説明

自動車のトランスミッション機構

【課題】1対のクラッチ装置を備えたトランスミッション機構を提供する。
【解決手段】本発明のトランスミッション機構は、上流側のギヤ比および下流側のギヤ比を組み合わせて有効ギヤ比を生成する。1対のクラッチ装置のそれぞれの入力側に、異なるクラッチ駆動部材が取り付けられる。上流側のギヤ比は、エンジン入力部材といずれかのクラッチ駆動部材との間のギヤ比によって決定される。各クラッチ装置の出力側は、1対のレイシャフトの関連する側のシャフトを駆動する。レイシャフト上にはピニオンが装着され、そのピニオンはレイシャフトによって選択的に駆動される。両レイシャフトから離れた位置に複数のギヤを有するカウンタシャフトが配置される。各ギヤは、レイシャフトのピニオンのいずれかによって回転駆動される。下流側のギヤ比は、選択されたピニオンとそれに噛み合うギヤとの間のギヤ比によって決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デュアルクラッチトランスミッション、特に、改善された構成を備えたデュアルクラッチトランスミッションと、デュアルクラッチトランスミッションによる動力伝達方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な自動車のトランスミッションは、駆動動力を、エンジンから、1つ以上の駆動軸(「レイシャフト」と呼称してもよい)に配置される一連のギヤ(「ピニオン」と呼称してもよい)に供給する共通の入力軸を用いる。この一連のギヤは同列に配置され、平行な出力軸(「カウンタシャフト」と呼称してもよい)上に配置される対応するギヤと噛み合う。通常は重なり合う異なる回転速度範囲においてトルクを伝達する異なるギヤ比を実現するために、対応するレイシャフト上のピニオンとカウンタシャフト上のギヤとの特定の組合せを選択することができる。
【0003】
さらに詳しく言えば、対応するピニオンおよびギヤの組合せが、トルクおよび回転を、エンジンから、ディファレンシャル装置のようなドライブトレインの下流側の要素に、そして最終的にはドライブトレインに操作結合される車輪に伝達するギヤ比を構成する。レイシャフトのピニオンがカウンタシャフトの対応ギヤを回転駆動する時、得られるギヤ比を、一般的には特定のギヤの番号によって呼称する。例えば、トランスミッション装置の第1ギヤは、レイシャフト上の「第1ギヤ」ピニオンとカウンタシャフト上の「第1ギヤ」ギヤとの間のギヤ比の結果とすることができる。本明細書では、ギヤ比という用語を、2つの回転要素間のトルクまたは速度における任意の低減を含むように広義に用いる。例えば、ギヤ比という用語は、噛み合わされた歯を有する歯車間の比を含むと共に、共通のチェーンによって回転されるスプロケット間の比を含む。
【0004】
ある種のトランスミッションにおいては、同軸に配置される1対の駆動軸またはレイシャフトが設けられる。それぞれのレイシャフトは、通常はピニオンの直径が増大するにつれてレイシャフト間を交互に交替しながら一連のピニオンにトルクを伝達する。レイシャフト上に配置されるピニオンは、カウンタシャフト上に配置される対応するギヤと噛み合っており、これによって所要のギヤ比がもたらされる。次に、カウンタシャフトは、選択されたギヤ比において、ドライブトレインの下流側の要素にトルクおよび回転速度を伝達する。この方法で、例えば、奇数番号のレイシャフトは、第1段、第3段および第5段ギヤ比を提供するように選択され得るピニオンおよびギヤにトルクおよび回転を伝達し、偶数番号のレイシャフトは、第2段、第4段および第6段ギヤ比を提供するように選択され得るピニオンおよびギヤにトルクおよび回転を伝達する。従って、レイシャフト上のピニオン、および、出力軸またはカウンタシャフト上のギヤは、多くの場合、トランスミッションによって提供されるギヤ比の相対的な数列におけるその位置によって呼称される(すなわち、第1ギヤピニオンおよび第1ギヤ、第2ギヤピニオンおよび第2ギヤ、等)。
【0005】
同軸に配置されるレイシャフトを有するトランスミッションは、それぞれのレイシャフトに独立して接続可能なクラッチ装置が具備される場合、しばしばデュアルクラッチトランスミッションと呼称される。このクラッチ装置は、選択されたギヤ比によってトルクおよび回転をカウンタシャフトに供給するように、レイシャフトを選択的に接続および離脱させるためのものである。所要の「ギヤ」つまりギヤ比をもたらすピニオンおよびギヤの所要の組合せは、自動または手動のシフト装置によって選択される。クラッチ装置は、トルクおよび回転を、エンジン入力軸から、選択されたクラッチ装置およびレイシャフトと、対応するピニオンおよびギヤの選択された組合せとによって伝送するように選択的に接続することができ、これによって、入力軸のトルクおよび速度と選択されたギヤ比とによって決定されるトルクおよび回転速度を、カウンタシャフトに、続いてドライブトレインの他の要素に供給できる。
【0006】
噛み合わされるピニオンおよびギヤの組合せが選択されると、通常は、そのピニオンおよび/またはギヤの回転速度を、そのそれぞれのレイシャフトまたはカウンタシャフトの回転と同期させなければならない。この調節を簡単化するため、例えば、カウンタシャフトが、多くの場合、例えば油圧によって個別に作動させ得る多重シンクロナイザを含んでおり、それによって、駆動回転中のカウンタシャフトの所要のギヤを係合して、ギヤ、ピニオンおよび/またはレイシャフトをカウンタシャフトと同じ回転速度に徐々にもっていく。続いて、ギヤおよびカウンタシャフトが、さらに相対的に回転しないようにロックされる。このように、特定のギヤ比が選択されると、カウンタシャフトの回転速度を、選択されたレイシャフト上に配置される対応ピニオンによって回転駆動されるカウンタシャフトの選択されたギヤの速度に合致させる。
【0007】
結果的に得られる出力軸またはカウンタシャフトのトルクおよび速度は、共通の入力軸のトルクおよび速度によって決定され、トランスミッション内において、選択されたピニオンおよびギヤの組合せの間のギヤ比によって変更される。例えば、第1ギヤを選択するために、奇数番号のレイシャフトクラッチを接続して、トルクを入力軸から奇数番号のレイシャフトに伝達することができる。奇数番号のレイシャフトが回転すると、その上に装着される第1ギヤピニオン、第3ギヤピニオンおよび第5ギヤピニオンのようなそれぞれのピニオンを回転させることになる。
【0008】
奇数番号のレイシャフトが回転すると、第1ギヤピニオン、第3ギヤピニオンおよび第5ギヤピニオンが、カウンタシャフトの対応する各ギヤをそれと共に回転駆動するが、カウンタシャフトの対応する各ギヤは、係合されていなければカウンタシャフトに対して自由回転できる。第1ギヤが選択されると、カウンタシャフト上に配置される第1ギヤ関連のシンクロナイザを作動させて、第1ギヤを、カウンタシャフトと一緒に回転するようにカウンタシャフトに係合する。奇数番号のレイシャフト上に装着され、そのレイシャフトによって駆動される第1ギヤピニオンが、カウンタシャフト上の第1ギヤと噛み合い、従って、第1ギヤの回転によってカウンタシャフトを駆動し、続いてドライブトレインを回転する。他のギヤについても同様の手順が取られる。この順序は、高いギヤ(例えば第2ギヤ)から低いギヤ(例えば第1ギヤ)にシフトするために逆にすることも可能である。
【0009】
トランスミッションは、通常、エンジン、ラジエータおよび冷却材装置、バッテリ等のような他の多くの構成機器をも含むエンジンルーム内に配置される。現代のほぼ全ての車両において、エンジンルームは予備的な空間またはスペースをほとんど有していない。このため、車両の設計には、エンジンルーム内部に搭載される各構成機器の寸法および形状に対する配慮が必要になる。1つ以上の構成機器の予め決められた寸法および形状が、エンジンルーム内でのスペースの制限のために、他の機器の特殊な利用を招来したりあるいは規定したりすることも少なくない。さらに、エンジンルームおよび車体の設計は、運転に関する構成機器を最小に纏めるという要求に影響される場合も多い。いくつかの例においては、トランスミッションの寸法および/または重量の10%節減が、営業上の観点から重要であると考えられている。
【0010】
多くのデュアルクラッチトランスミッションにおいては、シンクロナイザがカウンタシャフト上に配置される。これは、同軸のレイシャフトおよびカウンタシャフトの配置と、トランスミッションの長さを最小化したいという要求とによるものである。例えば、この配置によって、シンクロナイザをレイシャフト上のピニオン間に配置する場合よりも、レイシャフト上のピニオンを一層近づけて配置することが可能になる。しかし、このトランスミッション配置には不利な点がある。
【0011】
例えば、各シンクロナイザは、カウンタシャフトとカウンタシャフト上に配置される選択されるギヤとの間にトルクを伝達するに十分な容量を有しなければならない。要求されるシンクロナイザのトルク容量は、カウンタシャフトと、係合前の選択されたギヤとの間の速度差(w)の2乗と、ギヤの回転慣性との関数であり、この回転慣性はギヤの直径および他の因子の関数である。ギヤの直径は所要のギヤ比に応じて変化することができる。例えば、第1ギヤにおいては、入力軸のトルクおよび速度に対して、カウンタシャフトの回転速度を低減し、そのトルクを増大させることが望ましい場合が多い。これを実現するため、第1ギヤピニオンは、それに関係するレイシャフトの直径によって制限されるが、できるだけ小径のものとし、カウンタシャフト上の対応する第1ギヤは非常に大きな径のものとすることが多い。レイシャフト上に配置される第2ギヤピニオンの直径は、一般的に、第1ギヤピニオンより大きく、カウンタシャフト上に配置される第2ギヤの直径は第1ギヤの直径よりも小さい、等々である。
【0012】
第1段ギヤ比に要求される比較的大きな減速とトルク増大とのために、カウンタシャフトの第1ギヤ用のシンクロナイザのトルク容量は、多くの場合、他のギヤ用のシンクロナイザ容量よりも大幅に大きくしなければならない。第1ギヤ用のシンクロナイザがカウンタシャフト上に装着されるので、シンクロナイザは、相対的に高いギヤ比と第1ギヤの回転慣性とによって課せられる付加的なトルク負荷を補償するに十分なトルク容量を有しなければならない。この第1ギヤの回転慣性には、ピニオンおよびレイシャフトから反映される慣性が含まれる場合がある。例えば、代表的な5速トランスミッションにおいては、ギヤ比は次のように取ることができる。すなわち、4.12(第1ギヤ)、2.17(第2ギヤ)、1.52(第3ギヤ)、1.04(第4ギヤ)、0.78(第5ギヤ)および3.32(バックギヤ)である。
【0013】
一般的に、シンクロナイザに要求される容量が大きくなる程、シンクロナイザは大型になりそのコストも高くなる。従って、このトランスミッションのコストを最小化するには、異なる容量を有する異なる多種類のシンクロナイザを用いることになる。例えば、第1ギヤ用のシンクロナイザは、一般的に他のギヤ用のシンクロナイザよりも大きくかつコスト高になり、マルチコーンシンクロナイザのような、異なったさらに複雑な構造のものとすることができるが、これは付加的な耐久性の問題および補修上の問題を提起する。
【0014】
さらに、ピニオンおよびギヤの配置が、トランスミッションの最小直径(レイシャフトの軸に垂直)および最小長さ(レイシャフトの軸に平行)を制限する。例えば、第1ギヤの直径、通常最大ギヤ径は、トランスミッション全体の直径を低減する努力を制約する因子となる場合が多い。またさらに、カウンタシャフト上のギヤの個数が、トランスミッションの最小長さの制限因子になる可能性がある。これは、ギヤが通常直列に同列配置され、異なるギヤ比について、レイシャフトの各ギヤに対して個別のカウンタシャフトギヤが設けられるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、設計と、搭載と、エンジンルーム内部に搭載されるトランスミッション機器の選択とにおいて、柔軟性のある機器を提供することが望まれる。特に、選択された形状に構成することが可能であり、コストが低下し、設計上の制約の複雑さを低減して取り扱うことができる車両トランスミッションの提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
トルクをエンジン入力軸からドライブトレインに伝達する車両トランスミッションの機構および装置であり、コスト的により効率的なトランスミッションの機構および装置を、より高いスペース効率を目指して、また、自己加圧力およびクラッチ引きずりを低減するものとして構成することができる。1つの特徴面において、複雑さの程度が低く低コストのトランスミッションを提供するために、この装置は、異なるギヤ比で駆動されるデュアルクラッチと、そのクラッチによって駆動されるレイシャフトに装着され、そのレイシャフトに係合し得るピニオンとの組合せを採用している。このピニオンが、カウンタシャフト上のギヤをさらに別のいくつかのギヤ比において駆動する。
【0017】
この態様において、この装置は、エンジンのトルクおよび回転を、従来の装置と同じカウンタシャフトにおける有効ギヤ比で、かつ減速されたレイシャフト回転速度において、従って、クラッチ引きずりおよびクラッチの自己加圧圧力を低減して、ドライブトレインに伝送するための耐久性のあるコスト的に効率的な機構を提供する。さらに、この装置は、コスト的により効率的でより簡易なシンクロナイザおよび他の係合装置用の寸法を有するピニオンと、直径を低減したカウンタシャフトギヤとの使用を可能にする。トランスミッションおよび装置のこの特徴面によって提供されるスペース効率によって、クラッチの複雑さおよびコストの低減と、交換可能なクラッチ構成要素の使用と、クラッチ、レイシャフト、およびダンパ、オイルポンプのような関連部品のコストまたはスペースの点でさらに効率的な配置とがもたらされる。
【0018】
1つの特徴面において、このトランスミッション機構および装置は、スプロケットまたはギヤのようなエンジン入力駆動部材を備えたエンジンからの入力軸を含み、このエンジン入力軸が、別個の第1クラッチおよび第2クラッチを同時に駆動する。各クラッチは、トルクをエンジン入力軸からクラッチの入力側に伝送するように構成される、スプロケットまたはギヤのような駆動部材を含む。エンジントルクは、第1ギヤ比において第1クラッチに伝送され、異なる第2ギヤ比において第2クラッチの入力側に伝送される。
【0019】
1つの特徴面において、各クラッチに、そのクラッチによって選択的に接続し得るレイシャフトが設けられ、エンジンのトルクおよび回転がそれぞれの第1または第2ギヤ比においてそのレイシャフトに伝送される。第1クラッチには、奇数番号のトランスミッションギヤ、例えば第1ギヤ、第3ギヤおよび第5ギヤ用の第1または奇数番号のレイシャフトが装備される。このレイシャフトは第1レイシャフト軸の回りに回転できる。第2または偶数番号のクラッチには、第2レイシャフト軸の回りに回転し得る第2レイシャフトで、第2ギヤ、第4ギヤ、第6ギヤおよびバックギヤのような偶数番号のトランスミッションギヤ用の第2レイシャフトが装備される。第1レイシャフト軸は、第2レイシャフト軸から離して、それに平行に配置される。
【0020】
さらに、各レイシャフトは、同軸に配置される複数のピニオンを担持する。第1の、奇数番号のレイシャフト上の第1組のピニオンは、奇数番号のギヤ用であり、第2組のピニオンは第2の、偶数番号のレイシャフト上に配置される。ピニオンは、カウンタシャフト上に装着されるギヤと連続的に噛み合っており、そのギヤを駆動するように配置される。この特徴面においては、カウンタシャフトは、第1レイシャフト軸および第2レイシャフト軸の両者から平行に離れた軸の回りに回転し、カウンタシャフトのギヤはカウンタシャフト上に同軸に配置される。奇数番号の各トランスミッションギヤの場合は、カウンタシャフトギヤは、第1の、奇数番号のレイシャフトのピニオンの対応するピニオンと噛み合って、そのピニオンによって駆動される。偶数番号の各トランスミッションギヤの場合は、カウンタシャフトのギヤは、第2の、偶数番号のレイシャフトの1つのピニオンと連続的に噛み合っており、そのピニオンによって駆動される。
【0021】
カウンタシャフトのギヤとピニオンとの各対が異なるギヤ比を提供し、このギヤ比が、いずれかのクラッチによってもたらされるギヤ比と組み合わされて、最終の有効なトランスミッションギヤ比、すなわち、各トランスミッションギヤに対してカウンタシャフトを通してドライブトレインに設定されるギヤ比を供給する。この特徴面においては、レイシャフトは、回転およびトルクを異なるギヤ比において各組のピニオンに伝送するように独立して係合することが可能であり、各組の各ピニオンを、その対応するカウンタシャフトギヤに、異なるギヤ比において独立して係合することができる。従って、デュアルクラッチトランスミッション機構のこの特徴面においては、レイシャフトピニオンおよび対応するカウンタシャフトギヤ間のギヤ比を、従来型のトランスミッションに用いられるギヤ比に比べて、最終の有効ギヤ比を同等にしながら低減することができる。
【0022】
別の特徴面においては、ピニオンおよびカウンタシャフトギヤがもたらすギヤ比の低減によって、ピニオンの直径、特に低速ギヤ(すなわち第1ギヤ、第2ギヤおよびバックギヤ)用のピニオンの直径の増大が可能になり、これによって、シンクロナイザを、カウンタシャフトでなくレイシャフトに用いることが可能になる。この特徴面においては、ピニオンおよびカウンタシャフトギヤの各対は、ピニオンがそのそれぞれのレイシャフトに係合されることによって噛み合い係合することになる。レイシャフトのシンクロナイザは、各レイシャフトに装着されて、1つ以上のピニオンを選択的に係合する。いくつかの応用例においては、シンクロナイザが、隣接するピニオン間に配備され、中立の非係合位置から1つの方向に動いて一方のピニオンを係合し、反対側の方向に動いて他方のピニオンを係合することができる。
【0023】
各シンクロナイザは第1摩擦面を有する接触部分を含み、この接触部分はピニオン上の受け入れ部分の摩擦面を係合する方向に向けられる。レイシャフトおよびピニオンの回転を同期させるため、シンクロナイザの接触部分が、前進的に動かされてピニオンの受け入れ面と摩擦接触するに至り、レイシャフトおよびピニオンの回転速度が基本的に等しくなって、ピニオンの位置がロックされるまで、トルクおよび回転を伝送する。シンクロナイザのトルク容量は、ギヤ、ピニオンおよびレイシャフトの慣性と、クラッチの引きずりと、関係する因子とを補償するに十分なものである。
【0024】
シンクロナイザを、デュアルクラッチトランスミッションにおいて通例であるカウンタシャフト配置からレイシャフトに移すことによって、シンクロナイザに対するトルク負荷の増加が、ギヤ比の係数分だけ回避される。その結果、低速ギヤのシンクロナイザに対するトルク容量を、従来型のデュアルクラッチトランスミッションの場合に比べて大幅に低減できる。1つの態様においては、シングルコーンのシンクロナイザまたはワンウェイクラッチを、従来型デュアルクラッチトランスミッションにおいて使用される高価かつ複雑な多段シンクロナイザ、あるいは他の高トルク容量の装置に代えて用いることができる。ワンウェイクラッチを使用する1つの態様においては、油圧作動のシンクロナイザも省略でき、制御装置が簡素化される。
【0025】
別の特徴面においては、エンジン入力軸と第1および第2クラッチとの間に選択されるギヤ比によって、カウンタシャフトへの必要なトルクおよび回転の伝送に要求されるクラッチおよびレイシャフトの回転速度が低下する。この速度の低下は、クラッチの引きずりと、クラッチにおけるドリフト接続または自己加圧速度を低下させる。これらは、クラッチの回転の結果として、クラッチを冷却しかつ操作するために用いられる流体に作用する遠心力の関数である。自己加圧力の低下によって、自己加圧力を相殺する均衡装置の複雑さと、自己加圧力を相殺するに必要なバネ力とを低減できる。その結果、機構および装置に、追加的なコストの節減および運転効率がもたらされる。
【0026】
この特徴面における1つの態様においては、車両のトランスミッション機構に、エンジン入力が、エンジン入力軸を介して2つのスプロケットによって供給される。すなわち、第1の、奇数番号のクラッチと第2の、偶数番号のクラッチとに、別個のスプロケット−チェーン同時駆動が提供される。エンジン入力スプロケットおよびクラッチ駆動スプロケットは、それぞれ複数のスプロケット歯を備えており、第1の、奇数番号のクラッチにおいて第1ギヤ比を、第2の、偶数番号のクラッチにおいて第2ギヤ比を生成する。
【0027】
さらに別の態様においては、エンジン入力駆動と、第1クラッチ駆動と、第2クラッチ駆動とに、スプロケットに代えてギヤが設けられる。アイドラギヤがエンジン入力ギヤと噛み合って、そのエンジン入力ギヤによって駆動され、そのアイドラが第1クラッチギヤおよび第1クラッチを駆動する。第2アイドラギヤが、エンジン入力ギヤによって駆動され、第2クラッチ駆動ギヤを駆動する。エンジン入力ギヤおよびクラッチ駆動ギヤの直径が、第1の、奇数番号のクラッチに関しては第1ギヤ比を、第2の、偶数番号のクラッチに対しては第2ギヤ比を提供する。
