説明

自動車に用いられるシリンダクランクケーシング

本発明は、金属製の永久鋳型内で鋳造された、内燃機関に用いられる、いわばモノリシックなシリンダクランクケーシングであって、当該シリンダクランクケーシング内に浸透させられた含浸体(1)が設けられている形式のものに関する。この場合、含浸体(1)が、誘導溶接された連続気泡性の発泡金属から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の永久鋳型内で鋳造された、内燃機関に用いられる、いわばモノリシックなシリンダクランクケーシングであって、当該シリンダクランクケーシング内に浸透させられた含浸体が設けられている形式のものに関する。
【0002】
さらに、本発明は、導電性の金属粒子から成る成形体を誘導電流で負荷し、金属粒子をその接触箇所で溶融液状に結合して、前述した形式のシリンダクランクケーシングに用いられる含浸体を製作するための方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、前述した方法によって製作された含浸体であって、当該含浸体が、導電性の金属粒子から成る粉末から形成されており、当該含浸体内で金属粒子が、誘導電流によって溶融液状に結合されている形式のものに関する。
【0004】
さらに、本発明は、含浸体を鋳造金型内に挿入し、次いで、軽金属合金を鋳造金型内に注ぎ込んで、前述した形式の浸透させられた含浸体を備えた、前述した形式のシリンダクランクケーシングを製作するための方法に関する。
【0005】
今日の自動車に使用される内燃機関は大部分で軽金属合金から製造される。たいてい、この内燃機関のシリンダクランクケーシングがアルミニウムもしくはアルミニウムの合金から製造される。この場合、マグネシウム合金も使用される。このマグネシウム合金は正確にアルミニウム合金と同様に僅かな固有の密度ひいては僅かな重量の利点をもたらす。たとえば圧縮時の圧力に課せられる高められかつますます高まる要求に即応するためには、アルミニウム合金の領域に過共晶のアルミニウム−ケイ素合金が使用される。このアルミニウム−ケイ素合金の弾性係数および強度は、合金に応じて、鉄材料の弾性係数および強度にほぼ相当している。この高強度のアルミニウム合金における欠点は、確かに、1つには、シリンダクランクケーシングに課せられる要求に有利な影響を与える高い強度が生ぜしめられるが、しかし、もう1つには、その高い強度に基づき手間をかけて加工されていることである。
【0006】
高強度のアルミニウム合金における高い強度の利点を使用し、もう1つには、シリンダクランクケーシングを容易に加工することもできるようにするために、欧州特許第0449356号明細書に基づき、シリンダクランクケーシングが記載されている。このシリンダクランクケーシングは局所的にしか合金化されて形成されておらず、これによって、1つには、必要となるトライボロジ特性が、シリンダ摺動面の高負荷される領域に提供されており、もう1つには、シリンダクランクケーシングを容易に加工することができる。アルミニウム母材内に埋め込まれたケイ素粒を含んだアルミニウム合金から成る、金属製の永久鋳型内で鋳造されたライナレスのシングルシリンダまたはマルチシリンダブロックが記載されている。この場合、シリンダ摺動路の領域には、このシリンダ摺動路を形成する、亜共晶のアルミニウム合金によって浸透させられた中空円筒状の繊維成形体が埋め込まれている。この繊維成形体は、内部に挿入されたケイ素粒を含んだセラミック繊維から成っている。この場合、別個に製作された繊維成形体が鋳型のケレン(中子支え)に載着され、アルミニウム合金溶融体が鋳型内に注ぎ込まれ、圧力下で凝固させられる。有利には、アルミニウム合金溶融体は、少なくとも30bar、しかし、特に200〜1000barの圧力下で凝固させられる。この場合に記載された方法は、スクイズキャスティング法としても知られている。鋳型内へのアルミニウム合金溶融体の注込み後の圧力負荷の間、このアルミニウム合金溶融体が繊維成形体内に含浸させられ、これによって、この繊維成形体の予熱と、合金組成とに応じて、複合材料もしくは局所的に合金化された、いわばモノリシックなシリンダブロックが製作可能となる。
