自動車のルーフ構造
【課題】外装パネルを固定するのに必要な部品点数を低減でき且つ固定作業が容易な自動車のルーフ構造を提供する。
【解決手段】フィニッシャ12の下面に1つのクリップ15を固定し、このクリップ15の内側フック部15dを開口周辺部9の係合孔16に係合させ、係合させた内側フック部15dを中心に、フィニッシャ12を開口周辺部9側に押し付けるように回転させると、クリップ15の外側フック部15gが係合ゲート部17と係合する。そのため、1つのクリップ15を用いるだけなので、部品点数の低減を図ることができ、固定作業も容易となる。
【解決手段】フィニッシャ12の下面に1つのクリップ15を固定し、このクリップ15の内側フック部15dを開口周辺部9の係合孔16に係合させ、係合させた内側フック部15dを中心に、フィニッシャ12を開口周辺部9側に押し付けるように回転させると、クリップ15の外側フック部15gが係合ゲート部17と係合する。そのため、1つのクリップ15を用いるだけなので、部品点数の低減を図ることができ、固定作業も容易となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装パネルを固定する際に必要な部品点数を低減でき且つ固定作業が容易な自動車のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、サンルーフ構造を有する自動車のルーフは、ルーフの略中央にサンルーフ開口を備え、そのサンルーフ開口の上方に開閉リッドがスライド自在又はチルトアップ自在に設けられている。
【0003】
開閉リッドの車幅方向外側には、装飾用の外装パネルが取り付けられている。この外装パネルは、開閉リッドと、ルーフの車幅方向外側端に位置するルーフ表面部と、の間を覆う装飾用部品であり、サンルーフ開口周辺の排水処理のために一段低く形成された開口周辺部に対して固定される。この外装パネルにはルーフラック等が固定される場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この種の外装パネルは、その車幅方向両端部を、開閉リッド及びルーフ表面部に対して位置決めする必要性から、車幅方向内側(開閉リッド側)のクリップと車幅方向外側(ルーフ表面側)のクリップを用いて開口周辺部に固定される。
【特許文献1】特開平5−139160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術にあっては、外装パネルを開口周辺部に固定するために2つのクリップを必要とするため、部品点数の増加を招いていた。また、2つのクリップをそれぞれ開口周辺部に取り付ける必要があるため、固定作業工数が多く、作業が面倒であった。
【0006】
そこで、本発明は、外装パネルを固定するのに必要な部品点数を低減でき且つ固定作業が簡易化できる自動車のルーフ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動車のルーフ構造にあっては、サンルーフ開口を覆う開閉リッドと当該開閉リッドより車幅方向外側に位置するルーフ表面部との間を覆う外装パネルを、開口周辺部に固定する固定手段を備え、固定手段は、前記開口周辺部の車幅方向内側に設けられた内側係止部および車幅方向外側に設けられた外側係止部と、外装パネルの下面に一部が固定され、内側係止部に係止される内側フック部と、外側係止部に係止される外側フック部と、を有するクリップと、を備えて構成され、クリップは、外装パネルの取付時に内側係止部に係合させた内側フック部を回転中心として外装パネルを開口周辺部側に押し付けるように回転させると、外側フック部が外側係止部に入り込んで係止されることで、外装パネルを開口周辺部に固定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動車のルーフ構造によれば、外装パネルの下面に固定された1つのクリップによって、外装パネルを固定することができる。そのため、1つのクリップを用いるだけなので、部品点数の低減できる。また、取付時には、クリップの内側フック部を開口周辺部の内側係合部に係合させ、そこを回転中心として外装パネルを開口周辺部側に押し付けるように回転させるだけで、クリップの外側フック部も開口周辺部の外側係止部に係合するため、固定作業が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は本実施形態のルーフ構造の斜視図、図2はフィニッシャとルーフラックを分解して示した斜視図、図3はフィニッシャの斜視図、図4は図1中のA−A断面図、図5は固定前のフィニッシャを示す拡大断面図、図6は固定後のフィニッシャを示す拡大断面図、図7はクリップをフィニッシャに取り付ける前の状態を示す下から見た斜視図、図8はクリップをフィニッシャに取り付けた後の状態を示す下から見た斜視図、図9はクリップの弾性変形状態を示す断面図、図10は図8中のB−B断面図、図11はフィニッシャに取り付けられたクリップと内側係止部および外側係止部との取付前の関係を概略的に示す斜視図、図12はクリップの外側フック部が外側係止部に挿入される前の状態を示す斜視図、図13は外側係止部のガイド面の機能を示す説明図である。
【0011】
図1〜図4に示すように、自動車のルーフ1には略中央にサンルーフ開口2が形成され、サンルーフ開口2の下部にはシェード3が設けられ、サンルーフ開口2の上部には開閉リッド4が設けられている。開閉リッド4は前後にスライドしたり、後端がチルトアップする構造になっている。サンルーフ開口2はフレーム状のサンルーフレール5により区画されている。
【0012】
サンルーフ開口2の周囲には、排水用の溝部6を有するチャネルパネル7および閉断面状のサイドインナパネル8が設けられ、これらチャネルパネル7及びサイドインナパネル8によって開口周辺部9が形成されている。開口周辺部9は排水対策上、ルーフ1の最外表面を形成する開閉リッド4よりも一段低く位置に形成されている。
【0013】
開口周辺部9の車幅方向外側には、車両前後方向に延在する閉断面状のサイドルーフレール10が形成されている。サイドルーフレール10の上部にサイドアウタパネル(ルーフ表面部)11が形成されている。サイドアウタパネル11は開口周辺部9よりも高い位置で、ルーフ1の最外表面を形成している。
【0014】