【0028】
別の態様においては、エンジン入力軸と第1の、奇数番号のクラッチとの間には第1の上流側ギヤ比においてスプロケット駆動が設けられ、エンジン入力軸と第2の、偶数番号のクラッチとの間にはギヤ駆動が設けられて、第2の上流側ギヤ比を提供する。また別の態様においては、上流側のスプロケットおよびギヤ駆動の組合せが、クラッチを異なるギヤ比において駆動するために用いられる。これは、第1クラッチの駆動ギヤまたはスプロケットが、第2クラッチのギヤまたはスプロケットを第2ギヤ比において駆動することができる駆動機構を含む。
【0029】
1つの態様においては、代替的なバックギヤ構成を用いることが可能であり、クラッチの下流側に用いられるギヤ比低減の利点を活用できる。さらに別の特徴面においては、本開示のデュアルクラッチ機構および装置によって、エンジン入力軸と、クラッチと、レイシャフトと、カウンタシャフトとの配置において非常に高い柔軟性が可能になり、他の構成要素をこの装置と共に効率的に使用することができる。このような態様においては、第1および第2のレイシャフト軸をカウンタシャフト軸から等距離に置くとよい。エンジンの入力軸とエンジン入力部材との間には、エンジンの入力軸における振動を減衰させるためのダンパを同軸に挿入することができる。ダンパは、また、トランスミッションオイルの流れが供給されるトランスミッションハウジングの内部、すなわち「湿」環境内にも配置することができる。ポンプ駆動を、オイル供給装置における効率を高めるために、エンジンの入力軸に同心に装着することができる。
【0030】
本開示のデュアルクラッチ機構および装置は、さらに、クラッチの上流側および下流側のギヤ比を選択することによって、トランスミッションの構成要素を変更する方法を提供する。本装置が提供する柔軟性を活用することによって、以下に述べるようなコストおよび操作面における効率性を、トランスミッションの構造および機能を特定の用途に対して最適化するために用いることができる。本開示のデュアルクラッチ機構および装置の他の特徴面、利点および使用方法を以下に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】エンジン入力軸上に装着されたエンジン入力スプロケットを備えた6速のデュアルクラッチトランスミッション機構の入力側の構成の説明的な正面図であり、奇数番号のギヤ比(例えば第1、第3および第5ギヤ)を提供するピニオンおよびギヤの駆動に適した第1クラッチ駆動スプロケットと、偶数番号のギヤ比(例えば第2、第4および第6ギヤ)を提供するピニオンおよびギヤの駆動に適した第2クラッチ駆動スプロケットとを駆動するためのチェーンを備えたデュアルクラッチトランスミッション機構の入力側の正面図である。
【図2】図1のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成を線2−2に沿って見た断面図であり、奇数番号のギヤ比用のピニオンを備えた第1または奇数番号のレイシャフトおよび偶数番号のギヤ比用のピニオンを備えた第2または偶数番号のレイシャフトと、カウンタシャフトと、シンクロナイザ操作される第1ギヤおよびシンクロナイザ操作されるバックギヤとを示す断面図である。
【図3】図1のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成を線3−3に沿って見た断面図であり、エンジン入力軸と、奇数番号のレイシャフトと、カウンタシャフトと、ディファレンシャル装置とを示す断面図である。
【図4】エンジン入力軸上に装着されたエンジン入力ギヤによって、第1または奇数番号のクラッチ駆動ギヤと第2または偶数番号のクラッチ駆動ギヤとを駆動するためのアイドラギヤを有するデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の入力側の説明的な正面図である。
【図5】図4のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の入力側を線5−5に沿って見た断面図である。
【図6】入力軸上に装着された入力ギヤによって第1または奇数番号のクラッチ駆動ギヤを駆動するためのアイドラギヤと、エンジン入力軸上に装着されたエンジン入力スプロケットによって第2または偶数番号のクラッチ駆動スプロケットを駆動するためのチェーンとを有するデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の入力側の説明的な正面図である。
【図7】図6のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の入力側を線7−7に沿って見た断面図である。
【図8A】エンジン入力軸上に装着された第1エンジン入力スプロケットによって第1または奇数番号のクラッチ駆動スプロケットを駆動するための第1チェーンと、エンジン入力軸上に装着された第2エンジン入力スプロケットによって第2または偶数番号のクラッチ駆動スプロケットを駆動するための第2チェーンとを有するデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の入力側の説明的な正面図である。
【図8B】図8Aの構成の第1および第2入力スプロケットと、第1および第2チェーンとを線8−8に沿って見た部分断面図である。
【図9】エンジン入力軸上に装着されたエンジン入力ギヤによって第1または奇数番号のクラッチ駆動ギヤと第2または偶数番号のクラッチ駆動ギヤとを駆動するアイドラギヤを有するデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の入力側の説明的な正面図である。
【図10】図9のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の入力側を線10−10に沿って見た断面図である。
【図11】エンジン入力軸上に装着されたエンジン入力スプロケットによって第1または奇数番号のクラッチ駆動スプロケット/ギヤを駆動するチェーンと、第1または奇数番号のクラッチ駆動スプロケット/ギヤによって第2または偶数番号のクラッチ駆動ギヤを駆動するアイドラギヤとを有するデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の入力側の説明的な正面図である。
【図12】図11のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成を線12−12に沿って見た断面図である。
【図13】デュアルクラッチトランスミッション機構の別の構成の断面図であり、エンジン入力軸と、カウンタシャフトおよび第1または奇数番号のレイシャフトと、エンジン入力軸に同心に装着されたポンプと、外部ダンパと、第1または奇数番号のレイシャフトおよび第1ギヤピニオン間のワンウェイクラッチとを示す断面図である。
【図14】5速のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の断面図であり、第1または奇数番号のレイシャフトと、第2または偶数番号のレイシャフトおよびカウンタシャフトと、第1ギヤピニオンおよび第1または奇数番号のレイシャフト間のワンウェイクラッチと、シンクロナイザ操作されるバックギヤとを示す断面図である。
【図15】図14のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の別の断面図であり、第1または奇数番号のレイシャフトと、カウンタシャフトおよびエンジン入力軸と、第1または奇数番号のレイシャフトおよび第1ギヤピニオン間のワンウェイクラッチと、内部ダンパとを示す断面図である。
【図16】図14および図15のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の動力の流れの概略説明図である。
【図17】図1〜3のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の動力の流れの概略説明図である。
【図18】5速のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の断面図であり、第1または奇数番号のレイシャフトと、第2または偶数番号のレイシャフトおよびカウンタシャフトと、ワンウェイクラッチ操作される第1ギヤピニオンと、スライド式バックアイドラギヤとを示す断面図である。
【図19】図18のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の断面図であり、エンジン入力軸と、カウンタシャフトと、第1または奇数番号のレイシャフトと、内部ダンパと、ディファレンシャル装置とを示す断面図である。
【図20】6速のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の断面図であり、第1または奇数番号のレイシャフトと、第2または偶数番号のレイシャフトおよびカウンタシャフトと、第1または奇数番号のレイシャフトおよび第1ギヤピニオン間のワンウェイクラッチと、スライド式バックアイドラギヤとを示す断面図である。
【図21】5速のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の断面図であり、第1または奇数番号のレイシャフトと、第2または偶数番号のレイシャフトおよびカウンタシャフトと、シンクロナイザ操作される第1ギヤピニオンと、シンクロナイザ操作されるバックギヤピニオンとを示す断面図である。
【図22】5速のデュアルクラッチトランスミッション機構の構成の断面図であり、第1または奇数番号のレイシャフトと、第2または偶数番号のレイシャフトおよびカウンタシャフトと、遊星歯車操作されるバックギヤと、第1または奇数番号のレイシャフトおよび第1ギヤピニオン間のワンウェイクラッチとを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
最初に図1を参照すると、デュアルクラッチトランスミッション機構10の構成の実施形態が表現されている。図示のように、本明細書では奇数番号のレイシャフト20と呼称する第1レイシャフトと、偶数番号のレイシャフト22と呼称する第2レイシャフトとが、車両のエンジン(図示せず)から伝達される動力を受け取る軸として示されている。この2つの軸は、平行に、同軸でなく互いに並んで配置される。エンジンの運転によって生成されるエンジン速度の全域にわたる可変トルクの形のエンジン動力は、入力機構26に連結されるエンジン入力軸24(図3参照)を介して伝達される。
【0033】
1つの実施態様においては、入力機構26は、エンジン入力スプロケット28の形態であり、図3に示すようにダンパ30とその他の構成要素とを含むことができる。このダンパ30は、エンジンからの不規則なまたは変動する動力から生じる衝撃または振動を緩和するためのものであり、以下に詳述する。図1に示す実施形態においては、スプロケット28は、サイレントチェーンのようなチェーン40に接続され、チェーン40は、第1または奇数番号のクラッチ駆動スプロケット42および第2または偶数番号のクラッチ駆動スプロケット44に連結される。この両スプロケット42および44は、それぞれ、図2に示すように、クラッチ装置60、62を介して奇数番号のレイシャフト20および偶数番号のレイシャフト22に操作連結される。他の実施形態においては、エンジン入力スプロケット28によって奇数番号のクラッチ駆動スプロケット42および偶数番号のクラッチ駆動スプロケット44を駆動するのに、ギヤ装置、ギヤ装置およびチェーン装置の組合せ、ベルト、または他の動力伝達装置を用いることができる。これらの装置は、通常はクラッチ装置60、62を介して奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22のそれぞれを駆動するためにエンジン入力軸24を使用するためのものである。この入力機構26の例が図4〜12に示されており、これについては以下に詳述する。
【0034】
図1および図2を参照すると、出力軸またはカウンタシャフト50は、レイシャフト20、22上に配置される一連のピニオンとカウンタシャフト50上に配置される一連のギヤとを介して、奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22のそれぞれと連絡するように配置され、トルクおよび回転速度を、ドライブトレインまたはパワートレインを通して伝達する。どちらのクラッチ装置60、62が、それぞれの奇数番号のクラッチ駆動スプロケット42または偶数番号のクラッチ駆動スプロケット44からのトルクを伝達するように接続されるかに応じて、カウンタシャフト50は、レイシャフト20、22の一方または他方から動力を受け取ることができる。カウンタシャフト50は、次に、車両の車輪にトルクを伝達して車両を走行させるためにパワートレインの下流側の構成要素を駆動するように、構成される。
【0035】
さらに説明すると、この態様においては、最終の駆動ギヤ52は、図3に示すように、カウンタシャフト50によって回転駆動される。最終の駆動ギヤ52は、トルクを、トランスアクスルまたはディファレンシャルのようなドライブトレインの下流側要素に伝達する。この態様においては、奇数番号のレイシャフト20および偶数番号のレイシャフト22の両者と平行で、その両者から離して配置されるカウンタシャフト50の位置によって、トランスミッション10の最小軸方向長さが有利に減少し、一方では、カウンタシャフト50の平均直径のような寸法を、それを通して伝達されるトルクを扱うに十分な容量を有するものにすることを可能にする。必要な場合には、他の代替的な配置も使用可能であり、部分的には、トランスミッション機構10が配置される車両のエンジンルームの設計上の制約に従って選択できる。
【0036】
図1〜3に示すトランスミッション機構10の態様においては、レイシャフト20、22の回転軸は、一般的にカウンタシャフト50の回転軸から等距離に置かれる。他の配置においては、カウンタシャフト軸およびレイシャフト軸の間の距離は、特定のエンジン、パワートレインおよび/またはエンジンルームの必要性に対して調整することができる。
【0037】
ここで図2を参照すると、奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22が描かれている。図から分かるように、各レイシャフト20、22にはそれぞれのクラッチ装置60、62が付属しており、奇数番号のクラッチ装置60が奇数番号のレイシャフト20に付属し、偶数番号のクラッチ装置62が偶数番号のレイシャフト22に付属している。トランスミッション機構10の制御装置(図示せず)が、エンジンによって、特にエンジン入力軸24および入力機構26を介して奇数番号および偶数番号のシャフト20、22を回転駆動するために、クラッチ装置60、62の選択的な作動または接続を可能にする。
【0038】
クラッチ装置60、62の上流側では、奇数番号のクラッチ装置60が、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット42を経由して、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット42とエンジン入力スプロケット28との間の事前設定された比によってエンジンから動力を受け取り、一方、偶数番号のクラッチ装置62が、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット44を経由して、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット44とエンジン入力スプロケット28との間の事前設定された比によってエンジンから動力を受け取る。奇数番号のクラッチ駆動スプロケット42および偶数番号のクラッチ駆動スプロケット44は、異なる歯数および/または異なる直径および/またはチェーンのピッチ半径を有する。このため、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット42および偶数番号のクラッチ駆動スプロケット44が両方とも、共通のエンジン入力スプロケット28によって回転駆動されるが、エンジン入力スプロケット28と奇数番号のクラッチ駆動スプロケット42との間のギヤ比は、エンジン入力スプロケット28と偶数番号のクラッチ駆動スプロケット44との間のギヤ比とは異なっている。これにより、入力側の異なるトルクおよび回転速度を受け取る2つのクラッチ装置60、62がもたらされる。
【0039】
ここで、クラッチ装置60、62の下流側に移ると、各レイシャフト20、22は、出力軸またはカウンタシャフト50上の対応するギヤと噛み合う1組のピニオンを有する。レイシャフト20、22の各ピニオンとカウンタシャフト50の対応するギヤとの間にはギヤ比が存在する。ピニオンおよび対応するギヤは、エンジン入力軸24と、続いて最終駆動ギヤ52を駆動するカウンタシャフト50との間の有効ギヤ比を実現するために、そのギヤ比に応じて順番に使用することができる。有効ギヤ比は、上流側のギヤ比、すなわち、エンジン入力スプロケット28と選択された奇数番号または偶数番号のクラッチ駆動スプロケット42、44との間の比と、下流側のギヤ比、すなわち、奇数番号または偶数番号のレイシャフト20、22の選択された方の選択されたピニオンと、カウンタシャフト50の対応するギヤとの間の比との積である。カウンタシャフト50の回転速度はトルクとは逆の関係にあるが、この回転速度は、従って、有効ギヤ比によって決定される。
【0040】
クラッチ装置60、62の下流側においては、第1ギヤピニオン70と、第3ギヤピニオン74と、第5ギヤピニオン78と、バックギヤピニオン82とが奇数番号のレイシャフト20に配置され、第2ギヤピニオン72と、第4ギヤピニオン76と、第6ギヤピニオン80とが偶数番号のレイシャフト22に配置される。第1〜第6のギヤピニオン70、72、74、76、78、80は、レイシャフト20、22上に、一般的に交互に配置される。これは、トランスミッション10が、レイシャフト20、22上のギヤの選択と、それぞれ奇数番号のレイシャフト20および偶数番号のレイシャフト22を回転駆動する奇数番号および偶数番号のクラッチ装置60、62の接続とを交互に行うことによって、回転トルクおよび速度を、レイシャフト20、22のギヤピニオン70、72、74、76、78および80とカウンタシャフト50の対応するギヤとの選択されかつ係合された1組から次の組(高いギヤ比または低いギヤ比のいずれか)へシフトさせることができるようにするためである。バックギヤ用に要求されるギヤ比は、一般的に第2ギヤ用の比よりも大きく第1ギヤ用の比よりも小さいので、第1ギヤピニオン70およびバックギヤピニオン82は、共に、この特定の例では、同じレイシャフト、つまり奇数番号のレイシャフト20上に配置される。
【0041】
レイシャフト20、22の各ピニオン70、72、74、76、78、80および82は、それぞれのレイシャフト20、22と同軸であり、一般的にそのレイシャフトの回りに自由に回転することができる。ピニオンをレイシャフトに係合するために、シンクロナイザ120(普通単にシンクロとして知られる)がピニオンを係合して、レイシャフト20、22の速度を選択されたピニオンの速度と合致させる、あるいは、選択されたピニオンの速度をそれぞれのレイシャフト20、22の速度と合致させる。
【0042】
各シンクロナイザ120は、図2に示すように、奇数番号のレイシャフト20または偶数番号のレイシャフト22のいずれかのレイシャフトの回りに配置される内腔を有するスプライン部分121を具備することができる。シンクロナイザの内腔は内側のスプラインを有しており、この内側のスプラインは、レイシャフト20、22上に設けられかつシンクロナイザ120の内腔と同列に並ぶ外側のスプラインと協動する。シンクロナイザ120は、シンクロナイザ120の内腔のスプラインがレイシャフト20、22の外側のスプラインと係合したまま、レイシャフト20、22に沿って移動することができる。従って、シンクロナイザ120のスプライン部分121はレイシャフト20、22と共に回転する。
【0043】
シンクロナイザ120は、さらに、それが関連する1つ以上のギヤピニオン70、72、74、76、78、80および82と係合および離脱し得る摩擦部分122を有する。例えば、第1シンクロナイザ123は、奇数番号のレイシャフト20上に設けられ、第1ギヤピニオン70およびバックギヤピニオン82の両者と関連する。トランスミッション機構10が第1段ギヤ比にシフトされると、シンクロナイザ123が第1ギヤピニオン70の方に動き、摩擦部分122が第1ギヤピニオン70の対応する部分と係合する。そうすることによって、第1ギヤピニオン70が奇数番号のレイシャフト20の速度まで加速される。但し、衝撃のショックを防ぐために必要な場合にはスリップできる。すなわち、第1ギヤピニオン70は、トランスミッションをロックせずに、トランスミッション機構10従って車両にかなりの衝撃振動を及ぼすことなく、奇数番号のレイシャフト20の回転速度まで加速する。
