説明

自動変速機の油圧制御装置

【課題】小型化・軽量化と、自動変速機における変速比の変化の抑制とを両立することのできる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】油圧源24から第1供給弁SLP1を介して油圧が供給され、また第1排出用弁SLP2を介して油圧を排出して変速比を変化させる第1のアクチュエータ17と、油圧源24から第2供給用バルブSLC1を介して油圧が供給され、また第2排出用弁SLC2を介して油圧が排出されると、トルクの向きを切り替える第2のアクチュエータ12,13とを備えた自動変速機の油圧制御装置において、油圧源24の油圧が上昇したときに第1供給用弁SLP1が開くよりも先に第2供給用弁SLC1が開弁するように構成され、第2排出用バルブSLC2は、第2供給用弁SLC1の開弁圧より低い開弁圧で開くように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動力伝達機構のアクチュエータに供給される油圧を制御することにより、変速比が変化するように構成された自動変速機の油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クラッチやブレーキ、あるいはバリエータなどの動力伝達機構を油圧によって制御することにより、トルクを伝達し、また変速比を設定する自動変速機が知られている。上記のような動力伝達機構を制御する油圧は、エンジンやモータなどの動力装置によってポンプを駆動することにより発生させ、またその油圧を蓄圧器に蓄えて、その蓄圧器を油圧源とすることもある。したがって、油圧制御の元となる油圧(いわゆる元圧)を得るためには動力を消費するから、動力を不必要に消費しないようにするために、元圧が過度に高くならないように、油圧回路を構成している。具体的には、油圧源に接続された油圧回路にリリーフ弁を設けることにより、元圧の上限値を規定している。このように、油圧源で発生した油圧を動力伝達機構に供給する油圧回路に、リリーフ弁を設けた油圧制御装置の例が、特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載された油圧制御装置はベルト型無段変速機に用いられるものであり、その油圧制御装置は、油圧源として電動オイルポンプおよびアキュムレータを有しており、その油圧源で発生した油圧を、変速比を制御するプライマリプーリ用油圧室に供給する第1供給用バルブと、伝達トルクを制御するセカンダリプーリ用油圧室に供給する第2供給用バルブとを有している。また、プライマリプーリ用油圧室から油圧を排出する第1排出用バルブと、セカンダリプーリ用油圧室から圧油を排出する第2排出用バルブとが設けられている。さらに、油圧源から、第1,第2供給用バルブに至る経路にリリーフバルブが設けられている。この特許文献1に記載されたベルト型無段変速機においては、第1供給用バルブが開かれて油圧源の油圧をプライマリプーリ用油圧室に供給するか、第1排出用バルブが開かれてプライマリプーリ用油圧室の油圧を排出する制御をおこない、変速比が制御される。一方、第2供給用バルブが開かれてセカンダリプーリ用油圧室に油圧が供給されるか、あるいは、第2排出用バルブが開かれてセカンダリプーリ用油圧室の油圧が排出されて、伝達トルク容量が制御される。そして、特許文献1に記載された油圧制御装置においては、油圧源から第1供給用バルブおよび第2供給用バルブに至る経路の油圧が必要以上に上昇すると、その油圧によりリリーフ弁が開いて油圧が逃がされる。なお、リリーフ弁は設けられていないが、油圧源で発生した油圧により動力伝達機構を制御するように構成された油圧制御装置の例が、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0985855号明細書
【特許文献2】国際公開第2010/021218号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されているような油圧制御装置を小型化・軽量化するためにリリーフバルブを廃止すると、油圧源側の油圧が不用意に上昇する可能性があり、そのように油圧源側の油圧が上昇したときに第1供給用バルブが開かれると、プライマリプーリ用油圧室に供給される油圧が急激に変化し、ベルト型無段変速機の変速比の変化を招来する虞があった。その結果、自動変速機の油圧制御装置を有する車両において、このようにリリーフバルブを廃止すると、車両の乗り心地あるいはドライバビリティを損なう可能性があるので、小型化・軽量化と、車両の乗り心地あるいはドライバビリティとの両立を図るには未だ改善の余地があった。