説明

自動変速機

【課題】3遊星6摩擦要素で前進8速以上を達成しながら、各変速段で生じるフリクション損失を抑制することができる自動変速機を提供すること。
【解決手段】ダブルピニオンの遊星歯車PG1と、シングルピニオンの遊星歯車PG2及び遊星歯車PG3を備え、出力軸OUTはキャリヤPC3に常時連結し、リングギヤR1を常時固定し、キャリヤPC1とサンギヤS2を常時連結し、サンギヤS1とリングギヤR3を常時連結する。キャリヤPC2と回転メンバM2を連結する第1クラッチC1、キャリヤPC2と回転メンバM1を連結する第2クラッチC2、リングギヤR2とサンギヤS3を連結する第3クラッチC3と、入力軸INとサンギヤS3を連結する第4クラッチC4と、リングギヤR2とキャリヤPC3を連結する第5クラッチC5と、入力軸INとキャリヤPC2を連結する第6クラッチC6、からなる6つの摩擦要素のうちの三つを同時締結して少なくとも前進8速及び後退1速を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速装置として適用される有段式の自動変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3遊星・6摩擦要素により前進8速の変速段を達成する自動変速機としては、ダブルピニオン型遊星歯車と、ラビニオタイプ遊星歯車ユニット(ダブルピニオン型遊星歯車1つとシングルピニオン型遊星歯車1つ)と、4個のクラッチと、2個のブレーキを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-182785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の自動変速機にあっては、前進8速の各変速段を達成するために、摩擦要素を二つ締結するようにしている。このため、各変速段において、空転する摩擦要素が4つとなり、空転する摩擦要素でのフリクション損失が大きく、駆動エネルギの伝達効率の悪化を招く、という問題があった。
すなわち、摩擦要素として多用されている多板クラッチや多板ブレーキの場合、要素解放による空転状態のとき、冷却や潤滑のために吹き付けられるオイルが相対回転するプレート間に介在し、引き摺り抵抗(オイルのせん断抵抗)によるフリクション損失の発生を避けることができない。しかも、このフリクション損失は、プレート枚数が多くてプレート間の相対回転速度が高いほど大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、3遊星6摩擦要素で前進8速以上を達成しながら、各変速段で生じるフリクション損失を抑制することで、駆動エネルギの伝達効率の向上を図ることができる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機は、
第1のサンギヤと、第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤと前記第1のリングギヤに噛み合う第1のダブルピニオンを支持する第1のキャリヤとからなる第1の遊星歯車と、
第2のサンギヤと、第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤと前記第2のリングギヤに噛み合う第2のシングルピニオンを支持する第2のキャリヤとからなる第2の遊星歯車と、
第3のサンギヤと、第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤと前記第3のリングギヤに噛み合う第3のシングルピニオンを支持する第3のキャリヤとからなる第3の遊星歯車と、
6つの摩擦要素と、を備え、
前記6つの摩擦要素を適宜締結解放することにより少なくとも前進8速の変速段に変速して入力軸からのトルクを出力軸に出力可能な自動変速機において、
前記出力軸は、前記第3のキャリヤに常時連結しており、
前記第1のリングギヤは、常時固定して第1の固定メンバを構成しており、
前記第1のキャリヤと前記第2のサンギヤは、常時連結して第1の回転メンバを構成しており、
前記第1のサンギヤと前記第3のリングギヤは、常時締結して第2の回転メンバを構成しており、
前記6つの摩擦要素は、
前記第2のキャリヤと前記第2の回転メンバの間を選択的に連結する第1の摩擦要素と、
前記第2のキャリヤと前記第1の回転メンバの間を選択的に連結する第2の摩擦要素と、
前記第2のリングギヤと前記第3のサンギヤの間を選択的に連結する第3の摩擦要素と、
前記入力軸と前記第3のサンギヤの間を選択的に連結する第4の摩擦要素と、
前記第2のリングギヤと前記第3のキャリヤの間を選択的に連結する第5の摩擦要素と、
前記入力軸と前記第2のキャリヤの間を選択的に連結する第6の摩擦要素と、
により構成され、
前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速及び後退1速を達成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の自動変速機にあっては、6摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより少なくとも前進8速及び後退1速の変速段を達成する。このため、各変速段において、空転する摩擦要素が3つになり、空転する摩擦要素でのフリクション損失を小さく抑えることができる。この結果、3遊星6摩擦要素で前進8速以上を達成しながら、各変速段で生じるフリクション損失を抑制することで、駆動エネルギの伝達効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。
【図2】実施例1の自動変速機において6つの摩擦要素のうち三つの同時締結の組み合わせにより前進9速及び後退1速を達成する締結作動表を示す図である。
【図3】実施例1の自動変速機において前進9速の各変速段での歯車噛み合い回数表を示す図である。
【図4】実施例1の自動変速機における各摩擦要素の最大トルク分担比表を示す図である。
【図5】実施例1の自動変速機における第1速(1st)の変速段での変速作用説明図である。
【図6】実施例1の自動変速機における第2速(2nd)の変速段での変速作用説明図である。
【図7】実施例1の自動変速機における第3速(3rd)の変速段での変速作用説明図である。
【図8】実施例1の自動変速機における第4速(4th)の変速段での変速作用説明図である。
【図9】実施例1の自動変速機における第5速(5th)の変速段での変速作用説明図である。
【図10】実施例1の自動変速機における第6速(6th)の変速段での変速作用説明図である。
【図11】実施例1の自動変速機における第7速(7th)の変速段での変速作用説明図である。
【図12】実施例1の自動変速機における第8速(8th)の変速段での変速作用説明図である。
【図13】実施例1の自動変速機における第9速(9th)の変速段での変速作用説明図である。
【図14】実施例1の自動変速機における後退速(Rev)の変速段での変速作用説明図である。
【図15】従来例の自動変速機を示すスケルトン図である。
【図16】従来例の自動変速機において6つの摩擦要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進8速及び後退2速を達成する締結作動表を示す図である。
【図17】従来の自動変速機において前進8速の各変速段での歯車噛み合い回数表を示す図である。
【図18】従来例の自動変速機における各摩擦要素の最大トルク分担比表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動変速機を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図1に基づいて、実施例1の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦要素構成を説明する。
【0011】
