説明

自動原稿搬送装置、原稿読取装置及びイメージスキャナ装置

【課題】Z折り状態でセットされた原稿を自動的に伸ばして原稿読取位置へ供給可能な、簡素でコンパクトな構成の自動原稿送り装置を提供する。
【解決手段】イメージスキャナ装置が備えるオートドキュメントフィーダ107は、原稿3を繰り込むためのピックアップローラ32と、このピックアップローラ32により繰り込まれた原稿3を分離する分離部28と、前記ピックアップローラ32より原稿3の搬送方向末尾側に配置される折り目伸ばし部材81と、を備える。前記折り目伸ばし部材81は、Z折りされた原稿3の折畳み部分の内部に挿入可能な挿入爪82と、この挿入爪82の上方に配置され、原稿搬送方向に凹となるように形成されたガイド凹部83と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿読取装置に備えられる自動原稿搬送装置に関する。詳細には、Z折りの状態でセットされた原稿を自動的に伸ばしながら搬送する自動原稿搬送装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、例えば長方形にカットされたシートを横長に広げた状態から、これを長手方向の1/2の位置にて2つに折り返し、さらにこの折り返しにより、上になったシート部分を該シート部分の前記長手方向の1/2の位置にて外側に折り返した原稿をZ折り原稿と称し、このようなZ折り原稿が通常の原稿に混在する場合があることを指摘する。
【0003】
そして、特許文献1は、上記のZ折り原稿を自動的に伸ばして搬送するために、以下の構成を提案する。即ち、ターンローラと切換ガイドとを備えるとともに、この切換ガイドは、当初はZ折り原稿の先頭側をターンローラに沿って湾曲状に搬送するようにガイドする。一方、Z折り原稿の折曲げ部が進入する前に切換ガイドがソレノイドにより切り換えられて、当該折曲げ部を折り伸ばしスペースへガイドすることにより、原稿の折り目を伸ばすように構成されている。
【特許文献1】特開平5−116795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の構成は、Z折り原稿の折り目を伸ばすために大きく湾曲された原稿搬送路を装置内に設置する必要があり、装置のコンパクト化という面で改善の余地が残されていた。また、装置の内部で原稿の折り伸ばしを行うため、装置内部の構成が複雑になり、内部で原稿が詰まった際のメンテナンスも困難であった。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0006】
本発明の観点によれば、以下の構成の自動原稿搬送装置が提供される。即ち、原稿を繰り込むためのピックアップローラと、このピックアップローラにより繰り込まれた原稿を分離する分離部と、前記ピックアップローラより原稿の搬送方向末尾側に配置される折り目伸ばし部材と、を備える。前記折り目伸ばし部材は、Z折りされた原稿の折畳み部分の内部に挿入可能な挿入爪と、この挿入爪の上方に配置され、原稿搬送方向に凹となるように形成されたガイド凹部と、を備える。
【0007】
これにより、原稿を搬送するのに応じて前記挿入爪をZ折り原稿の折畳み部の内部に挿入し、この挿入爪より上側の部分をガイド凹部により受け止めつつ案内することで、当該折畳み部を反転及び展開させることができる。従って、簡素且つコンパクトな構成で、Z折り原稿を自動的に伸ばして下流側へ供給することができる。
【0008】
前記の自動原稿搬送装置においては、前記ガイド凹部は曲面状のガイド面を有していることが好ましい。
【0009】
これにより、ガイド凹部の原稿案内作用が円滑に行われるので、Z折り原稿の展開を確実に行うことができる。
【0010】
前記の自動原稿搬送装置においては、前記ガイド面は円弧面状に構成されていることが好ましい。
【0011】
これにより、ガイド凹部の形状が単純になるので、製造コストを低減できる。
【0012】
前記の自動原稿搬送装置においては、前記折り目伸ばし部材は、原稿に前記挿入爪を接触させる折り目伸ばし位置と、原稿から前記挿入爪を離間させる退避位置との間で移動可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
