。
【0026】
圧力センサ8は、各車輪に実装されており、各車輪に装着されたタイヤの空気圧を測定できるように構成されている。また、フットブレーキ(図示せず)にはブレーキセンサ9が装着されており、このブレーキセンサ9によって運転者のフットブレーキの踏み込み操作量(制動操作量)及びフットブレーキの踏み込み速度(制動操作速度)を検出できる。
【0027】
ECU10には、表示ユニット11、警報装置12、ブレーキ制御ユニット13、ストップランプ14が接続されている。表示ユニット11及び警報装置12は、車室内に装備されており、ECU10からの出力に基づいて運転者に視覚的及び聴覚的な情報を提供する。
【0028】
ブレーキ制御ユニット13は、ECU10からの出力に基づいてブレーキ15を制御し、後述する自動ブレーキ作動手段によってブレーキ圧を増加させて自動的にブレーキ15を作動させる。ブレーキ制御ユニット13によってブレーキ15が作動すると車両の後部に設けたストップランプ14が点灯する。
【0029】
上述した各検出機器類はECU10に接続されており、各検出機器類からの検出結果に基づいてECU10からブレーキ制御ユニット13等に出力を行うことで、後述する自動ブレーキ作動手段を実現できる。
【0030】
[制動回避距離と第1操舵回避距離との関係]
図2に基づいて、制動回避距離と第1操舵回避距離(操舵回避距離に相当)との関係について説明する。図2は、自車両の前方に障害物が存在するとして、自車両がその障害物との衝突を制動により物理的に回避できるその障害物までの最小距離(以下制動回避距離と称す)と、自車両がその障害物との衝突を操舵により物理的に回避できるその障害物までの最小距離(以下第1操舵回避距離と称す)の関係を示したグラフである。なお、図2の横軸は自車両と障害物との相対速度を示し、縦軸は制動開始位置又は操舵開始位置からの距離を示す。
【0031】
図2に示すように、制動回避距離は、車両の運動性能から相対速度の増加に伴って略二次曲線的増加し、第1操舵回避距離は、自車両と障害物との幾何学的な関係から相対速度の増加に伴って略直線的に増加する。相対速度が所定値V0よりも小さい領域においては、第1操舵回避距離が制動回避距離より長くなり、相対速度が所定値V0より大きい領域においては、第1操舵回避距離が制動回避距離より短くなる。
【0032】
制動回避距離が第1操舵回避距離より短くなる相対速度が比較的小さい領域(以下制動優位領域と称す)で車間距離Lが第1操舵回避距離を下回ったときに常にブレーキ15を自動作動させると、運転者の制動操作によって衝突を回避できるにも関わらずブレーキ15が自動作動することになり、運転者の予期しないタイミングでブレーキ15が自動作動する。そのため、後述する自動ブレーキ作動手段においては、車間距離Lが第1操舵回避距離及び制動回避距離を下回ったときにブレーキ15が自動作動するように構成されている。なお、ブレーキ15を自動作動させるのと同時に警報装置12を自動作動させるように構成してもよく、ブレーキ15の自動作動に先立って警報装置12を自動作動させるように構成してもよい。
【0033】
第1操舵回避距離が制動回避距離より短くなる相対速度が比較的大きい領域(以下操舵優位領域と称す)で車間距離Lが制動回避距離を下回ったときに常にブレーキ15を自動作動させると、運転者の操舵操作によって衝突を回避できるにも関わらずブレーキ15が自動作動することになり、運転者の予期しないタイミングでブレーキ15が自動作動する。そのため、後述する自動ブレーキ作動手段においては、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化する場合を除き、車間距離Lが制動回避距離及び第1操舵回避距離を下回ったときにブレーキ15が自動作動するように構成されている。なお、ブレーキ15を自動作動させるのと同時に、警報装置12を自動作動させるように構成してもよく、ブレーキ15の自動作動に先立って警報装置12を自動作動させるように構成してもよい。
【0034】
以上より、運転者の制動操作又は操舵操作によって障害物との衝突を回避することができる状況においては、ブレーキ15が自動作動せず、運転者の制動操作及び操舵操作のいずれによっても衝突を回避できない状況(物理的な回避限界)になって初めてブレーキ15が自動作動するように構成されている。その結果、運転者の運転意思を尊重して運転フィーリングを良好に維持しながら自車両と障害物との衝突による衝撃を緩和できる。
【0035】
[自動ブレーキ作動手段]
図3は、後述する自動ブレーキ作動手段による自動作動開始時期の早期化に用いられる第2操舵回避距離を相対速度毎に設定して、上述した図2に追記したグラフである。図3に示すように、操舵優位領域で、上述した第1操舵回避距離よりも長い第2操舵回避距離が設定されている。すなわち、自動ブレーキ作動手段によってブレーキ15の自動作動開始時期が早期化されて、車間距離Lがこの第2操舵回避距離に達すると、ブレーキ15が自動作動する。
【0036】
具体的には、図3に示すように、相対速度がV1の場合を例にとって説明すると、相対速度がV1における第2操舵回避距離L2は、相対速度がV1における第1操舵回避距離L1より長いため、後述する自動ブレーキ作動手段によってブレーキ15の自動作動開始時期が早期化された場合には、車間距離Lが第1操舵回避距離L1に達しなくても、第2操舵回避距離L2に達すると、ブレーキ15が自動作動する。なお、この実施例における第2操舵回避距離(図3中の点線)は、相対速度の増加に伴って略直線的に増加するように設定されている。
【0037】
図4に基づいて、本実施例における自動ブレーキ作動手段のメインルーチンを示す。図4に示すように、図1に示した検出機器類によって検出されてECU10に入力されたデータが常時監視されている(ステップ#11)。そして、レーダ2によって検出した検出結果に基づいて、車間距離L及び自車両と障害物との相対速度が算出される(ステップ#12)。
【0038】
次に、算出された相対速度及び上述した図3に示したグラフに基づいて制動回避距離が算出される(ステップ#13)。そして、算出された自車両と障害物との相対速度が制動優位領域と操舵優位領域の境界値に当たるV0以上か否か判断される(ステップ#14)。すなわち、算出された相対速度が操舵優位領域の相対速度であるか否か判断される。
【0039】
算出された相対速度がV0以上の場合には(ステップ#14・Yes)、走行状態又は走行状態の応答特性に基づいてブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するか否か判断される(ステップ#15)。一方、算出された相対速度がV0未満の場合には(ステップ#14・No)、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するか否か判断されない。
【0040】
ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化しないと判断された場合及び相対速度がV0未満の場合には(ステップ#15・No,ステップ#14・No)、上述した第1操舵回避距離を算出し(ステップ#16)、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第1操舵回避距離以下か否か判断される。なお、第1操舵回避距離の算出を、早期化するか否かの判断(ステップ#15)より前に実施するように構成してもよい。
【0041】
レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第1操舵回避距離以下の場合、すなわち図3の斜線で示す距離より車間距離Lが短くなった場合には(ステップ#17・Yes)、ブレーキ15が自動作動する。一方、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動距離未満又は第1操舵回避距離未満である場合、すなわち図2の斜線で示す距離より車間距離Lが長い場合には(ステップ#17・No)、ブレーキ15が自動作動しない。
【0042】
ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化すると判断された場合には(ステップ#15・Yes)、上述した第2操舵回避距離を算出し(ステップ#19)、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第2操舵回避距離以下か否か判断される。なお、第2操舵回避距離の算出を、早期化するか否かの判断(ステップ#15)より前に実施するように構成してもよい。
【0043】
レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第2操舵回避距離以下の場合、すなわち図3の点線で示す直線より車間距離Lが短くなった場合には(ステップ#20・Yes)、ブレーキ15が自動作動する。一方、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動距離未満又は第2操舵回避距離未満である場合、すなわち図2の点線で示す直線より車間距離Lが長い場合には(ステップ#20・No)、ブレーキ15が自動作動しない。
【0044】
[ブレーキの自動作動開始時期の早期化]
図5及び図6に基づいて、走行状態又は走行状態の応答特性によって、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するか否かの判断手順について説明する。図5及び図6は、図4における点線で囲った部分の詳細図であり、走行状態によって早期化する場合及び走行状態の応答特性によって早期化する場合をそれぞれ示す。
【0045】
図5に示すように、車速センサ5よって検出された自車両の車速、操舵角センサ4によって検出された運転者の操舵操作量、路面センサ7によって検出された路面の摩擦係数、横加速度センサ6によって検出された自車両の横加速度に基づいて、運転者が操舵により障害物への衝突を回避(以下操舵回避と称する)すると自車両が不安定になるか否かが判断される。すなわち、走行状態検出手段としての車速センサ5、操舵角センサ4、路面センサ7及び横加速度センサ6の検出結果に基づいて、操舵回避すると自車両が不安定になるか否かが判断される。
【0046】
車速センサ5によって検出された自車両の車速が、操舵回避すると自車両が不安定になるおそれのある予め設定した基準速度より速いか否か判断され(ステップ#31)、車速が基準速度より速いと判断される場合には(ステップ#31・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0047】
車速が基準速度より遅いと判断される場合には(ステップ#31・No)、操舵角センサ4によって検出された運転者の操舵操作量が、運転者が緊急回避を行っている可能性が高く、さらに操舵回避すると自車両が不安定になるおそれのある予め設定した基準操作量より多いか否か判断され(ステップ#32)、運転者の操舵操作量が基準操作量より多い場合には(ステップ#32・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。なお、操舵角センサ4によって検出された運転者の操舵操作速度に基づいて、この操舵操作量が予め設定した基準操作速度より早く運転者が緊急回避を行っている可能性が高い場合に、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化されるように構成してもよく、操舵操作量及び操舵操作速度に基づいて早期化されるように構成してもよい。
【0048】
運転者の操舵操作量が基準操作量より少ないと判断される場合には(ステップ#32・No)、路面センサ7によって検出された路面の摩擦係数μが、操舵回避すると自車両が不安定になるおそれのある予め設定した基準摩擦係数より小さいか否か判断され(ステップ#33)、路面の摩擦係数μが基準摩擦係数より小さいと判断される場合(具体的な原因としては、例えば雨や凍結等によって滑り易い路面になっている場合が考えられる。)には(ステップ#33・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0049】
路面の摩擦係数μが基準摩擦係数より大きいと判断される場合には(ステップ#33・No)、横加速度センサ6によって検出された自車両の横加速度が、操舵回避すると自車両が不安定になるおそれのある予め設定した基準加速度より大きいか否か判断され(ステップ#34)、自車両の横加速度が基準加速度より大きいと判断される場合(具体的な原因としては、例えば車両総重量の増加やタイヤの空気圧の減少等が考えられる。)には(ステップ#34・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0050】
上記いずれの条件も満たさない場合には(ステップ34・No)、ブレーキ15の自動作動時期が早期化されずに、一定の条件のもと(ステップ#17)、ブレーキ15が自動作動する。なお、図5のフローチャートにおいては、操舵回避すると自車両が不安定になり易い走行状態を優先させた順番で、条件判断がなされるように構成されている。
【0051】
図6に示すように、操舵角センサ4によって検出した運転者の操舵入力(操舵操作量及び操舵操作速度)又はブレーキセンサ9によって検出した運転者の制動入力(制動操作量及び制動操作速度)に対するヨーレートセンサ3よって検出された自車両のヨーレート、圧力センサ8によって検出された各車輪に装着されたタイヤの空気圧、及び横加速度センサ6によって検出された自車両の横加速度の応答特性が、ECU10に予め記憶された基準特性に対して悪いか判定される。すなわち、入力検出手段としての操舵角センサ4及びブレーキセンサ9の検出結果に対する走行状態検出手段としてのヨーレートセンサ3、圧力センサ8及び横加速度センサ6の応答特性が、基準特性に対して悪いか判定される。
【0052】
ヨーレートセンサ3よって検出された自車両のヨーレートが、そのヨーレート検出時と同等の操舵入力又は制動入力を行った状態でのECU10に予め記憶された基準ヨーレートと比較され、ヨーレートの応答特性が悪いか否か判定される(ステップ#41)。ヨーレートの応答特性が悪く、検出されたヨーレートが基準ヨーレートと大きく異なると判定される場合(具体的な原因としては、例えば車両総重量の増加、タイヤ又はサスペンションの劣化等が考えられる。)には(ステップ#41・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0053】
ヨーレートの応答特性が良いと判定される場合には(ステップ#41・No)、圧力センサ8によって検出された各車輪に装着されたタイヤの空気圧が、その空気圧検出時と同等の操舵入力又は制動入力を行った状態でのECU10に予め記憶された基準空気圧と比較され、タイヤの空気圧の応答特性が悪いか否か判定される(ステップ#42)。タイヤの空気圧の応答特性が悪く、検出された空気圧が基準空気圧と大きく異なると判定される場合には(ステップ#42・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0054】
タイヤの空気圧の応答特性が良いと判定される場合には(ステップ#43・No)、横加速度センサ6によって検出された自車両の横加速度が、その横加速度検出時と同等の操舵入力又は制動入力を行った状態でのECU10に予め記憶された基準加速度と比較され、自車両の横加速度の応答特性が悪いか否か判定される(ステップ#43)。自車両の横加速度の応答特性が悪く、検出された横加速度が基準加速度と大きく異なると判定される場合には(ステップ#43・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0055】
上記いずれの条件も満たさない場合には(ステップ#43・No)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化されずに、一定の条件のもと(ステップ#17)、ブレーキ15が自動作動する(ステップ#18)。
【0056】
[自動ブレーキ作動手段によるブレーキの作動状況]
図7に基づいて、早期化されたブレーキ15の自動作動の状況について説明する。図7(イ)は、制動回避距離における自車両と障害物との位置関係の概略図を示し、図7(ニ)は、第1操舵回避距離における自車両と障害物との位置関係の概略図を示し、図7(ハ)は、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化した第2操舵回避距離における自車両と障害物の位置関係の概略図を示す。なお、図7(ロ)は、後述する発明の実施の第1別形態における自車両と障害物の位置関係を示す概略図である。
【0057】
図7(ニ)に示すように、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化していない第1操舵回避距離でブレーキ15を自動作動させた場合、すなわち車速等が速い状態(走行状態が不安定と判断される状態)又はヨーレート等の応答特性が悪い状態(走行状態の応答特性が悪いと判定される状態)で操舵回避を行ってブレーキ15を自動作動させても、ブレーキ15の自動作動が遅く障害物との衝突を回避することが難しかった(又は、衝突に対する被害軽減効果があまりなかった)。しかし、図7(ハ)に示すように、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化することにより、車速等が速い状態又はヨーレート等の応答特性が悪い状態で操舵回避を行っても、障害物との衝突を回避できる(又は、衝突に対する被害軽減効果を大きくすることができる)。