実施例1の自動変速機は、図1に示すように、第1の遊星歯車PG1と、第2の遊星歯車PG2と、第3の遊星歯車PG3と、入力軸INと、出力軸OUTと、第1の回転メンバM1と、第2の回転メンバM2と、第1の固定メンバF1と、第1クラッチC1(第1の摩擦要素)と、第2クラッチC2(第2の摩擦要素)と、第3クラッチC3(第3の摩擦要素)と、第4クラッチC4(第4の摩擦要素)と、第5クラッチC5(第5の摩擦要素)と、第6クラッチC6(第6の摩擦要素)と、トランスミッションケースTCと、を備えている。
【0012】
前記第1の遊星歯車PG1は、第1のダブルピニオンP1s,P1rを有するダブルピニオン型遊星歯車であり、第1のサンギヤS1と、該第1のサンギヤS1に噛み合うピニオンP1sと該ピニオンP1sに噛み合うピニオンP1rを支持する第1のキャリヤPC1と、前記ピニオンP1rに噛み合う第1のリングギヤR1とからなる。
【0013】
前記第2の遊星歯車PG2は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第2のサンギヤS2と、該第2のサンギヤS2に噛み合う第2のピニオンP2を支持する第2のキャリヤPC2と、前記第2のピニオンP2に噛み合う第2のリングギヤR2とからなる。
【0014】
前記第3の遊星歯車PG3は、シングルピニオン型遊星歯車であり、第3のサンギヤS3と、該第3のサンギヤS3に噛み合う第3のピニオンP3を支持する第3のキャリヤPC3と、前記第3のピニオンP3に噛み合う第3のリングギヤR3とからなる。
【0015】
前記入力軸INは、駆動源(エンジン等)からの回転駆動トルクがトルクコンバータ等を介して入力される軸である。
【0016】
前記出力軸OUTは、プロペラシャフトやファイナルギヤ等を介して駆動輪へ変速後の回転駆動トルクを出力する軸で、前記第3のキャリヤPC3に常時連結している。
【0017】
前記第1の回転メンバM1は、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のサンギヤS2を、摩擦要素を介在させることなく常時連結する回転メンバである。
【0018】
前記第2の回転メンバM2は、前記第1のサンギヤS1と前記第3のリングギヤR3を、摩擦要素を介在させることなく常時連結する回転メンバである。
【0019】
前記第1の固定メンバF1は、前記第1のリングギヤR1を、トランスミッションケースTCに常時固定するメンバである。
【0020】
前記第1クラッチC1は、前記第2のキャリヤPC2と前記第2の回転メンバM2の間を選択的に連結する第1の摩擦要素である。
【0021】
前記第2クラッチC2は、前記第2のキャリヤPC2と前記第1の回転メンバM1の間を選択的に連結する第2の摩擦要素である。なお、この第2クラッチC2と並列の位置に、ドライブ時にセルフロックし、コースト時にセルフ解放するワンウェイクラッチOWCが配置されている。
【0022】
前記第3クラッチC3は、前記第2のリングギヤR2と前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第3の摩擦要素である。
【0023】
前記第4クラッチC4は、前記入力軸INと前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第4の摩擦要素である。
【0024】
前記第5クラッチC5は、前記第2のリングギヤR2と前記第3のキャリヤPC3の間を選択的に連結する第5の摩擦要素である。
【0025】
前記第6クラッチC6は、前記入力軸INと前記第2のキャリヤPC2の間を選択的に連結する第6の摩擦要素である。
【0026】
前記第1の遊星歯車PG1と前記第2の遊星歯車PG2と前記第3の遊星歯車PG3は、図1に示すように、駆動源が接続される前記入力軸INから前記出力軸OUTに向かって順に配列している。
【0027】
図2は、実施例1の自動変速機において6つの摩擦要素のうち三つの同時締結の組み合わせにより前進9速及び後退1速を達成する締結作動表を示す図である。図3は、実施例1の自動変速機において前進9速の各変速段での歯車噛み合い回数表を示す図である。以下、図2及び図3に基づいて、実施例1の自動変速機の各変速段を成立させる変速構成を説明する。
【0028】
実施例1の自動変速機は、6つの摩擦要素C1,C2,C3,C4,C5,C6のうち三つの同時締結の組み合わせにより、下記に述べるように前進9速及び後退1速の各変速段を達成する。
【0029】
第1速(1st)の変速段は、図2に示すように、第2クラッチC2(またはワンウェイクラッチOWC)と第4クラッチC4と第5クラッチC5の同時締結により達成する。この第1速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、5回(=3回+0回+2回)となる。
【0030】
第2速(2nd)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第2クラッチC2(またはワンウェイクラッチOWC)と第4クラッチC4の同時締結により達成する。この第2速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第3の遊星歯車PG3のみが噛み合いに関与するため、合計回数は、2回(=0回+0回+2回)となる。
【0031】
第3速(3rd)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第4クラッチC4と第5クラッチC5の同時締結により達成する。この第3速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、7回(=3回+2回+2回)となる。
【0032】
第4速(4th)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第4クラッチC4の同時締結により達成する。この第4速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、7回(=3回+2回+2回)となる。
【0033】
第5速(5th)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第4クラッチC4と第6クラッチC6の同時締結により達成する。この第5速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3がいずれも噛み合いに関与しないため、合計回数は0回となる。
【0034】
第6速(6th)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第6クラッチC6の同時締結により達成する。この第6速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、7回(=3回+2回+2回)となる。
【0035】
第7速(7th)の変速段は、図2に示すように、第1クラッチC1と第5クラッチC5と第6クラッチC6の同時締結により達成する。この第7速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2が噛み合いに関与するため、合計回数は、5回(=3回+2回+0回)となる。
【0036】
第8速(8th)の変速段は、図2に示すように、第3クラッチC3と第5クラッチC5と第6クラッチC6の同時締結により達成する。この第8速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2が噛み合いに関与するため、合計回数は、5回(=3回+2回+0回)となる。
【0037】
第9速(9th)の変速段は、図2に示すように、第4クラッチC4と第5クラッチC5と第6クラッチC6の同時締結により達成する。この第9速の変速段での歯車噛み合い回数は、図3に示すように、第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3が噛み合いに関与するため、合計回数は、7回(=3回+2回+2回)となる。
