説明

自動原稿搬送装置および画像読取装置、並びに画像形成装置

【課題】部品点数が少なく経済的な構成によって、ルーズリーフ原稿であることを判定することができる。
【解決手段】回転する第1搬送ローラによって搬送経路に沿って搬送される原稿を、回転停止状態の第2搬送ローラに突き当ててスキュー補正する際に、第1搬送ローラの搬送トルクFを検出する(ステップS18)。また、搬送される原稿の厚さに基づいて、原稿がルーズリーフ原稿および通常原稿のいずれであるかを判別するための第1搬送ローラの搬送トルクの閾値Nを求めて(ステップS19)、検出された搬送トルクFが、求められた閾値N以下になっていると(ステップS20)、ルーズリーフ原稿と判定する(ステップS21)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置へ原稿を自動搬送するために使用される自動原稿搬送装置、当該自動原稿搬送装置が設けられた画像読取装置、および、そのような画像読取装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置では、原稿画像を読み取るスキャナ装置(スキャナユニット)に原稿を自動搬送する自動原稿搬送装置(ADFユニット)を設けることによって、複数枚の原稿の画像を読み取る際の操作性、読み取り効率等を向上させている。ADFユニットは、通常、原稿給紙トレイ上に載置された原稿が、スキャナユニットに設けられた原稿画像読取位置上を通過するように、原稿を自動搬送する。
【0003】
ADFユニットの搬送経路には、原稿の搬送位置を検出するための複数の原稿センサが、搬送経路に沿って設けられている。原稿センサは、通常、原稿の先端縁および後端縁を光学的に検出するようになっており、原稿センサの検出結果に基づいて、搬送経路の切り替えタイミング、後続の原稿の搬送タイミング等を制御するようになっている。
ADFユニットの搬送経路内に搬送される原稿としては、綴り穴等の貫通穴が設けられていない通常の用紙に限らず、専用のバインダーに綴じることができるように、一方の側縁部に、多数の綴り穴(多穴:ルーズリーフ穴)が列状に並んで形成されたルーズリーフ用紙(ルーズリーフ原稿)の場合もある。
【0004】
ルーズリーフ原稿が、搬送方向の前側(先端側)または後側(後端側)にルーズリーフ穴を位置させた状態で搬送経路を搬送されると、搬送経路に設けられた各原稿センサは、ルーズリーフ穴の先端側の側縁あるいは後端側の側縁を、原稿の後端縁あるいは先端縁として誤検出するおそれがある。原稿センサによってこのような誤検出が生じると、搬送経路の切り替えタイミング、原稿の搬送タイミング等を適切に制御することができずに、搬送経路において紙詰まり等のトラブルが生じるおそれがある。
【0005】
このような原稿センサによる誤検出を防止するために、原稿の先端側または後端側の辺縁(側縁)が検出された場合に、所定時間にわたって原稿センサの出力を無効にすることが提案されている。しかし、このような構成では、貫通穴が形成されていない通常原稿の場合にも、所定時間にわたって原稿センサの出力が無効にされるために、搬送経路の切り替えタイミング、後続の原稿の搬送開始タイミング等が遅れることになり、原稿の搬送効率が低下するおそれがある。
【0006】
このような問題を解決するために、搬送経路を搬送される原稿がルーズリーフ原稿、貫通穴が形成されていない通常原稿のいずれであるか検出して、通常原稿の場合には、所定時間が経過するまで待機することなく後続の原稿の搬送タイミング等を実行することが好ましい。これにより、通常原稿における搬送効率が低下すること等を防止することができる。
【0007】
特許文献1には、搬送される原稿用紙の所定部分に貫通穴が形成されていることを反射型光センサ等によって検知して、貫通穴が形成されていることが検知されると、原稿用紙の搬送を停止する等の制御を行う原稿送り出し装置が開示されている。
また、特許文献2には、発光素子から発せられる光を案内する導光板から、搬送される原稿に光を照射し、原稿に設けられた貫通穴(綴り穴)を通過した光を導光板によってフォトトランジスタに導いて、フォトトランジスタの出力に基づいて、原稿用紙に貫通穴が存在するかことを検出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−85740号公報
【特許文献2】特開2005−204008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された構成では、原稿台に載置された原稿における所定位置に貫通穴が存在する場合には、反射型光センサ等の貫通穴の検出手段によってその貫通穴を検出することができる。しかし、貫通穴が形成された原稿としては、2穴等の個数の少ないパンチ穴が形成されたパンチ穴用紙に限らず、多数のルーズリーフ穴が形成されたルーズリーフ原稿の場合があり、ルーズリーフ穴を検出するためには、パンチ穴とは異なる位置に反射型光センサ等の検出手段を設ける必要がある。従って、ルーズリーフ原稿であることを検出するためには、ADFユニットが大型化し、また経済性が損なわれるという問題がある。
【0010】
特許文献2に開示された構成でも、原稿の搬送経路を挟んで一対の導光板を設ける必要があるために、自動原稿搬送装置が大型化するおそれがある。また、発光素子、導光板、フォトトランジスタが必要であるために部品点数が多くなり、ADFユニットが大型化するとともに経済性が損なわれるおそれもある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ルーズリーフ穴が形成された原稿を、装置が大型化することなく、また、経済性を損なうことなく検出することができる自動原稿搬送装置を提供することにある。本発明の他の目的は、そのような自動原稿搬送装置を備えた画像読取装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る自動原稿搬送装置は、搬送経路内において原稿を搬送する第1搬送ローラと、当該第1搬送ローラの搬送方向下流側に配置された第2搬送ローラと、前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラとの間において原稿がループ状に撓むように、前記第1搬送ローラおよび前記第2搬送ローラの回転をそれぞれ制御する回転制御手段と、前記第1搬送ローラの原稿搬送時におけるトルクを検出するトルク検出手段と、前記トルク検出手段によって検出されるトルクの大きさに基づいて、前記原稿がルーズリーフ原稿であることを判別する原稿判別手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る画像読取装置は、前記自動原稿搬送装置が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る画像形成装置は、前記画像読取装置が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動原稿搬送装置では、搬送される原稿を第1搬送ローラおよび第搬送2ローラによってループ状に撓ませる際の第1搬送ローラによる原稿の搬送トルクに基づいてルーズリーフ原稿と通常原稿とを判別しているために、ルーズリーフ原稿を検出するための特別なセンサ等を必要としない。従って、装置が大型化すること、および、経済性が損なわれることを抑制することができる。
【0014】
好ましくは、前記原稿判別手段は、前記トルク検出手段によって検出された前記トルクが、予め設定された閾値以下の場合にルーズリーフ原稿と判定することを特徴とする。
好ましくは、前記第1搬送ローラへ搬送される原稿の厚さを検出する原稿厚さ検出手段をさらに備え、前記原稿判別手段は、当該原稿厚さ検出手段にて検出される原稿の厚さに応じて予め設定された前記閾値に基づいて前記原稿の判別を行うことを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記トルク検出手段は、前記第1搬送ローラを駆動するモータに供給されるモータ電流に基づいて前記トルクを検出することを特徴とする。
好ましくは、前記回転制御手段は、前記第2搬送ローラを停止させた状態で前記第1搬送ローラを回転させることにより、前記第1搬送ローラによって搬送される原稿の先端部を、前記第2搬送ローラに突き当てて、当該原稿の先端部をループ状に撓ませることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記トルク検出手段は、前記原稿の先端部が前記第2搬送ローラに突き当てられてから所定時間が経過した時点における前記トルクを検出するか、または、前記原稿が前記第2搬送ローラに突き当てられてから、所定の時間間隔で前記トルクを検出することを特徴とする。