つまり、開口周辺部9は、開閉リッド4とサイドアウタパネル11の間で、谷間状に一段低く形成されている。この低い開口周辺部9の上部に開口周辺部9を覆うフィニッシャ(外装パネル)12が固定されている。フィニッシャ12は硬質樹脂製で、車体前後方向に長い形状を有し、開閉リッド4とサイドアウタパネル11の間を、ほぼ連続面として連結するように開口周辺部9に対して固定される。フィニッシャ12の上にはルーフラック19も取り付けられている。
【0015】
フィニッシャ12の車幅方向内側には開閉リッド4に当接するウエザストリップ13が取り付けられ、車幅方向外側にはサイドアウタパネル11に当接するリップ14が形成され、両者との水密性も保たれている。
【0016】
この車体前後方向に長いフィニッシャ12の下面には、車体前後方向で5箇所にクリップ15が固定されている(図3参照)。また、この5つのクリップ15対応する開口周辺部9には、それぞれ係合孔(内側係止部)16および係合ゲート部(外側係止部)17が形成されている。これらクリップ15、係合孔16、係合ゲート部17により、フィニッシャ12を開口周辺部9に固定するための「固定手段」が構成されている。
【0017】
以下、固定手段を図5〜13を参照しつつより具体的に説明する。
【0018】
まず、クリップ15を支持する部位におけるフィニッシャ12の構造を主に図5〜8を参照しつつ説明する。
【0019】
フィニッシャ12の下面には、車幅方向内側位置に下方に突出する略断面方形の固定部18が形成され、当該固定部18よりも車幅方向外側位置に同じく下方に突出する断面方形のスライドガイド部20が形成されている。これら固定部18及びスライドガイド部20には車幅方向に延在し且つ車体前側に開口するスリット溝21が形成されている。なお、固定部18のスリット溝21およびスライドガイド部20のスリット溝21は、後で詳しく説明するクリップ15の板厚と合致しており、クリップ15が隙間なく挿入される。
【0020】
固定部18の底面には円孔22が形成され、スライドガイド部20の底面には車幅方向に沿う長孔23が形成されている。また、固定部18の円孔22に対応する位置、スライドガイド部20の長孔23の内側端に対応する位置には、それぞれネジ穴24が形成されている(図7、10参照)。
【0021】
次に、クリップ15の構造を主に図5〜7を参照しつつ説明する。
【0022】
クリップ15は、基本的に車幅方向に長い短冊状の金属板を所定形状に成形したものである。
【0023】
クリップ15は、車幅方向内側から順番に、内側端の内側フック部15dと、平板状の被固定部15aと、U字状に湾曲する弾性変形部15cと、平板状のスライド部15bと、外側端の外側フック部15gと、が連続的に形成されている。
【0024】
平板状の被固定部15aは、前記フィニッシャ12の下面の固定部18に固定される部位である。このクリップ15の被固定部15aは、フィニッシャ12の固定部18のスリット溝21に挿入された状態で、フィニッシャ12の固定部18にネジ30により固定されている。具体的には、クリップ15の被固定部15aに、フィニッシャ12の固定部18に形成された円孔22およびネジ穴24に対応する位置に取付孔29が形成されており、これら円孔22、取付穴29、ネジ穴24を通じてネジ30が螺合され、当該ネジ30の頭部が円孔22内に位置することで、クリップ15の被固定部15aがフィニッシャ12の固定部18に固定される。なお、クリップ15の被固定部15aの車幅方向の寸法aは、つまり、内側フック部15dの縦壁部15eと弾性変形部15cの車幅方向内側の縦壁部との間の寸法aは、フィニッシャ12の固定部18の車幅方向の寸法とほぼ一致しており、これにより、クリップ15の被固定部15aをフィニッシャの固定部18のスリット溝21に挿入した際に、クリップ15のガタが発生しにくくなる(図9参照)。
【0025】
平板状のスライド部15bは、フィニッシャ12のスライドガイド部20のスリット溝21に挿入され、これにより当該スリット溝21に沿って車幅方向にスライド自在に支持されている。具体的には、クリップ15のスライド部15bに、フィニッシャ12のスライドガイド部20の長孔23およびネジ穴24に対応する位置に取付孔29が形成されており、これら長孔23、取付孔29、ネジ穴24を通じてネジ30が螺合され、ネジ30の頭部が長孔23内に位置することにより、クリップ15のスライド部15bが長孔23の延在方向(車幅方向)へスライド自在となっている。
【0026】
これらクリップ15の被固定部15aとスライド部15bとの間には、断面U字形をした弾性変形部15cが下向きに突設されている。この弾性変形部15cの下端は、つまりU字状の弾性変形部15cの頂点は、原形状態(図9(a)参照)で内側フック部15dよりも低い位置にある。
【0027】
内側フック部15dは、クリップ15の内側端部を構成しており、この例では、クリップ15の被固定部15aの内側端から下方に突設されている。具体的には、内側フック部15dは、被固定部15aの内側端から直角に曲折して下方に延在する縦壁部15eと、当該縦壁部15eから直角に車幅方向外側に向けて曲折した横壁部15fと、を備えて、略断面L形状に形成されている。
【0028】
一方、外側フック部15gは、クリップ15の外側端部を構成しており、この例では、クリップ15のスライド部15bの外側端から下方に突設されている。具体的には、外側フック部15gは、スライド部15bの外側端から直角に曲折して下方に延在する縦壁部15hと、当該縦壁部15hから直角に車幅方向外側に向けて曲折した横壁部15iと、を備えて、略断面L形状に形成されている。この下側フック部26の車幅方向外側端には、つまり横壁部15iの先端には、上向きの断面三角状の爪部15jが形成されている。
【0029】
次に、開口周辺部9に形成された内側係止部としての係合孔16および外側係止部としての係合ゲート部17を、主に図5、6を参照しつつ説明する。
【0030】
クリップ15の内側フック部15dに対応するのが内側係止部としての係合孔16で、クリップ15の外側フック部15gに対応するのが外側係止部としての係合ゲート部17である。
【0031】
内側係止部としての係合孔16は、方形の開口として構成されており(図11参照)、前記クリップ15の内側フック部15dが引っ掛けられると、当該クリップ15の内側フック部15dを車幅方向外側に移動することを阻止するとともに上方に移動するのを阻止するようになっている。
【0032】
