説明

自動製パン機

【課題】製粉工程を経ることなく穀物粒からパンを製造するのに便利な自動製パン機を提供する。
【解決手段】自動製パン機1の本体10の内部には、正面から見て左側に焼成室40、右側にミルユニット60が設けられている。焼成室40に入れられるパン容器50の内部には混練ブレード52が配置され、ミルユニット60の粉砕カップ61の内部には粉砕ブレード63が配置される。混練ブレード52と粉砕ブレード63の回転は制御装置80で制御される。粉砕カップ61に穀物粒と液体を入れて粉砕ブレード63を回転させると、粉砕穀物粒と液体の混合物が生まれる。その混合物を生地原料としてパン容器50に入れ、混練工程、発酵工程、焼成工程を順次遂行することにより、パンが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン機に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン機は、製パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に入れ、パン容器内の製パン原料を混練ブレードで混練して捏ね上げ、発酵工程を経た後、パン容器をそのままパン焼き型としてパンを焼き上げる仕組みのものが一般的である。特許文献1に自動製パン機の一例を見ることができる。
【0003】
製パン原料にレーズンやナッツ等の具材を混ぜ、具材入りパンを焼くこともある。特許文献2には、レーズン、ナッツ類、チーズ等の製パン副材料を自動的に投入する手段を備えた自動製パン機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−116526号公報
【特許文献2】特許第3191645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パンを製造する場合、これまでは、小麦や米などの穀物を製粉した粉や、それに各種補助原料を混ぜたミックス粉を入手するところから始めなければならなかった。手元に穀物粒(典型的なものは米)があっても、それから直接パンを製造することは困難であった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、製粉工程を経ることなく穀物粒からパンを製造するのに便利な自動製パン機を提供し、パン製造をより身近なものにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、製パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に受け入れ、前記製パン原料の混練工程、発酵工程、及び焼成工程を順次遂行する自動製パン機において、前記本体内に、前記焼成室と並ぶ形で、食品粉砕用のミルユニットを配置すると共に、前記パン容器内の混練ブレード及び前記ミルユニット内の粉砕ブレードの回転を制御する制御装置を備えることを特徴としている。
【0008】
この構成によると、穀物粒からパンを製造するときは、ミルユニットで穀物粒を粉砕し、それをパン容器に移してパンを焼くことができるから、穀物粒からのパン製造を容易に実施することができる。また、粉砕ブレードの回転と混練ブレードの回転を互いに関連づけて制御することが可能であるから、穀物粒を粉砕する段階と、粉砕後の穀物粉を混練する段階において、穀物粒の種類や量に適した回転を粉砕ブレードと混練ブレードに与え、パンの品質を向上させることができる。ミルユニットは具材の細片化に用いることもできるので、粒の大きい具材から粒の細かい具材まで、様々な具材を入れたパンを焼くことができる。
【0009】
また本発明は、上記構成の自動製パン機において、前記ミルユニットの粉砕カップは、前記本体から着脱可能であることを特徴としている。
【0010】
この構成によると、粉砕した穀物粒や細片化した具材を容易にパン容器に移すことができ、粉砕カップの内部の洗浄も簡単に行える。
【0011】
また本発明は、上記構成の自動製パン機において、前記本体には、前記焼成室と前記ミルユニットを同時に覆う蓋が設けられていることを特徴としている。
【0012】
この構成によると、自動製パン機の外観がすっきりしたものになる。
【0013】
また本発明は、上記構成の自動製パン機において、前記蓋には、前記焼成室側の空間と前記ミルユニット側の空間を仕切る遮断壁が設けられていることを特徴としている。
【0014】
この構成によると、焼成室側の熱気をミルユニット側に逃がさないようにして、焼成の熱効率を高めることができる。また、焼成室でパンの焼成が行われている間、ミルユニットにおいては熱気の影響を受けることなく粉砕を同時進行させることができる。
【0015】
また本発明は、上記構成の自動製パン機において、前記ミルユニットの粉砕カップにキャップが設けられていることを特徴としている。
【0016】
この構成によると、粉砕カップの内容物をカップ外に飛び散らせることなく粉砕作業を進めることができる。