【0058】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、図3に示した第2操舵回避距離に基づいて、自動ブレーキ作動手段を図4〜図6のフローチャートのように構成した例を示したが、図8に示す第2及び第3操舵回避距離に基づいて、図4に代えて図9のフローチャートを採用して、自動ブレーキ作動手段を構成してもよい。
【0059】
図8に示すように、操舵優位領域でこの実施例での自動ブレーキ作動手段によって第2操舵回避距離よりも長い第3操舵回避距離が設定されている。なお、第3操舵回避距離(図8中の1点鎖線)は、相対速度の増加に伴って略直線的に増加するように設定されている。
【0060】
図9に示すように、図1に示した検出機器類によって検出されてECU10に入力されたデータが常時監視されている(ステップ#51)。前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様に、車間距離L、相対速度、制動回避距離が算出され(ステップ#52、#53)、相対速度がV0以上か否か判断される(ステップ#54)。
【0061】
相対速度がV0以上の場合には(ステップ#54・Yes)、ブレーキセンサ9の検出結果に基づいて運転者が制動回避を行っているか否か判断され(ステップ#55)、運転者が制動回避を行っていると判断される場合には(ステップ#55・Yes)、第3操舵回避距離が算出される(ステップ#62)。
【0062】
次に、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第3操舵回避距離以下か否か判断され(ステップ#63)、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第3操舵回避距離以下の場合、すなわち図8の1点鎖線で示す距離より車間距離Lが短くなった場合には(ステップ#63・Yes)、ブレーキ15が自動作動する。一方、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動距離未満又は第1操舵回避距離未満である場合、すなわち図8の1点鎖線で示す距離より車間距離Lが長い場合には(ステップ#63・No)、ブレーキ15が自動作動しない。
【0063】
運転者が制動回避を行っていないと判断される場合には(ステップ#55・No)、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様に、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するか否かが判断されて(ステップ#56)、一定の条件のもとブレーキ15が自動作動する(ステップ#57〜#59)。
【0064】
このように、第3操舵回避距離を別途設定して運転者が制動回避を行っている場合には、第2操舵回避距離よりも更に早期化した第3操舵回避距離でブレーキ15を自動作動させることにより、運転者の制動回避によって横方向への回避に長い距離を必要とする状況になった場合(運転者の制動回避によって進行方向への制動力が働いて横方向に回避し難くなった場合)においても、自動ブレーキ作動手段によって適切なタイミングでブレーキ15を自動作動させることができる(図7(ロ)参照)。
【0065】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、操舵優位領域において第2又は第3操舵回避距離を設定して、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するように自動ブレーキ作動手段を構成した例を示したが、図10に示すように、制動優位領域において第2制動回避距離を設定して、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するように自動ブレーキ作動手段を構成してもよい。
【0066】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、第2及び第3操舵回避距離が相対速度の増加に伴って略直線的に増加するように、第2及び第3操舵回避距離を設定した例を示したが、図11〜図13に示すような第2及び第3操舵回避距離を設定してもよい。なお、図11〜図13においては第2操舵回避距離を例に示すが、第3操舵回避距離についても同様である。
【0067】
図11に示すように、操舵優位領域の相対速度が小さい領域では制動回避距離の曲線に沿った曲線となり、操舵回避距離の相対速度が大きい領域では第1操舵回避距離の直線と平行な直線となるように第2又は第3操舵回避距離を設定してもよい。
【0068】
また、図12に示すように、相対速度の増加に伴って、屈曲した直線状に増加するように第2及び第3操舵回避距離を設定してもよく、図13に示すように、相対速度の増加に伴って、徐々に早期化の度合いが大きくなるように第2及び第3操舵回避距離を設定してもよい。
【0069】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第3別形態]において示した走行状態検出手段及び入力検出手段はその一例として示したものであり、操舵回避すると自車両が不安定になるか否か判断する走行状態検出手段、及び応答特性が基準特性に対して悪いか否か判定するための走行状態検出手段として異なるセンサ等の検出機器(図示せず)を採用してもよく、入力検出手段として運転者の操舵入力又は制動入力を検出できる異なるセンサ等の検出機器(図示せず)を採用してもよい。
【0070】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、操舵角センサ4及びブレーキセンサ9の検出結果に対するヨーレートセンサ3等の応答特性が、基準特性に対して悪いか否か判定し、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化した例を示したが、例えば部品交換や修理等によって走行状態の応答特性が改善された場合には、ブレーキ15の自動作動開始時期を遅くするように自動ブレーキ作動手段を構成してもよい。この場合、改善された応答特性の分だけブレーキ15の自動作動開始時期を遅くするように構成してもよい。
【0071】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、第2又は第3操舵回避距離を設定してブレーキ15の自動作動開始時期を早期化した例を示したが、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化する基準としては、異なる基準であってもよく、例えば距離ではなく予測した時間に基づいて早期化するように自動ブレーキ作動手段を構成してもよい。また、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化する度合いは、上記判断(予測)される自車両の不安定の度合いや、上記応答特性の悪さの程度に応じて変更する(大きく又は小さく変更する)ように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】車両のブロック図
【図2】制動回避距離と第1操舵回避距離との関係を示すグラフ
【図3】第2操舵回避距離を説明するグラフ
【図4】自動ブレーキ作動手段のフローチャート
【図5】走行状態に基づいた早期化判断のフローチャート
【図6】走行状態の応答特性に基づいた早期化判断のフローチャート
【図7】自動ブレーキ作動手段によるブレーキの作動状況を示す概略図
【図8】発明の実施の第1別形態における第3操舵回避距離を説明するグラフ
【図9】発明の実施の第1別形態における自動ブレーキ作動手段のフローチャート
【図10】発明の実施の第2別形態における第2制動回避距離を説明するグラフ
【図11】発明の実施の第2別形態における第2操舵回避距離を説明するグラフ
【図12】発明の実施の第2別形態における第2操舵回避距離を説明するグラフ
【図13】発明の実施の第2別形態における第2操舵回避距離を説明するグラフ
【符号の説明】
【0073】
3 ヨーレートセンサ(走行状態検出手段)
4 操舵角センサ(入力検出手段、走行状態検出手段)
5 車速センサ(走行状態検出手段)
6 横加速度センサ(走行状態検出手段)
7 路面センサ(走行状態検出手段)
8 圧力センサ(走行状態検出手段)
