説明

自動製パン器

【課題】穀物粒からパンを製造できるように粉砕用のモータと混練用のモータとを備え、2つのモータを適切に駆動させてパンを製造できる自動製パン器を提供する。
【解決手段】自動製パン器は、粉砕ブレードと混練ブレードとを支持するブレード回転軸(焼成室30に収容されるパン容器に設けられる)に動力伝達可能に連結される原動軸11と、混練ブレード回転用の第1のモータ50と、粉砕ブレード回転用の第2のモータ60と、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56を含み、クラッチ56が動力伝達を行う場合に、第1のモータ50の出力軸51と原動軸11とを動力伝達可能に連結する第1の動力伝達部と、第2のモータ60の出力軸61と原動軸11とを常時動力伝達可能に連結する第2の動力伝達部と、クラッチ56が動力伝達を行う状態であるか、動力遮断を行う状態であるかを検知するクラッチ状態検知部(図示せず)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器は、パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に入れ、パン容器内のパン原料を混練ブレードで混練して練り上げ(練り工程)、発酵工程を経た後に、パン容器をそのままパン焼き型としてパンを焼き上げる(焼成工程)仕組みのものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来においては、このような自動製パン器を用いてパンを製造する場合、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料を混ぜたミックス粉を入手し、これを製パン原料として用いることによってパンを製造していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−116526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般家庭においては米粒に代表されるように、粉の形態ではなく粒の形態で穀物を所持していることがある。このために、自動製パン器を用いて穀物粒から直接パンを製造することができれば非常に便利である。このようなことから、本出願人らは、鋭意研究の末、穀物粒を出発原料としてパンを製造する方法を発明している。なお、これについては、先に特許出願を行っている(特願2008−201507)。
【0006】
先に出願したパンの製造方法について紹介しておく。このパンの製造方法では、まず、穀物粒を液体と混合し、この混合物を粉砕ブレードによって粉砕する(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉に例えばグルテンやイースト等を加え、混練ブレードによって生地に練り上げ(練り工程)、生地を発酵(発酵工程)させた後、パンに焼き上げる(焼成工程)。
【0007】
粉砕ブレードによって穀物粒を粉砕する場合、粉砕ブレードは高速回転(例えば7000〜8000rpm)される。一方、混練ブレードによってパン生地を練り上げる場合、混練ブレードは低速回転(例えば180rpm等)される。このため、穀物粒を原料としてパンを製造することが可能な自動製パン器を構成しようとすると、粉砕工程の際に使用される粉砕用のモータと、練り工程の際に使用される混練用のモータとを別々に備える構成とするのが好ましい。そして、このように2つのモータを備える場合、それらを適切に駆動させてパンを製造する仕組みが求められる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、穀物粒からパンを製造できるように粉砕用のモータと混練用のモータとを備える自動製パン器であって、2つのモータを適切に駆動させてパンを製造できる自動製パン器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、パン原料が投入されるパン容器と、前記パン容器の底部に回転可能に取り付けられると共に、穀物粒を粉砕する粉砕ブレードとパン生地を練り上げる混練ブレードとを支持するブレード回転軸と、前記パン容器が収容される焼成室と、前記焼成室に前記パン容器が収容された状態で、前記ブレード回転軸に動力伝達可能に連結される原動軸と、前記混練ブレードを低速回転するために設けられる第1のモータと、前記粉砕ブレードを高速回転するために設けられる第2のモータと、動力伝達と動力遮断を行うクラッチを含み、前記クラッチが動力伝達を行う場合に、前記第1のモータの出力軸と前記原動軸とを動力伝達可能に連結する第1の動力伝達部と、前記第2のモータの出力軸と前記原動軸とを常時動力伝達可能に連結する第2の動力伝達部と、前記クラッチが動力伝達を行う状態であるか、動力遮断を行う状態であるかを検知するクラッチ状態検知部と、を備えることを特徴としている。
【0010】
本構成によれば、パン容器が備えるブレード回転軸は、第1のモータと第2のモータとのいずれによっても回転させることができる原動軸に、動力伝達可能な状態で連結されている。そして、本構成では、ブレード回転軸によって粉砕ブレードと混練ブレードとを回転可能な構成としている。このため、ブレード毎にブレード回転用の回転軸を設ける構成に比べて、自動製パン器を小型にできる。
【0011】
また、本構成によれば、第2のモータによって原動軸を高速回転させる時に、クラッチによって動力遮断を行えば、原動軸の高速回転が低速回転用の第1のモータの出力軸に伝達されないようにできる。このため、例えば第2のモータの駆動時に、第1のモータ(低速回転用のモータ)の出力軸を高速回転させようとして第2のモータに大きな負荷が加わり、第2のモータが破損するというような事態を避けられる。一方、第2のモータの出力軸と原動軸とは常時動力伝達可能に連結されているために、第1のモータによって原動軸を低速回転させる時には第2のモータの出力軸に原動軸の回転動力が常に伝達される。しかし、この場合には、第2のモータの出力軸が低速で回るだけであるので、例えば上述のような負荷が第1のモータに加わって第1のモータが破損するということはない。すなわち、本構成の自動製パン器は、モータの回転動力を伝達する動力伝達部に設けるクラッチの数を適切に低減する構成を採用しており、穀物粒からパンを製造できる便利な仕組みを備えた自動製パン器を安価とすることが可能である。
【0012】
更に、本構成の自動製パン器は、クラッチの状態を検知するクラッチ状態検知部を備えるために、例えば、クラッチが動力伝達を行う状態であるにもかかわらず、第2のモータを高速回転してしまうという事態を高い確率で避けることが可能になる。また、クラッチが動力遮断を行う状態であるにもかかわらず、第1のモータを駆動しようとする事態を高い確率で避けることが可能になる。
【0013】
上記構成の自動製パン器において、前記第1のモータを駆動する場合と、前記第2のモータを駆動する場合とのうち、少なくとも前記第2のモータを駆動する場合には、前記クラッチ状態検知部から得られる情報に基づいて前記クラッチの状態がモータの駆動を開始するにあたって適切か否かを判断し、前記クラッチの状態が適切である場合には前記モータの駆動をそのまま開始させ、前記クラッチの状態が不適切である場合には、前記クラッチの状態を適切な状態へと変更した後に前記モータの駆動を開始させるように制御する制御部を備えるのが好ましい。
【0014】
本構成により、上述した、クラッチが動力伝達を行う状態であるにもかかわらず、第2のモータを高速回転してしまうという事態をほぼ確実に避けられ、自動製パン器が故障する可能性を低減できる。
【0015】
また、上記構成の自動製パン器において、前記クラッチは、前記原動軸の軸方向と平行な方向に可動する第1のクラッチ部材と、固定配置される第2のクラッチ部材とを有する噛み合いクラッチであって、前記第1のクラッチ部材から延出するアーム部の前記軸方向の位置を切り替える切替部によって動力伝達を行う状態と動力遮断を行う状態とが切り替えられるようになっており、前記クラッチ状態検知部は、前記アーム部の位置に基づいて前記クラッチが動力伝達を行う状態であるか、動力遮断を行う状態であるかを検知することとできる。
【0016】
本構成は、第1の動力伝達部に含まれるクラッチを噛み合いクラッチとしているために、自動製パン器の製造コストを安価なものとし易い。
