説明

自動変速機のバルブボディアセンブリ

【課題】
この発明は、自動変速機のバルブボディアセンブリにおいて、フィルターなしのガスケットをフィルター付きのガスケットと誤って組付けるおそれをなくしつつ、誤組付け判別のためのレイアウトスペースを縮小化して、さらにガスケットのフィルターの有無を直感的に判断することができる自動変速機のバルブボディアセンブリを提供することを目的とする。
【解決手段】
第一ガスケット30、第二ガスケット40及びセパレートプレート13の同じ部位の一箇所に、タブ30a,40a,13aを設け、そのタブ30a,40a,13aに開口孔30b,40b,13bを形成すると共に、第一ガスケット30の開口孔30bのみにフィルター31を設けることで、第一ガスケット30の存在が確実に判別され、第二ガスケット40、セパレートプレート13の存在も確認できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動変速機の油圧制御装置に用いられるバルブボディアセンブリ、具体的には、バルブボディアセンブリに組み付けられるガスケットの誤組付けを防止する自動変速機のバルブボディアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動変速機は、クラッチ、ブレーキ等の摩擦締結要素に油圧を供給する油圧制御装置を設けているが、この油圧制御装置は、内部に油路を形成したバルブボディアセンブリを備えている。
【0003】
このバルブボディアセンブリは、少なくとも二つのバルブボディの油路面を対向して組合せ、その間にセパレートプレートを介装することで、油圧制御を行う油路を形成している。
【0004】
また、各バルブボディとセパレートプレートとの間には、バルブボディアセンブリのオイル漏れ防止及び油路のシール性確保のため、ガスケットを介装している。
【0005】
このようなガスケットには、油路内でのダスト流動を防ぐため、メッシュ状のフィルターを設けることも知られている。例えば、下記非特許文献1には、フィルター付きのガスケットとフィルターなしのガスケットを、セパレートプレートの両面位置にそれぞれ配置して、バルブボディアセンブリを組み立てる構造が開示されている。
【0006】
【非特許文献1】「オートマチック・トランスアクスル構造と整備」マツダ株式会社サービス部,1998年4月,pK1−46
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、これらのガスケットは、フィルター付きもフィルターなしも共にセパレートプレートの両面に位置してオイル漏れ等を防止するため、両者の外形形状は極めて類似する。
【0008】
よって、バルブボディアセンブリの組立て作業者やサービス作業者が、フィルターなしのガスケットをフィルター付きのガスケットと誤って組付けるおそれが生じる。
【0009】
このように、誤ってフィルターなしのガスケットを組付けると、ダスト等の捕捉が必要なポイントで油路内のダスト等を捕捉することができず、油圧制御装置の故障を引き起こす可能性が生じる。
【0010】
そこで、従来は、前記非特許文献1に記載しているように、ガスケットに、バルブボディアセンブリから外方に一部突出するタブを設け、誤組付け防止を図っていた。
【0011】
すなわち、図6の模式図に示すように、バルブボディアセンブリを組立てる場合には、セパレートプレートを挟んで両面位置に、セパレートプレートとほぼ同一形状のフィルター付きのガスケットと、フィルターなしのガスケットとを配置するが、各部材の外端部に外方に突出するタブを、それぞれズラした位置に形成して、組み立てた(重合させた)状態で、各タブがそれぞれ視認できるように構成している。
【0012】
これにより、各タブが存在するかを確認して、誤組付け(組みつけ忘れ)を防止するようにしているのである。
【0013】
しかしながら、こうした誤組付け防止構造を採用した場合には、以下のような問題が生じる。
【0014】
まず、複数のタブをバルブボディアセンブリより外方に突出してズラして並べる必要があるため、誤組付け判別のためのレイアウトスペースがバルブボディアセンブリの周囲にある程度必要となるといった問題が生じる。
【0015】
また、全て同じような形状のタブで構成しているため、どのタブがフィルター付きのガスケットのタブなのか確認するために別途対応表が必要になり、直感的に、フィルター付きのガスケットでないことを判断できないといった問題が生じる。
【0016】