9 ブレーキセンサ(入力検出手段)
15 ブレーキ
L 車間距離(実距離)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキを自動作動させる自動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、自車両の走行する道路の状況(ガードレールや対向車両等)を考慮して操舵回避距離(特許文献1の図4のXb)を算出し、自車両から障害物までの実距離(特許文献1のLf)が操舵回避距離より短くなると自動ブレーキ又は警報を作動することにより、現実の道路状況に合わせてタイミングよく運転者に対する運転支援を行うことができるように構成された車両走行支援装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、運転者が運転に直接関係しない操作をしているときには、運転者が前方の障害物や路面摩擦係数を認識し難い状態にあるとして自動減速のタイミングを早めるように構成された車両減速装置が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−138623号公報(図2、図3及び図5参照)
【特許文献2】特開2002−19490号公報(図2及び図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の車両走行支援装置においては、カメラ(特許文献1の14)によって撮影した映像やナビゲーション装置(特許文献1の22)からの情報に基づいて、自動ブレーキ又は警報を作動するように構成されており、車両の走行状態(例えば車速、操舵操作量、路面摩擦係数、ヨーレート、タイヤの空気圧、横加速度等)や運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性は自動ブレーキ又は警報の作動に考慮されていない。
【0006】
また、特許文献2の車両減速装置においては、運転者による電装品の操作に基づいて自動減速のタイミングを早めるように構成されており、運転者による電装品の操作が行われていない状態での車両の走行状態は自動減速のタイミングを早めるために考慮されておらず、運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性は、運転者による電装品の操作が行われているか否かに関わらず自動減速のタイミングを早めるために考慮されていない。
【0007】
従って、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術では、車両の走行状態の相違によって、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になるおそれがあり、障害物への衝突の回避が遅くなるおそれがある。具体的には、例えば車速が速い状態で操舵により障害物への衝突を回避すると車速が遅い場合に比べ自車両が不安定になるおそれがあり、このような状態では、運転者は操舵による障害物への衝突の回避に躊躇し、又は運転者が思うように操舵による障害物への衝突の回避を行うことができずに、障害物への衝突の回避が遅くなるおそれがある。
【0008】
また、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術では、運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性の相違によって、車両の動きが運転者の意図する動きと合致せずに、障害物への衝突の回避が適切な時期にできないおそれがある。具体的には、例えば運転者が操舵入力をしているにも関わらず車両の経年劣化や故障等によって車両が運転者の意図する動きをしない場合や、部品交換や修理等によって車両の走行状態の応答特性が改善されて運転者が意図した以上に車両が操舵されてしまう場合には、障害物への衝突の回避が適切な時期にできないおそれがあり、また、運転者が制動入力をしているにも関わらず荷物等の積載による車両総重量の増減等によって運転者の意図する制動ができない場合には、障害物への衝突の回避が適切な時期にできないおそれがある。
本発明は、車両の走行状態や運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性に合わせてタイミングよくブレーキを自動作動させることのできる自動制動装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、自動制動装置を次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備え、前記走行状態検出手段の検出結果に基づいて、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になると判断される場合には、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0010】
(作用)
本発明の第1特徴によると、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になると判断される走行状態で、ブレーキの自動作動開始時期を早めることができる。
【0011】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、車両の走行状態に合わせてタイミングよくブレーキを自動作動させることができ、運転者がブレーキの自動作動に依存してしまうことを防止できる。また、ブレーキの自動作動開始時期を早めることで、障害物への衝突を回避する可能性を高めることができる。
【0012】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、自動制動装置を次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、運転者の操舵入力又は制動入力を検出する入力検出手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備え、
前記入力検出手段により検出した運転者の操舵入力又は制動入力に対する前記走行状態検出手段により検出した自車両の走行状態の応答特性を判定し、この判定結果に基づき前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0013】
(作用)
本発明の第2特徴によると、操舵入力又は制動入力に対する走行状態の応答特性の判定結果に基づいてブレーキの自動作動開始時期を変更することができる。その結果、運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性の相違によって、車両の動きが運転者の意図する動きと合致していなくても、障害物への衝突の回避を適切な時期に行うことができる。
【0014】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、運転者の操舵入力又は制動入力に対する車両の走行状態の応答特性に合わせてタイミングよくブレーキを自動作動させることができ、運転者がブレーキの自動作動に依存してしまうことを防止できる。また、ブレーキの自動作動開始時期を変更することで、障害物への衝突を回避する可能性を高めることができる。
【0015】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段を備え、
前記操舵回避距離が前記制動回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において、前記制動回避距離より短くかつ前記操舵回避距離より長い所定距離よりも、自車両と障害物との実距離が短くなったときに、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0016】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、自車両の障害物への衝突が制動によっては回避できず操舵によって回避できる所定距離で、自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めることができる。その結果、運転者がブレーキの自動作動に違和感を覚えることを防止でき、運転者がブレーキの自動作動に依存してしまうことを更に防止できる。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、運転フィーリングを良好に維持しながら自車両と障害物との衝突を回避できる。