【0017】
また本発明は、上記構成の自動製パン機において、前記混練ブレードと前記粉砕ブレードが、共通のモータで駆動されることを特徴としている。
【0018】
この構成によると、少ない数のモータで自動製パン機の動作をまかない、部品コストを抑制することができる。
【0019】
また本発明は、上記構成の自動製パン機において、前記混練ブレードと前記粉砕ブレードが、別個のモータで駆動されることを特徴としている。
【0020】
この構成によると、混練ブレードと粉砕ブレードを互いの動作と無関係に駆動することができる。また、混練ブレードと粉砕ブレードにそれぞれ最適回転数を与えることが容易になる。
【0021】
また本発明は、上記構成の自動製パン機において、前記焼成室とミルユニットは正面から見て左右に並び、前記本体の正面側に操作部が配置されていることを特徴としている。
【0022】
この構成によると、パン容器もミルユニットも等しく取り扱いやすい自動製パン機を提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、穀物粒からのパン製造を容易に実施することができる。また、粉砕ブレードの回転と混練ブレードの回転を互いに関連づけて制御し、穀物粒を粉砕する段階と、粉砕後の穀物粉を混練する段階において、穀物粒の種類や量に適した回転を粉砕ブレードと混練ブレードに与え、パンの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動製パン機の垂直断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る自動製パン機の垂直断面図で、図1と直角の方向に断面したものである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る自動製パン機の上面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る自動製パン機の制御ブロック図である。
【図5】第1態様パン製造工程の全体フローチャートである。
【図6】第1態様パン製造工程の粉砕前含浸工程のフローチャートである。
【図7】第1態様パン製造工程の粉砕工程のフローチャートである。
【図8】第1態様パン製造工程の練り工程のフローチャートである。
【図9】第1態様パン製造工程の発酵工程のフローチャートである。
【図10】第1態様パン製造工程の焼成工程のフローチャートである。
【図11】第2態様パン製造工程の全体フローチャートである。
【図12】第2態様パン製造工程の粉砕後含浸工程のフローチャートである。
【図13】第3態様パン製造工程の全体フローチャートである。
【図14】本発明の第2実施形態に係る自動製パン機の垂直断面図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る自動製パン機の垂直断面図で、図1と直角の方向に断面したものである。
【図16】本発明の第2実施形態に係る自動製パン機の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の第1実施形態を、図1から図13までの図面を参照しつつ説明する。図1において、図の左側と右側は自動製パン機1の左側と右側に一致する。図2では図の右側が自動製パン機1の正面(前面)側、図の左側が自動製パン機1の背面(後面)側となる。図3では図の下側が自動製パン機1の正面(前面)側、図の上側が自動製パン機1の背面(後面)側となる。
【0026】
自動製パン機1は箱形の本体10を有する。本体10は合成樹脂製の外殻を備え、その左側面と右側面に両端を連結したコ字形の合成樹脂製ハンドル11(図3参照)を持って運搬することができる。
【0027】
本体10の上面前部には操作部20が形成される。操作部20には、パンの種類(小麦粉パン、米粉パン、具材入りパンなど)の選択キー、調理内容の選択キー、タイマーキー、スタートキー、取り消しキーなどといった操作キー群21と、設定された調理内容やタイマー予約時刻などを表示する表示部22が設けられている。表示部22は液晶表示パネルからなる。
【0028】
操作部20から後ろの本体上面は合成樹脂製の蓋30で覆われる。蓋30は図示しない蝶番軸で本体10の背面側の縁に取り付けられており、その蝶番軸を支点として垂直面内で回動する。
【0029】
本体10には、内部左方に焼成室40が設けられる。焼成室40は板金製で、上面が開口しており、ここからパン容器50が入れられる。焼成室40は水平断面矩形の周側壁40aと底壁40bを備え、本体10内に設置された板金製の基台12に底壁40bを載置して支持される。
【0030】
基台12には、焼成室40の中心にあたる箇所にアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなるパン容器支持部13が固定されている。パン容器支持部13の内部は、基台12に形成された開口部と、焼成室40の底壁40bに形成された開口部を通じて、焼成室40の内部に露出している。