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、小型化・軽量化と、自動変速機における変速比の変化の抑制とを両立することのできる油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、油圧源から第1供給用バルブを介して油圧が供給されることにより、また第1排出用バルブを介して油圧を排出することにより変速比を変化させる第1のアクチュエータと、前記油圧源から第2供給用バルブを介して油圧が供給されることにより、また第2排出用バルブを介して油圧を排出することにより油圧が変化すると、前記変速比とは別の動力伝達状態を変更する第2のアクチュエータとを備えた自動変速機の油圧制御装置において、前記第1のアクチュエータの目標油圧が達成されて前記第1供給用バルブが閉弁されており、また、前記第2のアクチュエータの目標油圧が達成されて前記第2供給用バルブが閉弁されているときでも、前記油圧源側から入力される油圧が上昇すると、前記第1供給用バルブが開弁するよりも先に前記第2供給用バルブが開弁されるように、前記第1供給用バルブの開弁圧および前記第2供給用バルブの開弁圧が設定されており、前記第2排出用バルブは、前記第2のアクチュエータの目標油圧が達成されていることにより閉弁されているときでも、前記油圧源側の油圧が上昇して前記第2供給用バルブが開弁されてその油圧が伝達されると、前記第2供給用バルブの開弁圧よりも低い圧で開弁されるように開弁圧が設定されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記自動変速機は、油圧によって溝幅が変化させられる少なくとも一対のプーリと、これらのプーリに巻き掛けられて前記溝幅が変化することにより前記プーリに対する巻き掛け半径が変化するベルトとを有するバリエータと、そのバリエータの入力側もしくは出力側に連結され、かつ油圧が供給されることにより伝達トルク容量が増大するとともに油圧が排圧されることにより伝達トルク容量が低下する係合手段とを備え、前記第1のアクチュエータは、前記プーリに設けられ前記溝幅を変化させるための油圧が給排される油圧室を含み、前記第2のアクチュエータは、前記係合手段の伝達トルク容量を増減させるための油圧が給排される他の油圧室を含むことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記第1供給用バルブおよび前記第2供給用バルブおよび前記第2排出用バルブは、弁体を弾性体によって弁座に押し付けることにより、圧油の漏れを生じることなく閉弁されるようにそれぞれ構成されており、前記各バルブの閉弁圧は、各バルブの弾性体に応じて決められた圧力であることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、油圧源側の油圧が必要以上に高くなると、第1供給用バルブが開弁されるより先に第2供給用バルブが開弁され、油圧源側の油圧が第2供給用バルブを経由して第2排出用バルブ側に伝達され、その油圧より第2排出用バルブが開弁して油圧が排出される。したがって、油圧源側の油圧が必要以上に上昇することを抑制できる。また、第2のアクチュエータに油圧を供給する第2供給用バルブ、および第2のアクチュエータの油圧を排出する第2排出用バルブが、油圧源側の油圧の上昇を抑制するリリーフ弁としての役割を兼ねるため、専用のリリーフ弁を設ける必要がなく、油圧制御装置の小型化・軽量化を図ることができる。さらに、油圧源側の油圧が必要以上に上昇することを防ぐ際に、第1供給用バルブは開弁されないため、第1のアクチュエータの油圧が変化することを抑制でき、自動変速機の変速比が不用意に変化することを防止できる。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、油圧源側の油圧が必要以上に上昇することを抑制するにあたり、第1のアクチュエータの油圧室の油圧は変化しないため、プーリの溝幅が変化することを抑制できる。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、油圧源側から入力される油圧により弁体が弾性体の押圧力に抗して移動して弁座から離れ、各バルブが開弁する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の油圧制御装置の構成を示す模式図である。
【図2】この発明の油圧制御装置を備えた車両のパワートレーンを示す模式図である。
【図3】この発明の油圧制御装置に用いられる供給用バルブおよび排出用バルブの構成を示す断面図である。
【図4】この発明の油圧制御装置における作用を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎにこの発明を図面を参照して具体的に説明する。この発明は、無段変速機や有段変速機などの車両用の自動変速機の油圧を制御するための装置であり、その一例としてベルト型無段変速機におけるプーリの油圧室の油圧を制御する例について説明する。図2には、この発明に係る油圧制御装置A1を搭載した車両1のパワートレーンが示されており、図1には、油圧制御装置A1の具体的な構成が示されている。この車両1は、走行用の動力源としてエンジン2を有しており、そのエンジン2から駆動輪3に至る動力伝達経路に、前後進切換装置4、ベルト型無段変速機5(以下、「無段変速機5」と記す)が設けられている。前記エンジン2は、燃料を燃焼させてその熱エネルギを運動エネルギに変換して出力する動力装置であり、エンジン2としては内燃機関、例えば、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンまたはLPGエンジンなどを用いることができる。
【0015】