これにより、折り目伸ばし部材を退避位置とすることで、原稿を自動原稿搬送装置にセットしたり取り外したりする作業や、ジャム原稿の除去などのメンテナンス作業時に折り目伸ばし部材が邪魔にならず、作業性を向上させることができる。
【0014】
前記の自動原稿搬送装置においては、前記分離部は分離ローラを備え、前記折り目伸ばし部材は、前記分離ローラの軸心まわりに回動自在に支持されていることが好ましい。
【0015】
これにより、折り目伸ばし部材を折り目伸ばし位置と退避位置との間で移動可能とする簡素な構成を実現できる。
【0016】
前記の自動原稿搬送装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ピックアップローラは、原稿に接触する繰込位置と、原稿から離間する待機位置との間で移動可能に構成されている。前記折り目伸ばし部材は、前記ピックアップローラの前記繰込位置と待機位置との間の移動に連動して、前記折り目伸ばし位置と退避位置との間で移動する。
【0017】
これにより、ピックアップローラの原稿の繰込みと折り目伸ばし部材によるZ折り原稿の展開とを合理的に連動させることができ、構成を簡素化することができる。
【0018】
また、本発明の他の観点によれば、前記の自動原稿搬送装置を備える原稿読取装置及びイメージスキャナ装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るイメージスキャナ装置を示す正面断面図、図2はオートドキュメントフィーダの分離部及びピックアップローラの構成を詳細に示す要部斜視図、図3はZ折り原稿を説明する斜視図である。
【0020】
図1に示すように、画像読取装置としてのイメージスキャナ装置101は、読取原稿を載置するプラテンガラスが配設された原稿台102と、この読取原稿を前記プラテンガラス上に押圧して固定する原稿台カバー103と、原稿の読取開始等を指示するための図略の操作パネルと、を備えている。
【0021】
前記原稿台カバー103には、オートドキュメントフィーダ(自動原稿搬送装置)107が配設されている。このオートドキュメントフィーダ107は、原稿台カバー103の上部に設けられた原稿トレイ11と、この原稿トレイの下方に設けられた排紙トレイ12と、を備える。
【0022】
前記原稿台カバー103の内部には、原稿トレイ11と排紙トレイ12とを繋ぐ湾曲状の原稿搬送経路13が構成されている。そして、この前記原稿搬送経路13の途中部に原稿読取位置P1,P2が設定されている。この構成で、原稿トレイ11に重ねてセットされた原稿3は、1枚ずつ分離されて湾曲状の前記原稿搬送経路13に沿って搬送され、原稿読取位置P1,P2を通過した後、排紙トレイ12へ排出される。
【0023】
前記原稿台102の内部にはスキャナユニット(原稿読取部)21が備えられる。このスキャナユニット21は、前記原稿読取位置P1に対して光を照射する光源22と、原稿3からの反射光を反射させる反射ミラー23,24,25と、反射光を収束させる集光レンズ26と、この収束光を電気信号に変換して出力する電荷結合素子(CCD)27と、を備えている。
【0024】
この構成で、原稿搬送経路13を搬送される原稿3は原稿読取位置P1において走査され、この原稿3からの反射光はCCD27へ導かれて結像する。この結果、CCD27は読取内容に応じた電気信号を出力することができる。この信号及び後述の密着型イメージセンサ67の信号は、適宜の変換処理後に、当該イメージスキャナ装置101に接続されるパーソナルコンピュータ等の上位装置に通信ケーブルを介して送信される。
【0025】
次に、前記原稿搬送経路13の詳細な構成を説明する。図1に示すように、原稿トレイ11から原稿搬送経路13に原稿3が供給される箇所では、分離ローラ31及びピックアップローラ32が備えられている。分離ローラ31の軸心まわりに揺動自在に揺動アーム33が取り付けられ、この揺動アーム33の先端側にピックアップローラ32が支持されている。なお、分離ローラ31、ピックアップローラ32及び揺動アーム33を駆動するための構成は後述する。
【0026】