そこで、本発明は、自動変速機のバルブボディアセンブリにおいて、フィルターなしのガスケットをフィルター付きのガスケットと誤って組付けるおそれをなくしつつ、誤組付け判別のためのレイアウトスペースを縮小化して、さらにガスケットのフィルターの有無を直感的に判断することができる自動変速機のバルブボディアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の自動変速機のバルブボディアセンブリは、油路が形成された油路面を有し、互いに該油路面が対向するように積層した第一バルブボディ及び第二バルブボディと、前記第一バルブボディと第二バルブボディ間に介装するセパレートプレートと、前記第一バルブボディの油路面と前記セパレートプレート間に介装する第一ガスケットと、該第一ガスケットに外形が類似し前記第二バルブボディの油路面と前記セパレートプレート間に介装する第二ガスケットとを備える自動変速機のバルブボディアセンブリであって、前記第一ガスケットの油穴にフィルターを設ける一方、前記第二ガスケットの油穴にはフィルターを設けずに構成し、前記第一ガスケットの所定箇所に、前記第二ガスケットとの識別のためにフィルターを露出させたフィルター露出部を設け、前記セパレートプレート及び前記第二ガスケットに、前記第二バルブボディ側から見て、前記フィルター露出部が視認できるように視認部を設けたものである。
【0018】
上記構成によれば、第一ガスケットをフィルター付きガスケットとして機能させ、第二ガスケットをフィルターなしガスケットとして機能させる。そして、第一ガスケットにフィルターを露出させたフィルター露出部を設け、第二ガスケットとセパレートプレートに、そのフィルター露出部を第二バルブボディ側から見て視認できる視認部を設けることになる。
【0019】
このため、組み付け作業者等は、第二ガスケット及びセパレートプレートの存在も確認しながら、第二バルブボディ側から第一ガスケットすなわちフィルター付きガスケットの存在を、視認部から見えるフィルター(フィルター露出部)の有無によって、容易に判断することができる。
【0020】
なお、ここで第一バルブボディと第二バルブボディの二つのバルブボディの存在を前提にしているが、本発明は、二つのバルブボディを積層したものに限定するものではなく、それ以上に複数のバルブボディを積層するバルブボディアセンブリで実施してもよい。
【0021】
また、視認部の形状は、孔、切欠き等、フィルター露出部を第二バルブボディ側から視認できれば、どのような形状であってもよい。
【0022】
この発明の一実施態様においては、前記バルブボディアセンブリは自動変速機ケースに設けた収納室内に設けるものであって、前記収納室には、外方から前記バルブボディアセンブリを組み込むために開口部と、前記開口部から内方側に前記バルブボディアセンブリを装着するバルブボディアセンブリ装着面とを設け、前記第一ガスケットのフィルター露出部を、バルブボディアセンブリの装着状態で前記開口部の外方から見て視認できるように設定したものである。
【0023】
上記構成によれば、バルブボディアセンブリは、自動変速機ケースの収納室に開口部を通じて装着されるものの、自動変速機ケースの収納室に装着した状態でも第一ガスケットのフィルター露出部を開口部の外方から視認することができる。
【0024】
このため、バルブボディアセンブリを外的影響から保護するため収納部内に装着しても、その収納部から取り外すことなく、外方からフィルター露出部を視認することができる。
【0025】
よって、バルブボディアセンブリを自動変速機に組み付けた後、自動変速機から取り外さなくても、作業者等はフィルター付きガスケットの誤組付け(組付け忘れ)を判別することができ、誤組付けの判別作業性を高めることができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、前記所定箇所を、前記第二バルブボディ外形より外方側に延設した延設部に設定したものである。
【0027】
上記構成によれば、フィルター露出部が第二バルブボディ外形より外方側に延設した延設部に位置することになる。
【0028】
このため、フィルター露出部が第二バルブボディ外形より外方側に位置して、作業者等は容易に判別位置を確認することができる。
【0029】
よって、フィルター付きガスケットの誤組付けの判別作業性をさらに高めることができる。
【0030】
この発明の一実施態様においては、前記フィルター露出部を有する延設部を、前記第一バルブボディ外形より外方側に延設するように設定したものである。
【0031】
