説明

自動変速機の制御装置

【課題】 自動変速機のオイル中に混入した導電性異物によるターミナル10〜12と金属プレート3との間のショートを防止することを課題とする。
【解決手段】 ターミナル10とターミナル11、12とを上下に重ね合わせてレーザ溶接してターミナル10〜12を導通接合した後に、ターミナル10とターミナル11、12との導通接合部であるレーザ溶接部14、15の露出面、ターミナル10の露出部31の表面およびターミナル11、12の露出部33の表面に絶縁材36を塗布する。その後に、TCUと金属プレート3とが接触するように、TCUおよび配線ユニットを金属プレート3に締結ボルトにより締結している。これによって、ターミナル10〜12と金属プレート3との間に自動変速機のオイル中に混入した導電性異物が跨がって堆積している場合であっても、ターミナル10〜12と金属プレート3とを確実に絶縁できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される自動変速機(A/T)を制御する自動変速機の制御装置に関するもので、特に自動変速機の内部に搭載される自動変速機制御ユニット(TCU)を備えた自動変速機の制御装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、自動変速機の内部の油圧制御装置の上部に配置され、各種センサ信号に基づいて電磁油圧制御弁等の制御部品を動作させて自動変速機の変速制御を行う制御モジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の制御モジュールは、図12および図13に示したように、モールド樹脂101に電子部品およびリード端子(ターミナル102)が封止された自動変速機用電子制御ユニット(TCU)と、モールド樹脂103に配線部材である複数のバスバー104が成形された配線ユニットと、内部にTCUおよび配線ユニットを収容するハウジング(カバー105、ベース部材106)とにより構成されている。
【0003】
TCUのモールド樹脂101は、電子部品(ICチップ等)を搭載した回路基板と、この回路基板の端部よりも外側に設けられた複数のターミナル102と、回路基板とターミナル102を接続する線状の配線部材とを包み込むように封止している。そして、ターミナル102の回路基板側に対して逆側の部位は、アウタリード(バスバー104との接続部)としてモールド樹脂101の側面より突出して露出している。
配線ユニットのバスバー104は、その中間部がモールド樹脂103に埋設されている。そして、バスバー104には、モールド樹脂103の側面からTCU側に突出して露出した露出部111、およびモールド樹脂103の側面からコネクタ107側に突出して露出した露出部112を有している。
【0004】
そして、制御モジュールは、油圧制御装置の上部、つまりオイルパンの内部に設置されているので、耐油性、耐熱性が要求される上、搭載スペースの制約上、小型化や薄型化が要求される。さらに、制御モジュールには、自動変速機のオイル中に変速機構の摩耗等により発生した導電性異物(導電性金属粒子、鉄系コンタミ)が隣り合う端子間または隣り合う配線間(導体間)に跨がって堆積した場合の端子間ショート(短絡)、配線間(導体間)ショート(短絡)を防止するための絶縁構造が必要となる。
そこで、特許文献1に記載の制御モジュールは、ターミナル102とバスバー104との導通接合部(溶接部)をカバー105とベース部材106との間に形成される空間内に入れて、カバー105と複数の絶縁壁113、114との間に形成される端子収容室115に各導通接合部を個別に収容し、カバー105の内壁面と複数の絶縁壁114の先端とを溶着固定することで、導電性異物が跨がって堆積した場合の端子間ショートおよび配線間(導体間)ショートを防止している。
【0005】
[従来の技術の不具合]
ところが、特許文献1に記載の制御モジュールにおいては、制御モジュール内、特にTCUおよび配線ユニットへのオイルの浸入を抑制するために、TCUおよび配線ユニットを液密的に取り囲む大型のハウジング(カバー105、ベース部材106)が、TCUおよび配線ユニットの上下に必要になるので、部品点数や組付工数が多く、製品コストが上昇するという問題があった。
【0006】
また、導電性異物が隣り合う端子間または隣り合う配線間に跨がって堆積した場合の短絡を防止するために、カバー105の内壁面と複数の絶縁壁114の先端とを溶着して、バスバー104を個別に収容する端子収容室115を隙間なく取り囲むようにしているので、ハウジング(カバー105、ベース部材106)に非常に高精度な樹脂成形が必要になる。これにより、製品コストが更に上昇するという問題がある。
【0007】
また、仮に複数の絶縁壁113、114によってターミナル102とバスバー104との各導通接合部を個別に取り囲むようにした場合であっても、TCUの樹脂モールドの側面から突出して露出した複数のターミナル102の各露出部と、配線ユニットのモールド樹脂103の側面から突出して露出した露出部111とが絶縁材料により封止されていないので、複数のターミナル102の各露出部と複数のバスバー104の各露出部111の導通接合部と複数のターミナル102の根元部とを確実に絶縁することができない。この場合、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物によって隣り合う端子(ターミナル102)間または隣り合う配線(バスバー104)間の短絡(ショート)が発生する可能性がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の制御モジュールにおいては、TCUの電子部品がモールド樹脂101によって完全に包囲(封止)されているので、TCUの電子部品で発生した熱を外部に放熱することが困難である。
電子部品の放熱性を向上するという目的で、仮にTCUのモールド樹脂101の下面に直接接触するように放熱部材を配置した場合、ターミナル102およびバスバー104と放熱部材との間に導電性異物が跨がって堆積すると、ターミナル102およびバスバー104と放熱部材とが短絡(ショート)する可能性がある。
【0009】
また、特許文献1に記載の制御モジュールにおいては、TCUが複数のターミナル102の各露出部と複数のバスバー104の各露出部111との導通接合部のみで支持されているので、エンジン振動や車両振動が加わった際に、複数のターミナル102や導通接合部に荷重が加わるため破損し易い。例えばTCUにブラケットを追加してネジ等の締結部材を用いて締結固定する方法もあるが、締結固定する際にブラケットにネジ締めトルクが加わり、樹脂モールド成形されたTCUに変形が発生し、電子部品(ICチップや電子回路基板等)の内部部品が破損する可能性がある。
【0010】
また、特許文献1に記載の制御モジュールにおいては、TCUのモールド樹脂101と各ターミナル102との熱膨張係数の差異、あるいは配線ユニットの各バスバー104とモールド樹脂103との熱膨張係数の差異により、冷熱サイクルが加わるとターミナル102やバスバー104に応力が発生し、ターミナル102やバスバー104が破断する恐れがある。
また、複数のターミナル102の各露出部と複数のバスバー104の各露出部111との導通接合部における溶接作業を、大型のカバー105と大型のベース部材106との間の狭いピッチの空間内で行う必要があるため、溶接設備が大きくなったり、ハンドリングの手間が多くなったりするので、製造コストが上昇するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0051596号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物による端子間ショートまたは配線間(導体間)ショートを防止することのできる自動変速機の制御装置を提供することにある。また、電子制御ユニット、特に電子回路で発生した熱を放熱部材を通して外部へ効率良く放熱させることができると共に、第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部、第1露出部および第2露出部と放熱部材とを確実に絶縁することのできる自動変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、自動変速機の内部に搭載された自動変速機の制御装置であって、導電部材である複数の第1ターミナル(の電子部品との接続部)をモールド材で封止し、且つ複数の第1ターミナルの各第1露出部がモールド材の表面から露出した電子制御ユニットと、配線部材である複数の第2ターミナル(の中間部)を成形体で保持し、且つ複数の第2ターミナルの各第2露出部が成形体の表面から露出した配線ユニットと、電子制御ユニット(特に電子部品)で発生した熱を外部に放熱する放熱部材と、電子制御ユニットと放熱部材とが接触するように、電子制御ユニットを放熱部材に締結する締結部材とを備えている。
そして、第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部、第1ターミナルの第1露出部の表面、および第2ターミナルの第2露出部の表面に絶縁材を施したことを特徴としている。
ここで、絶縁材(第1絶縁材)を、例えば絶縁性樹脂を主体とする絶縁材料(例えば絶縁性接着剤)によって形成しても良い。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部(の露出面)、第1ターミナルの第1露出部の表面および第2ターミナルの第2露出部の表面に絶縁材を施したことにより、隣り合う端子間または隣り合う配線間の絶縁のために、大型の樹脂材部品が必要なく、また、樹脂材部品に高精度な樹脂成形が必要なくなるので、製品コストを低減することが可能となる。
また、第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部、第1ターミナルの第1露出部、第2ターミナルの第2露出部および第1ターミナルの第1露出部の根元部分を確実に絶縁できる。すなわち、隣り合う端子間または隣り合う配線間、つまりターミナル相互間を確実に絶縁できるので、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物による隣り合う端子間または隣り合う配線間の短絡(ショート)を防止することが可能となる。
【0015】
そして、第1、第2ターミナルと放熱部材との間に自動変速機のオイル中に混入した導電性異物が跨がって堆積している場合であっても、第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部、第1ターミナルの第1露出部および第2ターミナルの第2露出部に絶縁材を施しているので、第1、第2ターミナルと放熱部材とを確実に絶縁することができる。これにより、第1、第2ターミナルと放熱部材との間の短絡(ショート)を防止することが可能となる。
