説明

自動検針無線装置、自動検針無線システム及びそのプログラム

【課題】無線を使用した自動検針システムにおいて、あらかじめ無線子機の優先度を決めた上で設置されるような従来の構成では、新たに建設された建物や、取り壊された建物などの周囲環境の変化があった場合の対応が困難であり、変更における影響範囲が大規模に渡る可能性もあり柔軟性に欠けるという課題があった。
【解決手段】無線子機105eと無線子機108eが基地局102からの無線データを受信すると、各々の計時部205を使用してランダムなウェイト時間を生成し、そのウェイト時間の間に所定のデータパケットを受信すれば以降は子機と認識して送受信処理を行い、ウェイト時間の間に所定のデータパケットを受信しなければ以降は親機と認識して送受信処理を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス、水道、電気等の使用量の検針を行う際の1:N型自動検針無線システムにおいて無線子機が小規模グループを形成し、上りと下りの通信手段を変更する自動検針無線システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及とともに家庭やオフィス、工場に至るまでブロードバンド環境が構築されており、通信インフラが大きく変化している。様々な機器がIP化されており、アナログ回線を使用した電話もIP電話へと変化しており、従来の電話回線を使用せずに利用されている。
【0003】
従来、家庭やオフィスあるいは工場などに設置されているメータには、ガス、水道、電気等の使用量を測定する機能を有しており、メータに記録されたデータを電話等の通信回線を介して自動検針センターに回収する自動検針システムが普及している。この自動検針システムは、電話等の通信回線を必要とすることから、回線契約料や回線使用料などを含めてコストが大きくなる。この課題の解決策として、無線を使用するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図12は上記従来例を示す構成図を示しており、1は自動検針センターからの命令を受けてデータの送受信を行う無線親機、2は無線親機からの無線親機へデータを伝達するための無線子機、3はガスなどの計測を行うためのメータ、4はデータの流れである。
【0005】
以上のように構成された通信機器についてその動作を説明する。子機zはメータから得られたデータを自動検針センターへ通知するために、子機zよりも優先度の高い子機yに対してデータを転送する。子機yは子機zから受け取ったデータを、さらに優先度の高い子機に対して順次転送していく。最終的に最も優先度の高い子機aが親機に対して、データを転送することになる。このように、子機同士が優先順序に基づきデータを数珠つなぎに転送することにより、遠く離れた親機に対して小さな送信出力によるデータ送信を可能としている。子機を数珠繋ぎにすることにより、基地局となる親機の設備投資を抑えることができる。
【特許文献1】特開2004−62510号公報(第6項、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、あらかじめ子機の優先度を決めた上で設置する必要があり、大規模な地域で実施することが困難であった。また、新たに建設された建物や、取り壊された建物などの周囲環境の変化があった場合の対応が困難であり、変更における影響範囲が大規模に渡る可能性もあり柔軟性に欠けるものであった。また、子機の無線方式が1種類であるため、親機からのデータ(下り)については長距離型の無線周波数帯域が必要とされる。子機は親機と通信しなければならないため、当然のことながら親機の使用する周波数帯域の無線を選択することになる。この場合、子機の送信出力を抑えるということに対して必ずしも有効ではなく、使用する無線周波数帯域によっては子機に必要とされる消費電力が大きくなるという問題がある。さらに、子機の省電力化を無線周波数帯域の変更によって図る場合には、親機が長距離型の無線周波数帯域を使用できなくなるため、基地局の設備投資を抑えることができなくなる。
【0007】
本発明は、前期従来の課題を解決するもので、基地局を介した自動検針センターからの
データ送信(下り)にはアナログテレビなどの周波数帯域を使用した長距離型の無線で広域無線通信を行い、無線子機からのデータ送信(上り)には中短距離型の省電力無線を使用して近傍域無線通信を行い、各無線子機を中継局として利用し無線子機からのデータを、近傍にある別の無線子機が多段にホッピングすることで基地局まで届けることのできる自動検針無線システムでありかつ周囲環境の変化に対して動的に対応することが可能である柔軟な自動検針無線システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の自動検針無線システムは、任意に設定される時間が経過するまでに他の自動検針無線装置から特定の無線データを受信したときは子機と認識して送受信処理を行い、任意に設定される時間が経過するまでに他の自動検針無線装置から特定の無線データを受信しないときは親機と認識して送受信処理を行うようにするものである。