好ましくは、前記回転制御手段は、前記第1搬送ローラおよび前記第2搬送ローラのそれぞれを回転させて原稿を搬送させた状態で、当該原稿の後端部が、前記第1搬送ローラを通過する前に前記第2搬送ローラを停止させることによって、当該原稿の後端部をループ状に撓ませることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記トルク検出手段は、前記第2搬送ローラが停止されてから所定時間が経過した時点における前記トルクを検出するか、または、前記第2搬送ローラが停止されてから、所定の時間間隔で前記トルクを検出することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るADFユニットが設けられた画像読取装置を備える画像形成装置の一例であるMFPを示す斜視図である。
【図2】そのMFPの概略構成を示す正面側から見た模式図である。
【図3】ADFユニットに設けられた原稿厚さセンサを説明するための模式図である。
【図4】ADFユニットに設けられた第1搬送ローラおよび搬送部モータの構成を説明するための模式図である。
【図5】画像読取装置における制御系の主要部の構成を示すブロック図である。
【図6】原稿の厚さtと原稿厚さセンサから出力される電圧(mV)との関係を示すグラフである。
【図7】ADFユニットに設けられた搬送部モータに流れるモータ電流(mA)と、第1搬送ローラにおける原稿搬送時の搬送トルクF(mNm)との関係を示すグラフである。
【図8】(a)は、第1搬送ローラと第2搬送ローラとによって通常原稿がスキュー補正された状態を説明するための模式図、(b)は、同じくルーズリーフ原稿がスキュー補正された状態を説明するための模式図、(c)は、後端部にループが形成されたルーズリーフ原稿の後端部を第1搬送ローラと第2搬送ローラとの間において撓ませた状態を示す模式図である。
【図9】(a)は、通常原稿をスキュー補正する場合の搬送部モータのモータ電流(mA)の変化を示すグラフ、(b)は、ルーズリーフ原稿をスキュー補正する場合の搬送部モータのモータ電流(mA)の変化を示すグラフである。
【図10】(a)は、原稿の厚さtが所定範囲にある場合における原稿の厚さtと搬送トルクとの関係の一例を示す表、(b)は、原稿の厚さtに対して閾値Nを設定した場合の厚さtと閾値Nとの関係を示す表、(c)は、原稿の厚さtと搬送トルクFとの関係を示すグラフである。
【図11】ADF−CPUにおいて実行されるルーズリーフ原稿の判別制御における処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態における画像読取装置のADF−CPUで実行されるルーズリーフ原稿の判別制御における処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態において、スキュー補正される原稿がルーズリーフ原稿であることを判定する場合のモータ電流(mA)の変化を示すグラフである。
【図14】本発明の第3実施形態において、ADF−CPUで実行されるルーズリーフ原稿の判別制御における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態1]
<画像形成装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る画像読取装置が設けられた画像形成装置の一例を示す斜視図である。この画像形成装置は、複写機、スキャナ、プリンタ、ファックスなどの機能を有する複合機(MFP:Multiple Function Peripheral)であり、ネットワークを介して、端末装置等とのデータの送受信が可能になっている。図1に示すように、このMFPは、記録用紙等の記録シート上にトナー画像を形成する画像形成装置本体Aと、画像形成装置本体A上に設けられた画像読取装置Bとを備えている。画像読取装置Bは、原稿画像を読み取るスキャナユニット(スキャナ装置)10と、スキャナユニット10上に設けられたADFユニット(自動原稿搬送装置)20とを有している。
【0020】
画像読取装置Bを構成するADFユニット20は、スキャナユニット10に対して、ヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられており、スキャナユニット10の上面を覆った閉状態で、画像を読み取るための原稿をスキャナユニット10に自動的に供給する。スキャナユニット10は、ADFユニット20によって供給される原稿の画像、または、スキャナユニット10におけるプラテンガラス18(図2参照)に操作者によって手置きセットされた原稿の画像を光学的に読み取ることによって画像データを生成する。
【0021】
画像形成装置本体Aには、プリンタ部61と、プリンタ部61の下側に設けられた給紙部62とが設けられており、給紙部62内の記録シートがプリンタ部61に供給される。プリンタ部61では、スキャナユニット10にて生成された画像データ、あるいは、ネットワークを介して端末装置等から送られる画像データに基づいて、周知の電子写真方式によって、記録シート上にカラーのトナー画像をプリントする。プリンタ部61によってトナー画像がプリントされた記録シートは、スキャナユニット10の下側に設けられた画像形成装置本体Aの排紙トレイ63上に排出される。
【0022】
<ADFユニットの構成>
図2は、画像読取装置Bの概略構成を示す正面側から見た模式図である。図2に示すように、ADFユニット20は、スキャナユニット10の上面を全体にわたって覆った閉状態から上方に回動されることによってスキャナユニット10の上面を開状態とするADFユニット本体21と、スキャナユニット10に搬送される原稿が載置されるようにADFユニット本体21に取り付けられた原稿給紙トレイ22とを有している。
【0023】
ADFユニット20は、ADFユニット本体21の正面に向って左側(以下、単に「左側」とし、反対側を「右側」とする)の側部には、原稿給紙トレイ22上に載置された原稿Dの搬送経路を内部に有する給紙本体部21Aを有している。給紙本体部21Aの下部には、内部に反転経路21pが形成された反転経路形成部21Bが、給紙本体部21Aから右側方に水平に延出した状態で設けられている。
【0024】
ADFユニット本体21の給紙本体部21Aおよび反転経路形成部21Bは、スキャナユニット10の上面をほぼ全域にわたって覆うように一体に構成されている。原稿給紙トレイ22は、反転経路形成部21Bの上方において、右側の側部が上側に位置するように傾斜した状態で、給紙本体部21Aの上部に取り付けられている。原稿給紙トレイ22には、複数枚の原稿が積み重ねられた状態で載置可能になっている。
【0025】
ADFユニット20は、スキャナユニット10に原稿の片面だけを読み取らせる片面読取モードと、原稿を反転させて原稿の両面(表面と裏面)をスキャナユニット10に順番に読み取らせる両面読取モードとを選択的に実行可能に構成されており、片面読取モードの場合には、原稿が、原稿給紙トレイ22上に、スキャナユニット10にて読み取られる原稿面を上方に向けた状態で載置される。
【0026】
原稿給紙トレイ22には、図1に示すように、載置される原稿Dを、搬送方向とは直交する方向の中央部が、給紙本体部21Aの内部の搬送経路における幅方向(原稿Dの搬送方向と直交する方向)の中央部に一致するように幅方向位置を位置決めする一対の位置決めガイド22aが設けられている。一対の位置決めガイド22aは、載置された原稿Dの搬送方向と直交する方向の両側の側縁に沿うように直線状に形成されて、原稿Dを挟むように幅方向の両側に配置されている。
【0027】
ADFユニット20における原稿給紙トレイ22には、図2に示すように、載置された原稿Dの搬送方向長さを検出する3つの第1原稿長さセンサ23a、第2原稿長さセンサ23b、第3原稿長さセンサ23cが設けられている。第1原稿長さセンサ23a、第2原稿長さセンサ23b、第3原稿長さセンサ23cは、原稿給紙トレイ22における原稿Dの搬送方向に沿って、搬送方向下流側からその順番で、異なる原稿の大きさに対応して配置されており、それぞれが、原稿給紙トレイ22に原稿Dが載置されると、当該原稿Dの搬送方向上流側の側縁部に当接することにより原稿検出状態になる。
【0028】
原稿給紙トレイ22における給紙本体部21Aに近接した側部上には、原稿給紙トレイ22上の原稿Dを、給紙本体部21A内の第1搬送経路21dに供給するピックアップローラ21aが設けられている。給紙本体部21A内には、ピックアップローラ21aによって給紙本体部21A内に供給される原稿Dを1枚ずつ分離して第1搬送経路21dへ搬送する分離ローラ21cが、原稿給紙トレイ22に近接して設けられている。分離ローラ21cは、相互に圧接された一対のローラ部を有している。分離ローラ21cは、給紙部モータ25aによって回転駆動されるようになっており、両ローラ部の間を、ピックアップローラ21aにて搬送される1枚の原稿Dが通過するようになっている。
【0029】
給紙本体部21A内における分離ローラ21cに対して原稿搬送方向下流側には、図3に示すように、分離ローラ21cによって第1搬送経路21dを搬送される原稿Dの厚さを検出する原稿厚さセンサ30が分離ローラ21cに近接して設けられている。