【0007】
エンジンブロックを製作するための含浸可能な多孔質の成形体の使用が、同じくドイツ連邦共和国特許出願公開第19617457号明細書に記載されている。本発明によるブロックの鋳造技術的な製作に対して、前製造されたコアが、外側の寸法を成す鋳型内に挿入され、生ぜしめられたキャビティが液状の金属で充填される。この場合、溶融体の温度に基づき、多孔質のコアの外側の領域が溶融され、これによって、コアと中実のブロック構造との間に密なかつ機械的に負荷可能な結合が生ぜしめられる。この場合、溶融体の温度がより高くまたはより低く調整されるかまたは使用される材料の融点がそれぞれ異なるレベルに置かれることによって、溶融の度合いに影響を与えることができる。圧力負荷される鋳造に対する示唆は当該刊行物から知ることはできない。ここで使用される多孔質の成形体の製作のためには、種々異なる方法が知られている。したがって、1つには、金属製の粒子に基づく熱的な焼結が記載されている。この場合、粒子が型内に注ぎ込まれ、融点の範囲内にまで加熱される。これによって、粒子がその接触点で互いに固く融接する。これによって、粗い個数の互いに接続されたより小さな中空室を備えた機械的に安定した複合体が形成される。さらに、燒結金属成形体の製作が記載されている。この場合、金属製の粒子が、分割可能なセラミックス製の鋳型内に注ぎ込まれ、この鋳型が電気的なコイル内に進入させられ、粒子が高い周波数で誘導加熱される。さらに、エンジンへの流路の製作の使用のための、いわゆる「連続気泡性の発泡金属」の使用が記載されている。
【0008】
面状の多孔質の材料複合体の製作が、同じくドイツ連邦共和国特許出願公開第19722088号明細書に開示されている。この場合、粉末層または粉末成形体が、約10kHz〜120MHzの周波数範囲内の交番磁界で短時間負荷され、これによって、粉末粒子の接触箇所が互いに溶融液状に結合されるようなエネルギ密度の誘導電流が粉末層または粉末成形体に発生させられる。条件は、電流を誘導することができるように、粉末が導電性であることでしかない。この場合、この方法は溶融温度で経過し、これによって、粉末粒子がその接触箇所で融接する。溶接過程の種類によって、良好な形状安定性を有する固い多孔質の材料複合体が形成される。
【0009】
公知先行技術から出発して、本発明の課題は、いわばモノリシックに形成されていて、局所的にそれぞれ異なる強度値を有するシリンダクランクケーシングならびにシリンダクランクケーシングを製作するための方法を提供することにある。さらに、本発明の課題は、鋳造法に依存しない、シリンダクランクケーシングを製作するための方法を提供することにある。
【0010】
この課題を解決するために本発明のシリンダクランクケーシングでは、含浸体が、誘導溶接された、溶融液状に結合された連続気泡性の成形体から形成されており、含浸体の気孔率が、20%〜70%の間にあり、鋳包み鋳造材料が、含浸体内に完全に浸透させられていて、金属間相を形成しているようにした。
【0011】
本発明のシリンダクランクケーシングの有利な構成によれば、成形体が、鉄および/または非鉄ベースの金属粒子から形成されている。
【0012】
本発明のシリンダクランクケーシングの有利な構成によれば、金属粒子が、0.1mm〜1.5mmの平均的なサイズを有している。
【0013】
本発明のシリンダクランクケーシングの有利な構成によれば、含浸体の表面が被覆されており、該表面が、酸化されているかまたは窒化されているかまたは有機質の被膜を備えている。
【0014】
本発明のシリンダクランクケーシングの有利な構成によれば、含浸体が、シリンダ摺動路を形成する中空円筒状の含浸体であるかまたは支承シェルの少なくとも一部を形成する含浸体である。
【0015】
本発明のシリンダクランクケーシングの有利な構成によれば、当該シリンダクランクケーシングが、軽金属合金から形成されており、含浸体が、軽金属合金によって完全に含浸させられている。
【0016】
本発明のシリンダクランクケーシングの有利な構成によれば、含浸体が、鉄および/またはニッケルおよび/またはクロムおよび/またはマンガンおよび/またはこれらの合金から形成されており、材料の少なくとも1回の部分的な変換が行われており、これによって、複合材料および/または金属間相が形成されている。
