説明

自動販売機

【課題】 移動体の動作上の原点を再検出する場合でも再検出の原点が当初の原点とずれることを防止できる自動販売機を提供する。
【解決手段】 原点検出に際して各移動体2,3が各原点検出位置に向かって移動するときには、該各移動体2,3は各原点検出位置に到達する直前で各付勢部材6,9に接触し該各付勢部材6,9によって付勢された状態下で各原点検出位置に到達して各センサ5,8が作動する。つまり、ホルダ移動機の動力伝達経路に機構で言う所謂「あそび」が存在する場合でも、該「あそび」を前記各付勢部材6,9の付勢力によって片寄せすることができるので、図1に示した範囲AL内の何れか一方の端或いは所定の一箇所で各センサ5,8を作動させて該作動タイミングで各エンコーダ13,14の出力信号の計数値を読み取れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金銭投入及び商品選択に基づき選択商品を購買者に提供する自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機の中には、選択商品を購買者に提供するためのメカニズムとして、所定方向の直線移動を可能とした移動体とモータを駆動源として有する移動体用駆動機構とを備えた自動販売機が存在する。
【0003】
例えば、カップ内で飲料生成を行う自動販売機は、カップ供給機,浄水機,温水生成機,原料供給機,コーヒー抽出機,製氷機,撹拌機等の飲料生成機器の他に、カップホルダをXY座標系で2次元移動可能なホルダ移動機を具備する。この自動販売機は、販売指令に基づいて選択飲料に対応する停止位置及び移動順序を読み出し、該停止位置をカップホルダが所定の順序で間欠移動するようにホルダ移動機を動作して、該間欠移動の過程で所期の飲料生成をカップ内で実施する。
【0004】
前記のホルダ移動機は、X軸移動体と、該X軸移動体をX方向(左右方向)に移動させるためのX軸駆動機構と、カップホルダを有するY軸移動体と、該Y軸移動体をY方向(前後方向)に移動させるためのY軸駆動機構とを備えている。各駆動機構はモータ,歯車減速機及び運動変換手段を有している。運動変換手段は回転運動を直線運動に変換するもので、該運動変換手段にはタイミングベルト及びプーリの組み合わせやボールネジ及びナットの組み合わせ等が利用されている。また、各駆動機構のモータの回転軸には位置検出用のロータリーエンコーダが連結されている。さらに、各飲料生成機器の位置に対応するカップホルダ用の停止位置はXY座標(Xn,Yn)として予めメモリ等に記憶されている。
【0005】
一方、シースルー型と称される自動販売機は、正面から見てマトリクス状に配された複数の商品収納部の他に、所定の商品収納部から商品を受け取るバケットをXZ座標系で2次元移動可能なバケット移動機を具備する。この自動販売機は、販売指令に基づいて選択商品を収納する所定の商品収納部と向き合う位置にバケットを移動させ、該バケット内に商品収納部から商品を投入し、商品投入後のバケットを商品販売口と向き合う位置等に移動させて所期の商品販売を行う。
【0006】
前記のバケット移動機は、X軸移動体(=バケット)と、該X軸移動体をX方向(左右方向)に移動させるためのX軸駆動機構と、Z軸移動体と、該Z軸移動体をZ方向(上下方向)に移動させるためのZ軸駆動機構とを備えている。各駆動機構はモータ,歯車減速機及び運動変換手段を有している。運動変換手段は回転運動を直線運動に変換するもので、該運動変換手段にはタイミングベルト及びプーリの組み合わせやボールネジ及びナットの組み合わせ等が利用されている。また、各駆動機構のモータの回転軸には位置検出用のロータリーエンコーダが連結されている。さらに、各商品収納部の位置に対応するバケット用の停止位置はXZ座標(Xn,Zn)として予めメモリ等に記憶されている。
【特許文献1】特開平6−12570号公報