一方、図2に示された車両1においては、エンジン2から駆動輪3に至る動力伝達経路において、無段変速機5よりも上流に前後進切換装置4が設けられている。この前後進切換装置は4、エンジン2の出力軸と動力伝達可能に接続されたインプットシャフト46を有している。なお、エンジン2の出力軸とインプットシャフト46との間には、流体の運動エネルギにより動力伝達をおこなう流体伝動装置、または摩擦力により動力伝達をおこなう入力クラッチが設けられていてもよい。また、前後進切換装置4は、インプットシャフト46の回転方向に対して、無段変速機5のプライマリプーリ6の回転方向を正逆に切り換えるための装置である。
【0016】
図2においては、前後進切換装置4としてダブルピニオン型の遊星歯車機構を用いた例が示されており、その遊星歯車機構は、インプットシャフト46と一体回転するサンギヤ7と、このサンギヤ7と同軸上に設けられたリングギヤ8と、サンギヤ7と噛合されたピニオンギヤ9と、このピニオンギヤ9よびリングギヤ8に噛合されたピニオンギヤ10と、ピニオンギヤ9,10を自転かつ公転可能に保持したキャリヤ11とを有している。このキャリヤ11とプライマリプーリ6とが一体回転するように接続されている。
【0017】
さらに、前後進切換装置4は、インプットシャフト46とキャリヤ11とを選択的に連結および解放するクラッチC1を有しており、また、リングギヤ8を選択的に固定するブレーキB1を有している。このクラッチC1およびブレーキB1は、油圧制御により係合および解放が制御される摩擦係合装置である。クラッチC1の係合および解放を制御する油圧室12が設けられ、ブレーキB1の係合および解放を制御する油圧室13が設けられている。
【0018】
一方、前記無段変速機5は、入力回転数と出力回転数との比を無段階に変更することのできるバリエータ(変速部)であり、この無段変速機5は従来知られているものと同様に構成されている。すなわち、無段変速機5は、プライマリプーリ6およびセカンダリプーリ14にベルト15を巻き掛けて構成されている。この無段変速機5においては、プーリ6,14の間でトルクを伝達し、かつ各プーリ6,14に対するベルト15の巻き掛け半径を変化させることにより、プライマリプーリ6とセカンダリプーリ14との間における変速比が変化するように構成されている。具体的に説明すると、各プーリ6,14は、固定シーブとその固定シーブに対して接近・離隔するように配置された可動シーブとを備え、それらの固定シーブと可動シーブとの間にV溝状のベルト巻き掛け溝が形成されるように構成されている。そして、プライマリプーリ6には可動シーブをその軸線に沿った方向に前後動させるための油圧室16を有する油圧アクチュエータ17が設けられている。一方、セカンダリプーリ14には可動シーブをその軸線に沿った方向に前後動させるための油圧室18を有する油圧アクチュエータ19が設けられている。そして、油圧室16には、ベルト15の巻き掛け半径を変化させて変速比を制御するために油圧が給排され、油圧室18には無段変速機5のトルク容量を制御するために油圧が給排される。
【0019】
つぎに、前記油圧室12,13,16,18への油圧の供給および排出を制御する油圧制御装置A1の構成を、具体的に説明する。この油圧制御装置A1は、電動機20により駆動される電動オイルポンプ21を有している。この電動オイルポンプ21が駆動されると、オイルパン22に溜められているオイルが電動オイルポンプ21により吸入されて、その電動オイルポンプ21から油路23へと吐出される。この油路23には油圧を蓄圧し、あるいは蓄圧された油圧を放出するアキュムレータ(蓄圧器)24が接続されている。このアキュムレータ24は、蓄圧室(図示せず)に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。
【0020】
つぎに、油路23の油圧を油圧室12,13,16,18に供給する経路の構成を説明する。まず、油圧室16に接続された油路25が設けられており、その油路25と前記油路23との間に供給側電磁開閉弁SLP1が設けられている。この供給側電磁開閉弁SLP1のポートを開閉することにより、油圧室16に対して油圧を供給し、また油圧の供給を遮断するように構成されている。これと同様に、油圧室18に接続された油路26が設けられており、その油路26と油路23との間には、供給側電磁開閉弁SLS1が設けられている。この供給側電磁開閉弁SLS1のポートを開閉することにより、油圧室18に対して油圧を供給し、また油圧の供給を遮断するように構成されている。
【0021】
さらに、油圧室12,13に接続される油路27が設けられており、その油路27と油路23との間には、供給側電磁開閉弁SLC1が設けられている。この供給側電磁開閉弁SLC1のポートを開閉することにより、油圧の供給をおこない、また油圧の供給を遮断するように構成されている。さらに、油圧室12に接続された油路28が設けられ、油圧室13に接続された油路29が設けられている。さらに、運転者がシフトポジション選択装置(図示せず)を操作したときに動作するマニュアルバルブ30が設けられている。このマニュアルバルブ30は、油路27に接続された入力ポート30Aと、油路28に接続された第1出力ポート30Bと、油路29に接続された第2出力ポート30Cと、オイルパン22に接続されたドレーンポート30Dと、シフトポジションの切り替えにより動作して、これらのポートを開閉する弁体(図示せず)とを有している。
【0022】
さらに、油圧室12,13,16,18から油圧を排出する経路の構成を説明する。まず、前記油路25から分岐されて油圧室16をオイルパン22に連通させる排出油路31が設けられている。この排出油路31には排出側電磁開閉弁SLP2が設けられており、排出側電磁開閉弁SLP2のポートを開閉することにより、油圧室16から油圧を排出し、また油圧の排出を停止するように構成されている。