【0017】
さらに、前記課題を解決するために本発明の、含浸体を製作するための方法では、成形体を、0.1mm〜1.5mmの平均的なサイズを備えた金属粒子から振動下でまたは圧力負荷された流込みによって形成するようにした。
【0018】
本発明の、含浸体を製作するための方法の有利な実施態様によれば、成形体を、金属粒子とスペーサとから成る混合物から形成し、この場合、スペーサとして有機質のかつ/または無機質の成分を使用する。
【0019】
本発明の、含浸体を製作するための方法の有利な実施態様によれば、スペーサとして樹脂および/またはプラスチックおよび/またはセルロースおよび/またはゼラチンおよび/または塩を使用する。
【0020】
本発明の、含浸体を製作するための方法の有利な実施態様によれば、スペーサを誘導溶接の間にガス化し、これによって、20%〜70%の気孔率を備えた多孔質の成形体を形成する。
【0021】
本発明の、含浸体を製作するための方法の有利な実施態様によれば、成形体を、1kHz〜400kHzの波長を備えた誘導中周波範囲で負荷する。
【0022】
さらに、前記課題を解決するために本発明の含浸体では、当該含浸体が、金属粒子および/または有機質のスペーサおよび/または無機質のスペーサから成る粉末から形成されており、スペーサによって、当該含浸体の気孔率が調整可能であるようにした。
【0023】
本発明の含浸体の有利な構成によれば、当該含浸体が、連続気泡性の発泡金属である。
【0024】
本発明の含浸体の有利な構成によれば、当該含浸体が、20%〜70%の間の気孔率を有している。
【0025】
本発明の含浸体の有利な構成によれば、当該含浸体の表面が、被覆、特に酸化されているかまたは窒化されているかまたは有機質の被膜を備えている。
【0026】
さらに、前記課題を解決するために本発明の、シリンダクランクケーシングを製作するための方法では、軽金属合金を圧力下で凝固させるようにした。
【0027】
本発明の、シリンダクランクケーシングを製作するための方法の有利な実施態様によれば、含浸体を挿入前に300℃〜800℃の温度に加熱する。
【0028】
本発明の、シリンダクランクケーシングを製作するための方法の有利な実施態様によれば、軽金属合金を10〜20barの圧力下で含浸させ、最大1000barで凝固させる。
【0029】
シリンダケーシングの製作に相俟った本発明による課題の解決手段は、含浸体が、シリンダクランクケーシング内に、誘導溶接された連続気泡性の成形体から形成されていることによって提供される。本発明による解決手段によって、いわばモノリシックに形成されているものの、高負荷される領域に局所的に異なる強度を有するシリンダクランクケーシングが提供される。この場合、含浸体を製作するための材料の選択と、金属粒子のサイズひいては体内の金属粒子の間の中空室のサイズと、シリンダクランクケーシング内への埋込み前の含浸体の予熱の温度とによって、シリンダクランクケーシングの局所的に高負荷される領域における規定的なかつ意図的に設定可能な強度が調整可能となり、したがって、要求されたトライボロジ特性が得られ、軸受けブロック領域における所要の滑り特性も調整可能となる。
【0030】
誘導溶接された含浸体の使用も有利である。なぜならば、誘導溶接された成形体は自体比較的高い強度を有しており、これによって、本発明によるシリンダクランクケーシングがダイカストシリンダクランクケーシングまたはスクイズキャスティングシリンダクランクケーシングとして形成可能となるからである。この利点は、1つには、シリンダクランクケーシングの設計上の構成と、シリンダクランクケーシングの製作時のコストとに有利な影響を与える。特に含浸体を容易に取り扱うことができる。なぜならば、この含浸体が形状安定性であり、含浸体として自体高い強度を有しているからである。したがって、本発明によって、意図的にかつ局所的に調整可能である静的なかつ動的な強度特性および/または耐摩耗性を備えたシリンダクランクケーシングが提供されている。
【0031】