【0044】
第1ギヤピニオン70の回転速度が加速されて奇数番号のレイシャフト20の回転速度に等しくなる(あるいは逆に、奇数番号のレイシャフト20の回転速度が第1ギヤピニオン70の回転速度になる)と、シンクロナイザ123のカラー121(普通ドグカラーとして知られる)が動いて第1ギヤピニオン70と係合する。カラー121も奇数番号のレイシャフト20に呼応して回転する。カラー121は歯(普通ドグ歯として知られる)(図示せず)を有しており、この歯が第1ギヤピニオン70の対応する窪みに受け入れられて、その結果、第1ギヤピニオン70および奇数番号のレイシャフト20が同じ回転速度で回転する。
【0045】
例として、シンクロナイザ120が、第1、第2、第3、第4、第5、第6の各ギヤピニオンおよびバックギヤピニオン70、72、74、76、78、80および82のそれぞれに対して、奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22上に設けられるものとする。シンクロナイザ120の配置の他の例については、図14〜22に関する説明において記述する。上記のように、第1シンクロナイザ123は、第1およびバックギヤピニオン70、82を奇数番号のレイシャフト20に係合してそれと共に回転駆動するために、奇数番号のレイシャフト20上に配置される。第1シンクロナイザ123は、ギヤ比の選択に対して第1およびバックギヤピニオン70、82間を動き、第1およびバックギヤピニオン70、82のそれぞれのためのそれぞれの摩擦部分122を含んでいる。第1シンクロナイザ123のそれぞれの摩擦部分122はカップの形状である。さらに特定すれば、第1シンクロナイザ120は、シングルコーンシンクロナイザとすることが望ましい。
【0046】
奇数番号および偶数番号のレイシャフトが同軸に配置されるような先行のトランスミッション装置においては、レイシャフトまたはシャフトが、本明細書で述べるトランスミッション機構10の単一のカウンタシャフト50に相当する1つ以上の出力軸またはカウンタシャフトと連絡する。このような先行のトランスミッション装置においては、シンクロナイザは、特に第1ギヤピニオンおよびカウンタシャフトの対応ギヤ用の場合、カウンタシャフト上に装着されるのが通例であった。第1ギヤ用のレイシャフトピニオンの直径は、所要の第1段ギヤ比(高トルク)を提供するため、カウンタシャフトギヤの直径に比べて必然的に小さくなった。いくつかの例では、第1ギヤピニオンの直径を最小化するため、第1ギヤピニオンがレイシャフト上に機械加工された。従って、いかなるタイプのシンクロナイザであれシンクロナイザ用としてのレイシャフト上の操作スペースは不十分であるか、あるいは、第1ギヤピニオンがレイシャフトに機械加工される場合には、レイシャフト上のシンクロナイザは採用し得なかった。
【0047】
上記のように、このような先行のトランスミッション装置において、かかるカウンタシャフトおよびカウンタシャフトギヤを加速および減速してピニオンおよびレイシャフトの回転速度に合致させること、つまりこれらのギヤの加速は、本開示のトランスミッション機構10の実施形態、すなわち、例えば奇数番号のレイシャフト20上の第1シンクロナイザ123のようなレイシャフト20、22上のシンクロナイザ120を用いるトランスミッション機構10の実施形態の配置よりも、遥かに大きなトルク容量を有するシンクロナイザを必要とする。代表的な先行のトランスミッション装置においては、第1ギヤ、第2ギヤ、第3ギヤおよびバックギヤ用のシンクロナイザは、通常カウンタシャフト上に配置される。しかし、上記にように、ギヤ、特に第1段およびバックギヤ比のような高いギヤ比用のギヤは、レイシャフト上に配置される対応ギヤピニオンよりも大幅に大きな直径を有する可能性がある。カウンタシャフト上に配置される低速ギヤの大きな直径は、低速ギヤの回転慣性の増大をもたらし、従って、低速ギヤをカウンタシャフトと同期させるのにより大きなトルク容量が必要になる。
【0048】
さらに具体的には、シンクロナイザに要求されるトルク容量は、同期される2つのギヤ間の速度差と、ギヤの回転慣性との関数である。例えば、先行トランスミッション装置の出力軸またはカウンタシャフト上に装着されるギヤおよび関連シンクロナイザを用いる第1ギヤが選択されると、駆動軸またはレイシャフト上に配置される対応ギヤピニオンと噛み合うカウンタシャフト上の該当ギヤを係合するシンクロナイザが用いられる。レイシャフトの回転を加速(あるいは減速)するため、シンクロナイザが付与するトルクおよび回転を、選択されたカウンタシャフトのギヤと、レイシャフトの対応噛み合いギヤピニオンとによって伝達しなければならない。この過程において、レイシャフトからの回転慣性が、カウンタシャフト上のシンクロナイザに反映して加えられ、カウンタシャフトの選択されたギヤとレイシャフトの対応噛み合いギヤピニオンとの間のギヤ比の2乗分だけ増大することになる。
【0049】
従って、例えば、レイシャフト上の第1ギヤピニオンとカウンタシャフト上の対応ギヤとの間の比が1:4である場合に、先行トランスミッション装置において典型的に見られるように、カウンタシャフト上にシンクロナイザを装着すると、図1〜3に示すような本開示のトランスミッション機構10の構成において、第1ギヤピニオン70を奇数番号のレイシャフト20に係合するために奇数番号のレイシャフト20上に配置されるシンクロナイザ120に要求されるトルク容量よりも、16倍大きいトルク容量が必要になるであろう。
【0050】
高いトルク要求に応じるための他の先行トランスミッション装置における1つの方法は、ギヤとカウンタシャフトとの係合用としてマルチポストの比較的複雑な装置を使用するか、あるいは、第1ギヤ、バックギヤおよび他の比較的高い比のギヤ用として、トリプルコーンシンクロナイザのようなマルチコーンの摩擦部分を有するさらに複雑なシンクロナイザを用いることであった。これらのマルチコーンシンクロナイザは、コーンとカウンタシャフトまたはレイシャフトとの間の相互作用によってギヤまたはピニオンにトルクを前進的に伝送するように相互作用する摩擦面を備えた一連の入れ子式のコーンを必要とする。さらに、これには、その適切な運転を確実にするために付加的な、より複雑な中心装置が必要である。従って、このようにトルク容量を増大させたマルチコーンシンクロナイザおよび他の装置は、一般的に、トルク容量が多くの場合低いシングルコーンシンクロナイザよりも高価で寸法も大きい。
【0051】
図1〜3に示す本開示のトランスミッション機構10の態様においては、このようなマルチコーンシンクロナイザまたはさらに複雑な高トルク容量の装置は必要でない。この理由の一部は、シンクロナイザ120がレイシャフト上に装着されるからである。デュアルクラッチトランスミッション機構10の本開示の実施形態においては、クラッチ装置60、62の上流側およびクラッチ装置60、62の下流側の両方のギヤ比を組み合わせて用いることによって、レイシャフト、すなわち奇数番号のレイシャフト20および偶数番号のレイシャフト22上に装着されるシンクロナイザ120を使用することが可能になる。この方式の場合は、カウンタシャフト50に装着される場合のように上記の反映トルクに対処する必要がないので、シンクロナイザ120に要求されるトルク容量が低下する。従って、シングルコーンシンクロナイザ120のような小型で簡易なシンクロナイザの利用が可能になる。すなわち、シンクロナイザ120の要求トルク容量が減少し、装置のコストおよび寸法を低減できる。
【0052】
シンクロナイザ120を、先行トランスミッション装置において典型的に見られるようにカウンタシャフト50上に装着するのではなく、奇数番号のレイシャフト20および偶数番号のレイシャフト22上に装着することによる別の利点は、各シンクロナイザ120を同じものとするか、あるいは、トルク容量のような運転パラメータがほぼ同じものとし得る点である。この態様においては、シンクロナイザ120が、すべて、カウンタシャフト50上ではなく奇数番号のレイシャフト20および偶数番号のレイシャフト22上に装着され、すべてのシンクロナイザ120に要求されるトルク容量が低下する。
【0053】
別の特徴面として、シンクロナイザ120を、出力軸またはカウンタシャフト50上ではなく、奇数番号のレイシャフト20および偶数番号のレイシャフト22上に装着することによって、レイシャフト20、22を回転加速するためにシンクロナイザ120が打ち勝たなければならない引きずりトルクが低下するという有利な結果が得られる。例えば、図1〜3に表現されるトランスミッション機構10のシンクロナイザ120が奇数番号のレイシャフト20および偶数番号のレイシャフト22上に装着される場合、打ち勝つべき引きずりトルクは、一般的に、各レイシャフト20、22の構成要素の引きずりトルクである。しかし、先行トランスミッション装置において典型的に見られるように、シンクロナイザがカウンタシャフト上に配備される場合は、シンクロナイザが打ち勝つべき引きずりトルクは、ギヤ比によって何倍にもなる。例えば、レイシャフト上の第1ギヤピニオンとカウンタシャフト上の対応ギヤとの間の比が1:4である場合に、シンクロナイザを、本開示のトランスミッション機構10の場合のようにレイシャフト20、22上ではなくカウンタシャフト上に装着すると、シンクロナイザが打ち勝たなければならない引きずりトルクが約4倍に増大することになる。
【0054】
実際、レイシャフト20、22のギヤピニオン70、72、74、76、78、80および82と、カウンタシャフト50の対応するギヤ100、102、104、106、108および110との間のギヤ比は、この態様の場合、先行トランスミッション装置の同様の要素間に通常要求されるギヤ比よりも、互いに近接しているので、シンクロナイザ120は、すべて同じ型式のもので同じトルク容量を有するものとすることができる。このような共通のシンクロナイザ120を有することは、トランスミッション機構10のコストを有利に低減し、トランスミッションの組み立て効率を向上させることができる。コストの低減は、異なるトルク容量を有する異なる型式のシンクロナイザの要求と、組み立ておよび制御装置の複雑さの増大並びに異なる型式のシンクロナイザの在庫に関係するコストとを排除することによって達成できる。
【0055】
この適用例においては、直径がさらに大きいギヤピニオン用のスペース、並びにピニオンおよびレイシャフト間の軸受け用のスペースを十分にとるために必要であれば、レイシャフト20、22およびカウンタシャフト50間の中心距離を増大させることができる。しかし、多くの構成例において、カウンタシャフト50上に配置される第1ギヤ100(または他の低速ギヤ)の直径の減少によって、第1ギヤピニオン70(または他の低速ギヤピニオン)の直径の増大が相殺されることになるので、このような中心距離の増大は必要でない。
【0056】
さらに別の特徴面として、奇数番号および偶数番号のクラッチ装置60、62のそれぞれの入力側または上流側に異なるギヤ比を有することによって、エンジン入力軸26の速度に対して奇数番号および偶数番号のクラッチ装置60、62に要求される回転速度の範囲を低下させることができる。この特徴面においては、それぞれ奇数番号の駆動スプロケット42および偶数番号の駆動スプロケット44を有する奇数番号および偶数番号のクラッチ装置60、62の入力側が、入力スプロケット28とそれぞれ奇数番号の駆動スプロケット42および偶数番号の駆動スプロケット44との間のギヤ比によって減速された速度で駆動される。その結果、クラッチ装置60、62の入力側、従ってクラッチ装置60、62と、関連する奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22とは、上記の異なる上流側のギヤ比を欠く先行トランスミッション装置に比べて減速された速度で回転することになる。一方、入力軸24およびカウンタシャフト50間の有効ギヤ比は同じレベルに維持される。
【0057】
この特徴面においては、クラッチ装置60、62の構造も、奇数番号のクラッチ装置60および偶数番号のクラッチ装置62が、同一ではないにしても非常に類似した寸法および容量のものであり交換可能な構成要素を使用しているという点で、簡素化される。奇数番号および偶数番号のクラッチ装置60、62の構成要素は、偶数番号のクラッチ装置62にも類似または同一の構成要素が存在することを理解すれば、図2に示すように、奇数番号のクラッチ装置60に関して表現されるであろう。奇数番号のクラッチ装置60は、複数の出力側クラッチ板94と交互に配備される複数の入力側クラッチ板92を含む。入力側クラッチ板92は入力側クラッチ板キャリア96に取り付けられ、この入力側クラッチ板キャリア96は、奇数番号の入力側スプロケット42によって回転駆動されるように操作連結される。出力側クラッチ板94は、奇数番号のレイシャフト20を回転駆動するように操作連結される出力側のクラッチ板キャリア98に取り付けられる。
【0058】
奇数番号の駆動スプロケット42からトルクを奇数番号のレイシャフト20に伝達したい場合には、この種のクラッチ装置構成において通例であるように、加圧された油圧流体を、油圧制御装置(図示せず)から奇数番号のクラッチ装置60の加圧チャンバ90に導く。加圧チャンバ90は、通常、油圧流体をいくらか含んでいる。加圧されると、追加の油圧流体が加圧チャンバ90を十分な圧力で満たして、加圧ピストン93を入力側クラッチ板92または出力側クラッチ板94の1つに対して押し付け、交互に配備されるクラッチ板92および94が一緒に摩擦圧縮されて、その結果、入力側クラッチ板92が、出力側クラッチ板94をそれと共に回転駆動する。
【0059】
この方法で、奇数番号のクラッチ装置60が接続されると、トルクが、奇数番号の駆動スプロケット42から、入力側クラッチ板キャリア96およびその上に装着された入力側クラッチ板92と、交互に摩擦接続された出力側クラッチ板94およびそれが装着される出力側のクラッチ板キャリア98と、最終的に、出力側のクラッチ板キャリア98が連結される奇数番号のレイシャフト20とに伝達される。
【0060】
加圧ピストン93が、入力側クラッチ板92を出力側クラッチ板94と接続する位置にあまりに早期に移動しないようにするため、加圧チャンバ90に対して加圧ピストン93の反対側に均衡バネ95が装備される。奇数番号のクラッチ装置60の運転中の回転によって、加圧チャンバ90内の油圧流体の圧力は、一般的に、奇数番号のクラッチ装置60の回転速度の増大と共に、遠心力のために増大する。加圧チャンバ90内に通常存在する油圧流体に対する遠心力の影響は、均衡バネ95が加圧ピストン93の反対側に付与する力によって相殺される。この均衡バネ95は、奇数番号のクラッチ装置60の低回転速度および増大された回転速度のいずれにおいても加圧ピストン93があまりに早く移動しないようにするのに十分な偏倚力を、加圧ピストン93に付与するように寸法決定される。従って、加圧ピストン93を、入力側クラッチ板92と出力側クラッチ板94とを接続するように移動させるためには、加圧チャンバ90内の流体圧力が、加圧ピストン93の反対側に配備される均衡バネ95の偏倚力に打ち勝たなければならない。
【0061】
本開示のトランスミッション機構10の1つの特徴面として、クラッチ装置60、62の回転速度が減速される。このため、入力側クラッチ板92を出力側クラッチ板94と接続するために各加圧ピストン93を移動させるのに必要な油圧流体の圧力の要求値を低減することができる。この両クラッチ板92、94の接続によって、選択された奇数番号および偶数番号のクラッチ装置60、62が、それぞれの奇数番号の駆動スプロケット42または偶数番号の駆動スプロケット44から、トルクを、対応する奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22に伝達し得るようになる。この油圧流体圧力要求値の低減が可能になるのは、本開示のトランスミッション機構10の場合、クラッチ装置60、62の回転速度が低下するので、加圧チャンバ90内の流体に作用する遠心力の低下によって、クラッチ装置60、62の自己加圧圧力が低下する結果になるからである。
【0062】
加圧チャンバ90に作用する遠心力は、クラッチ装置60、62の回転速度の2乗の関数である。従って、本開示のトランスミッション機構10のクラッチ装置60、62の回転速度が低い程、加圧チャンバ90内の最大自己加圧圧力が大きく低下する。これは、次には、自己加圧圧力を相殺するように選択されるバネ95の偏倚力を比例的に低減する結果をもたらす。従って、入力側クラッチ板92を出力側クラッチ板94と接続するように加圧ピストン93を移動させるために加圧チャンバ90内に必要な油圧流体圧力が、特に低回転速度において大幅に低下する。
【0063】
自己加圧圧力が低下し、クラッチ装置60、62を接続するように加圧ピストン93を移動させるために必要な流体圧力が対応して低下することは、いくつかの利点をもたらす。このような利点の1つは、より軽量なバネ95またはバネ定数がより低いバネ95を使用し得ることである。これによって、トランスミッションのコストを低減できる。もう1つの利点は、油圧流体の供給および制御装置(図示せず)が供給するように要求される最大油圧流体圧力が低下する点である。これは、油圧流体の供給および制御装置の簡素化とそのコストの低減とを可能にする。
【0064】
しかし、さらに別の利点は、簡素化された、すなわち構成要素数が少なく、より低コストのクラッチ装置60、62を使用し得る点である。例えば、いくつかの先行トランスミッション装置においては、均衡バネを含む同じチャンバであることが多い均衡チャンバに、加圧チャンバに設けられる供給装置から油圧流体を別個に供給する装置が装備される。均衡チャンバは、加圧チャンバ内の流体圧力がクラッチ装置の回転中の遠心力の結果として増大するのに伴って、均衡チャンバ内の流体の圧力が相応に増大するように構成される。この相応の増大は、加圧ピストンの均衡側に作用する流体が、均衡バネのバネ力と共に、加圧ピストンの加圧側に作用する流体を一般的に均衡させる程度のものである。しかし、均衡チャンバに流体を供給するには、別個の流体流路および制御装置が必要になり、このため、回転速度が低い本開示のトランスミッション機構10のクラッチ装置60、62に比べて、高い回転速度を有する先行トランスミッション装置用のクラッチ装置の複雑性が増大する。従来のデュアルクラッチトランスミッション装置の流体供給装置に伴う困難性が米国特許出願公開第2005/0067251号明細書に述べられている。
【0065】
クラッチ装置60、62が上記のように異なる上流側のギヤ比を備えていることと、その結果クラッチ装置60、62の回転速度が減速されることとは、クラッチ装置60、62におけるクラッチの引きずりを低減するという付加的な利点を有する。クラッチ装置60、62は、クラッチ装置60、62の入力側とクラッチ装置60、62の出力側との間の速度差によって生成される引きずり力を本質的に克服しなければならない。詳しく言えば、クラッチの引きずりは、クラッチ装置60、62の構成要素を囲繞する流体と構成要素自体との間の抵抗、および、交互配置の入力側クラッチ板92と出力側クラッチ板94との間の非接続時の抵抗によって本質的に生成される。
【0066】
クラッチ装置60、62の引きずりの量は、クラッチ装置60、62の入力側と、クラッチ装置60、62の出力側との間の流体流量と回転速度差との関数である。例えば、クラッチ装置60、62の入力側における回転速度が高くなれば、クラッチ装置60、62の入力側における回転速度が低い時の引きずりに比べて、流体流れが同等の場合、引きずりが増大する。従って、クラッチ装置60、62の入力側の回転速度が低下すれば、結果的にクラッチの引きずりも低減し得る。上記のように、クラッチ装置60、62のクラッチ引きずりが低減すると、シンクロナイザ120に対するトルク要求が低下する。前記のように、シンクロナイザ120に対するトルク容量の要求が低下すると、高いトルク容量を有するシンクロナイザに比べて、安価で、小型でかつ簡易なシンクロナイザ120が使用できるようになる。
【0067】
図1〜3に示すトランスミッション機構10の例の態様においては、下流側の各段ギヤ比は、奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22のピニオン70、72、74、76、78、80、82と、それに対応するカウンタシャフト50のギヤ100、102、104、106、108、110との間の比によって与えられる。前記のように、低速ギヤに対しては、高いギヤ比が要求されるので、例えば、第1ギヤピニオン70は、カウンタシャフト50の速度を減速し、トルクを増大させるために、カウンタシャフト50上に装着される対応ギヤ100に比べて相対的に小さい。対照的に、高速ギヤは、反対の形態で、レイシャフト20、22に関して、カウンタシャフトの速度を増大しトルクを低減する役割を果たす。