【0018】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第2特徴の自動制動装置において、次のように構成することにある。
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段を備え、
前記操舵回避距離が前記制動回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において、前記制動回避距離より短くかつ前記操舵回避距離より長い所定距離よりも、自車両と障害物との実距離が短くなったときに、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成する。
【0019】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、自車両の障害物への衝突が制動によっては回避できず操舵によって回避できる所定距離で、自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更することができる。その結果、運転者がブレーキの自動作動に違和感を覚えることを防止でき、運転者がブレーキの自動作動に依存してしまうことを更に防止できる。
【0020】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、運転フィーリングを良好に維持しながら自車両と障害物との衝突を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔車両の制御装置の構成〕
図1に、本発明に係る自動制動装置を備えた車両のブロック図を示す。図1に示すように、車両に、カメラ1、レーダ2、ヨーレートセンサ3、操舵角センサ4、車速センサ5、横加速度センサ6、路面センサ7及び圧力センサ8、ブレーキセンサ9等の検出機器類が実装されている。
【0022】
カメラ1は、例えば車室内のルームミラーのステー等(図示せず)に配設されており、車両の前方を撮影できるように構成されている。カメラ1によって撮影された映像は画像処理装置(図示せず)によって処理されて、ECU10において車両前方の障害物、車両が走行する走行レーンを区画する白線、ガードレール等を検出できるように構成されている。
【0023】
レーダ2は、図示しないが車両前部の複数箇所に左右に並設されており、このレーダ2によって車両前方にレーザ光を投光し先行車等の障害物に当たって反射したレーザ光を受信して、自車両と障害物との実距離、障害物の左右方向の位置及び障害物に対する自車両の相対速度を検出する。すなわち、レーダ2は、自車両と障害物との実距離を検出する実距離検出手段として機能し、かつ自車両と障害物との相対速度を検出する相対速度検出手段として機能する。なお、以下の説明において、実距離を車間距離Lと称す。
【0024】
ヨーレートセンサ3は、車両の重心位置近傍に配設されており、車両に作用するヨーレートを検出する。操舵角センサ4は、ハンドルの操舵軸(図示せず)に組み付けられており、基準位置からの操舵軸の回転角を測定することにより左右の前輪の操舵角を算出して、運転者のハンドルの操作量(操舵操作量)及びハンドルの操作速度(操舵操作速度)を検出する。
【0025】
車速センサ5及び横加速度センサ6は、車両に組み付けられており、車速及び車両に作用する横方向の加速度をそれぞれ検出する。また、路面センサ7も自車両に組み付けられており、この路面センサ7によって車両が走行する路面の摩擦係数(μ)を検出できる。
【0026】
圧力センサ8は、各車輪に実装されており、各車輪に装着されたタイヤの空気圧を測定できるように構成されている。また、フットブレーキ(図示せず)にはブレーキセンサ9が装着されており、このブレーキセンサ9によって運転者のフットブレーキの踏み込み操作量(制動操作量)及びフットブレーキの踏み込み速度(制動操作速度)を検出できる。
【0027】
ECU10には、表示ユニット11、警報装置12、ブレーキ制御ユニット13、ストップランプ14が接続されている。表示ユニット11及び警報装置12は、車室内に装備されており、ECU10からの出力に基づいて運転者に視覚的及び聴覚的な情報を提供する。
【0028】
ブレーキ制御ユニット13は、ECU10からの出力に基づいてブレーキ15を制御し、後述する自動ブレーキ作動手段によってブレーキ圧を増加させて自動的にブレーキ15を作動させる。ブレーキ制御ユニット13によってブレーキ15が作動すると車両の後部に設けたストップランプ14が点灯する。
【0029】
上述した各検出機器類はECU10に接続されており、各検出機器類からの検出結果に基づいてECU10からブレーキ制御ユニット13等に出力を行うことで、後述する自動ブレーキ作動手段を実現できる。
【0030】
[制動回避距離と第1操舵回避距離との関係]
図2に基づいて、制動回避距離と第1操舵回避距離(操舵回避距離に相当)との関係について説明する。図2は、自車両の前方に障害物が存在するとして、自車両がその障害物との衝突を制動により物理的に回避できるその障害物までの最小距離(以下制動回避距離と称す)と、自車両がその障害物との衝突を操舵により物理的に回避できるその障害物までの最小距離(以下第1操舵回避距離と称す)の関係を示したグラフである。なお、図2の横軸は自車両と障害物との相対速度を示し、縦軸は制動開始位置又は操舵開始位置からの距離を示す。
【0031】
図2に示すように、制動回避距離は、車両の運動性能から相対速度の増加に伴って略二次曲線的増加し、第1操舵回避距離は、自車両と障害物との幾何学的な関係から相対速度の増加に伴って略直線的に増加する。相対速度が所定値V0よりも小さい領域においては、第1操舵回避距離が制動回避距離より長くなり、相対速度が所定値V0より大きい領域においては、第1操舵回避距離が制動回避距離より短くなる。
【0032】
制動回避距離が第1操舵回避距離より短くなる相対速度が比較的小さい領域(以下制動優位領域と称す)で車間距離Lが第1操舵回避距離を下回ったときに常にブレーキ15を自動作動させると、運転者の制動操作によって衝突を回避できるにも関わらずブレーキ15が自動作動することになり、運転者の予期しないタイミングでブレーキ15が自動作動する。そのため、後述する自動ブレーキ作動手段においては、車間距離Lが第1操舵回避距離及び制動回避距離を下回ったときにブレーキ15が自動作動するように構成されている。なお、ブレーキ15を自動作動させるのと同時に警報装置12を自動作動させるように構成してもよく、ブレーキ15の自動作動に先立って警報装置12を自動作動させるように構成してもよい。
【0033】
第1操舵回避距離が制動回避距離より短くなる相対速度が比較的大きい領域(以下操舵優位領域と称す)で車間距離Lが制動回避距離を下回ったときに常にブレーキ15を自動作動させると、運転者の操舵操作によって衝突を回避できるにも関わらずブレーキ15が自動作動することになり、運転者の予期しないタイミングでブレーキ15が自動作動する。そのため、後述する自動ブレーキ作動手段においては、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化する場合を除き、車間距離Lが制動回避距離及び第1操舵回避距離を下回ったときにブレーキ15が自動作動するように構成されている。なお、ブレーキ15を自動作動させるのと同時に、警報装置12を自動作動させるように構成してもよく、ブレーキ15の自動作動に先立って警報装置12を自動作動させるように構成してもよい。
【0034】
以上より、運転者の制動操作又は操舵操作によって障害物との衝突を回避することができる状況においては、ブレーキ15が自動作動せず、運転者の制動操作及び操舵操作のいずれによっても衝突を回避できない状況(物理的な回避限界)になって初めてブレーキ15が自動作動するように構成されている。その結果、運転者の運転意思を尊重して運転フィーリングを良好に維持しながら自車両と障害物との衝突による衝撃を緩和できる。
【0035】
[自動ブレーキ作動手段]
図3は、後述する自動ブレーキ作動手段による自動作動開始時期の早期化に用いられる第2操舵回避距離を相対速度毎に設定して、上述した図2に追記したグラフである。図3に示すように、操舵優位領域で、上述した第1操舵回避距離よりも長い第2操舵回避距離が設定されている。すなわち、自動ブレーキ作動手段によってブレーキ15の自動作動開始時期が早期化されて、車間距離Lがこの第2操舵回避距離に達すると、ブレーキ15が自動作動する。
【0036】
具体的には、図3に示すように、相対速度がV1の場合を例にとって説明すると、相対速度がV1における第2操舵回避距離L2は、相対速度がV1における第1操舵回避距離L1より長いため、後述する自動ブレーキ作動手段によってブレーキ15の自動作動開始時期が早期化された場合には、車間距離Lが第1操舵回避距離L1に達しなくても、第2操舵回避距離L2に達すると、ブレーキ15が自動作動する。なお、この実施例における第2操舵回避距離(図3中の点線)は、相対速度の増加に伴って略直線的に増加するように設定されている。