成形体または圧粉体とも呼ぶことができる含浸体を形成するための金属粒子は、鉄および/または非鉄ベースの金属粒子をベースとして形成されている。しかし、有利には、独占的ではないが、含浸体が、鉄および/またはニッケルおよび/またはクロムおよび/またはマンガンおよび/またはこれらの合金から形成される。この場合、条件は、圧粉体を形成するための金属粒子を成す使用される金属粉末が導電性であることである。なぜならば、圧粉体が誘導電流によって形成されるからである。この誘導電流は、金属粒子の接触箇所が互いに溶融液状に結合可能となるようなエネルギ密度を有している。
【0032】
この場合、金属粒子は0.1mm〜1.5mmの平均的なサイズを有しており、これによって、金属粒子の使用サイズもしくは直径に応じて、含浸体の気孔率が調整可能となる。この場合、含浸体は、金属粒子から成る強化エレメントとして、金属粒子の誘導溶接によって形成される。この場合、金属粒子は、圧力負荷された流込みでまたは振動下で型内にもたらされる。
【0033】
含浸体の気孔率は20%〜70%の間にある。調整したい気孔率は、含浸条件、すなわち、含浸体のジオメトリならびに鋳造プロセスの増圧設定量に依存している。本発明によれば、50%を上回る気孔率割合に対して、含浸体の製作時に有機質のまたは無機質のスペーサを使用することが可能となる。この場合、スペーサとして、樹脂および/またはプラスチックおよび/またはセルロースおよび/またはゼラチンおよび/または塩が使用される。高い気孔率の場合には、含浸体の予熱が不要となることが分かった。これに対して、極めて高い弾性係数を、シリンダクランクケーシングの局所的に強化される領域に達成したい場合には、この要求から、20%〜50%の比較的低い気孔体積が生ぜしめられ、これによって、含浸体が300℃〜800℃の温度に鋳型内への挿入前に予熱されなければならない。含浸体の予熱によって、1つには、軽金属溶融体の含浸が容易になり、もう1つには、含浸体の予熱によって、鋳包み鋳造材料と、含浸体を形成する金属粒子との間への金属間化合物の形成に規定的に影響を与えることができる。したがって、たとえば500℃に予熱された含浸体が、僅かな気孔体積を備えた少なく予熱された含浸体よりも多く金属間化合物を形成することが容易に自明となる。なぜならば、含浸体内に蓄えられたエネルギが合金形成のために提供されるからである。連続気泡性の発泡金属から形成された含浸体の高い熱容量に起因して、鋳型内への挿入の間の熱損失は僅かとなり、これによって、含浸条件が、公知先行技術に基づき公知のセラミックスフォームに比べて著しく改善されている。
【0034】
たとえばマグネシウム合金の含浸時には、鉄ベースの含浸体としての連続気泡性の発泡金属が不活性であり、これによって、反応が行われず、再現可能な複合強度は生ぜしめられない。これに対して、鉄または非鉄ベース発泡金属がアルミニウム合金溶融体によって含浸させられると、粒子サイズおよび予熱温度を介して、アルミナイドへの発泡金属のほぼ完全な変換を達成することができ、これによって、高耐摩耗性の複合材料が形成される。この場合、この高耐摩耗性の複合材料は、たとえばシリンダ摺動路として働くかまたはクランクシャフトの領域で軸受けとして働く。
【0035】
本発明により形成されたシリンダクランクケーシングの材料特性は、粒子サイズと、含浸体に用いられる材料の選択と、含浸体における気孔率の調整と、含浸体の可能な予熱とによって規定的にかつ再現可能に調整可能となる。更なる可能性、金属間相の形成ひいては材料特性、たとえば強度への影響は、含浸体の表面を被覆し、したがって、鋳包み鋳造材料による金属粒子の変換を減少させるかまたは十分に阻止することである。この場合、含浸体の表面は酸化可能であるかまたは窒化可能であるか無機質の被膜を備えることができる。したがって、金属間相の形成に対する前述した影響量のほかに、複数の種類の金属間化合物と、純粋な金属から成るコア領域とが、シリンダクランクケーシングの局所的な強度増加の領域に形成されることが可能となる。たとえば含浸体が鉄粒子から形成されている場合には、粒子サイズと、気孔率と、予熱と、被覆とに応じて、純粋な鉄からコア領域が形成される。このコア領域は、鋳包み鋳造材料が、たとえばアルミニウム合金である場合には、FeAlから成る第1の層によって形成されている。