【特許文献2】特開平9−91537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者の自動販売機における各停止位置(Xn,Yn)はカップホルダの動作上の原点(X0,Y0)を基準として定められたものであり、一方、後者の自動販売機における各停止位置(Xn,Zn)はバケットの動作上の原点(X0,Z0)を基準として定められたものであるため、出荷検査やメンテナンス等の機会で原点(X0,Y0)または(X0,Z0)を再検出したときに該再検出の原点が変位すると、その後に所定の停止位置にカップホルダまたはバケットを移動して停止させても各々の実際の停止位置は所定の停止位置からずれてしまう。
【0008】
カップホルダの動作上の原点(X0,Y0)は、通常、X軸移動体をX方向原点検出位置に向かって移動させ、且つ、Y軸移動体をY方向原点検出位置に向かって移動させ、X方向原点検出位置に設けたセンサが作動したタイミングでX軸駆動機構のモータに連結されたエンコーダの出力信号の計数値を読み取り、且つ、Y方向原点検出位置に設けたセンサが作動したタイミングでY軸駆動機構のモータに連結されたエンコーダの出力信号の計数値を読み取る方法によって検出されている。
【0009】
一方、バケットの動作上の原点(X0,Z0)は、通常、X軸移動体をX方向原点検出位置に向かって移動させ、且つ、Z軸移動体をZ方向原点検出位置に向かって移動させ、X方向原点検出位置に設けたセンサが作動したタイミングでX軸駆動機構のモータに連結されたエンコーダの出力信号の計数値を読み取り、且つ、Z方向原点検出位置に設けたセンサが作動したタイミングでZ軸駆動機構のモータに連結されたエンコーダの出力信号の計数値を読み取る方法によって検出されている。
【0010】
しかし、前記のホルダ移動機のX軸駆動機構及びY軸駆動機構、並びに、前記のバケット移動機のX軸駆動機構及びZ軸駆動機構には機構上で言う所謂「あそび(隙間やバックラッシュやガタを含む)」が各々の動力伝達経路に存在するため、原点位置検出センサが作動したタイミングで読み取られるエンコーダの出力信号の計数値は該「あそび」に応じた範囲内で変動してしまう。
【0011】
図1はその具体例を示すもので、図中のODSa,ODSbは原点検出位置を検知するセンサの検知信号例、ALは前記「あそび」に応じた範囲、EPSはエンコーダの出力信号である。前記「あそび」の影響によりセンサは範囲AL内の何処でも作動し得る状況にあるため、例えば範囲ALの左端で作動したとき(検出信号ODSa)と右端で作動したとき(検出信号ODSb)とでは各々の作動タイミングで読み取られるエンコーダの出力信号の計数値は大きく異なってしまう。
【0012】
再検出の原点が当初の原点(X0,Y0)または(X0,Z0)とずれたときでも予め記憶された各停止位置(Xn,Yn)または(Xn,Zn)にカップホルダまたはバケットを停止させるには、再検出の原点と当初の原点(X0,Y0)のまたは(X0,Z0)差分を求め、該差分に基づいて各停止位置(Xn,Yn)の値を補正しなければならないが、この処理を行うには専用の位置補正プログラムが必要であり、しかも、位置補正を行うための時間も必要となる。
【0013】
以上の不具合は先に述べた2タイプの自動販売機に限らず、所定方向の直線移動を可能とした移動体とモータを駆動源として有する移動体用駆動機構とを備えた自動販売機においても同様に生じ得る。
【0014】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、移動体の動作上の原点を再検出する場合でも再検出の原点が当初の原点とずれることを防止できる自動販売機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため、本発明は、所定方向の直線移動を可能とした移動体とモータを駆動源として有する移動体用駆動機構とを備えた自動販売機であって、駆動機構のモータの回転軸に連結されたエンコーダと、所定方向の原点検出位置を検知するためのセンサと、移動体を原点検出位置に向かって移動させセンサが作動したタイミングでエンコーダの出力信号の計数値を読み取る原点検出制御手段と、移動体が所定方向の原点検出位置に到達する直前で接触して付勢状態下で該移動体の原点検出位置への到達を許容する付勢部材とを具備する、ことをその特徴とする。