【0031】
パン容器支持部13は、パン容器50の底面に固定された筒状の台座51を受け入れてパン容器50を支える。台座51もアルミニウム合金のダイキャスト成型品である。パン容器支持部13の中心には垂直な回転軸14が支持されている。回転軸14の下端はパン容器支持部13の下面から突き出しており、ここにはプーリ15が固定されている。
【0032】
パン容器50は板金製で、バケツのような形状をしており、口縁部には手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。図3に示すように、パン容器50の水平断面は四隅を丸めた矩形であり、その内面には、対向する長辺の中央にあたる箇所に、垂直方向に延びるうね状の突部50aが形成されている。
【0033】
パン容器50の底部中心には混練ブレード52が配置されている。混練ブレード52は、パン容器50の底部中心にシール対策を施して支持された垂直な回転軸53の上端の非円形断面部に、単なるはめ込みで取り付けられており、工具を用いることなく着脱することができる。このため、異なる種類の混練ブレード52に容易に交換可能である。
【0034】
回転軸53は回転軸14に連結され、回転軸14より動力を伝達されるものであるが、その動力伝達手段としては台座51に囲い込まれるカップリング54が用いられる。すなわち、カップリング54を構成する2部材のうち、一方は回転軸53の下端に固定され、他方は回転軸14の上端に固定される。
【0035】
台座51の外周面には図示しない突起が形成され、基台12の開口部周縁にはこの突起を通す図示しない切り欠きが形成される。この突起と切り欠きで周知のバヨネット構造を構成する。すなわち、パン容器50を突起と切り欠きが一致する角度で下ろし、突起が切り欠きを通り抜けた後、パン容器50を水平方向にひねると突起が基台12の開口部下縁に係合し、パン容器50が上方に抜けなくなるようにする。この操作で、カップリング54の連結も同時に達成されるようにする。パン容器50の取り付け時ひねり方向は混練ブレード52の回転方向に一致させ、混練ブレード52が回転してもパン容器50が外れないようにしておく。
【0036】
焼成室40の内部に配置された加熱装置41がパン容器50を包囲し、製パン原料を加熱する。加熱装置41はシーズヒータにより構成される。
【0037】
本体10の内部には、焼成室40の右側に、焼成室40と並ぶ形で、食品粉砕用のミルユニット60が設けられる。自動製パン機1を正面から見ると、焼成室40とミルユニット60が左右に並び、その前に操作部20が配置されていることになり、パン容器50もミルユニット60も等しく取り扱いやすい。
【0038】
焼成室40とミルユニット60の間において、本体10の内部には隔壁16が形成され、蓋30の内面には遮断壁31が形成されている。蓋30を閉じると隔壁16と遮断壁31が突き合わさり、焼成室40側の空間とミルユニット60側の空間が仕切られる。これにより、焼成室40側の熱気をミルユニット60側に逃がさないようにして、焼成の熱効率を高めることができる。また、焼成室40でパンの焼成が行われている間、ミルユニット60においては熱気の影響を受けることなく粉砕を同時進行させることができる。
【0039】
ミルユニット60の主体をなすものは、本体10に上面より着脱自在にはめ込まれる粉砕カップ61である。図3に示すように、粉砕カップ61の水平断面は円形であり、その内面には、垂直方向に延びるうね状の突部61aが90°間隔で形成されている。粉砕カップ61には、その上面開口を液密に閉ざすキャップ62が設けられる。粉砕カップ61とキャップ62は合成樹脂または金属で成形することができる。
【0040】
粉砕カップ61の底部中心には粉砕ブレード63が配置される。粉砕ブレード63は、粉砕カップ61の底部中心にシール対策を施して支持された垂直な回転軸64の上端に固定されている。
【0041】
本体10の内部には、粉砕カップ61の真下にあたる箇所にビーム17が掛け渡され、
このビーム17に垂直な回転軸18が支持されている。回転軸18は回転軸64にカップリング65で連結する。回転軸18の下端にはプーリ19が固定されている。
【0042】
基台12には、回転軸14と回転軸18の両方を回転させるモータ70が取り付けられる。モータ70は竪軸であり、電動式のクラッチを内蔵している。図4に示すように、クラッチには回転軸14用のクラッチ71と回転軸18用のクラッチ72があり、クラッチ71の出力軸73はモータ70のケース下面より下向きに突出し、クラッチ72の出力軸74はモータ70のケース上面より上向きに突出する。出力軸73には回転軸14のプーリ15にベルト75で連結するプーリ76が固定されており、出力軸74には回転軸18のプーリ19にベルト77で連結するプーリ78が固定されている。
【0043】