【0038】
後退速(Rev)の変速段は、図2に示すように、第2クラッチC2(またはワンウェイクラッチOWC)と第4クラッチC4と第6クラッチC6の同時締結により達成する。
【0039】
図4は、実施例1の自動変速機における各摩擦要素の最大トルク分担比表を示す図である。ここで、「トルク分担比」とは、入力トルクを「1」としたとき、この入力トルクに対する割合であらわした各摩擦要素に作用するトルクの比率である。そして、「最大トルク分担比」とは、第1速から第9速及び後退速を含む各変速段での各摩擦要素のトルク分担比のうちの最大値を示す。この最大トルク分担比が大きいほど摩擦要素に作用するトルクが大きくなるため、摩擦プレートの数が多くなりサイズも拡大する。以下、図4に基づいて、実施例1の自動変速機の各摩擦要素の最大トルク分担比を説明する。
【0040】
第1クラッチC1は、第2速、第3速、第4速、第5速、第6速、第7速の各変速段を達成する際に締結するが、トルク分担比が最も大きくなるのは第3速の変速段であり、そのときの最大トルク分担比は1.23である。
【0041】
第2クラッチC2は、第1速、第2速、後退速の各変速段を達成する際に締結するが、トルク分担比が最も大きくなるのは後退速の変速段であり、そのときの最大トルク分担比は2.77である。
【0042】
第3クラッチC3は、第4速、第6速、第8速の各変速段を達成する際に締結するが、トルク分担比が最も大きくなるのは第4速の変速段であり、そのときの最大トルク分担比は0.48である。
【0043】
第4クラッチC4は、第1速、第2速、第3速、第4速、第5速、第9速、後退速の各変速段を達成する際に締結するが、トルク分担比が最も大きくなるのは後退速の変速段であり、そのときの最大トルク分担比は1.77である。
【0044】
第5クラッチC5は、第1速、第3速、第7速、第8速、第9速の各変速段を達成する際に締結するが、トルク分担比が最も大きくなるのは第1速の変速段であり、そのときの最大トルク分担比は1.57である。
【0045】
第6クラッチC6は、第5速、第6速、第7速、第8速、第9速、後退速の各変速段を達成する際に締結するが、トルク分担比が最も大きくなるのは後退速の変速段であり、そのときの最大トルク分担比は2.77である。
【0046】
次に、作用を説明する。
実施例1の自動変速機における作用を、「各変速段での変速作用」、「従来技術との対比による有利性」に分けて説明する。
【0047】
[各変速段での変速作用]
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図5のハッチングに示すように、ドライブ時、ワンウェイクラッチOWCと第4クラッチC4と第5クラッチC5が同時締結され、コースト時、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第5クラッチC5が同時締結される。
【0048】
この第4クラッチC4の締結により、入力軸INと第3のサンギヤS3が直結される。第2クラッチC2の締結(または、ワンウェイクラッチOWCのセルフロック)と第5クラッチC5の締結と第1の回転メンバM1により、第2の遊星歯車PG2において二つの回転要素S2,PC2が直結されて第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転する状態にされると共に、第1のキャリヤPC1と第2の遊星歯車PG2と第3のキャリヤPC3が直結される。
【0049】
したがって、第3のサンギヤS3へ入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、第3の遊星歯車PG3の第3のキャリヤPC3と第3のリングギヤR3は、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1の第1のサンギヤS1と第1のキャリヤPC1の回転により拘束を受けながら回転する。このときの拘束条件は、第2クラッチC2(またはワンウェイクラッチOWC)、第5クラッチC5、第1の回転メンバM1、第2の遊星歯車PG2を介して第1のキャリヤPC1と第3のキャリヤPC3が同じ回転数を保ち、且つ、第2の回転メンバM2を介して第1のサンギヤS1と第3のリングギヤR3が同じ回転数を保つという条件である。この回転拘束関係により、第3のキャリヤPC3の回転数は、入力回転を減速した回転数となる。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力回転数より低い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第1速の変速段が達成される。
【0050】
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図6のハッチングに示すように、ドライブ時、ワンウェイクラッチOWCと第1クラッチC1と第4クラッチC4が同時締結され、コースト時、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第4クラッチC4が同時締結される。
【0051】
この第4クラッチC4の締結により、入力軸INと第3のサンギヤS3が直結される。第1クラッチC1の締結と第2クラッチC2の締結(または、ワンウェイクラッチOWCのセルフロック)と第1,第2の回転メンバM1,M2と第1の固定メンバF1により、第1の遊星歯車PG1の三つの回転要素S1,PC1,R1と第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体となってトランスミッションケースTCに固定されると共に、第3のリングギヤR3がトランスミッションケースTCに固定される。
【0052】
したがって、第3のサンギヤS3へ入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、リングギヤ固定の第3の遊星歯車PG3において、入力回転を減速し、第3のキャリヤPC3から出力する。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力回転数より低く第1速より高い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第2速の変速段が達成される。
【0053】
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図7のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第4クラッチC4と第5クラッチC5が同時締結される。
【0054】
この第4クラッチC4の締結により、入力軸INと第3のサンギヤS3が直結される。第1クラッチC1の締結と第2の回転メンバM2により、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2と第3のリングギヤR3が直結される。第5クラッチC5の締結により、第2のリングギヤR2と第3のキャリヤPC3が直結される。
【0055】
したがって、第3のサンギヤS3へ入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、第3の遊星歯車PG3の第3のキャリヤPC3と第3のリングギヤR3は、第2の遊星歯車PG2の第2のキャリヤPC2と第2のリングギヤR2により拘束を受けながら回転する。またこのとき、第2の遊星歯車PG2の第2のサンギヤS2と第2のキャリヤPC2は、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1の第1のサンギヤS1と第1のキャリヤPC1により拘束を受けながら回転する。このときの拘束条件は、第1の回転メンバM1を介して第1のキャリヤPC1と第2のサンギヤS2が同じ回転数を保ち、且つ、第1クラッチC1と第2の回転メンバM2を介して第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2と第3のリングギヤR3が同じ回転数を保ち、且つ、第5クラッチC5を介して第2のリングギヤR2と第3のキャリヤPC3が同じ回転数を保つという条件である。この回転拘束関係により第3のキャリヤPC3の回転数が決まる。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力回転数より低く第2速より高い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第3速の変速段が達成される。