また、電子制御ユニットと放熱部材とが接触するように、電子制御ユニットと放熱部材とを締結して電子制御モジュールを構成しているので、電子制御ユニット、特に電子部品で発生した熱を放熱部材を通して外部へ効率良く放熱させることができる。これにより、電子制御ユニット、特に電子部品の十分な放熱性を確実に確保することが可能となる。
【0016】
請求項2及び3に記載の発明によれば、電子制御ユニット(特に電子部品)で発生した熱を外部に放熱する放熱部材として、熱伝導性の良い金属材料であるアルミニウム材または鉄鋼材を主体とする金属プレート(金属板)を採用したことにより、電子制御ユニットの十分な放熱性を確実に確保することができる。
請求項4に記載の発明によれば、複数の第1ターミナルが、少なくとも1箇所以上で屈曲した屈曲形状を有するように形成されている。
これによって、第1ターミナルとモールド材との間に熱膨張係数の差異がある場合であっても、冷熱サイクルで第1ターミナルに発生する変位を吸収できるので、第1ターミナルの破断を防止することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、複数の第2ターミナルが、少なくとも1箇所以上で屈曲した屈曲形状を有するように形成されている。
これによって、第2ターミナルと成形体との間に熱膨張係数の差異がある場合であっても、冷熱サイクルで第2ターミナルに発生する変位を吸収できるので、第2ターミナルの破断を防止することが可能となる。
請求項6に記載の発明によれば、第1ターミナルと第2ターミナルとを重ね合わせてレーザ溶接(レーザ光を照射)することで、第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部(溶融部、溶接部)が形成される。
これによって、電子制御ユニット、特に電子部品にダメージを与えることなく、第1ターミナルと第2ターミナルとをその溶接部にて確実に接続することができるので、第1、第2ターミナルの接続信頼性を向上することが可能となる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、電子制御ユニットと配線ユニットとの接合体を、締結部材により放熱部材に締結している。
例えば複数の第1ターミナルと複数の第2ターミナルとを導通接合した後、第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部、第1ターミナルの第1露出部および第2ターミナルの第2露出部に絶縁材を施し、その後に、電子制御ユニットと放熱部材とが接触するように、電子制御ユニットと配線ユニットとの接合体を、締結部材により放熱部材に締結している。
これによって、電子制御ユニット、特に電子回路で発生した熱を放熱部材を通して外部へ効率良く放熱させることができる
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、電子制御ユニットのモールド材の表面から外部側に向けて突出するように延設された板状のブラケットが、配線ユニットと放熱部材との間に挟み込まれた状態で、放熱部材に締結されている。
これによって、締結部材の締結トルクが電子制御ユニットに加わることによる、電子制御ユニット、特に電子部品の破損を防止することが可能となる。
なお、ブラケットに、締結部材が貫通する貫通孔を設けても良い。この貫通孔の内部に、締結部材が挿通可能な補強用の金属カラーを嵌め込んでも良い。
【0020】
請求項9に記載の発明によれば、配線ユニットは、第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部を各々相互に隔離する隔壁を有している。
これによって、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物が隣り合う端子間または隣り合う配線間に跨がって堆積する可能性が低くなるので、隣り合う端子間または隣り合う配線間の短絡(ショート)を防止することが可能となる。
なお、配線ユニットに設置された隔壁は、例えば電気絶縁性の合成樹脂等の絶縁材料によって形成されている。つまり隔壁は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を主体とする絶縁性樹脂壁である。これにより、隣り合う第1、第2ターミナル間(導通接合されていないターミナル同士間)を確実に絶縁することができる。
また、隔壁の高さは、高い程、隣り合う端子間または隣り合う配線間の沿面距離が長くなるので、隣り合う端子間または隣り合う配線間の絶縁性をより向上できる。
【0021】
請求項10に記載の発明は、自動変速機の内部に搭載された自動変速機の制御装置であって、導電部材である複数の第1ターミナル(の電子部品との接続部)をモールド材で封止し、且つ複数の第1ターミナルの各第1露出部がモールド材の表面から露出した電子制御ユニットと、配線部材である複数の第3ターミナル(の中間部)を成形体で保持し、且つ複数の第3ターミナルの各第3露出部が成形体の表面から露出した配線ユニットと、電子制御ユニット(特に電子部品)で発生した熱を外部に放熱する放熱部材と、電子制御ユニットと放熱部材とが接触するように、電子制御ユニットを放熱部材に締結する締結部材とを備えている。
そして、第1ターミナルと第3ターミナルとの導通接合部、第1ターミナルの第1露出部の表面、および第3ターミナルの第3露出部の表面に絶縁材を施したことを特徴としている。
ここで、絶縁材(第2絶縁材)を、例えば絶縁性樹脂を主体とする絶縁材料(例えば絶縁性接着剤)によって形成しても良い。
【0022】
請求項10に記載の発明によれば、第1ターミナルと第3ターミナルとの導通接合部(の露出面)、第1ターミナルの第1露出部の表面および第3ターミナルの第3露出部の表面に絶縁材を施したことにより、隣り合う端子間または隣り合う配線間の絶縁のために、大型の樹脂材部品が必要なく、また、樹脂材部品に高精度な樹脂成形が必要なくなるので、製品コストを低減することが可能となる。
また、第1ターミナルと第3ターミナルとの導通接合部、第1ターミナルの第1露出部、第3ターミナルの第3露出部および第1ターミナルの第1露出部の根元部分を確実に絶縁できる。すなわち、隣り合う端子間または隣り合う配線間、つまりターミナル相互間を確実に絶縁できるので、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物による隣り合う端子間または隣り合う配線間の短絡(ショート)を防止することが可能となる。
【0023】
そして、第1、第3ターミナルと放熱部材との間に自動変速機のオイル中に混入した導電性異物が跨がって堆積している場合であっても、第1ターミナルと第3ターミナルとの導通接合部、第1ターミナルの第1露出部および第3ターミナルの第3露出部に絶縁材を施しているので、第1、第3ターミナルと放熱部材とを確実に絶縁することができる。これにより、第1、第3ターミナルと放熱部材との間の短絡(ショート)を防止することが可能となる。
また、電子制御ユニットと放熱部材とが接触するように、電子制御ユニットと放熱部材とを締結して電子制御モジュールを構成しているので、電子制御ユニット、特に電子部品で発生した熱を放熱部材を通して外部へ効率良く放熱させることができる。これにより、電子制御ユニットの十分な放熱性を確実に確保することが可能となる。
【0024】
請求項11に記載の発明によれば、配線ユニットに、自動変速機の外部と電気的に接続する電気接続部として外部コネクタ部を形成している。そして、複数の第3ターミナルの第3露出部側に対して反対側に、外部コネクタ部内に突出するコネクタ端子部を設けている。
なお、第1ターミナルと第3ターミナルとの導通接合部を、レーザ溶接により電気的に接続しても良い。
これによって、電子制御ユニット(特に電子部品)にダメージを与えることなく、第1ターミナルと第3ターミナルとを確実に接続することができるので、第1ターミナルと第3ターミナルとの導通接合部の接続信頼性を向上することが可能となる。
【0025】
請求項12に記載の発明によれば、配線ユニットは、第1ターミナルと第3ターミナルとの導通接合部を各々相互に隔離する隔壁を有している。
これによって、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物が隣り合う端子間または隣り合う配線間に跨がって堆積する可能性が低くなるので、隣り合う端子間および隣り合う配線間の短絡(ショート)を防止することが可能となる。
なお、配線ユニットに設置された隔壁は、例えば電気絶縁性の合成樹脂等の絶縁材料によって形成されている。つまり隔壁は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を主体とする絶縁性樹脂壁である。これにより、隣り合う第1、第3ターミナル間(導通接合されていないターミナル同士間)を確実に絶縁することができる。
また、隔壁の高さは、高い程、隣り合う端子間または隣り合う配線間の沿面距離が長くなるので、隣り合う端子間または隣り合う配線間の絶縁性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】電子制御モジュールを示した断面図である(実施例1)。
【図2】電子制御モジュールを示した斜視図である(実施例1)。
【図3】電子制御モジュールを示した斜視図である(実施例1)。
【図4】(a)〜(c)はターミナルの表面に絶縁材を塗布した状態を示した断面図である(実施例1)。
【図5】放熱部材に対する電子制御ユニット(TCU)および配線ユニットの締結構造を示した断面図である(実施例1)。
【図6】(a)、(b)は電子制御モジュールの組付方法を示した説明図である(実施例1)。
【図7】(a)、(b)は電子制御モジュールの組付方法を示した説明図である(実施例1)。
【図8】ターミナルを上下に重ね合わせてレーザ溶接するレーザ溶接工程を示した説明図である(実施例1)。
【図9】(a)は図8のA−A断面図で、(b)は図8のB−B断面図である(実施例1)。
【図10】ターミナルを上下に重ね合わせてレーザ溶接するレーザ溶接工程を示した説明図である(実施例2)。
【図11】(a)は図10のC−C断面図で、(b)は図10のD−D断面図である(実施例2)。
【図12】制御モジュールを示した分解図である(従来の技術)。