【0068】
従って、各レイシャフト20、22上の最高速ギヤピニオン78、80は、カウンタシャフト50上に装着されるかあるいはそれに機械加工される対応ギヤ部分(108、110のような)に対して、呼称的に大きな直径を有する。1つの態様においては、高速ギヤピニオン78(第5ギヤ)および80(第6ギヤ)の直径および歯数と、カウンタシャフト50上のギヤ108、110の直径および歯数とが協動して、それぞれ第5段ギヤ比および第6段ギヤ比を提供する。さらに追加的に、エンジン入力軸24と奇数番号および偶数番号の駆動スプロケット42、44のそれぞれとの間のギヤ比を、異なる上流側ギヤ比を実現するように用いることができる。この上流側ギヤ比は、レイシャフト20、22のピニオン78および80とカウンタシャフト50上のギヤ108、110とによって提供される下流側のギヤ比と連携して、所要の有効ギヤ比を実現する。
【0069】
別の態様においては、上流側のギヤ比によって、カウンタシャフト50上のギヤ100、102、104および108が、奇数番号および偶数番号のピニオン70、72、74、76、78および80の組合せと連携して2つ以上の有効ギヤ比に対応することが可能になることに留意するべきである。例えば、第1ギヤピニオン70(第1段ギヤ比用)に対応するカウンタシャフトギヤ100は、第2ギヤピニオン72(第2段ギヤ比用)と対応するギヤと同じものにすることができる。図2に表現されるように、第5ギヤピニオン78および第6ギヤピニオン80、並びに、最終駆動ギヤを駆動するカウンタシャフト50の最終駆動ギヤ108は、同じカウンタシャフトギヤを利用することができるので、カウンタシャフトに機械加工されるかあるいは別の方法で成形されるギヤ部分108および110は、1つのものであり同一である。また同様に表現されているように、第3および第4ギヤピニオン74、76は1つの共通ギヤを共有することができ、ギヤ部分104および106は1つのものであり同一である。図1を参照すると、この共有配置は、各レイシャフト20、22のピニオン70、72、74、76、78、80および82を、互いに異なる方向から、かつ、カウンタシャフト50からの出力駆動ギヤもしくは最終駆動ギヤ52とも異なる方向から、カウンタシャフト50に近づけて、それと連結することによって実現される。このような共有配置は、さらに、カウンタシャフト50上のギヤの個数を低減することによって、トランスミッション10の軸方向の長さを先行トランスミッション装置に比べて短縮するので、コストが低減され、製造が容易になる。
【0070】
上記のように、入力軸24とカウンタシャフト50との間には、どのギヤピニオン70、72、74、76、78、80および82と対応するギヤ100、102、104、106、108および110とが用いられるかに応じて、また、どちらのクラッチ装置60、62が接続されるかに応じて、特定のギヤ比の範囲が存在する。従って、エンジン入力スプロケットと奇数番号および偶数番号のクラッチ駆動スプロケット42、44とは、また、ギヤ比の所要の範囲のために選択的に寸法決定される。すなわち、本開示のトランスミッション機構10は、異なる直径および歯数を有する種々のエンジン入力スプロケット28およびクラッチ駆動スプロケット42、44によって組合せを作ることができ、従って、上流側のギヤ比を変えることができる。これによって、トランスミッション機構10を、異なる所要のギヤを必要とする多様な用途に使用し得るようになる。
【0071】
例えば奇数番号のレイシャフト20上の第1ギヤピニオン70は、カウンタシャフト50上のギヤ110と同様に機械的故障を避けるに必要な最小限の寸法を有しているので、上記の特性が特に有用になる。さらに、上記の特性がなければ、カウンタシャフト50上に配置されるギヤの寸法が増大することになり、トランスミッション機構10自体を大きくする必要が生じる。詳しく言えば、上記のように、第1ギヤピニオン70のような低速ギヤに関連するピニオンを、本開示の形態においてはさらに大きくすることができる。ピニオン70およびギヤ100がその間のギヤ比としてそれほど高いギヤ比を要求しないからである。有効なギヤ比は、上流側のギヤ比によっても決定されるのである。さらに、第1ギヤピニオン70は、第1ギヤピニオン70と奇数番号のレイシャフト20との間に軸受けおよび/またはワンウェイクラッチを装着するのに十分な大きさを有するように寸法決定することができる。
【0072】
クラッチ装置60、62を独立して作動または接続し得ることを正しく評価するべきである。特に、レイシャフト20、22(およびギヤピニオン70、72、74、76、78、80および82)を順番に接続または離脱し得るように、一方のクラッチ装置は、もう一方が接続されている時は離脱させるとよい。さらに詳しくは、クラッチ装置60、62の一方が接続されようとしているが完全には接続されていない時間中は、クラッチ装置60、62のもう一方は、完全接続されていない時間、離脱させておくことができる。換言すれば、各クラッチ装置60、62の接続および離脱は、ある程度まで同時生起とすることができる。別の態様においては、レイシャフト20、22をそれぞれ部分的に接続して、混合ギヤ比を実現することができる。
【0073】
図1〜3のデュアルクラッチトランスミッション機構10の特定の実施例の他の詳細部分は、図2に示すように、軸受け46(a〜f)および47(a〜g)を含む。さらに特定すれば、奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22のそれぞれとカウンタシャフト50とは、トランスミッション機構10のハウジング48に対して、図2に示すように軸受け46(a〜f)によって支持される。スラスト軸受けを含むことができる軸受け46は、奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22とカウンタシャフト50とが、トランスミッション機構10のハウジング48に対して回転し得るようにし、同時にこの回転を最小の摩擦で実現させる機能を果たす。詳しく言えば、軸受け46aは、偶数番号のレイシャフト22の一方の端部、すなわち偶数番号のクラッチ装置62の出力側に操作連結される偶数番号のレイシャフト22の端部の反対端と、第2ギヤピニオン72に関連するシンクロナイザ120との間において、ハウジング48および偶数番号のレイシャフト22に隣接して配置される。
【0074】
もう1つの軸受け46bは、第6ギヤピニオン80と偶数番号のクラッチ装置62の偶数番号の入力スプロケット44との間において、ハウジング48および偶数番号のレイシャフト22に隣接して配置される。カウンタシャフト50に関しては、図2に示すように、軸受け46cが一端に配置され、もう1つの軸受け四六dが反対端に配置される。軸受け46eは、奇数番号のレイシャフト20の一方の端部、すなわち奇数番号のクラッチ装置60の出力側に操作連結される奇数番号のレイシャフト20の端部の反対端と、第1ギヤピニオン70との間において、ハウジング48および奇数番号のレイシャフト20に隣接して配置される。もう1つの軸受け46fは、第5ギヤピニオン78と奇数番号の入力スプロケット42との間の、もう一方の軸受け46eの反対側において、ハウジング48および奇数番号のレイシャフト20に隣接して配置される。
【0075】
トランスミッション機構10の各ギヤピニオン70、72、74、76、78および80は、ころ軸受けのような軸受け47(a〜g)を備えており、この軸受けは、図2に示すように、ギヤピニオン70、72、74、76、78および80とそれぞれの奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22との間に配置される。軸受け47(a〜g)は、ギヤピニオン70、72、74、76、78および80がそれぞれの奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22に対して回転する時に、摩擦を低減する支援機能を果たす。各ギヤピニオン70、72、74、76、78および80は、それがシンクロナイザ120によってそれぞれの奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22に回転係合されず、カウンタシャフト50に取り付けられるそれぞれの噛み合いギヤ100、102、106および108によって自由回転駆動されている場合、レイシャフト20、22に対して回転するのである。摩擦の低減をさらに補助するため、各軸受け47には、奇数番号および偶数番号のレイシャフト20、22内に形成される流路21および23を通して、潤滑油の流れが供給される。
【0076】
トランスミッション10は、動力をエンジンから車両の車輪に伝達するように機能する。エンジン自体は、ある範囲の毎分当たり回転数(RPM)の範囲内で作動する。エンジンのRPMがある特定のレベル未満に落ちれば、エンジンは停止するであろう。逆にエンジンのRPMがある特定のレベルを超えると、エンジンが損傷を受けやすくなり、故障に瀕したエンジンは、エンジンルームに、場合によってはそれを超えて損傷または危害を及ぼす可能性がある。従って、トランスミッション10は、エンジンの出力軸(トランスミッション10に対するエンジン入力軸24)がエンジンの運転範囲内で回転し得るように機能する。
【0077】
トランスミッション10は、エンジン入力軸24の高速回転速度を、車両を加速し、減速しおよび/またはその速度を維持するのに適した回転速度に変換する。バックギヤまたは第1ギヤのいずれかにおいて車両を停止状態または低速から動かす初期発進中は、車両の加速に非常に大きな力が必要である。的確に言えば、低速からの加速には、ドライブトレインを通る高いトルクが要求される。低速度におけるこの加速の間は、トランスミッション10は、エンジン入力軸24の相対的に高い回転速度を、本明細書で説明する異なるギヤ比を用いて、カウンタシャフト50を介して最終の駆動ギヤ52に伝達される低速度高トルクの回転に減速する。さらに、トランスミッション10は、カウンタシャフト50を逆方向に回転させるために用いることができる。このために、奇数番号のレイシャフト20のバックギヤピニオン82とカウンタシャフト50のバックギヤ54との間に配置されるバックアイドラギヤ112が用いられる。
【0078】
トランスミッション10は種々の方法で制御することができる。すなわち、人間の操作者またはマイクロプロセッサに基づく装置のような制御装置であるが、この操作者または制御装置は、車両速度(例えばアンチロックブレーキ装置によって監視される)、エンジンRPM、あるいは他の因子を監視して、トランスミッション機構10が変速されるべき決定をなすことができる。この結果、所要の変速指示に応答して、クラッチ装置60、62を選択的に作動させることができ、かつ、ギヤピニオン70、72、74、76、78、80、82を、各レイシャフト20、22に選択的に係合するか、あるいはそれから離脱させることができる。
【0079】
ここで、図4および図5を参照すると、平行に互いに並べられた配置の奇数番号のレイシャフト202および偶数番号のレイシャフト204を有するトランスミッション機構200の入力側の別の構成が示されている。エンジン入力軸206は、動力をエンジンからレイシャフト202、204に供給する入力機構208と、ダンパ30とを含んでいる。このダンパ30は、エンジンからの不規則なまたは変動する動力によって生じる衝撃または振動を緩和するためのものであり、以下に詳述する。図示のように、入力機構208は、各種構成要素の中で特に、離れて配置された1対のアイドラギヤ212、214と噛み合うエンジン入力ギヤ210を含んでいる。各アイドラギヤ212、214は、さらに、レイシャフト202、204に連結されるそれぞれのクラッチ駆動ギヤ216、218と噛み合っている。この方式で、動力は、エンジンから、入力軸206および入力機構208を通って供給され、エンジン入力ギヤ210が両アイドラギヤ212、214を回転させる。動力は、続いて、アイドラギヤ212、214からクラッチ駆動ギヤ216、218に伝達される。
【0080】
さらに具体的に説明すると、動力は、図5に見るように、クラッチ装置220、222の一方または他方が接続されると、アイドラギヤ212、214から、それぞれのクラッチ装置220、222のクラッチ駆動ギヤ216、218を介してレイシャフト202、204に伝達される。レイシャフト202、204は、図示されていないが、エンジンからパワートレインへのトルク伝達用として一連のギヤ比を提供するために、カウンタシャフト上のギヤと対応する複数のギヤピニオンを含むという点で、上記に説明したレイシャフト20、22とほぼ同様である。
【0081】
図示のように、エンジン入力軸206は、比率動力を各レイシャフト202、204に伝達する。エンジン入力ギヤ210と、アイドラギヤ212、214と、クラッチ駆動ギヤ216、218とは、それぞれ、それらの間の上流側ギヤ比を生成するように用いることができる特定の歯数を有する。図示の形態においては、各アイドラギヤ212、214およびエンジン入力ギヤ210は同じ歯数を有し、かつ同一寸法であり、従ってそれぞれに標準部品を用いることができる。入力軸206とレイシャフト202、204との間の上流側ギヤ比を生成する基本的な方法は、クラッチ駆動ギヤ216、218とは異なる直径および異なる歯数を有するエンジン入力軸ギヤ210を設けることによる。各クラッチ駆動ギヤ216、218も異なる歯数および寸法を有することが望ましい。これによって、レイシャフト202、204が、異なる上流側の関連ギヤ比を有することになり、異なる回転速度で回転する。1つの例として、エンジン入力ギヤ210およびアイドラギヤ212、214はそれぞれ26個の歯を有し、クラッチ駆動ギヤ218は28個の歯を有し、クラッチ駆動ギヤ216は40個の歯を有することができる。
【0082】
図6および図7を参照すると、互いに横に並べられた配置の平行な奇数番号および偶数番号のレイシャフト252、254を有するトランスミッション機構250の入力側のさらに別の構成が示されている。エンジン入力軸256は入力機構258に連結される。ダンパ30が、エンジンからの不規則なまたは変動する動力から生じる衝撃または振動を緩和するために設けられる。
【0083】
エンジン入力ギヤ260は、アイドラギヤ262と協動しかつ噛み合っており、このアイドラギヤ262は、次に、クラッチ駆動ギヤ264と協動しかつ噛み合っており、このクラッチ駆動ギヤ264は、トルクをエンジン入力軸256から奇数番号のレイシャフト252に伝達するために、奇数番号のクラッチ装置270を介して奇数番号のレイシャフト252に操作連結される。エンジン入力機構258は、図7に示すように、エンジン入力スプロケット266をも含んでおり、このエンジン入力スプロケット266は、トルクをクラッチ駆動スプロケット268に伝達するためにチェーン267と協動する。このクラッチ駆動スプロケット268は、偶数番号のクラッチ装置272を介して偶数番号のレイシャフト254に操作連結される。
【0084】
図から分かるように、エンジン入力機構258が、チェーンによって偶数番号のレイシャフト254に連結される場合、偶数番号のレイシャフト254およびエンジン入力軸256が共に同一方向に回転する。対照的にギヤによって(中間のアイドラギヤなしで)連結される軸は反対方向に回転するであろう。従って、入力機構258のエンジン入力ギヤ260と奇数番号のシャフト252のクラッチ駆動ギヤ264との間にはアイドラギヤ262が設けられる。この方法で、両レイシャフト252、254が同じ回転方向に駆動される。
【0085】
上記に述べた方法で、エンジン入力軸256は、動力を、エンジンから、エンジン入力ギヤ260およびエンジン入力スプロケット266を含むエンジン入力機構258によって、それぞれのクラッチ装置270、272を介してレイシャフト252、254に伝達する。この状況を図7によく見ることができる。レイシャフト252、254は、前記のレイシャフト20、22とほぼ同様であって、カウンタシャフト274上の一連のギヤ(図示せず)と協動する一連のピニオン(図示せず)を含んでおり、エンジンからパワートレインへトルクを伝達するためのギヤ比を提供する。レイシャフト252、254上に装着される奇数番号および偶数番号の各ピニオンは、前記のカウンタシャフト50と同様のカウンタシャフト274と協動して、動力をカウンタシャフト274から最終の駆動ギヤ52に伝達する。
【0086】
エンジン入力軸256からのトルクは、各レイシャフト252、254に対して比率設定される。奇数番号のレイシャフト252については、この比は、エンジン入力ギヤ260と、アイドラギヤ262と、クラッチ駆動ギヤ264との相対的な歯数および直径をそれぞれ選択することによって実現することができる。偶数番号のレイシャフト254については、この比は、エンジン入力スプロケット266およびクラッチ駆動スプロケット268上の相対的な歯数および直径を選択することによって実現される。入力軸256と、奇数番号のレイシャフト252および偶数番号のレイシャフト254との間のそれぞれの比は、奇数番号および偶数番号のレイシャフト252、254間の相対的な比が所要のものとなるように、かつ上記の実施形態との関係において所要のものとなるように選択することができる。
【0087】
ここで図8Aおよび図8Bを参照すると、動力をエンジンから最終駆動ギヤ52に伝達するためのトランスミッション機構300であって、互いに横に並べて配置された平行な奇数番号および偶数番号のレイシャフト302、304を有するトランスミッション機構300の入力側に対する追加的な構成が示されている。エンジン入力軸306には、以下に述べるダンパ30と、動力を奇数番号および偶数番号のレイシャフト302、304に導く入力機構308とが装備されている。図8Aおよび図8Bを比較して分かるように、入力機構308は、一般的には同一のスプロケット歯316の第1列および第2列312、314を備えたエンジン入力スプロケット310を含む。スプロケット歯の列312、314は、それぞれ別個のチェーン318または320を駆動して、トルクを、エンジン入力機構308およびエンジン入力軸306からレイシャフト302、304に、奇数番号のクラッチ装置および偶数番号のクラッチ装置(図示せず)を経由して伝達する。
【0088】
クラッチ装置の上流側または入力側は、チェーン318、320によって駆動されるそれぞれのクラッチ駆動スプロケット330、332を含む。さらに具体的には、奇数番号のレイシャフト302は、奇数番号のクラッチ装置を介して、チェーン318と協動するスプロケット330に操作連結され、偶数番号のレイシャフト304は、偶数番号のクラッチ355を介して、チェーン320と協動するクラッチ駆動スプロケット332と操作連結される。各レイシャフト302、304は、上記のように、トルクを、各クラッチ装置を経由して入力軸306から受け取り、その動力を、レイシャフト302、304上のピニオンとカウンタシャフト340上の対応ギヤとを経由してカウンタシャフト340に伝達する。
【0089】
先の実施形態の場合に注記したように、エンジン入力軸306の回転を比率変化させて、奇数番号および偶数番号のシャフト302、304の回転にすることができる。この比率設定は、エンジン入力機構308の歯316の同じ列312、314に対して、クラッチ駆動スプロケット330、332の直径および歯数を選択することによって行うことができる。同様に、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット330と偶数番号のクラッチ駆動スプロケット332との間にも、それらの相対的な直径および歯数を選択することによって比を設定することができる。
【0090】
図9および図10を参照すると、奇数番号および偶数番号のレイシャフト352、354を有するトランスミッション機構350の入力側の構成が示されている。エンジン入力軸356は、特に、エンジン入力ギヤ360およびダンパ30を含むエンジン入力機構358を備えている。エンジン入力ギヤ360は、第1アイドラギヤ364と協動しかつ噛み合い、この第1アイドラギヤ364は、奇数番号のクラッチ装置353を介して奇数番号のレイシャフト352に操作連結される奇数番号のクラッチ駆動ギヤ366と協動しかつ噛み合う。従って、奇数番号のレイシャフト352およびエンジン入力軸356は、奇数番号のクラッチ装置353が接続されると同じ方向に回転する。
【0091】