上記構成によれば、フィルター露出部が第一バルブボディ外形よりもさらに外方側に位置することになる。
【0032】
このため、フィルター露出部が第二バルブボディのみならず第一バルブボディよりも外方側に位置することになり、作業者等はさらに容易に判別位置を確認することができる。
【0033】
よって、フィルター付きガスケットの誤組付けの判別作業性をさらに高めることができる。
【0034】
この発明の一実施態様においては、前記フィルター露出部を有する延設部を、第二バルブボディ側からみて、前記第一バルブボディの外形が前記第二バルブボディよりも外方側に突出した突出部に位置するように設定したものである。
【0035】
上記構成によれば、フィルター露出部が第一バルブボディの突出部に位置することになる。
【0036】
このため、フィルター露出部は、第二バルブボディ側からみて、第一バルブボディの突出部で背面側が支持された状態となり、フィルター露出部の破損、折れ曲がり等が防止される。
【0037】
よって、作業者等は、確実に第二バルブボディ側からフィルター露出部を視認することができ、フィルター付きガスケットの誤組付けの判別作業性をさらに高めることができる。
【0038】
この発明の一実施態様においては、前記フィルター露出部を有する延設部を、前記第二バルブボディ外形の凹み部に設定したものである。
【0039】
上記構成によれば、フィルター露出部が第二バルブボディ外形の凹み部に位置することになる。
【0040】
このため、フィルター露出部を第二バルブボディ外形から突出して設けたとしても、バルブボディアセンブリ全体からみて、その突出量を少なくすることができる。
【0041】
よって、第二バルブボディ外形から突出するようにフィルター露出部を設けても、誤組付け判別のためのレイアウトスペースをコンパクトに構成することができる。
【0042】
この発明の一実施態様においては、前記所定箇所を、前記第二バルブボディ外形より内方側に設定したものであって、前記第二バルブボディに、前記第一ガスケットのフィルター露出部を視認できる窓部を形成したものである。
【0043】
上記構成によれば、フィルター露出部が第二バルブボディ外形より内方側に位置して、そのフィルター露出部を第二バルブボディに形成した窓部から視認することになる。
【0044】
このため、フィルター露出部を第二バルブボディ外形より突出させることなく視認することができる。
【0045】
よって、誤組付け判別のためのレイアウトスペースをバルブボディアセンブリの周囲に設けなくてもよいため、バルブボディアセンブリをコンパクトに構成することができる。
【0046】
この発明の一実施態様においては、前記窓部を、第二バルブボディのドレーン孔に設定したものである。
【0047】
上記構成によれば、第二バルブボディに予め設けたドレーン孔を利用してフィルター露出部を視認することになる。
【0048】
このため、別途フィルター露出部を視認するための窓部を第二バルブボディに形成する必要がなくなる。
【0049】
よって、第二バルブボディに余分な加工等を施すことなく誤組付けの判別作業を行うことができる。
【0050】
この発明の一実施態様においては、前記第一ガスケットは、フィルターを挟み込んで両面にガスケット紙を接着するものであって、前記フィルター露出部は、該ガスケット紙にフィルターを露出するための孔部を形成して構成したものである。
【0051】
上記構成によれば、フィルター露出部は、予めフィルターを挟んで接着するガスケット紙に、フィルターを露出させるための孔部を形成することで構成することになる。
【0052】
このため、フィルター付きガスケットの通常のフィルター部分の成形方法と同じであるため、別途フィルター露出部を構成するための加工は不要となる。
【0053】
よって、フィルター露出部を簡易に構成することができ、生産性を高めることができる。
【0054】
この発明の一実施態様においては、前記第一ガスケットのガスケット紙の外形と孔形状を、前記第二ガスケットのガスケット紙と同一としたものである。
【0055】
上記構成によれば、第一ガスケットの外形、孔形状と第二ガスケットの外形、孔形状が全く同一となる。
【0056】
このため、同じ加工金型で、第一ガスケットのガスケット紙と第二ガスケットのガスケット紙とを成形することができる。
【0057】
よって、加工金型を第一ガスケットと第二ガスケットとで共通化できるため、生産コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0058】