この第1の鉄アルミナイド層の上方には、FeAlの形の鉄アルミナイドから成る別の金属間化合物が形成され、第3の取囲み層として、FeAlの形の金属間化合物が形成されてもよい。当然ながら、この例は限定的ではなく、金属粒子が鉄から成っており、シリンダクランクケーシングを形成するための鋳包み鋳造材料がアルミニウムベースの合金から成っている場合の鉄アルミナイドの形成の1つの実施例を成しているに過ぎない。しかし、たとえば、このような材料組合せ時には、コア領域が、純粋な鉄アルミナイドから形成されており、第1の取囲み領域が、FeAlの形の鉄アルミナイドから形成されており、第2の取囲み領域が、FeAlの形の鉄アルミナイドから形成されていることも可能である。金属間化合物の調整には、前述した調整可能なパラメータによって、所望の静的なまたは動的な強度増加に相俟って規定的に影響を与えることができる。
【0036】
含浸体を製作するための金属粒子の誘導溶接は廉価な製作法を成している。所望の気孔率に応じて、金属粒子にスペーサが混合される。このスペーサは、鋳型内への液状の溶融体の鋳込みの間に溶解されるかまたは気化される。スペーサは、たとえば有機質の樹脂および/またはプラスチックおよび/またはセルロースおよび/またはゼラチンであるものの、有機質の成分、たとえば塩であってもよい。誘導溶接の利点は高い形状安定性である。含浸体は、本発明によれば、たとえば圧力下で製造された金属粒子から形成され、これによって、圧粉体が形成されている。次いで、この圧粉体は、溶接が金属粒子の接触箇所で行われる程度に大きなエネルギ密度を備えた誘導中周波範囲で負荷される。この場合、この誘導中周波範囲は1kHz〜400kHzの周波数を有していて、金属粒子に対する使用材料と、選択された粒子サイズとに相応して可変となる。この場合、金属粒子の接触箇所での溶接が重要となる。誘導溶接時には、保護ガス雰囲気または形成ガス雰囲気が提供可能となるものの、本発明に対して重要ではない。なぜならば、金属粒子に設けられた場合により存在する酸化物層が、高い誘導電圧と、この誘導電圧から生ぜしめられる表皮効果とに基づき、接触箇所で含浸体の全横断面にわたって破断されるからである。スペーサまたは有機ベースの位置決め成分は誘導溶接プロセス時にガス化される。溶接プロセスは、粒子サイズに対応して、誘導法則により自動的に調整される。
【0037】
誘導溶接された含浸体の顕著な利点は、含浸体が、圧力負荷される鋳造法に対して使用可能となることである。なぜならば、含浸体が溶接の機械的な安定性に基づき圧力鋳造時の圧力に抵抗するからである。したがって、含浸体が鋳型内に挿入され、10bar〜15barの圧力下で鋳包み鋳造され、次いで、最大1000barの圧力下で凝固させられる。
【0038】
含浸体によるシリンダクランクケーシングへの局所的な複合材料の形成によって、1つには、強度増加と耐摩耗性の向上とが可能となる。さらに、トライボロジ特性に意図的に影響を与えることができ、赤熱特性も調整可能となる。
【0039】
誘導溶接された金属粒子から成る含浸体の使用の更なる利点は、この含浸体が、鉄ベースのモノリシックな埋込み部材に比べて重量利点を有していることである。さらに、含浸体への鋳包み鋳造材料の完全な含浸によって、ギャップなしの埋込みが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】鋳包み鋳造材料と含浸体との間の領域における40μmの分解能での顕微鏡写真である。
【図2】図1に示した領域IIによる拡大部分図である。
【図3】図1に示した含浸体の縁領域としての領域IIIを同じく拡大して示す図である。
【0041】
以下に、本発明を連続気泡性の発泡金属の含浸試験につき詳しく説明する。
【0042】
図1には、含浸体1の顕微鏡写真が示してある。この含浸体1は鋳包み鋳造材料2内に埋め込まれている。この場合、含浸体1は、明確に識別可能な2つの領域II,IIIを有している。この場合、含浸体1の縁領域IIIは、軽金属合金、たとえばアルミニウムまたはマグネシウムである鋳包み鋳造材料2によって直接取り囲まれる。この場合、この鋳包み鋳造材料2は含浸体1内に完全に浸透させられていて、明確に互いに識別可能な両領域II,IIIを、部分的に金属間相の形成によって形成している。