【0056】
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図8のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第4クラッチC4が同時締結される。
【0057】
この第3クラッチC3と第4クラッチC4の同時締結により、入力軸INと第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。第1クラッチC1の締結と第2の回転メンバM2により、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2と第3のリングギヤR3が直結される。
【0058】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3に入力回転数が入力される。このとき、第2の遊星歯車PG2の第2のサンギヤS2と第2のキャリヤPC2は、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1の第1のサンギヤS1と第1のキャリヤPC1により拘束を受けながら回転する。このときの拘束条件は、第1の回転メンバM1を介して第1のキャリヤPC1と第2のサンギヤS2が同じ回転数を保ち、且つ、第1クラッチC1と第2の回転メンバM2を介して第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2が同じ回転数を保つという条件である。この回転拘束関係により決まった第2のキャリヤPC2の回転は、第1クラッチC1と第2の回転メンバM2を介して第3のリングギヤR3にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の回転数(=入力回転数)と第3のリングギヤR3の回転数が規定されることにより、第3のキャリヤPC3の回転数が決まる。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力回転数より低く第3速より高い減速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第4速の変速段が達成される。
【0059】
(第5速の変速段)
第5速(5th)の変速段では、図9のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第4クラッチC4と第6クラッチC6が同時締結される。
【0060】
この第1クラッチC1と第4クラッチC4と第6クラッチC6の同時締結と第2の回転メンバM2により、第3の遊星歯車PG3において二つの回転要素S3,R3が直結されて第3の遊星歯車PG3の三つの回転要素S3,PC3,R3が一体に回転する状態にされると共に、入力軸INと第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2と第3の遊星歯車PG3が直結される。
【0061】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第3の遊星歯車PG3が入力回転数により一体に回転する。この第3の遊星歯車PG3の回転は、第3のキャリヤPC3から出力する。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力軸INからの入力回転数と同じ回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、変速比1の第5速の変速段(直結変速段)が達成される。
【0062】
(第6速の変速段)
第6速(6th)の変速段では、図10のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第6クラッチC6が同時締結される。
【0063】
この第1クラッチC1と第6クラッチC6の同時締結と第2の回転メンバM2により、入力軸INと第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2と第3のリングギヤR3が直結される。第3クラッチC3の締結により、第2のリングギヤR2と第3のサンギヤS3が直結される。
【0064】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2と第3のリングギヤR3に入力回転数が入力される。このとき、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、入力回転方向に対し逆方向の回転を第1のキャリヤPC1から出力する。この第1のキャリヤPC1の回転は、第1の回転メンバM1を介して第2のサンギヤS2にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2の回転数と第2のキャリヤPC2の回転数(=入力回転数)が規定されることにより、第2のリングギヤR2の回転数が決まる。この第2のリングギヤR2の回転は、第3クラッチC3を介して第3のサンギヤS3にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の回転数と第3のリングギヤR3の回転数(=入力回転数)が規定されることにより、第3のキャリヤPC3の回転数が決まる。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力回転数より高い増速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第6速の変速段が達成される。
【0065】
(第7速の変速段)
第7速(7th)の変速段では、図11のハッチングに示すように、第1クラッチC1と第5クラッチC5と第6クラッチC6が同時締結される。
【0066】
この第1クラッチC1と第6クラッチC6の同時締結と第2の回転メンバM2により、入力軸INと第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2と第3のリングギヤR3が直結される。第5クラッチC5の締結により、第2のリングギヤR2と第3のキャリヤPC3が直結される。
【0067】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第1のサンギヤS1と第2のキャリヤPC2と第3のリングギヤR3に入力回転数が入力される。このとき、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、入力回転方向に対し逆方向の回転を第1のキャリヤPC1から出力する。この第1のキャリヤPC1の回転は、第1の回転メンバM1を介して第2のサンギヤS2にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第2の遊星歯車PG2において、第2のサンギヤS2の回転数と第2のキャリヤPC2の回転数(=入力回転数)が規定されることにより、第2のリングギヤR2の回転数が決まる。この第2のリングギヤR2の回転は、第5クラッチC5を介して第3のキャリヤPC3にそのまま入力される。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力回転数及び第6速より高い増速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第7速の変速段が達成される。