【0023】
これと同様に、前記油路26から分岐されて油圧室18をオイルパン22に連通させる排出油路32が設けられている。この排出油路32には排出側電磁開閉弁SLS2が設けられており、この排出側電磁開閉弁SLS2のポートを開閉することにより、油圧室18から油圧を排出し、また油圧の排出を停止するように構成されている。さらに、前記油路27から分岐されて油圧室12,13をオイルパン22に連通させる排出油路33が設けられている。この排出油路33には電流の制御によりポートが開閉される排出側電磁開閉弁SLC2が設けられている。
【0024】
上記の電磁開閉弁SLP1 ,SLS1 ,SLC1,SLP2 ,SLS2 ,SLC2は、ポートを閉じた閉弁状態においても油圧の漏れが生じないように構成されたバルブであり、ポペット弁やニードル弁によって構成されている。これらの電磁開閉弁の構成を図3に基づいて説明する。図3は、電磁開閉弁の構成を拡大して示す断面図であり、各電磁開閉弁を便宜上、同一のものとして示されている。電磁開閉弁は、例えば、電磁コイル34へ通電されて形成される磁気吸引力により、軸線に沿った方向に移動する棒状の弁体35と、磁気吸引力とは逆向きに弁体35を押圧するバネ36と、バネ36の力で弁体35の端部が押し付けられ、かつ、ポート37を有する弁座38とを備えたソレノイドバルブである。つまり、バネ36の力が弁体35に与えられてポート37が閉じられる一方、磁気吸引力がポート37を開く方向の力を弁体35に与えるように構成されている。また、各電磁開閉弁はポート37に接続された入口通路39および出口通路40を有している。そして、弁体35はバネ36の力により入口通路39側に向けて押されており、弁体35の端部が弁座38に接触してポート37が閉じられているとき、入口通路39の油圧が弁体35の一端に作用するように構成されている。このとき、入口通路39の油圧により弁体35に作用する力の向きは、バネ36から弁体35に加えられる力の向きとは逆である。
【0025】
このように構成された供給側電磁開閉弁SLP1 ,SLS1 ,SLC1および排出側電磁開閉弁SLS2 ,SLC2は、電磁コイル34の電流を制御することにより、圧油の給排を制御することができる。具体的には、電磁コイル34への電流が相対的に少ないときはバネ36の力で弁体35が押されて弁座38に接触してポート37が閉じられている。これに対して、電磁コイル34への電流が相対的に多いと磁気吸引力が増大されて、弁体35がバネ34の力に抗して移動し、ポート37が開かれる。
【0026】
さらに、各電磁開閉弁と各油路との接続関係を説明する。まず、供給側電磁開閉弁SLP1においては、入口通路39が油路23に接続され、出口通路40が油路25に接続されている。また、供給側電磁開閉弁SLS1においては、入口通路39が油路23に接続され、出口通路40が油路26に接続されている。さらに、供給側電磁開閉弁SLC1においては、入口通路39が油路23に接続され、出口通路40が油路27に接続されている。一方、排出側電磁開閉弁SLP2においては、入口通路39が油路25に接続され、出口通路40がオイルパン22に接続されている。排出側電磁開閉弁SLS2においては、入口通路39が油路26に接続され、出口通路40がオイルパン22に接続されている。排出側電磁開閉弁SLC2においては、入口通路39が油路27に接続され、出口通路40がオイルパン22に接続されている。
【0027】
さらに、供給側電磁開閉弁SLP1 ,SLS1 ,SLC1は、基本的には電磁コイル34の電流が相対的に多いときに、ポート37が開かれるように構成されているが、電磁コイル34の電流が相対的に少ないときにも、アクチュエータ24の油圧または油路23の油圧が所定圧以上になると、その油圧で弁体35がバネ36の力に抗して移動して弁座シート38から離れてポート37が開かれるように構成されている。ここで、供給側電磁開閉弁SLP1 ,SLS1が閉じられているときに、その弁体35が油圧で押されて自動的に移動し、ポート37が開かれる油圧(開弁圧)は、供給側電磁開閉弁SLC1の弁体35が油圧で移動してポート37が開かれる油圧(開弁圧)よりも高圧に設定されている。また、供給側電磁開閉弁SLC1が閉じられているときに、その弁体35が油路23の油圧により移動して自動的に開く開弁圧は、「アキュムレータ24への蓄圧を停止する所定圧」と同じか、若干高い圧に設定されている。この「アキュムレータ24への蓄圧を停止する所定圧」については後述する。
【0028】
さらにまた、排出側電磁開閉弁SLC2は、基本的には電磁コイル34の電流が相対的に多いときに、ポート37が開かれるように構成されているが、電磁コイル34の電流が相対的に少なくポート37が閉じられていても、油路27の油圧が所定圧以上になると、その油圧で弁体35がバネ36の力に抗して移動して弁座シート38から離れてポート37が開かれるように構成されている。ここで、排出側電磁開閉弁SLC2 のポート37が閉じられているときに、弁体35が油路27の油圧により押されてポート37が開く開弁圧は、供給側電磁開閉弁SLC1の弁体35が油路23の油圧で押されてポート37が開く開弁圧よりも低圧に、かつ、油圧室12または油圧室13の目標油圧以上に設定されている。これら、供給側電磁開閉弁SLP1,SLS1,SLC1の開弁圧、および排出側電磁開閉弁SLC2の開弁圧は、いずれもバネ36弾性力、および電磁コイル34への通電電流により定まる値である。例えば、各電磁コイルの電流が制御されて、各電磁開閉弁が閉じられているときに、油圧より弁体が移動して開弁するようにするためには、バネ36のバネ定数を変更することにより、各供給側電磁開閉弁SLP1,SLS1,SLC1の開弁圧、および排出側電磁開閉弁SLC2の開弁圧を調整することができる。
【0029】
上記の各電磁開閉弁SLP1 ,SLS1 ,SLC1,SLP2 ,SLS2 ,SLC2のポートの開閉を制御し、またエンジン2の出力を制御し、さらには、無段変速機5の変速比およびトルク容量を制御し、さらには、クラッチC1およびブレーキB1の係合および解放を制御する電子制御装置41が設けられている。この電子制御装置41には、車速、アクセル開度、シフトポジション、エンジン回転数、無段変速機5の入力回転数および出力回転数などを検知する各種センサ(図示せず)の信号、アキュムレータ24の内圧もしくは油路23の圧力を検知する圧力センサ42の信号、油圧室16の油圧を検知する圧力センサ43の信号、油圧室18の油圧を検知する圧力センサ44の信号、油路27の油圧を検知する油圧センサ45の信号が入力される。
【0030】
上述した油圧制御装置A1の作用について説明する。各油圧室の油圧が目標油圧に制御されていることにより、供給側開閉弁SLP1 ,SLS1 ,SLC1のポート37が全て閉じられているときに、アキュムレータ24に蓄圧をおこなう必要があるときは、電動機20により電動オイルポンプ24が駆動されて油路23へ圧油が吐出されるとともに、電動オイルポンプ21から吐出された油圧がアキュムレータ24に蓄圧される。アキュムレータ24に蓄圧する必要があるかどうかは、油圧室12,13,16,18の目標油圧、アキュムレータ24の内圧などに基づいて決定される。そして、アキュムレータ24に蓄圧されている油圧を放出して、その油圧を各油圧室に供給すること、または各油圧室から油圧を排出することにより、無段変速機5の変速比およびトルク容量の制御をおこなうことができ、さらにはクラッチC1およびブレーキB1の係合および解放を制御することができる。
【0031】
まず、無段変速機5のトルク容量および変速比の制御について説明する。無段変速機5のトルク容量は、エンジン2からプライマリプーリ6に入力されたトルクをセカンダリプーリ14に伝達できる容量に制御され、これはセカンダリプーリ14の油圧室18に供給される油圧に応じた挟圧力によって設定される。より具体的には、アクセル開度やスロットル開度などに基づいて求められる要求駆動力に応じて挟圧力が制御され、要求駆動力が大きい場合には、油圧室18に供給される油圧が高くなるように制御される。その制御は、図1に示す油圧制御装置A1では、油圧室18に連通する供給側電磁開閉弁SLS1 のポートを開き、かつ、排出側開閉弁SLS2 のポートを閉じておき、アキュムレータ24から油圧室18に油圧を供給することによりおこなわれる。このとき、供給側電磁開閉弁SLS1 における圧油の供給は、油圧室18における目標圧力(あるいは目標挟圧力)と実際の油圧とに基づいておこなうことができる。
【0032】
これに対して、無段変速機5に入力されるトルクが低下してトルク容量を低下させるときには、排出側電磁開閉弁SLS2 のポートを開き、かつ、供給側電磁開閉弁SLS1 のポートを閉じて、油圧室18の油圧を排出側油路32を経由してオイルパン22へドレンさせる。このとき、排出側電磁開閉弁SLS2 における圧油の排出制御は、油圧室18における目標圧力(あるいは目標挟圧力)と実際の油圧とに基づいておこなうことができる。上記のようにして、無段変速機5のトルク容量を変更して、実際のトルク容量が目標値になると、実際のトルク容量を一定に維持する制御がおこなわれる。各電磁開閉弁SLS1,SLS2のポートを全て閉じることで油圧室18に油圧を封じ込める。すなわち、油圧室18の実際の油圧が、目標トルク容量に対応する目標油圧に維持される。この状態で、各電磁開閉弁SLS1,SLS2 からの油圧の漏洩は生じない。
【0033】
さらに、無段変速機5の変速比は、アクセル開度などの駆動要求量と車速もしくはタービン回転数などに基づいて変速マップから求められる。したがって、プライマリプーリ6の溝幅が、目標とする変速比となるように制御される。その制御は、油圧室16に油圧を給排することによりおこなわれ、具体的には、供給側電磁開閉弁SLP1 のポートおよび排出側電磁開閉弁SLP2 のポートを開閉することによりおこなわれる。例えば、無段変速機5の変速比を相対的に小さくする(アップシフト)ときには供給側電磁開閉弁SLP1 のポートが開かれ、かつ、排出側電磁開閉弁SLP2 のポートが閉じられて、油圧室16に油圧が供給される。このようにして、油圧室16の油圧が上昇するとプライマリプーリ6の溝幅が狭められる。
【0034】
これとは逆に、無段変速機5の変速比を相対的に大きくする(ダウンシフト)ときには、排出側電磁開閉弁SLP2 のポートが開かれ、かつ、供給側電磁開閉弁SLP1 のポートが閉じられて、油圧室16の油圧がオイルパン22へドレーンされる。すると、油圧室16油圧が低下してベル15の張力によりプライマリプーリ6の溝幅が広げられる。上記のようにして、無段変速機5の変速比を変更した後、その変速比を一定に維持するときには、各電磁開閉弁SLP1,SLP2のポートを全て閉じ、油圧室16に油圧を封じ込める。すなわち、油圧室16の実際の油圧が、目標変速比に対応した目標油圧に維持される。この状態で、各電磁開閉弁SLP1 ,SLP2からの油圧の漏洩は生じない。