奇数番号のクラッチ駆動ギヤ366はさらに第2アイドラギヤ368と噛み合い、この第2アイドラギヤ368は続いて偶数番号のクラッチ駆動ギヤ370と噛み合う。偶数番号のクラッチ駆動ギヤ370は、偶数番号のクラッチ装置355を介して偶数番号のレイシャフト354に操作連結される。第2アイドラギヤ368を使用することによって、奇数番号のレイシャフト352と、エンジン入力軸356と、偶数番号のレイシャフト354とは、それぞれ、各レイシャフトのクラッチ装置353、355が接続されると同じ方向に回転する。レイシャフト352、354は、それぞれ、カウンタシャフト380上に装着される対応ギヤ(図示せず)と噛み合うことができるピニオン(図示せず)を担持している。このピニオンおよびギヤは、すでに述べたように、トルクを最終出力駆動ギヤ52に伝達するために、下流側のギヤ比を提供するものである。上流側の比、すなわち、エンジン入力ギヤ360とクラッチ駆動ギヤ366、370との間の比は、すでに述べたように、クラッチ駆動ギヤ366、370およびエンジン入力ギヤ360の直径および歯数を相対的に選択することによって得られる。
【0092】
図11および図12を参照すると、エンジン入力軸406と、奇数番号のレイシャフト402と、偶数番号のレイシャフト404とを用いるトランスミッション機構400の入力側の構成が示されている。トランスミッション機構350の場合と同様に、エンジン入力軸406は、動力を、奇数番号のクラッチ装置430を介して奇数番号のレイシャフト402に伝達し、奇数番号のレイシャフト402は、続いて、動力を、偶数番号のクラッチ装置432を介して偶数番号のレイシャフト404に伝達する。エンジン入力軸406は、エンジンから伝達される振動を低減するダンパ30をも含む。
【0093】
エンジン入力軸406はエンジン入力機構408を含み、エンジン入力機構408は特にエンジン入力スプロケット410を含む。エンジン入力スプロケット410は、チェーン414によって、トルクを奇数番号のクラッチ駆動スプロケット412に伝達する。この奇数番号のクラッチ駆動スプロケット412は、奇数番号のクラッチ装置430を介して奇数番号のレイシャフト402と操作連結される。奇数番号のレイシャフト402は、また奇数番号のクラッチ駆動ギヤ416とも連結されるが、この状況は図12によく見ることができる。奇数番号のクラッチ駆動ギヤ416はアイドラギヤ420と噛み合い、このアイドラギヤ420は、続いて、偶数番号のクラッチ駆動ギヤ422と噛み合い、この偶数番号のクラッチ駆動ギヤ422が、偶数番号のクラッチ装置432を介して偶数番号のレイシャフト404と操作連結される。従って、エンジン入力軸406からのトルクは、エンジン入力スプロケット410からチェーン414に伝達され、続いて奇数番号のクラッチ駆動スプロケット412に伝達される。奇数番号のクラッチ駆動スプロケット412および奇数番号のクラッチ駆動ギヤ416は奇数番号のレイシャフト402と共に回転するので、奇数番号のクラッチ駆動ギヤ416は、トルクを、アイドラギヤ420に、続いて偶数番号のクラッチ駆動ギヤ422に伝達する。この偶数番号のクラッチ駆動ギヤ422は、偶数番号のクラッチ装置432を介して偶数番号のレイシャフト404に操作連結される。レイシャフト402、404は、それぞれのクラッチ装置430、432によって選択的に接続され、動力を、レイシャフト402、404から、前記のように、そのそれぞれのピニオン(図示せず)およびカウンタシャフト434のギヤ(図示せず)を経由して、選択されたギヤ比で最終出力駆動ギヤ52に伝達する。
【0094】
エンジン入力軸406と各レイシャフト402、404との間に設けられる上流側のギヤ比は、レイシャフト402、404のピニオンとカウンタシャフト434の対応ギヤとの間の下流側のギヤ比との組合せで作用することになるが、この上流側のギヤ比は、エンジン入力スプロケット410と、クラッチ駆動スプロケット412と、奇数番号のクラッチ駆動ギヤ416と、アイドラギヤ420と、偶数番号のクラッチ駆動ギヤ422との直径および相対的な歯数によって決定される。アイドラギヤ420によって、偶数番号および奇数番号のレイシャフト404、402が同方向に回転するようになることを注記しておく必要がある。
【0095】
すでに記述したように、各トランスミッションにはダンパを装備することができる。図3において、エンジンからの不規則なまたは変動する動力によって生じる振動および衝撃の影響を緩和するためのダンパ30が、入力軸24に装着されることが分かる。図示のように、ダンパ30は、エンジン入力軸24の内部側に配置される。すなわち、入力機構26がダンパ30とエンジンとの間に位置するようなトランスミッション機構の内側の位置に装着される。同様に、本明細書に記載する他のトランスミッション機構も、それぞれ、図に示すようにダンパ30を具備することができる。上記に述べた他のトランスミッション200、250、300、350および400も、それぞれ、ダンパ30が同様の位置を占める形に示されている。しかし、図13を参照すると、トランスミッション機構448のダンパ450を、代替的に、ダンパ450がエンジンとエンジン入力機構452との間に位置するように、エンジン入力軸451に装着することができる。この場合、エンジン入力機構452は、チェーン456を駆動するエンジン入力スプロケット454を含むものとして表現されている。
【0096】
例えば、図3の構成の場合は、ダンパ30はいわゆる湿領域に配置される。より正確に言えば、ダンパ30は、潤滑油または他の潤滑剤のほぼ連続的な流れに曝されるトランスミッション機構10の部分の内側に配置される。図13のトランスミッション機構448の構成においては、ダンパ450は、通常は潤滑剤の中に浸漬されない従って乾領域と呼称されるトランスミッション機構448の部分の内側に配置される。図から分かるように、図13のトランスミッション機構448のダンパ450は、図1〜3のトランスミッション機構10のダンパ30よりもかなり大きい。ダンパ450のような比較的大きなダンパは種々のトランスミッション機構と共に適宜に用いることができる。比較的大きなダンパは、所要レベルのトルクを伝達し一方では減衰効果をもたらすものとして、高いトルクのエンジンと共に使用できる。
【0097】
図1および図4〜12に表現される構成のような、トランスミッション機構の入力側に対する種々の構成の中からどれを選択するかについては、いくつかの異なる考慮点がある。例えば、エンジン入力軸からクラッチ装置の入力側に連絡するギヤを用いる、図4、5、9、10に示すようなトランスミッション機構の入力側の構成は、より強力である可能性が高く、ターボ過給エンジンのようなより高速で回転するエンジンと共に用いることができる。ギヤは、また一般的に、チェーン−スプロケット駆動構成よりも長い稼動寿命を有することができる。
【0098】
しかし、この方式のギヤを使用すると、クラッチ装置の入力側従ってクラッチ装置の出力側および関連するレイシャフトが互いにかつエンジン入力軸と同じ方向に回転し得るようにするため、通常は、1つ以上のアイドラギヤを含むことが必要になる。換言すれば、単一のチェーンおよび1対のスプロケットは一般的に1対のギヤとコストが同等であるが、1つ以上のアイドラギヤによって駆動される1対のクラッチ駆動ギヤは、チェーン−スプロケット構成よりも通常はコスト高である。従って、スプロケットに代えてギヤを用いると、装置の全体コストを増大させる可能性がある。しかし、いかなるコスト上の有利性も、トランスミッション機構の入力側の的確な構成を決定するという点においては、他の考慮点と釣り合いが取られる。
【0099】
トランスミッション機構の入力側の種々の構成の中からどれを選択するかについてのもう1つの考慮点は、エンジンルーム内におけるトランスミッション機構の組み込みに対して与えられる柔軟性である。前記のように、このトランスミッションの軸方向長さは、他の公知のデュアルクラッチ装置に比べて短縮することができる。図示のようなトランスミッション構成の構成要素の相対的な方位は、トランスミッションに異なる全体的寸法および形状を付与するために変更することが可能であり、これによって、トランスミッションを、エンジンルーム内の他の構成要素によってエンジンルーム内に許容されるスペースに調整して合わせることができる。いくつかの車両においては、トランスアクスルと、トランスミッションと、エンジンとの相対的な位置が、構成の形状、スペースおよび/または他の組み込み上の問題を生じさせる可能性がある。本明細書に記載する多様なトランスミッションは、入力軸の中心線と出力駆動ギヤまたは最終駆動ギヤの中心線との間の種々の距離を、非常に小さい距離を含めて提供することができる。従って、多様な構成を備えていることによって、これらの中心線間の相対的な距離を、トランスミッション機構の用途に対する特別な設計パラメータに応じて、動かすかあるいは選択することが可能になる。
【0100】
図13を参照すると、トランスミッション機構448が、ディファレンシャル462を有するトランスアクスル460の一部と共に、相対的な方位において描かれている。トランスアクスル460は、図示のように、エンジンルーム内で左対右、あるいは左舷側対右舷側に配置される。従って、前輪駆動車両の左側の前輪に動力を供給する等速(CV)ジョイント464が示されている。CVジョイント464は左側前輪の車体側の内側に位置し、最終駆動ギヤ52と協動するディファレンシャル462はCVジョイント464の右側にある。最終駆動ギヤ52がトランスミッション機構448から動力を受け取る。
【0101】
図示のように、トランスアクスル460並びにエンジンルーム内に配置される他のいくつかの構成要素は、操作上および組み込み上の最小の要件を備えている。図から正しく評価し得るように、トランスミッション機構448並びに本開示の他のトランスミッション機構の構成形状および組み込みは、トランスミッション機構を構成する場合の選択肢を提供するという利益をもたらしており、エンジンルーム内におけるその配置および組み込み要件の柔軟性を可能にする。例えば、先行のトランスミッション装置に比べてトランスミッション機構448の軸方向長さが短縮されることは、トランスミッション機構448の左舷側または右舷側に構成要素を配置する場合に大きな柔軟性を提供し、かつ、入力動力を入力軸451に供給するエンジンをエンジンルーム内に配置する場合に大きな柔軟性を提供する。
【0102】
もう1つの例であるデュアルクラッチトランスミッション機構500は、図1〜3のデュアルクラッチトランスミッション機構10の前進6速と異なって前進5速であるが、1つのピニオン間にワンウェイクラッチ594が組み込まれている。1つの実施例として、第1ギヤピニオン570と、1つのレイシャフト、この例では奇数番号のレイシャフト520とが図14〜16に示されている。ワンウェイクラッチ594は、関係するピニオン570を対応するレイシャフト520に係合するために用いられるシンクロナイザ120の必要性を排除する。これによって、デュアルクラッチトランスミッション機構500に使用されるシンクロナイザ120の個数の低減が可能になり、従って、トランスミッション機構500のコストが節減される。
【0103】
前記のように、先行のトランスミッション装置においては、全第1段ギヤ比が、レイシャフト上に配置される第1ギヤピニオンとカウンタシャフト上に配置される相対的に大きな対応第1ギヤとの間の比によって決定されるので、非常に小さい直径の第1ギヤピニオンが必要になる。さらにまた、第1ギヤピニオンの直径最小化のこの要求は、前記のように、第1ギヤピニオンを多くの場合レイシャフトに機械加工する結果を招くが、これは明らかに、第1ギヤピニオンおよびレイシャフト間におけるワンウェイクラッチの使用を妨げるであろう。エンジン入力およびクラッチ入力間のギヤ比と、レイシャフトピニオンおよびカウンタシャフトギヤ間のギヤ比との両者が組み合わされて作用するという本開示のトランスミッション機構500の条件によって、これも前記のように、第1ギヤピニオン570および対応する第1ギヤ552間の寸法の差異を低減できる。従って、第1ギヤピニオン570の直径を、奇数番号のレイシャフト520および第1ギヤピニオン570間にワンウェイクラッチ594を配置するに十分な寸法だけ増大することができる。
【0104】
図示の実施例においては、ワンウェイクラッチ594は、第1ギヤピニオン570が形成された部分と、隣接する軌道輪の部分598とを含む。1組のワンウェイクラッチ軸受け596が、ワンウェイクラッチ594の軌道輪部分598と奇数番号のレイシャフト520との間に装着される。入力軸524が、奇数番号のレイシャフト520および偶数番号のレイシャフト522を、予め選択された最大回転速度まで回転駆動すると、ワンウェイクラッチ軸受け596が、ワンウェイクラッチ594の軌道輪部分598と奇数番号のレイシャフト520との間を摩擦係合して、第1ギヤピニオン570を奇数番号のレイシャフト520によって回転駆動する。予め選択された最大回転速度を超過すると、ワンウェイクラッチ軸受け596は、ワンウェイクラッチ594の軌道輪部分598と奇数番号のレイシャフト520との間を自由回転し得るようになる。第1ギヤピニオン570は、もはや奇数番号のレイシャフト520によって回転駆動されず、このため、第3ギヤピニオン574および第5ギヤピニオン578のような奇数番号のレイシャフト520上の他のギヤピニオンを、奇数番号のレイシャフト520によって選択的に回転駆動することが可能になり、また、第2ギヤピニオン582および第4ギヤピニオン576のような偶数番号のレイシャフト522上の他のギヤピニオンを回転駆動することが可能になる。
【0105】
ここで、図14および図15に示すデュアルクラッチトランスミッション機構500のさらなる詳細に移ると、1対のクラッチ装置560および562が設けられ、そのクラッチ装置が、トルクを、エンジン入力軸524から奇数番号のレイシャフト520および偶数番号のレイシャフト522に選択的に伝送する。各レイシャフトは、それぞれ、そのレイシャフトに選択的に係合されて回転駆動される複数のギヤピニオンを備えている。さらに具体的には、クラッチ装置560および562の上流側において、エンジン入力軸524はエンジン入力スプロケット528を回転駆動する。エンジン入力軸524とエンジン入力スプロケット528との間には振動吸収用としてダンパ530が配備される。さらに、クラッチ560および562の上流側においては、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット542が奇数番号のクラッチ560の入力側に連結され、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット544が偶数番号のクラッチ562の入力側に連結される。奇数番号のクラッチ駆動スプロケット542および偶数番号のクラッチ駆動スプロケット544は、例えばチェーン、ギヤあるいはそれらの組合せを介して、エンジン入力スプロケット528によって同時に回転駆動されるが、これについては、図1および図4〜12を参照して前記に述べたとおりである。
【0106】
クラッチ560および562の下流側においては、奇数番号のクラッチ560の出力側が奇数番号のレイシャフト520に接続され、偶数番号のクラッチ562の出力側が偶数番号のレイシャフト522に接続される。奇数番号のギヤピニオン、この例では第1ギヤピニオン570、第3ギヤピニオン574および第5ギヤピニオン578が、奇数番号のレイシャフト520に沿って軸方向に装着され、偶数番号のギヤピニオン、この例では第2ギヤピニオン572および第4ギヤピニオン576が、偶数番号のレイシャフト522に沿って軸方向に装着される。さらに、シンクロナイザ操作されるバックギヤピニオン582が偶数番号のレイシャフト522に配置される。
【0107】
各ギヤピニオン570、572、576、574、578および582は、それぞれのレイシャフト520または522によって回転駆動するために、そのそれぞれのレイシャフト520または522に選択的に係合することができる。上記に詳述したように、エンジン入力スプロケット528が予め定められたある回転速度で回転駆動されると、第1ギヤピニオン570は、奇数番号のレイシャフト520によって回転駆動されるように、ワンウェイクラッチ594によって奇数番号のレイシャフト520に選択的に係合される。他のギヤピニオン572、576、574、578および582を、それぞれのレイシャフト520または522によって回転駆動するように、そのそれぞれのレイシャフト520または522に選択的に係合するために、シンクロナイザ120、好ましくはシングルコーンのシンクロナイザが用いられる。詳しく言えば、1つのシンクロナイザ120が、奇数番号のレイシャフト520上に配置され、第3ギヤピニオン574または第5ギヤピニオン578のいずれかを、奇数番号のレイシャフト520に選択的に回転係合することができる。偶数番号のレイシャフト522上には2つのシンクロナイザ120が配置され、その1つは、バックギヤピニオン582を偶数番号のレイシャフト522に選択的に回転係合し、もう1つは、第2ギヤピニオン572または第4ギヤピニオン576のいずれかを偶数番号のレイシャフト522に選択的に回転係合する。
【0108】
カウンタシャフト550は同軸ではなく、奇数番号のレイシャフト520および偶数番号のレイシャフト522から離して配置される。カウンタシャフト550は、それと共に回転するように装着される複数の被駆動ギヤ552、554および556を有する。カウンタシャフト550上に装着される複数の被駆動ギヤ552、554および556は、それぞれ、ギヤピニオンがそれぞれの奇数番号のレイシャフト520または偶数番号のレイシャフト522に回転係合された時に、第1ギヤピニオン570、第2ギヤピニオン572、第3ギヤピニオン574、第4ギヤピニオン576および第5ギヤピニオン578の1つ以上のギヤピニオンによって回転駆動される。偶数番号のレイシャフトのバックギヤピニオン582は、カウンタシャフト550上の複数の被駆動ギヤ552、554および556のいずれかを、アイドラギヤ軸592の回りに回転するように装着される中間アイドラギヤ590を介して駆動する。しかし、各ギヤピニオン570、572、574、576、578および582に対して、カウンタシャフト550上に個別の被駆動ギヤ552、554および556があるわけでは必ずしもない。
【0109】
上記の代わりに、カウンタシャフト550上の1つ以上の被駆動ギヤ552、554および556が、奇数番号のレイシャフト520および偶数番号のレイシャフト522上の1つ以上のギヤピニオン570、572、574、576、578および582によって共有される。例えば、第1ギヤピニオン570は対応する第1被駆動ギヤ552を駆動することができ、第2ギヤピニオン572と、第3ギヤピニオン574と、バックギヤピニオン582(アイドラギヤ590を介して)とは、対応する共通の第2/第3/バック被駆動ギヤ554を駆動することができ、第4ギヤピニオン576と第5ギヤピニオン578とは、対応する共通の第4/第5被駆動ギヤ556を駆動することができる。出力ギヤ532は、カウンタシャフト550の第4/第5被駆動ギヤ556によって回転駆動され、続いてディファレンシャル534を有するトランスアクスル536を駆動する。
【0110】
デュアルクラッチトランスミッション機構500は、クラッチ560および562の上流側および下流側のギヤ比を統合する。詳しく言えば、第1、第3および第5ギヤに対する上流側のギヤ比は、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット542とエンジン入力スプロケット528との間の比であり、第2、第4およびバックギヤに対する上流側のギヤ比は、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット544とエンジン入力スプロケット528との間の比である。第1ギヤに対する下流側のギヤ比は、第1ギヤピニオン570と第1被駆動ギヤ552との間の比であり、第2ギヤに対しては、第2ギヤピニオン572と第2/第3/バック被駆動ギヤ554との間の比であり、第3ギヤに対しては、第3ギヤピニオン574と第2/第3/バック被駆動ギヤ554との間の比であり、バックギヤに対しては、バックギヤピニオン582と第2/第3/バック被駆動ギヤ554との間の比であり、第4ギヤに対しては、第4ギヤピニオン576と第4/第5被駆動ギヤ556との間の比であり、第5ギヤに対しては、第5ギヤピニオン578と第4/第5被駆動ギヤ556との間の比である。有効ギヤ比は、所与のギヤに対する上流側のギヤ比と下流側のギヤ比との積である。上流側のギヤ比および下流側のギヤ比の両者を備えることによって、上記に詳述した利点のいくつかあるいはそのすべてを実現できる。
【実施例】
【0111】
本明細書で開示するデュアルクラッチトランスミッションのいくつかの態様の利点は、前進5速度およびバック速度を有するデュアルクラッチトランスミッション機構500において使用するための以下のようなスプロケット、ピニオンおよびギヤの構成を選択することによって、例示的に示すことができる。本開示のデュアルクラッチトランスミッションの利点の例を、各スプロケット528、542、544、各ギヤ552、554および556、あるいは、各ピニオン570、572、574、576、578および582の歯数(表1)に基づいて以下に述べる。
