説明

自動原稿送り装置及びそれを備える原稿読取装置

【課題】回転方向を切替可能な排出ローラを備える自動原稿送り装置であって、排出すべき原稿が再び繰り込まれることを防止する構成を提供する。
【解決手段】ADF(自動原稿送り装置)は、共通ローラ38と、対向ローラ39と、押圧部材55と、を備える。共通ローラ38は、対向ローラ39とともに原稿100をニップして選択図の時計回りに回転することで原稿100を排紙トレイ53に排出可能であり、反時計回りに回転することで原稿100を第2反転後経路463に沿って搬送可能である。押圧部材55は、移動可能な押圧面を有し、この押圧面が原稿100を押圧することで当該原稿100を排出させる。そして、押圧面は、共通ローラ38と対向ローラ39とが接触する位置であるニップ位置よりも排出方向上流側の退避位置から、ニップ位置を経由して、ニップ位置よりも排出方向下流側の押出位置まで移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動原稿送り装置、及び、当該自動原稿送り装置で原稿を搬送しながら画像情報の読み取りを行う原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿の画像情報を読み取る原稿読取装置において、自動原稿送り装置を備える構成が知られている。自動原稿送り装置とは、複数枚重ねられた原稿を1枚ずつ分離して搬送を行い、画像情報を読み取るための読取位置を原稿が通過するように案内するものである。
【0003】
この自動原稿送り装置を備えた原稿読取装置において、自動で原稿の両面(第1面及び第2面)を読み取るための様々な構成が知られている。例えば、第1面用と第2面用にそれぞれ読取部を備え、ワンパスで両面読取りを行う構成、及び、原稿の搬送方向を逆転させる、いわゆるスイッチバック機能を備えた構成等が知られている。上記の他にも、原稿の裏表を反転させる経路を設けることで1つの読取部で原稿の両面を読み取らせる構成が知られている。特許文献1は、この種の自動原稿送り装置を開示する。
【0004】
特許文献1が開示する自動原稿送り装置は、導入パスと反転パスと排出パスとを備えている。導入パスは、一側に膨らんだ逆U字状の経路であり、原稿載置台(給紙トレイ)にセットされた原稿を、当該原稿載置台の下方に位置する読取位置まで案内する経路である。この導入パスによって読取位置に案内されて第1面が読み取られた原稿は、次に、反転パスに沿って搬送される。反転パスは、他側に膨らんだ逆U字状の経路を有しており、原稿の裏表を反転させて再び読取位置まで案内する経路である。この反転パスによって読取位置に案内されて第2面が読み取られた原稿は、次に、排出パスに沿って搬送される。排出パスは、導入パスと同一方向(一側)に膨らんだ経路を有しており、導入パスよりも小さいカーブを描きながら読取位置の上方を通過するように原稿を案内し、更に反転パスの上方を通過させて当該原稿を排紙トレイまで案内する経路である。
【0005】
この構成により、1つの読取部で、かつスイッチバック機能を備えることなく、原稿の両面を読み取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2828866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の自動原稿送り装置は、原稿の裏表を反転させる経路が必要となるため、経路が長く複雑になり易い。そのため、ローラの回転方向を切替可能にして原稿を双方向に搬送可能な経路を構成し、この構成によって経路を簡略化する方法が考えられる。
【0008】
しかし、回転方向を切替可能なローラとして、例えば、原稿の排出を行う排出ローラを適用した場合、以下の課題が発生する。即ち、排出ローラによって原稿を排出したにもかかわらず、その排出された原稿の端部が排出ローラの近傍に留まっていることがある。この状態で排出ローラの回転方向が切り替わってしまうと、排出済みの原稿を再び繰り込んでしまうおそれがある。この場合、原稿を適切に排出することができなくなり、また、再び繰り込まれた原稿が他の原稿と接触することで紙詰まりが発生してしまう。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、回転方向を切替可能な排出ローラを備える自動原稿送り装置であって、この排出ローラによって排出される途中の原稿が再び繰り込まれることを防止する構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の自動原稿送り装置が提供される。即ち、この自動原稿送り装置は、原稿搬送経路と、共通ローラと、対向部材と、押圧部材と、を備える。