原稿厚さセンサ30は、反射型光学式の測距センサによって構成されており、分離ローラ21cから搬送される原稿Dに向って光を照射した際における原稿Dからの反射光に基づいて、分離ローラ21cによって搬送される1枚の原稿Dの厚さに対応した電圧を電気信号として出力するようになっている。なお、原稿に照射される光が原稿を透過する光量を検出する方法等を用いてもよい。
【0030】
図2に示すように、給紙本体部21A内における左側側部には第1搬送ローラ21iが設けられており、分離ローラ21cによって分離されて搬送される原稿は、原稿厚さセンサ30によって原稿の厚さが検出された後に、第1搬送ローラ21iにまで搬送される。第1搬送経路21dにおける第1搬送ローラ21iよりも搬送方向上流側には、第1搬送経路21d内を搬送される原稿Dを検出する第1原稿センサ26aが、第1搬送ローラ21iに近接して設けられている。
【0031】
第1搬送ローラ21iは、相互に圧接された一対のローラ部を有しており、搬送部モータ25bによって回転駆動されるようになっている。図4は、第1搬送ローラ21iおよび搬送部モータ25bの構成を説明するための模式図である。図4に示すように、搬送部モータ25bの回転が、伝動ベルト29によって、第1搬送ローラ21iにおける下側のローラ部に伝達されている。
【0032】
従って、搬送部モータ25bの回転力によって第1搬送ローラ21iにおける下側のローラ部が回転し、下側のローラ部の回転に追従して上側のローラ部が回転する。両ローラ部の間に供給される原稿Dは、両ローラ部の回転によって、第2搬送経路21eへ搬送される。なお、後述するように、第1搬送ローラ21iを回転する際の搬送部モータ25bのモータ電流に基づいて、搬送部モータ25bの回転トルクが検出されるようになっている。
【0033】
第2搬送経路21eは、給紙本体部21Aの左側の側部において下方に向って円弧状に湾曲した状態で設けられており、第1搬送ローラ21iによって搬送される原稿Dは、第2搬送経路21eを通って、第1搬送ローラ21iの左側側方に設けられた第2搬送ローラ21jへと搬送される。
第2搬送ローラ21jも、相互に圧接された一対のローラ部を有しており、前述の第1搬送ローラ21iと同様に、レジスト部モータ25dの回転力が伝動ベルトを介して伝達されることによって回転駆動されるようになっている。
【0034】
なお、第1搬送ローラ21iおよび第2搬送ローラ21jは、搬送される原稿Dが搬送方向に対して傾斜した状態にならないように、原稿Dをスキュー補正するためのローラとして用いられる。原稿Dをスキュー補正する場合には、第2搬送ローラ21jが回転停止された状態で、第1搬送ローラ21iにより搬送される原稿Dの先端縁を第2搬送ローラ21jの両ローラ部に突き当てる。これにより、原稿Dは、第1搬送ローラ21iと第2搬送ローラ21jとの間においてループ状に撓んだ状態になり、原稿Dの先端縁が第2搬送ローラ21jの軸方向に沿った状態、すなわち、原稿Dが搬送方向に対して傾斜しない状態にスキュー補正される。
【0035】
ADFユニット20における下部のスキャナユニット10に近接した位置には、第1読取ローラ21fが設けられており、第2搬送ローラ21jを通過した原稿Dは、第1読取ローラ21fへと搬送される。第1読取ローラ21fも、相互に圧接された一対のローラ部を有しており、読取部モータ25cによって回転駆動される。
第2搬送ローラ21jから第1読取ローラ21fへ搬送される原稿Dは、第2原稿センサ26bによって検出されるようになっている。
【0036】
第1読取ローラ21fを通過した原稿は、スキャナユニット10の上面に設けられたスリットガラス(プラテンガラス)16の上方を通過し、その通過の間に、スリットガラス16に対向する原稿面の画像がスキャナユニット10によって読み取られる。画像が読み取られた原稿は、相互に圧接された一対のローラ部を有する第2読取ローラ21gを介して、第1分岐ガイド21hへと搬送される。なお、第2読取ローラ21gは、第1読取ローラ21fを回転駆動する読取部モータ25cによって回転駆動される。
【0037】
第1分岐ガイド21hは、片面読取モードの場合には、原稿を、相互に圧接された一対のローラ部を有するレジストローラ21kを介して、第2分岐ガイド21mへと搬送し、第2分岐ガイド21mによって、相互に圧接された一対のローラ部を有する排紙ローラ21qを介して、反転経路形成部21B上に設けられた原稿排出部上に排出する。
レジストローラ21kは、第2搬送ローラ21jを回転駆動するレジスト部モータ25dによって回転駆動される。排紙ローラ21qは、排紙部モータ25eによって回転駆動される。
【0038】
第2分岐ガイド21mの上方には、第2分岐ガイド21m上を搬送される原稿Dを検出する第3原稿センサ26cが設けられている。
第1分岐ガイド21hは、両面読取モードの場合には、原稿Dを、レジストローラ21kを介して第2分岐ガイド21mへと搬送し、第2分岐ガイド21mによって、原稿給紙トレイ22の下面に沿って配置された反転ガイド上に搬送する。レジストローラ21kは、原稿の後端部が通過する直前の所定のタイミングで逆転駆動され、これにより、原稿はスイッチバックし、第3搬送経路21nを通って第1搬送ローラ21iへと搬送される。
【0039】
第3搬送経路21n内には、第3搬送経路21n内を搬送される原稿Dを検出する第4原稿センサ26dが設けられている。
第3搬送経路21nを通って第1搬送ローラ21iへ搬送される原稿Dは、表裏を反転した状態で、第2搬送経路21eを、再度、通過し、第1読取ローラ21fによってスリットガラス16の上方へと搬送される。
【0040】
スリットガラス16の上方を原稿Dが通過する間に、スリットガラス16に対向する原稿面(第2面)の画像がスキャナユニット10によって読み取られる。スリットガラス16の上方を通過した原稿Dは、第1分岐ガイド21hによって、第4搬送経路21sを通って反転ローラ21zへ搬送される。反転ローラ21zへ搬送された原稿Dは、一旦、反転経路形成部21B内の反転経路21pへと搬送された後に、第2分岐ガイド21mに案内されて排紙ローラ21qへと表裏を反転した状態で搬送され、排紙ローラ21qによって、反転経路形成部21B上の原稿排出部に排出される。
【0041】
<スキャナユニットの構成>
図2に示すように、スキャナユニット10は、扁平な長方体形状に形成されたハウジング11を備えており、このハウジング11の上面に、ADFユニット20の第1読取ローラ21fと第2読取ローラ21gとの間のローラ軸方向に沿った間隙に対向するようにローラ軸方向に沿った長方形状のスリットガラス16が配置されている。また、ハウジング11の上面には、スリットガラス16の右側の側方に配置された長方形状のプラテンガラス18が設けられている。プラテンガラス18は、スリットガラス16の長手方向(主走査方向)長さと同程度の長さを有するとともに、スリットガラス16に近接した位置からハウジング11の右側の端部近傍にわたる左右方向(副走査方向)長さを有している。
【0042】
ハウジング11の内部には、図2に矢印Xで示す副走査方向にスライド可能に構成された第1スライダー12が設けられており、この第1スライダー12に、主走査方向に沿って延びる線状光源12aが搭載されている。第1スライダー12は、通常は、スリットガラス16とプラテンガラス18との間のホームポジションに位置されており、ADFユニット20によって原稿が搬送される場合には、スキャナモータ43によって、スリットガラス16の下方のシートスルーポジションに移動されて停止される。
【0043】
これに対して、プラテンガラス18上の原稿Dを読み取る場合には、第1スライダー12は、スキャナモータ43によって、プラテンガラス18に沿って副走査方向に往復移動されるようになっている。
第1スライダー12には、スリットガラス16上を通過する原稿Dまたはプラテンガラス18上に載置された原稿Dからの反射光を、矢印Xで示す方向とは反対方向に略直角に反射する第1ミラー12bが設けられている。第1スライダー12よりも左側の側方には、第2スライダー13が設けられている。第2スライダー13には、第1ミラー12bにて反射された光を、矢印X方向に反転させるように対になった第2ミラー13aおよび第3ミラー13bが搭載されている。
【0044】
第2スライダー13は、プラテンガラス18上に載置された原稿Dの画像を読み取る場合には、スキャナモータ43によって、第1スライダー12の移動に同期して、第1スライダー12の速度の1/2の速度で第1スライダー12と同方向に移動される。第2ミラー13aおよび第3ミラー13bによって矢印X方向に反転された光は、縮小レンズ(図示せず)を介して画像読取手段としてのCCD17に照射される。
【0045】
<画像読取装置における制御系の構成>
図5は、画像読取装置Bにおける制御系の主要部の構成を示すブロック図である。画像読取装置Bのスキャナユニット10には、スキャナモータ43等を制御するスキャナCPU41が設けられており、ADFユニット20には、原稿の搬送等を制御するADF−CPU51が設けられている。スキャナCPU41と、ADF−CPU51とは、相互にデータの送受信ができるように構成されている。
【0046】
ADF−CPU51には、分離ローラ21cに近接して配置された原稿厚さセンサ30の出力が与えられている。