【0068】
(第8速の変速段)
第8速(8th)の変速段では、図12のハッチングに示すように、第3クラッチC3と第5クラッチC5と第6クラッチC6が同時締結される。
【0069】
この第6クラッチC6の締結により、入力軸INと第2のキャリヤPC2が直結される。第3クラッチC3と第5クラッチC5の同時締結と第2の回転メンバM2により、第3の遊星歯車PG3において二つの回転要素S3,PC3が直結されて第3の遊星歯車PG3の三つの回転要素S3,PC3,R3が一体に回転する状態にされると共に、第1のサンギヤS1と第2のリングギヤR2と第3の遊星歯車PG3が直結される。
【0070】
したがって、第2のキャリヤPC2へ入力軸INを経過して入力回転数が入力されると、第2の遊星歯車PG2の第2のサンギヤS2と第2のリングギヤR2及び第3の遊星歯車PG3は、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1の第1のサンギヤS1と第1のキャリヤPC1により拘束を受けながら回転する。このときの拘束条件は、第1の回転メンバM1を介して第1のキャリヤPC1と第2のサンギヤS2が同じ回転数を保ち、且つ、第3クラッチC3、第5クラッチC5、第2の回転メンバM2を介して第1のサンギヤS1と第2のリングギヤR2と第3の遊星歯車PG3が同じ回転数を保つという条件である。この回転拘束関係により決まった第3の遊星歯車PG3の回転は、第3のキャリヤPC3から出力する。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力回転数及び第7速より高い増速回転数)が、出力軸OUTにそのまま伝達され、第8速の変速段が達成される。
【0071】
(第9速の変速段)
第9速(9th)の変速段では、図13のハッチングに示すように、第4クラッチC4と第5クラッチC5と第6クラッチC6が同時締結される。
【0072】
この第4クラッチC4と第6クラッチC6の同時締結により、入力軸INと第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3が直結される。第5クラッチC5の締結により、第2のリングギヤR2と第3のキャリヤPC3が直結される。
【0073】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第2のキャリヤPC2と第3のサンギヤS3に入力回転数が入力される。このとき、第2の遊星歯車PG2の第2のサンギヤS2と第3の遊星歯車PG3の第3のリングギヤR3は、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1の第1のサンギヤS1と第1のキャリヤPC1により拘束を受けながら回転する。このときの拘束条件は、第1の回転メンバM1を介して第1のキャリヤPC1と第2のサンギヤS2が同じ回転数を保ち、且つ、第2の回転メンバM2を介して第1のサンギヤS1と第3のリングギヤR3が同じ回転数を保つという条件である。この回転拘束関係により第3のリングギヤR3の回転数が決まると、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の回転数(=入力回転数)と第3のリングギヤR3の回転数が規定されることにより、第3のキャリヤPC3の回転数が決まる。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力回転数及び第8速より高い増速回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、第9速の変速段が達成される。
【0074】
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図14のハッチングに示すように、ドライブ時、ワンウェイクラッチOWCと第4クラッチC4と第6クラッチC6が同時締結され、コースト時、第2クラッチC2と第4クラッチC4と第6クラッチC6が同時締結される。
【0075】
この第2クラッチC2の締結(または、ワンウェイクラッチOWCのセルフロック)と第4クラッチC4の締結と第6クラッチC6の締結と第1の回転メンバM1により、第2の遊星歯車PG2において二つの回転要素S2,PC2が直結されて第2の遊星歯車PG2の三つの回転要素S2,PC2,R2が一体に回転する状態にされると共に、入力軸INと第1のキャリヤPC1と第2の遊星歯車PG2と第3のサンギヤS3が直結される。
【0076】
したがって、入力軸INが入力回転数により回転すると、第1のキャリヤPC1と第3のサンギヤS3に入力回転数が入力されると共に、第2の遊星歯車PG2が入力回転数により一体に回転する。このため、リングギヤ固定の第1の遊星歯車PG1において、入力回転方向に対し逆方向の回転を第1のサンギヤS1から出力する。この第1のサンギヤS1の回転は、第2の回転メンバM2を介して第3のリングギヤR3にそのまま入力される。このため、2入力1出力の第3の遊星歯車PG3において、第3のサンギヤS3の回転数(=入力回転数)と第3のリングギヤR3の回転数が規定されることにより、第3のキャリヤPC3の回転数が決まる。この第3のキャリヤPC3からの出力回転数(=入力回転数とは逆方向で入力回転数より僅かに高い回転数)は、出力軸OUTにそのまま伝達され、後退速の変速段が達成される。
【0077】
[従来技術との対比による有利性]
図15は、従来例の自動変速機を示すスケルトン図である。図16は、従来例の自動変速機において6つの摩擦要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進8速及び後退2速を達成する締結作動表を示す図である。図17は、従来の自動変速機において前進8速の各変速段での歯車噛み合い回数表を示す図である。図18は、従来例の自動変速機における各摩擦要素の最大トルク分担比表を示す図である。以下、図15〜図18を用いて、従来技術との対比による実施例1の自動変速機の有利性を説明する。
【0078】
まず、実施例1の自動変速機(図1〜図4)と従来例の自動変速機(図15〜図18)を対比すると、下記に列挙する点について、性能は同等であるということができる。
(基本構成)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、何れも3遊星・6摩擦要素により少なくとも前進8速及び後退1速の変速段を達成する。
(変速制御性能)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、何れも隣接する変速段への変速及び1段飛び変速段への変速を、1つの摩擦要素の解放と1つの摩擦要素の締結という1重架け替え変速により達成する。
(歯数比)
従来例の自動変速機と実施例1の自動変速機は、何れも第1の遊星歯車PG1と第2の遊星歯車PG2と第3の遊星歯車PG3の歯数比ρ1,ρ2,ρ3の絶対値を0.3〜0.65の範囲内に設定している。
【0079】
一方、下記に列挙する「(a)各変速段でのフリクション損失」「(b)変速性能」「(c)3遊星歯車」「(d)ギヤ比幅」「(e)後退動力性能」「(f)ユニットレイアウト」「(g)摩擦要素」「(h)変速頻度」で、実施例1の自動変速機は、従来例の自動変速機に比べて有利性を持つ。
【0080】
(a) 各変速段でのフリクション損失
摩擦要素を締結して各変速段を得る場合、空転する摩擦要素(解放要素)で生じるオイル引き摺り等によりフリクション損失を避けることができないが、自動変速機としては、フリクション損失が少ないほど好ましいとされる。
【0081】