【0037】
図4に基づいて、本実施例における自動ブレーキ作動手段のメインルーチンを示す。図4に示すように、図1に示した検出機器類によって検出されてECU10に入力されたデータが常時監視されている(ステップ#11)。そして、レーダ2によって検出した検出結果に基づいて、車間距離L及び自車両と障害物との相対速度が算出される(ステップ#12)。
【0038】
次に、算出された相対速度及び上述した図3に示したグラフに基づいて制動回避距離が算出される(ステップ#13)。そして、算出された自車両と障害物との相対速度が制動優位領域と操舵優位領域の境界値に当たるV0以上か否か判断される(ステップ#14)。すなわち、算出された相対速度が操舵優位領域の相対速度であるか否か判断される。
【0039】
算出された相対速度がV0以上の場合には(ステップ#14・Yes)、走行状態又は走行状態の応答特性に基づいてブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するか否か判断される(ステップ#15)。一方、算出された相対速度がV0未満の場合には(ステップ#14・No)、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するか否か判断されない。
【0040】
ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化しないと判断された場合及び相対速度がV0未満の場合には(ステップ#15・No,ステップ#14・No)、上述した第1操舵回避距離を算出し(ステップ#16)、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第1操舵回避距離以下か否か判断される。なお、第1操舵回避距離の算出を、早期化するか否かの判断(ステップ#15)より前に実施するように構成してもよい。
【0041】
レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第1操舵回避距離以下の場合、すなわち図3の斜線で示す距離より車間距離Lが短くなった場合には(ステップ#17・Yes)、ブレーキ15が自動作動する。一方、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動距離未満又は第1操舵回避距離未満である場合、すなわち図2の斜線で示す距離より車間距離Lが長い場合には(ステップ#17・No)、ブレーキ15が自動作動しない。
【0042】
ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化すると判断された場合には(ステップ#15・Yes)、上述した第2操舵回避距離を算出し(ステップ#19)、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第2操舵回避距離以下か否か判断される。なお、第2操舵回避距離の算出を、早期化するか否かの判断(ステップ#15)より前に実施するように構成してもよい。
【0043】
レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第2操舵回避距離以下の場合、すなわち図3の点線で示す直線より車間距離Lが短くなった場合には(ステップ#20・Yes)、ブレーキ15が自動作動する。一方、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動距離未満又は第2操舵回避距離未満である場合、すなわち図2の点線で示す直線より車間距離Lが長い場合には(ステップ#20・No)、ブレーキ15が自動作動しない。
【0044】
[ブレーキの自動作動開始時期の早期化]
図5及び図6に基づいて、走行状態又は走行状態の応答特性によって、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するか否かの判断手順について説明する。図5及び図6は、図4における点線で囲った部分の詳細図であり、走行状態によって早期化する場合及び走行状態の応答特性によって早期化する場合をそれぞれ示す。
【0045】
図5に示すように、車速センサ5よって検出された自車両の車速、操舵角センサ4によって検出された運転者の操舵操作量、路面センサ7によって検出された路面の摩擦係数、横加速度センサ6によって検出された自車両の横加速度に基づいて、運転者が操舵により障害物への衝突を回避(以下操舵回避と称する)すると自車両が不安定になるか否かが判断される。すなわち、走行状態検出手段としての車速センサ5、操舵角センサ4、路面センサ7及び横加速度センサ6の検出結果に基づいて、操舵回避すると自車両が不安定になるか否かが判断される。
【0046】
車速センサ5によって検出された自車両の車速が、操舵回避すると自車両が不安定になるおそれのある予め設定した基準速度より速いか否か判断され(ステップ#31)、車速が基準速度より速いと判断される場合には(ステップ#31・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0047】
車速が基準速度より遅いと判断される場合には(ステップ#31・No)、操舵角センサ4によって検出された運転者の操舵操作量が、運転者が緊急回避を行っている可能性が高く、さらに操舵回避すると自車両が不安定になるおそれのある予め設定した基準操作量より多いか否か判断され(ステップ#32)、運転者の操舵操作量が基準操作量より多い場合には(ステップ#32・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。なお、操舵角センサ4によって検出された運転者の操舵操作速度に基づいて、この操舵操作量が予め設定した基準操作速度より早く運転者が緊急回避を行っている可能性が高い場合に、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化されるように構成してもよく、操舵操作量及び操舵操作速度に基づいて早期化されるように構成してもよい。
【0048】
運転者の操舵操作量が基準操作量より少ないと判断される場合には(ステップ#32・No)、路面センサ7によって検出された路面の摩擦係数μが、操舵回避すると自車両が不安定になるおそれのある予め設定した基準摩擦係数より小さいか否か判断され(ステップ#33)、路面の摩擦係数μが基準摩擦係数より小さいと判断される場合(具体的な原因としては、例えば雨や凍結等によって滑り易い路面になっている場合が考えられる。)には(ステップ#33・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0049】
路面の摩擦係数μが基準摩擦係数より大きいと判断される場合には(ステップ#33・No)、横加速度センサ6によって検出された自車両の横加速度が、操舵回避すると自車両が不安定になるおそれのある予め設定した基準加速度より大きいか否か判断され(ステップ#34)、自車両の横加速度が基準加速度より大きいと判断される場合(具体的な原因としては、例えば車両総重量の増加やタイヤの空気圧の減少等が考えられる。)には(ステップ#34・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0050】
上記いずれの条件も満たさない場合には(ステップ34・No)、ブレーキ15の自動作動時期が早期化されずに、一定の条件のもと(ステップ#17)、ブレーキ15が自動作動する。なお、図5のフローチャートにおいては、操舵回避すると自車両が不安定になり易い走行状態を優先させた順番で、条件判断がなされるように構成されている。
【0051】
図6に示すように、操舵角センサ4によって検出した運転者の操舵入力(操舵操作量及び操舵操作速度)又はブレーキセンサ9によって検出した運転者の制動入力(制動操作量及び制動操作速度)に対するヨーレートセンサ3よって検出された自車両のヨーレート、圧力センサ8によって検出された各車輪に装着されたタイヤの空気圧、及び横加速度センサ6によって検出された自車両の横加速度の応答特性が、ECU10に予め記憶された基準特性に対して悪いか判定される。すなわち、入力検出手段としての操舵角センサ4及びブレーキセンサ9の検出結果に対する走行状態検出手段としてのヨーレートセンサ3、圧力センサ8及び横加速度センサ6の応答特性が、基準特性に対して悪いか判定される。
【0052】