【0035】
つぎに、前記クラッチC1およびブレーキB1の制御について説明する。Dポジションが選択されると、供給側電磁開閉弁SLC1が開弁され、排出側開閉弁SLC2が閉弁される。さらに、マニュアルバルブ30により油路27と油路28とが接続され、かつ、油路29とドレーンポート30Dとが接続される。すると、アキュムレータ24の油圧が油路27および油路28を経由して油圧室12に供給され、クラッチC1が係合される一方、油圧室13の油圧がドレーンポート30Dを経由して排出され、ブレーキB1が解放される。このようにして、油圧室12の実際の油圧が目標油圧まで上昇するとクラッチC1の係合が完了し、供給側電磁開閉弁SLC1が閉弁される。なお、クラッチC1の係合が完了した後も、マニュアルバルブ30により油路27と油路28とが接続され、かつ、油路29とドレーンポート30Dとが接続されている一方、排出側開閉弁SLC2が閉弁されている。このようにして、クラッチC1が係合され、かつ、ブレーキB1が解放されると、エンジントルクがインプットシャフト46に伝達されたとき、インプットシャフト46およびプライマリプーリ6が共に正回転する。
【0036】
また、Rポジションが選択されると、供給側電磁開閉弁SLC1のポートが開かれ、排出側開閉弁SLC2が閉弁される。さらに、マニュアルバルブ30により油路27と油路29とが接続され、かつ、油路28とドレーンポート30Dとが接続される。すると、アキュムレータ24の油圧が油路27および油路29を経由して油圧室13に供給され、ブレーキB1が係合される一方、油圧室12の油圧がドレーンポート30Dを経由して排出され、クラッチC1が解放される。このようにして、油圧室13の実際の油圧が目標油圧まで上昇するとブレーキB1の係合が完了し、供給側電磁開閉弁SLC1が閉弁される。なお、ブレーキB1の係合が完了した後も、マニュアルバルブ30により油路27と油路29とが接続され、かつ、油路28とドレーンポート30Dとが接続されている一方、排出側開閉弁SLC2が閉弁されている。このように、クラッチC1が解放され、かつ、ブレーキB1が係合されると、エンジントルクがインプットシャフト46に伝達されたとき、リングギヤ8が反力要素となり、プライマリプーリ6が逆回転する。
【0037】
さらに、Nポジションが選択されると、供給側電磁開閉弁SLC1が閉弁され、排出側開閉弁SLC2が開弁される。また、マニュアルバルブ30動作により、油路28,29が共に油路27に接続され、かつ、ドレーンポート30Cが閉じられる。したがって、油圧室12,13の油圧が共に排出側開閉弁SLC2を経由してドレーンされ、クラッチC1およびブレーキB1が共に解放される。
【0038】
上記のように構成された油圧制御装置A1において、アキュムレータ24の油圧が低下したときには、電動オイルポンプ21を駆動して油圧をアキュムレータ24に蓄えることができ、アキュムレータ24の油圧が所定圧まで上昇したときには、電動オイルポンプ21を停止してアキュムレータ24への蓄圧を停止する制御をおこなう。アキュムレータ24への蓄圧を停止する所定圧は、アキュムレータ24の許容最大圧、油路23を構成するバルブボデーの耐久性などに基づいて定まる値であり、また、油圧室12,13,16,18の目標油圧よりも高圧である。このようなアキュムレータ24への蓄圧および蓄圧停止は、供給側電磁開閉弁SLP1,SLP2,SLC1,SLC2が閉弁され、かつ、排出側電磁開閉弁SLC2が閉弁され、かつ、マニュアルバルブ30により油路27が、油路28または油路29と接続されているときにおこなわれる。
【0039】
ところで、アキュムレータ24への蓄圧をおこなう必要がないときに、アキュムレータ24の油圧が所定圧以上に上昇することがある。このような不具合は、電動オイルポンプ21がフェールして吐出圧が必要以上に高圧になったとき、アキュムレータ24の内圧を検知するセンサがフェールして、アキュムレータ24の実際の内圧よりも低い圧を検知信号としており、電動オイルポンプ21が停止しないときなどに生じる。
【0040】
これに対して、この実施例においては、アキュムレータ24の油圧が所定圧以上になることを抑制するために、電磁コイル34の電流制御により閉弁されている供給側電磁開閉弁SLP1 ,SLS1 の開弁圧は、供給側電磁開閉弁SLC1 の開弁圧よりも高圧に設定されている。このため、上記のようなフェールが生じてアキュムレータ24の油圧が上昇すると、油路23の油圧により供給側電磁開閉弁SLC1の弁体35がバネ36の力に抗して自動的に移動してポート37が開かれ、アキュムレータ24の油圧が給側電磁開閉弁SLC1を経由して油路27に排出される。このとき、供給側電磁開閉弁SLP1,SLS1は閉弁状態に維持される。
【0041】
上記の作用により油路27の油圧が上昇すると、その油路27の油圧により排出側電磁開閉弁SLC2の弁体35が自動的に移動してポート37が開かれ、油路27の油圧がオイルパン22に排出される。このようにして、油路23およびアキュムレータ24の油圧の上昇が抑制される。なお、油路23の油圧が所定圧以下未満になると、供給側電磁開閉弁SLC1の弁体35がバネ36の力で移動してポート37が閉じられる。また、油路27の油圧が排出側電磁開閉弁SLC2の開弁圧未満になると、排出側電磁開閉弁SLC2の弁体35がバネ36の力で移動して供給側電磁開閉弁SLC2が閉弁される。