一方、外側係止部しての係合ゲート部17はコ字形の門形状をしており(図11参照)、その上壁部は車幅方向内側へ向けて上向きに反ったガイド面31となっている。つまり、係合ゲート部17は車幅方向内側の開口サイズが大きく、車幅方向外側の開口サイズが小さくなっている。この係合ゲート部17に対してクリップ15の外側フック部15gが車幅方向内側から入り込んできて当該外側フック部15gの爪部15jが車幅方向外側に抜けたところで、当該爪部15jの内側面と、係合ゲート部17の上壁部の外側端面と、が互いに当接して、外側フック部15gの車幅方向内側への移動が阻止される。また、このとき、外側フック部15gは、係合ゲート部17の上壁部によって上方への移動が阻止されるようになっている。つまり、この係合ゲート部17の上壁部の外側端面が、クリップ15の外側フック部15gの移動を阻止するストッパとなっている。
【0033】
次に、フィニッシャ12の取り付け方を、主に図5、6を参照しつつ説明する。
【0034】
まず、図5に示すように、フィニッシャ12の下面に取り付けられたクリップ15の内側フック部15dを開口周辺部9の係合孔16に挿入して、その内側フック部15dの下端の横壁部15fを係合孔16の外側縁に係合させる。
【0035】
次に、図5→図6に示すように、係合孔16に係合させた内側フック部15dを中心に、フィニッシャ12を開口周辺部9側へ倒していく。すると、まず最初に弾性変形部15cの下端が開口周辺部9に当接する。そのままクリップ15を押し下げると、弾性変形部15cが押し潰されて寸法b分だけ車幅方向に広がる(図9参照)。クリップ15は、弾性変形部15cの車幅方向内側の被固定部15aは固定部18に固定されているため、弾性変形部15cの車幅方向外側のスライド部15bが、スライドガイド部20のガイドによって前記寸法bだけ車幅方向外側へスライドし、これに伴ってスライドガイド部20とももに外側フック部15gも車幅方向外側へスライドしていく。
【0036】
すると、クリップ15の外側フック部15gは、係合孔16に係合した内側フック部15dを中心とした円弧軌跡と、弾性変形部15cが広がる車幅方向へのスライド軌跡と、を合成した曲線軌跡S(図13参照)に沿って移動しながら、係合ゲート部17内に挿入されていく。この際、係合ゲート部17の上部にガイド面31が形成されているため、曲線軌跡Sに多少の誤差があっても、それを吸収しながら、クリップ15の外側フック部15gを確実に係合ゲート部17内へ導くことができる。そして、外側フック部15gの爪部15jが係合ゲート部17を通過すると、図6に示すように、当該爪部15jは係合ゲート部17の上壁部の外側端面(ストッパ)に係合して、それ以上、車幅方向内側に逆戻りできなくなる。
【0037】
このようにして、クリップ15の内側端の内側フック部15dが車幅方向外側に移動することを阻止されるとともに、クリップ15の外側端の外側フック部15gが車幅方向内側に移動することを阻止されることにより、クリップ15の車幅方向の位置が決まる。つまり、フィニッシャ12の車幅方向の位置が決まる。
【0038】
また、上下方向で押し潰された状態の弾性変形部15cの弾性復元力によりクリップ15に上向きの付勢力が付与された状態で、クリップ15の内側端の内側フック部15dおよび外側端の外側フック部15gが両係止部16、17により上方に移動することが阻止されることで、クリップ15の上下方向の位置が決まり、これにより、フィニッシャ12の上下方向の位置が決まる。
【0039】
このようにクリップ15の車幅方向及び上下方向での位置が規制されるため、フィニッシャ12が開口周辺部9に対して正規の固定状態となり、開閉リッド4及びサイドアウタパネル11に対して車幅方向で正確に当接すると共に、上下方向で面差のない連続面となる。
【0040】
この実施形態によれば、以上説明したように、フィニッシャ12を固定するのに1つのクリップ15を用いるだけで済むため、部品点数の低減を図ることができる。また、フィニッシャ12を固定する際に、クリップ15の内側フック部15dを係合孔16に係合させ、そこを回転中心としてフィニッシャ12を開口周辺部9側に押し付けるだけで、クリップ15の外側フック部15gも車幅方向外側へスライドしながら開口周辺部9の係合ゲート部17に係合するため、固定作業が容易である。
【0041】
効果
以下、本実施形態の主な効果を列挙する。
【0042】
(1)本実施形態によれば、フィニッシャ12(外装パネル)を開口周辺部9に固定する固定手段は、開口周辺部9の車幅方向内側に設けられた係合孔16(内側係止部)および車幅方向外側に設けられた係合ゲート部17(外側係止部)と、フィニッシャ12の下面に固定されるクリップ15と、を備えて構成される。クリップ15は、係合孔16に係止される内側フック部15dと、係合ゲート部17に係止される外側フック部15gと、を有するものであり、フィニッシャ12の取付時に内側フック部15dを係合孔16に係合させた状態でフィニッシャ12を開口周辺部9側に押し付けるように回転させると、外側フック部15gが係合ゲート部17に入り込んで係止されることで、フィニッシャ12を開口周辺部9に固定するものである。
【0043】
そのため、本実施形態によれば、フィニッシャ12を固定するのに1つのクリップ15を用いるだけで済むため、部品点数の低減を図ることができる。また、フィニッシャ12を固定する際に、クリップ15の内側フック部15dを係合孔16に係合させ、そこを回転中心としてフィニッシャ12を開口周辺部9側に押し付けるように回転させるだけで、クリップ15の外側フック部15gも係合ゲート部17に係合するため、固定作業が容易である。
【0044】
(2)また本実施形態によれば、クリップ15は、内側フック部15dと外側フック部15gとの間に形成され且つフィニッシャ12の固定位置において開口周辺部に弾接するU字状弾性変形部15cを備え、このU字状弾性変形部15cが、その弾性復元力により、係合孔16および係合ゲート部17によって当該クリップ15の上方への移動が阻止される内側フック部15dおよび外側フック部15gを、上方へ付勢するようになっている。
【0045】
そのため、本実施形態によれば、U字状弾性変形部15cの上方への弾性復元力を利用してクリップ15を上下方向に固定できる。このとき、クリップ15のU字状弾性変形部15cによって上下方向における部品公差を吸収できるため、取付作業が簡易化する。
【0046】
(3)また本実施形態によれば、クリップ15は、内側フック部15dと外側フック部15gとの間に形成され且つフィニッシャ12の固定位置において開口周辺部9に弾接するU字状弾性変形部15cを備え、このU字状弾性変形部15cは、その弾性復元力により、係合孔16によって車幅方向外側への移動が阻止される内側フック部15dを車幅方向外側に付勢し、係合ゲート部17によって車幅方向内側への移動が阻止される外側フック部15gを、車幅方向内側に付勢するようになっている。