前記原稿搬送経路は、原稿を搬送するためのものである。前記共通ローラは、一方向に回転することで原稿を前記原稿搬送経路の外部に排出可能であり、他方向に回転することで原稿を前記原稿搬送経路に沿って搬送可能である。前記対向部材は、前記共通ローラと対向する位置に配置され、排出される原稿を前記共通ローラとともにニップする。前記押圧部材は、移動可能な押圧面を有し、この押圧面が原稿を押圧することで当該原稿を排出させる。前記共通ローラが前記一方向に回転するときの原稿の搬送方向を排出方向としたときに、前記押圧面は、前記共通ローラと前記対向部材とが接触する位置であるニップ位置よりも排出方向上流側の第1位置から、前記ニップ位置を経由して、前記ニップ位置よりも排出方向下流側の第2位置まで移動可能である。
【0012】
これにより、押圧部材の押圧面が第1位置から第2位置に移動することで、排出済みであるにもかかわらずニップ位置の近傍にある原稿を、強制的にニップ位置から遠ざけることができる。これにより、原稿の再繰込みを防止することができる。
【0013】
前記の自動原稿送り装置においては、前記一方向に回転する前記共通ローラが前記他方向に回転を始める前に、前記押圧面を第1位置から第2位置に移動させることが好ましい。
【0014】
これにより、共通ローラが他方向に回転して、排出済みの原稿を再び原稿搬送経路に繰り込んでしまう前に、押圧面がこの原稿を押圧して排出し、更に、原稿の再繰込みがされないように押圧面で押し止めることが可能な状態とすることができる。これにより、原稿の再繰込みを確実に防止することができる。
【0015】
前記の自動原稿送り装置においては、前記他方向に回転する前記共通ローラが前記一方向に回転を始めた後に、前記押圧面を第2位置から第1位置に移動させることが好ましい。
【0016】
即ち、共通ローラが他方向に回転しているときに、原稿が押圧面の近傍に引っ掛かっている場合がある。この点、上記の構成によれば、共通ローラが一方向に回転することで、前記のように引っ掛かっている原稿を排出し、その後に押圧部材が第1位置に戻ることになる。従って、原稿の再繰込みを確実に防止できる。
【0017】
前記の自動原稿送り装置においては、前記押圧面は、前記ニップ位置を通過するときに、前記排出方向と垂直になることが好ましい。
【0018】
これにより、押圧面が原稿と接触したときに、押圧面に沿って原稿が流れる(原稿が押圧面をすり抜ける)ことを防止して、原稿を確実に排出させることができる。
【0019】
本発明の第2の観点によれば、前記の自動原稿送り装置を備える原稿読取装置が提供される。
【0020】
これにより、原稿の再繰込みを防止した構成の原稿読取装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機の外観斜視図。
【図2】イメージスキャナ装置の構成を示す正面断面図。
【図3】導入経路及び片面用排出経路を説明する模式図。
【図4】第1反転経路を説明する模式図。
【図5】第2反転経路を説明する模式図。
【図6】両面用排出経路を説明する模式図。
【図7】押圧部材の構成を示す拡大正面図。
【図8】第1位置にある押圧面を第2位置に移動させるタイミングを示す拡大正面図。
【図9】共通ローラと押圧部材の動作の関係を示すタイミングチャート。
【図10】第2位置にある押圧面を第1位置に移動させるタイミングを示す拡大正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る複合機1の外観斜視図である。
【0023】
複合機1は、コピー機能及びファクシミリ機能を備えており、ブックスキャナ及びオートドキュメントフィードスキャナとして機能するイメージスキャナ装置(原稿読取装置)11を、当該複合機1の上部に備えている。また、複合機1は、コピー部数、ファクシミリ送信先及び原稿読取等を指示するための操作パネル12を備える。
【0024】
更に、複合機1は、記録媒体としての用紙に画像を形成する画像形成部等を内蔵した複合機本体13と、前記用紙を順次供給する給紙カセット14と、を備えている。なお、複合機本体13は、通信回線を介して画像情報を伝送するための図略の送受信部等を備える。
【0025】
次に、図2を参照して、複合機1が備えるイメージスキャナ装置11について説明する。図2は、イメージスキャナ装置11の構成を示す正面断面図である。なお、本実施形態における正面図は、搬送される原稿の幅方向で見た図と表現することもできる。
【0026】