【0009】
これによれば、基地局の設備投資を抑え省電力で効率の良い自動検針無線システムを実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動検針無線システムは、任意に設定される時間が経過するまでに他の自動検針無線装置から特定の無線データを受信したときは子機と認識して送受信処理を行い、任意に設定される時間が経過するまでに他の自動検針無線装置から特定の無線データを受信しないときは親機と認識して送受信処理を行うので、基地局の設備投資を抑え省電力で効率の良い自動検針無線システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、ガス使用量の計量を行う計量部と、自動検針センターと通信回線で接続される基地局との間で無線データを送受信する広域無線通信部と、広域無線通信部による無線通信範囲よりも狭い範囲で無線通信を行う近傍域無線通信部とを備え、広域無線通信部が基地局から無線データを受信した時から任意に設定される時間が経過した後に近傍域無線通信部を介して特定の無線データを送信し、任意に設定される時間が経過するまでに他の自動検針無線装置から特定の無線データを受信したときは子機と認識して送受信処理を行い、任意に設定される時間が経過するまでに他の自動検針無線装置から特定の無線データを受信しないときは親機と認識して送受信処理を行うようにしたものである。
【0012】
これによれば、基地局からのデータ送信(下り)と無線子機からのデータ送信(上り)の通信方式を変更することで、基地局の設備投資を抑えることができ周囲環境の変化に柔軟に対応できる効率の良い自動検針無線システムを構築することができる。
【0013】
第2の発明は、特に第1の発明において、親機と認識して送受信処理を行うときであって、基地局からの無線データに対して応答する場合、近傍域無線通信部の通信可能圏内にある他の自動検針無線装置のうち親機と認識して送受信処理を行うものを介して基地局へ応答データを送信し、近傍域無線通信部は、その通信可能圏内にある複数の自動検針無線装置のうち、基地局からの無線データの受信レベルを最も高く受信した自動検針無線装置へ応答データを送信するようにしたものである。
【0014】
これによれば、特定の経路設定がなされていない状態であっても、基地局まで他の自動検針無線装置を中継して応答データを届けることができる。
【0015】
第3の発明は、特に第2の発明において、基地局は応答データを送信するための経路情報を送信するものである。
【0016】
これによれば、無線子機は基地局からの経路情報を取得することができるため、自動検針センターからの指示に従うことが可能となり、最適な通信経路によって無線子機が基地局までデータを転送することが可能となり、データ収集の効率化を図ることができる。また、障害発生時などにおいても通信経路の変更に対応できることから信頼性のある確実な通信経路を使用することができる。
【0017】
第4の発明は、特に第3の発明において、親機と認識して送受信処理を行うときであって、広域無線通信部を介して基地局から送信された無線データを受信したとき、無線データを近傍域無線通信部の通信可能圏内にある複数の自動検針無線装置に送信するようにしたものである。
【0018】
これによれば、基地局からの無線データを何らかの原因によって受信できなかったとしても、近傍にある別の自動検針無線装置から無線データを確実に受信でき、災害発生時などにおける緊急時においても安全に動作することができる。
【0019】
また、第5の発明は、上記第1から第4の発明である自動検針無線装置と、自動検針センターと、自動検針センターと通信回線で接続された基地局とから構成される自動検針無線システムであり、これによれば、基地局の設備投資を抑え省電力で効率の良い自動検針無線システムを実現することができる。
【0020】
また、第6の発明は、上記第1から第4の発明である自動検針無線装置の手段の全てもしくは一部としてコンピュータを機能させるためのプログラムであり、これによれば、基地局の設備投資を抑え省電力で効率の良い自動検針無線システムを実現することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図11を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本自動検針無線システムを表した図である。自動検針センター101と基地局102とは、有線または無線の通信回線103で接続されている。そして、基地局102は、自動検針センター101からの無線データ104を無線子機105(105a、105b、105c、105d、105e)へ送信する。