【0016】
この自動販売機によれば、原点検出に際して移動体が原点検出位置に向かって移動するときには、該移動体は原点検出位置に到達する直前で付勢部材に接触し該付勢部材によって付勢された状態下で原点検出位置に到達してセンサが作動することになる。つまり、駆動機構の動力伝達経路に機構で言う所謂「あそび(隙間やバックラッシュやガタを含む)」が存在する場合でも、該「あそび」を前記付勢部材の付勢力によって片寄せすることができるので、「あそび」応じた範囲内の何れか一方の端或いは所定の一箇所でセンサを作動させて該作動タイミングでエンコーダの出力信号の計数値を読み取ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、移動体の動作上の原点を再検出する場合でも再検出の原点が当初の原点とずれることを防止できる自動販売機を提供できる。
【0018】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1実施形態]
図2〜図5は、カップ内で飲料生成を行う自動販売機に本発明を適用した実施形態を示す。
【0020】
この自動販売機は、カップ供給機,浄水機,温水生成機,原料供給機,コーヒー抽出機,製氷機,撹拌機等の飲料生成機器の他に、カップホルダをXY座標系で2次元移動可能なホルダ移動機とその制御回路を具備する。この自動販売機は、販売指令に基づいて選択飲料に対応する停止位置及び移動順序を読み出し、該停止位置をカップホルダが所定の順序で間欠移動するようにホルダ移動機を動作して、該間欠移動の過程で所期の飲料生成をカップ内で実施する。
【0021】
図2はホルダ移動機のメカニズムを示す。このホルダ移動機は、ほぼ水平に設置されたベース1と、ベース1にX方向に移動自在に取り付けられたX軸移動体2と、X軸移動体2にY方向に移動自在に取り付けられたY軸移動体3と、Y軸移動体3に設けられたカップホルダ3aとを備える。カップホルダ3aは上面形状が略C形を成すカップ保持部をその先端に有する。このカップ保持部の内径は逆円錐台形のカップの最大外径よりも僅かに小さく、且つ、開放部分の左右間隔はカップの最小外径よりも僅かに大きい。
【0022】
ベース1にはX軸移動体2をX方向に移動させるためのX軸駆動機構4が設けられている。このX軸駆動機構4は、DCモータ等から成るX軸モータ4aと、X軸モータ4aの回転軸に入力軸を連結された歯車減速機4bと、歯車減速機4bの出力軸に連結された駆動プーリ4cと、駆動プーリ4cと対を成す従動プーリ4dと、駆動プーリ4c及び従動プーリ4dに巻き付けられた無端状のタイミングベルト4eとを備え、X軸移動体2はタイミングベルト4eの所定位置に連結されている。ここでの1対のプーリ4c,4d及びタイミングベルト4eは回転運動を直線運動に変換する運動変換手段を構成する。
【0023】
また、ベース1の端部(図2中の左側端部)にはX方向の原点検出位置を検知するためのX軸センサ5が設けられている。このX軸センサ5は光スイッチやマイクロスイッチ等から成り、X軸移動体2の近接または接触に基づいてX方向原点検出位置を検知する。
【0024】
さらに、ベース1の端部(図2中の左側端部)には、X軸移動体2がX方向原点検出位置に到達する直前で接触して付勢状態下で該X軸移動体2のX方向原点検出位置への到達を許容する板バネ製のX軸付勢部材6が設けられている。このX軸付勢部材6の位置はX軸移動体2に接触可能な位置であれば何処でも構わないが、接触時のモーメント発生を嫌う場合にはX軸移動体2のY方向中心箇所或いは重心対応箇所に接触するように配置するのが好ましい。
【0025】
X軸移動体2にはY軸移動体3をY方向に移動させるためのY軸駆動機構7が設けられている。このY軸駆動機構7は、DCモータ等から成るY軸モータ7aと、Y軸モータ7aの回転軸に入力軸を連結された歯車減速機7bと、歯車減速機7bの出力軸に連結された駆動プーリ7cと、駆動プーリ7cと対を成す従動プーリ7dと、駆動プーリ7c及び従動プーリ7dに巻き付けられた無端状のタイミングベルト7eとを備え、Y軸移動体3はタイミングベルト7eの所定位置に連結されている。ここでの1対のプーリ7c,7d及びタイミングベルト7eは回転運動を直線運動に変換する運動変換手段を構成する。