この発明によれば、組み付け作業者等は、第二ガスケット及びセパレートプレートの存在も確認しながら、第二バルブボディ側から第一ガスケット、すなわちフィルター付きガスケットの存在を、視認部から見えるフィルター(フィルター露出部)の有無によって、容易に判断することができる。
【0059】
したがって、自動変速機のバルブボディアセンブリにおいて、フィルターなしのガスケットをフィルター付きのガスケットと誤って組付けるおそれをなくしつつ、誤組付け判別のためのレイアウトスペースを縮小化して、ガスケットのフィルターの有無を直感的に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0061】
図1は、バルブボディアセンブリ1を自動変速機ケース2に装着した状態の正面図、図2はその側面図、図3は図2のA−A矢視断面図である。
【0062】
本実施形態のバルブボディアセンブリ1は、油路(図示せず)を形成した油路面11a、12aを互いに対抗するように積層する第一バルブボディ11及び第二バルブボディ12と、その間に介装して油路の絞りや連通路を形成するセパレートプレート13と、第一バルブボディ11とセパレートプレート13の間に介装してオイル漏れや油路のシール性を確保する第一ガスケット30と、第二バルブボディ12とセパレートプレート13の間に介装して同様にオイル漏れや油路のシール性を確保する第二ガスケット40と、これらの部材に対して直交方向に延びてこれらの部材を締結固定する複数の組立ボルト14…と、によって構成している。
【0063】
このバルブボディアセンブリ1は、自動変速機ケース2の車両後方側側壁(図2で矢印で示す方向が車両後方)に設けた収納室21内に、その開口部22から差し込まれ、収納室21内に設けられた締結ボス部23とこの締結ボス部23に対して螺合する固定ボルト24によって、組み付けられる。
【0064】
この収納部21は、路面等からの影響から、バルブボディアセンブリ1を保護するため、バルブボディアセンブリ1の周囲を取り囲むように略水平方向に延びる立設リブ部25を形成して、自動変速機ケース2の車両後方側側壁に凹部を形成することで構成している。
【0065】
このため、バルブボディアセンブリ1は、自動変速機ケース2に組み付けた状態では、車両後方側の開口部22、すなわち第二バルブボディ12側からしかバルブボディアセンブリ1を視認することができない。
【0066】
前述した第一バルブボディ11や第二バルブボディ12及びセパレートプレート13の具体構造については、周知であることから説明を省略する。
【0067】
本実施形態の第一ガスケット30は、後述のように開口孔にフィルター31を設けたいわゆるフィルター付きガスケットである。一方、第二ガスケット40は、フィルターを設けていない一般的なフィルターなしのガスケットである。
【0068】
この第一ガスケット30と第二ガスケット40は、図2及び図3に示すように、それぞれセパレートプレート13を挟んで第一バルブボディ11側及び第二バルブボディ12側に位置し、バルブボディアセンブリ1のオイル漏れの防止や、油路の油圧が適切に生じるよう油路のシール性を確保している。
【0069】
このように、これらの第一ガスケット30、第二ガスケット40とセパレートプレート13は、三枚重ね状態となってバルブボディアセンブリ1に組み込まれる。
【0070】
この第一ガスケット30、第二ガスケット40及びセパレートプレート13の詳細構造について、図4により説明する。
30が第一ガスケットで、13がセパレートプレート、40が第二ガスケットである。
【0071】
まず、第一ガスケット30は、二枚のガスケット紙32,33を接着した異形プレート状に構成され、このガスケット紙の間にメッシュ状のフィルター31を介装している(図3参照)。
【0072】
この第一ガスケット30には、無数の開口孔を形成しており、34…は前述の組立ボルト14…を挿通するボルト挿通孔、35…は前述の固定ボルト24…を挿通するボルト挿通孔、また、メッシュ状のフィルター31が露出している孔は、油路内のダスト等を捕捉するフィルター孔36…である。その他、フィルターがない孔は、セパレートプレート13を貫通して流れるオイルを流動させるための流動孔37…であり、さらに小さな孔は、セパレートプレート13と第一ガスケット30との間に溜まってしまうオイルをドレーン部(図示せず)に排出して第一ガスケット30の拗れを防止する排出孔38…である。
【0073】