【0023】
この無線子機105は、ガス使用量の計量を行うメータ機能を備えており、その計量データは無線通信を利用して基地局102を介して自動検針センター101へ送信される。また、無線子機105から基地局102へ無線データを送信するには、複数の無線子機105を経由して間接的に基地局102へ送信する方法と、直接基地局102へ送信する方法とがあるが、詳細は後に述べる。
【0024】
また、それぞれの無線子機105(105a、105b、105c、105d、105e)は、小規模グループ106(106a、106b、106c、106d、106e)を形成しており、その小規模グループ106内では無線子機105が主体となってデータ通信を調整している。例えば、小規模グループ106を形成する無線子機108(108a、108b、108c、108d、108e)は、勝手に無線データを送信するのではなく、一度無線子機105に送信したいデータを送り、無線子機105(105a、105b、105c、105d、105e)間を中継することにより、特定の無線子機、あるいは基地局102まで無線データ107を送信する。
【0025】
なお、本実施の形態では、無線データを調整する無線子機105のことを「親機と認識して送受信処理を行う無線子機」と記載し、逆に無線データの調整を行わない無線子機108のことを「子機と認識して送受信処理を行う無線子機」と記載することにする。
【0026】
次に、無線子機105(または108)のブロック図を図2に示す。無線子機105(または108)は、需要家のガス使用量の計量や使用状態の監視を行う計量部201による計量データを、長距離型の無線通信を行う広域無線通信部202や、広域無線通信部202の通信距離よりも短い中短距離型の無線通信を行う近傍域無線通信部203、広域無線通信部202と近傍域無線通信部203とを任意に切り替える無線方式切替部204を用いて送信する。
【0027】
また、無線子機105(または108)は、時刻を計時するための計時部205、本実施の形態で以下に説明する処理フローを実施するためのプログラムや様々なデータを保持するための記憶部206、無線子機105全体を制御するための制御部207、無線子機の駆動電力を供給するための電源部208、無線データの受信レベルを測定するための受信レベル測定部209、小規模グループ106において親機の役割を果たす無線子機であるか否かを判断する無線親機判断部210を備えている。
【0028】
次に、無線子機105(または108)の回路図を図3と共に説明する。以下に説明する各機能はバス301によって接続されており、具体的には電源部208に相当する電池302、全体を制御するための制御部207に相当するCPU303、無線方式切替部204や受信レベル測定部209や無線親機判断部210などの制御プログラムやデータなどを格納するためのROM304、プログラム実行やデータ保存に使用されるRAM305、需要家のガス使用量の計量や使用状態の監視を行う計量部201に相当する計量器306、様々な時刻監視を行うための計時部205に相当するタイマ307、主として基地局との無線データ通信に使用される広域無線通信部202に相当する広域無線通信I/F308、主として無線子機同士の無線データ通信に使用される近傍域無線通信I/F309に接続されている。
【0029】
以上のように構成された自動検針無線システムについて、その動作を説明する。まず、自動検針センター101からの指示に従い、基地局102が無線データを送信する。無線子機は基地局102からの無線データを広域無線通信部202より受信する。このとき、広域無線通信にはアナログテレビの周波数帯域などを使用すると長距離型の通信が実現できるため効率が良い。受信したデータが基地局102に対して応答を返す必要性がある場合には、省電力な近傍域無線通信部203を使用して無線子機同士がデータを多段にホッピングさせて遠く離れた基地局102までデータを届ける。
【0030】
無線子機は近傍域にある複数の無線子機同士で小規模グループ106a、106b、106c、106d、106eを形成しており、このグループ単位で必要なデータをまとめてデータをホッピングさせて基地局まで届ける。
【0031】
例えば、小規模グループ106eでは無線子機105eが親機のような役割を担い、小規模グループ106eに属している他の無線子機108eのデータを収集し、収集したデータを別の小規模グループ106dにおける親機の役割を担う105dに対してデータを送信する。同様にして親機の役割を担っている105dが105cにデータを転送する。