【0026】
また、X軸移動体2の端部(図2中の上側端部)にはY方向の原点検出位置を検知するためのY軸センサ8が設けられている。このY軸センサ8は光スイッチやマイクロスイッチ等から成り、Y軸移動体3の近接または接触に基づいてY方向原点検出位置を検知する。
【0027】
さらに、X軸移動体2の端部(図2中の上側端部)にはY軸移動体3がY方向原点検出位置に到達する直前で接触して付勢状態下で該Y軸移動体3のY方向原点検出位置への到達を許容する板バネ製のY軸付勢部材9が設けられている。このY軸付勢部材9の位置はY軸移動体3に接触可能な位置であれば何処でも構わないが、接触時のモーメント発生を嫌う場合にはY軸移動体3のX方向中心箇所或いは重心対応箇所に接触するようにY軸付勢部材9を配置するのが好ましい。
【0028】
図3は図2に示したホルダ移動機の制御回路を示す。この制御回路は、マイクロコンピュータ構成の制御部11と、X軸モータ4a及びY軸モータ7aの駆動を行うためのモータ駆動部12と、X軸モータ4aの回転軸に連結されたX軸エンコーダ13と、Y軸モータ7aの回転軸に連結されたY軸エンコーダ14と、先に述べた各飲料生成機器を適宜駆動するための飲料生成機器駆動部15と、先に述べた各センサ5,8とを備える。
【0029】
制御部11のメモリには飲料販売に係るプログラムの他に、原点検出に係るプログラムが記憶されている。また、メモリには、各飲料生成機器の位置に対応するカップホルダ用の複数の停止位置がXY座標(Xn,Yn)として記憶され、また、飲料毎の停止位置及び移動順序が記憶されている。
【0030】
モータ制御部12は、制御部11からの制御信号に基づいて前記ホルダ移動機を動作させるための駆動信号をX軸モータ4a及びY軸モータ7aに出力すると共に、X軸エンコーダ13及びY軸エンコーダ14の出力信号を検出して制御部11に送出する。因みに、各エンコーダ13,14は各モータ4a,7aの正逆回転に伴って異なる形態のパルス信号を出力可能な2相のロータリーエンコーダから成る。
【0031】
図4は原点検出に係るホルダ移動機の動作を示し、図5は原点検出に係るプログラムフローを示す。製造過程や出荷検査やメンテナンス等の機会で原点検出要求があったときには、図4に示すように、X軸移動体2をX方向原点検出位置に向かって−X方向に移動させ、同位置に設けたX軸センサ5が作動したタイミングでX軸駆動機構4のX軸モータ1に連結されたX軸エンコーダ13の出力信号の計数値を読み取る(図5のステップST1〜ST4)。
【0032】
X方向原点検出位置に向かって移動するX軸移動体2は該X方向原点検出位置に到達する直前でX軸付勢部材6に接触して相対的に+X方向に付勢されるが、該付勢力はX軸移動体2の移動を妨げるものではないため、X軸移動体2はX軸付勢部材6によって付勢された状態下でX方向原点検出位置に到達し、到達したタイミングでX軸センサ5が作動すると共にX軸エンコーダ13の出力信号の計数値が読み取られることになる。
【0033】
これと同時に、図4に示すように、Y軸移動体3をY方向原点検出位置に向かって−Y方向に移動させ、同位置に設けたY軸センサ8が作動したタイミングでY軸駆動機構7のY軸モータ11に連結されたY軸エンコーダ14の出力信号の計数値を読み取る(図5のステップST5〜ST7)。
【0034】
Y方向原点検出位置に向かって移動するY方向移動体3は該Y方向原点検出位置に到達する直前でY軸付勢部材9に接触して相対的に+Y方向に付勢されるが、該付勢力はY軸移動体3の移動を妨げるものではないため、Y軸移動体3はY軸付勢部材9によって付勢された状態下でY方向原点検出位置に到達し、到達したタイミングでY軸センサ8が作動すると共にY軸エンコーダ14の出力信号の計数値が読み取られることになる。
【0035】
X軸エンコーダ13の出力信号の計数値とY軸エンコーダ14の出力信号の計数値が読み取られた後は、読み取った各計数値或いはその変換値を原点(X0,Y0)として記憶する(図5のステップST8)。