次に、セパレートプレート13は、金属製プレート部材で構成し、第一ガスケット30と同一外形の異形プレート状に形成している。そして、開口孔も排出孔38…以外は、第一ガスケット30と同様に形成し、油路の絞りやオイル流動を生じさせるようにしている。
【0074】
なお、第一ガスケット30の開口孔と対応する開口孔は、第一ガスケット30の開口孔の符号に「´」をつけた符号を付して説明を省略する。
【0075】
また、第二ガスケット40は、第一ガスケット30と全く同一形状のガスケット紙41,42を二枚接着して構成している(図3参照)。すなわち、外形形状も、ボルト挿通孔44,45、フィルター孔46…、流動孔47…、排出孔48…の位置及び形状についても、全く同一形状で構成している。
【0076】
このため、同一形状のガスケット紙で第一ガスケット30も第二ガスケット40も構成することができ、同じ加工金型によって、第一ガスケット30のガスケット紙32,33も第二ガスケット40のガスケット紙41,42も、成形することができる。
【0077】
よって、第一ガスケット30と第二ガスケット40の生産コストを低減することができる。
しかし、この第二ガスケット40と第一ガスケット30は、フィルター孔46にフィルター31を設けていないだけで、外形上全く同じである。
【0078】
このため、バルブボディアセンブリ1の組立て作業者やサービス作業者が第一ガスケット30と第二ガスケット40とを間違って誤組付けするといったおそれがある。
【0079】
仮に、第一ガスケット30を第二ガスケット40と間違えて組付けた場合には、フィルター31によるダスト等の捕捉が必要なポイントで油路内のダストを捕捉できなくなり、油圧制御装置(図示せず)に故障の原因が生じる。また、第二ガスケット40を第一ガスケット30と間違えて組付けた場合には、フィルター31が二枚重ねとなり、油路内のオイルの流動抵抗が増加して、迅速な変速切り替え等が行われないといった問題が生じる。
【0080】
そこで、この第一ガスケット30や第二ガスケット40の誤組付けや組付け忘れを防止するため、従来は、図6に示すようにガスケット130,140やセパレートプレート113にそれぞれ位置をズラしたタブ130a,140a,113aを形成し、これらを重合して組み付けた後で、各タブ130a,140a,113aの存在を確認することで誤組付け防止を図っていた。
【0081】
しかし、このようにタブ130a,140a,113aをズラして設けるとタブのスペース、すなわち判別スペースを大きく確保する必要があり、また、どのタブがどの部材のタブなのか一目で判らないため、別途対応表によって個々のタブを確認する必要があった。
【0082】
よって、本実施形態のバルブボディアセンブリ1では、図7の模式図に示すように、第一ガスケット30、第二ガスケット40及びセパレートプレート13の同じ部位の一箇所に、タブ30a,40a,13aを設け、そのタブ30a,40a,13aに開口孔30b,40b,13bを形成すると共に、第一ガスケット30の開口孔30bのみにフィルター31を設けることで、第一ガスケット30の存在が確実に判別され、第二ガスケット40、セパレートプレート13の存在も確認できるようにしている。
【0083】
すなわち、第一ガスケット30のタブ30aの開口孔30bにフィルター31が露出するフィルター露出部39を設けることで、作業者等が直感的にフィルター31があることを認識し、第一ガスケット30すなわちフィルター付きガスケットが存在することを、判定することができる。
【0084】
また、同一箇所に開口孔30b,40b,13bを形成したタブ30a,40a,13aを設けて、各部材の存在を確認できるため、レイアウトスペースをコンパクトにできる。
【0085】
さらに、この開口孔30b,40bの径を中央に位置するセパレートプレート13の開口孔13bを小さくすることで、第二ガスケット40側から見た状態で開口孔30b,40b,13bが三重となり、全ての部材の存在を確実に判別できるようになる。
【0086】
図4で、この判別部分のタブ30a,40a,13aの具体構造について説明する。
この実施形態の第一ガスケット30、第二ガスケット40及びセパレートプレート13では、図面上右側の上下方向中央位置にタブ30a,40a,13aを設定しており、第一ガスケット30のタブ30aにはフィルター露出部39を設け、セパレートプレート13、第二ガスケット40には開口孔13b,40bを設けることで、フィルター露出部39を第二ガスケット40側、すなわち第二バルブボディ12側から視認できるように構成している。なお、セパレートプレート13の開口孔13bは、前述のように他の開口孔30b,40bよりも小径に構成している。