【0017】
上記構成の自動製パン器において、前記クラッチ状態検知部は、前記アーム部の位置によってオンオフ状態が切り替わるスイッチであるのが好ましい。これにより、簡単且つ安価にクラッチ状態検知部を得られる。
【0018】
上記構成の自動製パン器において、前記スイッチは、前記クラッチが動力遮断を行う状態である場合にオン状態となるのが好ましい。
【0019】
上述のように、クラッチが動力伝達を行う状態であるにもかかわらず、第2のモータを回転してしまうと、自動製パン器が故障する可能性がある。このため、クラッチ状態検知部によってクラッチが動力遮断を行う状態であることを確実に検知した上で、第2のモータを回転することができる、本構成を採用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、穀物粒からパンを製造できるように粉砕用のモータと混練用のモータとを備える自動製パン器であって、2つのモータを適切に駆動させてパンを製造できる自動製パン器を提供できる。また、本発明によると、穀物粒からパンを製造できる便利な仕組みを備えた、小型で安価な自動製パン器を提供できる。このため、家庭でのパン製造をより身近なものとして、家庭でのパン作りが盛んになることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図
【図2】本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図
【図3】本実施形態の自動製パン器我備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図
【図4】本実施形態の自動製パン器が備えるクラッチ状態検知部の構成及び動作を説明するための図
【図5】本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチの切り替え時の動作異常を示す図
【図6】本実施形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図
【図7】本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための図で、斜め下方から見た場合の概略図
【図8】本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための図で、下から見た場合の概略図
【図9】混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合のパン容器の上面図
【図10】混練ブレードが開き姿勢にある場合のパン容器の上面図
【図11】本実施形態の自動製パン器が備えるガードの構成を示す概略斜視図
【図12】本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図
【図13】本実施形態の自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間や温度等はあくまでも例示であり、本発明の内容を限定するものではない。
(自動製パン器の構成)
図1は、本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、自動製パン器1の本体10(例えば合成樹脂によって形成される)の上面右側寄りには操作部20が設けられる。この操作部20には、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコース等)を選択する選択キー等の操作キー群と、操作キー群によって設定された内容やエラー等を表示する表示部が設けられている。なお、表示部は、例えば、液晶表示パネルや発光ダイオードを光源とする表示ランプ等によって構成される。
【0023】
また、本体10には、操作部20の隣側(図1においては左隣)に、パン容器(詳細は後述する)が収容される焼成室30が形成されている。例えば板金によって形成される焼成室30は、平面視略矩形状に形成され、底壁30a及び4つの側壁30b(後述の図6も参照)を有し、上面が開口している。また、本体10には、この焼成室30を覆う蓋40(例えば合成樹脂によって形成される)が設けられる。この蓋40は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として回動することで、焼成室30の開口の開閉が可能となっている。この蓋40には、図示は省略するが、焼成室30内を覗けるように、例えば耐熱ガラスからなる覗き窓が設けられている。
【0024】
図2は、本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図である。図2は、自動製パン器1を上側から見た場合を想定している。図2に示すように、自動製パン器1には、焼成室30の右横に練り工程で用いられる低速・高トルクタイプの混練モータ50が固定配置され、焼成室30の後ろ側に粉砕工程で用いられる高速回転タイプの粉砕モータ60が固定配置されている。混練モータ50及び粉砕モータ60はいずれも竪軸である。なお、混練モータ50は本発明の第1のモータの実施形態であり、粉砕モータ60は本発明の第2のモータの実施形態である。
【0025】
混練モータ50の上面から突出する出力軸51には第1のプーリ52が固定される。この第1のプーリ52は、第1のベルト53によって、その径が第1のプーリ52よりも大きく形成されると共に、第1の回転軸54の上部側に固定される第2のプーリ55に連結されている。第1の回転軸54の下部側には、その回転中心が第1の回転軸54とほぼ同一となるように第2の回転軸57が設けられている。なお、第1の回転軸54及び第2の回転軸57は、本体10内部に回転可能に支持されている。また、第1の回転軸54と第2の回転軸57との間には、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56が設けられている。このクラッチ56の構成については後述する。
【0026】
第2の回転軸57の下部側には第3のプーリ58が固定されている。第3のプーリ58は、第2のベルト59によって、焼成室30の下部側に設けられる原動軸11に固定される第1の原動軸用プーリ12(第3のプーリ58とほぼ同一の径を有する)に連結されている。混練モータ50自身が低速・高トルクタイプであり、その上、第1のプーリ52の回転が第2のプーリ55によって減速回転される(例えば1/5の速度に減速される)。このため、クラッチ56が動力伝達を行う状態で混練モータ50を駆動すると、原動軸11は低速で回転する。
【0027】
なお、第1のプーリ52、第1のベルト53、第1の回転軸54、第2のプーリ55、クラッチ56、第2の回転軸57、第3のプーリ58、第2のベルト59、及び第1の原動軸用プーリ12で構成される動力伝達部は、本発明の第1の動力伝達部の実施形態である。以下、この動力伝達部のことを第1の動力伝達部と表現することがある。
【0028】
粉砕モータ60の下面から突出する出力軸61には、第4のプーリ62が固定されている。この第4のプーリ62は、第3のベルト63によって、原動軸11に固定される第2の原動軸用プーリ13(第1の原動軸用プーリ12より下側で固定される)に連結されている。第2の原動軸用プーリ13は第4のプーリ62とほぼ同一の径を有する。粉砕モータ60には高速回転のものが選定され、第4のプーリ62の回転は第2の原動軸用プーリ13においてほぼ同一速度で維持されるために、粉砕モータ60を駆動すると、原動軸11は高速回転(例えば7000〜8000rpm)を行う。
【0029】
なお、第4のプーリ62、第3のベルト63、及び第2の原動軸用プーリ13で構成される動力伝達部は、本発明の第2の動力伝達部の実施形態である。以下、この動力伝達部のことを第2の動力伝達部と表現することがある。第2の動力伝達部は、クラッチを有さない構成であり、粉砕モータ60の出力軸61と原動軸11とを常時動力伝達可能に連結する。
【0030】
図3は、本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図である。図3は、図2の矢印A方向に沿って見た場合を想定した図である。なお、図3(a)はクラッチ56が動力遮断を行う状態を示し、図3(b)はクラッチ56が動力伝達を行う状態を示す。
【0031】