図2に示すように、イメージスキャナ装置11は、原稿台カバー21と、プラテンガラス22と、コンタクトガラス23と、を備えている。この原稿台カバー21には自動原稿送り装置(オートドキュメントフィーダ、ADF)24が備えられている。また、イメージスキャナ装置11は、プラテンガラス22及びコンタクトガラス23の下方に、原稿100の画像情報を読み取るためのスキャナユニット25を備えている。
【0027】
スキャナユニット25は、原稿台の内部で左右方向に移動可能なキャリッジ110を備えている。このキャリッジ110には、光源111と、複数の反射ミラー112と、集光レンズ113と、電荷結合素子(CCD)114と、が配置されている。光源111は読取原稿に対して光を照射し、読取原稿からの反射光は、複数の反射ミラー112で反射した後、集光レンズ113を通過して収束してCCD114の表面に結像する。そして、CCD114は、入射された収束光を電気信号に変換して出力する。
【0028】
また、前記原稿台カバー21が備えるADF24は、図2に示すように、当該原稿台カバー21の上部に設けられた給紙トレイ52と、この給紙トレイ52の下方に設けられた排紙トレイ53と、を備える。また、ADF24の内部には、給紙トレイ52と排紙トレイ53とを繋ぐ原稿搬送経路40が構成されている。
【0029】
ユーザが図1に示す操作パネル12を操作して、イメージスキャナ装置11をオートドキュメントフィードスキャナとして使用するように指示すると、給紙トレイ52に重ねてセットされた原稿100が、原稿搬送経路40に沿って1枚ずつ搬送される。そして、原稿搬送経路40に沿って搬送される原稿100がコンタクトガラス23のガラス面(読取位置)を通過するときに、この原稿100の画像情報がスキャナユニット25によって読み取られる。その後、原稿100は、原稿搬送経路40に沿って搬送されて、排紙トレイ53へ排出される。
【0030】
一方、イメージスキャナ装置11をブックスキャナとして使用する場合は、読み取るべきブック原稿をユーザがプラテンガラス22上に載置する。そして、ADF24の下部に配置されたプラテンシート51によって、ブック原稿を上側から押圧して、動かないように固定する。この状態で、左右方向に移動しながらスキャナユニット25が読取りを行うことで、ブック原稿の画像情報が読み取られる。
【0031】
次に、ADF24の内部の構成を詳細に説明する。なお、以下の説明において、正面視でみたときに給紙トレイ52がある側を単に「右側」と称し、正面視におけるその反対側を単に「左側」と称することがある。
【0032】
本実施形態のADF24は、原稿100の片面(第1面)のみを読み取るときと、原稿100の両面(第1面及び第2面)を読み取るときと、で原稿100の搬送される経路が異なるように構成されている。初めに、原稿100の片面のみを読み取るときの経路と、その経路に配置される部材について、図2及び図3を参照して説明する。図3は、導入経路41及び片面用排出経路43を説明する模式図である。
【0033】
原稿100の片面のみを読み取るときは、図3に示すように、原稿100を読取位置まで案内するための導入経路41と、原稿100を読取位置から排紙トレイ53まで案内するための片面用排出経路43と、に沿って原稿100が搬送される。
【0034】
導入経路41には、上流側から順に、ピックアップローラ30と、分離ローラ31と、レジストローラ32と、三連ローラ33と、搬送ローラ34と、が配置されている。以下に、上流側から下流側の順で、導入経路41の経路上に配置される各部の構成について説明する。
【0035】
導入経路41の上流側の端部近傍には、ピックアップローラ30及び分離ローラ31が配置されている。ピックアップローラ30は、分離ローラ31の回転軸を中心にして回動可能に構成されており、ADF24の非動作時においては、図2における上側にピックアップローラ30が保持されている。一方、原稿100を繰り込む際はピックアップローラ30が下方に回動し、給紙トレイ52に重ねてセットされている原稿100のうち、最上層にある原稿100の端部に接触する。この状態でピックアップローラ30が回転することによって、給紙トレイ52上の最上層の原稿100が分離ローラ31へ搬送される。
【0036】
ピックアップローラ30の駆動によって分離ローラ31へ送られた原稿100は、回転駆動する分離ローラ31によって1枚ずつ分離された後に、下流側に配置されたレジストローラ32へ搬送される。
【0037】
レジストローラ32は、対向するローラとともに、搬送されてくる原稿100の先端部を一時的に止めて弛ませ、所定時間後に弛みを除去しつつ下流側に搬送する。これにより、原稿100の斜行が矯正される。レジストローラ32を通過した原稿100は、下流側に配置された三連ローラ33へ搬送される。
【0038】