図6は、原稿Dの厚さt(μm)と原稿厚さセンサ30から出力される電圧(mV)との関係を示すグラフである。原稿Dの厚さt(μm)と、原稿厚さセンサ30から出力される電圧(mV)とはほぼ比例関係になっており、原稿Dの厚さt(μm)が厚くなるほど、原稿厚さセンサ30から出力される電圧(mV)は大きくなる。このような関係から、ADF−CPU51は、原稿厚さセンサ30から出力される電圧(mV)に基づいて、搬送される原稿Dの厚さを検出する。
【0047】
図5に示すように、ADF−CPU51は、ADFユニット本体21に設けられた搬送部モータ25bを駆動するためのモータ駆動IC52bを制御するようになっている。ADF−CPU51には、搬送部モータ25bにて回転される第1搬送ローラ21iの搬送トルクを検出するための搬送トルク換算部51bが設けられている。搬送トルク換算部51bは、モータ駆動IC52bを介して搬送部モータ25bに供給されるモータ電流に基づいて第1搬送ローラ21iの搬送トルクを検出する。
【0048】
第1搬送ローラ21iにおける両ローラ部が回転した状態で、両ローラ部の間に原稿Dが供給されると、各ローラ部における搬送負荷が増大し、搬送部モータ25bの回転が低下する。このような状態になると、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流が増加する。これにより、搬送部モータ25bの回転が増加し、第1搬送ローラ21iの搬送トルクが増大する。
【0049】
また、原稿Dの先端が第2搬送ローラ21jにおけるローラ部間に突き当てられた状態になり、このような状態で第1搬送ローラ21iによる原稿の後端側部分の搬送が継続することによっても、第1搬送ローラ21iの搬送負荷は順次増加するために、第1搬送ローラ21iの回転が低下する。この場合にも、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流が増加する。
【0050】
図7は、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流(mA)と、第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)との関係を示すグラフである。第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)とモータ電流(mA)とはほぼ比例関係になっており、第1搬送ローラ21iを駆動する搬送部モータ25bに供給されるモータ電流(mA)が増加すると、第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)も増加する。従って、モータ電流(mA)に基づいて、第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)を検出することができる。
【0051】
ADF−CPU51の搬送トルク換算部51bは、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流(mA)に基づいて、第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)を演算する。
なお、ADF−CPU51は、図5に示すように、搬送部モータ25bと同様に、給紙部モータ25a、読取部モータ25c、レジスト部モータ25d、排出部モータ25eのそれぞれを駆動するための各モータ駆動IC52a、52c、52d、52eを制御するようになっている。
【0052】
また、ADF−CPU51には、ADFユニット20における原稿給紙トレイ22に設けられた第1原稿長さセンサ23a、第2原稿長さセンサ23b、第3原稿長さセンサ23cの出力がそれぞれ与えられている。ADF−CPU51は、第1原稿長さセンサ23a、第2原稿長さセンサ23b、第3原稿長さセンサ23cの出力に基づいて、原稿給紙トレイ22上に載置された原稿Dの長さを検出する。
【0053】
ADF−CPU51は、原稿給紙トレイに設けられた第1〜第3のそれぞれの原稿長さセンサ23a〜23cの出力を、画像形成装置本体Aを制御するシステムCPU(図示せず)に送信する。システムCPUは、画像形成装置本体Aの給紙部61から、検出された原稿Dの長さに応じた記録シートを選択してプリンタ部62に搬送するようになっている。
【0054】
さらに、ADFユニット本体21の搬送経路に設けられた第1原稿センサ26a、第2原稿センサ26b、第3原稿センサ26c、第4原稿センサ26dの出力がそれぞれ与えられている。ADF−CPU51は、第1原稿センサ26a、第2原稿センサ26b、第3原稿センサ26c、第4原稿センサ26dのそれぞれの出力に基づいて、モータ駆動IC52a、52c、52d、52eをそれぞれ制御して、給紙部モータ25a、搬送部モータ25b、読取部モータ25c、レジスト部モータ25d、排出部モータ25eの回転等を制御する。
【0055】
スキャナCPU41は、画像読取時にモータ駆動IC42を制御することによって、第1スライダー12および第2スライダー13が所定方向に所定の速度で移動するようにスキャナモータ43を駆動する。また、スキャナCPU41は、CCD17にて読み取られた画像データを処理する画像処理部44を制御する。
画像処理部44は、CCD17にて得られた画像データに対して、シェーディング補正、シャープネス調整、HVC調整、濃度補正等を行うとともに、ルーズリーフ原稿における綴り穴が形成される部分の画像が形成されないように画像処理を行う。
【0056】
ADF−CPU51は、第1搬送ローラ21iと第2搬送ローラ21jとの間において原稿Dをループ状に撓ませる制御を実行する際に、原稿厚さセンサ30によって検出される原稿Dの厚さtと、第1搬送ローラ21iの搬送トルクFとに基づいて、原稿Dがルーズリーフ用紙を用いた原稿(以下、ルーズリーフ原稿とする)、ルーズリーフ穴が形成されていない通常の用紙を用いた原稿(以下、通常原稿とする)のいずれであるかの判別制御を行うようになっている。
【0057】
原稿Dをループ状に撓ませる制御を実行する場合には、第1搬送ローラ21iを回転駆動させた状態で、第2搬送ローラ21jの回転を停止させる。このような状態で、原稿Dが第1搬送ローラ21iに搬送されると、第1搬送ローラ21iを通過した原稿Dの先端縁が第2搬送ローラ21jに突き当てられる。この場合、第1搬送ローラ21iによる原稿Dの搬送がさらに継続されることにより、原稿Dの先端縁が、全体にわたって、第2搬送ローラ21jの軸方向に沿って突き当てられて、図8(a)に示すように、先端部がループ状に撓んだ状態になる。これにより、原稿Dはスキュー補正される。
【0058】
図9(a)は、通常原稿をスキュー補正する場合に、第1搬送ローラ21iを回転駆動する搬送部モータ25bに供給されるモータ電流(mA)の変化を示すグラフである。搬送部モータ25bは、回転駆動が開始された当初は、突入電流によりピーク状態になる。その後、第1搬送ローラ21iにまで通常原稿が搬送されていないために、通常原稿を搬送するための負荷(搬送トルク)が加わらず、所定の回転速度とされる。
【0059】
この場合に、通常原稿が第1搬送ローラ21iに搬送されると、第1搬送ローラ21iの搬送負荷が増大するために、搬送部モータ25bの回転が低下し、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流も低下する(例えば、図9(a)の時間t1)。このような状態になると、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流が増加する。これにより、第1搬送ローラ21iの搬送トルクが増大し、通常原稿の先端側部分は、第2搬送ローラ21jへ搬送される。
【0060】
その後、通常原稿における搬送方向の先端縁が第2搬送ローラ21jへ突き当てられると(図9(a)の時間t2)、通常原稿を搬送している第1搬送ローラ21iの搬送負荷が順次増加し、回転速度が低下する。これにより、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流は、順次、増加されることになり、第1搬送ローラ21iの搬送トルクが増加する。そして、通常原稿の先端縁が第2搬送ローラ21jへ突き当てられた状態で第1搬送ローラ21iによる搬送が継続されると、通常原稿はループ状に撓んだ状態になり、撓み量も順次増加する。
【0061】
このような状態になると、通常原稿はスキュー補正されて、搬送方向に沿った状態になる。この場合、ルーズリーフ穴が形成されていない通常原稿は、全体にわたって一様な曲げ強度を有していることから、第2搬送ローラ21jと第1搬送ローラ21iとの間でほぼ均等に撓んだ状態になり、屈曲するおそれがない。
通常原稿における搬送方向の先端縁が第2搬送ローラ21jへ突き当てられた状態が所定時間にわたって継続すると(図9(a)の時間t3)、第2搬送ローラ21jが回転駆動される。これにより、通常原稿の先端部が搬送されるために、第1搬送ローラ21iの搬送負荷が順次軽減され、第1搬送ローラ21iの回転速度が増加する。従って、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流は、順次、低下し、第1搬送ローラ21iの搬送トルクが低下することになる。