【0047】
そのため、U字状弾性変形部15cの車幅方向への弾性復元力を利用して、クリップ15を車幅方向に固定できる。このとき、クリップ15のU字状弾性変形部15cによって、車幅方向における部品公差を吸収できるため、取付作業が容易になる。
【0048】
(4)また、本実施形態によれば、クリップ15は、内側フック部15dと外側フック部15gとの間に形成され且つフィニッシャ12の固定位置において開口周辺部9に弾接するU字状弾性変形部15cを備え、フィニッシャ12は、クリップ15のU字状弾性変形部15cと外側フック部15gとの間の一部(スライド部15b)を車幅方向に向けてスライド自在に支持するスライドガイド部20を備える。このスライドガイド部20は、弾性変形部15cが開口周辺部9に弾接した際に当該弾性変形部15cを車幅方向に向けて拡幅変形するようにガイドして(図5→図6)、外側フック部15gを車幅方向外側の係合ゲート部17に進入させるように機能する。
【0049】
そのため、スライドガイド部20の方向変換機能によって、クリップ15の外側フック部15gが確実に係合ゲート部17に進入して係止されることとなる。
【0050】
(5)また本実施形態によれば、弾性変形部15cがクリップ15に一体形成されたU形状のため、弾性変形部15cの形状が簡単で、クリップ15自体の製造が容易である。
【0051】
(6)また本実施形態によれば、係合ゲート部17にクリップ15の外側フック部15gの進入を案内するガイド面31が形成されているため、外側フック部15gを確実に係合ゲート部17に係合させることができ、固定作業の確実性が向上する。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、1つのクリップ15でフィニッシャ12を車幅方向ならびに上下方向に固定できるため、部品点数の低減できる。また、固定作業も容易となる。
【0053】
なお、以上の説明では本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されることなく、様々な変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態のルーフ構造の斜視図。
【図2】フィニッシャとルーフラックを分解して示した斜視図。
【図3】フィニッシャの斜視図。
【図4】図1中のA−A断面図。
【図5】フィニッシャが固定前される前の状態を示す拡大断面図。
【図6】フィニッシャが固定された状態を示す拡大断面図。
【図7】クリップをフィニッシャに取り付ける前の状態を示す下から見た斜視図。
【図8】クリップをフィニッシャに取り付けた後の状態を示す下から見た斜視図。
【図9】クリップの弾性変形を説明するための断面図。
【図10】図8中のB−B断面図。
【図11】フィニッシャに取り付けられたクリップと、内側係止部および外側係止部と、の位置関係を概略的に示す斜視図。
【図12】クリップの外側フック部が外側係止部に挿入される前の状態を示す斜視図。
【図13】外側係止部のガイド面の機能を示す説明図。
【符号の説明】
【0055】
1…ルーフ
2…サンルーフ開口
4…開閉リッド
9…開口周辺部
11…サイドアウタパネル(ルーフ表面部)
12…フィニッシャ(外装パネル)
15…クリップ〔固定手段〕
16…係合孔(内側係止部)〔固定手段〕
17…係合ゲート部(外側係止部)〔固定手段〕
15d…内側フック部
15g…外側フック部
15c…弾性変形部
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装パネルを固定する際に必要な部品点数を低減でき且つ固定作業が容易な自動車のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、サンルーフ構造を有する自動車のルーフは、ルーフの略中央にサンルーフ開口を備え、そのサンルーフ開口の上方に開閉リッドがスライド自在又はチルトアップ自在に設けられている。
【0003】
開閉リッドの車幅方向外側には、装飾用の外装パネルが取り付けられている。この外装パネルは、開閉リッドと、ルーフの車幅方向外側端に位置するルーフ表面部と、の間を覆う装飾用部品であり、サンルーフ開口周辺の排水処理のために一段低く形成された開口周辺部に対して固定される。この外装パネルにはルーフラック等が固定される場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この種の外装パネルは、その車幅方向両端部を、開閉リッド及びルーフ表面部に対して位置決めする必要性から、車幅方向内側(開閉リッド側)のクリップと車幅方向外側(ルーフ表面側)のクリップを用いて開口周辺部に固定される。
【特許文献1】特開平5−139160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術にあっては、外装パネルを開口周辺部に固定するために2つのクリップを必要とするため、部品点数の増加を招いていた。また、2つのクリップをそれぞれ開口周辺部に取り付ける必要があるため、固定作業工数が多く、作業が面倒であった。
【0006】
そこで、本発明は、外装パネルを固定するのに必要な部品点数を低減でき且つ固定作業が簡易化できる自動車のルーフ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動車のルーフ構造にあっては、サンルーフ開口を覆う開閉リッドと当該開閉リッドより車幅方向外側に位置するルーフ表面部との間を覆う外装パネルを、開口周辺部に固定する固定手段を備え、固定手段は、前記開口周辺部の車幅方向内側に設けられた内側係止部および車幅方向外側に設けられた外側係止部と、外装パネルの下面に一部が固定され、内側係止部に係止される内側フック部と、外側係止部に係止される外側フック部と、を有するクリップと、を備えて構成され、クリップは、外装パネルの取付時に内側係止部に係合させた内側フック部を回転中心として外装パネルを開口周辺部側に押し付けるように回転させると、外側フック部が外側係止部に入り込んで係止されることで、外装パネルを開口周辺部に固定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動車のルーフ構造によれば、外装パネルの下面に固定された1つのクリップによって、外装パネルを固定することができる。