【0043】
この実施例による含浸体1は、3.5g/cmの密度を備えた、商標名「Astaloy CrM」で形成された成形体から製作されている。鋳包み鋳造材料として、アルミニウム−ケイ素合金AlSi12 CuNiMgが選択されている。この共晶のアルミニウム−ケイ素合金は含浸体1内に完全に浸透させられている。図1には、複合材料形成が本発明によりどの程度精密に調整可能であるのかが極めて良好に示してある。含浸体1は大気下で約500℃に予熱されている。これによって、金属粒子の表面に酸化物が形成されている。含浸体1の縁領域IIIのこの酸化によって、ここでは、金属間相の形成が阻害されている。酸化遮断層5,6は、酸化された縁領域IIIの拡大図を示す図3に明確に認めることができる。金属粒子7は、確かに、全体的にかつ完全にアルミニウム合金8によって取り囲まれているが、しかし、金属間化合物の形成は、含浸体1の酸化被膜によって阻止されている。したがって、図3には、予熱(この場合には予熱の期間)によって、含浸体1の酸化被膜ひいては誘導結合された金属粒子7の酸化被膜がどのように意図的に制御可能であるのかが明確に示してある。大気条件下での予熱時間がより長い場合には、縁領域IIIが含浸体1のコアにまでシフト可能となる。つまり、含浸体の被覆の方法は、要求された別の被覆法にも同じく使用可能となる。
【0044】
相応して、金属粒子7,9と鋳包み鋳造材料8,10との間へのアルミナイド形成、すなわち、金属間化合物の形成が目標とされる場合には、被膜が含浸体1に析出されず、金属粒子9と鋳包み鋳造材料10との間に金属間化合物と均質な移行部とを備えた材料組織が形成される。このことは、図2に示してある。この場合、この図2には、含浸させられた含浸体1の中心付近の領域IIの拡大図が示してある。含浸体1は連続気泡性の発泡金属1として鋳包み鋳造前に付与されている。
【符号の説明】
【0045】
1 含浸体
2 鋳包み鋳造材料
3 表面
5 酸化遮断層
6 酸化遮断層
7 金属粒子
8 鋳包み鋳造材料
9 金属粒子
10 鋳包み鋳造材料
II 領域
III 縁領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の永久鋳型内で鋳造された、内燃機関に用いられる、いわばモノリシックなシリンダクランクケーシングであって、当該シリンダクランクケーシング内に浸透させられた含浸体(1)が設けられている形式のものにおいて、含浸体が、誘導溶接された、溶融液状に結合された連続気泡性の成形体(1)から形成されており、含浸体の気孔率が、20%〜70%の間にあり、鋳包み鋳造材料が、含浸体内に完全に浸透させられていて、金属間相を形成していることを特徴とする、シリンダクランクケーシング。
【請求項2】
成形体(1)が、鉄および/または非鉄ベースの金属粒子(7,9)から形成されている、請求項1記載のシリンダクランクケーシング。
【請求項3】
金属粒子(7,9)が、0.1mm〜1.5mmの平均的なサイズを有している、請求項2記載のシリンダクランクケーシング。
【請求項4】
含浸体(1)の表面(3)が被覆されており、該表面(3)が、酸化されているかまたは窒化されているかまたは有機質の被膜を備えている、請求項1から3までのいずれか1項記載のシリンダクランクケーシング。
【請求項5】
含浸体(1)が、シリンダ摺動路を形成する中空円筒状の含浸体(1)であるかまたは支承シェルの少なくとも一部を形成する含浸体(1)である、請求項1から4までのいずれか1項記載のシリンダクランクケーシング。
【請求項6】
当該シリンダクランクケーシングが、軽金属合金(8,10)から形成されており、含浸体(1)が、軽金属合金(8,10)によって完全に含浸させられている、請求項1から5までのいずれか1項記載のシリンダクランクケーシング。
【請求項7】
含浸体(1)が、鉄および/またはニッケルおよび/またはクロムおよび/またはマンガンおよび/またはこれらの合金から形成されており、材料の少なくとも1回の部分的な変換が行われており、これによって、複合材料および/または金属間相が形成されている、請求項6記載のシリンダクランクケーシング。
【請求項8】