なお、分離ローラ31から三連ローラ33のやや上流側までの導入経路41は、直線状の経路となっている。
【0039】
三連ローラ33は、中央に配置される駆動ローラ331と、この駆動ローラ331を挟み込むように上下に配置される従動ローラ332,333と、で構成されている。導入経路41に沿って搬送される原稿100は、駆動ローラ331とその上方に配置される従動ローラ332との間を通過して左斜め下側へ搬送される。三連ローラ33を通過した原稿100は、下流側に配置された搬送ローラ34へ搬送される。なお、駆動ローラ331の下方に配置される従動ローラ333は、従動ローラ332と回転方向が逆となっており、駆動ローラ331と従動ローラ333との間を通過する原稿100を右側へ搬送することができる。
【0040】
搬送ローラ34は、対向するローラとともに原稿100をニップして回転することで、この原稿100を右斜め下側(読取位置側)へ搬送する。そして、原稿100が前記読取位置を通過するときに、スキャナユニット25によって第1面の画像情報が読み取られる。なお、この搬送ローラ34は回転方向を切替可能に構成されており、逆方向に回転することで、原稿100を左斜め上側(三連ローラ33側)へ搬送することができる。
【0041】
なお、三連ローラ33のやや上流側から読取位置までの導入経路41は、左側に膨らんだ(左側に凸となるように湾曲した)経路(図3に示す導入湾曲経路411)となっている。
【0042】
次に、片面用排出経路43について説明する。片面用排出経路43には、上流側から順に、三連ローラ35と、搬送ローラ36と、共通ローラ38及び対向ローラ(対向部材)39と、が配置されている。以下に、上流側から下流側の順で、片面用排出経路43の経路上に配置される各部の構成について説明する。
【0043】
読取位置のやや下流側には上下に分岐する箇所があり、この分岐箇所の近傍には三連ローラ35が配置されている。この三連ローラ35は、中央に配置されるレジストローラ351と、レジストローラ351を挟み込むように上下に配置される従動ローラ352,353と、で構成されている。スキャナユニット25によって画像情報が読み取られた原稿100は、レジストローラ351とその上方に配置される従動ローラ352との間を通過して右斜め上側へ搬送される。この三連ローラ35を通過した原稿100は、下流側に配置された搬送ローラ36によって、この搬送ローラ36の右斜め下側に位置する共通ローラ38へ搬送される。なお、このレジストローラ351は、前記レジストローラ32と同等の構成となっており、レジストローラ351とその下方に配置される従動ローラ353との間を左斜め下側へ搬送される原稿100の斜行を矯正することができる。
【0044】
共通ローラ38は、対向するように配置された対向ローラ39とともに原稿100をニップして回転することで、この原稿100を右側へ搬送して、排紙トレイ53に排出する。以上のようにして、給紙トレイ52にセットされた原稿100の片面のみの画像情報が読み取られる。なお、この共通ローラ38は回転方向を切替可能に構成されており、原稿100の排出を行うときと逆方向に回転することで、原稿100を左側(読取位置側)へ搬送することができる。
【0045】
次に、原稿100の両面を読み取るときの経路について、図2、及び図4から図6までを参照して説明する。図4は、第1反転経路45を説明する模式図である。図5は、第2反転経路46を説明する模式図である。図6は、両面用排出経路47を説明する模式図である。
【0046】
原稿100の両面を読み取るときにおいても、原稿100の片面のみを読み取るときと同様に、給紙トレイ52にセットされた原稿が前記導入経路41に沿って読取位置まで搬送される。そして、原稿100の第1面の画像情報がスキャナユニット25によって読み取られる。また、本実施形態のADF24は、原稿100の搬送方向の長さ(原稿長さ)を検出可能に構成されており、検出された原稿長さに基づいて図略の経路ガイド等を操作することで、導入経路41の次に原稿100が搬送される経路を切替可能に構成されている。
【0047】
初めに、原稿長さが短い場合に原稿100が搬送される経路について説明する。この場合の原稿100は、導入経路41に沿って読取位置まで搬送された後に、図4に示す第1反転経路45に沿って搬送されるように構成されている。この第1反転経路45は、上流側から順に、第1反転前経路451と、第1反転中経路452と、第1反転後経路453と、から構成されている。
【0048】
第1反転前経路451には、上流側から順に、三連ローラ35と搬送ローラ36とが配置されている。第1反転前経路451に沿って搬送される原稿100は、片面用排出経路43と同様に、レジストローラ351とその上方に配置される従動ローラ352との間を通過して右斜め上側へ搬送される。そして、原稿100は、搬送ローラ36によって、右方向へ搬送されて第1反転中経路452へ搬送される。