プーリ76はプーリ15を減速回転させ、プーリ78はプーリ19を増速回転させるものであり、これにより、回転軸14に求められる回転と、回転軸18に求められる、回転軸14よりも高速の回転を、共通のモータ70で得ることができる。このように最小限のモータで動作をまかなうことにより、部品コストを抑制することができる。
【0044】
蓋30は焼成室40とミルユニット60を同時に覆うものであり、これにより自動製パン機1は外観がすっきりしたものになる。蓋30の中で、遮断壁31より左側の部分、すなわち焼成室40を覆う部分には天井32が設けられる。天井32は板金をドーム状に成型したものであり、その頂部は蓋30に設けられた覗き窓33につながっている。覗き窓33には耐熱ガラスが嵌め込まれる。
【0045】
自動製パン機1の動作制御は、図4に示す制御装置80によって行われる。制御装置80は本体10内の適所(焼成室40の熱の影響を受けにくい箇所が望ましい)に配置された回路基板により構成され、これまで述べてきた操作部20、加熱装置41、クラッチ71、クラッチ72の他、モータ70のモータドライバ79と、温度センサ81が接続される。温度センサ81は焼成室40内に配置され、焼成室40の温度を検知する。82は各構成要素に電力を供給する商用電源である。
【0046】
続いて、自動製パン機1を用いて穀物粒からパンを製造する工程を、図5から図13までの図を参照しつつ説明する。図5から図10までの図に示すのがパン製造工程の第1態様である。
【0047】
図5は第1態様パン製造工程の全体フローチャートである。図5では、粉砕前含浸工程#10、粉砕工程#20、混練工程#30、発酵工程#40、焼成工程#50の順で工程が進行する。続いて、各工程の内容を説明する。
【0048】
図6に示す粉砕前含浸工程#10では、まずステップ#11において、使用者が蓋30を開け、キャップ62を外し、計量した穀物粒を粉砕カップ61に入れる。穀物粒としては米粒が最も入手しやすいが、それ以外の穀物、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこしなどの粒も利用可能である。
【0049】
ステップ#12では使用者が液体を計量し、所定量を粉砕カップ61に入れる。液体として一般的なのは水であるが、だし汁のような味成分を有する液体でもよく、果汁でもよい。アルコールを含有していてもよい。なおステップ#11とステップ#12は順序が入れ替わっても構わない。
【0050】
ステップ#13では穀物粒と液体の混合物を粉砕カップ61内で静置し、穀物粒に液体を含浸させる。キャップ62と蓋30は閉じておくのがよい。一般的に液体温度が高くなるほど含浸が促進されるので、粉砕カップ61を加熱する手段を設けておいてもよい。
【0051】
ステップ#14では穀物粒と液体を混合してからどれだけ時間が経過したかを制御装置80がチェックする。所定時間が経過したら粉砕前含浸工程#10は終了する。このことは表示部22における表示や、音声などで使用者に報知される。
【0052】
粉砕前含浸工程#10に続き、図7に示す粉砕工程#20が遂行される。使用者が操作部20を通じ粉砕作業データ(穀物粒の種類や量、これから焼くパンの種類など)を入力し、スタートキーを押すと、粉砕が開始される。
【0053】
ステップ#21では、制御装置80がモータ70を駆動すると共にクラッチ72を接続状態にし、出力軸74を回転させる。すると、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレード63が回転を開始する。粉砕ブレード63による粉砕は、穀物粒に液体が浸み込んだ状態で行われるから、穀物粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕カップ61の内面に形成された突部61aが穀物粒と液体の混合物の流動を抑制し、粉砕を助ける。キャップ62が粉砕カップ61の上面開口を閉ざしているので、穀物粒や液体が粉砕カップ61の外に飛び散って蓋30の内面に付着したりすることはない。
【0054】
ステップ#22では、所望の粉砕穀物粒を得るために設定通りの粉砕パターン(粉砕ブレードを連続回転させるか、停止期間を織り交ぜて断続回転させるか、断続回転させる場合、どのようにインターバルをとるか、回転時間の長さをどのようにするか等)が完遂されたかどうかを制御装置80がチェックする。設定通りの粉砕パターンが完遂されたらステップ#23に進んで粉砕ブレード63の回転を終了し、粉砕工程#20は終了する。
【0055】
以上の説明では、粉砕前含浸工程#10の後、使用者の操作で粉砕工程#20が開始されるものとしたが、使用者が粉砕前含浸工程#10の前か、その途中で粉砕作業データを入力しておけば、粉砕前含浸工程#10の終了後、自動的に粉砕工程#20が開始されるように構成してもよい。
【0056】