ヨーレートセンサ3よって検出された自車両のヨーレートが、そのヨーレート検出時と同等の操舵入力又は制動入力を行った状態でのECU10に予め記憶された基準ヨーレートと比較され、ヨーレートの応答特性が悪いか否か判定される(ステップ#41)。ヨーレートの応答特性が悪く、検出されたヨーレートが基準ヨーレートと大きく異なると判定される場合(具体的な原因としては、例えば車両総重量の増加、タイヤ又はサスペンションの劣化等が考えられる。)には(ステップ#41・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0053】
ヨーレートの応答特性が良いと判定される場合には(ステップ#41・No)、圧力センサ8によって検出された各車輪に装着されたタイヤの空気圧が、その空気圧検出時と同等の操舵入力又は制動入力を行った状態でのECU10に予め記憶された基準空気圧と比較され、タイヤの空気圧の応答特性が悪いか否か判定される(ステップ#42)。タイヤの空気圧の応答特性が悪く、検出された空気圧が基準空気圧と大きく異なると判定される場合には(ステップ#42・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0054】
タイヤの空気圧の応答特性が良いと判定される場合には(ステップ#43・No)、横加速度センサ6によって検出された自車両の横加速度が、その横加速度検出時と同等の操舵入力又は制動入力を行った状態でのECU10に予め記憶された基準加速度と比較され、自車両の横加速度の応答特性が悪いか否か判定される(ステップ#43)。自車両の横加速度の応答特性が悪く、検出された横加速度が基準加速度と大きく異なると判定される場合には(ステップ#43・Yes)、一定の条件のもと(ステップ#20)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化される。
【0055】
上記いずれの条件も満たさない場合には(ステップ#43・No)、ブレーキ15の自動作動開始時期が早期化されずに、一定の条件のもと(ステップ#17)、ブレーキ15が自動作動する(ステップ#18)。
【0056】
[自動ブレーキ作動手段によるブレーキの作動状況]
図7に基づいて、早期化されたブレーキ15の自動作動の状況について説明する。図7(イ)は、制動回避距離における自車両と障害物との位置関係の概略図を示し、図7(ニ)は、第1操舵回避距離における自車両と障害物との位置関係の概略図を示し、図7(ハ)は、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化した第2操舵回避距離における自車両と障害物の位置関係の概略図を示す。なお、図7(ロ)は、後述する発明の実施の第1別形態における自車両と障害物の位置関係を示す概略図である。
【0057】
図7(ニ)に示すように、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化していない第1操舵回避距離でブレーキ15を自動作動させた場合、すなわち車速等が速い状態(走行状態が不安定と判断される状態)又はヨーレート等の応答特性が悪い状態(走行状態の応答特性が悪いと判定される状態)で操舵回避を行ってブレーキ15を自動作動させても、ブレーキ15の自動作動が遅く障害物との衝突を回避することが難しかった(又は、衝突に対する被害軽減効果があまりなかった)。しかし、図7(ハ)に示すように、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化することにより、車速等が速い状態又はヨーレート等の応答特性が悪い状態で操舵回避を行っても、障害物との衝突を回避できる(又は、衝突に対する被害軽減効果を大きくすることができる)。
【0058】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、図3に示した第2操舵回避距離に基づいて、自動ブレーキ作動手段を図4〜図6のフローチャートのように構成した例を示したが、図8に示す第2及び第3操舵回避距離に基づいて、図4に代えて図9のフローチャートを採用して、自動ブレーキ作動手段を構成してもよい。
【0059】
図8に示すように、操舵優位領域でこの実施例での自動ブレーキ作動手段によって第2操舵回避距離よりも長い第3操舵回避距離が設定されている。なお、第3操舵回避距離(図8中の1点鎖線)は、相対速度の増加に伴って略直線的に増加するように設定されている。
【0060】
図9に示すように、図1に示した検出機器類によって検出されてECU10に入力されたデータが常時監視されている(ステップ#51)。前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様に、車間距離L、相対速度、制動回避距離が算出され(ステップ#52、#53)、相対速度がV0以上か否か判断される(ステップ#54)。
【0061】
相対速度がV0以上の場合には(ステップ#54・Yes)、ブレーキセンサ9の検出結果に基づいて運転者が制動回避を行っているか否か判断され(ステップ#55)、運転者が制動回避を行っていると判断される場合には(ステップ#55・Yes)、第3操舵回避距離が算出される(ステップ#62)。
【0062】
次に、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第3操舵回避距離以下か否か判断され(ステップ#63)、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動回避距離以下で、かつ第3操舵回避距離以下の場合、すなわち図8の1点鎖線で示す距離より車間距離Lが短くなった場合には(ステップ#63・Yes)、ブレーキ15が自動作動する。一方、レーダ2によって検出した車間距離Lが制動距離未満又は第1操舵回避距離未満である場合、すなわち図8の1点鎖線で示す距離より車間距離Lが長い場合には(ステップ#63・No)、ブレーキ15が自動作動しない。
【0063】
運転者が制動回避を行っていないと判断される場合には(ステップ#55・No)、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様に、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するか否かが判断されて(ステップ#56)、一定の条件のもとブレーキ15が自動作動する(ステップ#57〜#59)。
【0064】
このように、第3操舵回避距離を別途設定して運転者が制動回避を行っている場合には、第2操舵回避距離よりも更に早期化した第3操舵回避距離でブレーキ15を自動作動させることにより、運転者の制動回避によって横方向への回避に長い距離を必要とする状況になった場合(運転者の制動回避によって進行方向への制動力が働いて横方向に回避し難くなった場合)においても、自動ブレーキ作動手段によって適切なタイミングでブレーキ15を自動作動させることができる(図7(ロ)参照)。
【0065】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、操舵優位領域において第2又は第3操舵回避距離を設定して、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するように自動ブレーキ作動手段を構成した例を示したが、図10に示すように、制動優位領域において第2制動回避距離を設定して、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化するように自動ブレーキ作動手段を構成してもよい。
【0066】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、第2及び第3操舵回避距離が相対速度の増加に伴って略直線的に増加するように、第2及び第3操舵回避距離を設定した例を示したが、図11〜図13に示すような第2及び第3操舵回避距離を設定してもよい。なお、図11〜図13においては第2操舵回避距離を例に示すが、第3操舵回避距離についても同様である。
【0067】
図11に示すように、操舵優位領域の相対速度が小さい領域では制動回避距離の曲線に沿った曲線となり、操舵回避距離の相対速度が大きい領域では第1操舵回避距離の直線と平行な直線となるように第2又は第3操舵回避距離を設定してもよい。
【0068】
また、図12に示すように、相対速度の増加に伴って、屈曲した直線状に増加するように第2及び第3操舵回避距離を設定してもよく、図13に示すように、相対速度の増加に伴って、徐々に早期化の度合いが大きくなるように第2及び第3操舵回避距離を設定してもよい。