【0049】
第1反転中経路452は、途中までは片面用排出経路43と同様に、右斜め下方へ原稿100を案内する。しかし、その途中の分岐箇所から後は、原稿100が左斜め下方へ搬送されるように案内する。この第1反転中経路452は、右側に膨らんだ(右側に凸となるように湾曲した)経路となっている。この第1反転中経路452に沿って搬送されることで、原稿100の裏表が反転する。つまり、第1反転中経路452に沿って搬送される前までは下側(スキャナユニット25側)を向いていた第1面が、第1反転中経路452に沿って搬送された後は、上側を向くようになる。そして、第1反転中経路452に沿って搬送された原稿100は、第1反転後経路453へ搬送される。
【0050】
第1反転後経路453には、上流側から順に、搬送ローラ37と三連ローラ35とが配置される。第1反転後経路453に沿って搬送される原稿100は、搬送ローラ37によって左側へ搬送されて、三連ローラ35のレジストローラ351によって斜行が矯正された後に、読取位置を通過する。このようにして、原稿長さが短い場合の原稿100を反転させている。
【0051】
次に、原稿長さが長い場合の原稿100を反転させる経路について説明する。ここで、原稿長さが長い場合とは、原稿長さが第1反転経路45の長さと同等か、原稿長さの方が長い場合を意味する。仮に、原稿長さが長い原稿100を第1反転経路45に沿って搬送した場合、原稿100の後端部が読取位置にまだ残っている状態で反転後の原稿100の先端部が読取位置を通過しようとするため、原稿100が重なってしまい、紙詰まりを起こしてしまう。そのため、図5に示すように、原稿長さが長い場合における原稿100が通過する第2反転経路46は、第1反転経路45よりも長く構成されている。
【0052】
第2反転経路46は、第2反転前経路461と、第2反転中経路462と、第2反転後経路463と、から構成される。第2反転前経路461は、第1反転前経路451よりも更に右側へ延びている。第2反転中経路462は、第1反転中経路452と同様に、右側に膨らんだ(右側に凸となるように湾曲した)経路を有している。第2反転後経路463は、第1反転後経路453よりも更に右側へ延びている。
【0053】
なお、第2反転後経路463が原稿100を左側へ搬送するときに共通ローラ38を経由するが、前述のように共通ローラ38は回転方向を切替可能であるため、共通ローラ38を左側へ搬送することができる。このように共通ローラ38は、排出ローラとしての機能と搬送ローラとしての機能とを備えている。このようにして、原稿長さが長い場合の原稿100を反転させている。
【0054】
そして、第1反転経路45又は第2反転経路46によって反転され、第2面の画像情報が読み取られた原稿100は、図6に示す両面用排出経路47へ搬送される。
【0055】
両面用排出経路47に沿って搬送される原稿100は、読取位置を左側へ通過した後に、搬送ローラ34によって左斜め上側へ搬送される。そして、原稿100は、駆動ローラ331とその下方に配置される従動ローラ333との間を通過して右方向へ搬送される。
【0056】
なお、読取位置から三連ローラ33までの両面用排出経路47は、左側に膨らんだ(左側に凸となるように湾曲した)経路(図6に示す排出湾曲経路471)となっている。なお、導入湾曲経路411に沿って搬送される原稿100と、排出湾曲経路471に沿って搬送される原稿100とでは、原稿100の搬送方向が互いに逆方向となっている。この点、本実施形態の搬送ローラ34は回転方向を切替可能であり、更に、従動ローラ332と従動ローラ333の回転方向が互いに逆方向となるため、上記の双方向搬送に対応している。
【0057】
そして、両面用排出経路47に沿って搬送され、三連ローラ33を通過した原稿100は、右方向に搬送され、搬送ローラ36を経由した後に、右斜め下方へ搬送される。そして、片面用排出経路43に沿って搬送される原稿100と同様に、共通ローラ38及び対向ローラ39によって、排紙トレイ53に排出される。なお、搬送ローラ36のやや下流の分岐箇所から共通ローラ38のやや上流の分岐箇所までの両面用排出経路47は、第2反転前経路461と第2反転後経路463とを接続している(図6に示す接続経路472)。以上のように、給紙トレイ52にセットされた原稿100の両面の画像情報が読み取られる。
【0058】
次に、共通ローラ38近傍の構成について図7を参照して説明する。図7は、押圧部材55の構成を示す拡大正面図である。