【図13】(a)は制御モジュールを示した断面図で、(b)はターミナルとバスバーとの接続構造を示した断面図である(従来の技術)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、複数の第1〜第3ターミナル相互間を確実に絶縁して、オイル中の導電性異物による端子間ショートまたは配線間(導体間)ショートを防止し、且つ電子制御ユニット、特に電子回路で発生した熱を放熱部材を通して外部へ効率良く放熱させることができると共に、複数の第1〜第3ターミナルと放熱部材とを確実に絶縁するという目的を、複数の第1ターミナルと複数の第2、第3ターミナルとを導通接合した後、第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部、第1ターミナルの第1露出部、第2ターミナルの第2露出部、第1ターミナルと第3ターミナルとの導通接合部、第1ターミナルの第1露出部および第3ターミナルの第3露出部に絶縁材(絶縁性接着剤)を塗布し、その後に、電子制御ユニットと放熱部材とが接触するように、電子制御ユニットと配線ユニットとの接合体を、締結部材により放熱部材に締結することで実現した。
【実施例1】
【0028】
[実施例1の構成]
図1ないし図9は本発明の実施例1を示したもので、図1ないし図3は電子制御モジュールを示した図で、図4はターミナルの表面に絶縁材を塗布した状態を示した図で、図5は放熱部材に対する電子制御ユニット(TCU)および配線ユニットの締結構造を示した図である。
【0029】
本実施例の自動変速機の制御装置は、自動車等の車両に搭載される自動変速機(A/T)を制御する電子制御ユニット(自動変速機制御ユニット:以下TCUと言う)を備えた自動変速機の電子制御モジュールである。
この電子制御モジュールは、自動変速機の内部、例えばオイルパンの内部に設置されるバルブボディ上面に搭載されている。電子制御モジュールは、TCU(モールド材であるモールド樹脂1、導電部材(ターミナル材)であるリードフレーム等)、配線ユニット(モールド樹脂成形体である樹脂ハウジング2、配線部材であるバスバー等)、放熱部材である金属プレート3、およびセンサユニット(モールド樹脂成形体であるセンサハウジング4等)を備えている。
【0030】
TCUは、絶縁性樹脂(絶縁材料)製のモールド材である方形状のモールド樹脂1を備えている。このモールド樹脂1には、金属プレートよりなる複数のブラケット5が一体的に形成(インサート成形)されている。
配線ユニットは、絶縁性樹脂(絶縁材料)製の樹脂ハウジング(第1ハウジング)2を備えている。
センサユニットは、絶縁性樹脂(絶縁材料)製のセンサハウジング(第2ハウジング)4を備えている。このセンサハウジング4は、樹脂ハウジング2および金属プレート3に締結固定されている。
ここで、TCUと配線ユニットとの接合体Aは、金属プレート3とセンサハウジング4との接合体Bに、締結部材である複数の締結ボルト6等を用いて締め付け固定(締結固定)されている。複数の締結ボルト6による締結時に、TCUのブラケット5が配線ユニットの樹脂ハウジング2と金属プレート3との間に挟み込まれて保持される。
また、センサハウジング4の基板搭載エリアには、絶縁性樹脂(絶縁材料)製の樹脂基板である回路基板8が溶着固定されている。また、センサハウジング4には、絶縁性樹脂(絶縁材料)製の蓋部材9が取り付けられている。
【0031】
自動変速機は、ハウジング、油圧制御装置、レンジ検出装置および電子制御モジュールを備えた所謂電子制御式の自動変速機が採用されている。
ハウジングは、自動変速機ケースとオイルパンとを組み合わせて構成されている。
自動変速機ケースの内部には、ポンプ、タービンおよびステータ等により構成されるトルクコンバータと、このトルクコンバータのタービンに接続される多段歯車式の変速機構が収容されている。変速機構は、油圧制御装置から供給される油圧に応じて係合または解放される複数の摩擦係合要素を備えている。そして、自動変速機は、各摩擦係合要素の係合または解放の組み合わせに従ってシフトレンジが切り替わる。これにより、自動変速機の変速動作が行われる。
ここで、本実施例では、自動変速機のシフトレンジとして、駐車(パーキング:P)レンジ、後進(リバース:R)レンジ、中立(ニュートラル:N)レンジおよび前進(ドライブ:D)レンジが用意されている。
【0032】
オイルパンは、自動変速機で使用する作動油(自動変速機油、ATF:以下オイルと言う)を内部に蓄えている。このオイルパン内には、油圧制御装置および電子制御モジュールが収容されている。つまり電子制御モジュールは、バルブボディと共にオイル中に浸漬されている。
油圧制御装置は、マニュアルバルブ(図示せず)等の複数のバルブ、および複数の油路からなる油圧回路を有しており、オイルパン内のオイルを用いて各摩擦係合要素に印加する供給油圧を制御している。
ここで、マニュアルバルブは、他のバルブ(電磁油圧制御弁を含む)と共通のバルブボディにスプールが摺動自在に嵌入されることにより構成されている。バルブボディは、自動変速機ケースに固定されている。このバルブボディには、マニュアルバルブのスプールを往復直線移動可能に支持するスプール孔が形成されている。
レンジ検出装置は、ディテント機構とレンジセンサユニットとを組み合わせて構成されている。ディテント機構は、セレクトレバーによるレンジ位置の選択に応じてマニュアルバルブのスプールをその軸線方向に往復移動させるディテントプレート等を有している。 レンジセンサユニットは、電子制御モジュールに一体的に組み付けられている。
なお、レンジ検出装置、特にシフトポジションセンサを構成する3つのホール素子の詳細は後述する。
【0033】
TCUは、モールド樹脂1に包み込むように樹脂封止されるリードフレームを有している。このリードフレームは、電子部品との接続部がモールド樹脂1に封止されるインナリードとされ、外部の電気機器との接続部がモールド樹脂1の周囲(側面)から外部(外側)に向けて突出してモールド樹脂1の外部に露出したアウタリードとされている。本実施例では、リードフレームのアウタリードを、TCUのリード端子(第1ターミナル、第1端子:以下ターミナル10と言う)として使用している。つまり、ターミナル10は、モールド樹脂1の周囲(側面)から外部(外側)に向けて突出するように延設された複数のリード端子(リードフレームの接続端子、リードフレームの接続片とも言う)を構成する。
【0034】
配線ユニットの樹脂ハウジング2には、モールド樹脂1の側面(例えば左側面)から突出してモールド樹脂1の外部に露出した複数のターミナル10にそれぞれ導通接合される複数のターミナル(第3ターミナル、第3端子)11、およびモールド樹脂1の側面(例えば右側面)から突出してモールド樹脂1の外部に露出した複数のターミナル10にそれぞれ導通接合される複数のターミナル(第2ターミナル、第2端子)12がインサート成形(配設)されている。
センサハウジング4には、樹脂ハウジング2の側面(例えば右側面)から突出して樹脂ハウジング2の外部に露出した複数のターミナル12と回路基板(後述する)に形成された導体パターンとを接続する複数のターミナル(第4ターミナル、第4端子)13がインサート成形(配設)されている。
【0035】
ターミナル10とターミナル11との導通接合部は、ターミナル10とターミナル11とを重ね合わせてレーザ溶接することで、板厚方向の上下に重ね合わされた重ね合わせ部分(後述する両者の樹脂表面露出部分)の一部を溶融させて形成されるレーザ溶接部14により構成されている。
ターミナル10とターミナル12との導通接合部は、ターミナル10とターミナル12とを重ね合わせてレーザ溶接することで、板厚方向の上下に重ね合わされた重ね合わせ部分(後述する両者の樹脂表面露出部分)の一部を溶融させて形成されるレーザ溶接部15により構成されている。
ターミナル12とターミナル13との導通接合部は、ターミナル12とターミナル13とを重ね合わせてレーザ溶接することで、板厚方向の上下に重ね合わされた重ね合わせ部分(後述する両者の樹脂表面露出部分)の一部を溶融させて形成されるレーザ溶接部16により構成されている。
【0036】
配線ユニットの樹脂ハウジング2には、自動変速機外部の電子機器(電子部品)または制御機器(電気部品)との電気的な接続を行うための外部コネクタ部(角筒状のコネクタハウジング)17、および自動変速機内部の他の電子機器(電子部品)または制御機器(電気部品)との電気的な接続を行うための内部コネクタ部18が一体的に形成されている。
ここで、自動変速機外部の電子機器または制御機器とは、外部電源、外部電子部品(エンジン制御ユニット(ECU)、各種センサ、電子回路基板等)のことである。また、自動変速機内部の他の電子機器または制御機器とは、後述する電磁油圧制御弁、油温センサおよび複数の油圧センサ等のことである。
【0037】
TCUは、エンジン制御ユニット(ECU)で検出されたエンジンの運転状況(運転状態)および各種センサ(油温センサ、複数の油圧センサ、シフトポジションセンサ21、タービン回転センサ22、出力軸回転センサ23等)の検出信号(センサ出力信号)に基づいてソレノイド等のアクチュエータを駆動して、自動変速機の変速動作を制御する。このTCUは、矩形状の回路基板と、この回路基板に搭載されて、自動変速機の変速動作を制御する電子部品、回路基板の端部よりも外側に設けられた導電部材であるリード端子と、回路基板の導体パターンと複数のリード端子とを接続する配線部材(ボンディングワイヤまたは導電性接着剤等)とを備えている。
なお、回路基板は、セラミック基板、樹脂基板または半導体基板である。
【0038】
TCUは、回路基板の一端面に電子部品を表面実装し、ボンディングワイヤ等の線状の配線部材を介して回路基板の導体パターンとリードフレームとを接続した後、リードフレームのアウタリードが露出するように、これらの回路基板、電子部品、配線部材およびリードフレームのインナリードをモールド樹脂1で樹脂封止することで製造される。
電子部品は、例えば回路基板上に表面実装(搭載)されるICチップ(半導体チップ)、半導体素子(半導体スイッチング素子、コンデンサ素子)、コイル、リレー、抵抗素子等である。
【0039】
複数のターミナル10は、電子部品に電気的に接続されるリードフレームであり、モールド樹脂1で封止した後に隣り合う接続片(リード端子)が切断されて形成される。この接続片は、回路基板の外周端面(側面)から外部側に向けて突出するように延設された短冊板状に形成されている。ターミナル10の回路基板側に位置する部分は、モールド樹脂1内に位置するインナリードとして働き、ターミナル10の回路基板側に対して逆側に位置する部分は、モールド樹脂1の4つの側面から四方に向けて突出してモールド樹脂1の外部で露出するアウタリードとして働く。
なお、回路基板または電子部品の周囲(側面)から外部側に向けて突出するように延設された部分(インナリード、アウタリードの両方とも含む)を、複数のターミナル10としても良い。また、導電部材であるリードフレーム(複数のターミナル10)の電子部品搭載エリアに、例えばICチップ等の電子部品を表面実装(搭載)しても良い。
【0040】
TCUは、少なくともCPU、ROM、RAM等の機能を具備したマイクロコンピュータを電子回路基板上に実装して構成されている。CPUは、ROM等のメモリに格納された制御プログラムを実行することで、自動変速機の変速動作を制御する。マイクロコンピュータは、ICチップに、スイッチング素子と共に設けられている。