【0069】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第3別形態]において示した走行状態検出手段及び入力検出手段はその一例として示したものであり、操舵回避すると自車両が不安定になるか否か判断する走行状態検出手段、及び応答特性が基準特性に対して悪いか否か判定するための走行状態検出手段として異なるセンサ等の検出機器(図示せず)を採用してもよく、入力検出手段として運転者の操舵入力又は制動入力を検出できる異なるセンサ等の検出機器(図示せず)を採用してもよい。
【0070】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、操舵角センサ4及びブレーキセンサ9の検出結果に対するヨーレートセンサ3等の応答特性が、基準特性に対して悪いか否か判定し、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化した例を示したが、例えば部品交換や修理等によって走行状態の応答特性が改善された場合には、ブレーキ15の自動作動開始時期を遅くするように自動ブレーキ作動手段を構成してもよい。この場合、改善された応答特性の分だけブレーキ15の自動作動開始時期を遅くするように構成してもよい。
【0071】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、第2又は第3操舵回避距離を設定してブレーキ15の自動作動開始時期を早期化した例を示したが、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化する基準としては、異なる基準であってもよく、例えば距離ではなく予測した時間に基づいて早期化するように自動ブレーキ作動手段を構成してもよい。また、ブレーキ15の自動作動開始時期を早期化する度合いは、上記判断(予測)される自車両の不安定の度合いや、上記応答特性の悪さの程度に応じて変更する(大きく又は小さく変更する)ように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】車両のブロック図
【図2】制動回避距離と第1操舵回避距離との関係を示すグラフ
【図3】第2操舵回避距離を説明するグラフ
【図4】自動ブレーキ作動手段のフローチャート
【図5】走行状態に基づいた早期化判断のフローチャート
【図6】走行状態の応答特性に基づいた早期化判断のフローチャート
【図7】自動ブレーキ作動手段によるブレーキの作動状況を示す概略図
【図8】発明の実施の第1別形態における第3操舵回避距離を説明するグラフ
【図9】発明の実施の第1別形態における自動ブレーキ作動手段のフローチャート
【図10】発明の実施の第2別形態における第2制動回避距離を説明するグラフ
【図11】発明の実施の第2別形態における第2操舵回避距離を説明するグラフ
【図12】発明の実施の第2別形態における第2操舵回避距離を説明するグラフ
【図13】発明の実施の第2別形態における第2操舵回避距離を説明するグラフ
【符号の説明】
【0073】
3 ヨーレートセンサ(走行状態検出手段)
4 操舵角センサ(入力検出手段、走行状態検出手段)
5 車速センサ(走行状態検出手段)
6 横加速度センサ(走行状態検出手段)
7 路面センサ(走行状態検出手段)
8 圧力センサ(走行状態検出手段)
9 ブレーキセンサ(入力検出手段)
15 ブレーキ
L 車間距離(実距離)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備え、
前記走行状態検出手段の検出結果に基づいて、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になると判断される場合には、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある自動制動装置。
【請求項2】
自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、運転者の操舵入力又は制動入力を検出する入力検出手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備え、
前記入力検出手段により検出した運転者の操舵入力又は制動入力に対する前記走行状態検出手段により検出した自車両の走行状態の応答特性を判定し、この判定結果に基づき前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある自動制動装置。
【請求項3】
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段を備え、
前記操舵回避距離が前記制動回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において、前記制動回避距離より短くかつ前記操舵回避距離より長い所定距離よりも、自車両と障害物との実距離が短くなったときに、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある請求項1記載の自動制動装置。
【請求項4】
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段を備え、
前記操舵回避距離が前記制動回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において、前記制動回避距離より短くかつ前記操舵回避距離より長い所定距離よりも、自車両と障害物との実距離が短くなったときに、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある請求項2記載の自動制動装置。
【請求項1】
自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備え、
前記走行状態検出手段の検出結果に基づいて、操舵により障害物への衝突を回避すると自車両が不安定になると判断される場合には、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある自動制動装置。
【請求項2】
自車両の障害物への衝突を操舵により回避可能な障害物までの操舵回避距離を算出する操舵回避距離算出手段と、自車両と障害物との実距離が前記操舵回避距離より短くなるとブレーキを自動作動させる自動ブレーキ作動手段と、運転者の操舵入力又は制動入力を検出する入力検出手段と、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備え、
前記入力検出手段により検出した運転者の操舵入力又は制動入力に対する前記走行状態検出手段により検出した自車両の走行状態の応答特性を判定し、この判定結果に基づき前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある自動制動装置。
【請求項3】
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段を備え、
前記操舵回避距離が前記制動回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において、前記制動回避距離より短くかつ前記操舵回避距離より長い所定距離よりも、自車両と障害物との実距離が短くなったときに、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を早めるように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある請求項1記載の自動制動装置。
【請求項4】
自車両の障害物への衝突を制動により回避可能な障害物までの制動回避距離を算出する制動回避距離算出手段を備え、
前記操舵回避距離が前記制動回避距離より短くなる自車両と障害物との相対速度において、前記制動回避距離より短くかつ前記操舵回避距離より長い所定距離よりも、自車両と障害物との実距離が短くなったときに、前記自動ブレーキ作動手段によるブレーキの自動作動開始時期を変更するように、前記自動ブレーキ作動手段を構成してある請求項2記載の自動制動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−162457(P2008−162457A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355290(P2006−355290)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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