【0036】
このように、原点検出に際して各移動体2,3が各原点検出位置に向かって移動するときには、該各移動体2,3は各原点検出位置に到達する直前で各付勢部材6,9に接触し該各付勢部材6,9によって付勢された状態下で各原点検出位置に到達して各センサ5,8が作動することになる。
【0037】
つまり、ホルダ移動機のX軸駆動機構4及びY軸駆動機構7の動力伝達経路に機構上で言う所謂「あそび(隙間やバックラッシュやガタを含む)」が存在する場合でも、該「あそび」を前記各付勢部材6,9の付勢力によって片寄せすることができるので、図1に示した範囲AL内の何れか一方の端或いは所定の一箇所で各センサ5,8を作動させて該作動タイミングで各エンコーダ13,14の出力信号の計数値を読み取ることができる。
【0038】
従って、ホルダ移動機のカップホルダ3aの動作上の原点を再検出する場合でも再検出の原点が当初の原点(X0,Y0)とずれることを防止することができる。これにより、再検出の原点が当初の原点(X0,Y0)とずれた場合に必要な処理、具体的には再検出の原点と当初の原点(X0,Y0)の差分を求め該差分に基づいて各停止位置(Xn,Yn)の値を補正する処理を不要にできると共に、当該処理を行うための専用の位置補正プログラムや位置補正を行うための時間も不要となる。
【0039】
また、各付勢部材6,9を板バネから構成しているので、簡単な部品付加によりコストがかからずに前記の作用効果を得ることができる。
【0040】
尚、前述の実施形態では、各付勢部材6,9として板バネを示したが、各付勢部材6,9には各移動体2,3を所定方向に付勢できるものであれば、コイルバネ等の他種のバネ材の他に、軟質合成ゴムや等から成る弾性材も利用できる。
【0041】
また、前述の実施形態では、X軸移動体2に当接し得るX軸付勢部材6をベース1に設け、Y軸移動体3に当接し得るY軸付勢部材9をX軸移動体2に設けたが、各移動体2,3に同様の付勢力を付与できる位置であれば、前者のX軸付勢部材6はベース1が取り付けられる部品やその周囲に存する固定部品に設けてもよく、後者のY軸付勢部材9はベース1や該ベース1が取り付けられる部品やその周囲に存する固定部品に設けてもよい。
【0042】
さらに、前述の実施形態では、X軸駆動機構4及びY軸駆動機構7としてモータ,歯車減速機,一対のプーリ及びタイミングベルトを備えたものを示したが、プーリ及びタイミングベルトの組み合わせがボールネジ及びナットの組み合わせ等の他の運動変換手段から成る駆動機構であっても前記同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0043】
[第2実施形態]
図6〜図8は、シースルー型と称される自動販売機に本発明を適用した実施形態を示す。
【0044】
この自動販売機は、正面から見てマトリクス状に配された複数の商品収納部の他に、所定の商品収納部から商品を受け取るバケットをXZ座標系で2次元移動可能なバケット移動機とその制御回路を具備する。この自動販売機は、販売指令に基づいて選択商品を収納する所定の商品収納部と向き合う位置にバケットを移動させ、該バケット内に商品収納部から商品を投入し、商品投入後のバケットを商品販売口と向き合う位置等に移動させて所期の商品販売を行う。
【0045】
図6はバケット移動機のメカニズムを示す。このバケット移動機は、ほぼ垂直に設置されたベース21と、ベース21にZ方向に移動自在に取り付けられたZ軸移動体22と、Z軸移動体22にX方向に移動自在に取り付けられたX軸移動体23とを備える。X軸移動体23は上面を開放した箱状を成しており、商品収納部からの商品を受け入れて収容するバケットを兼用している。
【0046】
ベース21にはZ軸移動体22をZ方向に移動させるためのZ軸駆動機構(図示省略)が設けられている。このZ軸駆動機構は、DCモータ等から成るZ軸モータ21a(図7参照)と、Z軸モータ21aの回転軸に入力軸を連結された歯車減速機と、歯車減速機の出力軸に連結された駆動プーリと、駆動プーリと対を成す従動プーリと、駆動プーリ及び従動プーリに巻き付けられた無端状のタイミングベルトとを備え、Z軸移動体22はタイミングベルトの所定位置に連結されている。ここでの1対のプーリ及びタイミングベルトは回転運動を直線運動に変換する運動変換手段を構成する。