図3に示すように、クラッチ56は、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とを有する。そして、第1のクラッチ部材561に設けられる爪561aと、第2のクラッチ部材562に設けられる爪562aとが噛み合う場合(図3(b)の状態)に動力伝達を行い、2つの爪561a、562bが噛み合わない場合(図3(a)の状態)に動力遮断を行うようになっている。すなわち、クラッチ56は噛み合いクラッチとなっている。
【0032】
なお、本実施形態では、2つのクラッチ部材561、562のそれぞれには、周方向(第1のクラッチ部材561を下から平面視した場合、或いは、第2のクラッチ部材562を上から平面視した場合を想定)にほぼ等間隔に並ぶ6つの爪561a、562aが設けられているが、この爪の数は適宜変更してもよい。また、爪561a、562aの形状は、適宜好ましい形状を選択すればよい。
【0033】
第1のクラッチ部材561は、抜け止め対策を施された上で、第1の回転軸54に、その軸方向(図3において上下方向;原動軸11の軸方向に平行な方向)に摺動可能であると共に、回転不能に取り付けられている。第1の回転軸54の第1のクラッチ部材561の上部側には、バネ71が遊嵌されている。このバネ71は、第1の回転軸54に設けられるストッパ部54aと第1のクラッチ部材561とに挟まれるように配置されており、第1のクラッチ部材561を下側に向けて付勢している。一方、第2のクラッチ部材562は、第2の回転軸57の上端に固定されている。
【0034】
クラッチ56の切り替え(動力伝達状態と、動力遮断状態の切り替え)は、第1のクラッチ部材561から固定状態で延出するアーム部72と、永久磁石73aが内蔵された自己保持型のソレノイド73(本発明の切替部の実施形態)と、を用いて行われる。ソレノイド73のプランジャー73bは、その先端部(図3においては下部側が該当)がアーム部72に設けられる取付部72aに固定された状態となっている。アーム部72(取付部72aを含む)は金属で形成されているために、永久磁石73aに吸着可能となっている。
【0035】
図3(a)の状態から、ソレノイド73に、永久磁石73aの磁界を打ち消すように電圧を印加すると、永久磁石73aのアーム部72(より正確には取付部72a)を吸着する力が低下し、バネ71の付勢力によって第1のクラッチ部材561が下側に押し下げられる。これにより、第1のクラッチ部材561の爪561aと、第2のクラッチ部材562の爪562aとの噛み合いが得られ、クラッチ56は動力伝達を行うようになる(図3(b)の状態となる)。この噛み合いが得られた状態は、バネ71の付勢力によって維持されるために、第1のクラッチ部材561を引き下げるための駆動を行った後は、ソレノイド73はオフとされる。また、この噛み合いが得られた状態では、アーム部72が引き下がるために、ソレノイド73のプランジャー73bは、ハウジング73cからの突出量(下側への突出量)が増した状態となっている。
【0036】
一方、図3(b)の状態から、ソレノイド73に、プランジャー73bを引き上げる方向の電圧(永久磁石73aの磁界を打ち消す方向とは逆方向の電圧)を印加すると、バネ71の付勢力に反して、アーム部72と共に第1のクラッチ部材561が上側に引き上げられる。これにより、第1のクラッチ部材561の爪561aと、第2のクラッチ部材562の爪562aとの噛み合いが解除され、クラッチ56は動力遮断を行うようになる(図3(a)の状態となる)。この噛み合いが解除された状態においては、ソレノイド73に内蔵される永久磁石73aがアーム部72(より正確には取付部72a)を吸着する。このために、第1のクラッチ部材561を引き上げるための駆動を行った後は、ソレノイド73をオフとしても噛み合いが解除された状態を維持できるので、ソレノイド73はオフされる。
【0037】
粉砕モータ60を駆動する際に、クラッチ56が動力伝達を行う状態(図3(b)の状態)であると、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達される。この場合、粉砕モータ60が例えば8000rpmで回転されるとすると、第1のプーリ52と第2のプーリ55との半径比(例えば1:5)によって、混練モータ50の出力軸51を40000rpmで回転させようとすることになる。この場合、粉砕モータ60に非常に大きな負荷が加わるために、粉砕モータ60が破損する可能性がある。このため、粉砕モータ60を駆動する際には、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達されないようにする必要があり、自動製パン器1は、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56を第1の動力伝達部に含む構成となっている。
【0038】
なお、上述のように自動製パン器1は、第4のプーリ62、第3のベルト63、及び第2の原動軸用プーリ13で構成される第2の動力伝達部にはクラッチを設けない構成としているが、この場合には上述のようなモータ破損は生じない。これは、混練モータ50を駆動しても原動軸11は低速回転(例えば180rpm等)されるのみであり、原動軸11を回転させる回転動力が粉砕モータ60の出力軸に伝達されても、混練モータ50に大きな負荷が加わることはないからである。そして、このように第2の動力伝達部に敢えてクラッチを設けない構成とすることにより、自動製パン器の製造コストを抑制している。
【0039】
本実施形態の自動製パン器1においては、クラッチ56が動力伝達を行う状態であるか、動力遮断を行う状態であるかを検知するクラッチ状態検知部が設けられている。図4は、本実施形態の自動製パン器が備えるクラッチ状態検知部の構成及び動作を説明するための図である。なお、図4(a)はクラッチ56が動力遮断を行う状態を示し、図4(b)はクラッチ56が動力伝達を行う状態を示している。
【0040】
図4に示すように、自動製パン器1が備えるクラッチ状態検出部は、アーム部72の上側に固定配置されるマイクロスイッチ120によって構成されている。このマイクロスイッチ120は、そのボタン122の先端側がハウジング121の底面から突出するように配置されている。このボタン122は、スプリング123によって、その先端側がアーム部72に向かう方向(図4において下方向)に付勢されている。そして、ボタン122は、その胴体部に設けられるフランジ部122aが突出量規制部124に当接することによって、ハウジング121からの突出量が所定量となるように調整されている。
【0041】
マイクロスイッチ120は、図4(a)に示すように、クラッチ56が動力遮断を行う状態の場合にオン状態となるように、その位置が調整されている。すなわち、クラッチ56が動力遮断を行う状態となる場合には、アーム部72によってボタン122が押し上げられ、ボタン122の後端側(図4においては上側)に設けられる突起部122cが可動接触子125を押圧して、可動接触子125と固定接触子126との接触が得られるようになっている。
【0042】
一方、マイクロスイッチ120は、図4(b)に示すように、クラッチ56が動力伝達を行う状態の場合にオフ状態となるように、その位置が調整されている。すなわち、クラッチ56が動力伝達を行う状態となる場合には、アーム部72とボタン122とが非接触となり、バネ123の付勢力によってボタン122が下側に移動することによって、突起部122cの押圧による可動接触子125と固定接触子126との接触が解除されるようになっている。
【0043】
ところで、動力遮断を行う状態から動力伝達を行う状態にクラッチ56を切り替える場合(図4(a)の状態から図4(b)の状態へと切り替える場合)に、図5に示すように、第1のクラッチ部材561の爪561aが第2のクラッチ部材562の爪562aの上面に載ってしまう(引っ掛かってしまう)ことがある。この場合に、マイクロスイッチ120のボタン122が押圧されてマイクロスイッチ120がオン状態になっていると都合が悪い。このため、この2つの爪562a、562b同士が引っ掛かった状態では、マイクロスイッチ120がオフ状態となるように、マイクロスイッチ120の位置は調整されている。この理由について、以下説明する。
【0044】
なお、図5は、本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチの切り替え時の動作異常を示す図である。