自動変速機を制御する電子制御回路部を構成する半導体チップ(ICチップ)および導体パターン等の電子部品全体、リードフレーム(複数のターミナル10)と電子部品との導通接合部は、例えばエポキシ樹脂(EP)等の熱硬化性樹脂(絶縁性樹脂)を主体とするモールド樹脂(モールド樹脂材)1によって樹脂封止されている。
【0041】
配線ユニットは、例えばポリアミド(PA)またはポリフェニレンサルファイド(PPS)等の絶縁性樹脂(絶縁材料)製の樹脂ハウジング2に、配線部材であるターミナル材(複数のターミナル11、12)をモールド成形し、複数のターミナル材の一部を部分的に樹脂ハウジング2の表面に露出した部品である。
樹脂ハウジング2には、配線部材(中継ターミナル)である複数のターミナル11、12がインサート成形されている。これにより、複数のターミナル11、12の中間部が樹脂ハウジング2に収容保持されると共に、樹脂封止される。
【0042】
複数のターミナル10の表面には、銅メッキまたは無電解ニッケルメッキが施されている。これらのターミナル10には、モールド樹脂1の表面(例えば左側面、右側面)から露出した露出部(第1露出部)31が設けられている。この露出部31は、モールド樹脂1の側面から配線ユニットのターミナル11側またはターミナル12側に突き出すようにモールド樹脂1の側面で露出した樹脂表面露出部分(リードフレームの接続片)である。 また、複数のターミナル10の各露出部31は、少なくとも2箇所以上で所定の傾斜角度となるように屈曲した屈曲形状の応力吸収部32を有するように折り曲げ加工(形成)されている。
【0043】
複数のターミナル11、12の表面には、錫メッキが施されている。これらのターミナル11、12の中間部は、樹脂ハウジング2にインサート成形(樹脂封止)されている。 複数のターミナル11、12の延長方向の一端部には、樹脂ハウジング2の表面(下面)で部分的に露出した露出部(第3、第2露出部)33が設けられている。この露出部33は、樹脂ハウジング2の下面からTCUのターミナル10側に段付きで突き出して部分的に露出した樹脂表面露出部分である。
また、複数のターミナル11の一端側には、少なくとも3箇所以上で屈曲した屈曲形状の屈曲部34が設けられている。
複数のターミナル12の各中間部には、少なくとも4箇所以上で屈曲した屈曲形状の屈曲部35が設けられている。
【0044】
ここで、ターミナル10とターミナル11、12との重ね合わせ部分(露出部31の先端側の平板部分と露出部33の先端側の平板部分との重ね合わせ部分)には、ターミナル10とターミナル11、12との導通接合部であるレーザ溶接部14、15がそれぞれ設けられている。
複数のレーザ溶接部14、15の露出面(露出部31の表面で露出した露出面)および複数の露出部31、33の表面には、絶縁材36が塗布されている。この絶縁材36は、例えばエポキシ樹脂(EP)等の絶縁性樹脂を主体とする絶縁材料(例えば絶縁性接着剤)である。
【0045】
複数のターミナル11は、複数のターミナル12に対して別途設けられている。
複数のターミナル11の延長方向の他端部には、相手側のコネクタに嵌合可能な筒状の外部コネクタ部(外部接続用コネクタ部)17内に突出したコネクタ端子部37が設けられている。コネクタ端子部37は、外部電源、外部電子部品(ECU、各種センサ、電子回路基板等)と接続する電気接続部である。外部コネクタ部17内には、複数のコネクタ端子部37の根元部(付け根部)を相互に絶縁(隔離)するという目的で、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(絶縁性樹脂)を主体とする封止材38が充填されている。
複数のターミナル12の延長方向の他端部には、樹脂ハウジング2の表面(側面)から露出した露出部(第2露出部)41が設けられている。この露出部41は、樹脂ハウジング2の側面からターミナル13側に突き出すように露出した樹脂表面露出部分である。
また、露出部41は、少なくとも6箇所で屈曲した屈曲形状の応力吸収部42を有するように折り曲げ加工(形成)されている。
【0046】
また、複数のターミナル11または複数のターミナル12の一部の端部には、相手側のコネクタに嵌合可能な筒状の内部コネクタ部18内に突出したコネクタ端子部(図示せず)が設けられている。なお、内部コネクタ部18内に、複数のコネクタ端子部の根元部(付け根部)を相互に絶縁(隔離)するという目的で、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(絶縁性樹脂)を主体とする封止材を充填しても良い。
複数のターミナル13の表面には、錫メッキが施されている。これらのターミナル13は、複数のターミナル12の他端部と回路基板8の導体パターンとを中継接続する中継端子部材(中継ターミナル)を構成している。複数のターミナル13の一端部には、センサハウジング4の表面(上面)で部分的に露出した露出部(第4露出部)43が設けられている。この露出部43は、センサハウジング4の上面から配線ユニットのターミナル12側に段付きで突き出して部分的に露出した樹脂表面露出部分である。
【0047】
ここで、ターミナル12とターミナル13との重ね合わせ部分(露出部41の先端側の平板部分と露出部43の先端側の平板部分との重ね合わせ部分)には、ターミナル12とターミナル13との導通接合部であるレーザ溶接部16が設けられている。
複数のレーザ溶接部16の露出面(露出部41の表面で露出した露出面)および複数の露出部41、43の表面には、絶縁材46が塗布されている。この絶縁材46は、例えばエポキシ樹脂(EP)等の絶縁性樹脂を主体とする絶縁材料(例えば絶縁性接着剤)である。
なお、複数のターミナル13の中間部は、センサハウジング4にインサート成形(樹脂封止)されている。
複数のターミナル13の他端部は、直角に屈曲するように折り曲げ加工されて、先端部(導通接合部47)が回路基板8に形成されるスルーホール48に挿入されて、回路基板8の導体パターンと半田付けされている。これにより、回路基板8に実装されるシフトポジションセンサ21の3つのホール素子とTCUの電子部品との電気的な接続が成される。
【0048】
ここで、配線ユニットの樹脂ハウジング2の下面(ターミナル10の露出部31に対向する対向面)には、複数のレーザ溶接部14、15、複数の露出部31、33を個別に収容する複数の端子収容室(端子収容凹部)51、およびこれらの端子収容室51を隔離して、各レーザ溶接部14、15を各々相互に隔離する複数の隔壁52が一体的に形成されている。なお、ターミナル11、12の露出部33は、各端子収容室51の底面の中心部(端子装着部)上で露出している。
複数の隔壁52は、複数の端子収容室51の周囲をコの字状に取り囲むことで複数の端子収容室51の内部と外部とを隔離するコの字状の外側壁、および外側壁で囲まれた空間を複数の端子収容室51に区画する複数の仕切り壁を有している。また、複数の端子収容室51のTCU側には、配線ユニットに対するTCUの組み付け時、つまりターミナル11、12の露出部33にターミナル10の露出部31を重ね合わせる時に、ターミナル10の露出部31が挿通する開口部が設けられている。
【0049】
そして、樹脂ハウジング2には、複数の隔壁52のうち端子収容室51を隔てて対向する隣り合う2つの隔壁52の対向面から端子収容室51の中心軸線側に向けて突出する一対のガイドリブ53が一体的に形成されている。
これらのガイドリブ53には、ターミナル10の露出部31とターミナル11、12の露出部33とをレーザ溶接する目的で、ターミナル11、12の露出部33上にターミナル10の露出部31を重ね合わせる際に、各端子収容室51の底面で露出しているターミナル11、12の露出部33に向けてターミナル10の露出部31を誘導(ガイド)するためのリード端子(ターミナル10)誘い込み用の傾斜面が形成されている。
一対のガイドリブ53の各傾斜面は、隣り合う2つの隔壁52の先端側(放熱部材側)から各端子収容室51の底面側に向けて徐々に一対のガイドリブ53間の隙間が狭くなるように傾斜したガイド面である。
そして、一対のガイドリブ53は、隣り合う隔壁52のTCU側に対して逆側を連結して、端子収容室51のTCU側に対して逆側を閉塞する閉鎖壁54の近傍に設けられている。つまり一対のガイドリブ53は、レーザ溶接部14、15よりも閉鎖壁54側に位置する隔壁52間に形成されている。
【0050】
金属プレート3は、熱伝導性の良い金属板(例えばアルミニウム材を主体とする金属板または鉄鋼材を主体とする金属板)で形成されている。この金属プレート3は、TCU、特に電子部品で発生した熱を外部(バルブボディ)に放熱する放熱板であり、TCUよりも大きい放熱面積を備えている。
金属プレート3は、例えば電子制御モジュールの外面(表面)に放熱可能に露出している。これにより、TCU、特に電子部品で発生した熱を、電子制御モジュールの外部のバルブボディに効率良く放熱することができる。
金属プレート3には、TCUと配線ユニットとの接合体Aを金属プレート3とセンサハウジング4との接合体Bに締め付け固定(締結固定)するための締結ボルト6のボルト軸部に形成される外周ネジと螺合するネジ孔55が形成されている。
金属プレート3には、電子制御モジュール(接合体A、B)をバルブボディに締結固定するための締結部材である締結ボルト(図示せず)が挿通するボルト挿通孔56が形成されている。
【0051】
ここで、金属プレート3には、センサハウジング4の下面に重ね合わされるブラケット64、樹脂ハウジング2の下面とセンサハウジング4の下面に重ね合わされるブラケット65、および2つのブラケット64、65間に形成され、センサハウジング4の一部(後述するベース83の一部)が嵌合する嵌合凹部が設けられている。
複数のボルト挿通孔56のうちの一部のボルト挿通孔56は、2つのブラケット64、65を上下に貫通するように形成されている。また、2つのブラケット64、65には、センサハウジング4の表面(下面)、つまりセンサハウジング4の金属プレート3との重ね合わせ部分の表面(下面)から突出する嵌合ピン57に嵌合する嵌合孔58がそれぞれ形成されている。嵌合ピン57の軸線方向の先端側は、嵌合孔58を貫通して金属プレート3の各ブラケット64、65の外面(下面)から突き出した後に熱かしめ等により潰される。これにより、金属プレート3の各ブラケット64、65とセンサハウジング4とが固定される。
なお、金属プレート3の各ブラケット64、65とセンサハウジング4との結合(固定)方法として、スナップフィット結合を採用しても良い。
【0052】
複数のブラケット5は、例えばL字状または平板状の金属プレートであって、TCUのモールド樹脂1の側面から外側に突き出して露出している。これらのブラケット5には、締結ボルト6が挿通するボルト挿通孔61、および締結部材である締結ボルト(図示せず)が挿通するボルト挿通孔62が設けられている。そして、複数のブラケット5は、締結ボルト6により金属プレート3の上面(搭載面)にTCUを締結する際に、配線ユニットと金属プレート3との間に挟み込まれる。