【0032】
この様に、各小規模グループ106a、106b,106c,106d,106eの親機の役割を担っている無線子機105a、105b、105c、105d,105eがデータを順次転送することで、遠く離れた基地局までデータを届けることができる。
【0033】
ここで、小規模グループの形成方法について、無線子機105e、無線子機108eによって形成された小規模グループ106eを代表例として、図4の流れ図とともに説明する。
【0034】
まず、無線子機105eと無線子機108eが基地局102からの無線データを受信する(S401)。S401の時点では、無線子機105eと無線子機108eに親子関係に相当する従属関係などはない。また、ハード仕様もソフト仕様も同一のものであり等価である。
【0035】
次に、無線子機105eと無線子機108eはS401の基地局102からのデータ受信時の受信レベルを各々の受信レベル測定部209によって測定する(S402)。
【0036】
そして、無線子機105eと無線子機108eは各々の計時部205を使用してランダムな遅延時間を生成し(S403)、その生成されたランダム遅延時間が経過するまでウェイト状態となる(S404)。
【0037】
ここで、ウェイト状態中に近傍領域にある自分以外の無線子機から所定のデータパケットを受信したか否かを判断する(S405)。もし、ウェイト状態中に近傍領域にある自分以外の無線子機から所定のデータパケットを受信していない場合には、自分が小規模グループ106eの親機を担う必要があることを認識する(S406)。つまり、ここでは無線子機105eが親機の役割を担うことを認識したことになる。そして、親機であると判断した無線子機105eは近傍域にある他の無線子機108eに対して、近傍域無線通信部203より近傍域無線データパケットを送信する(S407)。
【0038】
また、S405において、ウェイト状態中に近傍領域にある自分以外の無線子機から所定のデータパケットを受信した場合には、近傍域無線データパケットを受信した無線子機108eは、自分が小規模グループ106の子機であると認識し(S409)、近傍域無線データパケットの送信元である親機の役割を担う無線子機105eに対して近傍域無線データパケットを送信する(S410)。
【0039】
ここで、S406において自分が親機であると判断した無線子機105eは、S407にて送信した近傍域無線データパケットの応答となる他の無線子機108eからのS410の近傍域無線データパケットを受信する(S408)と、無線子機105eが自分の管轄する小規模グループにどのような無線子機108eが存在するのかということを把握することができる(S411)。
【0040】
このように、S403でランダム遅延時間を生成し、さらにS404でランダム遅延時間のウェイト状態を作ることにより、各無線子機105e、108e同士の所定の近傍域無線データパケット送信タイミングをずらすことが可能であるため混信を防ぐことができる。
【0041】
また、S401からS411の一連の処理フローにより、親機の役割を担う無線子機105a、105b、105c、105d、105eと子機として動作するその他の無線子機108a、108b、108c、108d、108eの区別が可能となり、自立分散的に小規模グループ106a、106b、106c、106d、106eを形成することが可能になる。
【0042】
なお、図4で示した小規模グループ106a、106b、106c、106d、106eの別の形成方法として、近傍域無線データパケット500には受信レベル503も含まれていることから、受信レベル503の最も大きなものが親機の役割を果たすという方法
も考えられる。具体的には、例えばS405以降の処理を省き、S404のランダム遅延時間経過後に、例えば無線子機105eが近傍域無線データパケット500を周囲に対して送信し、任意の時間ウェイト状態となり、他の無線子機108eからの同様の近傍域無線データパケット500を受信する。
【0043】
そして、無線子機108eも無線子機105eと同様の処理を行う。このようにすることによって、例えば無線子機105eと周囲の無線子機108eはお互いの存在とお互いの受信レベル503を知ることができる。最も受信レベル503が高いものが親機の役割を果たす無線子機105eと認識して、小規模グループ106eを形成することが可能である。この方法によれば、基地局102までのデータ転送を安定化させるという効果を期待できる。また、この受信レベル503が同じ値であった場合には、S401からS411の流れで説明したように近傍域無線データパケット500を最も早く送信した無線子機105eが親機の役割を担うという複合的な方法で小規模グループ106eを形成することもできる。
【0044】