【0045】
後述のように、マイクロスイッチ120は、自動製パン器1の全体を制御する制御装置130と電気的に繋がっており、制御装置130は、マイクロスイッチ120から信号に基づいた動作制御を行うようになっている(図12参照)。もし、図5に示す状態でマイクロスイッチ120がオン状態となる場合、制御装置130はソレノイド73を駆動させて、動力伝達を行う状態にクラッチ56を切り替える動作を実行させたにもかかわらず、クラッチ56が動力遮断を行う状態のままであると判断する。このため、再びソレノイド73を駆動させて、動力伝達を行う状態にクラッチ56を切り替える動作を実行させる。しかし、この場合、ソレノイド73の駆動にもかかわらず、図5の状態が維持されてしまう。この繰り返しにより、制御装置130は、いつもでも混練モータ50を用いた製パン動作を行えなくなってしまう。このために、図5の状態では、マイクロスイッチ120がオフ状態となるように、マイクロスイッチ120の位置は調整されている。
【0046】
また、クラッチ56が動力遮断を行う状態(図4(a)の状態)にある場合に、運搬等によって自動製パン器1に振動が与えられて、永久磁石73aによるアーム部72の吸着が外れて、図5のような状態となることも考えられる。図5に示す状態でマイクロスイッチ120がオン状態となるように構成されていると、図5の状態で、制御装置130は、クラッチ56が動力遮断を行う状態にあるために、粉砕モータ60を駆動させてよいと判断する。しかし、この場合に粉砕モータ60を駆動することは、実際には、クラッチ56が動力伝達を行う状態で粉砕モータ60を駆動することに相当する。このため、自動製パン器1の故障の原因となる。このような観点からも、図5の状態では、マイクロスイッチ120がオフ状態となるように、マイクロスイッチ120の位置は調整する必要がある。
【0047】
図6は、本実施形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図である。図6は、自動製パン器を正面側から見た場合を想定している。この図6では、焼成室30にパン原料を投入するパン容器80が収容された状態を示している。図6に示すように、焼成室30の内部にはシーズヒータ31(加熱手段の一例)が、焼成室31に収容されたパン容器80を包囲するように配置され、パン容器80内のパン原料を加熱できるようになっている。
【0048】
また、焼成室30の底壁30aの略中心にあたる箇所には、パン容器80を支持するパン容器支持部14(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定されている。このパン容器支持部14は、焼成室30の底壁30aから窪むように形成され、その窪みの形状は上から見た場合に略円形となっている。このパン容器支持部14の中心には、上述の原動軸11が底壁30aに対して略垂直となるように支持されている。
【0049】
パン容器80は例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品であり、バケツのような形状をしており、開口部側縁に設けられる鍔部80aに手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器80の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、パン容器80の底部には、詳細は後述する粉砕ブレード90とカバー100とを収容する平面視略円形状の凹部81が形成されている。
【0050】
パン容器80の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸82が、シール対策が施された状態で回転可能に支持されている。このブレード回転軸82の下端(パン容器80の底部から突き出ている)には容器側カップリング部材82aが固定されている。また、パン容器80の底部外面側には筒状の台座83が設けられており、パン容器80は、この台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、焼成室30内に収容されるようになっている。なお、台座83は、パン容器80とは別に形成してもよいし、パン容器80と一体的に形成してもよい。
【0051】
パン容器支持部14の内周面と台座83の外周面とには、それぞれ図示しない突起が形成されており、これらの突起は周知のバヨネット結合を構成する。すなわち、パン容器80をパン容器支持部14に取り付ける際、台座83の突起がパン容器支持部14の突起に干渉しないようにしてパン容器80を下ろす。そして、台座83がパン容器支持部14に嵌り込んだ後、パン容器80を水平にひねると、パン容器支持部14の突起の下面に台座83の突起が係合するようになっている。これにより、パン容器80は上方に抜けなくなる。
【0052】
なお、この操作で、ブレード回転軸82の下端に設けられる前述の容器側カップリング部材82aと、原動軸11の上端に固定される原動軸側カップリング部材11aとの連結(カップリング)も同時に達成される。そして、このカップリングにより、ブレード回転軸82は原動軸11から回転動力が伝えられるようになる。
【0053】
ブレード回転軸82には、パン容器80の底部より少し上の箇所に、粉砕ブレード90が取り付けられている。また、ブレード回転軸82の上端には、平面視略円形のドーム状カバー100が取り付けられている。図7は、本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための図で、斜め下方から見た場合の概略図である。図8は、本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための図で、下から見た場合の概略図である。
【0054】
図7及び図8に示すように、粉砕ブレード90(例えばステンレス鋼板によって形成される)は、飛行機のプロペラのような形状を有し、ブレード回転軸82に対して回転不能に取り付けられる。粉砕ブレード90の中心部はブレード回転軸82に嵌合するハブ90aとなっている。このハブ90aの下面には、ハブ90aを直径方向に横断する溝90bが形成されている。粉砕ブレード90をブレード回転軸82の上から嵌め込んだ場合に、ブレード回転軸82を水平に貫くピン(図示せず)が、ハブ90aを受け止め、また、溝90bに係合し、粉砕ブレード90をブレード回転軸82に対して回転不能に連結する。
【0055】
なお、粉砕ブレード90は、ブレード回転軸82から簡単に引き抜くことができるので、製パン作業終了後の洗浄や、切れ味が悪くなった時の交換を手軽に行うことができる。
【0056】
ドーム状のカバー100(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)は、図7に示すように粉砕ブレード90を囲んで覆い隠す。このカバー100は、粉砕ブレード90のハブ90aに回転自在に支持され、座金100aと抜け止めリング100bによってハブ90aから抜けないようにされている(図6参照)。すなわち、本実施形態では、粉砕ブレード90とカバー100は分離できないユニットを構成し、粉砕ブレード90のハブ90aが、カバー100のブレード回転軸82を受け入れる回転軸受入部を兼ねる構成となっている。
【0057】
なお、このカバー100は、粉砕ブレード90と共にブレード回転軸82から簡単に引き抜くことができるために、製パン作業終了後の洗浄を手軽に行うことができる。
【0058】
ドーム状のカバー100の外面には、ブレード回転軸82から離れた箇所に配置された垂直方向に延びる支軸101(図8参照)により、平面形状「く」の字形の混練ブレード102(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が取り付けられている。支軸101は、混練ブレード102に固定ないし一体化されており、混練ブレード102と動きを共にする。
【0059】
なお、本実施形態では、カバー100の外面に、混練ブレード102に並ぶように補完混練ブレード103が設けられている。この補完混練ブレード103は、必ずしも設ける必要がないが、パン生地を練る練り工程における効率を高めるために設けるのが好ましい。本構成の場合、混練ブレード102と補完混練ブレード103が、本発明の混練ブレードの実施形態となる。
