説明

自動車の車体構造

【課題】サブフレームの固定連結部に補強を施すことなく、衝突入力の分散伝達が良好に行われるようにし、前面衝突時の衝突エネルギの吸収性を高めること。
【解決手段】 左右のフロントクロスフレーム11、12とフロントクロスメンバ20との結合部AR、ALを固定連結部としてサブフレーム25をこれらに固定連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に関し、特に、モノコック構造の自動車の前部フロア部分の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モノコック構造の自動車として、左右のフロントサイドフレームの底面側に井桁状のサブフレームを追加し、前面衝突時の衝突入力をキャビンのフロア骨格メンバへ分散伝達し、キャビンの変形を的確に抑制して、より一層の衝突安全性の向上を図ったものがある(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2003−127893号公報
【特許文献2】特開2003−137136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
サブフレーム付きの車体構造では、サブフレームのフロントサイドフレーム等に対する固定連結部(結合点)を、如何に合理的に設定するかにより、衝突入力の分散伝達が良好に行われるかが決まる。そして、サブフレームの固定連結部に補強を施す必要が無いことが、部品点数、組付工数の増加、車体重量の増加を招かない上で好ましい。
【0004】
このことに対して、従来のものでは、衝突入力の分散伝達が必ずしも良好でなかったり、衝突入力の分散伝達が良好に行われるようにすると、サブフレームの固定連結部に補強を施す必要が生じるなどの課題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、サブフレームの固定連結部に補強を施すことなく、衝突入力の分散伝達が良好に行われるようにし、前面衝突時の衝突エネルギの吸収性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による自動車の車体構造は、車体前部に配置され、車体前後方向に延在する左右のフロントサイドフレームと、前記左右のフロントサイドフレームの後端部に各々接合されて当該接合部より車体後方に延びる左右のフロアフレームと、左右両端部を前記左右のフロントサイドフレームの後端近傍部に各々結合されて当該左右のフロントサイドフレームを互いに接続するフロントクロスメンバと、前記左右のフロントサイドフレームと前記フロントクロスメンバとの結合部を固定連結部としてこれらに固定連結されたサブフレームとを有する。
【0007】
本発明による自動車の車体構造は、好ましくは、前記フロントクロスメンバにトンネルフレームの前部が連結されている。
【0008】
本発明による自動車の車体構造は、好ましくは、更に、前記左右のフロントサイドフレームを左右のサイドシルに連結する左右一対のアウトリガーを有し、前記サブフレームが更に前記左右一対のアウトリガーに固定連結されている。
【0009】
本発明による自動車の車体構造は、好ましくは、前記フロントクロスメンバは、左右両側に、前記サブフレームの前記フロントサイドフレームおよび前記フロントクロスメンバに対する前記固定連結部と、前記サブフレームの前記アウトリガーに対する前記固定連結部とを結ぶ直線の延長線に沿って前記サブフレームとの前記固定連結部より車体後方へ延びた翼部を有し、ブーメラン形状をしている。
【0010】
本発明による自動車の車体構造は、好ましくは、更に、前記フロントサイドフレームおよび前記フロントクロスメンバに対する固定連結部より車体前方位置に、前記フロントサイドフレームとの固定連結部を有する。
【発明の効果】
【0011】
左右のフロントサイドフレームとフロントクロスメンバとの結合部は、当該両者の結合により、本来、強度がある衝突対応部分であり、この結合部を固定連結部として、サブフレームが、これらに固定連結されているから、当該固定連結部に補強を施す必要がなく、この固定連結部の剛性が増す効果も得られる。しかも、フロントサイドフレームよりサブフレームが受けた衝突入力が、フロントサイドフレームとフロントクロスメンバとの結合部に設定された固定連結部より、フロントクロスメンバに伝わり、オフセット衝突でも左右のフロアフレームへ良好に分散伝達され、キャビンの変形が的確に抑制される。
【0012】