粉砕工程#20に続き、図8に示す混練工程#30が遂行される。ステップ#31で、使用者は蓋30を開けて粉砕カップ61を取り出し、その中に入っている、粉砕工程#20で生じた粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料を、パン容器50に移す。この時点の生地原料はペースト状であったり、スラリー状であったりする。なお本明細書では、混練工程#30の開始時点のものを「生地原料」と呼称し、混練が進行して目的とする生地の状態に近づいたものは、半完成状態であっても「生地」と呼称することとする。
【0057】
ステップ#32では使用者が生地原料に所定量のグルテンを投入する。必要に応じ、食塩、砂糖、ショートニングといった調味材料も投入する。
【0058】
使用者は、ステップ#32に前後して、操作部20よりパンの種類や調理内容の入力を行う。準備が整ったところで使用者がスタートキーを押すと、混練工程#30から発酵工程#40、さらに焼成工程#50へと自動的につながって行く製パン作業が開始される。
【0059】
ステップ#33では、制御装置80はモータ70を駆動すると共にクラッチ71を接続状態にし、出力軸73を回転させる。すると、生地原料の中で混練ブレード52が回転を開始する。また制御部80は、加熱装置41に通電し、焼成室40の温度を上げる。混練ブレード52が回転するに従い生地原料は混練され、所定の弾力を備える、一つにつながった生地(dough)に練り上げられて行く。混練ブレード52が生地を振り回してパン容器50の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。パン容器50の内壁に形成された突部50aが「捏ね」を助ける。
【0060】
ステップ#34では混練ブレード52の回転開始以来どれだけ時間が経過したかを制御装置80がチェックする。所定時間が経過したらステップ#35に進む。
【0061】
ステップ#35では使用者が蓋30を開け、生地にイースト菌を投入する。
【0062】
ステップ#36では生地にイースト菌を投入してからどれだけ時間が経過したかを制御装置80がチェックする。所望の生地を得るのに必要な時間が経過したらステップ#37へ進んで混練ブレード52の回転が終了する。この時点で、一つにつながり、所要の弾力を備えた生地が完成している。
【0063】
なおステップ#35で生地に投入するイースト菌はドライイーストでよい。イースト菌の代わりにベーキングパウダーを用いてもよい。
【0064】
混練工程#30に続き、図9に示す発酵工程#40が遂行される。ステップ#41では混練工程30を経た生地が発酵環境に置かれる。すなわち制御装置80は焼成室40を、必要があれば加熱装置41に通電して、発酵が進む温度帯とする。使用者は生地を、必要に応じ形を整えて静置する。
【0065】
ステップ#42では生地を発酵環境に置いてからどれだけ時間が経過したかを制御装置80がチェックする。所定時間が経過したら発酵工程#40は終了する。
【0066】
発酵工程#40に続き、図10に示す焼成工程#50が遂行される。ステップ#51では発酵した生地が焼成環境に置かれる。すなわち制御装置80はパン焼きに必要な電力を加熱装置41に送り、焼成室40の温度をパン焼き温度帯まで上昇させる。
【0067】
ステップ#52では生地を焼成環境に置いてからどれだけ時間が経過したかを制御装置80がチェックする。所定時間が経過したら焼成工程#50は終了する。ここで表示部22における表示または音声により製パン完了の報知がなされるので、使用者は蓋30を開けてパン容器50を取り出す。
【0068】
なお焼成工程#50の間、使用者は覗き窓33からパン容器50の内部を覗き、パンのふくらみ具合や焼き色のつき具合などをチェックすることができる。
【0069】
続いて製パン工程の第2態様を図11と図12に基づき説明する。図11は第2態様パン製造工程の全体フローチャートである。図11では、粉砕工程#20、粉砕後含浸工程#60、練り工程#30、発酵工程#40、焼成工程#50の順で工程が進行する。続いて、図12に基づき粉砕後含浸工程#60の内容を説明する。
【0070】
ステップ#61で、使用者は粉砕工程#20で形成された生地原料をパン容器50に移す。この生地原料は、粉砕前含浸工程を経ていなかったものである。ステップ#62では生地原料をパン容器50内で静置し、粉砕穀物粒に液体を含浸させる。制御装置80は必要に応じ加熱装置41に通電して生地原料を加熱し、含浸を促進する。
【0071】
ステップ#63では静置開始以来どれだけ時間が経過したかを制御装置80がチェックする。所定時間が経過したら粉砕後含浸工程#60は終了する。粉砕後含浸工程#60が終了すれば自動的に混練工程#30に移行する。混練工程#30以降の工程は第1態様と同じである。
【0072】
なお、なお、粉砕後含浸工程#60を粉砕カップ61の中で進行させ、粉砕カップ61からパン容器50に生地原料を移した後、直ちに混練工程#30に入るようにしてもよい。
【0073】