従来例の自動変速機の場合、前進8速の各変速段を達成するために、図16に示すように、各変速段で摩擦要素を二つ同時締結するようにしている。このため、例えば、第1速段で空転する摩擦要素は、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第4クラッチC4と第1ブレーキB1というように、各変速段において空転する摩擦要素は4個となる。このため、空転する4個の摩擦要素でのオイル引き摺り等によるフリクション損失が大きくなり、駆動エネルギの伝達効率の悪化を招く。つまり、例えばエンジン車に従来例の自動変速機を適用する場合、空転する4個の摩擦要素によるフリクション損失が燃費性能の悪化を招く一因となる。
【0082】
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、前進9速の各変速段を達成するために、図2に示すように、各変速段で摩擦要素を三つ同時締結するようにしている。このため、例えば、第1速段で空転する摩擦要素は、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第6クラッチC6というように、各変速段において空転する摩擦要素は3個となる。したがって、従来例に比べ、空転する摩擦要素でのフリクション損失が小さく抑えられ、駆動エネルギの伝達効率の向上を図ることができる。つまり、例えばエンジン車に実施例1の自動変速機を適用する場合、燃費性能の向上が図られる。
【0083】
(b) 変速性能
従来例の自動変速機の場合、3遊星・6摩擦要素により前進8速の変速段を達成しているのに対し、実施例1の自動変速機の場合、3遊星・6摩擦要素によって前進9速を達成している。
【0084】
このため、ギヤ比の選択肢が広がり、車両の状況に沿った駆動力を出力できるため、燃費を向上させることができる。また、変速段数が増えることで、段間比の間隔が小さくなり、段間の駆動力段差や変速ショックを抑えることができる。
【0085】
(c) 3遊星歯車
自動変速機に用いる遊星歯車を選択する場合、選択肢として、シングルピニオン型遊星歯車とダブルピニオン型遊星歯車があるが、ギヤの伝達効率等の観点からダブルピニオン型遊星歯車よりもシングルピニオン型遊星歯車の選択が好ましいとされている。
【0086】
従来例の自動変速機は、図15に示すように、ダブルピニオン型遊星歯車と、ラビニオタイプ遊星歯車ユニット(ダブルピニオン型遊星歯車1つとシングルピニオン型遊星歯車1つ)を用いている。すなわち、実質的にダブルピニオン型遊星歯車を2つ使っているため、ピニオンのギヤ径が小さくなって耐久信頼性が低下する、部品点数が多くなってコストアップになる、という問題がある。
【0087】
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、シングルピニオンによる第2の遊星歯車PG2、第3の遊星歯車PG3と、ダブルピニオンによる第1の遊星歯車PG1を用いている。すなわち、2つのダブルピニオン型遊星歯車を用いる従来例と異なり、ダブルピニオン型遊星歯車は一つしか使用していない。このため、2つのダブルピニオン型遊星歯車を用いる従来例に比べて、下記の項目で有利になる。
【0088】
実施例1の自動変速機の場合、ピニオンのギヤ径が大きくなるため、耐久信頼性が向上する。
すなわち、シングルピニオン型遊星歯車の場合、サンギヤとリングギヤの間に、両ギヤの間隔をギヤ径とするシングルピニオンが配置される。一方、ダブルピニオン型遊星歯車の場合、ダブルピニオンのギヤ径は両ギヤの間隔より小さい径とする必要がある。このように、シングルピニオンの場合、ダブルピニオンに比べピニオンのギヤ径が大きくなるので、ピニオンの剛性や歯面強度を高めることができ、耐久信頼性が向上する。
【0089】
実施例1の自動変速機の場合、部品点数が少なくなり、コスト的に有利となる。
例えば、ダブルピニオン型遊星歯車の場合、4組のダブルピニオンをサンギヤの周囲に配置するとピニオンの数は8個となる。これに対し、シングルピニオン型遊星歯車の場合、サンギヤの周囲に4個のピニオンを配置すれば良く、部品点数が4個減少する。この結果、コストダウンを達成できる。
【0090】
さらに、実施例1の自動変速機の場合、歯車噛み合い回数が従来例の自動変速機とほぼ同等であり、ギヤの伝達効率の低下や、ギヤノイズの増加を抑制することができる。
すなわち、実施例1の場合には、図3に示すように、平均噛み合い数は5.00となる。これに対し、従来例の自動変速機では、図17に示すように、平均噛み合い数が4.75である。この結果、平均噛み合い回数はほぼ同等であり、ギヤの伝達効率の低下を防止し、ギヤノイズの増加を抑制することができる。
【0091】
(d) ギヤ比幅
自動変速機のギヤ比の変更幅は、レシオカバレッジ(=最低変速段ギヤ比/最高変速段ギヤ比:以下、「RC」という。)によりあらわされる。このRC値は、大きい値であればあるほどギヤ比の変更幅が広いことをあらわし、ギヤ比の設定自由度が高くなることで好ましいとされる。
【0092】
従来例の自動変速機の場合、図16に示すように、ダブルピニオン型遊星歯車の歯数比をρ1=-0.375、ラビオニタイプ遊星歯車ユニットの歯数比をρ2=0.500、ρ3=-0.375とした場合、RC=6.397(=4.267/0.667)である。これに対し、実施例1の自動変速機において、図2に示すように、第1の遊星歯車PG1の歯数比をρ1=-0.493、第2の遊星歯車PG2の歯数比をρ2=0.658、第3の遊星歯車PG3の歯数比をρ3=0.327とした場合、隣接する変速段での適正な段間比を保ちながら、RC=9.637(=4.086/0.424)を得ている。
【0093】
つまり、適正な段間比を保ちながらも、RC値を従来例以上の値にでき、最低変速段ギヤ比での発進性能と最高変速段ギヤ比での高速燃費の両立を確保することができる。ここで、「適正な段間比」とは、各変速段での段間比をプロットし、プロットした各点を線により結んだ特性を描いた場合、ローギヤ側からハイギヤ側に向かって滑らかな勾配にて低下した後、横這い状態で推移するような特性線が描けることをいう。
【0094】
そして、実際に駆動輪へ伝達される回転数は、自動変速機の下流位置に設けた終減速機のファイナルギヤ比で調整される。よって、RC値が大きな値であるほど、ファイナルギヤ比による調整自由度が高くなり、例えば、よりロー側に調整することで、トルクコンバータを持たないハイブリッド車の自動変速機への対応が有利になる。また、最適燃費域や最高トルク域が異なるガソリンエンジンとディーゼルエンジンへの対応も有利になる。つまり、エンジン車の場合、発進駆動力の維持と燃費向上(高速時のエンジン回転数の低回転化)を両立することができる。
【0095】
(e) 後退動力性能
1速ギヤ比と後退ギヤ比は、発進加速性と登坂性能を決定付ける値であり、例えば、1速ギヤ比と後退ギヤ比の比が1近傍にない場合、前後進の切り替え時に駆動力差が生じる。また、後退ギヤ比が1速ギヤ比より低いと、前進発進時の駆動力よりも後退発進時の駆動力が低くなり、後退発進性が劣ってしまう。
【0096】
従来例の自動変速機の場合、図16に示すように、Rev1/1st=0.750であり、Rev2/1st=0.469である。したがって、Rev1/1stの場合、つまり後退1速(Rev1)を選択した場合には後退時の駆動力不足を防止できるレベルは保てるものの、後退2速(Rev2)を選択した場合では、1速ギヤ比と後退ギヤ比の比が1よりも大幅に低い値であり、前後進の切り替え時に駆動力差が生じるし、後退発進性が劣ってしまうおそれがある。
【0097】
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、図2に示すように、Rev/1st=1.090であり、1速ギヤ比と後退ギヤ比の比が従来例の後退1速よりも1近傍にある。このため、従来例の自動変速機のように前後進の切り替え時に駆動力差が生じることはなく、後退発進性が劣ってしまうこともない。つまり、発進加速性と登坂性能を損なうことなく動作させることができる。
【0098】
(f) ユニットレイアウト