【0062】
なお、図9(a)において、搬送部モータ25bが起動されてから、第2搬送ローラ21jの回転が開始されるまでの時間をT1(ms)で示している。この時間T1(ms)が経過した時点では、通常原稿の撓み量が最大となることによって、搬送部モータ25bにおける搬送トルクも最大になり、従って、モータ電流も最大になる。
これに対して、ルーズリーフ原稿が、搬送方向の先端側の側縁部に沿ってルーズリーフ穴が位置した状態で搬送される場合について説明する。ルーズリーフ原稿は、同じ厚さの通常原稿に対して、ルーズリーフ穴が形成されている分だけ重量が軽くなっているために、第1搬送ローラ21iによるルーズリーフ原稿の搬送負荷は、通常原稿の搬送時における搬送負荷よりも小さくなり、第1搬送ローラ21iの回転速度が増加する。従って、図9(b)に示すように、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流は、通常原稿の搬送時(図9(b)に破線で示す)よりも低くなる。
【0063】
また、ルーズリーフ穴が形成された側縁部は、ルーズリーフ穴が形成されていない場合に比べて曲げ強度(腰の強さ)が低下しているために、ルーズリーフ原稿における先端側部分の撓み量が大きくなると、図8(b)に示すように、ルーズリーフ穴が形成された部分においてルーズリーフ原稿は屈曲した状態になる。ルーズリーフ原稿のこのような屈曲状態は、ルーズリーフ原稿の厚さにかかわらず、通常、ルーズリーフ原稿が搬送方向に沿った直線状態から6mm程度の長さにわたって原稿を搬送させてループ状に撓ませることにより発生する。なお、ルーズリーフ原稿がこのように屈曲した状態になっても、その後の搬送に際して座屈するようなおそれはない(なお、図8(b)においてはルーズリーフ原稿の屈曲状態を誇張して示している)。
【0064】
このような屈曲状態になると、図9(b)に示すように、第1搬送ローラ21iの回転負荷が急激に低下し、第1搬送ローラ21iの回転速度が急激に増加する。これにより、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流が急激に低下することになる。
このように、同じ厚さの通常原稿とルーズリーフ原稿とでは、ループ状に撓ませた場合における第1搬送ローラ21iによる原稿の搬送負荷が異なるために、第1搬送ローラ21iを回転駆動する搬送部モータ25bに供給されるモータ電流の大きさも異なる。また、搬送される原稿Dの厚さが異なることによっても、第1搬送ローラ21iの搬送負荷は異なり、搬送部モータ25bのモータ電流が異なる。
【0065】
このことから、搬送される原稿Dの厚さに対応した第1搬送ローラ21iの搬送負荷の変動による搬送トルクの変動、すなわち、搬送部モータ25bのモータ電流の変動に基づいて、通常原稿であるか、ルーズリーフ原稿であるかを判別することができる。
なお、原稿Dの搬送時における搬送部モータ25bのモータ電流は、原稿Dが第1搬送ローラ21iによってのみ搬送される間は、順次、増加し、第2搬送ローラ21jが回転駆動される直前(搬送部モータ25bの起動開始から所定時間(T1)が経過する直前)において最大になる。従って、その時点において、通常原稿搬送時におけるモータ電流と、ルーズリーフ原稿搬送時におけるモータ電流との差も最大になるために、その時点におけるモータ電流に基づいて、通常原稿とルーズリーフ原稿との判別を行うことが好ましい。
【0066】
また、第1搬送ローラ21iによって原稿Dの後端部が搬送される際に、第2搬送ローラ21jによる原稿Dの先端側部分の搬送を停止することによっても、原稿Dは、第2搬送ローラ21jと第1搬送ローラ21iとの間で撓んだ状態になる。この場合、通常原稿であれば、第2搬送ローラ21jと第1搬送ローラ21iとの間でほぼ均等に撓んだ状態(図8(a)参照)になるが、原稿の後端部の側縁に沿ってルーズリーフ穴が形成されている場合には、図8(c)に示すように、ルーズリーフ穴が形成されている部分において屈曲した状態になる。
【0067】
このような屈曲状態は、搬送方向の先端側部分にルーズリーフ穴が形成されている場合と同様に、通常、第1搬送ローラ21iと第2搬送ローラ21jとの間隔よりも6mm程度長くルーズリーフ原稿を搬送してループ状に撓ませることによって発生する。
従って、原稿の後端部にループを形成して、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流に基づいても、ルーズリーフ原稿と判別することが可能になる。
【0068】
通常原稿とルーズリーフ原稿との判別は、例えば、搬送される原稿Dの厚さtに基づいて第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mN・m)の閾値Nを予め設定して、スキュー補正時が実行された場合に予め設定された時間における第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mN・m)を検出し、検出された第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mN・m)と、設定された閾値Nとを比較することによって行われる。
【0069】
図10(a)は、原稿Dの厚さtに基づいて設定される第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mN・m)の閾値Nの一例を示す表である。この表では、原稿Dの厚さtが坪量で210g/m(μm換算で223μm、以下、この厚さ223μmを「μ1」とする。なお、以下においても、坪量によって示される厚さtをμm換算して、それぞれの値を「μ2」、「μ3」、「μ4」で示している)未満であって、128g/m(=148μm=μ2)以上の場合(210>t≧128、すなわち、μ1>t≧μ2)に、搬送トルクF(mNm)が105mNm(閾値=N1とする)よりも大きければ(F>N1)、通常原稿と判定し、閾値N1以下であれば(N1≧F)、ルーズリーフ原稿と判定する。
【0070】
また、原稿Dの厚さtが、坪量で128g/m(=μ2)未満であって、105g/m(=115μm=μ3)以上の場合(128>t≧105、すなわち、μ2>t≧μ3)に、搬送トルクF(mNm)が、88mNm(閾値N2とする)よりも大きければ(F>N2)、通常原稿と判定し、閾値N2以下であれば(N2≧F)、ルーズリーフ原稿と判定する。
【0071】
さらに、原稿Dの厚さtが、坪量で105g/m(=μ3)未満であって、80g/m(=91μm=μ4)以上の場合(105>t≧80、すなわち、μ3>t≧μ4)に、搬送トルクF(mNm)が、80mNm(閾値N3とする)よりも大きければ(F>N3)、通常原稿と判定し、閾値N3以下であれば(N3≧F)、ルーズリーフ原稿と判定する。原稿Dの厚さtが、坪量で80g/m(=μ4)未満の場合には、搬送トルクF(mNm)が、74mNm(閾値N4とする)よりも大きければ(F>N4)、通常原稿と判定し、閾値N4以下であれば(N4≧F)、ルーズリーフ原稿と判定する。
【0072】
なお、図10(b)は、上記の原稿Dの厚さt(μm)と閾値N(mNm)の関係を表にしたものである。
また、図10(c)は、原稿Dの厚さt(μm)と搬送トルクF(mNm)の閾値Nとの関係を示すグラフである。図10(c)における破線は、厚さtと搬送トルクFとが比例関係であることを示しており、実線は、図10(a)において設定された4つの閾値Nを示している。このように、4つの閾値を設定することによって、原稿の判別制御の処理を簡素化することができるが、より精度を向上させるためには、図10(c)における破線に従って、直線状に変化する紙厚に対して直線状に変化する閾値を設定するようにしてもよい。
【0073】
図11は、ADF−CPU51において実行されるルーズリーフ原稿と通常原稿との判別制御の処理の流れを示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいてルーズリーフ原稿と通常原稿との判別制御の処理について説明する。
原稿給紙トレイ22上の原稿Dの搬送が開始されることによって判別制御が開始される。従って、この時点で、搬送部モータ25bが、給紙部モータ25a、読取部モータ25c、レジスト部モータ25d、排紙部モータ25eのそれぞれとともに回転駆動される。
【0074】
判別制御が開始されると、原稿厚さセンサ30が原稿Dの搬送が検知されるまで待機状態になり(図11のステップS11参照)、原稿Dが分離ローラ21cを通過して、原稿厚さセンサ30の検知領域に達すると、原稿厚さセンサ30の搬送される原稿を検知して、出力電圧が変化する(ステップS11において「Yes」)。これにより、ADF−CPU51は、原稿厚さセンサ30から出力される電気信号に基づいて、分離ローラ21cから搬送される1枚の原稿Dの厚さを求める(ステップS12)。