【0060】
混練ブレード102の動作について、図7から図10を参照して説明する。なお、図9、図10は、パン容器80を上から見た図で、図9と図10とでは、混練ブレード102が異なる姿勢となっている。
【0061】
混練ブレード102は、支軸101と共に支軸101の軸線周りに回転し、図9に示す折り畳み姿勢と、図10に示す開き姿勢との2姿勢をとる。折り畳み姿勢では、混練ブレード102の下縁から垂下した突起102a(図7参照)がカバー100の上面に設けられた第1のストッパ部100cに当接し、混練ブレード102はそれ以上カバー100に対し時計方向(上から見た場合を想定)の回動を行うことができない。混練ブレード102の先端は、この時、カバー100から少し突き出している。ここから混練ブレード102が反時計方向(上から見た場合を想定)に回動して図10に示す開き姿勢となると、混練ブレード102の先端はカバー100から大きく突き出す。この開き姿勢における混練ブレード102の開き角度は、カバー100の内面に設けられる第2のストッパ部100d(図7、図8参照)によって制限される。後述のカバー用クラッチ104(図8参照)を構成する第2係合体104b(支軸101に固定状態で取り付けられる)が第2のストッパ部100dに当って回転できなくなった時点で、混練ブレード102は最大開き角度となる。
【0062】
なお、混練ブレード102が折り畳み姿勢となっている場合には、図9に示すように補完混練ブレード103は混練ブレード102に整列し、あたかも「く」の字形状の混練ブレード102のサイズが大型化したようになる。
【0063】
カバー100とブレード回転軸82の間には、図8に示すようにカバー用クラッチ104が介在する。カバー用クラッチ104は、混練モータ50が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「正方向回転」とする。図8では時計方向回転となる。)において、ブレード回転軸82とカバー100を連結する。逆に、粉砕モータ60が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「逆方向回転」とする。図8では反時計方向回転となる。)では、カバー用クラッチ104はブレード回転軸82とカバー100の連結を切り離す。なお、図9及び図10では、前記「正方向回転」は反時計方向回転となり、前記「逆方向回転」は時計方向回転となる。
【0064】
カバー用クラッチ104について更に詳細に説明する。カバー用クラッチ104は、第1係合体104aと第2係合体104bとによって構成される。第1係合体104aは粉砕ブレード90のハブ90aに固定されるか、又は、ハブ90aと一体成形される。すなわち、第1係合体104aはブレード回転軸82に回転不能に取り付けられた状態となっている。第2係合体104bは混練ブレード102の支軸101に固定されるか、又は支軸101と一体成形され、混練ブレード102の姿勢変更に伴って角度を変える。
【0065】
混練ブレード102が折り畳み姿勢にある場合(例えば図8、図9の状態)は、第2係合体104bは第1係合体104aの回転軌道に干渉する角度となる。このため、ブレード回転軸82が正方向回転(図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転)すると、第1係合体104aと第2係合体104bは係合し、ブレード回転軸82の回転力がカバー100及び混練ブレード102に伝達される。
【0066】
一方、混練ブレード102が開き姿勢にある場合(図10の状態)には、第2係合体104bは第1係合体104aの回転軌道から逸脱した角度となる。このために、ブレード回転軸82が逆方向回転(図10では時計方向回転)しても、第1係合体104aと第2係合体104bは係合しない。従って、ブレード回転軸82の回転力はカバー100及び混練ブレード102に伝達されない。以上からわかるように、カバー用クラッチ104は、混練ブレード102の姿勢によってブレード回転軸82とカバー100との連結状態を切り替える。
【0067】
図7及び図8に示すように、カバー100には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓105が形成される。窓105は粉砕ブレード90に並ぶ高さか、それよりも上の位置に配置される。なお、本実施形態では、計4個の窓105が90°間隔で並んでいるが、それ以外の数と配置間隔を選択することもできる。
【0068】
また、カバー100内面には、各窓105に対応して計4個のリブ106が形成されている。各リブ106はカバー100の中心近傍から外周の環状壁まで半径方向に斜めに延び、4個合わさって一種の巴形状を構成する。また、各リブ106は、それに向かって押し寄せるパン原料に対面する側が凸となるように湾曲している。
【0069】
図6に戻って、カバー100の下面にはガード110が着脱可能に取り付けられている。このガード110は、カバー100の下面を覆って粉砕ブレード90への指の接近を阻止する。ガード110は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックによって形成され、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の成型品とできる。図11は、本実施形態の自動製パン器が備えるガードの構成を示す概略斜視図である。
【0070】
図11に示すように、ガード110の中心には、ブレード回転軸82を通すリング状のハブ111がある。また、ガード110の周縁にはリング状のリム112がある。ハブ111とリム112とは複数のスポーク113で連結される。スポーク113同士の間は、粉砕ブレード90によって粉砕される米粒を通す開口部114となる。開口部114は、指が通り抜けられない程度の大きさとなっている。
【0071】
ガード110は、カバー100に取り付けられた時、粉砕ブレード90と近接状態となる。そして、あたかも、ガード110が回転式電気かみそりの外刃で、粉砕ブレード90が内刃のような形になる。
【0072】
リム112の周縁には、90°間隔で計4個(この構成に限定されないのは言うまでもない)の柱115が一体成形されている。この柱115のガード110中心側を向いた側面には、一端が行き止まりになった水平な溝115aが形成される。この溝115aにカバー100の外周に形成される突起100e(実施形態では、45°間隔で計8個配置されている)を係合することによって、ガード110はカバー100に取り付けられる。なお、溝115aと突起100eはバヨネット結合を構成するように設けられている。
【0073】
図12は、本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図12に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置130によって行われる。制御装置130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置130は、焼成室30の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置130には、時間計測機能が備えられており、パンの製造工程における時間的な制御が可能となっている。
【0074】
制御装置130には、上述の操作部20と、焼成室30の温度を検知する温度センサ15と、上述のマイクロスイッチ120と、混練モータ駆動回路131と、粉砕モータ駆動回路132と、ヒータ駆動回路133と、ソレノイド駆動回路134と、が電気的に接続されている。
【0075】
混練モータ駆動回路131は、制御装置130からの指令の下で混練モータ50の駆動を制御するための回路である。また、粉砕モータ駆動回路132は、制御装置130からの指令の下で粉砕モータ60の駆動を制御するための回路である。ヒータ駆動回路133は、制御装置130からの指令の下でシーズヒータ31の動作を制御するための回路である。ソレノイド駆動回路134は、制御装置130からの指令の下でクラッチ56(図3参照)の状態を切り替えるソレノイド73(図3参照)の駆動を制御するための回路である。
【0076】
