説明

自動車の側部車体構造

【課題】簡単な構成で車体後部に設置されたリヤホイールハウスとリヤピラーとの間における車体剛性を充分に向上させる。
【解決手段】自動車の側部車体構造において、車体の後方部に形成された後方開口部1の側辺部に沿って上下方向に延びるリヤピラー2と、車体側壁部3から車体の内方側に膨出するリヤホイールハウス4と、前端部がリヤホイールハウス4に固定されるとともに、後方に至るに従って上下寸法が増大するガセット部材5とを備え、このガセット部材5の後端部がリヤピラー2に連結された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の後方部に形成された後方開口部の側辺部に沿って上下方向に延びるリヤピラーと、車体側壁部から車体の内方側に膨出するリヤホイールハウスとを備えた自動車の側部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1には、バックドアにより開放される後方開口部が車体後部に形成された自動車において、上記後方開口部の側辺部に沿って設けられた車体後壁の開口端部とリヤホイールハウスの車体内方側端部とを、車体の前後方向に向けて略水平に延びるプレート状のパネル部材からなる連結部材で連結することにより、車体後壁の面剛性を確保してその変形を抑制するように構成された車両の後部車体構造が開示されている。
【特許文献1】特開2005−199855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示されるように、車体後壁の開口端部とリヤホイールハウスの車体内方側端部とを、車体の前後方向に向けて略水平に延びるプレート状のパネル部材からなる連結部材で連結するように構成した場合には、この連結部材によって車体後壁の開口端部の位置が規定されるため、車体後壁の面剛性の低下を抑制することが可能である。しかし、例えば後方開口部の上下寸法が大きい場合には、上記プレート状のパネル部材からなる単一の連結部材を設けたとしても後方開口部の全体を効果的に補強することが困難であるという問題がある。また、上記連結部材の幅寸法を大きくすると、車室内スペースの有効利用を図ることができないため、上記連結部材を設けることによる補強効果を充分に発揮させることが困難であるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で車体後部に設置されたリヤホイールハウスとリヤピラーとの間における車体剛性を充分に向上させることができる自動車の側部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、自動車の側部車体構造において、車体の後方部に形成された後方開口部の側辺部に沿って上下方向に延びるリヤピラーと、車体側壁部から車体の内方側に膨出するリヤホイールハウスと、前端部がリヤホイールハウスに固定されるとともに、後方に至るに従って上下寸法が増大するガセット部材とを備え、このガセット部材の後端部がリヤピラーに連結されたものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車の側部車体構造において、ガセット部材の上下両端部が車体側壁部に固定されるとともに、この車体側壁部に固定された上下両端部の間に位置するガセット部材の側面部が車体側壁部から離間して設置されたものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の自動車の側部車体構造において、ガセット部材に、リヤホイールハウスの設置部から後方に延びる底辺部と、その前端部から後部上方に向けて斜めに延びる上辺部とが設けられたものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車の側部車体構造において、ガセット部材の上端部近傍でリヤピラーの内部を上下に区画する節部材が設けられたものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車の側部車体構造において、ガセット部材の上端部近傍に位置するリヤピラーの内部に、乗員を保護するシートベルトのリトラクタが配設されたものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車の側部車体構造において、ガセット部材の設置部下方に、リヤホイールハウスの後端部下方部位とリヤピラーの下端部とを連結するとともに、車体側壁部とフロアパネルとの間で閉断面を形成するレインフォースメントが設けられたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、後広がりに形成されたガセット部材の後端部をリヤピラーに接合し、リヤピラーの所定長さに亘る部分を、上記ガセット部材によりリヤホイールハウスに連結してリヤピラーおよびリヤホイールハウスをそれぞれ補強するように構成したため、後方開口部の開口面積が大きい場合等においても車体後部の面剛性を充分に確保することができるとともに、ストラットダンパー装置からリヤホイールハウスに入力された荷重等をリヤピラーに伝達して分散支持することにより、リヤホイールハウスの内倒れ等を効果的に防止できるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、ガセット部材の上下両端部を車体側壁部に固定するとともに、ガセット部材の側面部を車体側壁部から離間して設置したため、立体的形状を有する上記ガセット部材によりリヤホイールハウスおよびリヤピラーを効果的に補強できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、ガセット部材に、リヤホイールハウスの設置部から後方に延びる底辺部と、その前端部から後部上方に向けて斜めに延びる上辺部とを設けることにより、リヤピラーをその上下に個所において補強するように構成したため、車両の後突時等に、上記リヤピラーに入力された衝撃荷重等に対する支持剛性を充分に確保し、リヤピラーの倒れ等を効果的に防止できる等の利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、ガセット部材の上端部近傍でリヤピラーの内部を上下に区画する節部材を設けたため、車両の後突時等に、上記リヤピラーに入力された衝撃荷重等を上記節部材によりガセット部材の設置部に伝達することができ、このガセット部材によるリヤピラーの補強作用を、より効果的に向上させて、その変形をさらに効果的に防止できるという利点がある。
【0015】
請求項5に係る発明では、ガセット部材の上端部近傍に位置するリヤピラーの内部に、乗員を保護するシートベルトのリトラクタを配設したため、シートベルトからリトラクタに入力された荷重を上記ガセットにより支持することができ、上記シートベルトの支持剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、ガセット部材の設置部下方に、リヤホイールハウスの後端部下方部位とリヤピラーの下端部とを連結するとともに、車体側壁部とフロアパネルとの間で閉断面を形成するレインフォースメントを設けたため、上記リヤホイールハウス、リヤピラー、ガセット部材およびレインフォースメントにより型枠構造が形成されることにより、車体後部に設置されたリヤホイールハウスとリヤピラーの間における車体剛性が飛躍的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1および図2は、本発明に係る自動車の側部車体構造の実施形態を示している。この自動車の側部車体構造は、車体の後方部に形成された後方開口部1の側辺部に沿って上下方向に延びるリヤピラー2と、車体側壁部3から車体の内方側に膨出するリヤホイールハウス4と、前端部がリヤホイールハウス4に固定されたガセット部材5とを備えている。上記車体側壁部3には、図外のスライドドア等からなるリヤサイドドアにより開閉される側面開口部6が形成されるとともに、その後方上部に、リヤウインドガラスが設置される開口部7が形成されている。
【0018】
上記リヤピラー2は、図3および図4に示すように、車体側壁部3のアウタパネル3aと一体に形成されたリヤピラーアウタ8と、車体側壁部3のインナパネル3bの後端部に前辺部が接続されたリヤピラーインナ9とを有している。また、リヤピラー2内には、図4および図5に示すように、上記ガセット部材5の上端部近傍でリヤピラー2の内部を上下に仕切る節部材10が配設されている。この節部材10の設置部の上方、つまり上記ガセット部材5の上端部近傍に位置するリヤピラー2の内部には、乗員を保護するシートベルトのリトラクタ11が配設され、その取付ブラケット11aが締結ボルトによりリヤピラーインナ9に取り付けられている。
【0019】
上記節部材10は、リヤピラーインナ9に接合される車内側フランジ12と、その上端部から車外側に延びる上壁部13と、その外側辺部から下方に延びる車外側フランジ14とを有し、この車外側フランジ14がリヤピラーアウタ8に接合されている。上記節部材10の後端部には、リヤピラー2の後端部内壁面に接合される後端フランジ15が設けられている。また、節部材10の前端部とリヤピラー2との間には、節部材10の組付性等を考慮して所定の間隙16が形成されている。
【0020】
上記リヤホイールハウス4の後部には、リヤサスペンションのストラットダンパー装置17が取り付けられる取付部18が設けられるとともに、この取付部18の近傍に上記ガセット部材5の前方下端部が接合されている。このガセット部材5は、図6および図7に示すように、ヤホイールハウス4の設置部から後方に延びる底辺部19と、その前端部から後部上方に向けて斜めに延びる上辺部20とを有し、上記リヤピラー2に沿って上下方向に延びる後辺部21とを有し、これらにより後方に至るに従って上下寸法が増大するとともに、中央が開口した略三角形状の扇形に形成されている。
