説明

自動車のフード

【課題】必要な剛性を確保しつつ、さらなる軽量化を可能にできる自動車のフードを提供する。
【解決手段】外装面9aを有するフードアウタ9と、該フードアウタ9の外周部に沿うよう配置された骨格部材10とを備え、該骨格部材10は、前記フードアウタ9の内側壁に締結部材18により結合され、かつ車幅方向両端部に設けられたヒンジ取付け部12と、車幅方向中途部に設けられたロック取付け部13と、前記ヒンジ取付け部12とロック取付け部13とを結合するクロス部14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームを開閉する自動車のフードに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフードでは、必要な剛性を確保しつつ、軽量化を図る観点から、樹脂製のアウタパネルに、板金製のインナパネルをボルトにより固定した構造を採用する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平1−95483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来のフードでは、アウタパネルを樹脂製としたことにより軽量化は図ることができるものの、インナパネルはアウタパネルの略全面を覆う板金製であることから、さらなる軽量化を図るうえでの改善が要請されている。
【0004】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、必要な剛性を確保しつつ、さらなる軽量化を可能にできる自動車のフードを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、エンジンルームを開閉する自動車のフードであって、外装面を有するフードアウタと、該フードアウタの外周部に沿うよう配置された骨格部材とを備え、該骨格部材は、前記フードアウタの内側壁に締結部材により結合され、かつ車幅方向両端部に設けられたヒンジ取付け部と、車幅方向中途部に設けられたロック取付け部と、前記ヒンジ取付け部とロック取付け部とを結合するクロス部とを有することを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の自動車のフードにおいて、前記骨格部材は、該骨格部材の車幅方向中途部を車両前後方向に連結する連結部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明に係るフードによれば、外装面を有するフードアウタに、該フードアウタの外周部に沿うよう骨格部材を配置し、該骨格部材に、ヒンジ取付け部及びロック取付け部を設けるとともに、該ヒンジ取付け部とロック取付け部とを結合するクロス部を設けたので、必要最小限の部材によりフード全体の剛性を確保することができ、かつ従来のアウタパネルの全面にインナパネルを配設する場合に比べてフード全体の軽量化を図ることができる。
【0008】
また骨格部材を締結部材によりフードアウタに結合したので、即ち、ボルト,リベット,あるいはビス等により固定することにより、容易に組み付けを行うことができ、特別な設備を不要にできる。例えば、熱カシメや溶着により結合する場合には、大掛かりな設備を要し、コスト高になる。
【0009】
請求項2の発明では、骨格部材の車幅方向中途部を車両前後方向に延びる連結部材により連結したので、フード全体の剛性をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1ないし図3は、本発明の第1実施形態による自動車のフードを説明するための図であり、図1はフードが配設された自動車の側面図、図2はフードの分解斜視図、図3はフードの下面図である。
【0012】
図において、1は自動車のエンジンルームAを開閉するフードを示している。前記エンジンルームAは、略上下方向に延びる左,右のフロントピラー2,2と、該左,右のフロントピラー2から車両前方に延びるフェンダ部材3,3と、該左,右のフェンダ部材3の前端間に配置されたラジエータサポート部材(不図示)と、後端間に配置されたカウル部材4とで囲まれた空間により形成されている。また前記左,右のフロントピラー2とカウル部材4との間にはフロントガラス7が配設されている。
【0013】
前記フード1は、これの左,右後端部に取り付けられたヒンジ部材5,5を介して前記左,右のフェンダ部材3に上下回動自在に支持されている。
【0014】
また前記フード1は、これの車幅方向中央前端部に取り付けられたストライカ6を、前記ラジエータサポート部材に配置されたフードロック(不図示)に係合させることにより、全閉位置にロック可能となっている。
【0015】
前記フード1は、外観を高めるための塗装が施された外装面9aを有するフードアウタ9と、該フードアウタ9の外周部に沿うように配置された骨格部材10とを備えている。
【0016】
前記フードアウタ9は、炭素繊維,ガラス繊維等を用いた繊維強化プラスチック,あるいは合成樹脂からなり、金型により一体に形成されたものである。
【0017】
前記フードアウタ9は、エンジンルームAの上端開口を覆う幅広のフード本体9bと、該フード本体9bの外周縁から内側に屈曲形成されたフランジ部9cとを有する。
【0018】
前記骨格部材10は、アルミニューム合金等の軽金属からなり、押し出し成形により形成されたものである。
【0019】
前記骨格部材10は、前記フードアウタ9の後縁部9dに沿って車幅方向に延びる角パイプ形状の後辺部11と、該フードアウタ9の左,右側縁部9e,9eに沿って前後方向に延びる角パイプ形状の左,右のヒンジ取付け部12,12と、前記フードアウタ9の前縁部9fに沿って車幅方向に延びる大略平板形状のロック取付け部13と、前記左,右のヒンジ取付け部12とロック取付け部13とを結合する角パイプ形状の左,右のクロス部14,14とを有する。
【0020】
また前記骨格部材10は、前記ロック取付け部13と、前記フードアウタ9の前フランジ部9c′とを車幅方向に連結する角パイプ形状の左,右の補強部20,20を有する。該左,右の補強部20は、各ボルト21により前記ロック取付け部13,前フランジ部9c′に固定されている。
【0021】