【0087】
このように構成することで、三部材を重ね合わせた状態で第二バルブボディ12側から見ると、最も中心に第一ガスケット30のフィルター31(フィルター露出部39)を視認することができ、その周囲にセパレートプレート13の金属部分を視認することができ、さらにその周囲に第二ガスケット40のガスケット紙表面を視認することができる(図1参照)。
【0088】
よって、一箇所のタブ30a,40a,13aを確認することで、第一ガスケット30、第二ガスケット40及びセパレートプレート13の存在と組付け順番を直感的に判断できる。
【0089】
特に、組付け忘れによる影響が大きい第一ガスケット30、すなわちフィルター付きガスケットの存否を、フィルター露出部39を視認することで直感的に判断できるため、誤組付けによる不具合をより少なくできる。
【0090】
また、本実施形態の判別を行うタブ30a,40a,13aを、図6の模式図及び図1に示すように、バルブボディアセンブリ1の凹状にへこんだ部分1aに設定している。このためバルブボディアセンブリ1全体で見た時に、外方側への突出量を少なくできるため、このタブ30a,40a,13aのレイアウトスペースを極力小さくすることができる。
【0091】
さらに、本実施形態のバルブボディアセンブリ1は、自動変速機ケース2に装着した状態で、車両後方側からしか視認できないが、図1に示すように、この判別を行うタブ30a,40a,13aを、車両後方側の開口部22から視認できるよう車幅方向に延びるように突出させているため、自動変速機ケース2に装着した状態のままでタブ30a,40a,13aを視認することができる。
【0092】
よって、作業者等は自動変速機からバルブボディアセンブリ1を取り外すことなくガスケット等の誤組付けを判別することができ、判別作業性を向上することができる。
【0093】
加えて、このタブ30a,40a,13aは、図3からも分かるように第二バルブボディ12の外形端はもちろんのこと、第一バルブボディ11の外形端よりも外方側に突出しているため、作業者等はタブ30a,40a,13aの位置を容易に確認することができ、判別作業性をより向上することができる。
【0094】
次に、その他の実施形態について、図8、図9及び図10によって説明する。図8はタブの開口孔等の形状等を変更した他の実施形態を示した図、図9はタブに対する第一バルブボディ11の位置関係を変更した他の実施形態を示した図、図10は、第二バルブボディ12側に切欠き等を設けてフィルター露出部39等を判別する他の実施形態を示した図である。
【0095】
まず、図8(a)には、開口孔230b,240b,213bを矩形形状にしたものを示している。このように開口孔を矩形形状にしても、前述の実施形態と同様に第一ガスケット30の開口孔230bにフィルター露出部239を設け、セパレートプレートの開口孔213bを小さくし、第二ガスケットの開口孔240bを大きくすることで、第一ガスケット、セパレートプレート及び第二ガスケットの誤組付け等を、一箇所に設けたタブ30a,40a,13aを視認することで判別することができる。
【0096】
図8(b)は、開口孔の代わりに矩形形状の切欠部330b,340b,313bを、タブ30a,40a,13aに形成したものである。この場合も前述の実施形態と同様に、第一ガスケットの切欠部330bにフィルター露出部339を設け、セパレートプレートの切欠部313bを小さくし、第二ガスケットの切欠部340bを大きくするものである。このように構成することで、第一ガスケット、セパレートプレート及び第二ガスケットの誤組付け等を、一箇所のタブ30a,40a,13aを視認することで判別することができる。
【0097】
図8(c)は、バルブボディアセンブリ1(12)の屈曲した角部1bに、開口孔430b,440b,413bを設けたタブ430a,440a,413aを配置したものである。このように、バルブボディアセンブリ1の角部1bの囲まれた場所にタブ430a,440a,413aを設置することで、タブ430a,440a,413aを設けたことによる突出量を相対的に小さくすることができ、さらに外部からの影響を受けにくくしてタブ430a,440a,413aを保護することも可能となり、タブの劣化等を防止することもできる。
【0098】
図9の(d)には、第二バルブボディ512の外形端よりも、第一バルブボディ511の外形端を内方側に位置させた場合の断面図を示す。
【0099】