【0059】
共通ローラ38は、装置の奥行き方向(図7における紙面に垂直な方向)に2つ配置されている。そして、押圧部材55は、手前側に配置された共通ローラ38の更に手前側と、奥側に配置された共通ローラ38の更に奥側と、に1つずつ配置されている。
【0060】
押圧部材55は、図7に示すように、押圧部材回転軸551と、この押圧部材回転軸551に接続される押圧アーム552と、この押圧アーム552の一端に形成された押圧面553と、から構成されている。押圧部材回転軸551は共通ローラ38の下方に位置しており、この押圧部材回転軸551を回転中心として、図7に鎖線で示すように押圧アーム552を回動させることができる。なお、この回動は、ソレノイド等の駆動手段によって行われており、この駆動手段はADF24の各部の制御を行う制御部(図略)によって制御されている。
【0061】
また、押圧部材55には適宜の位置決め部材が取り付けられており、この位置決め部材によって回動範囲が制限されている。この制限により、押圧面553が、図7に示す退避位置(第1位置)より左側(排出方向上流側)に移動すること、及び、押出位置(第2位置)より右側(排出方向下流側)に移動することが規制されている。また、押圧アーム552を回動させて押圧面553を退避位置から押出位置まで移動させる動作の過程においては、図7のように共通ローラ38の軸方向に平行な方向で見たときに、共通ローラ38と対向ローラ39とのニップ位置を押圧面553が通過するようになっている。
【0062】
この構成により、ニップ位置近傍に原稿100が位置しているときに押圧面553を退避位置から押出位置まで移動させることで、強制的にこの原稿100の排出を行うことができる。
【0063】
次に、押圧アーム552を回動させるタイミングについて説明する。押圧部材55の押圧面553が退避位置と押出位置との間で移動するタイミングは、前記制御部によって制御されている。初めに、退避位置にある押圧面553を押出位置に移動させるタイミングについて、図8及び図9を参照して説明する。図8は、退避位置にある押圧面553を押出位置に移動させるタイミングを示す拡大正面図である。図9は、共通ローラ38と押圧部材55の動作の関係を示すタイミングチャートである。
【0064】
原稿100が接続経路472に沿って搬送されてくるときは、この原稿100を排紙トレイ53へ排出するために、共通ローラ38は図7における時計回りに回転するように制御される。従って、この原稿100は、前記ニップ位置まで搬送されると、共通ローラ38と対向ローラ39とにニップされながら排紙トレイ53に向けて排出される。一方、原稿100が第2反転後経路463に沿って搬送されてくるときは、この第2反転後経路463に沿って原稿100を搬送するために、共通ローラ38は反時計回りに回転するように制御される。
【0065】
従って、ある原稿100が接続経路472に沿って搬送されており、その後間もなく他の原稿100が第2反転後経路463に沿って搬送されてくる場合、ADF24は、以下のように共通ローラ38の回転方向を制御する必要がある。即ち、当初は共通ローラ38を時計回りに回転させ、共通ローラ38が原稿100を排出し終えた後に共通ローラ38の回転方向を時計回りから反時計回りに切り替えて、次の原稿100を第2反転後経路463に沿って搬送する。
【0066】
しかし、初めの原稿100が共通ローラ38を通過して排出された後も、例えば既に排紙トレイ53上に排出されている原稿との摩擦によって排出の勢いが弱められてしまう等の原因で、排出直後の原稿100の端部が共通ローラ38又は対向ローラ39の表面に接触した状態で留まっていることがある。この状態で共通ローラ38の回転方向が時計回りから反時計回りに切り替わると、この初めの原稿100が、共通ローラ38によって再びADF24の内部へ繰り込まれてしまう。この場合、読取りが行われた原稿100の排出が失敗することになり、また、再び繰り込まれた初めの原稿100が他の原稿100と接触することで紙詰まりが発生してしまう。
【0067】
この点を考慮し、本実施形態の押圧部材55は、ニップ部の近傍に位置している原稿100の後端部を、押圧面553によって排紙トレイ53へ強制的に押し出し、共通ローラ38(対向ローラ39)から原稿100を遠ざけることにより、上記したような再繰込み(原稿100の逆流)を防止できるように構成されている。
【0068】
そして本実施形態では、上記の目的を実現するために、共通ローラ38の回転方向が時計回りから反時計回りに切り替わる前に、押圧面553が退避位置から押出位置まで移動するように構成されている(図8(b)及び図8(c)を参照)。これにより、排出済みの原稿100を押し出して共通ローラ38及び対向ローラ39から十分に遠ざけた状態で、共通ローラ38の回転方向を切り替えることができる。