【0075】
その後、搬送される原稿Dに対して、スキュー補正を実行する必要があるかを判断する(ステップS13)。例えば、ユーザが、原稿画像の読み取り処理を早急に終了させるためにスキュー補正の実行が不要であることを、画像形成装置本体Aの操作パネルに設けられた選択スイッチの操作等によって指示すると、スキュー補正の実行が不要であると判断される。スキュー補正の実行が不要の場合には(ステップS13において「No」)、原稿の判別制御を終了する。
【0076】
スキュー補正が必要である場合(ステップS13において「Yes」)には、第2搬送ローラ21jを回転駆動させているレジスト部モータ25dの回転駆動を停止させて、第2搬送ローラ21jの回転を停止させる(ステップS14)。
その後、第1原稿センサ26aによって原稿Dが検出されるまで待機状態になる(ステップS15)。第1原稿センサ26aによって原稿Dの先端縁が検出されると(ステップS15において「Yes」)、タイマカウントのカウント値を所定時間TAにセットして、タイマカウントによるカウント(時間の計測)を開始する(ステップS16)。この場合の所定時間TAは、第1原稿センサ26aによって、搬送される原稿の先端縁が検知された後に、第2搬送ローラ21jが回転されるまでの時間よりも若干短い時間に予め設定されている。
【0077】
例えば、原稿Dの搬送速度が200mm/s、第1原稿センサ26aから第1搬送ローラ21iまでの搬送経路上の距離が100mm、第1搬送ローラ21iから第2搬送ローラ21jまでの距離が50mmであり、ルーズリーフ原稿が、前述したように、6mmの長さにわたって湾曲されることによってルーズリーフ穴の部分において屈曲状態になるとすると、156mmにわたって原稿が搬送されるために要する時間である780msに設定される。
【0078】
タイマカウントによるカウントが開始されると、所定時間TAになるまで待機状態になる(ステップS17)。
この場合、搬送部モータ25bの回転駆動が継続されることによって、第1搬送ローラ21iの回転が継続される。これにより、原稿Dの搬送が継続され、原稿Dの先端縁が第2搬送ローラ21jに突き当てられる。原稿Dは、第2搬送ローラ21jに突き当てられることによって、ループの形成を開始する。そして、タイマカウントのカウント値が所定時間TAになると(ステップS17において「Yes」)、ADF−CPU51の搬送トルク換算部51bは、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流(mA)に基づいて第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)を求める(ステップS18)。この場合、ステップS12において求められた原稿の厚さtに基づいて、第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)の閾値Nを決定し(ステップS19)、決定された閾値Nと、ステップS18において求められた第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)とを比較することによって、搬送される原稿が、通常原稿およびルーズリーフ原稿のいずれであるかを判定する(ステップS20)。
【0079】
ステップS20では、搬送トルクF(mNm)と閾値Nとの比較の結果、搬送トルクF(mNm)が閾値N以下の場合には(ステップS20において「Yes」)、搬送された原稿をルーズリーフ原稿と判定し、ADF−CPU51の内部に設けられた記憶部に記憶する(ステップS21)。搬送トルクF(mNm)が閾値Nよりも大きい場合には(ステップS20において「No」)、搬送された原稿を通常原稿と判定し、内部の記憶部に記憶する(ステップS22)。その後、レジスト部モータ25cを回転駆動させることによって第2搬送ローラ21jを回転させて(ステップS23)、メインルーチンに戻る。これにより、ループ状に撓んだ状態の原稿Dは、原稿Dの先端縁から、第1読取ローラ21fへと搬送される。
【0080】
その後、次の原稿Dが搬送されると、S11以降の処理が同様に実行されることにより、通常原稿およびルーズリーフ原稿のいずれであるかを判定する。
ADF−CPU51は、搬送される原稿が、ルーズリーフ原稿と判定されると、その判定された原稿の先端縁が、第1原稿センサ26a〜第4原稿センサ26dのそれぞれにおいて検出された場合に、検出された時点から予め設定された所定の時間(ルーズリーフ穴の形成領域が検出位置を通過するために要する時間)にわたって、第1原稿センサ26a〜第4原稿センサ26dからの出力信号を無効にする。
【0081】
これにより、第1原稿センサ26a〜第4原稿センサ26dのそれぞれの出力が、搬送されるルーズリーフ原稿のルーズリーフ穴によって原稿非検出状態に一時的に変化しても、搬送原稿の後端縁が検出されたものと誤判定するおそれがない。従って、その後に、第1原稿センサ26a〜第4原稿センサ26dのそれぞれが原稿の非検出状態に変化すると、即座に搬送原稿の後端縁が検出されたものと判定することができる。
【0082】
また、ADF−CPU51は、搬送される原稿が通常原稿と判定されると、その判定された原稿の先端縁および後端縁が、第1原稿センサ26a〜第4原稿センサ26dのそれぞれにおいて検出された場合には、所定時間が経過するまで待機することなく、搬送経路の切り替え、後続の原稿の連続搬送等の制御が直ちに実行されることになる。従って、各制御のタイミングが遅れることを防止することができる。
【0083】
さらに、ADF−CPU51は、記憶された原稿の情報を、スキャン−CPU41に出力する。
スキャン−CPU41では、ADF−CPU51からの原稿情報に基づいて、原稿が、ルーズリーフ原稿、通常原稿のいずれであるかを確認する。このとき、原稿Dがルーズリーフ原稿の場合には、原稿Dの画像データをプリントアウトする際に、ルーズリーフ穴の位置(予め設定されている)における画像データをルーズリーフ穴のない状態のデータに補正して、ルーズリーフ穴が画像データとしてプリントアウトされることを防止する。これにより、プリントアウトされた画像には、ルーズリーフ穴の影等が形成されるおそれがなく、高画質の画像が得られる。
【0084】
以上のように、本実施形態においては、搬送される原稿の厚さと、スキュー補正に際してループを形成する第1搬送ローラ21iを駆動する搬送部モータ25bのモータ電流とに基づいて、原稿が通常原稿およびルーズリーフ原稿のいずれであるかを判定するようになっているために、ルーズリーフ穴を検出するための特別なセンサ等を搬送経路内に配置する必要がない。従って、ADFユニット20が大型化するおそれがなく、また、部品点数が少ないために経済性が損なわれるおそれもない。
【0085】
[実施形態2]
上記の実施形態では、ADF−CPU51は、搬送される原稿Dが第1原稿センサ26aによって検出されてから所定時間TAが経過した時点で、第1搬送ローラ21iの搬送トルクを求める構成であったが、本実施形態では、搬送される原稿Dが第2搬送ローラ21jに突き当てられてから所定の時間間隔で第1搬送ローラ21iの搬送トルクをサンプリング(検出)して、原稿Dがルーズリーフ原稿か通常原稿かの判定を行うようになっている。このように、本実施形態では、ADF−CPU51による原稿判別制御のみが前記実施形態とは異なっている。
【0086】
以下、ADF−CPU51によって実行される本実施形態の判別制御について、図12のフローチャートに基づいて説明する。図12のフローチャートにおいて、原稿厚さセンサ30が原稿Dの搬送を検知するステップS31から、第1原稿センサ26aによって原稿Dが検出されるステップS35までの処理は、図11のフローチャートにおけるステップS11〜S15の各ステップと同様であるのでその説明は省略する。
【0087】
第1原稿センサ26aによって原稿Dの搬送が検出されると(ステップS35において「Yes」)、タイマカウントのカウント値を所定時間TBにセットして、タイマカウントによるカウント(時間の計測)を開始する(ステップS36)。
この所定時間TBは、第1原稿センサ26aによって搬送される原稿の先端縁が検知されてから、当該先端縁が第1搬送ローラ21iに達するまでの時間に予め設定されている。例えば、前記実施形態と同様に、原稿Dの搬送速度が200mm/s、第1原稿センサ26aから第1搬送ローラ21iまでの距離が100mmの場合には、TB=500msに設定される。
【0088】
その後、タイマカウントによるカウント値が、設定された所定時間TB(=500ms)になるまで待機状態になり(ステップS37)、タイマカウントによるカウント値が設定された所定時間TBになると(ステップS37において「Yes」)、タイマカウントのカウント値を新たな設定時間TCにセットするとともに、タイマカウントによるカウントを開始する(ステップS38)。
【0089】