図4に示す一連の処理フローにより小規模グループ106(106a、106b、106c、106d、106e)が形成されると、各無線子機105e、108eは図5に示す近傍域無線データパケット500を送受信する。
【0045】
近傍域無線データパケット500は、近傍無線ヘッダ501、グループID502、受信レベル503、機器情報504、データフィールド505から構成されており、近傍無線ヘッダ501は近傍域無線データパケット500の近傍無線ヘッダであり、送信元や送信先、パケットタイプなど無線データに関する様々なパラメータが含まれている。そして、無線子機105eや無線子機108eはこの近傍無線ヘッダ501部分に含まれる情報から誰が送信したものであるのか、あるいはどのような対応をしなければならないのかが判断できる。
【0046】
グループID502は小規模グループ106を識別するためのものであり、受信レベル503はS402において測定された受信レベル値を示す。機器情報504には無線子機105eや無線子機108eがどのような機器であるかを判別、特定できるための値が示され、データフィールド505には計量部201より得られた情報や転送データなどが含まれている。
【0047】
近傍域無線データパケット500に受信レベル503が含まれていることから、他の例えば小規模グループ106dからのデータに含まれる受信レベル503を確認することで、基地局がどの方向にあるのかということが判断できる。また基地局102に対してデータを転送する際に、無線子機105a、105b、105c、105d、105eが受信レベル503の大きな方向へデータを転送することで、基地局までの通信経路を決定することが可能となる。
【0048】
以上のように、本実施の形態によれば、データが複数の無線子機105a、105b、105c、105d、105eを多段にホッピングする仕組みであるため、中短距離型の省電力な無線通信を使用することができるため、長時間運用を可能とした省電力な自動無線検針システムを提供することができる。また、無線子機105a、105b、105c、105d、105eが中継器として機能することから、中継器の設備投資を抑えることができる。
【0049】
さらに、長距離型の無線通信が可能な広域無線通信部202を備えていることから、遠く離れた基地局102からのデータを直接受信することが可能になることから、基地局の設備投資を抑えることができる。
【0050】
また、必要に応じて小規模グループ106a、106b、106c、106d、106eを自立分散的に形成することができるため、設置時において親機、子機の設定などをする必要性がないため、設置工数の削減を図ることができる。また、親機と子機を区別して設置する必要性が無いため、設置環境におけるネットワーク設計に必要とされる時間を大幅に短縮することができる。また、新たな建設物や古くなった建物の取り壊しによる周辺環境の変化に対しても、人手をかけることなく柔軟に対応することが可能である。
【0051】
また、近傍無線通信による通信が障害発生などの何らかの理由により成功しない場合においては、無線方式切替部210により通信方式の切替を行い、広域無線通信部202を使用して直接基地局へデータを転送することが可能である。また、山間部や郊外において基地局102までの経路が近傍無線通信では実現できないような設置環境においても、広域無線通信部202によって基地局までデータを届けることができる。
【0052】
(実施の形態2)
本実施の形態において実施の形態1と同様の構成については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。図6は本実施の形態における無線子機の機能ブロック図である。601は基地局102より受信した経路情報に基づき、通信経路を補正する通信経路補正部であり、実際には制御プログラムの一部として記憶部206に保持されているものである。
【0053】
基地局102より送信されるデータパケットである通信経路補正データパケット700について図7を用いて説明する。通信経路補正データパケット700は、広域無線通信における無線データパケット700の広域無線ヘッダ701と、データがどのような性質のものであるかを示すデータ種別702と、自動検針センターによって管理されている経路情報が含まれる経路情報データフィールド703とで構成されている。
【0054】
以上のように構成された自動検針無線システムについて、その動作を説明する。まず、自動検針センター101において、過去の自動検針情報を管理している。この管理情報から通信経路の効率が悪い無線子機105a、105b、105c、105d、105eに対して、通信経路補正データパケット700を送信する。これを受信した無線子機105a、105b、105c、105d、105eは記憶部206に保持しているデータ転送先を、通信経路補正部601によって通信経路補正データパケット700の情報に従い、次回の通信において、補正されたデータ転送先に対して、データを転送することによって効率の良い通信経路を使用してデータ転送を行う。