そのため、1つのクリップを用いるだけなので、部品点数の低減できる。また、取付時には、クリップの内側フック部を開口周辺部の内側係合部に係合させ、そこを回転中心として外装パネルを開口周辺部側に押し付けるように回転させるだけで、クリップの外側フック部も開口周辺部の外側係止部に係合するため、固定作業が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は本実施形態のルーフ構造の斜視図、図2はフィニッシャとルーフラックを分解して示した斜視図、図3はフィニッシャの斜視図、図4は図1中のA−A断面図、図5は固定前のフィニッシャを示す拡大断面図、図6は固定後のフィニッシャを示す拡大断面図、図7はクリップをフィニッシャに取り付ける前の状態を示す下から見た斜視図、図8はクリップをフィニッシャに取り付けた後の状態を示す下から見た斜視図、図9はクリップの弾性変形状態を示す断面図、図10は図8中のB−B断面図、図11はフィニッシャに取り付けられたクリップと内側係止部および外側係止部との取付前の関係を概略的に示す斜視図、図12はクリップの外側フック部が外側係止部に挿入される前の状態を示す斜視図、図13は外側係止部のガイド面の機能を示す説明図である。
【0011】
図1〜図4に示すように、自動車のルーフ1には略中央にサンルーフ開口2が形成され、サンルーフ開口2の下部にはシェード3が設けられ、サンルーフ開口2の上部には開閉リッド4が設けられている。開閉リッド4は前後にスライドしたり、後端がチルトアップする構造になっている。サンルーフ開口2はフレーム状のサンルーフレール5により区画されている。
【0012】
サンルーフ開口2の周囲には、排水用の溝部6を有するチャネルパネル7および閉断面状のサイドインナパネル8が設けられ、これらチャネルパネル7及びサイドインナパネル8によって開口周辺部9が形成されている。開口周辺部9は排水対策上、ルーフ1の最外表面を形成する開閉リッド4よりも一段低く位置に形成されている。
【0013】
開口周辺部9の車幅方向外側には、車両前後方向に延在する閉断面状のサイドルーフレール10が形成されている。サイドルーフレール10の上部にサイドアウタパネル(ルーフ表面部)11が形成されている。サイドアウタパネル11は開口周辺部9よりも高い位置で、ルーフ1の最外表面を形成している。
【0014】
つまり、開口周辺部9は、開閉リッド4とサイドアウタパネル11の間で、谷間状に一段低く形成されている。この低い開口周辺部9の上部に開口周辺部9を覆うフィニッシャ(外装パネル)12が固定されている。フィニッシャ12は硬質樹脂製で、車体前後方向に長い形状を有し、開閉リッド4とサイドアウタパネル11の間を、ほぼ連続面として連結するように開口周辺部9に対して固定される。フィニッシャ12の上にはルーフラック19も取り付けられている。
【0015】
フィニッシャ12の車幅方向内側には開閉リッド4に当接するウエザストリップ13が取り付けられ、車幅方向外側にはサイドアウタパネル11に当接するリップ14が形成され、両者との水密性も保たれている。
【0016】
この車体前後方向に長いフィニッシャ12の下面には、車体前後方向で5箇所にクリップ15が固定されている(図3参照)。また、この5つのクリップ15対応する開口周辺部9には、それぞれ係合孔(内側係止部)16および係合ゲート部(外側係止部)17が形成されている。これらクリップ15、係合孔16、係合ゲート部17により、フィニッシャ12を開口周辺部9に固定するための「固定手段」が構成されている。
【0017】
以下、固定手段を図5〜13を参照しつつより具体的に説明する。
【0018】
まず、クリップ15を支持する部位におけるフィニッシャ12の構造を主に図5〜8を参照しつつ説明する。
【0019】
フィニッシャ12の下面には、車幅方向内側位置に下方に突出する略断面方形の固定部18が形成され、当該固定部18よりも車幅方向外側位置に同じく下方に突出する断面方形のスライドガイド部20が形成されている。これら固定部18及びスライドガイド部20には車幅方向に延在し且つ車体前側に開口するスリット溝21が形成されている。なお、固定部18のスリット溝21およびスライドガイド部20のスリット溝21は、後で詳しく説明するクリップ15の板厚と合致しており、クリップ15が隙間なく挿入される。
【0020】
固定部18の底面には円孔22が形成され、スライドガイド部20の底面には車幅方向に沿う長孔23が形成されている。また、固定部18の円孔22に対応する位置、スライドガイド部20の長孔23の内側端に対応する位置には、それぞれネジ穴24が形成されている(図7、10参照)。
【0021】
次に、クリップ15の構造を主に図5〜7を参照しつつ説明する。
【0022】
クリップ15は、基本的に車幅方向に長い短冊状の金属板を所定形状に成形したものである。
【0023】
クリップ15は、車幅方向内側から順番に、内側端の内側フック部15dと、平板状の被固定部15aと、U字状に湾曲する弾性変形部15cと、平板状のスライド部15bと、外側端の外側フック部15gと、が連続的に形成されている。
【0024】
平板状の被固定部15aは、前記フィニッシャ12の下面の固定部18に固定される部位である。このクリップ15の被固定部15aは、フィニッシャ12の固定部18のスリット溝21に挿入された状態で、フィニッシャ12の固定部18にネジ30により固定されている。具体的には、クリップ15の被固定部15aに、フィニッシャ12の固定部18に形成された円孔22およびネジ穴24に対応する位置に取付孔29が形成されており、これら円孔22、取付穴29、ネジ穴24を通じてネジ30が螺合され、当該ネジ30の頭部が円孔22内に位置することで、クリップ15の被固定部15aがフィニッシャ12の固定部18に固定される。なお、クリップ15の被固定部15aの車幅方向の寸法aは、つまり、内側フック部15dの縦壁部15eと弾性変形部15cの車幅方向内側の縦壁部との間の寸法aは、フィニッシャ12の固定部18の車幅方向の寸法とほぼ一致しており、これにより、クリップ15の被固定部15aをフィニッシャの固定部18のスリット溝21に挿入した際に、クリップ15のガタが発生しにくくなる(図9参照)。
【0025】
平板状のスライド部15bは、フィニッシャ12のスライドガイド部20のスリット溝21に挿入され、これにより当該スリット溝21に沿って車幅方向にスライド自在に支持されている。具体的には、クリップ15のスライド部15bに、フィニッシャ12のスライドガイド部20の長孔23およびネジ穴24に対応する位置に取付孔29が形成されており、これら長孔23、取付孔29、ネジ穴24を通じてネジ30が螺合され、ネジ30の頭部が長孔23内に位置することにより、クリップ15のスライド部15bが長孔23の延在方向(車幅方向)へスライド自在となっている。