【0021】
上記ガセット部材5の底辺部19は、車体側壁部3のインナパネル3bに接合される下端フランジ22と、その上端部から車内側に突出する所定幅の底壁部23と、その内側端部から上方に延びる所定幅の側面部24とを有している。また、上記ガセット部材5の上辺部20は、車体側壁部3のインナパネル3bに接合される上端フランジ25と、その下端部から車内側に突出する所定幅の上壁部26と、その内側端部から下方に延びる所定幅の側面部27とを有している。
【0022】
そして、上記上辺部20の上端フランジ25からなるガセット部材5の上端部と底辺部19の下端フランジ22からなるガセット部材5の下端部とが車体側壁部3のインナパネル3bに固定されるとともに、上記底壁部23の前端部23aおよび側面部24の前端部24aがリヤホイールハウス4の後部に固定されることにより(図3および図5参照)、上記上辺部20の側面部27および底辺部19の側面部24からなるガセット部材5の側面部が車体側壁部3のインナパネル3bから離間した状態で設置されている。
【0023】
また、上記ガセット部材5の後辺部21は、その後端部がリヤピラーインナ9の前端部内壁面に接合されることにより、ガセット部材5の後端部が上下所定寸法に亘ってリヤピラー2に固定され、このガセット部材5を介して上記リヤホイールハウス4の後部と、リヤピラー2の前部とが連結されている。
【0024】
上記ガセット部材5の設置部下方には、リヤホイールハウス4の後端部下方部位とリヤピラー2の下端部とを連結するとともに、上記車体側壁部3と、車体後部の底面部を構成するフロアパネル28との間で閉断面34を形成するレインフォースメント29が設けられている。上記レインフォースメント29は、車体側壁部3のインナパネル3bに固定される上端フランジ30と、その下端部から車内側に延びる上壁部31と、その内側端部から下方に延びる側壁部32と、その下端部から車内側に突設されてフロアパネル28の上面に固定される下端フランジ33とを有している。なお、図7において、35は、フロアパネル28の側方部下面に沿って車体の前後方向に延びるリヤサイドフレームである。
【0025】
そして、上記車体側壁部3のインナパネル3bおよびフロアパネル28と、上記レインフォースメント29の上壁部31および側壁部32とにより、リヤホイールハウス4の後端部下方部位とリヤピラー2の下端部との間において車体の前後方向に延びる閉断面34が形成されている。また、上記側壁部32の後端部には、図2に示すように、リヤピラー2の下部内面に沿って車体の後方側に延びる延出部32aが形成され、この延出部32aがリヤピラーインナ9の下端部に接合されている。
【0026】
上記のように車体の後方部に形成された後方開口部1の側辺部に沿って上下方向に延びるリヤピラー2と、車体側壁部3から車体の内方側に膨出するリヤホイールハウス4と、前端部がリヤホイールハウス4に固定されるとともに、後方に至るに従って上下寸法が増大するガセット部材5とを設け、このガセット部材5の後端部をリヤピラー2に連結した構成とした場合には、簡単な構成で車体後部に設置されたリヤホイールハウス4とリヤピラー2との間における車体剛性を効果的に向上させることができる。
【0027】
すなわち、後広がりの扇形等に形成された上記ガセット部材5の後端部をリヤピラー2に接合し、リヤピラー2の所定長さに亘る部分を、上記ガセット部材5によりリヤホイールハウス4に連結してリヤピラー2およびリヤホイールハウス4をそれぞれ補強するように構成したため、後方開口部1の開口面積が大きい場合等においても車体後部の面剛性を充分に確保することができる。また、上記ヤサスペンションのストラットダンパー装置17からリヤホイールハウス4に入力された荷重を、上記ガセット部材5からリヤピラー2に伝達して分散支持することにより、リヤホイールハウス4の内倒れ等を効果的に防止できるという利点がある。
【0028】
また、上記実施形態では、ガセット部材5の上下両端部、つまり上記上辺部20の上端フランジ25および底辺部19の下端フランジ22を、車体側壁部3に固定するとともに、この車体側壁部3に固定された上下両端部の間に位置する上記上辺部20の側面部27および底辺部19の側面部24からなるガセット部材5の側面部を、車体側壁部3から離間して設置したため、所定の上下寸法および幅寸法を有する立体的形状の上記ガセット部材5により、リヤホイールハウス4およびリヤピラー2を効果的に補強することができ、これらの剛性を充分に向上させることができるという利点がある。
【0029】
さらに、上記実施形態では、ガセット部材5に、リヤホイールハウス4の設置部から後方に延びる底辺部19と、その前端部から後部上方に向けて斜めに延びる上辺部20とを設けることにより、リヤピラー2をその上下に個所において補強するように構成したため、車両の後突時等に、上記リヤピラー2に入力された衝撃荷重等に対する支持剛性を充分に確保し、リヤピラー2の倒れ等を効果的に防止できる等の利点がある。