【0112】
【表1】

【0113】
この例の場合、上流側のギヤ比(奇数番号のクラッチ駆動スプロケット542または偶数番号のクラッチ駆動スプロケット544とエンジン入力スプロケット528との間の比)、下流側のギヤ比(奇数番号のレイシャフト520および偶数番号のレイシャフト522上に配置されるギヤピニオン570、572、574、576、578および582とカウンタシャフト550上に装着される被駆動ギヤ552、554および556との間の比)およびカウンタシャフトにおける有効ギヤ比は表2のように計算することができる。
【0114】
【表2】

【0115】
この例から分かるように、上記に仮定したスプロケット、ピニオンおよびギヤの構成を用いると、第1段ギヤ比の上流側および下流側のギヤ比は、いずれもカウンタシャフトにおける有効ギヤ比よりも大幅に低い。従って、前記に詳述した有利点のいくつかまたはすべてを達成できる。他のスプロケットまたはギヤ、ピニオン、およびカウンタシャフトギヤの構成によっても、上流側および下流側のギヤ比における同様の低減を、同じ利点をもって、他の有効ギヤ比において、達成できる。
【0116】
本開示のデュアルクラッチ機構の機能の他の特徴面は、従来型のデュアルクラッチトランスミッションと比較することによって例示することができる。例えば、従来型のデュアルクラッチトランスミッションにおいては、エンジン入力回転速度と、第1の、奇数番号のクラッチが接続された時の第1の、奇数番号のレイシャフトの速度との間の関係を、RL1=REと表現できる。但し、RL1は第1レイシャフトの回転速度であり、REはエンジン入力の回転速度である。同様に、エンジン入力回転速度と、第2の、偶数番号のクラッチが接続された時の第2の、偶数番号のレイシャフトの速度との間の関係は、RL2=REと表現できる。但し、RL2は第2レイシャフトの回転速度である。実際には、RL1およびRL2は、クラッチのスリップ、引きずり力、あるいは、エンジン入力およびレイシャフト間の回転速度の伝送効率を低下させる可能性がある他の因子によって、事実上REよりも幾分低くなることがある。
【0117】
クラッチおよびレイシャフトが接続された(上記の伝送の非効率性を伴う)選択ギヤにおける従来型のデュアルクラッチ装置のエンジン入力回転速度とカウンタシャフトの速度との間の関係は、RC=(RE)(rn)とも表現することができる。但し、RCはカウンタシャフトの回転速度であり、rnは選択されたレイシャフトピニオンおよびカウンタシャフトギヤ対間のギヤ比であり、nは選択されたギヤの番号である(すなわち第1ギヤ、第2ギヤ等)。
【0118】
トランスミッション500のような本開示のトランスミッション機構においては、奇数番号のギヤに対するカウンタシャフトの回転速度とエンジン入力との間の関係は、RCodd=(RE)(rnodd)(rL1)と表現でき、偶数番号のギヤおよびバックギヤに対するカウンタシャフトの回転速度は、RCeven=(RE)(rneven)(rL2)と表現できる。この表現において、rL1はエンジン入力スプロケット528と第1の奇数番号のクラッチ駆動スプロケット542との間のギヤ比であり、rL2はエンジン入力スプロケット528と第2の、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット544との間のギヤ比である。
【0119】
従って、これらの関係から、前記のような、上流側および下流側のギヤ比の組合せがクラッチ装置560、562の回転速度の低下、従ってレイシャフト520、522の回転速度の低下に及ぼす影響を示すことができる。例えば、以下の表3および表4は、上記に示した図14〜16のトランスミッション機構500の異なるギヤに対する、毎分当たりの回転数(RPM)で表現したエンジン入力軸524の代表的な速度の範囲と、結果として推定されるクラッチ装置560、562およびレイシャフト520、522のRPM範囲とを表し、この後者の推定RPM範囲を、典型的な従来型デュアルクラッチトランスミッション装置の推定速度と比較している。多くの用途におけるエンジン入力軸に対する速度範囲は、通常、凡そ800〜7700rpmであり、多くの用途の場合の通常の運転範囲は凡そ1000〜4000rpmである。
【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
この比較から分かるように、この例の図14〜16のトランスミッション機構500のクラッチ装置560、562およびレイシャフト520、522は、典型的な従来型のデュアルクラッチトランスミッション装置に比べて大幅に低い速度で回転するので、回転速度の低下に伴う例えばクラッチ引きずりの低下およびクラッチの自己加圧力の低下のような利点のいくつかまたはそのすべてを、具体的な用途に対するトランスミッション機構500の設計において実現でき、かつ利用できる。
【0123】
この実施例は、また、本開示のトランスミッション装置のクラッチによって実現される自己加圧力およびクラッチ引きずりトルクの大幅な低下を示すことができる。自己加圧力はクラッチの回転速度の関数であり、自己加圧力=f(Rclutch2)と表現できる。但し、Rclutchは第1の、奇数番号のクラッチまたは第2の、偶数番号のクラッチの回転速度である(これは、前記のRL1またはRL2とほぼ同等でもある)。従って、第1ギヤの例の回転速度の高速端においてクラッチの回転速度が係数1.75だけ低下すれば、クラッチの自己加圧力が、従来型装置に対して係数1.752または67%だけ低減するであろう(他の全変数は一定のままとして)。同様に、第5ギヤの例の回転速度の高速端においてクラッチの回転速度が係数1.75だけ低下すれば、従来型装置に対して係数1.752または67%だけ低減することになるであろう。この例における偶数番号のギヤは、2.332または82%だけ低い自己加圧力を有するであろう。
【0124】
従って、最大自己加圧力を補償しなければならない補償均衡力であって自己加圧力相殺に必要なクラッチの補償均衡力を、比例的に低減することができる。この低減によって、前記のように、バネ力またはバネ定数の低い均衡バネを使用し得るようになるため、本開示のトランスミッション機構用のクラッチ装置の設計、部品および運転の複雑性を低減することが可能になる。
【0125】
クラッチの引きずりDclutchは、クラッチの構造および材料と、オイル流量と、クラッチの運転条件と、他のこの種の因子とに関係するいくつかの因子の関数である。クラッチの回転速度とクラッチ引きずりとの間の関係は、Dclutch=f(Rclutch、q)、但しq=オイル流量、と表現できる。従って、第1ギヤの例の回転速度の高速端においてクラッチの回転速度が係数1.75だけ低下すれば、クラッチ引きずりが、従来型装置に対して約43%だけ低減するであろう(他の全変数は一定のままとして)。同様に、第5ギヤの例の回転速度の高速端においてクラッチの回転速度が係数1.75だけ低下すれば、従来型装置に対して43%だけ低減するであろう。また同様に、偶数番号のクラッチの引きずりは、係数2.33だけ低減することになるが、これは約57%の低減である。
【0126】
上記の例は、また、本開示のトランスミッション機構の場合、シンクロナイザを、従来型装置のようにカウンタシャフト上に配備するのではなくレイシャフト上に配備する利点を示すために用いることができる。トランスミッション機構500のような装置において要求されるシンクロナイザのトルク容量は、装置の特殊な構造および操作によって変化するであろういくつかの変数の関数である。いくつかの重要な変数間の関係を、シンクロナイザトルク容量=f(I、w2、t、D)と表現できる。式中、w=ギヤまたはピニオンとそれぞれのシャフト(カウンタシャフトまたはレイシャフト)との間の速度差、I=シンクロナイザが打ち勝たなければならない回転慣性、t=所要の同期時間、および、D=装置の引きずり、である。
【0127】
前記のように、第1ギヤのシンクロナイザがカウンタシャフトに装着される従来型のデュアルクラッチトランスミッション装置においては、レイシャフトから反映される回転慣性が、ギヤ比の2乗すなわちrn2の関数となる。従って、シンクロナイザが第1の、奇数番号のレイシャフトのようなレイシャフト上に配備される本開示のトランスミッション機構の態様においては、シンクロナイザに要求されるトルク容量を、従来型装置に比べて、比例する量だけ低減することができる。上記の例においては、第1ギヤに対するギヤ比はr1st=4.01であり、従って、第1ギヤのシンクロナイザの必要トルク容量は、従来型装置に比べて係数4.012すなわち係数16.08だけ減少するであろう。ギヤ比がrreverse=3.31であるこの例のバックギヤの場合には、シンクロナイザを対応するレイシャフト上に装着すれば、係数3.312すなわち係数10.96だけ、シンクロナイザのトルク容量を低減できる。
【0128】
同様に、従来型装置における各レイシャフトのクラッチ装置に対するクラッチ引きずりトルクDclutchは、噛み合っているレイシャフトピニオンとカウンタシャフトギヤとの間のギヤ比によって拡大作用を受ける。従って、Dclutchを補償するシンクロナイザのトルク容量も、このような従来型装置においては係数rnだけ増大する。レイシャフト上のシンクロナイザを用いる本開示のトランスミッション機構の態様においては、Dclutchを補償するに必要なシンクロナイザのトルク容量を、従来型装置に対して、係数rnだけ低減できる。上記の例においては、この係数は第1ギヤについては4.01である。
【0129】
上記の例におけるピニオン(DP)およびギヤ(DG)の適切な直径は、ピニオンおよびギヤ間の所要の比(rn)によって決定できる。例えば、第1ギヤ(DG1)のギヤ直径が与えられると、対応する第1ギヤピニオン(DP1)の直径は、式DP1=DG1/r1によって決定される。所要の有効ギヤ比が4.01であり、第1段ギヤ比が2.29、すなわち第1ギヤピニオンが第1ギヤの1回転ごとに2.29倍回転する上記の例においては、第1ギヤピニオンDP1の直径は、DG1/2.29、すなわち第1ギヤの直径の約40%(約2/5)によって決定される。上流側のギヤ比を欠く先行のトランスミッション装置においては、全有効ギヤ比がピニオンおよびギヤ間のギヤ比によって決定される。比較目的のため、第1ギヤ用のギヤ比4.01を達成するには、ピニオンは、対応する第1ギヤの直径の約25%である直径を有するものでなければならないであろう。
【0130】
従って、上流側のギヤ比および下流側のギヤ比を有する本開示のトランスミッション機構は、先行のトランスミッション装置におけるピニオンの直径に比べるとかなり大きな直径を有する第1ギヤピニオンおよび他のピニオンを有するという前記の利点を含むことができる。例えば、本開示のトランスミッション機構の第1ギヤピニオンがかなり大きいことによって、ピニオンおよび対応するレイシャフト間に軸受けを挿入することが可能になり、これによってさらに、そのピニオンを回転駆動に選択するためのシンクロナイザをレイシャフト上に装着することが可能になる。
【0131】
図1の説明に関連して先に述べたように、エンジン入力スプロケット528によって奇数番号のクラッチ駆動スプロケット542と偶数番号のクラッチ駆動スプロケット544とを同時に駆動するために単一のチェーン540を用いることができる。実施例1のデュアルクラッチトランスミッション機構500に用いるのに適切なチェーンの1つの例は、94リンクを有し、幅が約20mmであり、ピッチが約8mmのチェーンである。この例においては、奇数番号のクラッチ入力スプロケット542の中心は、エンジン入力スプロケット528の中心から約108mm離して配置され、偶数番号の入力スプロケット544の中心は、エンジン入力スプロケット528の中心から約218mm離して配置され、偶数番号のクラッチ入力スプロケット544の中心は、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット542の中心から約128mm離して配置される。
【0132】
もう1つの実施例として、デュアルクラッチトランスミッション機構600の構成が図18および図19に示される。このトランスミッション機構は、図14〜16のトランスミッション機構と構造が類似しているが、シンクロナイザ操作されるのではなくスライドするバックギヤアイドラ692を備えるという点で基本的に異なっている。シンクロナイザ120の個数の低減はトランスミッション機構600のコストを低減できる。他の相違点は以下の説明から明らかになるであろう。
【0133】
トランスミッション機構600は、エンジン入力軸624と、奇数番号のレイシャフト620と、偶数番号のレイシャフト622と、カウンタシャフト650とを有する。これらの各シャフト624、620、622および650は同軸でなく、互いに平行である。奇数番号のクラッチ装置660および偶数番号のクラッチ装置662が設けられ、それぞれ個別に接続可能である。このクラッチの目的については以下に詳述する。
【0134】
クラッチ装置660、662の上流側においては、チェーン640が、エンジン入力軸624に装着されるエンジン入力スプロケット628を介して、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット642および偶数番号のクラッチ駆動スプロケット644を回転駆動する。奇数番号のクラッチ駆動スプロケット642とエンジン入力スプロケット628との間の比は、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット644とエンジン入力スプロケット628との間の比と異なる。奇数番号のクラッチ装置660の駆動側または上流側は、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット642に操作連結され、それによって回転駆動される。同様に、偶数番号のクラッチ装置662の駆動側または上流側は、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット644に操作連結され、それによって回転駆動される。
【0135】
ここで、クラッチ装置660、662の下流側に移ると、奇数番号のクラッチ装置660の下流側または出力側は奇数番号のレイシャフト620に操作連結され、偶数番号のクラッチ装置662の下流側または出力側は偶数番号のレイシャフト622に操作連結される。奇数番号のクラッチ装置660が接続されると、トルクが、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット642から、奇数番号のクラッチ装置660を介して奇数番号のレイシャフト620に伝達される。同様に、偶数番号のクラッチ装置662が接続されると、トルクが、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット644から、偶数番号のクラッチ装置662を介して偶数番号のレイシャフト622に伝達される。
【0136】
奇数番号のレイシャフト620上には、第1ギヤピニオン670と、第3ギヤピニオン674と、第5ギヤピニオン678とが配置される。第1ギヤピニオン670を奇数番号のレイシャフト620に回転係合するためのワンウェイクラッチ694が配置される。奇数番号のレイシャフト620上にはシンクロナイザ120が装着され、第3ギヤピニオン674または第5ギヤピニオン678を奇数番号のレイシャフト620に選択的に回転係合するために、第3ギヤピニオン674および第5ギヤピニオン678の間に配置される。偶数番号のレイシャフト622上には、第2ギヤピニオン672と、第4ギヤピニオン676と、バックギヤピニオン682とが配置される。偶数番号のレイシャフト622上にはシンクロナイザ120が装着され、第2ギヤピニオン672または第4ギヤピニオン676を偶数番号のレイシャフト622に選択的に回転係合するために、第2ギヤピニオン672および第4ギヤピニオン676の間に配置される。バックギヤピニオン682は偶数番号のレイシャフト622に装着され、バックギヤアイドラ690がアイドラ軸692の回りに回転可能である。バックギヤアイドラ690は、バックギヤピニオン682に沿って、第1位置と第2位置との間を選択的にスライドできる。バックギヤアイドラ690は、第1位置と第2位置との間を、種々の方法でスライドさせることができるが、これらの方法には、油圧作動、機械作動または電気作動のフォークまたはレバーアーム(図示せず)によるものが含まれる。
【0137】
カウンタシャフト650は、第1/バック被駆動ギヤ652と、第2被駆動ギヤ654と、第3/第4被駆動ギヤ656と、第5被駆動ギヤ658とを有する。第1/バック被駆動ギヤ652は、第1ギヤピニオン670と、バックアイドラギヤ690が第2位置にある時のバックアイドラギヤとの同一線上に位置している。第1/バック被駆動ギヤ652は、バックアイドラギヤ690が第1位置にある時は、バックアイドラギヤと同列には並ばない。第2被駆動ギヤ654は第2ギヤピニオン672と同列に並び、第3/第4被駆動ギヤ656は、第3ギヤピニオン674および第4ギヤピニオン676と同列に並び、第5被駆動ギヤ658は第5ギヤピニオン678と同列に並ぶ。第5被駆動ギヤ658は、最終駆動ギヤとしても機能し、出力ギヤ632と同列に配置され、この出力ギヤ632が続いてディファレンシャル装置634のハウジングに連結され、それを回転駆動する。
【0138】
レイシャフト620、622の種々のギヤピニオン670、672、674、676、678および682と、それらと同列に配置されるカウンタシャフト650の被駆動ギヤ652、654、656および658との間には、異なる下流側のギヤ比が存在する。ギヤ比は、どちらのレイシャフト620、622を駆動するようにどちらのクラッチ装置660、662が接続されるかによって、かつ、どのギヤピニオン672、674、676、678および682がそれぞれのレイシャフト620、622に係合されるかによって決定される。これらの下流側のギヤ比と上流側のギヤ比との積が、どのギヤが選択されるか、すなわち第1、第2、第3、第4、第5またはバックのどのギヤが選択されるかに応じて、トランスミッション機構600に対する全体の有効ギヤ比に帰結する。
【0139】
さらに別の実施例として、図20に、前進6速度と、スライド式のバックアイドラギヤ790を介して作動するバック速度とを備えたデュアルクラッチトランスミッション機構700が示される。トランスミッション機構700は、奇数番号のクラッチ装置760および偶数番号のクラッチ装置762を含んでおり、その機能を以下に詳しく説明する。クラッチ装置760、762の上流側においては、エンジン入力スプロケット(図示せず)が、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット742と偶数番号のクラッチ駆動スプロケット744との両者を、チェーン740を介して回転駆動する。奇数番号のクラッチ駆動スプロケット742は、奇数番号のクラッチ装置760の入力側を駆動するように操作連結され、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット744は、偶数番号のクラッチ装置762の入力側を駆動するように操作連結される。エンジン入力スプロケットと奇数番号のクラッチ駆動スプロケット742との間の比は、エンジン入力スプロケットと偶数番号のクラッチ駆動スプロケット744との間の比とは異なる。
【0140】
クラッチ装置760、762の下流側においては、奇数番号のレイシャフト720が、奇数番号のクラッチ装置760の出力側と入力レイシャフト722とによって回転駆動される。奇数番号のレイシャフト720上には、第1ギヤピニオン770と、第3ギヤピニオン774と、第5ギヤピニオン778とが配置される。図14〜16のトランスミッション機構500に関して前記に述べたと同様の構造および機能を有するワンウェイクラッチ794が、第1ギヤピニオン770を奇数番号のレイシャフト720に選択的に回転係合する。奇数番号のレイシャフト720上にはシンクロナイザ120が装着され、第3ギヤピニオン774および第5ギヤピニオン778のいずれかを奇数番号のレイシャフト720に選択的に回転係合するために、第3ギヤピニオン774および第5ギヤピニオン778の間に配置される。偶数番号のレイシャフト722上には、第2ギヤピニオン772と、第4ギヤピニオン776と、第6ギヤピニオン780とが配置される。
【0141】