【0047】
また、ベース21の端部(図6中の右下端部)にはZ方向の原点検出位置を検知するためのZ軸センサ24が設けられている。このZ軸センサ24は光スイッチやマイクロスイッチ等から成り、Z軸移動体22の近接または接触に基づいてX方向原点検出位置を検知する。
【0048】
さらに、ベース1の端部(図6中の右下端部)にはZ軸移動体22がZ方向原点検出位置に到達する直前で接触して付勢状態下で該Z軸移動体22のZ方向原点検出位置への到達を許容する板バネ製のZ軸付勢部材25が設けられている。このZ軸付勢部材25の位置はZ軸移動体22に接触可能な位置であれば何処でも構わないが、接触時のモーメント発生を嫌う場合にはZ軸移動体22のX方向中心箇所或いは重心対応箇所に接触するように配置するのが好ましい。
【0049】
Z軸移動体22にはX軸移動体23をX方向に移動させるためのX軸駆動機構(図示省略)が設けられている。このX軸駆動機構は、DCモータ等から成るX軸モータ22a(図7参照)と、X軸モータ22aの回転軸に入力軸を連結された歯車減速機と、歯車減速機の出力軸に連結された駆動プーリと、駆動プーリと対を成す従動プーリと、駆動プーリ及び従動プーリに巻き付けられた無端状のタイミングベルトとを備え、X軸移動体23はタイミングベルトの所定位置に連結されている。ここでの1対のプーリ及びタイミングベルトは回転運動を直線運動に変換する運動変換手段を構成する。
【0050】
また、Z軸移動体22の端部(図6中の右側端部)にはX方向の原点検出位置を検知するためのX軸センサ26が設けられている。このX軸センサ26は光スイッチやマイクロスイッチ等から成り、X軸移動体23の近接または接触に基づいてX方向原点検出位置を検知する。
【0051】
さらに、Z軸移動体22の端部(図6中の右側端部)にはX軸移動体23がX方向原点検出位置に到達する直前で接触して付勢状態下で該X軸移動体23のX方向原点検出位置への到達を許容する板バネ製のX軸付勢部材27が設けられている。このX軸付勢部材27の位置はX軸移動体23に接触可能な位置であれば何処でも構わないが、接触時のモーメント発生を嫌う場合にはX軸移動体23の前後方向中心箇所或いは重心対応箇所に接触するように配置するのが好ましい。
【0052】
図7は図6に示したバケット移動機の制御回路を示す。この制御回路は、マイクロコンピュータ構成の制御部31と、Z軸モータ21a及びX軸モータ22aの駆動を行うためのモータ駆動部32と、Z軸モータ21aの回転軸に連結されたZ軸エンコーダ33と、X軸モータ22aの回転軸に連結されたX軸エンコーダ34と、先に述べた各センサ24,26とを備える。
【0053】
制御部31のメモリには飲料販売に係るプログラムの他に、原点検出に係るプログラムが記憶されている。また、メモリには、各商品収納部の位置に対応するバケット用の複数の停止位置がXZ座標(Xn,Zn)として記憶されている。
【0054】
モータ制御部32は、制御部31からの制御信号に基づいて前記バケット移動機を動作させるための駆動信号をZ軸モータ21a及びX軸モータ22aに出力すると共に、Z軸エンコーダ33及びX軸エンコーダ34の出力信号を検出して制御部31に送出する。因みに、各エンコーダ33,34は各モータ21a,22aの正逆回転に伴って異なる形態のパルス信号を出力可能な2相のロータリーエンコーダから成る。
【0055】
図8は原点検出に係るプログラムフローを示す。製造過程や出荷検査やメンテナンス等の機会で原点検出要求があったときには、図6に示すように、X軸移動体23をX方向原点検出位置に向かって+X方向に移動させ、同位置に設けたX軸センサ26が作動したタイミングでX軸駆動機構のX軸モータ22aに連結されたX軸エンコーダ34の出力信号の計数値を読み取る(図8のステップSP1〜SP4)。
【0056】