【0026】
これらクリップ15の被固定部15aとスライド部15bとの間には、断面U字形をした弾性変形部15cが下向きに突設されている。この弾性変形部15cの下端は、つまりU字状の弾性変形部15cの頂点は、原形状態(図9(a)参照)で内側フック部15dよりも低い位置にある。
【0027】
内側フック部15dは、クリップ15の内側端部を構成しており、この例では、クリップ15の被固定部15aの内側端から下方に突設されている。具体的には、内側フック部15dは、被固定部15aの内側端から直角に曲折して下方に延在する縦壁部15eと、当該縦壁部15eから直角に車幅方向外側に向けて曲折した横壁部15fと、を備えて、略断面L形状に形成されている。
【0028】
一方、外側フック部15gは、クリップ15の外側端部を構成しており、この例では、クリップ15のスライド部15bの外側端から下方に突設されている。具体的には、外側フック部15gは、スライド部15bの外側端から直角に曲折して下方に延在する縦壁部15hと、当該縦壁部15hから直角に車幅方向外側に向けて曲折した横壁部15iと、を備えて、略断面L形状に形成されている。この下側フック部26の車幅方向外側端には、つまり横壁部15iの先端には、上向きの断面三角状の爪部15jが形成されている。
【0029】
次に、開口周辺部9に形成された内側係止部としての係合孔16および外側係止部としての係合ゲート部17を、主に図5、6を参照しつつ説明する。
【0030】
クリップ15の内側フック部15dに対応するのが内側係止部としての係合孔16で、クリップ15の外側フック部15gに対応するのが外側係止部としての係合ゲート部17である。
【0031】
内側係止部としての係合孔16は、方形の開口として構成されており(図11参照)、前記クリップ15の内側フック部15dが引っ掛けられると、当該クリップ15の内側フック部15dを車幅方向外側に移動することを阻止するとともに上方に移動するのを阻止するようになっている。
【0032】
一方、外側係止部しての係合ゲート部17はコ字形の門形状をしており(図11参照)、その上壁部は車幅方向内側へ向けて上向きに反ったガイド面31となっている。つまり、係合ゲート部17は車幅方向内側の開口サイズが大きく、車幅方向外側の開口サイズが小さくなっている。この係合ゲート部17に対してクリップ15の外側フック部15gが車幅方向内側から入り込んできて当該外側フック部15gの爪部15jが車幅方向外側に抜けたところで、当該爪部15jの内側面と、係合ゲート部17の上壁部の外側端面と、が互いに当接して、外側フック部15gの車幅方向内側への移動が阻止される。また、このとき、外側フック部15gは、係合ゲート部17の上壁部によって上方への移動が阻止されるようになっている。つまり、この係合ゲート部17の上壁部の外側端面が、クリップ15の外側フック部15gの移動を阻止するストッパとなっている。
【0033】
次に、フィニッシャ12の取り付け方を、主に図5、6を参照しつつ説明する。
【0034】
まず、図5に示すように、フィニッシャ12の下面に取り付けられたクリップ15の内側フック部15dを開口周辺部9の係合孔16に挿入して、その内側フック部15dの下端の横壁部15fを係合孔16の外側縁に係合させる。
【0035】
次に、図5→図6に示すように、係合孔16に係合させた内側フック部15dを中心に、フィニッシャ12を開口周辺部9側へ倒していく。すると、まず最初に弾性変形部15cの下端が開口周辺部9に当接する。そのままクリップ15を押し下げると、弾性変形部15cが押し潰されて寸法b分だけ車幅方向に広がる(図9参照)。クリップ15は、弾性変形部15cの車幅方向内側の被固定部15aは固定部18に固定されているため、弾性変形部15cの車幅方向外側のスライド部15bが、スライドガイド部20のガイドによって前記寸法bだけ車幅方向外側へスライドし、これに伴ってスライドガイド部20とももに外側フック部15gも車幅方向外側へスライドしていく。
【0036】
すると、クリップ15の外側フック部15gは、係合孔16に係合した内側フック部15dを中心とした円弧軌跡と、弾性変形部15cが広がる車幅方向へのスライド軌跡と、を合成した曲線軌跡S(図13参照)に沿って移動しながら、係合ゲート部17内に挿入されていく。この際、係合ゲート部17の上部にガイド面31が形成されているため、曲線軌跡Sに多少の誤差があっても、それを吸収しながら、クリップ15の外側フック部15gを確実に係合ゲート部17内へ導くことができる。そして、外側フック部15gの爪部15jが係合ゲート部17を通過すると、図6に示すように、当該爪部15jは係合ゲート部17の上壁部の外側端面(ストッパ)に係合して、それ以上、車幅方向内側に逆戻りできなくなる。
【0037】
このようにして、クリップ15の内側端の内側フック部15dが車幅方向外側に移動することを阻止されるとともに、クリップ15の外側端の外側フック部15gが車幅方向内側に移動することを阻止されることにより、クリップ15の車幅方向の位置が決まる。つまり、フィニッシャ12の車幅方向の位置が決まる。
【0038】
また、上下方向で押し潰された状態の弾性変形部15cの弾性復元力によりクリップ15に上向きの付勢力が付与された状態で、クリップ15の内側端の内側フック部15dおよび外側端の外側フック部15gが両係止部16、17により上方に移動することが阻止されることで、クリップ15の上下方向の位置が決まり、これにより、フィニッシャ12の上下方向の位置が決まる。
【0039】
このようにクリップ15の車幅方向及び上下方向での位置が規制されるため、フィニッシャ12が開口周辺部9に対して正規の固定状態となり、開閉リッド4及びサイドアウタパネル11に対して車幅方向で正確に当接すると共に、上下方向で面差のない連続面となる。
【0040】
この実施形態によれば、以上説明したように、フィニッシャ12を固定するのに1つのクリップ15を用いるだけで済むため、部品点数の低減を図ることができる。また、フィニッシャ12を固定する際に、クリップ15の内側フック部15dを係合孔16に係合させ、そこを回転中心としてフィニッシャ12を開口周辺部9側に押し付けるだけで、クリップ15の外側フック部15gも車幅方向外側へスライドしながら開口周辺部9の係合ゲート部17に係合するため、固定作業が容易である。