前記分離ローラ31と対向する位置に分離パッド34が設置されて、この分離パッド34はスプリングによって前記分離ローラ31の周面に押し付けられている。これら分離ローラ31と分離パッド34により分離部28が構成されており、原稿3を分離ローラ31と分離パッド34との間でニップした状態で分離ローラ31を駆動することで、原稿3を1枚ずつ分離することができる。
【0027】
前記分離ローラ31の下流には、複数の搬送ローラ61,62,63,64が設けられる。これにより、前記分離ローラ31の駆動によって下流側へ搬送された原稿3は、搬送ローラ61,62,63によりニップされて更に搬送され、原稿読取位置P1を通過する。そしてこのとき、原稿3の情報が前記スキャナユニット21によって読み取られる。
【0028】
原稿3は更に搬送ローラ64の駆動によって搬送され、原稿読取位置P2を通過する。この原稿読取位置P2には密着型イメージセンサ67が備えられており、この密着型イメージセンサ67とプラテンローラ65との間で原稿3をニップしながら、当該原稿3の裏面側の内容を走査できるようになっている。2つの原稿読取位置P1,P2で表裏両面の内容を読み取られた原稿3は、排紙ローラ70によって搬送され、排紙トレイ12上に排出される。
【0029】
次に、前記分離ローラ31及びピックアップローラ32の周辺の構成について、図2の要部斜視図を参照して詳細に説明する。
【0030】
図2に示すように、前記分離ローラ31と同心させて駆動軸41が配置され、この駆動軸41と分離ローラ31との間には、第1クラッチ51が介在されている。この第1クラッチ51は一方向クラッチとして構成されており、駆動軸41が図2の矢印方向に回転するときはそれを分離ローラ31に伝達する一方、駆動軸41が反対方向に回転するとき、および分離ローラ31が駆動軸41よりも高速で回転するとき(駆動軸41の停止時を含む)は自動的に切断されて、駆動軸41が分離ローラ31に対して空回りするように構成されている。
【0031】
前記揺動アーム33は、分離ローラ31を挟むように一対で配置されたアーム体35,35をビーム部36により連結した構成となっている。それぞれのアーム体35の基部は前記駆動軸41に支持されるとともに、この揺動アーム33の先端部にローラ軸42が支持される。そして、このローラ軸42に前記ピックアップローラ32が回転自在に支持されている。ピックアップローラ32は、2つのアーム体35,35に挟まれるようにして配置される。
【0032】
また、前記分離ローラ31の一側の位置において、前記駆動軸41には駆動プーリ43が一体的に固定される。一方、ピックアップローラ32の一側の位置において、前記ローラ軸42には従動プーリ44が回転自在に支持されている。そして、駆動プーリ43と従動プーリ44との間には無端状の伝動ベルト45が張架される。
【0033】
前記従動プーリ44とピックアップローラ32との間には、第2クラッチ52が介在されている。この第2クラッチ52も前記第1クラッチ51と同様に一方向クラッチとして構成されており、従動プーリ44が図2の矢印方向に回転するときはそれをピックアップローラ32に伝達する一方、従動プーリ44が反対方向に回転するとき、およびピックアップローラ32が、従動プーリ44よりも高速で回転するとき(従動プーリ44の停止時を含む)は自動的に切断されて、従動プーリ44がピックアップローラ32に対して空回りするように構成されている。
【0034】
前記従動プーリ44と一側のアーム体35との間には、トルクリミッタ53が配置されている。このトルクリミッタ53は、従動プーリ44が図2の矢印方向に回転しているときは、そのトルクをアーム体35に伝達して揺動アーム33を下方へ回動させる一方、当該トルクが所定の値を上回ると、従動プーリ44がアーム体35に対して空回りするように構成されている。
【0035】
以上の構成で、駆動軸41が図略の駆動部の電動モータにより図2の矢印方向に回転すると、当該回転は第1クラッチ51により分離ローラ31に伝達され、分離ローラ31が回転する。また、駆動プーリ43が駆動軸41と一体的に回転するので、この回転が伝動ベルト45を介して従動プーリ44に伝達され、従動プーリ44が図2の矢印方向に回転する。従動プーリ44の回転は第2クラッチ52によりピックアップローラ32に伝達され、ピックアップローラ32が回転する。更に、従動プーリ44の回転はトルクリミッタ53を介してアーム体35に伝達されるので、揺動アーム33は図1の鎖線で示す位置(待機位置)から下方への回動を開始する。