【0030】
また、上記実施形態に示すように、ガセット部材5の上端部近傍でリヤピラー2の内部を上下に区画する節部材10を設けた場合には、車両の後突時等に、上記リヤピラー2に入力された衝撃荷重等を上−記節部材10により上記ガセット部材5の設置部に伝達することができるため、このガセット部材5によるリヤピラー2の補強作用を、より効果的に向上させて、その変形をさらに効果的に防止できるという利点がある。
【0031】
さらに、上記実施形態に示すように、ガセット部材5の上端部近傍に位置するリヤピラー2の内部に、乗員を保護するシートベルトのリトラクタ11を配設した場合には、シートベルトからリトラクタ11に入力された荷重を上記ガセット部材により支持することができるため、上記シートベルトの支持剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0032】
また、上記実施形態では、図5および図7に示すように、ガセット部材5の設置部下方に、リヤホイールハウス4の後端部下方部位とリヤピラー2の下端部とを連結するとともに、車体側壁部3とフロアパネル28との間で閉断面34を形成するレインフォースメント29を設けたため、上記リヤホイールハウス4、リヤピラー2、ガセット部材5およびレインフォースメント29により型枠構造が形成されることになる。したがって、車体後部に設置されたリヤホイールハウス4とリヤピラー2との間における車体剛性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る自動車の側部車体構造の実施形態を示す斜視図である。
【図2】側部車体の車室内側部の構造を示す側面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】ガセット部材の構造を示す部分切欠き斜視図である。
【図7】図2のVII−VII線断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 後方開口部
2 リヤピラー
3 車体側壁部
4 リヤホイールハウス
5 ガセット部材
10 節部材
11 リトラクタ
19 底辺部
20 上辺部
24,27 側面部
28 フロアパネル
29 レインフォースメント
34 閉断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の側部車体構造において、車体の後方部に形成された後方開口部の側辺部に沿って上下方向に延びるリヤピラーと、車体側壁部から車体の内方側に膨出するリヤホイールハウスと、前端部がリヤホイールハウスに固定されるとともに、後方に至るに従って上下寸法が増大するガセット部材とを備え、このガセット部材の後端部がリヤピラーに連結されたことを特徴とする自動車の側部車体構造。
【請求項2】
ガセット部材の上下両端部が車体側壁部に固定されるとともに、この車体側壁部に固定された上下両端部の間に位置するガセット部材の側面部が車体側壁部から離間して設置されたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の側部車体構造。
【請求項3】
ガセット部材に、リヤホイールハウスの設置部から後方に延びる底辺部と、その前端部から後部上方に向けて斜めに延びる上辺部とが設けられたことを特徴とする請求項2に記載の自動車の側部車体構造。
【請求項4】
ガセット部材の上端部近傍でリヤピラーの内部を上下に区画する節部材が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車の側部車体構造。
【請求項5】
ガセット部材の上端部近傍に位置するリヤピラーの内部に、乗員を保護するシートベルトのリトラクタが配設されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車の側部車体構造。
【請求項6】
ガセット部材の設置部下方に、リヤホイールハウスの後端部下方部位とリヤピラーの下端部とを連結するとともに、車体側壁部とフロアパネルとの間で閉断面を形成するレインフォースメントが設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車の側部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−87510(P2008−87510A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267340(P2006−267340)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】