【0041】
効果
以下、本実施形態の主な効果を列挙する。
【0042】
(1)本実施形態によれば、フィニッシャ12(外装パネル)を開口周辺部9に固定する固定手段は、開口周辺部9の車幅方向内側に設けられた係合孔16(内側係止部)および車幅方向外側に設けられた係合ゲート部17(外側係止部)と、フィニッシャ12の下面に固定されるクリップ15と、を備えて構成される。クリップ15は、係合孔16に係止される内側フック部15dと、係合ゲート部17に係止される外側フック部15gと、を有するものであり、フィニッシャ12の取付時に内側フック部15dを係合孔16に係合させた状態でフィニッシャ12を開口周辺部9側に押し付けるように回転させると、外側フック部15gが係合ゲート部17に入り込んで係止されることで、フィニッシャ12を開口周辺部9に固定するものである。
【0043】
そのため、本実施形態によれば、フィニッシャ12を固定するのに1つのクリップ15を用いるだけで済むため、部品点数の低減を図ることができる。また、フィニッシャ12を固定する際に、クリップ15の内側フック部15dを係合孔16に係合させ、そこを回転中心としてフィニッシャ12を開口周辺部9側に押し付けるように回転させるだけで、クリップ15の外側フック部15gも係合ゲート部17に係合するため、固定作業が容易である。
【0044】
(2)また本実施形態によれば、クリップ15は、内側フック部15dと外側フック部15gとの間に形成され且つフィニッシャ12の固定位置において開口周辺部に弾接するU字状弾性変形部15cを備え、このU字状弾性変形部15cが、その弾性復元力により、係合孔16および係合ゲート部17によって当該クリップ15の上方への移動が阻止される内側フック部15dおよび外側フック部15gを、上方へ付勢するようになっている。
【0045】
そのため、本実施形態によれば、U字状弾性変形部15cの上方への弾性復元力を利用してクリップ15を上下方向に固定できる。このとき、クリップ15のU字状弾性変形部15cによって上下方向における部品公差を吸収できるため、取付作業が簡易化する。
【0046】
(3)また本実施形態によれば、クリップ15は、内側フック部15dと外側フック部15gとの間に形成され且つフィニッシャ12の固定位置において開口周辺部9に弾接するU字状弾性変形部15cを備え、このU字状弾性変形部15cは、その弾性復元力により、係合孔16によって車幅方向外側への移動が阻止される内側フック部15dを車幅方向外側に付勢し、係合ゲート部17によって車幅方向内側への移動が阻止される外側フック部15gを、車幅方向内側に付勢するようになっている。
【0047】
そのため、U字状弾性変形部15cの車幅方向への弾性復元力を利用して、クリップ15を車幅方向に固定できる。このとき、クリップ15のU字状弾性変形部15cによって、車幅方向における部品公差を吸収できるため、取付作業が容易になる。
【0048】
(4)また、本実施形態によれば、クリップ15は、内側フック部15dと外側フック部15gとの間に形成され且つフィニッシャ12の固定位置において開口周辺部9に弾接するU字状弾性変形部15cを備え、フィニッシャ12は、クリップ15のU字状弾性変形部15cと外側フック部15gとの間の一部(スライド部15b)を車幅方向に向けてスライド自在に支持するスライドガイド部20を備える。このスライドガイド部20は、弾性変形部15cが開口周辺部9に弾接した際に当該弾性変形部15cを車幅方向に向けて拡幅変形するようにガイドして(図5→図6)、外側フック部15gを車幅方向外側の係合ゲート部17に進入させるように機能する。
【0049】
そのため、スライドガイド部20の方向変換機能によって、クリップ15の外側フック部15gが確実に係合ゲート部17に進入して係止されることとなる。
【0050】
(5)また本実施形態によれば、弾性変形部15cがクリップ15に一体形成されたU形状のため、弾性変形部15cの形状が簡単で、クリップ15自体の製造が容易である。
【0051】
(6)また本実施形態によれば、係合ゲート部17にクリップ15の外側フック部15gの進入を案内するガイド面31が形成されているため、外側フック部15gを確実に係合ゲート部17に係合させることができ、固定作業の確実性が向上する。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、1つのクリップ15でフィニッシャ12を車幅方向ならびに上下方向に固定できるため、部品点数の低減できる。また、固定作業も容易となる。
【0053】
なお、以上の説明では本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されることなく、様々な変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態のルーフ構造の斜視図。
【図2】フィニッシャとルーフラックを分解して示した斜視図。
【図3】フィニッシャの斜視図。
【図4】図1中のA−A断面図。
【図5】フィニッシャが固定前される前の状態を示す拡大断面図。
【図6】フィニッシャが固定された状態を示す拡大断面図。
【図7】クリップをフィニッシャに取り付ける前の状態を示す下から見た斜視図。
【図8】クリップをフィニッシャに取り付けた後の状態を示す下から見た斜視図。
【図9】クリップの弾性変形を説明するための断面図。
【図10】図8中のB−B断面図。
【図11】フィニッシャに取り付けられたクリップと、内側係止部および外側係止部と、の位置関係を概略的に示す斜視図。
【図12】クリップの外側フック部が外側係止部に挿入される前の状態を示す斜視図。
【図13】外側係止部のガイド面の機能を示す説明図。
【符号の説明】
【0055】
1…ルーフ
2…サンルーフ開口
4…開閉リッド
9…開口周辺部
11…サイドアウタパネル(ルーフ表面部)
12…フィニッシャ(外装パネル)
15…クリップ〔固定手段〕
16…係合孔(内側係止部)〔固定手段〕
17…係合ゲート部(外側係止部)〔固定手段〕
15d…内側フック部
15g…外側フック部
15c…弾性変形部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のルーフ構造であって、
ルーフに形成されたサンルーフ開口の上部で開閉移動する開閉リッドと、前記サンルーフ開口の車幅方向外側に位置し前記開閉リッドよりも低い位置する開口周辺部と、前記開口周辺部より車幅方向外側で且つ高い位置にあるルーフ表面部と、前記開閉リッドと前記ルーフ表面部との間を覆う外装パネルと、前記外装パネルを前記開口周辺部に対して固定する固定手段と、を備え、