フロントクロスメンバにトンネルフレームが連結されていることにより、衝突入力がトンネルフレームにも分散伝達される。また、サブフレームが左右のアウトリガーにも固定連結されていることにより、アウトリガーによっても衝突入力が左右のサイドシルにも分散伝達される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明による自動車の車体構造の実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。
【0014】
本実施形態の車体構造は、骨格強度部材として、車体前後方向に延在する箱形断面の左右のフロントサイドフレーム11、12と、フロントサイドフレーム11、12の先端部11A、12Aを互いに接続するフロントバンパビーム13とを有し、これらの内側にエンジンルーム14を画定している。
【0015】
左右のフロントサイドフレーム11、12は、各々、後端部11B、12Bを左右のフロアフレーム15、16の前端部15A、16Aに接合されている。左右のフロアフレーム15、16は、フロントサイドフレーム11、12との接合部より車体後方に、左右のサイドシルメンバ17、18と平行に延在しており、後端部15B、16Bを左右のサイドシルメンバ17、18間に掛け渡されたミドルクロスメンバ19に接合されている。ミドルクロスメンバ19は、車幅方向に延在し、左右両端を各々サイドシルメンバ17、18に接合されているものである。
【0016】
ミドルクロスメンバ19より車体前側にはフロントクロスメンバ20が設けられている。フロントクロスメンバ20は、左右の翼部20A、20Bを有するブーメラン形状をしており、翼部先端がなす左右両端部20C、20Dをフロントサイドフレーム11、12の後端近傍部に各々接合され、当該左右のフロントサイドフレーム11、12を互いに接続している。
【0017】
フロントクロスメンバ20の車幅方向中央部には、フロアトンネルフレーム21の前端部21Aが接合されている。フロアトンネルフレーム21は、車幅方向中央部を車体前後方向に延在しており、後端部21Bをミドルクロスメンバ19に接合されている。
【0018】
左右のフロントサイドフレーム11、12の後端近傍部には、当該フロントサイドフレーム11、12を左右のサイドシル17、18に連結する左右一対のアウトリガー22、23が設けられている。
【0019】
左右のフロントサイドフレーム11、12の後端近傍部には、車幅方向に延在して当該フロントサイドフレーム11、12を互いに接続するクロスメンバ状のサブフレーム25が設けられている。
【0020】
サブフレーム25は、右側のフロントサイドフレーム11とフロントクロスメンバ20の右端部20Cとの結合部AR、左側のフロントサイドフレーム12とフロントクロスメンバ20の左端部20Dとの結合部AL、右側のフロントサイドフレーム11と右側のアウトリガー22との結合部BR、左側のフロントサイドフレーム12と左側のアウトリガー23との結合部BLを、各々、固定連結部として、ボルト26、27、28、29によって、これらに固定連結されている。
【0021】
サブフレーム25は、さらに、上述の結合部AR、BRより車体前方位置の右側のフロントサイドフレーム11に取り付けられた取付台30、上述の結合部AL、BLより車体前方位置の左側のフロントサイドフレーム12に取り付けられた取付台31に各々ボルト3233によって固定連結されている。
【0022】
この取付構造において、フロントクロスメンバ20の左右の翼部20A、20Bは、サブフレーム25のフロントサイドフレーム11、12およびフロントクロスメンバ20に対するボルト26、27による固定連結部(結合部AR、AL)と、サブフレーム25のアウトリガー22、23に対するボルト28、29による固定連結部(結合部BR、BL)とを結ぶ直線LR、LLの延長線に沿って、サブフレーム25とのボルト26、27による固定連結部より車体後方へ延びている。
【0023】
左右のフロントサイドフレーム11、12とフロントクロスメンバ20との結合部AR、ALは、当該両者の結合により、本来、強度がある衝突対応部分であり、この結合部AR、ALを固定連結部として、サブフレーム25が、これらに固定連結されているから、当該固定連結部に補強を施す必要がなく、これらの固定連結部の剛性が増す効果も得られる。
【0024】
また、左右のフロントサイドフレーム11、12と左右のアウトリガー22、23との結合部BR、BLも、当該両者の結合により、本来、強度がある衝突対応部分であり、この結合部BR、BLをも固定連結部として、サブフレーム25が、これらに固定連結されているから、サブフレーム25の取付強度が増し、これらの固定連結部にも補強を施す必要がなく、これらの固定連結部の剛性が増す効果も得られる。
【0025】