この場合の設定時間TCは、第1搬送ローラ21iを通過した原稿Dの先端縁が第2搬送ローラ21jに突き当てられることによって、第1搬送ローラ21iの搬送トルクが最大(従って、第1搬送ローラ21iに供給されるモータ電流が最大)になる直前の時間に予め設定されている。例えば、第1搬送ローラ21iから第2搬送ローラ21jまでの距離が150mmであり、ルーズリーフ原稿が、第2搬送ローラ21jに突き当てられた状態で6mmの長さにわたって搬送されて撓むと屈曲状態になるものとすると、156mmにわたって原稿が搬送される時間である780msよりも若干短い時間(例えば760ms)に設定される。
【0090】
次いで、ADF−CPU51の搬送トルク換算部51bは、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流(mA)を、所定の時間間隔(例えば5ms)毎にサンプリングし(図13参照)、ADF−CPU51は演算されたモータ電流(mA)に基づいて第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)を演算する(ステップS39)。
そして、演算された第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)と、ステップS32において算出された原稿厚さtとに基づいて、搬送される原稿が、通常原稿およびルーズリーフ原稿のいずれであるかを判定する(ステップS40)。
【0091】
この場合の判定方法は、測定された原稿の厚さtに基づいて第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)の閾値Nを決定し、決定された閾値Nに対して、各サンプリング毎に求められた第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)が、閾値Nよりも大きくなっているかを判定する。そして、搬送トルクF(mNm)が、閾値Nよりも大きくなっている場合には(ステップS41において「Yes」)、搬送された原稿Dを通常原稿と判定し、搬送された原稿を通常原稿として記憶部に記憶する(ステップS42)。
【0092】
ステップS41における判定結果が、閾値Nよりも大きくなっていない場合には(ステップS41において「No」)、タイマカウントのカウント値が所定時間TCになっているかを確認し(ステップS43)、所定時間TCになっていない場合には(ステップS43において「No」)、予め設定された所定の時間間隔ΔT(例えば5ms)が経過するまで待機状態になり(ステップS44)、所定の時間間隔ΔTが経過すると(ステップS44において「Yes」)、ステップS40に戻り、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流に基づいて搬送トルクF(mNm)を求めて、その搬送トルクF(mNm)が閾値Nよりも大きくなっているかが判定される。
【0093】
このようにして、搬送トルクF(mNm)が閾値N以下の状態が継続して、搬送される原稿Dが通常原稿に判定されることなく、タイマカウントが、予め設定された所定時間TCになると(ステップS43において「Yes」)、搬送された原稿をルーズリーフ原稿と判定し、記憶部に記憶する(ステップS45)。
ステップS42において通常原稿に判定された場合、あるいは、ステップS45においてルーズリーフ原稿に判定された場合のいずれにおいても、その後に、レジスト部モータ25cによって第2搬送ローラ21jが回転駆動される(ステップS46)。これにより、ループ状に撓んだ状態になってスキュー補正された原稿Dが第1読取ローラ21fへと搬送される。
【0094】
本実施形態では、このように、原稿Dが第1搬送ローラ21iを通過した後に、所定時間TBが経過すると、所定の時間間隔で測定される第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)のそれぞれと、搬送される原稿Dの厚さtに基づいて設定された閾値Nとを比較し、所定時間TCが経過する前に、搬送トルクF(mNm)が閾値Nよりも大きくなった場合には、通常原稿と判定し、所定時間TCが経過しても、搬送トルクF(mNm)が閾値Nよりも大きくならない場合には、搬送された原稿をルーズリーフ原稿と判定する。
【0095】
ルーズリーフ原稿は、多数のルーズリーフ穴が形成されているために、ルーズリーフ穴が形成されていない通常原稿よりも重量が軽く、第1搬送ローラ21iの搬送トルクが通常原稿よりも小さくなっている。このために、図13に示すように、搬送部モータ25bのモータ電流も、通常原稿の搬送時におけるモータ電流より小さくなる。従って、モータ電流が大きい通常原稿の場合には、比較的短時間で、設定された閾値Nを超えるために、通常原稿と判定するまでの時間を短縮することが可能になる。
【0096】
[実施形態3]
本実施形態では、原稿Dにおける搬送方向の後端部の側縁部に沿ってルーズリーフ穴が形成されているかを検出する構成になっており、ADF−CPU51によって実行される制御のみが、前述した各実施形態とは異なっている。
以下、ADF−CPU51によって実行される本実施形態の原稿の判別制御について、図14のフローチャートに基づいて説明する。
【0097】
ADF−CPU51は、まず、第1原稿長さセンサ23a、第2原稿長さセンサ23b、第3原稿長さセンサ23cの検出結果に基づいて原稿給紙トレイ20上に載置された原稿のサイズを求める(図14のステップS51参照)。
次いで、原稿厚さセンサ30が原稿Dを検知するまで待機状態になり(ステップS52)、原稿厚さセンサ30が原稿Dの搬送を検知すると(ステップS52において「Yes」)、原稿厚さセンサ30から出力される電気信号に基づいて、分離ローラ21cから搬送される1枚の原稿Dの厚さを算出する(ステップS53)。
【0098】
その後、前記各実施形態と同様に、スキュー補正が必要であるか判断する(ステップS54)。スキュー補正を実行する必要がない場合(ステップS54において「No」)には、原稿種類の判別制御を終了する。
スキュー補正が必要である場合(ステップS54において「Yes」)には、第1原稿センサ26aによって原稿Dが検出されるまで待機状態になる(ステップS55)。第1原稿センサ26aによって原稿Dの搬送が検出されると(ステップS55において「Yes」)、ADF−CPU51は、ステップS51において取得された原稿サイズに基づいて、原稿Dの後端縁が、第1搬送ローラ21iに対して所定の距離だけ手前に達するまでの時間TDを求める(ステップS56)。
【0099】
この時間TDは、原稿Dの後端部にルーズリーフ穴が形成されている場合に、ループ状に撓んで屈曲状態になるまでに必要とみなされる時間に予め設定されている。
例えば、原稿Dの搬送速度が200mm/s、第1原稿センサ26aから第1搬送ローラ21iまでの距離が100mmであって、ルーズリーフ原稿が、前述したように、先端側部分が停止した状態で6mmの長さにわたって搬送されて撓むことによりルーズリーフ穴の部分において屈曲状態になるとすると、原稿Dの後端縁が、第1搬送ローラ21iに対して6mmの距離だけ手前に達するまでの時間、すなわち、原稿Dの後端部が、第1原稿センサ26aから94mmにわたって搬送されるために要する470msに設定される。
【0100】
時間TDが求められると、その時間TDをタイマカウントのカウント値としてセットし、タイマカウントによるカウント(計時)を開始する(ステップS57)。
次いで、タイマカウントによるカウント値がセットされた時間TDになるまで待機状態になる(ステップS58)。この場合、原稿Dの先端部は、第1搬送ローラ21iを通過した後にスキュー補正され、その後に先端側部分が第2搬送ローラ21jを通過して、第1搬送ローラ21iおよび第2搬送ローラ21jによる搬送状態になる。
【0101】
その後、タイマカウントによって時間TDがカウントされると(ステップS58において「Yes」)、原稿Dの後端縁が第1搬送ローラ21iに対して所定距離(例えば、6mm)だけ手前に達した状態になり、第2搬送ローラ21jを回転駆動させているレジスト部モータ25dの回転駆動を停止させて、第2搬送ローラ21jの回転を停止させる(ステップS59)。
【0102】
これにより、第2搬送ローラ21jによる原稿Dの搬送が停止された状態になり、ADF−CPU51は、タイマカウントをリセットして、新たに所定の時間TEをセットする(ステップS60)。この時間TEは、第2搬送ローラ21jが停止されてから原稿の後端縁が第1搬送ローラ21iを通過するのに要する時間よりも若干短い時間である。従って、原稿Dにおける6mmの長さにわたる後端部が第1搬送ローラ21iを通過するために必要な時間である30smよりも若干短い27ms程度の時間とされる。
【0103】
この場合、搬送部モータ25bの回転駆動が継続されることによって、第1搬送ローラ21iによって、原稿Dの後端側部分の搬送が継続される。原稿Dの先端側部分は、第2搬送ローラ21jによって搬送停止状態になっているために、第1搬送ローラ21iを通過した原稿D部分はループ状に撓んだ状態になる。