このように、第一バルブボディ511と第二バルブボディ512との外端位置をズラしたとしても、タブ30a,40a,13aを第二バルブボディ512よりも外方側に突出させることにより、第一ガスケット30等の誤組付けを防止することができる。
【0100】
図9の(e)には、(d)とは逆に、第二バルブボディ612の外形端よりも、第一バルブボディ611の外形端を外方側に位置させた場合の断面図を示す。
【0101】
このように、第一バルブボディ611に第二バルブボディ612よりも外方側に突出する突出部611aを設け、この突出部611aにタブ30a,40a,13aを位置させることで、第二バルブボディ612側から見て、タブ30a,40a,13aの背面側が、第一バルブボディ611で支持されることになるため、タブ30a,40a,13aの損傷や折れ曲りが防止される。
【0102】
よって、タブ30a,40a,13aが確実に車両後方側から視認できる位置に保持されるため、より作業者等の判別作業性を高めることができる。
【0103】
図10(f)には、第二バルブボディ712の外形端より内方側で誤組付けの判別を行うように構成したものを示す。この実施形態は、第二バルブボディ712に設けたドレーン孔700(具体的には図示せず)に該当する位置の第一ガスケット、第二ガスケット及びセパレートプレートに開口孔730b,740b,713bを形成して判別を行うものである。
【0104】
この実施形態も、前述の実施形態と同様に第一ガスケットにフィルター露出部739を設け、セパレートプレートの開口孔713bを小さく、第二ガスケットの開口孔740bを大きく設定することで、前述の実施形態と同様に誤組付けの判別を行うことができる。
【0105】
特に、バルブボディアセンブリの外形端より内方側に、その判別位置を設定しているため、バルブボディアセンブリの周囲に突出するタブを、別途設ける必要がなく、バルブボディアセンブリをコンパクトに構成することができる。
【0106】
また、既存のドレーン孔700を利用して判別位置を視認するため、別途判別のためだけに第二バルブボディ712に加工を施す必要がないため、生産性を高めることができる。
なお、ドレーン孔が、適切な位置にない場合には、窓部を別途形成してもよい。
【0107】
図10(g)は、第二バルブボディ812の角部等を切欠いて、第二ガスケット840、セパレートプレート813、第一ガスケットのフィルター露出部839を露出したものを示したものである。
【0108】
この図に示すように、この実施形態では、第二バルブボディ812の角部800、801を切り欠くことで第二ガスケット840等を露出させる。
【0109】
そして、切欠き面積を徐々に変化させることにより、第二ガスケット840、セパレートプレート813、第一ガスケットのフィルター露出部839をそれぞれ露出するように設定している。
【0110】
これにより、この実施形態も、前述の実施形態と同様に誤組付けの判別を行うことができる。
また、この場合も、タブがバルブボディアセンブリの外形端より外方に突出しないので、バルブボディアセンブリ1をコンパクトに構成することができる。
【0111】
さらに、この場合は、第一バルブボディ(図示せず)が、図9(e)と同様に、第一ガスケットの背面側に位置してフィルター露出部839を支持するため、フィルター露出部839の損傷や折れ曲りを防止して判別作業性を向上できる。
【0112】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の視認部は、実施形態の開口孔13b,40b,213b,240b,413b,440b,713b,740b、切欠部313b,340bに対応し、
以下同様に、
延設部は、タブ13a,30a,40a,413a,430a,440aに対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、三つ、四つのバルブボディを積層するようなバルブボディアセンブリに適用してもよい。
【0113】
また、ガスケットの枚数も、三枚、四枚以上積層するものであってもよい。
さらに、セパレートプレートの開口孔の径を他のガスケットの開口孔と同じ大きさに設定するようにしてもよい。
【0114】
このように、この発明は、あらゆる自動変速機のバルブボディアセンブリに適用する実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施形態に係るバルブボディアセンブリの平面図。
【図2】バルブボディアセンブリの側面図。
【図3】図1のA−A線矢視断面図。
【図4】ガスケット及びセパレートプレートの平面詳細図。