制御装置130は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、混練モータ駆動回路131を介して混練モータ50による混練ブレード102及び補完混練ブレード103の回転の制御、粉砕モータ駆動回路132を介して粉砕モータ60による粉砕ブレード90の回転の制御、ヒータ駆動回路133を介してシーズヒータ31による加熱動作の制御、ソレノイド駆動回路134を介してソレノイド73によるクラッチ56の切替制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
【0077】
また、制御装置130は、混練モータ50及び粉砕モータ60を駆動する前に、マイクロスイッチ(クラッチ状態検知部)120から得られる情報に基づいてクラッチ56の状態(動力伝達を行う状態か、動力遮断を行う状態か)を確認する。そして、各モータ50、60を駆動するに際して、クラッチ56の状態が適切であると判断される場合には、各モータ50、60の駆動をそのまま開始させる。一方、各モータ50、60を駆動するに際して、クラッチ56の状態が不適切であると判断される場合には、クラッチ56の状態を切り替えるようにソレノイド73を駆動させ、クラッチ56の状態を適切とした上で、各モータ50、60の駆動を開始させる。
【0078】
このため、本実施形態の自動製パン器1では、クラッチ56が不適切な状態のまま、いきなり各モータ50、60が回転を開始することがなく、自動製パン器1に故障等の不都合な事態が生じにくい。
【0079】
なお、本実施形態の自動製パン器1では、混練モータ50を駆動する場合と、粉砕モータ60を駆動する場合とのいずれの場合にも、クラッチ56の状態が適切か否かを事前に判断した上で、モータを駆動させるようになっている。しかし、これに限らず、粉砕モータ60を駆動する場合にのみ、クラッチ56の状態が適切か否かの事前判断を行う構成としても構わない。この場合、粉砕モータ60を駆動する場合に生じる危険性がある上述のモータ破損を避けることが可能である。
【0080】
また、本実施形態の自動製パン器1では、クラッチ56が動力遮断を行う状態である場合に、マイクロスイッチ120がオン状態となるように構成している。しかし、この構成に限らず、クラッチ56が動力伝達を行う状態である場合に、マイクロスイッチ120がオン状態となるように構成してもよい。この場合にも、本実施形態の場合と同様に、制御装置130は、マイクロスイッチ120のオン、オフ状態からクラッチ56の状態が、動力伝達を行う状態か、動力遮断を行う状態かを判断することができる。
【0081】
ただし、本実施形態のように構成するのが好ましい。例えばマイクロスイッチ120等に故障が生じて、本来、マイクロスイッチ120がオン状態であるにもかかわらず、オン状態を示す信号が制御装置130に送られずに、マイクロスイッチ120がオフ状態であると判断される場合が起こり得る。
【0082】
ここで、本実施形態の場合と異なり、クラッチ56が動力伝達を行う状態である場合にマイクロスイッチ120がオン状態となるように構成する場合を考える。この構成では、上記マイクロスイッチ120等の故障が生じた場合にクラッチ56が動力伝達を行う状態であるにもかかわらず、制御装置130はクラッチ56が動力遮断を行う状態であると判断してしまう場合が起こる。この判断にしたがって、粉砕モータ60の駆動が開始されてしまうと、上述のように粉砕モータ60に大きな負荷が加わってモータ破損が生じてしまう可能性がある。
【0083】
一方、本実施形態の場合、上記マイクロスイッチ120等の故障が生じた場合にクラッチ56が動力遮断を行う状態であるにもかかわらず、制御装置130はクラッチ56が動力伝達を行う状態であると判断する場合が起こる。この判断にしたがって、混練モータ60の駆動が開始された場合に、混練ブレード102及び補完混練ブレード103が回転しないといった事態は生じるが、上記モータの破損といった事態を避けることができるので好ましい構成と言える。
(自動製パン器の動作)
次に、以上のように構成される自動製パン器1によってパンを製造する場合の自動製パン器1の動作について説明する。ここでは、自動製パン器1によって、米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を例に自動製パン器1の動作を説明する。
【0084】
米粒を出発原料に用いる場合には、米粒用製パンコースが実行される。図13は自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図13に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0085】
米粒用製パンコースを実行するにあたって、ユーザは、パン容器80のブレード回転軸82に、粉砕ブレード90と、混練ブレード102及び補完混練ブレード103付きのカバー100とを取り付ける。そして、ユーザは、米粒と水をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器80に入れる。なお、ここでは、米粒と水とを混ぜることにしているが、単なる水の代わりに、例えば、だし汁のような味成分を有する液体、果汁、アルコールを含有する液体等としてもよい。この後、ユーザは、米粒と水とを投入したパン容器80を焼成室30に入れて蓋40を閉じ、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御装置120によって米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースが開始される。
【0086】
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置130の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、米粒と水との混合物が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では50分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0087】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制できる。また、浸漬時間を短時間とするために、浸漬工程時にシーズヒータ31に通電して焼成室30の温度を高めるようにしてもよい。
【0088】
また、浸漬工程においては、その初期段階で粉砕ブレード90を回転させ、その後も断続的に粉砕ブレード90を回転させるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率を高められる。
【0089】
上記所定時間が経過すると、制御装置130の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。この粉砕工程では、米粒と水との混合物の中で粉砕ブレード90が高速回転される。具体的には、制御装置130は、粉砕モータ60を制御してブレード回転軸82を逆方向回転させ、米粒と水との混合物の中で粉砕ブレード90の回転を開始させる。
【0090】
なお、制御装置130は、粉砕モータ60を駆動させる前に、マイクロスイッチ120から得られる情報によって、クラッチ56(例えば図3参照)が動力遮断を行う状態であるか否かを確認する(本実施形態ではマイクロスイッチ120がオン状態の場合に動力遮断を行う状態であると判断される)。そして、クラッチ56が動力遮断を行う状態であると判断される場合には、そのまま粉砕モータ60の駆動を開始させる。一方、クラッチ56が動力遮断を行う状態でない(動力伝達を行う状態である)と判断される場合には、制御装置130は、ソレノイド73を駆動させて、クラッチ56が動力遮断を行うように切替動作を実行させる。そして、制御装置130は、クラッチ56が動力遮断を行う状態となったことを確認して、粉砕モータ60の駆動を開始させる。
【0091】
粉砕ブレード90を回転させるために、ブレード回転軸82が逆方向回転された場合、カバー100もブレード回転軸82の回転に追随して回転を開始するが、次のような動作によってカバー100の回転はすぐに阻止される。粉砕ブレード90を回転させるためのブレード回転軸82の回転に伴うカバー100の回転方向は、図9において時計方向であり、混練ブレード102は、それまで折り畳み姿勢(図9に示す姿勢)であった場合には、米粒と水の混合物から受ける抵抗で開き姿勢(図10に示す姿勢)に転じる。混練ブレード102が開き姿勢になると、カバー用クラッチ104は、第2係合体104bが第1係合体104aの回転軌道から逸脱するために、ブレード回転軸82とカバー100の連結を切り離す。同時に、開き姿勢になった混練ブレード102は図10に示すように、パン容器80の内側壁に当るために、カバー100の回転は阻止される。