【0036】
ピックアップローラ32は前記揺動アーム33の下方回動に伴って下降し、原稿トレイ11上に重ねてセットされている原稿3のうち、最上層の原稿3に接触する(図1の実線で示す繰込位置)。これにより、当該原稿3はピックアップローラ32により繰り込まれ、分離ローラ31と分離パッド34との間のニップ部に送られる。なお、ピックアップローラ32が原稿3に接触した時点で揺動アーム33は反力を受けるので、前記トルクリミッタ53は従動プーリ44の回転をアーム体35へ伝達しなくなり、揺動アーム33は下方への回動を停止する。
【0037】
原稿3は、分離ローラ31と分離パッド34とのニップ部で1枚ずつ分離された後、下流へ搬送されて搬送ローラ61(図1)に受け渡される。ここで、回転する搬送ローラ61の周面速度は前記分離ローラ31の周面速度よりも大きくなるように設定されているため、搬送ローラ61で搬送される原稿3に分離ローラ31が連れ回って、当該分離ローラ31の回転速度が駆動軸41の回転速度を上回る。この結果、前記第1クラッチ51が切断され、分離ローラ31は駆動軸41に対して空回りする。
【0038】
その後、搬送ローラ61によって送られる原稿3が分離ローラ31と分離パッド34とのニップ部を通過すると、分離ローラ31は原稿3に連れ回らなくなるので、再び第1クラッチ51が接続される。これにより、分離ローラ31は駆動軸41によって再び駆動され、ピックアップローラ32で繰り込まれた次の原稿3の搬送を開始する。
【0039】
次に、原稿トレイ11に原稿3がなくなったことが図略のセンサによって検出されると、図示しない駆動部の電動モータが駆動軸41を図2の矢印とは逆方向に駆動する。すると、この駆動軸41の逆回転が駆動プーリ43及び伝動ベルト45を介して従動プーリ44に伝達され、この従動プーリ44の逆回転がトルクリミッタ53を介してアーム体35に伝達される。この結果、揺動アーム33が上方向に回動して、ピックアップローラ32が図1の鎖線の位置(待機位置)まで上昇する。なお、この駆動軸41の逆回転時は、第1クラッチ51及び第2クラッチ52が切断されるので、分離ローラ31及びピックアップローラ32が逆方向に回転することはない。
【0040】
次に、本実施形態のイメージスキャナ装置101の原稿トレイ11にセットすることが可能なZ折り原稿について、図3の斜視図を参照して詳細に説明する。
【0041】
即ち、図3に示すように、このZ折り原稿3は、長方形の原稿を長手方向にほぼ2等分するように2つに折り畳むとともに、この折り畳まれた一側を、更にほぼ2等分するように外側へ折り畳んで構成される。この結果、Z折り原稿3は、元の原稿の1/2の大きさの底部4と、この底部4から第1の折り目7を境に上側へ折り返される1/4の大きさの第1折返し部5と、当該第1折返し部5から更に第2の折り目8を境に上側へ折り返される1/4の大きさの第2折返し部6と、により構成される。
【0042】
例えば、日本工業規格のA3サイズの原稿を図3のようにZ折りすると、1/2の大きさ、即ちA4サイズとなる。このため、他のA4サイズの原稿等と大きさを揃えて保管できるので、ファイリングに便宜であり、また、コンパクトなスペースに保管できる。また同様に、日本工業規格のB4サイズの原稿をZ折りすると、B5サイズの原稿等と大きさを揃えて保管することが可能になる。
【0043】
次に、上記のZ折り原稿3を展開して伸ばすための折り目伸ばし部材81の構成を説明する。この折り目伸ばし部材81は、図1等に示すように、前記ピックアップローラ32より原稿3の搬送方向末尾側に配置される。
【0044】
図2に示すように、この折り目伸ばし部材81はブロック状に構成されており、原稿搬送方向末尾側に向けて尖るように形成された挿入爪82を備えている。また、折り目伸ばし部材81は、原稿搬送方向に凹となるように形成されたガイド凹部83を、挿入爪82の上方に形成している。このガイド凹部83は円弧面状(曲面状)のガイド面84を備えている。