【図5】バルブボディアセンブリの装着状態を示す模式図。
【図6】従来構造の模式図。
【図7】実施形態の模式図。
【図8】開口孔等の形状等を変更した他の実施形態を示した図。
【図9】第一バルブボディの位置関係を変更した他の実施形態を示した図。
【図10】第二バルブボディに切欠き等を設けた他の実施形態を示した図。
【符号の説明】
【0116】
1…バルブボディアセンブリ
2…自動変速機ケース
11,511,611…第一バルブボディ
12,512,612,712,812,…第二バルブボディ
13…セパレートプレート
13a,413a…タブ(延設部)
30…第一ガスケット
30a,430a…タブ(延設部)
31,831…フィルター
39,239,339,739,839…フィルター露出部
40,840…第二ガスケット
40a,440a…タブ(延設部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油路が形成された油路面を有し、互いに該油路面が対向するように積層した第一バルブボディ及び第二バルブボディと、
前記第一バルブボディと第二バルブボディ間に介装するセパレートプレートと、
前記第一バルブボディの油路面と前記セパレートプレート間に介装する第一ガスケットと、
該第一ガスケットに外形が類似し前記第二バルブボディの油路面と前記セパレートプレート間に介装する第二ガスケットとを備える自動変速機のバルブボディアセンブリであって、
前記第一ガスケットの油穴にフィルターを設ける一方、前記第二ガスケットの油穴にはフィルターを設けずに構成し、
前記第一ガスケットの所定箇所に、前記第二ガスケットとの識別のためにフィルターを露出させたフィルター露出部を設け、
前記セパレートプレート及び前記第二ガスケットに、前記第二バルブボディ側から見て、前記フィルター露出部が視認できるように視認部を設けた
自動変速機のバルブボディアセンブリ。
【請求項2】
前記バルブボディアセンブリは自動変速機ケースに設けた収納室内に設けるものであって、
前記収納室には、外方から前記バルブボディアセンブリを組み込むために開口部と、
前記開口部から内方側に前記バルブボディアセンブリを装着するバルブボディアセンブリ装着面とを設け、
前記第一ガスケットのフィルター露出部を、バルブボディアセンブリの装着状態で前記開口部の外方から見て視認できるように設定した
請求項1記載の自動変速機のバルブボディアセンブリ。
【請求項3】
前記所定箇所を、前記第二バルブボディ外形より外方側に延設した延設部に設定した
請求項1又は2記載の自動変速機のバルブボディアセンブリ。
【請求項4】
前記フィルター露出部を有する延設部を、前記第一バルブボディ外形より外方側に延設するように設定した
請求項3記載の自動変速機のバルブボディアセンブリ。
【請求項5】
前記フィルター露出部を有する延設部を、第二バルブボディ側からみて、前記第一バルブボディの外形が前記第二バルブボディよりも外方側に突出した突出部に位置するように設定した
請求項3記載の自動変速機のバルブボディアセンブリ。
【請求項6】
前記フィルター露出部を有する延設部を、前記第二バルブボディ外形の凹み部に設定した
請求項3記載の自動変速機のバルブボディアセンブリ。
【請求項7】
前記所定箇所を、前記第二バルブボディ外形より内方側に設定したものであって、
前記第二バルブボディに、前記第一ガスケットのフィルター露出部を視認できる窓部を形成した
請求項1又は2記載の自動変速機のバルブボディアセンブリ。
【請求項8】
前記窓部を、第二バルブボディのドレーン孔に設定した
請求項6記載の自動変速機のバルブボディアセンブリ。
【請求項9】
前記第一ガスケットは、フィルターを挟み込んで両面にガスケット紙を接着するものであって、
前記フィルター露出部は、該ガスケット紙にフィルターを露出するための孔部を形成して構成した
請求項1〜7記載の自動変速機のバルブボディアセンブリ。
【請求項10】
前記第一ガスケットのガスケット紙の外形と孔形状を、前記第二ガスケットのガスケット紙と同一とした
請求項9記載の自動変速機のバルブボディアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−207715(P2006−207715A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21298(P2005−21298)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】