これにより、複数の締結ボルト6を用いて金属プレート3と複数のブラケット5を締結する際に、配線ユニットの樹脂ハウジング2のボルト締結部63の下面と金属プレート3の上面との間に複数のブラケット5が挟み込まれて保持される。
【0053】
ここで、TCUと配線ユニットとの接合体Aは、金属プレート3とセンサハウジング4とが締結固定された後に、TCUの下面(放熱面)と金属プレート3の上面(搭載面)とが接触するように、金属プレート3の上面(搭載面)に複数の締結ボルト6等により締結固定される。
TCUのモールド樹脂1には、配線ユニットの樹脂ハウジング2のTCU搭載エリアに位置決め固定するための複数のブラケット66が一体的に形成(インサート成形)されている。これらのブラケット66には、位置決めピンPが貫通するピン貫通孔67が形成されている。位置決めピンPは、TCUを配線ユニットに組み付ける際に、予め配線ユニットの樹脂ハウジング2の下面に形成されるピン挿入孔68に差し込まれる。
樹脂ハウジング2のTCU搭載エリアの近傍および周縁部には、円筒状のボルト締結部63が設けられている。
ボルト締結部63のボルト挿通孔には、補強用の金属カラー69が嵌め込まれている。
【0054】
センサハウジング4の上面には、配線ユニットの樹脂ハウジング2の下面よりセンサハウジング側に向けて突出する凸部71との間に隙間を形成する凹部72が一体的に形成されている。
配線ユニットの樹脂ハウジング2の下面に形成される凸部71と、センサハウジング4の上面に形成される凹部72との間の隙間には、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(絶縁性樹脂)を主体とする封止材73が充填されている。
センサハウジング4の上面には、3つのホール素子を実装する回路基板8を収容する基板収容凹部、およびこの基板収容凹部の周囲を取り囲む(包囲する)有底角筒状の樹脂壁(壁体)74が一体的に形成されている。
基板収容凹部の内部には、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(絶縁性樹脂)を主体とする封止材75が充填されている。封止材75は、導体パターンが印刷された回路基板8、この回路基板8に表面実装される3つのホール素子、回路基板8の導体パターンに半田付けされる導通接合部47を樹脂封止している。
【0055】
また、センサハウジング4の上面(ターミナル12の露出部41に対向する対向面)には、複数のレーザ溶接部16、複数の露出部41、43を個別に収容する複数の端子収容室(端子収容凹部)76、およびこれらの端子収容室76を隔離して、各レーザ溶接部16を各々相互に隔離する複数の隔壁77が一体的に形成されている。なお、ターミナル13の露出部43は、各端子収容室76の底面の中心部(端子装着部)上で露出している。 複数の隔壁77は、隔壁52と同様に、閉鎖壁53に相当する樹脂壁74を含むコの字状の外側壁および複数の仕切り壁を有している。また、複数の端子収容室76の図示上方側には、センサハウジング4に対するTCUと配線ユニットとの接合体Aの組み付け時、つまりターミナル13の露出部43にターミナル12の露出部41を重ね合わせる時に、ターミナル12の露出部41が挿通する上部開口部が設けられている。
そして、センサハウジング4には、ガイドリブ53と同様に、一対のガイドリブ(図示せず)が一体的に形成されている。
複数の端子収容室76の上部開口部には、例えばポリアミド(PA)またはポリフェニレンサルファイド(PPS)等の絶縁性樹脂(絶縁材料)製の蓋部材9が取り付けられている。
【0056】
センサハウジング4の周縁部には、円筒状のボルト締結部78が設けられている。
複数のボルト締結部78のボルト挿通孔内には、補強用の金属カラー79が嵌め込まれている。
センサハウジング4内に熱かしめ等により収容固定された回路基板8は、セラミック基板、樹脂基板または半導体基板である。本実施例では、回路基板8として矩形状または方形状の樹脂基板が採用されている。そして、回路基板8は、印刷された導体パターン、およびこの導体パターンにセンサハウジング4にインサート成形されたターミナル13の導通接合部47を挿入するための複数のスルーホール48を有している。
回路基板8の導体パターンには、少なくともシフトポジションセンサ21を構成する3つのホール素子が電気的に接続されている。
回路基板8には、センサハウジング4の基板収容凹部の底面から突出する嵌合ピンに嵌合する嵌合孔が形成されている。嵌合ピンの軸線方向の先端側は、嵌合孔を貫通して回路基板の外面(上面)から突き出した後に熱かしめ等により潰される。これにより、センサハウジング4の基板収容凹部の底面に回路基板8が固定される。
蓋部材9は、配線ユニットの樹脂ハウジング2の側面との間に隙間を隔てて対向する対向部81を有している。樹脂ハウジング2の側面と蓋部材9の対向部81との間の隙間には、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(絶縁性樹脂)を主体とする封止材82が充填されている。
【0057】
ここで、レンジ検出装置のレンジセンサユニットは、案内部、可動部および検出部を有している。これらは、電子制御モジュールに一体的に組み付けられている。
案内部は、電子制御モジュールのセンサハウジング4に一体的に形成されたベース83と2本のガイドレール84とからなる。
可動部は、2本のガイドレール84に往復直線移動可能に支持されたレンジセンサスライダ(以下スライダと略す)85、およびこのスライダ85に一体的に形成された入力軸86を有している。スライダ85には、3列の磁石パターンが埋設されている。入力軸86は、マニュアルバルブのスプールの一端部に係合している。
検出部は、シフトポジションセンサ21を構成する3つのホール素子、およびこれらのホール素子の出力信号に基づいてレンジ位置を特定する信号処理回路を有している。信号処理回路は、マニュアルバルブのスプールおよびスライダ85の移動位置に対応して実現されるシフトレンジを、3つのホール素子より出力される電気信号(センサ出力信号)に基づいてレンジ位置を特定し、特定したレンジ位置を表す検出信号を複数のターミナル13、複数のターミナル12および複数のターミナル10を経てTCUの電子部品に出力する。
【0058】
ここで、自動変速機における変速動作を、摩擦係合要素に印加(供給)される作動油圧を予め決められた制御特性に従って変化させる場合、オイルの温度(油温)が低いときには、油温が高いときに比べてオイルの粘度が高くなり、応答性が悪化する。そこで、自動変速機には、オイルの温度(油温)を検出する油温センサ(油温検出手段)が設置されており、TCUは、油温センサで検出された油温に基づいて、摩擦係合要素に対する作動油圧の供給および排出を行っている。
また、電子制御モジュールには、トルクコンバータのタービンの回転速度(自動変速機の入力軸回転速度)を検出するタービン回転センサ22、および自動変速機の出力軸回転速度(車速)を検出する出力軸回転センサ23が設置されている。
TCUは、タービン回転センサ22で検出された入力軸回転速度と出力軸回転センサ23で検出された出力軸回転速度との比、つまり変速比を求めて、レンジ検出装置、特にシフトポジションセンサ21を構成する3つのホール素子で検出されるレンジ位置に対応するように、自動変速機の変速動作が正常に成されているか否かを判断できるようにしている。
【0059】
また、複数の摩擦係合要素にそれぞれ連通する油路に設置される複数の電磁油圧制御弁に供給される供給油圧には、オイルポンプにより圧送供給されるライン圧を例えばモジュレート弁等によって減圧したモジュレート圧が用いられている。しかし、何らかの要因によりモジュレート圧が変化した場合、また、電磁油圧制御弁が誤作動した場合、電磁油圧制御弁を経由して摩擦係合要素に印加(供給)される作動油圧が低下(または本来排出されている摩擦係合要素にオイルが入ってきた場合)して、自動変速機の変速動作が正常に成されない可能性がある。そこで、自動変速機には、各摩擦係合要素に印加(供給)されるオイルの圧力(作動油圧)を検出する複数の油圧センサ(油圧検出手段)が設置されており、TCUは、複数の油圧センサで検出された作動油圧に基づいて、レンジ検出装置、特にシフトポジションセンサ21を構成する3つのホール素子で検出されるレンジ位置に対応するように、自動変速機の変速動作が正常に成されているか否かを判断できるようにしている。
【0060】
また、センサハウジング4には、シフトポジションセンサ21を構成する3つのホール素子の他に、タービン回転センサ(入力軸回転センサ)22および出力軸回転センサ(車速センサ)23が搭載されている。
タービン回転センサ22は、センサハウジング4の上面から所定の傾斜角度分だけ傾斜するように上方に突出した突出部91に取り付けられるキャップ92内に保持されたホールICにより構成されている。
タービン回転センサ22を構成するホールICは、トルクコンバータのタービン軸に固定された磁極(永久磁石)に対向するように配置されている。ホールICのセンサリード端子は、ワイヤボンディングにより複数(センサリード端子に対応した個数)のターミナル13と接続している。そして、ホールICおよびセンサリード端子とターミナル13との接続部(ボンディングワイヤ等の配線部材)は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(絶縁性樹脂)を主体とする封止材により樹脂封止されている。なお、封止材は、キャップ92の内部に充填されている。
【0061】
出力軸回転センサ23は、センサハウジング4の上面から所定の傾斜角度分だけ傾斜するように上方に突出した突出部93に取り付けられるキャップ94内に保持されたホールICにより構成されている。出力軸回転センサ23を構成するホールICは、自動変速機の出力軸に固定された磁極(永久磁石)に対向するように配置されている。
出力軸回転センサ23を構成するホールICのセンサリード端子は、ワイヤボンディングにより複数(センサリード端子に対応した個数)のターミナル13と接続している。そして、ホールICおよびセンサリード端子とターミナル13との接続部(ボンディングワイヤ等の配線部材)は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(絶縁性樹脂)を主体とする封止材により樹脂封止されている。なお、封止材は、キャップ94の内部に充填されている。
【0062】
[実施例1の組付方法]
次に、本実施例の電子制御モジュールの組付方法を図1ないし図9に基づいて簡単に説明する。ここで、図6および図7は電子制御モジュールの組付方法を示した図で、図8および図9はターミナルを上下に重ね合わせてレーザ溶接するレーザ溶接工程を示した図である。