【0042】
このように、アキュムレータ24および油路23の油圧が上昇すると、供給側電磁開閉弁SLC1が開弁されて、油路23の油圧が供給側電磁開閉弁SLC1を経由して油路27に排出され、ついで、供給側電磁開閉弁SLC2が開弁されるため、アキュムレータ24の油圧および油路23の油圧が必要以上に上昇することを抑制できる。したがって、油圧回路の耐久性が低下することを防止でき、また油圧回路を保護することができる。また、アキュムレータ24の油圧を油圧室12,13に供給する機能を備えた供給側電磁開閉弁SLC1および排出側電磁開閉弁SLC2が、アキュムレータ24および油路23の油圧を逃がすリリーフ弁としての機能を兼ねるため、専用のリリーフ弁を設ける必要がない。したがって、油圧制御装置A1の部品点数が増加することを回避でき、小型化・軽量化を図ることができるとともに、油圧制御装置A1の製造コストが上昇することを防止できる。さらに、アキュムレータ24の油圧および油路23の油圧が必要以上に上昇することを防ぐ際に、供給側電磁開閉弁SLP1,SLS1は開弁されないため、油圧室16,18の油圧が変化(上昇)することを抑制でき、無段変速機5の変速比およびトルク容量が不用意に変化することを防止できる。したがって、車両1の乗り心地が低下したり、ドライバビリティが低下したりすることを回避できる。
【0043】
さらにまた、排出側電磁開閉弁SLC2の開弁圧は、油圧室12または油圧室13の目標油圧以上であるため、マニュアルバルブ30により油路27と、油路28または油路29のいずれか一方とが接続されているときに、油路27の油圧が上昇して、排出側電磁開閉弁SLC2が開弁され、その後に、油路27の油圧が低下して排出側電磁開閉弁SLC2が閉弁されるときに、油圧室12または油圧室13の油圧は目標油圧未満には低下せず、クラッチC1またはブレーキB1の係合圧が変化することはない。
【0044】
上記の供給側電磁開閉弁SLP1および排出側電磁開閉弁SLC2の作用を、図4のタイムチャートにより説明する。フェールが発生していない時刻t1以前においては、アキュムレータ24の油圧が油圧P5であり、油路27の油圧が油圧P1である。そして、時刻t1でフェールが生じると、それ以降、アキュムレータ24の油圧が上昇するが、供給側電磁開閉弁SLC1は閉じられているため、油路27の油圧はP1に維持されている。そして、時刻t2で供給側電磁開閉弁SLC1のポートが自動的に開くと、それ以降はアキュムレータ24の油圧がP7に維持される。また、時刻t2で油路27の油圧が上昇すると排出側電磁開閉弁SLC2も開かれるため、その時刻t2以降は油路27の油圧が油圧P2に維持されている。
【0045】
上記の具体例においては、各電磁開閉弁に用いるバネのバネ定数を個々に異ならせることにより、各電磁開閉弁の開弁圧を設定する例を説明している。このため、油圧により各電磁開閉弁の弁体が移動して開弁される所定圧は、バネ定数から定まる固定された値である。これに対して、油圧により各電磁開閉弁の弁体が移動して開弁される所定圧をそれぞれ異ならせ、また、個別に変更できるように構成することもできる。これは、各電磁開閉弁に用いるバネのバネ定数を同じに設定し、また、各電磁開閉弁が開弁されない程度の磁気吸引力が生じるように予め電磁コイルの電流を制御しておき、油路の作用で弁体が移動して開弁されるように、各電磁開閉弁毎に電流を変えておき、各電磁開閉弁毎に開弁圧を設定するものである。
【0046】
ここで、上記の実施例に基づいて説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、電動オイルポンプ21およびアキュムレータ24が、この発明の油圧源に相当し、供給側電磁開閉弁SLP1が、この発明の第1供給用バルブに相当し、排出側電磁開閉弁SLP2が、この発明の第1排出用バルブに相当し、アクチュエータ17が、この発明における第1のアクチュエータに相当し、供給側電磁開閉弁SLC1が、この発明の第2供給用バルブに相当し、排出側電磁開閉弁SLC2が、この発明の第2排出用バルブに相当し、油圧室12,13が、この発明における第2のアクチュエータに相当する。また、無段変速機5が、この発明のバリエータ(変速部)に相当し、クラッチC1およびブレーキB1が、この発明における係合手段に相当する。プライマリプーリ6およびセカンダリプーリ14が、この発明における一対のプーリに相当し、ベルト15が、この発明におけるベルトに相当する。また、無段変速機5および前後進切換装置により、この発明の自動変速機が構成されている。さらに、前後進切換装置4においてクラッチC1の係合・解放、およびブレーキB1の係合・解放により切り替えられる「トルクの向き」、油圧室12の油圧により制御されるクラッチC1の伝達トルクが、この発明における「別の動力伝達状態」に相当する。
【0047】