【0069】
なお、押圧面553は退避位置から押出位置に移動する途中でニップ位置を通過するが、当該ニップ位置を通過する瞬間では、図8(b)に示すように、押圧面553が図7に示す排出方向と略垂直となっている。そのため、原稿100は、押圧面553をすり抜けることなく、確実に排紙トレイ53側へ押されることになる。
【0070】
そして、押圧面553を押出位置に移動させた後に、共通ローラ38の回転方向を時計回りから反時計回りへ切り替える(図8(d)及び図9の時刻t2を参照)。その後、反時計回りに回転する共通ローラ38によって、次の原稿100を第2反転後経路463に沿って搬送することができる。このとき、排紙トレイ53上の原稿100の端部が何らかの理由で再び共通ローラ38の表面に接触し、これによって原稿100がADF24の内部に引き込まれることも考えられるが、その場合でも、排紙トレイ53上の原稿100の再繰込みは、押出位置にある押圧面553によって阻止される。なお、押圧面553が押出位置にあるときは、第2反転後経路463に沿って搬送される原稿100を、押圧アーム552の上面によって案内できるようになっている(図8(d)を参照)。
【0071】
次に、押出位置にある押圧面553を退避位置に移動させるタイミングについて、図9及び図10を参照して説明する。図10は、押出位置にある押圧面553を退避位置に移動させるタイミングを示す拡大正面図である。
【0072】
共通ローラ38が反時計回りに回転しているときに、排紙トレイ53上の原稿100が共通ローラ38の表面に接触することによりADF24内に逆流しようとしても、そのような再繰込みは押圧面553によって阻止されることは上述したとおりである。しかし、再繰込みが阻止されているにしても、この原稿100が共通ローラ38と押圧部材55との間に引っ掛かる等して、共通ローラ38から離れないことも考えられる(図10(a)参照)。従って、この状態で仮に押圧面553を押出位置から退避位置に移動させると、反時計回りに回転する共通ローラ38が原稿100を排出方向上流側に搬送して、再繰込みが発生してしまう。
【0073】
この点、本実施形態では、共通ローラ38の回転方向が反時計回りから時計回りに切り替わった後に、押圧面553が押出位置から退避位置に移動するように、押圧部材55の駆動タイミングが制御されている(図9の時刻t1及びt3、図10(b)及び図10(c)を参照)。これにより、時計回りに回転する共通ローラ38が、引っ掛かっていた原稿100を右側へ送り出して排紙トレイ53に落とし、その後に押圧面553を移動させるので、再繰込みを確実に防止することができる。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態のADF24は、原稿搬送経路40と、共通ローラ38と、対向ローラ39と、押圧部材55と、を備える。原稿搬送経路40は、原稿100を搬送するためのものである。共通ローラ38は、図7において時計回りに回転することで原稿100を排紙トレイ53に排出可能であり、反時計回りに回転することで原稿100を原稿搬送経路40(第2反転後経路463)に沿って搬送可能である。対向ローラ39は、共通ローラ38と対向する位置に配置され、排出される原稿100を共通ローラ38とともにニップする。押圧部材55は、押圧部材回転軸551を回転軸として回動可能な押圧面553を有し、この押圧面553が原稿100を押圧することで当該原稿100を排出させる。共通ローラ38が時計回りに回転するときの原稿100の搬送方向を排出方向としたときに、押圧面553は、ニップ位置よりも排出方向上流側の退避位置から、ニップ位置を経由して、ニップ位置よりも排出方向下流側の押出位置まで移動可能である。
【0075】
これにより、押圧部材55の押圧面553が退避位置から押出位置に移動することで、排出済みであるにもかかわらずニップ位置の近傍にある原稿100を、強制的にニップ位置から遠ざけることができる。これにより、原稿100の再繰込みを防止できる。
【0076】
また、本実施形態のADF24においては、時計回りに回転する共通ローラ38が反時計回りに回転を始める前に、押圧面553を退避位置から押出位置に移動させる。
【0077】
これにより、共通ローラ38が反時計回りに回転して、排出済みの原稿100を再び原稿搬送経路40に繰り込んでしまう前に、押圧部材55の押圧面553によって原稿100を押圧して排出し、更に、原稿100の再繰込みがされないように押圧面553で押し止めることが可能な状態とすることができる。そのため、読取りが完了した原稿100を適切に排出できるとともに、排出しきれなかった原稿100が他の原稿100と干渉して紙詰まりを起こすことを防止できる。