【0045】
前記折り目伸ばし部材81には、一対の回動アーム85,85の先端部が連結されている。これら回動アーム85,85の基部は、それぞれ前記駆動軸41に回動自在に支持されている。この結果、前記折り目伸ばし部材81は、前記分離ローラ31の軸心まわりの円弧軌跡を描いて上下動可能となっている。更に、前記折り目伸ばし部材81には図略の付勢バネが連結されており、折り目伸ばし部材81を下方に向けて付勢している。
【0046】
前記回動アーム85,85は、図2に示すように、ピックアップローラ32を支持する前記アーム体35,35の外側に配置されている。そして、一側のアーム体35には押動突起86が凸状に備えられて、この押動突起86によって、一側の回動アーム85の下面を押動できるように構成されている。
【0047】
従って、ピックアップローラ32を上昇させるべく揺動アーム33を上方へ回動させるときは、前記押動突起86によって回動アーム85が上方へ押動され、折り目伸ばし部材81も上昇する。一方、揺動アーム33を下方へ回動させるときは、押動突起86が回動アーム85を押動しなくなるので、折り目伸ばし部材81は前記付勢バネの付勢力によって下降することになる。
【0048】
この構成で、先ず、オペレータがZ折り原稿3を複数枚重ねて原稿トレイ11にセットする。なおこのとき、それぞれのZ折り原稿3は、前記底部4が下側になるように原稿トレイ11に載置される。そしてオペレータは図略の操作パネルによりスキャン開始を指示し、これによりイメージスキャナ装置101は原稿読取を開始する。
【0049】
このスキャン開始直後の様子が図4(a)に示され、この図4(a)に示すように、スキャンが開始されると揺動アーム33とともにピックアップローラ32が前述のとおり待機位置から繰込位置まで下降して、Z折り原稿3の底部4の先頭側に接触しつつ回転して当該原稿3を繰り込む。また、揺動アーム33の下方回動に伴って、前記折り目伸ばし部材81も退避位置(図1の鎖線)から図略の付勢バネによって下降し、前記挿入爪82の先端を原稿3の底部4の上面に接触させる位置(折り目伸ばし位置)まで移動する。
【0050】
そして、繰り込まれた原稿3の先頭部が分離ローラ31と分離パッド34との間でニップされ、この状態で分離ローラ31が回転することで、原稿3が1枚ずつ分離され、下流に向けて搬送される。その後、図4(b)に示すように、原稿3の折畳み部分の内部(詳細には、底部4と第1折返し部5との間)に挿入爪82が挿入され、第1折返し部5と第2折返し部6とが挿入爪82によってすくい上げられる。そして、第1折返し部5と第2折返し部6との境に位置する第2の折り目8が前記ガイド凹部83に入り込み、ガイド面84によって受け止められる。
【0051】
この図4(b)の状態から原稿3を前記搬送ローラ61(図1)等で更に搬送すると、図4(c)に示すように、前記ガイド凹部83によって受け止められた状態の第1折返し部5が上方に凸となるように湾曲し、第2折返し部6との間に隙間が形成される。そして、原稿3を更に搬送するに従って前記第1折返し部5の湾曲の度合いが強まっていき、ついには図4(d)に示すように、第1折返し部5が挿入爪82の下側に引き込まれるようにして反転し、これによって第1折返し部5と第2折返し部6(折畳み部分)が展開される。以上により、Z折り原稿3を自動的に展開して原稿搬送経路13へ供給し、原稿3を伸ばした状態で画像を読み取ることができる。
【0052】
以上に示すように、本実施形態のイメージスキャナ装置101が備えるオートドキュメントフィーダ107は、原稿3を繰り込むためのピックアップローラ32と、このピックアップローラ32により繰り込まれた原稿3を分離する分離部28と、前記ピックアップローラ32より原稿3の搬送方向末尾側に配置される折り目伸ばし部材81と、を備える。そして、この折り目伸ばし部材81は、Z折りされた原稿3の折畳み部分の内部に図4(b)のように挿入可能な挿入爪82と、この挿入爪82の上方に配置され、原稿搬送方向に凹となるように形成されたガイド凹部83と、を備える。
【0053】