前記固定手段は、
前記開口周辺部の車幅方向内側に設けられた内側係止部および車幅方向外側に設けられた外側係止部と、
前記外装パネルの下面に一部が固定され、前記内側係止部に係止される内側フック部と、前記外側係止部に係止される外側フック部と、を有するクリップと、
を備えて構成され、
前記クリップは、前記外装パネルの取付時に前記内側係止部に係合させた内側フック部を回転中心として前記外装パネルを前記開口周辺部側に押し付けるように回転させると、外側フック部が前記外側係止部に入り込んで係止されることを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のルーフ構造であって、
前記内側フック部および外側フック部が前記内側係止部および前記外側係止部によって上方への移動が阻止され、
前記クリップは、内側フック部と外側フック部との間に形成され且つ前記外装パネルの固定位置において前記開口周辺部に弾接するU字状の弾性変形部を備え、
前記U字状の弾性変形部が、前記内側係止部および前記外側係止部によって上方への移動が阻止される前記内側フック部および外側フック部を、その弾性復元力により上方に付勢することを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車のルーフ構造であって、
前記内側フック部が前記内側係止部によって車幅方向外側への移動が阻止されるとともに前記外側フック部が前記外側係止部によって車幅方向内側への移動が阻止され、
前記クリップは、内側フック部と外側フック部との間に形成され且つ前記外装パネルの固定位置において前記開口周辺部に弾接するU字状の弾性変形部を備え、
前記U字状の弾性変形部が、前記内側係止部によって車幅方向外側への移動が阻止される内側フック部と前記外側係止部によって車幅方向内側への移動が阻止される外側フック部とを、その弾性復元力により互いに車幅方向に引きつけ合うように付勢することを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車のルーフ構造であって、
前記クリップは、内側フック部と外側フック部との間に形成され且つ前記外装パネルの固定位置において前記開口周辺部に弾接するU字状の弾性変形部を備え、
前記外装パネルは、前記クリップのU字状弾性変形部と外側フック部との間の一部を車幅方向に向けてスライド自在に支持することで前記弾性変形部が前記開口周辺部に弾接した際に当該弾性変形部を車幅方向に向けて拡幅変形するようにガイドして前記外側フック部を車幅方向外側の前記外側係止部に進入させるスライドガイド部を備えることを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項1】
自動車のルーフ構造であって、
ルーフに形成されたサンルーフ開口の上部で開閉移動する開閉リッドと、前記サンルーフ開口の車幅方向外側に位置し前記開閉リッドよりも低い位置する開口周辺部と、前記開口周辺部より車幅方向外側で且つ高い位置にあるルーフ表面部と、前記開閉リッドと前記ルーフ表面部との間を覆う外装パネルと、前記外装パネルを前記開口周辺部に対して固定する固定手段と、を備え、
前記固定手段は、
前記開口周辺部の車幅方向内側に設けられた内側係止部および車幅方向外側に設けられた外側係止部と、
前記外装パネルの下面に一部が固定され、前記内側係止部に係止される内側フック部と、前記外側係止部に係止される外側フック部と、を有するクリップと、
を備えて構成され、
前記クリップは、前記外装パネルの取付時に前記内側係止部に係合させた内側フック部を回転中心として前記外装パネルを前記開口周辺部側に押し付けるように回転させると、外側フック部が前記外側係止部に入り込んで係止されることを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のルーフ構造であって、
前記内側フック部および外側フック部が前記内側係止部および前記外側係止部によって上方への移動が阻止され、
前記クリップは、内側フック部と外側フック部との間に形成され且つ前記外装パネルの固定位置において前記開口周辺部に弾接するU字状の弾性変形部を備え、
前記U字状の弾性変形部が、前記内側係止部および前記外側係止部によって上方への移動が阻止される前記内側フック部および外側フック部を、その弾性復元力により上方に付勢することを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車のルーフ構造であって、
前記内側フック部が前記内側係止部によって車幅方向外側への移動が阻止されるとともに前記外側フック部が前記外側係止部によって車幅方向内側への移動が阻止され、
前記クリップは、内側フック部と外側フック部との間に形成され且つ前記外装パネルの固定位置において前記開口周辺部に弾接するU字状の弾性変形部を備え、
前記U字状の弾性変形部が、前記内側係止部によって車幅方向外側への移動が阻止される内側フック部と前記外側係止部によって車幅方向内側への移動が阻止される外側フック部とを、その弾性復元力により互いに車幅方向に引きつけ合うように付勢することを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車のルーフ構造であって、
前記クリップは、内側フック部と外側フック部との間に形成され且つ前記外装パネルの固定位置において前記開口周辺部に弾接するU字状の弾性変形部を備え、
前記外装パネルは、前記クリップのU字状弾性変形部と外側フック部との間の一部を車幅方向に向けてスライド自在に支持することで前記弾性変形部が前記開口周辺部に弾接した際に当該弾性変形部を車幅方向に向けて拡幅変形するようにガイドして前記外側フック部を車幅方向外側の前記外側係止部に進入させるスライドガイド部を備えることを特徴とする自動車のルーフ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−839(P2010−839A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159412(P2008−159412)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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