【0092】
粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕工程における粉砕ブレード90の回転は本実施形態では間欠回転とされる。この間欠回転は、例えば30秒回転して5分間停止するというサイクルで行われ、このサイクルが10回繰り返される。なお、最後のサイクルでは、5分間の停止は行わない。粉砕ブレード90の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器80内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0093】
粉砕工程においては、粉砕がカバー100内で行われるから、米粒がパン容器80の外に飛び散る可能性が低い。また、回転停止状態にあるガード110の開口部114からカバー100内に入る米粒は、静止したスポーク113と回転する粉砕ブレード90の間でせん断されるので、効率良く粉砕できる。また、カバー100に設けられるリブ106によって、米粒と水とからなる混合物の流動(粉砕ブレード90の回転と同方向の流動である)が抑制されるので、効率良く粉砕できる。
【0094】
また、粉砕された米粒と水との混合物はリブ106によって窓105の方向に誘導されて、窓105からカバー100の外に排出される。リブ106は、それに向かって押し寄せる混合物に対向する側が凸となるように湾曲しているので、混合物はリブ106の表面に対流しにくく、スムーズに窓105の方へ流れていく。更に、カバー100内部から混合物が排出されるのと入れ替わりに、凹部81の上の空間に存在していた混合物が凹部81に入り、凹部81からガード110の開口部114を通ってカバー100に入いる。このような循環をさせつつ粉砕ブレード90による粉砕を行うので、効率良く粉砕できる。
【0095】
なお、自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程の終了を、粉砕モータ60の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に判断する構成等としても構わない。
【0096】
粉砕工程が終了すると、続いて練り工程が行われる。なお、この練り工程は、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で行う必要がある。このため、所定の温度範囲となった時点で練り工程が開始されるのが好ましい。また、練り工程の開始時には、グルテンや、食塩、砂糖、ショートニングといった調味料がそれぞれ所定量ずつ、パン容器80に投入される。この投入は、例えばユーザの手によって投入するようにしてもよいし、自動投入装置を設けてユーザの手を煩わせることなくそれらを投入するようにしてもよい。
【0097】
なお、グルテンは、パン原料として必須のものではない。このため、好みに応じてパン原料に加えるか否かを判断してよい。また、グルテンの代わりに、或いは、グルテンと共に小麦粉や増粘安定剤(例えばグアガム)を投入するようにしても構わない。また、食塩、砂糖、ショートニングといった調味料は、ユーザの好みで、その量を適宜変更して構わない。
【0098】
制御装置130は、混練モータ50を駆動させる前に、マイクロスイッチ120から得られる情報によって、クラッチ56(例えば図3参照)が動力伝達を行う状態であるか否かを確認する(本実施形態ではマイクロスイッチ120がオフ状態の場合に動力伝達を行う状態であると判断される)。そして、クラッチ56が動力伝達を行う状態であると判断される場合には、そのまま混練モータ60の駆動を開始させる。一方、クラッチ56が動力伝達を行う状態でない(動力遮断を行う状態である)と判断される場合(本製パンコースでは、通常、こちらである)には、制御装置130は、ソレノイド73を駆動させて、クラッチ56が動力伝達を行うように切替動作を実行させる。そして、制御装置130は、クラッチ56が動力伝達を行う状態となったことを確認して、混練モータ60の駆動を開始させる。
【0099】
制御装置130は混練モータ50を制御してブレード回転軸82を正方向回転させる。ブレード回転軸82を正方向回転させると、粉砕ブレード90も正方向に回転し、粉砕ブレード90の周囲のパン原料が正方向に流動する。それにつられてカバー100が正方向(図10では反時計方向)に動くと、混練ブレード102は流動していないパン原料から抵抗を受けて、開き姿勢(図10参照)から折り畳み姿勢(図9参照)へと角度を変えて行く。第2係合体104bが第1係合体104aの回転軌道に干渉する角度となると、カバー用クラッチ104の連結が生じ、カバー100はブレード回転軸82によって本格的に駆動される態勢に入る。カバー100と折り畳み姿勢になった混練ブレード102は、ブレード回転軸82と一体となって正方向に回転する。
【0100】
上述のように、混練ブレード102が折り畳み姿勢になると、混練ブレード102の延長上に補完混練ブレード103が並ぶために、混練ブレード102があたかも大型化したかのようになって、パン原料は力強く押される。このため、生地の練り上げをしっかり行える。
【0101】
練り工程における混練ブレード102及び補完混練ブレード103の回転は、終始連続回転としてもよいが、自動製パン器1では、練り工程の初期の段階は間欠回転とし、後半を連続回転としている。本実施形態では、初期に行う間欠回転が終了した段階で、イースト(例えばドライイースト)を投入するようになっている。このイーストは、ユーザが投入するようにしてもよいし、自動投入するようにしてもよい。なお、イーストをグルテン等と一緒に投入しないのは、イースト(ドライイースト)と水とが直接接触するのをなるべく避けるためである。ただし、場合によっては、イーストをグルテン等と同時に投入してもよい。
【0102】
混練ブレード102及び補完混練ブレード103の回転によってパン原料は混練され、所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード102及び補完混練ブレード103が生地を振り回してパン容器80の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード102及び補完混練ブレード103の回転によりカバー100も回転する。カバー100が回転すると、カバー100に形成されるリブ106も回転するために、カバー100内のパン原料は速やかに窓105から排出され、混練ブレード102及び補完混練ブレード103が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0103】
なお、練り工程においては、カバー100と共にガード110も正方向に回転する。ガード110のスポーク113は、正方向回転時、ガード110の中心側が先行しガード110の外周側が後続する形状とされている。このために、ガード110は、正方向に回転することにより、カバー100内外のパン原料をスポーク113で外側に押しやる。これにより、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0104】
また、ガード110の柱115は、ガード110が正方向に回転するときに回転方向前面となる側面115b(図11参照)が上向きに傾斜しているから、混練時、カバー100の周囲のパン原料が柱115の前面で上方に跳ね上げられる。このために、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0105】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(本実施形態では10分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば、混練モータ50の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に、練り工程の終了時点を判断する構成等としても構わない。