【0055】
なお、上記過去の自動検針情報とは、自動検針センター101が無線子機105a、105b、105c、105d、105eとの無線通信によって収集、蓄積されるデータのことを指し、自動検針センター101はそのデータを基にして例えば無線子機105eがどのような経路によって基地局102までデータが転送されたのかという情報も把握することができる。当然のことながら過去から現時点にいたるまでの情報が蓄積されていることから、通信経路の効率が良いか悪いかという判断が可能になる。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、通信経路補正部601を備えることによって、通信経路補正データパケット700の情報に従い、次回の通信において通信経路変更を反映させることができるため、最適な通信経路を確保することができる。また、自動検針無線システム全体の応答性能を高めることができる。さらに、何らかの障害が発生した場合にも、自動検針センター101からの指示により一時的に通信経路を変更することができるため、データを確実に収集することが可能となる。
【0057】
(実施の形態3)
本実施の形態において実施の形態1あるいは実施の形態2と同様の構成については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。図8は本実施の形態における無線子機の機能ブロック図である。801は基地局102から受信した一斉同報データの緊急度を判断するための緊急度判断部であり、実際には制御プログラムの一部として記憶部206に保持されているものである。
【0058】
基地局102より送信される緊急時における一斉同報データパケット900について図9を用いて説明する。一斉同報データパケット900は、無線ヘッダ901、データがどのような性質のものであるかを示すデータ種別902、一斉同報データパケット900の緊急度903、一斉同報データパケット900に含まれる緊急時における指示情報904とから構成されている。
【0059】
図10は緊急時における一斉同報データパケット900を受信した、例えば無線子機105eの処理のフロー図である。
【0060】
まず、地震の発生などの緊急時においては基地局102から一斉同報データパケット900が送信され、それを受信する(S1001)。すると、一斉同報データパケット900に含まれるデータ種別902を確認し、受信データが緊急時における一斉同報であることを認識する(S1002)。
【0061】
次に、一斉同報データパケット900に含まれている緊急度903を緊急度判断部801が判定し(S1003)、緊急度が高い場合には指示情報902に基づき、弁を遮断するなどの処理を実施する(S1004)。
【0062】
そして、計時部205においてランダム遅延時間を生成し(S1005)、ランダム遅延時間が経過するまでウェイト状態としつつ(S1006)、ここで一斉同報データパケット900の指示情報902に対応済みであることを近傍域に対して通知する(S1007)。
【0063】
なお、これら一連の処理フロー中のS1001にて一斉同報データパケット900を何らかの原因で受信できず取りこぼしてしまう場合(S1101)がある。それについては、図11に示す処理フローが実行される。
【0064】
まず、上記S1007にて他の無線子機(例えば無線子機105e)から送信されたデータを受信し(S1102)、そのデータ内容を確認する(S1103)。確認の結果、緊急を要する一斉同報データパケット900があったことを認識すると、一斉同報データパケット900を正しく受信した無線子機105eと同様の処理を実施する(S1104)。ここで、すでに一斉同報データパケット900の内容を実施済みであれば、受信したデータは無視し、以下S1005からS1007を実行する。なお、図10、図11に示す処理は、親機の役割や子機の役割というものはなく、すべての無線子機が同様に処理を行うものとする。
【0065】