X方向原点検出位置に向かって移動するX軸移動体23は該X方向原点検出位置に到達する直前でX軸付勢部材27に接触して相対的に−X方向に付勢されるが、該付勢力はX軸移動体27の移動を妨げるものではないため、X軸移動体23はX軸付勢部材27によって付勢された状態下でX方向原点検出位置に到達し、到達したタイミングでX軸センサ26が作動すると共にX軸エンコーダ34の出力信号の計数値が読み取られることになる。
【0057】
これと同時に、図6に示すように、Z軸移動体22をZ方向原点検出位置に向かって+Z方向に移動させ、同位置に設けたZ軸センサ24が作動したタイミングでZ軸駆動機構のZ軸モータ21aに連結されたZ軸エンコーダ33の出力信号の計数値を読み取る(図8のステップSP5〜SP7)。
【0058】
Z方向原点検出位置に向かって移動するZ軸移動体22は該Z方向原点検出位置に到達する直前でZ軸付勢部材25に接触して相対的に−Z方向に付勢されるが、該付勢力はZ軸移動体22の移動を妨げるものではないため、Z軸移動体22はZ軸付勢部材25によって付勢された状態下でX方向原点検出位置に到達し、到達したタイミングでZ軸センサ24が作動すると共にZ軸エンコーダ33の出力信号の計数値が読み取られることになる。
【0059】
X軸エンコーダ34の出力信号の計数値とZ軸エンコーダ33の出力信号の計数値が読み取られた後は、読み取った各計数値或いはその変換値を原点(X0,Z0)として記憶する(図8のステップSP8)。
【0060】
このように、原点検出に際して各移動体22,23が各原点検出位置に向かって移動するときには、該各移動体22,23は各原点検出位置に到達する直前で各付勢部材25,27に接触し該各付勢部材25,27によって付勢された状態下で原点検出位置に到達して各センサ24,26が作動することになる。
【0061】
つまり、バケット移動機のZ軸駆動機構及びX軸駆動機構の動力伝達経路に機構上で言う所謂「あそび(隙間やバックラッシュやガタを含む)」が存在する場合でも、該「あそび」を前記各付勢部材25,27の付勢力によって片寄せすることができるので、図1に示した範囲AL内の何れか一方の端或いは所定の一箇所で各センサ24,26を作動させて該作動タイミングで各エンコーダ33,34の出力信号の計数値を読み取ることができる。
【0062】
従って、バケット移動機のバケット(=X軸移動体)23の動作上の原点を再検出する場合でも再検出の原点が当初の原点(X0,Z0)とずれることを防止することができる。これにより、再検出の原点が当初の原点(X0,Z0)とずれた場合に必要な処理、具体的には再検出の原点と当初の原点(X0,Z0)の差分を求め該差分に基づいて各停止位置(Xn,Zn)の値を補正する処理を不要にできると共に、当該処理を行うための専用の位置補正プログラムや位置補正を行うための時間も不要となる。
【0063】
また、各付勢部材25,27を板バネから構成しているので、簡単な部品付加によりコストがかからずに前記の作用効果を得ることができる。
【0064】
尚、前述の実施形態ではZ軸付勢部材25を設けたが、該Z軸付勢部材25は必ずしも必要なものではない。つまり、上下方向に移動し得るZ方向移動体22は重力により常に下方向に力がかかった状態にあり、該状態はZ方向移動体22が下方向に付勢されている状態に相当する。換言すれば、Z軸センサ24の位置に拘わらずZ軸移動体22は重力により下方向に付勢された状態下でZ方向原点検出位置に到達し、到達したタイミングでZ軸センサ24が作動すると共にZ軸エンコーダ33の出力信号の計数値が読み取られることになるので、Z軸付勢部材25がなくても該Z軸付勢部材25がある場合と同様の作用が得られる。
【0065】
また、前述の実施形態では、各付勢部材25,27として板バネを示したが、各付勢部材25,27には各移動体22,23を所定方向に付勢できるものであれば、コイルバネ等の他種のバネ材の他に、軟質合成ゴムや等から成る弾性材も利用できる。
【0066】