その後、タイマカウントのカウント値が所定時間TEになると(ステップS61において「Yes」)、ADF−CPU51の搬送トルク換算部51bは、搬送部モータ25bに供給されるモータ電流(mA)に基づいて第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)を求める(ステップS62)。そして、求められた第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)と、ステップS53において求められた原稿の厚さtとに基づいて、第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)の閾値Nを決定し(ステップS63)、決定された閾値Nと、ステップS62において求められた第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)とを比較することによって、搬送される原稿が、通常原稿およびルーズリーフ原稿のいずれであるかを判定する(ステップS64)。
【0104】
この場合の判定方法は、前記実施形態1と同様であり、決定された閾値Nに対して、求められた第1搬送ローラ21iの搬送トルクF(mNm)が、閾値N以下の場合には(ステップS64において「Yes」)、搬送された原稿Dをルーズリーフ原稿と判定し、搬送された原稿をルーズリーフ原稿として記憶部に記憶する(ステップS65)。
なお、この場合には、ルーズリーフ原稿の後端部におけるルーズリーフ穴において屈曲状態になることにより、搬送トルクF(mNm)が、急激に低下している場合もあるが、その場合も、閾値N以下であるために、ルーズリーフ原稿と判定される。
【0105】
搬送トルクF(mNm)が閾値Nよりも大きい場合には(ステップS64において「No」)、搬送された原稿を通常原稿と判定し、内部の記憶部に記憶する(ステップS66)。次いで、レジスト部モータ25cを回転駆動させることによって第2搬送ローラ21jを回転させて(ステップS67)、メインルーチンに戻る。これにより、ループ状に撓んだ状態の原稿Dの後端部は、ループ状の撓みを解消して、順次、第1読取ローラ21fへと搬送される。
【0106】
その後、次の原稿Dが搬送されるときに、ステップS51以降の処理により、通常原稿およびルーズリーフ原稿のいずれであるかを判定する。
なお、本実施形態による原稿判別制御は、通常、前記実施形態1または2による原稿判別処理が実行されて、原稿が通常原稿と判定された後に実行される。これにより、ルーズリーフ原稿が、ルーズリーフ穴を搬送方向の先端部および後端部のいずれに位置された状態で搬送されても、ルーズリーフ原稿であることを確実に判別することができる。従って、通常原稿の搬送時に、第1原稿センサ26a〜第4原稿センサ26dのそれぞれによる原稿の検出状態に基づく各種制御の実施タイミングが遅れることを防止することができる。
【0107】
また、本実施形態におけるステップS61〜S66におけるルーズリーフ原稿および通常原稿の判定の処理は、実施形態2における図12に示されたステップS39〜S45に置き換えて、所定時間TEが経過するまでの間に、所定の時間間隔ΔT毎に、搬送トルクFをサンプリングして、設定された閾値Nと比較し、搬送トルクFが閾値Nよりも大きくなった時点で通常原稿と判定し、所定時間TEが経過しても搬送トルクFが閾値Nよりも大きくならない場合にはルーズリーフ原稿と判定するようにしてもよい。
【0108】
なお、本実施形態の原稿判別処理は、このように、前記実施形態1または2による原稿判別処理が実行された後に実行する構成に限らず、本実施形態による原稿判別処理のみを単独で実行する構成としてもよい。
[変形例]
なお、上記の各実施形態においては、原稿の厚さを検出して、その厚さに基づいて、ルーズリーフ原稿と判定される搬送トルクの閾値を設定する構成であったが、原稿の厚さを検出することなく、汎用性の高い原稿の厚さにおける搬送トルクの閾値を予め設定しておいて、その閾値に基づいて、ルーズリーフ原稿の判定を行うようにしてもよい。
【0109】
また、特定の種類の原稿だけを使用する場合には、その特定の種類の原稿に対するトルクの閾値を予め設定する構成としてもよい。また、原稿を搬送する第1搬送ローラ21iを回転駆動する搬送部モータ25bに供給されるモータ電流から搬送トルクを求める構成であったが、例えば、第1搬送ローラ21iのトルクを直接検出するトルクセンサを用いて搬送トルクを求める構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、原稿を自動搬送する自動原稿搬送装置において、装置が大型化することなく、搬送される原稿がルーズリーフ原稿であることを検出することができる。
【符号の説明】
【0111】
A 画像形成装置本体
B 画像読取装置
10 スキャナユニット
12 第1スライダー
13 第2スライダー
20 ADFユニット
21 ADFユニット本体
21c 分離ローラ
21d 第1搬送経路
21i 第1搬送ローラ
21j 第2搬送ローラ
22 原稿給紙トレイ
26a 第1原稿センサ
26b 第2原稿センサ
26c 第3原稿センサ
26d 第4原稿センサ
30 原稿厚さセンサ
41 スキャナCPU
51 ADF−CPU
51b 搬送トルク換算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路内において原稿を搬送する第1搬送ローラと、
当該第1搬送ローラの搬送方向下流側に配置された第2搬送ローラと、
前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラとの間において原稿がループ状に撓むように、前記第1搬送ローラおよび前記第2搬送ローラの回転をそれぞれ制御する回転制御手段と、
前記第1搬送ローラの原稿搬送時におけるトルクを検出するトルク検出手段と、
前記トルク検出手段によって検出されるトルクの大きさに基づいて、前記原稿がルーズリーフ原稿であることを判別する原稿判別手段と、
を備えることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項2】
前記原稿判別手段は、前記トルク検出手段によって検出された前記トルクが、予め設定された閾値以下の場合にルーズリーフ原稿と判定することを特徴とする請求項1に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項3】
前記第1搬送ローラへ搬送される原稿の厚さを検出する原稿厚さ検出手段をさらに備え、
前記原稿判別手段は、当該原稿厚さ検出手段にて検出される原稿の厚さに応じて予め設定された前記閾値に基づいて前記原稿の判別を行うことを特徴とする請求項2に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項4】
前記トルク検出手段は、前記第1搬送ローラを駆動するモータに供給されるモータ電流に基づいて前記トルクを検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項5】
前記回転制御手段は、前記第2搬送ローラを停止させた状態で前記第1搬送ローラを回転させることにより、前記第1搬送ローラによって搬送される原稿の先端部を、前記第2搬送ローラに突き当てて、当該原稿の先端部をループ状に撓ませることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項6】
前記トルク検出手段は、前記原稿の先端部が前記第2搬送ローラに突き当てられてから所定時間が経過した時点における前記トルクを検出するか、または、前記原稿が前記第2搬送ローラに突き当てられてから、所定の時間間隔で前記トルクを検出することを特徴とする請求項5に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項7】
前記回転制御手段は、前記第1搬送ローラおよび前記第2搬送ローラのそれぞれを回転させて原稿を搬送させた状態で、当該原稿の後端部が、前記第1搬送ローラを通過する前に前記第2搬送ローラを停止させることによって、当該原稿の後端部をループ状に撓ませることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項8】
前記トルク検出手段は、前記第2搬送ローラが停止されてから所定時間が経過した時点における前記トルクを検出するか、または、前記第2搬送ローラが停止されてから、所定の時間間隔で前記トルクを検出することを特徴とする請求項7に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動原稿搬送装置が設けられていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像読取装置が設けられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−102853(P2011−102853A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257250(P2009−257250)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】