フロントサイドフレーム11、12の取付台30、31による固定連結部よりサブフレーム25が受けた衝突入力は、フロントサイドフレーム11、12とフロントクロスメンバ20との結合部AR、ALに設定された固定連結部より、フロントクロスメンバ20の左右の翼部20A、20Bに伝わる。これにより、オフセット衝突でも、衝突荷重がフロントクロスメンバ20より左右のフロアフレーム15、16へ良好に分散伝達され、キャビンの変形が的確に抑制される。
【0026】
また、フロントクロスメンバ20の中央部分にフロアトンネルフレーム21が連結されていることにより、衝突入力がフロアトンネルフレーム21にも分散伝達される。更に、サブフレーム25が左右のアウトリガー22、23にも固定連結されていることにより、アウトリガー22、23によって衝突入力が左右のサイドシル17、18にも分散伝達される。
【0027】
フロントクロスメンバ20の左右の翼部20A、20Bが、サブフレーム25のフロントサイドフレーム11、12およびフロントクロスメンバ20に対するボルト26、27による固定連結部(結合部AR、AL)と、サブフレーム25のアウトリガー22、23に対するボルト28、29による固定連結部(結合部BR、BL)とを結ぶ直線LR、LLの延長線に沿ってサブフレーム25とのボルト26、27による固定連結部より車体後方へ延びていることにより、左右の翼部20A、20Bからフロントクロスメンバ20の中央部分への衝突荷重の伝達が、翼部20A、20Bを変形させることなく、良好に行われることになる。
【0028】
これらのことによれ、サブフレーム25の固定連結部に補強を施すことなく、衝突入力の分散伝達が良好に行われるようになり、前面衝突時の衝突エネルギの吸収性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による自動車の車体構造の一つの実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明による自動車の車体構造の一つの実施形態の要部の底面図である。
【図3】本発明による自動車の車体構造の一つの実施形態の要部の側面図である。
【図4】本発明による自動車の車体構造の一つの実施形態の要部の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
11、12 フロントサイドメンバ
13 フロントバンパビーム
14 エンジンルーム
15、16 フロアフレーム
17、18 サイドシルメンバ
19 ミドルクロスメンバ
20 フロントクロスメンバ
21 フロアトンネルフレーム
22、23 アウトリガー
25サブフレーム
26〜29 ボルト
30、31 取付台
32、33 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配置され、車体前後方向に延在する左右のフロントサイドフレームと、
前記左右のフロントサイドフレームの後端部に各々接合されて当該接合部より車体後方に延びる左右のフロアフレームと、
左右両端部を前記左右のフロントサイドフレームの後端近傍部に各々結合されて当該左右のフロントサイドフレームを互いに接続するフロントクロスメンバと、
前記左右のフロントサイドフレームと前記フロントクロスメンバとの結合部を固定連結部としてこれらに固定連結されたサブフレームと、
を有する自動車の車体構造。
【請求項2】
前記フロントクロスメンバにトンネルフレームの前部が連結されている請求項1に記載の自動車の車体構造。
【請求項3】
前記左右のフロントサイドフレームを左右のサイドシルに連結する左右一対のアウトリガーを有し、前記サブフレームが更に前記左右一対のアウトリガーに固定連結されている請求項1または2に記載の自動車の車体構造。
【請求項4】
前記フロントクロスメンバは、左右両側に、前記サブフレームの前記フロントサイドフレームおよび前記フロントクロスメンバに対する前記固定連結部と、前記サブフレームの前記アウトリガーに対する前記固定連結部とを結ぶ直線の延長線に沿って前記サブフレームとの前記固定連結部より車体後方へ延びた翼部を有し、ブーメラン形状をしている請求項3に記載の自動車の車体構造。
【請求項5】
前記サブフレームは、更に、前記フロントサイドフレームおよび前記フロントクロスメンバに対する固定連結部より車体前方位置に、前記フロントサイドフレームとの固定連結部を有する請求項1から4の何れか一項に記載の自動車の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−23615(P2009−23615A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191492(P2007−191492)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】