偶数番号のレイシャフト722上にはシンクロナイザ120が装着され、それが、第2ギヤピニオン772を偶数番号のレイシャフト722に選択的に回転係合することができる。偶数番号のレイシャフト722上にはさらにもう1つのシンクロナイザ120が装着され、第4ギヤピニオン776および第6ギヤピニオン780のいずれかを偶数番号のレイシャフト722と選択的に回転係合するために、第4ギヤピニオン776および第6ギヤピニオン780の間に配置される。バックギヤピニオン782は、偶数番号のレイシャフト722と一体成形され、アイドラ軸792の回りに回転するように調整されるバックアイドラギヤ790と噛み合う。バックギヤピニオン782の長さは、バックアイドラギヤ790の幅よりも長く、ギヤ790を、図18および図19のトランスミッション機構600に関して前記に述べたような手段を用いて、第1位置から第2位置にスライドさせ得るようになっている。これについては以下にさらに言及する。
【0142】
カウンタシャフト750は、奇数番号および偶数番号のレイシャフト720、722に平行に向けられ、その両シャフトから離して配置される。カウンタシャフト750には、第1/バックギヤ752、第2ギヤ754、第3/第4ギヤ756および第5/第6ギヤ758が装着される。第1/バックギヤ752は、第1ギヤピニオン770または第1位置でなく第2位置にあるバックアイドラギヤ790によって駆動されるように、それらと同列に配置される。第2ギヤ754は、第2ギヤピニオン772によって駆動されるようにそれと同列に配置される。第3/第4ギヤ756は、奇数番号のクラッチ装置760が奇数番号のレイシャフト720を回転するように接続される時は第3ギヤピニオン774によって駆動されるように、あるいは、偶数番号のクラッチ装置762が偶数番号のレイシャフト722を回転するように接続される時は第4ギヤピニオン776によって駆動されるように、それらと同列に配置される。また、最終駆動ギヤとして機能する第5/第6ギヤ758は、奇数番号のクラッチ装置760が奇数番号のレイシャフト720を回転するように接続される時は第5ギヤピニオン778によって駆動されるように、あるいは、偶数番号のクラッチ装置762が偶数番号のレイシャフト722を回転するように接続される時は第6ギヤピニオン780によって駆動されるように、それらと同列に配置される。
【0143】
カウンタシャフト750の各ギヤ752、754、756および758と、各ピニオン770、772、774、776、778、780および782との組合せのそれぞれは、異なる下流側のギヤ比を有する。この下流側のギヤ比に、エンジン入力スプロケットと奇数番号のギヤ用の奇数番号のクラッチ駆動スプロケット742との間、あるいは、エンジン入力スプロケットと偶数番号のギヤおよびバックギヤ用の偶数番号のクラッチ駆動スプロケット744との間の上流側のスプロケット比を乗じると、トランスミッション機構700の有効ギヤ比が得られる。
【0144】
さらに別の実施例として、図21に、前進5速度と、シンクロナイザ操作されるバックギヤおよび第1ギヤとを備えたデュアルクラッチトランスミッション機構800が示される。トランスミッション機構800は、奇数番号のクラッチ装置860および偶数番号のクラッチ装置862を含んでおり、その機能を以下に詳しく説明する。クラッチ装置860、862の上流側においては、エンジン入力スプロケット(図示せず)が、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット842と偶数番号のクラッチ駆動スプロケット844との両者を、チェーン840を介して回転駆動する。奇数番号のクラッチ駆動スプロケット842は、奇数番号のクラッチ装置860の入力側を駆動するように操作連結され、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット844は、偶数番号のクラッチ装置862の入力側を駆動するように操作連結される。エンジン入力スプロケットと奇数番号のクラッチ駆動スプロケット842との間の比は、エンジン入力スプロケットと偶数番号のクラッチ駆動スプロケット844との間の比とは異なる。
【0145】
クラッチ装置860、862の下流側においては、奇数番号のレイシャフト820が、奇数番号のクラッチ装置860の出力側と入力レイシャフト822とによって回転駆動される。奇数番号のレイシャフト820上には、第1ギヤピニオン870と、バックギヤピニオン882と、第3ギヤピニオン874と、第5ギヤピニオン878とが配置される。奇数番号のレイシャフト820上にはシンクロナイザ120が装着され、第1ギヤピニオン870およびバックギヤピニオン882のいずれかを奇数番号のレイシャフト820に選択的に係合するために、第1ギヤピニオン870およびバックギヤピニオン882の間に配置される。奇数番号のレイシャフト820上にはもう1つのシンクロナイザ120が装着され、第3ギヤピニオン874および第5ギヤピニオン878のいずれかを奇数番号のレイシャフト820に選択的に回転係合するために、第3ギヤピニオン874および第5ギヤピニオン878の間に配置される。第2ギヤピニオン872および第4ギヤピニオン876は、偶数番号のレイシャフト822上に配置され、第2ギヤピニオン872または第4ギヤピニオン876を偶数番号のレイシャフト822に選択的に回転係合することができるシンクロナイザ120がその間に配置される。
【0146】
カウンタシャフト850は、奇数番号および偶数番号のレイシャフト820、822に平行に向けられ、その両シャフトから離して配置される。カウンタシャフト850には、第1ギヤ852、第2/バックギヤ854、第3/第4ギヤ856および第5ギヤ858が装着される。第1ギヤ852は、第1ギヤピニオン870によって駆動されるようにそれと同列に配置される。第2/バックギヤ854は、第2ギヤピニオン872またはバックアイドラギヤ(図示せず)を介してバックギヤピニオン882によって駆動されるようにそれらと同列に配置される。第3/第4ギヤ856は、奇数番号のクラッチ装置860が奇数番号のレイシャフト820を回転するように接続される時は第3ギヤピニオン874によって駆動されるように、あるいは、偶数番号のクラッチ装置862が偶数番号のレイシャフト822を回転するように接続される時は第4ギヤピニオン876によって駆動されるように、それらと同列に配置される。また、最終駆動ギヤとして機能する第5ギヤ858は、第5ギヤピニオン878によって駆動されるようにそれと同列に配置される。
【0147】
カウンタシャフト850の各ギヤ852、854、856および858と、各ピニオン870、872、874、876、878および882との組合せのそれぞれは、異なる下流側のギヤ比を有する。この下流側のギヤ比に、エンジン入力スプロケットと奇数番号のギヤ用の奇数番号のクラッチ駆動スプロケット842との間、あるいは、エンジン入力スプロケットと偶数番号のギヤおよびバックギヤ用の偶数番号のクラッチ駆動スプロケット844との間の上流側のスプロケット比を乗じると、トランスミッション機構800の有効ギヤ比が得られる。
【0148】
さらに別の実施例として、図22に、前進5速度およびバック速度を備えたトランスミッション機構900が示される。このトランスミッション機構900は、さらに、第1ギヤピニオン970に関係するワンウェイクラッチ994と、バックギヤピニオン982に関係する遊星歯車装置992とを備えており、それを以下に詳しく説明する。また、トランスミッション機構900は、奇数番号のクラッチ装置960および偶数番号のクラッチ装置962を含んでおり、その機能も以下に説明する。クラッチ装置960、962の上流側においては、エンジン入力スプロケット(図示せず)が、奇数番号のクラッチ駆動スプロケット942と偶数番号のクラッチ駆動スプロケット944との両者を、チェーン940を介して回転駆動する。奇数番号のクラッチ駆動スプロケット942は、奇数番号のクラッチ装置960の入力側を駆動するように操作連結され、偶数番号のクラッチ駆動スプロケット944は、偶数番号のクラッチ装置962の入力側を駆動するように操作連結される。エンジンスプロケットと奇数番号のクラッチ駆動スプロケット942との間の比は、エンジン入力スプロケットと偶数番号のクラッチ駆動スプロケット944との間の比とは異なる。
【0149】
クラッチ装置960、962の下流側においては、奇数番号のレイシャフト920が、奇数番号のクラッチ装置960の出力側と入力レイシャフト922とによって回転駆動される。奇数番号のレイシャフト920上には、第1ギヤピニオン970と、第3ギヤピニオン974と、第5ギヤピニオン978とが配置される。図14〜16のトランスミッション機構500に関して前記に述べたと同様の構造および機能を有するワンウェイクラッチ994が、第1ギヤピニオン970を奇数番号のレイシャフト920に選択的に回転係合する。奇数番号のレイシャフト920上にはシンクロナイザ120が装着され、第3ギヤピニオン974および第5ギヤピニオン978の間に配置される。このシンクロナイザ120は、第3ギヤピニオン974および第5ギヤピニオン978のいずれかを奇数番号のレイシャフト920に選択的に回転係合することができる。
【0150】
偶数番号のレイシャフト922上には、第2ギヤピニオン972と、第4ギヤピニオン976と、バックギヤピニオン982とが配置される。偶数番号のレイシャフト922上にはシンクロナイザ120が装着され、それが、第2ギヤピニオン972および第4ギヤピニオン976のいずれかを偶数番号のレイシャフト922に選択的に回転係合するために、第2ギヤピニオン972または第4ギヤピニオン976のいずれかを選択的に係合できる。同様に偶数番号のレイシャフト922上に配置されるバックギヤピニオン982は遊星歯車装置992と関連している。
【0151】
遊星歯車装置992は、偶数番号のレイシャフト922に一体成形される中心配置のサンギヤ966と、1つ以上の遊星ギヤ996とを含み、リングギヤ964が遊星ギヤ996を取り巻いている。リングギヤ964を、例えばバンド、ドグクラッチまたは摩擦クラッチ(図示せず)によって係合すると、リングギヤ964はトランスミッション装置900のハウジング998に対して固定される。これによって、サンギヤ966が、バックギヤピニオン982に回転駆動連結される遊星ギヤ964を回転させることができる。バックギヤピニオン982は、続いて、その外周によって最終駆動ギヤ990を回転駆動する。
【0152】
カウンタシャフト950は、奇数番号および偶数番号のレイシャフト920、922に平行に向けられ、その両シャフトから離して配置される。カウンタシャフト950には、第1ギヤ952、第2ギヤ954、第3/第4ギヤ956および第5ギヤ958が装着される。第1ギヤ952は、第1ギヤピニオン970によって駆動されるようにそれと同列に配置される。第2ギヤ954は、第2ギヤピニオン972によって駆動されるようにそれと同列に配置される。第3/第4ギヤ956は、奇数番号のクラッチ装置960が奇数番号のレイシャフト920を回転するように接続される時は第3ギヤピニオン974によって駆動されるように、あるいは、偶数番号のクラッチ装置962が偶数番号のレイシャフト922を回転するように接続される時は第4ギヤピニオン976によって駆動されるように、それらと同列に配置される。第5ギヤ958は、奇数番号のクラッチ装置960が奇数番号のレイシャフト920を回転するように接続される時は第5ギヤピニオン978によって駆動されるように、あるいは、偶数番号のクラッチ装置962が偶数番号のレイシャフト922を回転するように接続され、かつ、バックギヤピニオン982が遊星歯車装置992によって回転駆動される時は、バックギヤピニオン982を介して最終アイドラギヤ990の内周によって駆動されるように、それらと同列に配置される。
【0153】
カウンタシャフト950の各ギヤ952、954、956および958と、各ギヤピニオン970、972、974、976、978および982との組合せのそれぞれは、異なる下流側のギヤ比を有する。この下流側のギヤ比に、エンジン入力スプロケットと奇数番号のギヤ用の奇数番号のクラッチ駆動スプロケット942との間、あるいは、入力スプロケットと偶数番号のギヤおよびバックギヤ用の偶数番号のクラッチ駆動スプロケット944との間の上流側のスプロケット比を乗じると、トランスミッション機構900の有効ギヤ比が得られる。
【0154】
本発明の好ましい様態を含む特定のいくつかの実施例を上記に説明しているが、当業者は、本発明の範囲内に帰着する、上記の装置および技術の多くの変形態、修正態、置換態および交換態が存在することを正しく評価するであろう。例えば、図1〜3、図13および図14〜22のトランスミッション機構は、そのクラッチ装置の上流側に、チェーンおよびスプロケット駆動の構成を具備するものとして説明されているが、その駆動の構成は、特別な用途パラメータに応じて、図4〜12の任意の異なる入力側の構成によって代替し得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのエンジン入力軸から、トルクをドライブトレインに伝達するための車両のトランスミッション機構において、
第1クラッチ駆動部材および第2クラッチ駆動部材と同時駆動関係にあるエンジン入力部材を有するエンジンの入力軸であって、前記第1クラッチ駆動部材はトルクを前記エンジン入力部材から第1クラッチの入力側に第1ギヤ比において伝送するように構成され、前記第2クラッチ駆動部材はトルクを前記エンジン入力部材から第2クラッチの入力側に第2ギヤ比において伝送するように構成され、前記第2ギヤ比は前記第1ギヤ比と異なるエンジンの入力軸と、
第1レイシャフト軸線の回りに回転可能な第1レイシャフトであり、前記第1クラッチによって駆動されるように、かつ、前記エンジン入力部材から前記第1ギヤ比において伝送されるトルクを受け取るように選択的に接続することができる第1レイシャフト、および、前記第1レイシャフト軸線から離して配置される第2レイシャフト軸線の回りに回転可能な第2レイシャフトであり、前記第2クラッチによって駆動されるように、かつ、前記エンジン入力部材から前記第2ギヤ比において伝送されるトルクを受け取るように選択的に接続することができる第2レイシャフトであって、前記第1レイシャフトは第1組の複数の同軸のピニオンを有し、前記第2レイシャフトは第2組の複数の同軸のピニオンを有する第1レイシャフトおよび第2レイシャフトと、
前記第1レイシャフト軸線および前記第2レイシャフト軸線から離して配置されるカウンタシャフト軸線の回りに回転可能なカウンタシャフトであり、そのシャフト上に同軸に装着される第1組のギヤおよび第2組のギヤを有するカウンタシャフトであって、前記第1組のギヤの各ギヤは前記第1組のピニオンの各ピニオンとその間のギヤ比によって噛み合いかつ駆動される関係にあり、前記第2組のギヤの各ギヤは前記第2組のピニオンの各ピニオンとその間のギヤ比によって噛み合いかつ駆動される関係にあり、ピニオンおよびギヤの各対の前記ギヤ比は、ピニオンおよびギヤの他の対のギヤ比と異なるカウンタシャフトと、
前記第1クラッチが、トルクを、前記噛み合うピニオンおよびギヤ対間のギヤ比と、前記エンジン入力部材および前記第1クラッチ駆動部材間の前記第1ギヤ比との積である有効ギヤ比において、前記カウンタシャフトに伝送するように接続される時には、前記第1レイシャフトに独立して係合させ得る前記第1組のピニオンの各ピニオン、および、前記第2クラッチが、トルクを、前記噛み合うピニオンおよびギヤ対間のギヤ比と、前記エンジン入力部材および前記第2クラッチ駆動部材間の前記第2ギヤ比との積である有効ギヤ比において、前記カウンタシャフトに伝送するように接続される時には、前記第2レイシャフトに独立して係合させ得る前記第2組のピニオンの各ピニオンであって、前記積によって生成される前記有効ギヤ比のそれぞれは他の有効ギヤ比とは異なる前記第1組および前記第2組のピニオンの各ピニオンと、
を含む車両のトランスミッション機構。
【請求項2】
前記第1レイシャフト上に第1レイシャフトシンクロナイザが装着されて、前記第1組のピニオンの少なくとも1つを前記第1レイシャフトに選択的に回転係合するように調整され、かつ、
前記第2レイシャフト上に第2レイシャフトシンクロナイザが装着されて、前記第2組のピニオンの少なくとも1つを前記第2レイシャフトに選択的に回転係合するように調整される、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項3】
前記第1および第2レイシャフト上に複数のシンクロナイザが装着され、前記シンクロナイザの1つが前記第1組のピニオンおよび前記第2組のピニオンの少なくとも1つを、前記第1および第2のレイシャフトのそれぞれのレイシャフトと選択的に回転係合するように調整される、
請求項2に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項4】
前記各シンクロナイザが第1摩擦面を有する接触部分を含み、前記ピニオンが第2摩擦面を有する受け入れ部分を含み、前記シンクロナイザは、前記第1および第2摩擦面間の摩擦接触の漸進的増大によって前記ピニオンを係合し、前記シンクロナイザの接触部分は、外面が前記第1摩擦面を構成するシングルコーンを含む、請求項3に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項5】
前記第1組のピニオンの1つが、ワンウェイクラッチによって第1レイシャフトに選択的に回転係合され、前記ワンウェイクラッチは、前記第1レイシャフトが所定の速度範囲内で回転する時に、前記第1組のピニオンの1つを前記第1レイシャフトに回転係合し、前記第1レイシャフトが所定の速度範囲を超える速度で回転する時には、前記第1組のピニオンの1つを前記第1レイシャフトに回転係合しない、請求項4に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項6】
前記エンジン入力部材がスプロケットを含み、前記第1クラッチ駆動部材がスプロケットを含み、前記第2クラッチ駆動部材がスプロケットを含み、前記エンジン入力スプロケットは、前記第1クラッチ駆動スプロケットおよび前記第2クラッチ駆動スプロケットを少なくとも1つのエンドレスチェーンで同時駆動し、前記第1クラッチ駆動スプロケットを駆動する前記エンジン入力スプロケットと、前記第1クラッチ駆動スプロケットと、前記第2クラッチ駆動スプロケットとには所定個数のスプロケットの歯が設けられ、前記エンジン入力スプロケットおよび前記第1クラッチ駆動スプロケットのスプロケット歯の個数は、その間の前記第1ギヤ比を生成するように選択され、前記エンジン入力スプロケットおよび前記第2クラッチ駆動スプロケットのスプロケット歯の個数は、その間の前記第2ギヤ比を生成するように選択される、請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項7】
前記エンジン入力部材が第1スプロケットおよび第2スプロケットを含み、前記第1エンジン入力スプロケットが、前記第1クラッチ駆動スプロケットを第1エンドレスチェーンで駆動し、前記第2エンジン入力スプロケットが、前記第2クラッチ駆動スプロケットを第2エンドレスチェーンで駆動し、前記第1エンジン入力スプロケットおよび前記第1クラッチ駆動スプロケットのスプロケット歯の個数は、その間の前記第1ギヤ比を生成するように選択され、前記第2エンジン入力スプロケットおよび前記第2クラッチ駆動スプロケットのスプロケット歯の個数は、その間の前記第2ギヤ比を生成するように選択される、請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項8】
前記エンジン入力部材と、前記第1クラッチ駆動部材と、前記第2クラッチ駆動部材とがギヤを含み、
第1アイドラギヤが、前記エンジン入力ギヤと噛み合って前記エンジン入力ギヤによって回転駆動され、この奇数番号のアイドラギヤは、前記第1クラッチ駆動ギヤとも噛み合って前記第1クラッチ駆動ギヤを回転駆動し、
第2アイドラギヤが、前記エンジン入力ギヤと噛み合って前記エンジン入力ギヤによって回転駆動され、前記第2アイドラギヤは、前記第2クラッチ駆動ギヤとも噛み合って前記第2クラッチ駆動ギヤを回転駆動し、前記エンジン入力ギヤは予め選択された直径を有し、前記第1クラッチ駆動ギヤは、前記エンジン入力ギヤとの間に前記第1ギヤ比を生成するように選択された直径を有し、前記第2クラッチ駆動ギヤは、前記第2クラッチ駆動ギヤおよび前記エンジン入力ギヤの間に前記第2ギヤ比を生成するように選択された直径を有する、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項9】
前記エンジン入力部材がエンジン入力スプロケットおよびエンジン入力ギヤを含み、前記第1クラッチ駆動部材がギヤを含み、前記第2クラッチ駆動部材がスプロケットを含み、
第1アイドラギヤが、前記エンジン入力部材のエンジン入力ギヤと噛み合って前記エンジン入力ギヤによって回転駆動され、前記第1アイドラギヤは、前記第1クラッチ駆動ギヤとも噛み合って前記第1クラッチ駆動ギヤを回転駆動し、