【0078】
また、本実施形態のADF24においては、反時計回りに回転する共通ローラ38が時計回りに回転を始めた後に、押圧面553を押出位置から退避位置に移動させる。
【0079】
これにより、共通ローラ38が時計回りに回転して引っ掛かっている原稿100を排出させた後に、押圧部材55の押圧面553が退避位置に移動することになる。そのため、原稿100の再繰込みを確実に防止できる。
【0080】
また、本実施形態のADF24において、押圧面553は、ニップ位置を通過するときに、排出方向と垂直になっている。
【0081】
これにより、押圧面553が原稿100と接触したときに、押圧面553に沿って原稿100が流れる(原稿100が押圧面553をすり抜ける)ことを防止して、原稿100を確実に排出させることができる。
【0082】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0083】
上記実施形態では、押圧アーム552を回動させることで押圧面553を移動させているが、押圧面553が形成されている部材をスライド(平行移動)させることで当該押圧面553を移動させる構成にしても良い。
【0084】
押圧面553は、原稿100を押圧可能であれば適宜の形状に構成することができる。
【0085】
上記実施形態では、対向部材として対向ローラ39を用いているが、共通ローラ38とともに原稿100をニップして排出可能である限り、ローラ形状以外の部材を対向部材として用いることができる。
【0086】
上記実施形態で用いた縮小光学系のスキャナユニット25に代えて、密着型イメージセンサ等を使用する構成に変更することができる。
【0087】
上記実施形態ではイメージスキャナ装置11は複合機1の一部として備えられているが、この構成に代えて、単体のイメージスキャナ装置として構成することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 複合機
11 イメージスキャナ装置(原稿読取装置)
24 ADF(自動原稿送り装置)
38 共通ローラ
39 対向ローラ(対向部材)
40 原稿搬送経路
55 押圧部材
553 押圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送するための原稿搬送経路と、
一方向に回転することで原稿を前記原稿搬送経路の外部に排出可能であり、他方向に回転することで原稿を前記原稿搬送経路に沿って搬送可能である共通ローラと、
前記共通ローラと対向する位置に配置され、排出される原稿を前記共通ローラとともにニップする対向部材と、
移動可能な押圧面を有し、この押圧面が原稿を押圧することで当該原稿を排出させる押圧部材と、
を備え、
前記共通ローラが前記一方向に回転するときの原稿の搬送方向を排出方向としたときに、
前記押圧面は、前記共通ローラと前記対向部材とが接触する位置であるニップ位置よりも排出方向上流側の第1位置から、前記ニップ位置を経由して、前記ニップ位置よりも排出方向下流側の第2位置まで移動可能であることを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動原稿送り装置であって、
前記一方向に回転する前記共通ローラが前記他方向に回転を始める前に、前記押圧面を第1位置から第2位置に移動させることを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動原稿送り装置であって、
前記他方向に回転する前記共通ローラが前記一方向に回転を始めた後に、前記押圧面を第2位置から第1位置に移動させることを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の自動原稿送り装置であって、
前記押圧面は、前記ニップ位置を通過するときに、前記排出方向と垂直になることを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の自動原稿送り装置を備えることを特徴とする原稿読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−225326(P2011−225326A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96482(P2010−96482)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】