続いて製パン工程の第3態様を図13に基づき説明する。図13は第3態様パン製造工程の全体フローチャートである。ここでは、粉砕工程#20の前に第1態様の粉砕前含浸工程#10を置き、粉砕工程#20の後に第2態様の粉砕後含浸工程60を置いている。混練工程30以降の工程は第1態様と同じである。
【0074】
ミルユニット60は、穀物粒を粉砕するだけでなく、ナッツ類や葉物野菜などの具材の細片化にも用いることができる。このため、粒の細かい具材を入れたパンを焼くことができる。ミルユニット60の粉砕カップ61は本体10から着脱可能なので、粉砕した穀物粒や細片化した具材を容易にパン容器50に移すことができる。粉砕カップ61の内部の洗浄も簡単に行える。ミルユニット60は、パンに混ぜる具材以外の食材や、生薬原料の粉砕にも利用できる。
【0075】
次に、図14から図16に基づき本発明の第2実施形態を説明する。なお第2実施形態の中で第1実施形態と同一または機能が共通する構成要素には第1実施形態で用いたのと同じ符号を付し、説明は省略する。
【0076】
第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、混練ブレード52と粉砕ブレード63が別個のモータで駆動されるということである。すなわち基台12には竪軸のモータ90(図15参照)が取り付けられ、モータ90の出力軸91にはプーリ92が固定され、プーリ92と回転軸14のプーリ15とがベルト93で連結されている。ミルユニット60の側では、本体10内に設けられたビーム94(図14参照)に竪軸のモータ95が取り付けられている。このモータ95の出力軸96に、粉砕ブレード63の回転軸64がカップリング65を介して連結する。図16に示す通り、モータ90にはモータドライバ97が組み合わせられ、モータ95にはモータドライバ98が組み合わせられている。
【0077】
このように構成したことにより、混練ブレード52と粉砕ブレード63を互いの動作と無関係に駆動することができる。また、混練ブレード52と粉砕ブレード63にそれぞれ最適回転数を与えることが容易になる。
【0078】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン機に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 自動製パン機
10 本体
20 操作部
30 蓋
31 遮断壁
40 焼成室
50 パン容器
52 混練ブレード
60 ミルユニット
61 粉砕カップ
62 キャップ
63 粉砕ブレード
70 モータ
80 制御装置
90、95 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に受け入れ、前記製パン原料の混練工程、発酵工程、及び焼成工程を順次遂行する自動製パン機において、
前記本体内に、前記焼成室と並ぶ形で、食品粉砕用のミルユニットを配置すると共に、前記パン容器内の混練ブレード及び前記ミルユニット内の粉砕ブレードの回転を制御する制御装置を備えることを特徴とする自動製パン機。
【請求項2】
前記ミルユニットの粉砕カップは、前記本体から着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の自動製パン機。
【請求項3】
前記本体には、前記焼成室と前記ミルユニットを同時に覆う蓋が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動製パン機。
【請求項4】
前記蓋には、前記焼成室側の空間と前記ミルユニット側の空間を仕切る遮断壁が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動製パン機。
【請求項5】
前記ミルユニットの粉砕カップにキャップが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の自動製パン機。
【請求項6】
前記混練ブレードと前記粉砕ブレードが共通のモータで駆動されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の自動製パン機。
【請求項7】
前記混練ブレードと前記粉砕ブレードが別個のモータで駆動されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の自動製パン機。
【請求項8】
前記焼成室とミルユニットは正面から見て左右に並び、前記本体の正面側に操作部が配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の自動製パン機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−184081(P2010−184081A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31560(P2009−31560)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】