これにより、原稿3を搬送するのに応じて前記挿入爪82をZ折り原稿3の折畳み部の内部に挿入し、この挿入爪82より上側の部分(第1折返し部5及び第2折返し部6)をガイド凹部83により受け止めつつ案内することで、図4のように当該折畳み部を反転及び展開させることができる。従って、簡素且つコンパクトな構成で、Z折り原稿3を自動的に伸ばして下流側へ供給することができる。特に、折り目伸ばし部材81を特に駆動したりすることなくZ折り原稿3を伸ばして展開できるので、構成が簡単になって製造コストを低減でき、また、メンテナンス作業も容易になる。
【0054】
また、本実施形態の前記オートドキュメントフィーダ107においては、前記ガイド凹部83は円弧面状(曲面状)のガイド面84を有している。
【0055】
これにより、ガイド凹部83の原稿案内作用が円滑に行われるので、Z折り原稿3の展開を一層確実に行うことができる。また、ガイド凹部83の形状が単純になるので、製造コストを低減できる。
【0056】
また、本実施形態のオートドキュメントフィーダ107においては、前記折り目伸ばし部材81は、原稿3に前記挿入爪82を接触させる折り目伸ばし位置(図1の実線)と、原稿3から前記挿入爪82を離間させる退避位置(図1の鎖線)との間で上下方向に移動可能に構成されている。
【0057】
これにより、折り目伸ばし部材81を上昇させて退避位置とすることで、原稿3を原稿トレイ11にセットしたり取り外したりする作業や、ジャム原稿の除去等のメンテナンス作業時に折り目伸ばし部材81が邪魔にならず、作業性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態のオートドキュメントフィーダ107においては、前記分離部28は分離ローラ31を備え、前記折り目伸ばし部材81は、前記分離ローラ31の軸心まわりに回動自在となるように前記回動アーム85,85を介して支持されている。
【0059】
これにより、折り目伸ばし部材81を折り目伸ばし位置と退避位置との間で移動可能とする簡素な構成を実現できる。
【0060】
また、前記ピックアップローラ32は、原稿3に接触する繰込位置(図1の実線)と、原稿3から離間する待機位置(図1の鎖線)との間で移動可能に構成されている。そして、前記折り目伸ばし部材81は、前記ピックアップローラ32の前記繰込位置と待機位置との間の移動に連動して、前記押動突起86と付勢バネにより、前記折り目伸ばし位置と退避位置との間で移動するよう構成されている。
【0061】
これにより、ピックアップローラ32の原稿3の繰り込みと折り目伸ばし部材81によるZ折り原稿3の展開とを合理的に連動させることができ、構成を簡素化することができる。
【0062】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0063】
ガイド凹部83の形状は上記の形状に限られず、例えばV字状等、適宜の形状に変更することができる。また、例えば、折り目伸ばし部材81に2つの凸部を形成し、この2つの凸部の間に形成された相対的な凹部をガイド凹部とすることが考えられる。
【0064】
折り目伸ばし部材81を分離パッド34の軸心まわりに回動自在に支持することに代えて、例えば原稿台カバー103にソレノイドを備え、このソレノイドの可動鉄心を折り目伸ばし部材に連結し、折り目伸ばし部材を折り目伸ばし位置と退避位置との間で上下動させる構成に変更することができる。
【0065】
折り目伸ばし部材81をピックアップローラ32の上下動に連動させる構成としては、前記押動突起86を用いることに代えて、例えば前記折り目伸ばし部材81を前記揺動アーム33に直接取り付ける構成に変更することができる。また、折り目伸ばし部材81と駆動軸41との間に摩擦部材を配置することによって、折り目伸ばし部材81の上下動を実現してもよい。
【0066】
前記分離部28は、分離ローラ31と分離パッド34とで構成される場合に限定されず、例えば分離ローラとリタードローラとを対向配置した構成に変更することができる。また、分離部28より下流側の搬送ローラ61,62,63,64の位置、個数については、事情に応じて任意に変更することができる。
【0067】