前記エンジン入力部材のエンジン入力スプロケットが、前記第2クラッチ駆動スプロケットをエンドレスチェーンで回転駆動し、前記エンジン入力ギヤは予め選択された直径を有し、前記第1クラッチ駆動ギヤは、前記エンジン入力ギヤとの間に前記第1ギヤ比を生成するように選択された直径を有し、前記エンジン入力スプロケットおよび前記第2クラッチ駆動スプロケットには、その間の前記第2ギヤ比を生成するように予め選択された個数の歯が設けられる、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項10】
前記エンジン入力部材と、前記第1クラッチ駆動部材と、前記第2クラッチ駆動部材とがギヤを含み、
第1アイドラギヤが、前記エンジン入力部材と噛み合って前記エンジン入力部材によって回転駆動され、この奇数番号のアイドラギヤは、前記第1クラッチ駆動ギヤとも噛み合って前記第1クラッチ駆動ギヤを回転駆動し、
第2アイドラギヤが、前記第1クラッチ駆動ギヤと噛み合って前記第1クラッチ駆動ギヤによって回転駆動され、前記第2アイドラギヤは、前記第2クラッチ駆動ギヤとも噛み合って前記第2クラッチ駆動ギヤを回転駆動し、前記エンジン入力ギヤは予め選択された直径を有し、前記第1クラッチ駆動ギヤは、前記エンジン入力ギヤとの間に前記第1ギヤ比を生成するように選択された直径を有し、前記エンジン入力ギヤと前記第1クラッチ駆動ギヤと前記第2クラッチ駆動ギヤとには、前記エンジン入力ギヤおよび前記第2クラッチ駆動ギヤの間に前記第2ギヤ比を生成する直径が備えられる、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項11】
前記エンジン入力部材がスプロケットを含み、前記第1クラッチ駆動部材が第1クラッチ駆動ギヤおよび第1クラッチ駆動スプロケットを含み、前記第1クラッチ駆動ギヤおよび前記第1クラッチ駆動スプロケットは一方の回転が他方を回転させるように関連し、前記第2クラッチ駆動部材がギヤを含み、
前記エンジン入力スプロケットは、前記第1クラッチ駆動スプロケットをエンドレスチェーンで回転駆動し、
第1アイドラギヤが、前記第1クラッチ駆動ギヤと噛み合って前記第1クラッチ駆動ギヤによって回転駆動され、前記第1アイドラギヤは、前記第2クラッチ駆動ギヤとも噛み合って前記第2クラッチ駆動ギヤを回転駆動し、前記エンジン入力スプロケットおよび前記第1クラッチ駆動スプロケットには、その間の前記第1ギヤ比を生成するように予め選択された個数の歯が設けられ、前記第1クラッチ駆動ギヤおよび前記第2クラッチ駆動ギヤは、前記エンジン入力スプロケットおよび前記第2クラッチ駆動ギヤの間に前記第2ギヤ比を生成するように予め選択された直径を有する、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項12】
前記第1レイシャフトが、前記第1レイシャフトに独立して係合し得るバック用のピニオンを有し、前記バックピニオンはバックアイドラギヤと噛み合い、前記バックアイドラギヤは、前記カウンタシャフト上に装着されるバックギヤと噛み合って、前記第1クラッチがトルクを有効ギヤ比において前記カウンタシャフトに伝送するように接続される時に前記カウンタシャフト上のバックギヤと駆動関係になり、前記有効ギヤ比は、前記バックピニオンおよび前記バックギヤ間の比と、前記エンジン入力部材および前記第1クラッチ駆動部材間の前記第1ギヤ比との積であり、前記バックギヤの回転は前記第1レイシャフトの回転方向と同じ方向である、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項13】
バック用のピニオンが前記第1レイシャフト上に装着され、
バックアイドラギヤが前記バックピニオンと噛み合い、
前記バックアイドラギヤの第1位置は、前記第1クラッチがトルクを有効ギヤ比において前記カウンタシャフトに伝送するように接続される時に、前記バックアイドラギヤが、前記カウンタシャフト上に装着されるバックギヤと噛み合って前記バックギヤを駆動する位置であり、前記有効ギヤ比は、前記バックピニオンおよび前記バックギヤ間の比と、前記エンジン入力部材および前記第1クラッチ駆動部材間の前記第1ギヤ比との積であり、前記バックギヤは前記第1レイシャフトの回転方向と同じ方向に回転し、
前記バックアイドラギヤの第2位置は、前記バックアイドラギヤが前記バックギヤと噛み合わない位置であり、
さらに、前記バックアイドラギヤを、前記第1位置および前記第2位置の間に移動させる手段が設けられる、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項14】
前記第1レイシャフトが、前記第1レイシャフトによってそれと反対の回転方向に回転駆動されるように遊星歯車装置を介して独立して係合し得るバック用のピニオンを有し、前記バックピニオンは、前記カウンタシャフト上に装着されるバックギヤと噛み合って、前記遊星歯車装置がトルクを有効ギヤ比において前記カウンタシャフトに伝送するように係合される時に前記カウンタシャフト上のバックギヤと駆動関係になり、前記有効ギヤ比は、前記バックピニオンおよび前記バックギヤ間の比と、前記エンジン入力部材および前記第1クラッチ駆動部材間の前記第1ギヤ比との積である、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項15】
前記第1組のピニオンの各ピニオンおよび前記第2組のピニオンの各ピニオンが直径(Dp)を有し、
前記第1組のギヤの各ギヤおよび前記第2組のギヤの各ギヤが直径(Dg)を有し、
前記第1組および第2組のピニオンの直径が最小(Dp')であり、前記第1組および第2組のギヤの直径(Dg')が次の関係、すなわち(Dg')*2/5≦Dp'なる関係を有する、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項16】
前記カウンタシャフトが、前記第1組のギヤの1つでありかつ前記第2組のギヤの1つである1つの共通ギヤを含み、前記共通ギヤが、前記第1または前記第2クラッチの一方または他方が接続される時に、前記第1組のピニオンの1つまたは前記第2組のピニオンの1つのいずれかによって駆動されるように構成される、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項17】
前記カウンタシャフトが2つ以上の共通ギヤを含む、
請求項16に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項18】
前記第1レイシャフトの前記第1組のピニオンが、第1ピニオンと、第3ピニオンと、第5ピニオンとを含み、前記第1、第3および第5ピニオンの少なくとも2つを、前記第1レイシャフト上に装着される1つ以上のシンクロナイザによって前記第1レイシャフトに係合することができ、
前記第2レイシャフトの前記第2組のピニオンが、第2ピニオンと、第4ピニオンとを含み、前記第2および第4ピニオンを、前記第2レイシャフト上に装着される1つ以上のシンクロナイザによって前記第2レイシャフトに係合することができ、
前記カウンタシャフトの前記第1組のギヤが、前記第1ピニオンと噛み合う第1ギヤと、前記第3ピニオンと噛み合う第3ギヤと、前記第5ピニオンと噛み合う第5ギヤとを含み、
前記カウンタシャフトの前記第2組のギヤが、前記第2ピニオンと噛み合う第2ギヤと、前記第4ピニオンと噛み合う第4ギヤとを含み、前記第4ギヤは前記第3ギヤと同じものである、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項19】
前記第2レイシャフトの前記第2組のピニオンが第6ピニオンを含み、
前記カウンタシャフトの前記第2組のギヤが、前記第6ピニオンと噛み合う第6ギヤを含み、前記第6ギヤは前記第5ギヤと同じものであり、前記第6ピニオンは前記第2レイシャフト上に装着されるシンクロナイザによって前記第2レイシャフトに係合することができる、
請求項18に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項20】
前記第1レイシャフトの前記第1組のピニオンが、第1ピニオンと、第3ピニオンと、第5ピニオンとを含み、前記第1、第3および第5ピニオンの少なくとも2つを、前記第1レイシャフト上に装着される1つ以上のシンクロナイザによって前記第1レイシャフトに係合することができ、
前記第2レイシャフトの前記第2組のピニオンが、第2ピニオンと、第4ピニオンとを含み、前記第2および第4ピニオンを、前記第2レイシャフト上に装着される1つ以上のシンクロナイザによって前記第2レイシャフトに係合することができ、
前記カウンタシャフトの前記第1組のギヤが、前記第1ピニオンと噛み合う第1ギヤと、前記第3ピニオンと噛み合う第3ギヤと、前記第5ピニオンと噛み合う第5ギヤとを含み、
前記カウンタシャフトの前記第2組のギヤが、前記第2ピニオンと噛み合う第2ギヤと、前記第4ピニオンと噛み合う第4ギヤとを含み、前記第2ギヤは前記第3ギヤと同じものである、
請求項1に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項21】
前記第4ギヤが前記第5ギヤと同じものである、請求項20に記載の車両のトランスミッション機構。
【請求項22】
エンジンのエンジン入力軸から、トルクをドライブトレインに伝達するための自動車のトランスミッション機構において、
第1クラッチ駆動部材および第2クラッチ駆動部材と駆動関係にあるエンジン入力部材を有するエンジンの入力軸であって、前記第1クラッチ駆動部材はトルクを前記エンジン入力部材から第1クラッチの入力側に第1ギヤ比において伝送するように構成され、前記第2クラッチ駆動部材はトルクを前記エンジン入力部材から第2クラッチの入力側に第2ギヤ比において伝送するように構成され、前記第2ギヤ比は前記第1ギヤ比と異なり、かつ、前記エンジン入力部材と、前記第1クラッチ駆動部材と、前記第2クラッチ駆動部材とはそれぞれ共通の回転方向に回転駆動されるエンジンの入力軸と、
第1レイシャフト軸の回りに回転可能な第1レイシャフトであり、前記第1クラッチを介して、前記エンジン入力部材から前記第1ギヤ比において伝送されるトルクによって駆動されるように選択的に接続することができる第1レイシャフト、および、前記第1レイシャフト軸から離して配置される第2レイシャフト軸の回りに回転可能な第2レイシャフトであり、前記第2クラッチを介して駆動されるように、かつ、前記エンジン入力部材から前記第2ギヤ比において伝送されるトルクを受け取るように選択的に接続することができる第2レイシャフトであって、前記第1レイシャフトは第1組の複数の同軸のピニオンを有し、前記第1組のピニオンの1つ以上を、前記第1レイシャフト上に装着される第1シンクロナイザによって前記第1レイシャフトに選択的に回転係合することができ、前記第2レイシャフトは第2組の複数の同軸のピニオンを有し、前記第2組のピニオンの1つ以上を、前記第2レイシャフト上に装着される第2シンクロナイザによって前記第2レイシャフトに選択的に回転係合することができる第1レイシャフトおよび第2レイシャフトと、
前記第1レイシャフト軸および前記第2レイシャフト軸から離して配置されるカウンタシャフト軸の回りに回転可能なカウンタシャフトであり、そのシャフト上に同軸に装着される第1組のギヤおよび第2組のギヤを有するカウンタシャフトであって、前記第1組のギヤの各ギヤは前記第1組のピニオンの各ピニオンとその間のギヤ比によって噛み合いかつ駆動される関係にあり、前記第2組のギヤの各ギヤは前記第2組のピニオンの各ピニオンとその間のギヤ比によって噛み合いかつ駆動される関係にあり、ピニオンおよびギヤの各対の前記ギヤ比は、ピニオンおよびギヤの他の対のギヤ比と異なるカウンタシャフトと、
前記第1クラッチが、トルクを、前記噛み合うピニオンおよびギヤ間のギヤ比と、前記エンジン入力部材および前記第1クラッチ駆動部材間の前記第1ギヤ比との積である有効ギヤ比において、前記カウンタシャフトに伝送するように接続される時に、前記第1レイシャフトに独立して係合させ得る前記第1組のピニオンの各ピニオン、および、前記第2クラッチが、トルクを、前記噛み合うピニオンおよびギヤ間のギヤ比と、前記エンジン入力部材および前記第2クラッチ駆動部材間の前記第2ギヤ比との積である有効ギヤ比において、前記カウンタシャフトに伝送するように接続される時に、前記第2レイシャフトに独立して係合させ得る前記第2組のピニオンの各ピニオンであって、前記積によって生成される前記有効ギヤ比のそれぞれは他の有効ギヤ比とは異なる前記第1組および前記第2組のピニオンの各ピニオンと、
を含む自動車のトランスミッション機構。
【請求項23】
前記エンジンの入力軸と前記エンジン入力部材との間に、前記エンジンの入力軸の振動を減衰させるためにダンパが同軸に挿入される、請求項22に記載の自動車のトランスミッション機構。
【請求項24】
前記第1組のピニオンと、第2組のピニオンと、第1組のギヤと、第2組のギヤと、エンジン入力部材と、第1クラッチ駆動部材と、第2クラッチ駆動部材と、ダンパとが、流体の流れがその中を通過する1つの共通ハウジングによって取り囲まれる、請求項23に記載の自動車のトランスミッション機構。
【請求項25】
ポンプ駆動部材が、前記エンジンの入力軸に同心に装着され、前記エンジン入力軸によって回転駆動される、請求項22に記載の自動車のトランスミッション機構。
【請求項26】
前記第1レイシャフト軸および第2レイシャフト軸が前記カウンタシャフト軸からほぼ等距離にある、請求項22に記載の自動車のトランスミッション機構。
【請求項27】
デュアルクラッチトランスミッション機構を用いて、複数の異なる有効トルクでカウンタシャフトを回転駆動するために、入力トルクを、エンジン入力軸から前記カウンタシャフトに伝達する方法であって、
エンジン入力軸の入力軸部材を入力トルクで回転駆動するステップと、
第1クラッチの第1クラッチ駆動部材を、前記入力軸部材を介して、第1クラッチトルクにおいて回転駆動するステップであり、前記第1クラッチトルクは前記入力トルクとは異なるステップと、
第2クラッチの第2クラッチ駆動部材を、前記入力軸部材を介して、第2クラッチトルクにおいて回転駆動するステップであり、前記第2クラッチトルクは前記入力トルクおよび前記第1クラッチトルクとは異なるステップと、
前記第1クラッチトルクを第1レイシャフトに伝達するように前記第1クラッチが接続される時に前記第1レイシャフトを回転駆動するステップであり、前記第1レイシャフトは、前記第1レイシャフトによって回転駆動されるように独立かつ選択的に係合することができる複数の第1ピニオンを有するステップと、
前記第2クラッチトルクを第2レイシャフトに伝達するように前記第2クラッチが接続される時に前記第2レイシャフトを回転駆動するステップであり、前記第2レイシャフトは、前記第2レイシャフトによって回転駆動されるように独立かつ選択的に係合することができる複数のピニオンを有するステップと、
カウンタシャフトを有効トルクにおいて回転駆動するステップであり、前記カウンタシャフトはその上に装着される複数のギヤを有し、前記複数のギヤのそれぞれは、前記第1クラッチが接続される時は前記複数の第1ピニオンの1つと、前記第2クラッチが接続される時は前記複数の第2ピニオンの1つと噛み合ってそのピニオンによって駆動されるように調整され、前記カウンタシャフトを前記有効トルクにおいて回転駆動し、前記複数の第1ピニオンのそれぞれと・・・との間の異なるギヤ比・・・前記第1クラッチが接続される時の有効トルクは前記第1クラッチトルクによって決定される・・・ステップと、
を含む方法。
【請求項28】
デュアルクラッチトランスミッション機構を用いてトルクを変化させる方法であって、 入力部材を入力トルクにおいて駆動するステップと、
第1駆動部材を第1トルクにおいて前記入力部材を介して駆動するステップであり、前記第1トルクは、前記入力部材および前記第1駆動部材間の第1の比によって決定され、かつ、前記第1トルクは、前記入力トルクとは異なるが回転方向は同じであるステップと、
第2駆動部材を第2トルクにおいて前記入力部材を介して駆動するステップであり、前記第2トルクは、前記入力部材および前記第2駆動部材間の第2の比によって決定され、かつ、前記第2トルクは、前記第1トルクおよび前記入力トルクとは異なるが回転方向は同じであるステップと、
第1クラッチを前記第1トルクにおいて前記第1駆動部材を介して駆動するステップと、
第2クラッチを前記第2トルクにおいて前記第2駆動部材を介して駆動するステップと、
前記第1クラッチが接続される時に、第1レイシャフトを前記第1トルクにおいて駆動するステップであり、前記第1レイシャフトは、前記第1トルクにおいて回転駆動されるようにそれぞれ独立かつ選択的に前記第1レイシャフトに係合することができる複数の第1ピニオンを有するステップと、
前記第2クラッチが接続される時に、第2レイシャフトを前記第2トルクにおいて駆動するステップであり、前記第2レイシャフトは、前記第2トルクにおいて回転駆動されるようにそれぞれ独立かつ選択的に前記第2レイシャフトに係合することができる複数の第2ピニオンを有するステップと、
前記第1クラッチが接続される時に、前記第1レイシャフトのピニオンの1つを前記第1レイシャフトに回転係合するステップと、
前記第2クラッチが接続される時に、前記第2レイシャフトのピニオンの1つを前記第2レイシャフトに回転係合するステップと、
カウンタシャフトをカウンタシャフトトルクにおいて回転駆動するステップであり、前記カウンタシャフトはその上に装着される複数のギヤを有し、前記第1および前記第2のピニオンの1つ以上のピニオンが前記第1および前記第2レイシャフトの各レイシャフトに係合されかつ前記第1および前記第2クラッチの各クラッチが接続される時に、前記ギヤのそれぞれは、前記第1ピニオンの1つ以上のピニオンおよび前記第2ピニオンの1つ以上のピニオンと噛み合って、そのピニオンによって前記カウンタシャフトトルクにおいて回転駆動され、前記カウンタシャフトの前記複数のギヤのそれぞれと、それが噛み合う前記第1および前記第2ピニオンの1つ以上のピニオンとの間のギヤ/ピニオン比は・・・、前記カウンタシャフトトルクは、前記第1クラッチが接続される時は、前記第1の比と選択されたギヤ/ピニオン比との積によって、および、前記第2クラッチが接続される時は、前記第2の比と選択されたギヤ/ピニオン比との積によって変更されるステップと、
を含むトルク変化方法。
【請求項29】
前記第1クラッチが接続される時に前記第1レイシャフトのピニオンの1つを前記第1レイシャフトに回転係合する前記ステップが、前記第1レイシャフト上に装着される第1シンクロナイザを作動させて、前記第1レイシャフトのピニオンの1つを前記第1レイシャフトと共に回転駆動するステップを含み、かつ、
前記第2クラッチが接続される時に前記第2レイシャフトのピニオンの1つを前記第2レイシャフトに回転係合する前記ステップが、前記第2レイシャフト上に装着される第2シンクロナイザを作動させて、前記第2レイシャフトのピニオンの1つを前記第2レイシャフトと共に回転駆動するステップを含む、
請求項28に記載のトルク変化方法。
【請求項30】
前記カウンタシャフトのギヤの1つが、前記第1レイシャフトのピニオンの1つと、前記第2レイシャフトのピニオンの1つとによって共有される、請求項23に記載のトルク変化方法。
【請求項31】
第1クラッチを前記第1トルクにおいて前記第1駆動部材を介して駆動する前記ステップと、第2クラッチを前記第2トルクにおいて前記第2駆動部材を介して駆動する前記ステップとが、前記入力トルクを、1つ以上のチェーンを用いて、前記入力部材から、前記第1トルクにおいて前記第1駆動部材に、前記第2トルクにおいて前記第2駆動部材に伝達するステップを含む、請求項28に記載のトルク変化方法。
【請求項32】
第1クラッチを前記第1トルクにおいて前記第1駆動部材を介して駆動する前記ステップと、第2クラッチを前記第2トルクにおいて前記第2駆動部材を介して駆動する前記ステップとが、前記入力トルクを、前記入力部材と前記第1駆動部材および前記第2駆動部材の1つ以上の部材との間に配備される1つ以上のギヤを用いて、前記入力部材から、前記第1トルクにおいて前記第1駆動部材に、前記第2トルクにおいて前記第2駆動部材に伝達するステップを含む、請求項28に記載のトルク変化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−247071(P2012−247071A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204954(P2012−204954)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2007−555274(P2007−555274)の分割
【原出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】