さらに、前述の実施形態では、Z軸移動体22に当接し得るZ軸付勢部材25をベース21に設け、X軸移動体23に当接し得るX軸付勢部材27をZ軸移動体22に設けたが、各移動体22,23に同様の付勢力を付与できる位置であれば、前者のZ軸付勢部材25はベース21が取り付けられる部品やその周囲に存する固定部品に設けてもよく、後者のX軸付勢部材27はベース21やベース21が取り付けられる部品やその周囲に存する固定部品に設けてもよい。
【0067】
さらに、前述の実施形態では、Z軸駆動機構及びY軸駆動機構としてモータ,歯車減速機,一対のプーリ及びタイミングベルトを備えたものを示したが、プーリ及びタイミングベルトの組み合わせがボールネジ及びナットの組み合わせ等の他の運動変換手段から成る駆動機構であっても前記同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0068】
以上、図2〜図5にはカップ内で飲料生成を行う自動販売機に本発明を適用した実施形態を示し、図6〜図8にはシースルー型と称される自動販売機に本発明を適用した実施形態を示したが、所定方向の直線移動を可能とした移動体とモータを駆動源として有する移動体用駆動機構とを備えた自動販売機であれば本発明を適用して同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】発明が解決しようとする課題の説明図である。
【図2】カップ内で飲料生成を行う自動販売機に用いられるホルダ移動機の上面図である。
【図3】図2に示したホルダ移動機の制御回路図である。
【図4】原点検出に係るホルダ移動機の動作を示す図である。
【図5】原点検出に係るプログラムフローを示す図である。
【図6】シースルー型の自動販売機に用いられるバケット移動機の上面図である。
【図7】図6に示したバケット移動機の制御回路図である。
【図8】原点検出に係るプログラムフローを示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1…ベース、2…X軸移動体、3…Y軸移動体、3a…カップホルダ、4…X軸駆動機構、4a…X軸モータ、4b…歯車減速機、4c…駆動プーリ、4d…従動プーリ、4e…タイミングベルト、5…X軸センサ、6…X軸付勢部材、7…Y軸駆動機構、7a…Y軸モータ、7b…歯車減速機、7c…駆動プーリ、7d…従動プーリ、7e…タイミングベルト、8…Y軸センサ、9…Y軸付勢部材、11…制御部、12…モータ駆動部、13…X軸エンコーダ、14…Y軸エンコーダ、21…ベース、21a…Z軸モータ、22…Z軸移動体、22a…X軸モータ、23…X軸移動体(=バケット)、24…Z軸センサ、25…Z軸付勢部材、26…X軸センサ、27…X軸付勢部材、31…制御部、32…モータ駆動部、33…Z軸エンコーダ、34…X軸エンコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の直線移動を可能とした移動体とモータを駆動源として有する移動体用駆動機構とを備えた自動販売機であって、
駆動機構のモータの回転軸に連結されたエンコーダと、
所定方向の原点検出位置を検知するためのセンサと、
移動体を原点検出位置に向かって移動させセンサが作動したタイミングでエンコーダの出力信号の計数値を読み取る原点検出制御手段と、
移動体が所定方向の原点検出位置に到達する直前で接触して付勢状態下で該移動体の原点検出位置への到達を許容する付勢部材とを具備する、
ことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
駆動機構はモータの他に歯車減速機と回転運動を直線運動に変換する運動変換手段とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
付勢部材は板バネから成る、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−235675(P2006−235675A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45026(P2005−45026)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】