以上のように、本実施の形態によれば、一時的なノイズ等による通信環境の悪化などが発生し、基地局102からの一斉同報データパケット900を取りこぼした場合においても、近傍にある別の、無線子機が一斉同報データパケット900と同様の内容を近傍領域に知らせることによって一斉同報データパケット900の取りこぼしを防止することができ、災害発生時などにおける緊急時においても安全に動作する自動検針無線システムを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の自動検針無線システムは、基地局からのデータは広域無線通信部を使用して受信し、基地局へデータ送信には、複数の無線子機が可変の小規模グループを形成し、所定の条件にある無線子機がこの小規模グループの親機となり、自分の小規模グループのデータを収集し、自分よりも受信レベルの高い別の小規模グループの親機に順次転送することで、基地局までデータを届けることができる。基地局からのデータ送信(下り)と無線子機からのデータ送信(上り)の通信方式を変更することで、基地局の設備投資を抑え省電力で効率の良い自動検針無線システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1における自動検針無線システムの全体図
【図2】本発明の実施の形態1における無線子機の機能ブロック図
【図3】本発明の実施の形態1における無線子機の回路図
【図4】本発明の実施の形態1における小規模グループの形成方法を示す処理フロー図
【図5】本発明の実施の形態1における近傍域無線通信で使用されるデータパケットを示す図
【図6】本発明の実施の形態2における無線子機の機能ブロック図
【図7】本発明の実施の形態2における基地局からの経路情報データパケットを示す図
【図8】本発明の実施の形態3における無線子機の機能ブロック図
【図9】本発明の実施の形態3における基地局からの一斉同報データパケットを示す図
【図10】本発明の実施の形態3における一斉同報データパケットを受信した時の処理フロー図
【図11】本発明の実施の形態3における一斉同報データパケットを取りこぼした時の処理フロー図
【図12】従来の自動検針無線システムの全体図
【符号の説明】
【0068】
101 自動検針センター
102 基地局
105a、105b、105c、105d、105e 親機の役割を担う無線子機
106a、106b、106c、106d、106e 小規模グループ
108a、108b、108c、108d、108e 子機の役割を担う無線子機
201 計量部
202 広域無線通信部
203 近傍域無線通信部
205 計時部
207 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス使用量の計量を行う計量部と、自動検針センターと通信回線で接続される基地局との間で無線データを送受信する広域無線通信部と、前記広域無線通信部による無線通信範囲よりも狭い範囲で無線通信を行う近傍域無線通信部とを備える自動検針無線装置であって、
前記広域無線通信部が前記基地局から無線データを受信した時から任意に設定される時間が経過した後に前記近傍域無線通信部を介して特定の無線データを送信し、
前記任意に設定される時間が経過するまでに他の自動検針無線装置から前記特定の無線データを受信したときは子機と認識して送受信処理を行い、
前記任意に設定される時間が経過するまでに他の自動検針無線装置から前記特定の無線データを受信しないときは親機と認識して送受信処理を行う自動検針無線装置。
【請求項2】
親機と認識して送受信処理を行うときであって、基地局からの無線データに対して応答する場合、近傍域無線通信部の通信可能圏内にある他の自動検針無線装置のうち親機と認識して送受信処理を行うものを介して前記基地局へ応答データを送信し、
前記近傍域無線通信部は、その通信可能圏内にある複数の自動検針無線装置のうち、前記基地局からの無線データの受信レベルを最も高く受信した自動検針無線装置へ前記応答データを送信する請求項1記載の自動検針無線装置。
【請求項3】
基地局は、応答データを送信するための経路情報を送信する請求項2記載の自動検針無線装置。
【請求項4】
親機と認識して送受信処理を行うときであって、
広域無線通信部を介して基地局から送信された無線データを受信したとき、
前記無線データを近傍域無線通信部の通信可能圏内にある複数の自動検針無線装置に送信する請求項3記載の自動検針無線装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の自動検針無線装置と、自動検針センターと、前記自動検針センターと通信回線で接続された基地局とから構成される自動検針無線システム。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の自動検針無線装置の手段の全てもしくは一部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−108170(P2008−108170A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292134(P2006−292134)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】