【0063】
先ず、ECUからのエンジン運転情報(アクセル開度、エンジン回転速度、スロットル開度、エンジントルク等)、シフトポジションセンサ(レンジセンサ)21、油温センサ、油圧センサ、タービン(入力軸)回転センサ22および出力軸回転センサ23等の各種センサ出力信号に基づいて自動変速機の変速制御を行うICチップ等の電子部品が回路基板上に表面実装され、電子部品および複数のターミナル10のインナリードをモールド樹脂1により樹脂封止したTCUを、配線ユニットの樹脂ハウジング2のTCU搭載エリア50上に搭載する(図6(a)参照)。
【0064】
このとき、図6(b)に示したように、TCUの複数のブラケット5と配線ユニットの樹脂ハウジング2の各ボルト締結部63とを重ね合わせて、複数のブラケット5のボルト挿通孔61とボルト締結部63のボルト挿通孔(金属カラー69の貫通孔)とを一致させ、樹脂ハウジング2のピン挿入孔68に挿入されている位置決めピンPにTCUの複数のブラケット66のピン貫通孔67を嵌合させる。
これにより、電子部品(ICチップ等)を回路基板上に表面実装したTCUが、配線ユニットの樹脂ハウジング2のTCU搭載エリア50上に位置決めされた状態で仮組み付けされる。
【0065】
ここで、配線ユニットの樹脂ハウジング2の下面(図6においては図示上面)のTCU搭載エリア50の周囲には、図6(a)に示したように、ターミナル10とターミナル11、12との導通接合部(並列配置された複数のレーザ溶接部14、15)を各々相互に隔離する複数の隔壁52が一体的に形成されている。
なお、複数のターミナル11、12の各露出部33は、隣り合う隔壁52間に形成される端子収容凹部である端子収容室51の底面の中心部上で露出している。
そして、複数のターミナル10がモールド樹脂1より突出して露出したTCUを、図6(b)に示したように、配線ユニットの樹脂ハウジング2のTCU搭載エリア50上に搭載すると、TCUのモールド樹脂1より外部側に突出した複数のターミナル10の各露出部31が、隣り合う2つの隔壁52の対向面に形成される一対のガイドリブ53の各傾斜面に誘導(ガイド)されて奥側まで容易に挿入され、複数のターミナル11、12の各露出部33に重ね合わされる。
【0066】
次に、TCUのターミナル10と配線ユニットのターミナル11、12とを上下に重ね合わせてレーザ溶接するレーザ溶接工程(ターミナル接続工程)を図6ないし図9に基づいて説明する。
レーザ溶接装置は、電子制御装置により制御されるレーザ発振器(図示せず)と、ターミナル10の露出部31側から押圧荷重を与える2つの押さえ治具95と、これらの押さえ治具95で押圧された位置の中間にレーザ光を照射するレーザ溶接ヘッド(図示せず)とを備えている。
レーザ発振器として、半導体レーザ発振器、パルスYAGレーザ、CO2 レーザ等一般的なレーザ溶接に用いられるものを使用しても良い。
レーザ溶接ヘッドは、内部にレンズが設置されており、レーザ発振器から出力されたレーザ出力をレンズで集光し、ターミナル10とターミナル11、12とのレーザ溶接部14、15にレーザビーム(レーザ光)Lを照射する。
【0067】
ここで、本実施例では、隣り合う2つの隔壁52の対向面に、ターミナル10の露出部(接続片)31をターミナル11、12の露出部33上に誘い込む一対のガイドリブ53が形成されている。なお、レーザ溶接を実施すると、レーザ反射光によってガイドリブ53の傾斜面がコゲる可能性があるため、樹脂ハウジング2、少なくともガイドリブ53にレーザ光透過性樹脂を採用することが望ましい。この場合には、レーザ反射光によるガイドリブ53のコゲを防止できる。
本実施例では、一対のガイドリブ53を設置しているので、ターミナル11、12の露出部33に対するターミナル10の露出部31の板幅方向のターミナル位置ズレを許容値(例えば0.15mm)以下に抑えることができる。
本実施例では、レーザ溶接部14、15の前後の露出部31を2つの押さえ治具95により露出部33側に押圧(加圧)することで、ターミナル10の露出部31とターミナル11、12の露出部33との間に形成される隙間(ターミナル相互の隙間、積層方向の隙間)を許容値(例えば0.025mm)以下に抑えることができる。
以上により、本実施例のレーザ溶接装置およびレーザ溶接方法においては、ターミナル位置ズレおよびターミナル相互の隙間を許容値以下にする対策を行わないものと比べて、レーザ溶接による品質を確保することができる。
【0068】
レーザ溶接工程では、先ず配線ユニットの樹脂ハウジング2のTCU搭載エリア50上にTCUを組み付けることで、端子収容室51の底面で露出した露出部33上に露出部31が重ね合わされる。そして、上下に重ね合わされた露出部31、33を、露出部31側から2つの押さえ治具95により押圧(加圧)する。これにより、露出部31、33が隙間なく、あるいは許容範囲内の隙間を有しながら重ね合わされる。
そして、2つの押さえ治具95により押圧(加圧)される押圧部Jの中間位置(溶接箇所)にレーザ光Lをレーザ溶接ヘッドから照射する。
すなわち、表面にメッキが施された導電性金属板(銅または銅合金等)よりなる露出部31と、表面にメッキが施された導電性金属板(銅または銅合金等)よりなる露出部33とを重ね合わせ、レーザ溶接ヘッドから溶接箇所にレーザ光Lを照射すると、露出部31の表面側から、露出部31の表面(図示上面)に施されたメッキ、露出部(ターミナル母材)31、露出部31の表面(図示下面)に施されたメッキ、露出部33の表面(図示上面)に施されたメッキ、露出部(ターミナル母材)33が順に溶けていき、これらが溶融した溶融部が形成される。
【0069】
この溶融部は、ターミナル10とターミナル11、12の界面を超え露出部33の内部に渡って連続的に形成される。溶融部の形成に伴って、ターミナル10とターミナル11、12との重ね合わせ部分が溶着固定されるため、複数のターミナル10と複数のターミナル11、12との導通接合部であるレーザ溶接部14、15が電気的に接続(導通接合)される。これにより、TCUのターミナル10と配線ユニットのターミナル11、12とを上下に重ね合わせた重ね合わせ部分に、両露出部31、33に渡るレーザ溶接部14、15が形成される。
以上のように、複数のターミナル10の各露出部31と複数のターミナル11、12の各露出部33とをレーザ溶接により導通接合した後に、複数のレーザ溶接部14、15の露出面、複数の露出部31の表面および複数の露出部33の表面に、例えば絶縁性接着剤よりなる絶縁材36を塗布する。
以上によって、複数のレーザ溶接部14、15、モールド樹脂1の表面より外側に突出して露出した複数のターミナル10の各露出部31、および樹脂ハウジング2の表面より露出した複数のターミナル11、12の各露出部33に端子間(配線間)絶縁構造を施した、TCUと配線ユニットとの接合体Aが製造される(図6(b)参照)。
【0070】
次に、センサハウジング4の表面(下面:図示上面)、つまりセンサハウジング4の金属プレート3との重ね合わせ部分の表面から突出する複数の嵌合ピン57に、金属プレート3に形成された複数の嵌合孔58を嵌合し、嵌合孔58を貫通した嵌合ピン57の先端部を熱かしめすることで、金属プレート3とセンサハウジング4との接合体Bが製造される(図7(a)参照)。
次に、TCUと配線ユニットとの接合体Aと、金属プレート3とセンサハウジング4との接合体Bとを複数の締結ボルト6等で締結固定する等して一体化することで、電子制御モジュールが製造される(図7(b)参照)。
このとき、TCUのモールド樹脂1の放熱面が金属プレート3の搭載面に直接接触するように、TCUと配線ユニットとの接合体Aが、複数の締結ボルト6により金属プレート3とセンサハウジング4との接合体Bに締結固定される。また、TCUのブラケット5は、配線ユニットの樹脂ハウジング2の各ボルト締結部63の下面と金属プレート3の上面との間に挟持される。
【0071】
次に、ターミナル12とターミナル13とを上下に重ね合わせてレーザ溶接するレーザ溶接工程(ターミナル接続工程)を図6ないし図9に基づいて説明する。
ここで、センサハウジング4の上面(図7においては図示下面)には、ターミナル12とターミナル13との導通接合部(並列配置された複数のレーザ溶接部16)を各々相互に隔離する複数の隔壁77が一体的に形成されている。
なお、複数のターミナル13の各露出部43は、隣り合う隔壁77間に形成される端子収容凹部である端子収容室76の底面の中心部上で露出している。
レーザ溶接工程では、先ず複数のターミナル11、12が樹脂ハウジング2より突出して露出した配線ユニット(TCUと配線ユニットとの接合体A)上に、図7(a)に示したように、金属プレート3とセンサハウジング4との接合体Bを搭載すると、配線ユニットの樹脂ハウジング2より外部側に突出した複数のターミナル12の各露出部41が、隣り合う2つの隔壁77の対向面に形成される一対のガイドリブの各傾斜面に誘導(ガイド)されて奥側まで容易に挿入され、複数のターミナル13の各露出部43に重ね合わされる。
【0072】
そして、上下に重ね合わされた露出部41、43を、複数の端子収容室76の上方開口部側から入れた2つの押さえ治具で押圧(加圧)し、上述したレーザ溶接工程と同様に、2つの押さえ治具により押圧(加圧)される押圧部の中間位置(溶接箇所)にレーザ光をレーザ溶接ヘッドから照射する。
ターミナル12とターミナル13との重ね合わせ部分が溶着固定されるため、ターミナル12とターミナル13との導通接合部であるレーザ溶接部16が電気的に接続(導通接合)される。これにより、配線ユニットのターミナル12とセンサハウジング4のターミナル13とを上下に重ね合わせた重ね合わせ部分に、両露出部41、43に渡るレーザ溶接部16が形成される。
【0073】
以上のように、複数のターミナル12の各露出部41と複数のターミナル13の各露出部43とをレーザ溶接により導通接合した後に、複数のレーザ溶接部16の露出面、複数の露出部41、43の表面に、例えば絶縁性接着剤よりなる絶縁材46を塗布する。
一方、複数のターミナル13の導通接合部47を、回路基板8に形成されるスルーホール48に挿入し、複数のターミナル13の導通接合部47と回路基板8の導体パターンとを半田付けすることで、回路基板8に実装されるシフトポジションセンサ21の3つのホール素子とTCUの電子部品とを接続する。
【0074】
そして、配線ユニットの樹脂ハウジング2の下面に形成される凸部71と、センサハウジング4の上面に形成される凹部72との間の隙間に、封止材73を充填する。また、センサハウジング4の樹脂壁74に囲まれた中空部に封止材75を充填する。
そして、複数の端子収容室76の上部開口部に、端子収容室76内への導電性異物の侵入を防止するために蓋部材9を取り付けた後に、樹脂ハウジング2の側面と蓋部材9の対向部81との間の隙間に封止材82を充填する。