従来例の自動変速機では、図18に示すように、各摩擦要素(第1クラッチC1〜第2ブレーキB2)の最大トルク分担比のうち、最も大きいものが第2ブレーキB2の4.800となっている。これに対し、実施例1の自動変速機の各摩擦要素(第1クラッチC1〜第6クラッチC6)の最大トルク分担比は、図4に示すように、最も大きいものであっても第2クラッチC2と第6クラッチC6の2.77である。このため、摩擦要素における摩擦プレートの数が少なくて済み、低コストで製造できる上、各摩擦要素(第1クラッチC1〜第6クラッチC6)のそれぞれのサイズ拡大を抑制することができ、ユニットレイアウトの拡大防止を図ることができる。
【0099】
そして、ユニットレイアウトの拡大を防止することで、トランスミッションケースTCのコンパクト化を達成することができ、自動変速機のユニット小型化やユニット軽量化、及びコスト低減に大きく寄与する。
【0100】
(g) 摩擦要素
自動変速機の摩擦要素には、遊星歯車の三つの回転要素のうち二つの回転している要素を締結したり、解放したりするクラッチ要素と、一つの要素の回転を止めたり、放したりするブレーキ要素がある。ここで、ブレーキ要素は、回転要素とトランスミッションケース等の回転しない部材の間に設けるので、いわゆるドリブンプレートが常に停止している状態になっている。このため、このブレーキ要素では、摩擦プレート間に入り込んだオイルが遠心力で排出しづらく、空転状態の時に生じる引き摺り抵抗(オイルのせん断抵抗)によるフリクション損失がクラッチ要素よりも大きくなってしまう。したがって、燃費性能の観点からは、ブレーキ要素となる摩擦要素は少ない方が望ましいとされている。
【0101】
従来例の自動変変速機の場合、6つの摩擦要素のうち2つがブレーキ要素であり、この2つのブレーキ要素は、何れの変速段においても少なくとも一方が空転しており、第3速から第7速の間は両方とも空転している。そのため、空転するブレーキ要素によるフリクション損失が大きく、燃費性能の低下を招いている。
【0102】
これに対し、実施例1の自動変速機の場合、6つの摩擦要素の全てがオイル排出性の良いクラッチ要素で構成されている。このため、摩擦要素空転時、つまりクラッチ解放時におけるフリクション損失が低くなり、燃費性能の低下を抑制することができる。
【0103】
さらに、クラッチ要素は、トランスミッションケース等の回転しない部材に固定する必要がないため、摩擦要素のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0104】
(h) 変速頻度
従来例の自動変速機は、図16に示すように、第6速を直結段とし、第1速〜第5速をアンダードライブ変速段として設定している。したがって、アンダードライブ側での変速間隔が小さくなり、例えば、停止と発進走行を繰り返すような市街地走行等において、変速頻度が高いビジーシフトになる。そして、エンジン車の場合、アンダードライブ側でのエンジン回転数の吹き上がりが早いため、ビジーシフトによりフィーリングが悪化する。
【0105】
これに対し、実施例1の自動変速機は、図2に示すように、第5速を直結段とし、第1速〜第4速をアンダードライブ変速段としている。したがって、アンダードライブ側での変速間隔が従来例に比べて広くなるため、例えば、停止と発進走行を繰り返すような市街地走行等であってもビジーシフトが抑えられ、フィーリングの悪化を防止することができる。
【0106】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0107】
(1) 第1のサンギヤS1と、第1のリングギヤR1と、前記第1のサンギヤS1と前記第1のリングギヤR1に噛み合う第1のダブルピニオンP1s,P1rを支持する第1のキャリヤPC1とからなる第1の遊星歯車PG1と、第2のサンギヤS2と、第2のリングギヤR2と、前記第2のサンギヤS2と前記第2のリングギヤR2に噛み合う第2のシングルピニオンP2を支持する第2のキャリヤPC2とからなる第2の遊星歯車PG2と、第3のサンギヤS3と、第3のリングギヤR3と、前記第3のサンギヤS3と前記第3のリングギヤR3に噛み合う第3のシングルピニオンP3を支持する第3のキャリヤPC3とからなる第3の遊星歯車PG3と、6つの摩擦要素と、を備え、前記6つの摩擦要素を適宜締結解放することにより少なくとも前進8速の変速段に変速して入力軸INからのトルクを出力軸OUTに出力可能な自動変速機において、前記出力軸OUTは、前記第3のキャリヤPC3に常時連結しており、前記第1のリングギヤR1は、常時固定して第1の固定メンバF1を構成しており、前記第1のキャリヤPC1と前記第2のサンギヤS2は、常時連結して第1の回転メンバM1を構成しており、前記第1のサンギヤS1と前記第3のリングギヤR3は、常時締結して第2の回転メンバM2を構成しており、前記6つの摩擦要素は、前記第2のキャリヤPC2と前記第2の回転メンバM2の間を選択的に連結する第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と、前記第2のキャリヤPC2と前記第1の回転メンバM1の間を選択的に連結する第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と、前記第2のリングギヤR2と前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と、前記入力軸INと前記第3のサンギヤS3の間を選択的に連結する第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と、前記第2のリングギヤR2と前記第3のキャリヤPC3の間を選択的に連結する第5の摩擦要素(第5クラッチC5)と、前記入力軸INと前記第2のキャリヤPC2の間を選択的に連結する第6の摩擦要素(第6クラッチC6)と、により構成され、前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速及び後退1速を達成する構成とした。
このため、3遊星6摩擦要素で前進8速以上を達成しながら、各変速段で生じるフリクション損失を抑制することで、駆動エネルギの伝達効率の向上を図ることができる。
【0108】
(2) 前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせによる前進9速は、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第1速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第2速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)の同時締結により達成する第3速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)の同時締結により達成する第4速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第6の摩擦要素(第6クラッチC6)の同時締結により達成する第5速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第6の摩擦要素(第6クラッチC6)の同時締結により達成する第6速と、前記第1の摩擦要素(第1クラッチC1)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)と前記第6の摩擦要素(第6クラッチC6)の同時締結により達成する第7速と、前記第3の摩擦要素(第3クラッチC3)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)と前記第6の摩擦要素(第6クラッチC6)の同時締結により達成する第8速と、前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第5の摩擦要素(第5クラッチC5)と前記第6の摩擦要素(第6クラッチC6)の同時締結により達成する第9速と、からなる構成とした。