【0106】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で投入するようにすればよい。
【0107】
練り工程が終了すると、制御装置130の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)に維持する。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では60分)放置される。
【0108】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード102及び補完混練ブレード103を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0109】
発酵工程が終了すると、制御装置130の指令によって焼成工程が開始される。制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させ、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼くように制御する。焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋40を開けてパン容器80を取り出して、パンの製造を完了させる。
【0110】
なお、パンの底には混練ブレード102及び補完混練ブレード103の焼き跡が残るが、カバー100とガード110は凹部81の中に収容された状態であるために、それらがパンの底に大きな焼き跡を残すようなことはない。
(その他)
以上に示した自動製パン器の実施形態は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0111】
例えば、以上に示した実施形態では、第1の動力伝達部に含まれるクラッチ56を噛み合いクラッチとした。しかし、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、第1の動力伝達部に含まれるクラッチは、例えば電磁クラッチ等、他の構成のクラッチとしてもよい。ただし、本構成のように、噛み合いクラッチとした方が製造コストの面で有利である。また、本構成のように動力伝達部にベルトを用いる構成の場合、回転軸が軸ずれを起こしやすいために、高精度が要求される電磁クラッチよりも、噛み合いクラッチとするのが好ましい。
【0112】
また、以上に示した実施形態では、第1の動力伝達部に含まれるクラッチ56の状態を検知するクラッチ状態検知部をマイクロスイッチ120によって構成した。しかし、この構成に限定される趣旨ではなく、例えば、フォトインタラプタ等の光センサによってクラッチ状態検知部を構成してもよい。
【0113】
また、以上においては、自動製パン器によって、米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を示したが、本実施形態の自動製パン器は、例えば小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造することもできる。なお、この場合には、粉砕ブレード90は不要であるために、以上に示したのとは異なるパン容器(混練ブレードのみがブレード回転軸に取り付けられる従来型のパン容器)を用いるようにしても構わない。
【0114】
また、以上に示した実施形態においては、米粒を出発原料に用いる場合を例に、自動製パン器の構成及び動作を説明した。しかし、本発明の自動製パン器は、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の米粒以外の穀物粒を出発原料に使用する場合にも適用可能である。
【0115】
また、以上に示した米粒用製パンコースの製造フローは例示であり、他の製造フローとしてもよい。一例を挙げると、粉砕工程の後に、粉砕粉に水を吸水させるために、再度浸漬工程を行ってから練り工程を行う構成等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0117】
1 自動製パン器
11 原動軸
12 第1の原動軸用プーリ(第1の動力伝達部の一部)
13 第2の原動軸用プーリ(第2の動力伝達部の一部)
30 焼成室
50 混練モータ(第1のモータ)
51 混練モータの出力軸
52 第1のプーリ(第1の動力伝達部の一部)
53 第1のベルト(第1の動力伝達部の一部)
54 第1の回転軸(第1の動力伝達部の一部)
55 第2のプーリ(第1の動力伝達部の一部)
56 クラッチ(第1の動力伝達部の一部)
57 第2の回転軸(第1の動力伝達部の一部)
58 第3のプーリ(第1の動力伝達部の一部)
59 第2のベルト(第1の動力伝達部の一部)
60 粉砕モータ(第2のモータ)
61 粉砕モータの出力軸
62 第4のプーリ(第2の動力伝達部の一部)
63 第3のベルト(第2の動力伝達部の一部)
72 アーム部
73 ソレノイド(切替部)
80 パン容器
82 ブレード回転軸
90 粉砕ブレード
102 混練ブレード
103 補完混練ブレード
120 マイクロスイッチ(クラッチ状態検知部)
130 制御装置(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン原料が投入されるパン容器と、
前記パン容器の底部に回転可能に取り付けられると共に、穀物粒を粉砕する粉砕ブレードとパン生地を練り上げる混練ブレードとを支持するブレード回転軸と、
前記パン容器が収容される焼成室と、
前記焼成室に前記パン容器が収容された状態で、前記ブレード回転軸に動力伝達可能に連結される原動軸と、
前記混練ブレードを低速回転するために設けられる第1のモータと、
前記粉砕ブレードを高速回転するために設けられる第2のモータと、
動力伝達と動力遮断を行うクラッチを含み、前記クラッチが動力伝達を行う場合に、前記第1のモータの出力軸と前記原動軸とを動力伝達可能に連結する第1の動力伝達部と、
前記第2のモータの出力軸と前記原動軸とを常時動力伝達可能に連結する第2の動力伝達部と、
前記クラッチが動力伝達を行う状態であるか、動力遮断を行う状態であるかを検知するクラッチ状態検知部と、
を備えることを特徴とする自動製パン器。
【請求項2】
前記第1のモータを駆動する場合と、前記第2のモータを駆動する場合とのうち、少なくとも前記第2のモータを駆動する場合には、前記クラッチ状態検知部から得られる情報に基づいて前記クラッチの状態がモータの駆動を開始するにあたって適切か否かを判断し、前記クラッチの状態が適切である場合には前記モータの駆動をそのまま開始させ、前記クラッチの状態が不適切である場合には、前記クラッチの状態を適切な状態へと変更した後に前記モータの駆動を開始させるように制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項3】
前記クラッチは、前記原動軸の軸方向と略平行な方向に可動する第1のクラッチ部材と、固定配置される第2のクラッチ部材とを有する噛み合いクラッチであって、前記第1のクラッチ部材から延出するアーム部の前記軸方向の位置を切り替える切替部によって動力伝達を行う状態と動力遮断を行う状態とが切り替えられるようになっており、
前記クラッチ状態検知部は、前記アーム部の位置に基づいて前記クラッチが動力伝達を行う状態であるか、動力遮断を行う状態であるかを検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記クラッチ状態検知部は、前記アーム部の位置によってオンオフ状態が切り替わるスイッチであることを特徴とする請求項3に記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記スイッチは、前記クラッチが動力遮断を行う状態である場合にオン状態となることを特徴とする請求項4に記載の自動製パン器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−167385(P2011−167385A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34632(P2010−34632)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】