以上によって、複数のレーザ溶接部14〜16、モールド樹脂1の表面より外側に突出して露出した複数のターミナル10の各露出部31、樹脂ハウジング2の表面より露出した複数のターミナル11、12の各露出部33、樹脂ハウジング2の表面より外側に突出して露出した複数のターミナル12の各露出部41、およびセンサハウジング4の表面より露出した複数のターミナル13の各露出部43に端子間(配線間)絶縁構造を施した電子制御モジュールが製造される(図1および図7(b)参照)。
その後、電子制御モジュールを、金属プレート3の放熱面がバルブボディの外壁面に直接接触するように、バルブボディに複数の締結ボルトで締結固定される。これにより、電子制御モジュールが自動変速機の内部、特にオイルパンの内部に搭載される。
【0075】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例の自動変速機の内部に搭載される電子制御モジュールにおいては、ターミナル10の露出部31とターミナル11、12の露出部33との重ね合わせ部分をレーザ溶接してターミナル10の露出部31とターミナル11、12の露出部33とを導通接合した後に、ターミナル10とターミナル11、12との導通接合部であるレーザ溶接部14、15、ターミナル10の露出部31の表面およびターミナル11、12の露出部33の表面に絶縁材36を塗布している。
これによって、隣り合う端子(ターミナル10)間および隣り合う配線(ターミナル11、12)間(導体間)の絶縁、つまりターミナル相互間の絶縁のために、大型の樹脂材部品が必要なく、また、樹脂材部品に高精度な樹脂成形が必要なくなるので、製品コストを低減することができる。
また、複数のレーザ溶接部14、15、複数の露出部31、33および複数の露出部31の各根元部分を確実に絶縁できる。すなわち、隣り合う端子(ターミナル10)間および隣り合う配線(ターミナル11、12)間(導体間)、つまりターミナル相互間を確実に絶縁できるので、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物による隣り合う端子(ターミナル10)間および隣り合う配線(ターミナル11、12)間(導体間)のショートを確実に防止することができる。
【0076】
また、電子制御モジュールにおいては、ターミナル12の露出部41とターミナル13の露出部43との重ね合わせ部分をレーザ溶接してターミナル12の露出部41とターミナル13の露出部43とを導通接合した後に、ターミナル12とターミナル13との導通接合部であるレーザ溶接部16の露出面、ターミナル12の露出部41の表面およびターミナル13の露出部43の表面に絶縁材46を塗布している。
これによって、隣り合う端子間および隣り合う配線(ターミナル12、13)間(導体間)の絶縁、つまりターミナル相互間の絶縁のために、大型の樹脂材部品が必要なく、また、樹脂材部品に高精度な樹脂成形が必要なくなるので、製品コストを低減することができる。
また、複数のレーザ溶接部16、複数の露出部41、43および複数の露出部41の各根元部分を確実に絶縁できる。すなわち、隣り合う端子間および隣り合う配線(ターミナル12、13)間(導体間)、つまりターミナル相互間を確実に絶縁できるので、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物による隣り合う端子間および隣り合う配線(ターミナル12、13)間(導体間)のショートを確実に防止することができる。
【0077】
また、本実施例では、ターミナル10とターミナル11、12との導通接合部であるレーザ溶接部14、15の露出面、ターミナル10の露出部31の表面およびターミナル11、12の露出部33の表面に絶縁材36を塗布すると共に、ターミナル12とターミナル13との導通接合部であるレーザ溶接部16の露出面、ターミナル12の露出部41の表面およびターミナル13の露出部43の表面に絶縁材46を塗布した後に、TCUのモールド樹脂1の放熱面と金属プレート3の搭載面とが熱伝導可能に接触するように、つまり直接接触するように、TCUと配線ユニットとの接合体Aを、金属プレート3とセンサハウジング4との接合体Bに複数の締結ボルト6等により締結固定して電子制御モジュールを構成している。 これによって、TCU、特に電子部品で発生した熱を金属プレート3を通して外部(バルブボディ)へ効率良く放熱させることができる。これにより、TCU、特に電子部品の十分な放熱性を確実に確保することができる。
そして、ターミナル10〜12と金属プレート3の搭載面との間に自動変速機のオイル中に混入した導電性異物が跨がって堆積している場合であっても、レーザ溶接部14、15の露出面、露出部31の表面および露出部33の表面に絶縁材36を塗布しているので、ターミナル10〜12と金属プレート3とを確実に絶縁することができる。これにより、ターミナル10〜12と金属プレート3との間のショートを確実に防止することができる。
【0078】
また、ターミナル10とターミナル11、12とを重ね合わせ、その重ね合わせ部分をレーザ溶接によって電気的に接続している。これによって、TCU、特にモールド樹脂1に樹脂封止された電子部品や回路基板にダメージを与えることなく、ターミナル10の露出部31とターミナル11、12の露出部33との重ね合わせ部分において確実に導通接合することができるので、ターミナル10とターミナル11、12との導通接合部(レーザ溶接部14、15)の接続信頼性を向上することができる。
また、複数のターミナル10の各露出部31に少なくとも2箇所以上で屈曲した応力吸収部32を設けているので、モールド樹脂1とターミナル10との間に熱膨張係数の差異がある場合であっても、冷熱サイクルでターミナル10またはターミナル10に発生する変位を吸収することができる。これにより、ターミナル10の破断を防止することができる。
また、複数のターミナル12の各露出部41に少なくとも6箇所以上で屈曲した応力吸収部42を設けているので、樹脂ハウジング2とターミナル12との間に熱膨張係数の差異がある場合であっても、冷熱サイクルでターミナル12に発生する変位を吸収することができる。これにより、ターミナル12の破断を防止することができる。
【0079】
また、電子制御モジュールにおいては、配線ユニットの樹脂ハウジング2の下面に、複数のレーザ溶接部14、15、複数の露出部31、33を各々相互に隔離する複数の隔壁52を設けているので、隣り合う端子(ターミナル10)間または隣り合う配線(ターミナル11、12)間の沿面距離が長く確保されている。これにより、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物が隣り合う端子間および配線間に跨がって堆積する可能性が低くなるので、隣り合う端子(ターミナル10)間および隣り合う配線(ターミナル11、12)間の絶縁性を向上できる。これにより、隣り合う端子(ターミナル10)間および隣り合う配線(ターミナル11、12)間のショートを防止することができる。
また、複数の隔壁52は、絶縁性樹脂製の樹脂ハウジング2の下面に一体的に形成されているので、隣り合う端子(ターミナル10)間および隣り合う配線(ターミナル11、12)間(導体間)、つまりターミナル相互間を確実に絶縁することができる。
【0080】
また、センサハウジング4の上面に、複数のレーザ溶接部16、複数の露出部41、43を各々相互に隔離する複数の隔壁77を設けているので、樹脂ハウジング2の隔壁52と同様に、隣り合う端子間および隣り合う配線(ターミナル12、13)間の沿面距離が長く確保されている。これにより、自動変速機のオイル中に混入した導電性異物が隣り合う端子間および隣り合う配線(ターミナル12、13)間に跨がって堆積する可能性が低くなるので、隣り合う端子間および隣り合う配線(ターミナル12、13)間の絶縁性を向上できる。これにより、隣り合う端子間および隣り合う配線(ターミナル12、13)間のショートを防止することができる。
また、複数の隔壁77は、絶縁性樹脂製のセンサハウジング4の上面に一体的に形成されているので、隣り合う端子間および隣り合う配線(ターミナル12、13)間、つまりターミナル相互間を確実に絶縁することができる。
【0081】
また、本実施例のTCUは、モールド樹脂1に一体的に形成されたブラケット5を介して金属プレート3およびバルブボディに保持固定されているので、エンジン振動や車両振動が自動変速機に伝達された場合であっても、その振動が直接TCUのターミナル10に伝達されることはない。これにより、振動等によりターミナル10が破損するのを防止することができる。
また、TCUのブラケット5は、締結ボルト6によりTCUと配線ユニットとの接合体Aを金属プレート3とセンサハウジング4との接合体Bに締結固定する際に、配線ユニットの下面と金属プレート3の上面(搭載面)との間に挟み込まれた状態で保持されている。つまりブラケット5が、配線ユニットの樹脂ハウジング2のボルト締結部63の下面と金属プレート3の上面との間に挟み込んでボルト締結されているため、締結ボルト6の締結トルクがTCU、特に電子部品や回路基板に加わることによる、TCU、特に電子部品や回路基板の破損を防止することができる。
【0082】
また、電子制御モジュールにおいては、非常に狭いピッチのTCUのターミナル10を、一旦、配線の分配のみを行う比較的小型な配線ユニットのターミナル12と電気的に接続した後に、その配線ユニットのターミナル12から別体のセンサ素子(シフトポジションセンサ21を構成する3つのホール素子、タービン回転センサ22を構成するホールIC、出力軸回転センサ23を構成するホールIC等)に配線接続する構成である。これにより、ターミナル12を持たず、TCUのターミナル10とセンサハウジング4のターミナル13とを直接接続するタイプと比べて、TCUのターミナル10と配線ユニットのターミナル12との接合の際のハンドリングの手間が小さく、また、ターミナル10とターミナル12とを重ね合わせてレーザ溶接するレーザ溶接作業のために占有するスペースが小さくて済む。
【実施例2】
【0083】
図10および図11は本発明の実施例2を示したもので、図10および図11はターミナルを上下に重ね合わせてレーザ溶接するレーザ溶接工程(ターミナル接続工程)を示した図である。
【0084】
本実施例の配線ユニットの樹脂ハウジング2には、複数の隔壁52のうち端子収容室51を隔てて対向する隣り合う2つの隔壁52の対向面から端子収容室51の中心軸線側に向けて突出する一対のガイドリブ53が一体的に形成されている。
これらのガイドリブ53には、実施例1と同様に、端子収容室51の底面で露出しているターミナル11、12の露出部33に向けてターミナル10の露出部31を誘導(ガイド)するためのリード端子(ターミナル10)誘い込み用の傾斜面が形成されている。
そして、一対のガイドリブ53は、隣り合う隔壁52の長手方向の中央部付近に設けられている。つまり一対のガイドリブ53は、レーザ溶接部14、15よりも閉鎖壁54側に対して逆側に位置する隔壁52間に形成されている。