前記左,右のヒンジ取付け部12には、前記後辺部11の左,右端部11a,11aが溶接により結合されている。また前記左,右のクロス部14は、直線状に形成され、各ボルト19により前記ヒンジ取付け部12及びロック取付け部13に固定されている。これにより、骨格部材10は、後辺部11,各ヒンジ取付け部12,ロック取付け部13及び各クロス部14を一体に連結した構造となっている。
【0022】
前記左,右のヒンジ取付け部12には、各ボルト15,15により前記ヒンジ部材5が固定され、前記ロック取付け部13には、各ボルト16,16により前記ストライカ6が固定されている。
【0023】
前記骨格部材10は、複数の締結部材18によりフードアウタ9の内側壁に着脱可能に結合されている。この締結部材18は、ボルト・ナット,リベット,ビス等からなるものである。詳細には、左,右のヒンジ取付け部12,ロック取付け部13がそれぞれ締結部材18によりフードアウタ9に取り付けられている。
【0024】
本実施形態によれば、樹脂製のフードアウタ9に、該フードアウタ9の外周部に沿うようアルミニューム合金製の骨格部材10を配置したので、必要最小限の部材でもってフード全体の剛性を高めることができ、冷熱によるフードアウタ9の変形を防止できる。
【0025】
前記骨格部材9を、フードアウタ9の後縁部9dに沿う後辺部11と、左,右側縁部9e,9eに沿う前記ヒンジ取付け部12,12と、前縁部9fに沿う前記ロック取付け部13と、前記左,右のヒンジ取付け部12とロック取付け部13とを結合するクロス部14,14とから構成したので、従来のアウタパネルの全面にインナパネルを配設する場合に比べてフード全体の軽量化を図ることができる。
【0026】
またフードアウタ9の外周部に骨格部材10を配置したので、車両衝突により上方から被衝突物が落下した場合には、フードアウタ9が弾性変形して衝突荷重を吸収することとなり、被衝突物への影響を抑制できる。即ち、従来のアウタパネルの全面を板金製のインナパネルで覆う場合には、該インナパネルが衝突荷重を直接受けることから、吸収機能が低い。
【0027】
前記骨格部材10を各締結部材18によりフードアウタ9の内側壁に着脱可能に結合したので、ボルト,リベット,ビス等により固定することにより、容易に組み付けを行うことができ、特別な設備を不要にできる。例えば、熱カシメや溶着により結合する場合には、大掛かりな設備を要し、コスト高になる。
【0028】
またフードアウタ9に骨格部材10を機械的に結合したので、意匠の異なる各種のフードアウタに骨格部材を共用することができ、派生車への適用が可能となる。
【0029】
なお、前記実施形態では、骨格部材10を、後辺部11と、左,右のヒンジ取付け部12,12と、ロック取付け部13と、左,右のクロス部14,14とから構成したが、本発明では、図3の二点鎖線で示すように、骨格部材10の車幅方向中央部の後辺部11とロック取付け部13とを、車両前後方向に延びる断面ハット状の連結部材25により連結してもよい。このようにした場合には、フード全体の剛性をより一層高めることができる。
【0030】
また、前記実施形態では、フードアウタ9を樹脂製とし、骨格部材10をアルミニューム合金製とした場合を例に説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、フードの意匠や要求性能に応じて各種の材料を組み合わせることも可能である。例えば、フードアウタにアルミニュームや鋼板を用いることも可能であり、また骨格部材に樹脂や鋼板を用いることも可能である。さらにまた、骨格部材は角パイプの他、丸パイプ等、種々の形状のものを用いることが可能である。
【0031】
図4は、本発明の第2実施形態によるフードを説明するための図である。図中、図3と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0032】
本第2実施形態の骨格部材10は、後辺部11と、左,右のヒンジ取付け部12,12と、ロック取付け部13と、前記左,右のヒンジ取付け部12を結ぶように、フードアウタ9の前縁部9fに沿って延びるアルミニューム合金製の1本のクロス部26とを備えている。
【0033】
該クロス部26は、フードアウタ9の前縁部9fに沿って折り曲げ形成されている。該クロス部26の両端部26aは、ヒンジ取付け部12に結合されており、該パイプ部材26の中央部26bには、前記ロック取付け部13が取り付けられている。
【0034】
前記第2実施形態では、フードアウタ9の外周部に、これの全周に渡って骨格部材10を配置したので、フードの剛性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態によるフードが配設された自動車の側面図である。
【図2】前記フードの分解斜視図である。
【図3】前記フードの下面図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるフードの下面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 フード
9 フードアウタ
9a 外装面
10 骨格部材
12 ヒンジ取付け部
13 ロック取付け部
14,26 クロス部
18 締結部材
25 連結部
A エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームを開閉する自動車のフードであって、
外装面を有するフードアウタと、
該フードアウタの外周部に沿うよう配置された骨格部材とを備え、
該骨格部材は、前記フードアウタの内側壁に締結部材により結合され、
かつ車幅方向両端部に設けられたヒンジ取付け部と、
車幅方向中途部に設けられたロック取付け部と、
前記ヒンジ取付け部とロック取付け部とを結合するクロス部とを有することを特徴とする自動車のフード。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のフードにおいて、
前記骨格部材は、該骨格部材の車幅方向中途部を車両前後方向に連結する連結部を有することを特徴とする自動車のフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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