導電性の金属粒子(7,9)から成る成形体(1)を誘導電流で負荷し、金属粒子(7,9)をその接触箇所で溶融液状に結合して、請求項1から7までのいずれか1項記載のシリンダクランクケーシングに用いられる含浸体(1)を製作するための方法において、成形体(1)を、0.1mm〜1.5mmの平均的なサイズを備えた金属粒子(7,9)から振動下でまたは圧力負荷された流込みによって形成することを特徴とする、含浸体を製作するための方法。
【請求項9】
成形体(1)を、金属粒子(7,9)とスペーサとから成る混合物から形成し、この場合、スペーサとして有機質のかつ/または無機質の成分を使用する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
スペーサとして樹脂および/またはプラスチックおよび/またはセルロースおよび/またはゼラチンおよび/または塩を使用する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
スペーサを誘導溶接の間にガス化し、これによって、20%〜70%の気孔率を備えた多孔質の成形体を形成する、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
成形体(1)を、1kHz〜400kHzの波長を備えた誘導中周波範囲で負荷する、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項8から12までのいずれか1項記載の方法によって製作された含浸体であって、当該含浸体が、導電性の金属粒子(7,9)から成る粉末から形成されており、当該含浸体内で金属粒子(7,9)が、誘導電流によって溶融液状に結合されている形式のものにおいて、当該含浸体(1)が、金属粒子(7,9)および/または有機質のスペーサおよび/または無機質のスペーサから成る粉末から形成されており、スペーサによって、当該含浸体(1)の気孔率が調整可能であることを特徴とする、含浸体。
【請求項14】
当該含浸体(1)が、連続気泡性の発泡金属である、請求項13記載の含浸体。
【請求項15】
当該含浸体(1)が、20%〜70%の間の気孔率を有している、請求項13または14記載の含浸体。
【請求項16】
当該含浸体(1)の表面(3)が、被覆、特に酸化されているかまたは窒化されているかまたは有機質の被膜を備えている、請求項13から15までのいずれか1項記載の含浸体。
【請求項17】
含浸体(1)を鋳造金型内に挿入し、次いで、軽金属合金(8,10)を鋳造金型内に注ぎ込んで、請求項14から17までのいずれか1項記載の浸透させられた含浸体(1)を備えた、請求項1から7までのいずれか1項記載のシリンダクランクケーシングを製作するための方法において、軽金属合金(8,10)を圧力下で凝固させることを特徴とする、シリンダクランクケーシングを製作するための方法。
【請求項18】
含浸体(1)を挿入前に300℃〜800℃の温度に加熱する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
軽金属合金(8,10)を10〜20barの圧力下で含浸させ、最大1000barで凝固させる、請求項17または18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−509068(P2010−509068A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535594(P2009−535594)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009242
【国際公開番号】WO2008/055594
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509131775)カーエス アルミニウム−テヒノロギー ゲゼルシャフトミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】KS Aluminium−Technologie GmbH
【住所又は居所原語表記】Hafenstrasse 25, D−74172 Neckarsulm, Germany
【Fターム(参考)】