なお、樹脂ハウジング2、少なくともガイドリブ53を形成する合成樹脂材料としては、実施例1と同様に、レーザ光透過性樹脂を採用することが望ましい。
【0085】
次に、TCUのターミナル10と配線ユニットのターミナル11、12とを上下に重ね合わせてレーザ溶接するレーザ溶接工程(ターミナル接続工程)を図10および図11に基づいて説明する。
レーザ溶接装置は、電子制御装置により制御されるレーザ発振器(図示せず)と、ターミナル10の露出部31側から押圧荷重を与える1つの押さえ治具95と、この押さえ治具95よりも閉鎖壁54側にレーザ光Lを照射するレーザ溶接ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0086】
本実施例では、実施例1と同様に、一対のガイドリブ53を設置しているので、ターミナル11、12の露出部33に対するターミナル10の露出部31の板幅方向のターミナル位置ズレを許容値以下に抑えることができる。
本実施例では、レーザ溶接部14、15よりもTCU側の露出部31を1つの押さえ治具95により露出部33側に押圧(加圧)することで、ターミナル10の露出部31とターミナル11、12の露出部33との間に形成される隙間を許容値以下に抑えることができる。
以上により、本実施例のレーザ溶接装置およびレーザ溶接方法においては、ターミナル位置ズレおよびターミナル相互の隙間を許容値以下にする対策を行わないものと比べて、レーザ溶接による品質を確保することができる。
【0087】
レーザ溶接工程では、複数のターミナル10と複数のターミナル11、12とを重ね合わせる。つまり、各端子収容室51の底面で露出した露出部33上に露出部31を重ね合わせる。そして、上下に重ね合わせた露出部31、33を、露出部31側から1つの押さえ治具95により押圧(加圧)する。これにより、露出部31、33が隙間なく、あるいは許容範囲内の隙間を有しながら重ね合わされる。
そして、1つの押さえ治具95により押圧(加圧)される押圧部Jおよび一対のガイドリブ53間に挟み込まれる位置よりも先端側(閉鎖壁54側)の位置(溶接箇所)にレーザ光Lをレーザ溶接ヘッドから照射する。
【0088】
これによって、ターミナル10とターミナル11、12の界面を超え露出部33の内部に渡って連続的に溶融部が形成される。この溶融部の形成に伴って、ターミナル10とターミナル11、12との重ね合わせ部分が溶着固定されるため、複数のターミナル10と複数のターミナル11、12との導通接合部であるレーザ溶接部14、15が電気的に接続(導通接合)される。これにより、TCUのターミナル10と配線ユニットのターミナル11、12とを上下に重ね合わせた重ね合わせ部分に、両露出部31、33に渡るレーザ溶接部14、15が形成される。
以上のように、複数のターミナル10の各露出部31と複数のターミナル11、12の各露出部33とをレーザ溶接により導通接合した後に、実施例1と同様に、複数のレーザ溶接部14、15の露出面、複数の露出部31の表面および複数の露出部33の表面に、例えば絶縁性接着剤よりなる絶縁材36を塗布する。
【0089】
[変形例]
本実施例では、複数のターミナル12と複数のターミナル13との各レーザ溶接部16の露出面、複数のターミナル12の各露出部41の表面および複数のターミナル13の各露出部43を各々相互に隔離する複数の隔壁77を、センサハウジング4の上面に設けているが、複数のターミナル12と複数のターミナル13との各レーザ溶接部16の露出面、複数のターミナル12の各露出部41の表面および複数のターミナル13の各露出部43を各々相互に隔離する複数の隔壁77を、複数の端子収容室76の上方開口部を閉鎖する蓋部材9の下面に設けても良い。
本実施例では、封止材73、75、82として絶縁性樹脂であるエポキシ樹脂を用いているが、封止材73、75、82として絶縁性樹脂であるシリコーン樹脂を用いても良い。
【符号の説明】
【0090】
A TCUと配線ユニットとの接合体
B 金属プレートとセンサハウジングとの接合体
1 TCU(電子制御ユニット)のモールド樹脂(モールド材)
2 配線ユニットの樹脂ハウジング(モールド樹脂成形体)
3 金属プレート(放熱部材)
4 センサユニットのセンサハウジング
5 TCUのブラケット
6 締結ボルト(締結部材)
8 回路基板
9 蓋部材
10 TCUのターミナル(第1ターミナル、リードフレーム)
11 配線ユニットのターミナル(第3ターミナル、コネクタターミナル)
12 配線ユニットのターミナル(第2ターミナル、中継ターミナル)
13 センサユニットのターミナル(第4ターミナル、センサターミナル)
14 レーザ溶接部(第1ターミナルと第3ターミナルとの導通接合部)
15 レーザ溶接部(第1ターミナルと第2ターミナルとの導通接合部)
16 レーザ溶接部(第2ターミナルと第4ターミナルとの導通接合部)
17 外部コネクタ部
31 ターミナル(第1ターミナル)の露出部(第1露出部)
33 ターミナル(第3、第2ターミナル)の露出部(第3、第2露出部)
36 絶縁材
37 コネクタ端子部
41 ターミナル(第2ターミナル)の露出部(第2露出部)
43 ターミナル(第4ターミナル)の露出部(第4露出部)
46 絶縁材
47 ターミナル(第4ターミナル)の導通接合部
48 回路基板のスルーホール
51 端子収容室
52 隔壁
53 ガイドリブ
63 配線ユニットの樹脂ハウジングのボルト締結部
64 金属プレートのボルト締結部
65 金属プレートのブラケット
73 封止材
74 樹脂壁(壁体)
75 封止材
76 端子収容室
77 隔壁
78 センサハウジングのボルト締結部
82 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機の内部に搭載された自動変速機の制御装置において、
(a)前記自動変速機を制御する電子部品、この電子部品から外側に向けて延設されて、前記電子部品に電気的に接続される複数の第1ターミナル、および前記電子部品と前記複数の第1ターミナルを封止するモールド材を有する電子制御ユニットと、
(b)前記複数の第1ターミナルにそれぞれ導通接合する複数の第2ターミナル、およびこれらの第2ターミナルを保持する成形体を有する配線ユニットと、
(c)前記電子制御ユニットで発生した熱を外部に放熱する放熱部材と、
(d)前記電子制御ユニットと前記放熱部材とが接触するように、前記電子制御ユニットを前記放熱部材に締結する締結部材と
を備え、
前記複数の第1ターミナルは、前記モールド材の表面から露出した第1露出部を有し、 前記複数の第2ターミナルは、前記成形体の表面から露出した第2露出部を有し、
前記第1ターミナルと前記第2ターミナルとの導通接合部、前記第1露出部の表面および前記第2露出部の表面に絶縁材を施したことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
前記放熱部材は、アルミニウム材を主体とする金属プレートであることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
前記放熱部材は、鉄鋼材を主体とする金属プレートであることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の自動変速機の制御装置において、
前記複数の第1ターミナルは、少なくとも1箇所以上で屈曲した屈曲形状を有するように形成されていることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の自動変速機の制御装置において、
前記複数の第2ターミナルは、少なくとも1箇所以上で屈曲した屈曲形状を有するように形成されていることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載の自動変速機の制御装置において、
前記第1ターミナルと前記第2ターミナルとの導通接合部は、前記第1ターミナルと前記第2ターミナルとを重ね合わせてレーザ溶接することで形成されることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載の自動変速機の制御装置において、
前記締結部材は、前記電子制御ユニットと前記配線ユニットとの接合体を、前記放熱部材に締結することを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の自動変速機の制御装置において、
前記電子制御ユニットは、前記モールド材の表面から外部側に向けて突出するように延設された板状のブラケットを有し、
前記ブラケットは、前記配線ユニットと前記放熱部材との間に挟み込まれた状態で、前記放熱部材に締結されることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載の自動変速機の制御装置において、
前記配線ユニットは、前記第1ターミナルと前記第2ターミナルとの導通接合部を各々相互に隔離する隔壁を有していることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の自動変速機の制御装置において、
前記配線ユニットは、前記第2ターミナルに対して別途設けられて、前記複数の第1ターミナルにそれぞれ導通接合する複数の第3ターミナル、およびこれらの第3ターミナルを保持する成形体を有し、
前記複数の第1ターミナルは、前記モールド材の表面から露出した第1露出部を有し、 前記複数の第3ターミナルは、前記成形体の表面から露出した第3露出部を有し、
前記第1ターミナルと前記第3ターミナルとの導通接合部、前記第1露出部の表面および前記第3露出部の表面に絶縁材を施したことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の自動変速機の制御装置において、
前記配線ユニットは、前記自動変速機の外部と電気的に接続する電気接続部として形成した外部コネクタ部を有し、
前記複数の第3ターミナルは、前記第3露出部側に対して反対側に、前記外部コネクタ部内に突出するコネクタ端子部を有していることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の自動変速機の制御装置において、
前記配線ユニットは、前記第1ターミナルと前記第3ターミナルとの導通接合部を各々相互に隔離する隔壁を有していることを特徴とする自動変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−252549(P2011−252549A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127051(P2010−127051)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】