前記図1および図2においては、エンジン2と無段変速機5との間に前後進切換装置4が設けられているが、無段変速機5と駆動輪3との間に前後進切換装置4が設けられている車両にも、この発明を用いることができる。さらに、セカンダリプーリの油圧室の油圧により変速比が制御されるように構成されている一方、プライマリプーリの油圧室の油圧によりトルク容量が制御されるように構成されたベルト型無段変速機にも、この発明を適用できる。また、自動変速機の例として無段変速機5が示されているが、入力回転数と出力回転数との間の変速比を段階的に変更することのできる有段変速機を制御する油圧制御装置に、この発明を適用することもできる。この有段変速機は、例えば、複数組の遊星歯車機構と、遊星歯車機構の回転要素同士を選択的に接続・解放するクラッチ、あるいは回転要素を選択的に固定するブレーキを有しているとともに、原動機と有段変速機との間に、流体伝動装置およびロックアップクラッチが設けられている。そして、クラッチまたはブレーキの係合・解放を制御する油圧室が、この発明の第1のアクチュエータに相当し、ロックアップクラッチの係合および解放を制御する油圧室が、この発明の第2のアクチュエータに相当する。また、この発明における弾性体は、バネに代えてゴムを用いることもできる。
【0048】
さらに、この発明における弁体は、油圧の力により弾性体の力に抗して移動してポートが開かれるように構成されていればよく、その弁体の形状は棒形状または球形状のいずれでもよい。さらに、各アクチュエータは、前記油圧室の他、油圧により押圧されるピストン、そのピストンを油圧の力とは逆向きに押すを生じるリターンバネなどを備えているが、図1および図2においては便宜上示されていない。なお、図2においては、駆動輪3に伝達する動力を発生する動力源としてエンジンが搭載された車両が示されているが、エンジンに代えて、またはエンジンに加えて、電動機を動力源として搭載した車両でもよい。また、この発明の油圧制御装置は、産業機械、工作機械における自動変速機にも用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
5…ベルト型無段変速機(無段変速機)、 6…プライマリプーリ、 12,13,16,18…油圧室、 14…セカンダリプーリ、 15…ベルト、 17…アクチュエータ、 21…電動オイルポンプ、 24…アキュムレータ、 35…弁体、 36…バネ、 38…弁座、 A1…油圧制御装置、 B1…ブレーキ、 C1…クラッチ、 SLP1,SLC1…供給側電磁開閉弁、 SLP2,SLC2…排出側電磁開閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧源から第1供給用バルブを介して油圧が供給されることにより、また第1排出用バルブを介して油圧を排出することにより変速比を変化させる第1のアクチュエータと、前記油圧源から第2供給用バルブを介して油圧が供給されることにより、また第2排出用バルブを介して油圧を排出することにより油圧が変化すると、前記変速比とは別の動力伝達状態を変更する第2のアクチュエータとを備えた自動変速機の油圧制御装置において、
前記第1のアクチュエータの目標油圧が達成されて前記第1供給用バルブが閉弁されており、また、前記第2のアクチュエータの目標油圧が達成されて前記第2供給用バルブが閉弁されているときでも、前記油圧源側から入力される油圧が上昇すると、前記第1供給用バルブが開弁するよりも先に前記第2供給用バルブが開弁されるように、前記第1供給用バルブの開弁圧および前記第2供給用バルブの開弁圧が設定されており、
前記第2排出用バルブは、前記第2のアクチュエータの目標油圧が達成されていることにより閉弁されているときでも、前記油圧源側の油圧が上昇して前記第2供給用バルブが開弁されてその油圧が伝達されると、前記第2供給用バルブの開弁圧よりも低い圧で開弁されるように開弁圧が設定されている
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記自動変速機は、油圧によって溝幅が変化させられる少なくとも一対のプーリと、これらのプーリに巻き掛けられて前記溝幅が変化することにより前記プーリに対する巻き掛け半径が変化するベルトとを有するバリエータと、
そのバリエータの入力側もしくは出力側に連結され、かつ油圧が供給されることにより伝達トルク容量が増大するとともに油圧が排圧されることにより伝達トルク容量が低下する係合手段と
を備え、
前記第1のアクチュエータは、前記プーリに設けられ前記溝幅を変化させるための油圧が給排される油圧室を含み、
前記第2のアクチュエータは、前記係合手段の伝達トルク容量を増減させるための油圧が給排される他の油圧室を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記第1供給用バルブおよび前記第2供給用バルブおよび前記第2排出用バルブは、弁体を弾性体によって弁座に押し付けることにより、圧油の漏れを生じることなく閉弁されるようにそれぞれ構成されており、前記各バルブの閉弁圧は、各バルブの弾性体に応じて決められた圧力である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の自動変速機の油圧制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−41991(P2012−41991A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184144(P2010−184144)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】