上記の構成のオートドキュメントフィーダは、オートドキュメントフィーダ・フラッドベッド兼用の画像読取部に限らず、オートドキュメントフィーダ専用の画像読取部に適用することができる。また、上記のオートドキュメントフィーダは、イメージスキャナ装置に限らず、例えばコピー機、ファクシミリ装置、コピーファクシミリ複合機等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係るイメージスキャナ装置の画像読取部分の構成を示した正面断面図。
【図2】オートドキュメントフィーダの分離部及びピックアップローラの構成を詳細に示す要部斜視図。
【図3】Z折り原稿を説明する斜視図。
【図4】図4(a)は、Z折り原稿の搬送を開始した直後の様子を示す説明図。図4(b)は、折り目伸ばし部材の挿入爪がZ折り原稿の折畳み部分に挿入される様子を示す説明図。図4(c)は、原稿の折返し部がガイド凹部に受け止められつつ湾曲される様子を示す説明図。図4(d)は、原稿の折返し部を展開しつつ下流側へ搬送する様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0069】
3 Z折り原稿
5 第1折返し部(折畳み部分)
6 第2折返し部(折畳み部分)
7 第1の折り目
8 第2の折り目
28 分離部
31 分離ローラ
32 ピックアップローラ
81 折り目伸ばし部材
82 挿入爪
83 ガイド凹部
84 ガイド面
85 回動アーム
86 押動突起
101 イメージスキャナ装置
107 オートドキュメントフィーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を繰り込むためのピックアップローラと、
このピックアップローラにより繰り込まれた原稿を分離する分離部と、
前記ピックアップローラより原稿の搬送方向末尾側に配置される折り目伸ばし部材と、
を備え、
前記折り目伸ばし部材は、
Z折りされた原稿の折畳み部分の内部に挿入可能な挿入爪と、
この挿入爪の上方に配置され、原稿搬送方向に凹となるように形成されたガイド凹部と、
を備えることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記ガイド凹部は曲面状のガイド面を有していることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記ガイド面は円弧面状に構成されていることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記折り目伸ばし部材は、原稿に前記挿入爪を接触させる折り目伸ばし位置と、原稿から前記挿入爪を離間させる退避位置との間で移動可能に構成されていることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記分離部は分離ローラを備え、
前記折り目伸ばし部材は、前記分離ローラの軸心まわりに回動自在に支持されていることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の自動原稿搬送装置であって、
前記ピックアップローラは、原稿に接触する繰込位置と、原稿から離間する待機位置との間で移動可能に構成されており、
前記折り目伸ばし部材は、前記ピックアップローラの前記繰込位置と待機位置との間の移動に連動して、前記折り目伸ばし位置と退避位置との間で移動することを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の自動原稿搬送装置を備える原稿読取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の原稿読取装置としてのイメージスキャナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−174373(P2008−174373A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11201(P2007−11201)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】