このため、ギヤ比の選択肢が広がり、車両の状況に沿った駆動力を出力できて燃費を向上させることができる。また、変速段数が増えることで、段間比の間隔が小さくなり、段間の駆動力段差や変速ショックを抑えることができる。加えて、適正な段間比を保ちながらもRC値を、最低変速段ギヤ比での発進性能と最高変速段ギヤ比での高速燃費の両立を図る要求値に達する設定とすることができる。さらに、アンダードライブ側での変速間隔が広くなり、ビジーシフトが抑えられてフィーリング悪化を防止することができる。また、6つの摩擦要素の全てがクラッチ要素で構成され、摩擦要素空転時におけるフリクション損失を抑えることができる上、耐久信頼性・コスト・ユニットレイアウトの面で有利とすることができる。
【0109】
(3) 前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより達成する後退1速は、前記第2の摩擦要素(第2クラッチC2)と前記第4の摩擦要素(第4クラッチC4)と前記第6の摩擦要素(第6クラッチC6)の同時締結により達成する構成とした。
このため、適切なRC値及び段間比を達成するような歯数比を選択しても、後退ギヤ比評価値(=後退ギヤ比/1速ギヤ比)を1近傍の値とすることができ、この結果、前後進の切り替え時に駆動力差が生じることを防止でき、発進加速性と登坂性能を損なうことなく動作させることができる。
【0110】
以上、本発明の自動変速機を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0111】
実施例1では、第1の遊星歯車PG1の歯数比ρ1と、第2の遊星歯車PG2の歯数比ρ2と、第3の遊星歯車PG3の歯数比ρ3を、それぞれについて好適の値に設定する例を示した。しかし、各遊星歯車PG1,PG2,PG3の歯数比ρ1,ρ2,ρ3は、歯数比設定が可能な範囲内の値であって、RC値の高いギヤ比や適切な段間比を得るように設定したものであれば、具体的な値は、実施例1の値に限られるものではない。
【0112】
実施例1では、入出力軸を同軸配置とするFRエンジン車に適用される自動変速機の例を示したが、FRエンジン車に限らず、FFエンジン車や、ハイブリッド車や電気自動車や燃料電池車、等の様々な車両の自動変速機としても適用することができる。また、動力源としてエンジン回転数幅がガソリンエンジンよりも狭く、同排気量で比較した場合にトルクが低いディーゼルエンジンを動力源として搭載した車両の変速機としても適用することができる。
【符号の説明】
【0113】
PG1 第1の遊星歯車
S1 第1のサンギヤ
PC1 第1のキャリヤ
R1 第1のリングギヤ
PG2 第2の遊星歯車
S2 第2のサンギヤ
PC2 第2のキャリヤ
R2 第2のリングギヤ
PG3 第3の遊星歯車
S3 第3のサンギヤ
PC3 第3のキャリヤ
R3 第3のリングギヤ
IN 入力軸
OUT 出力軸
F1 第1の固定メンバ
M1 第1の回転メンバ
M2 第2の回転メンバ
C1 第1クラッチ(第1の摩擦要素)
C2 第2クラッチ(第2の摩擦要素)
C3 第3クラッチ(第3の摩擦要素)
C4 第4クラッチ(第4の摩擦要素)
C5 第5クラッチ(第5の摩擦要素)
C6 第6クラッチ(第6の摩擦要素)
TC トランスミッションケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサンギヤと、第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤと前記第1のリングギヤに噛み合う第1のダブルピニオンを支持する第1のキャリヤとからなる第1の遊星歯車と、
第2のサンギヤと、第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤと前記第2のリングギヤに噛み合う第2のシングルピニオンを支持する第2のキャリヤとからなる第2の遊星歯車と、
第3のサンギヤと、第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤと前記第3のリングギヤに噛み合う第3のシングルピニオンを支持する第3のキャリヤとからなる第3の遊星歯車と、
6つの摩擦要素と、を備え、
前記6つの摩擦要素を適宜締結解放することにより少なくとも前進8速の変速段に変速して入力軸からのトルクを出力軸に出力可能な自動変速機において、
前記出力軸は、前記第3のキャリヤに常時連結しており、
前記第1のリングギヤは、常時固定して第1の固定メンバを構成しており、
前記第1のキャリヤと前記第2のサンギヤは、常時連結して第1の回転メンバを構成しており、
前記第1のサンギヤと前記第3のリングギヤは、常時締結して第2の回転メンバを構成しており、
前記6つの摩擦要素は、
前記第2のキャリヤと前記第2の回転メンバの間を選択的に連結する第1の摩擦要素と、
前記第2のキャリヤと前記第1の回転メンバの間を選択的に連結する第2の摩擦要素と、
前記第2のリングギヤと前記第3のサンギヤの間を選択的に連結する第3の摩擦要素と、
前記入力軸と前記第3のサンギヤの間を選択的に連結する第4の摩擦要素と、
前記第2のリングギヤと前記第3のキャリヤの間を選択的に連結する第5の摩擦要素と、
前記入力軸と前記第2のキャリヤの間を選択的に連結する第6の摩擦要素と、
により構成され、
前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより、少なくとも前進8速及び後退1速を達成することを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1に記載された自動変速機において、
前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせによる前進9速は、
前記第2の摩擦要素と前記第4の摩擦要素と前記第5の摩擦要素の同時締結により達成する第1速と、
前記第1の摩擦要素と前記第2の摩擦要素と前記第4の摩擦要素の同時締結により達成する第2速と、
前記第1の摩擦要素と前記第4の摩擦要素と前記第5の摩擦要素の同時締結により達成する第3速と、
前記第1の摩擦要素と前記第3の摩擦要素と前記第4の摩擦要素の同時締結により達成する第4速と、
前記第1の摩擦要素と前記第4の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成する第5速と、
前記第1の摩擦要素と前記第3の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成する第6速と、
前記第1の摩擦要素と前記第5の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成する第7速と、
前記第3の摩擦要素と前記第5の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成する第8速と、
前記第4の摩擦要素と前記第5の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成する第9速と、
からなることを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された自動変速機において、
前記6つの摩擦要素のうち、三つの同時締結の組み合わせにより達成する後退1速は、前記第2の摩擦要素と前記第4の摩擦要素と前記第6の摩擦要素の同時締結により達成することを特徴とする自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−13178(P2012−13178A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151660(P2010−151660)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】