説明

自動車ドアシール材用ゴム組成物

【課題】 有害物質であるホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの蒸発気化を抑えて、健康に被害を与えることのない自動車ドアシール材用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】 ゴム組成物を、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)、カルシウムシアナミド、アゾジカルボンアミド(ADCA)の化合物から選択される一つ以上の化合物を配合剤として含ませて構成する。また、前記化合物の添加量を、ゴム組成物全体の0.01%〜5%、好ましくは0.1%〜1.5%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)であるホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの蒸発気化を抑えた自動車ドアシール材用ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車ドアシール材はゴム組成物で形成されており、当該ゴム組成物には揮発性有機化合物であるホルムアルデヒドやアセトアルデヒドが含まれている。
【0003】
揮発性有機化合物(VOC)は、常温で蒸発気化する有機化合物であり、これを吸い込むと頭痛やめまい、吐き気、疲労感、腎障害などを誘発するため、その発生を抑えることが強く望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでに、スポンジゴムから発生するホルムアレデヒドやアセトアルデヒドについては、DPT(N,N’ジニトロソペンタメチレンテトラミン)発泡剤を使用しないことにより抑制できることが分かっている。
【0005】
しかし、ソリッドゴムに関しては、それらの物質の発生を抑える手段は創案されていない。
【0006】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、有害物質であるホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの蒸発気化を抑えて、健康に被害を与えることのないゴム組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した問題を解決すべく研究を重ねた結果、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)、カルシウムシアナミド、アゾジカルボンアミド(ADCA)をゴム組成物に配合すると、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドがゴム組成物内に固定することを見出した。また、適正な添加量についても、実験の結果、見出した。
【0008】
請求項1に記載の自動車ドアシール材用ゴム組成物は、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、カルシウムシアナミド、アゾジカルボンアミドの化合物から選択される一つ以上の化合物を配合剤として含むことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の自動車ドアシール材用ゴム組成物は、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、カルシウムシアナミド、アゾジカルボンアミドの化合物から選択される一つ以上の化合物を配合剤として含み、前記化合物の添加量が、ゴム組成物全体の0.01%〜5%、好ましくは0.1%〜1.5%であることを特徴とするものである。
【0010】
なお、請求項1および2に係るゴム組成物には、ソリッドゴムとスポンジゴムの両方を含む。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のゴム組成物は、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、カルシウムシアナミド、アゾジカルボンアミドの化合物から選択される一つ以上の化合物を含むので、有害物質であるホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの蒸発気化を抑えることができる。
【0012】
請求項2に記載のゴム組成物は、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、カルシウムシアナミド、アゾジカルボンアミドの化合物から選択される一つ以上の化合物を含み、当該化合物の添加量を、ゴム組成物全体の0.01%〜5%、好ましくは0.1%〜1.5%に設定したので、さらに効果的に上記有害物質の蒸発気化を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る自動車ドアシール材用ゴム組成物の実施形態を、図1および図2に示す。これは、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、カルシウムシアナミド(CaCN)、アゾジカルボンアミド(HNCON=NCONH)の化合物から選択される一つ以上の化合物を含み、当該化合物の添加量を、ゴム組成物全体の0.1%〜1.5%に設定したゴム組成物であり、ドア及びボディ用二種類の自動車用ドア用シール材1,2の形成材料として使用したものである。このうち、一方の自動車用シール材1は、ドアサッシュ3に取り付けられてボディパネル4に弾接するものであり、他方のボディ用シール材2はボディパネル4のフランジ部5に取付けられ、ドアサッシュ3に弾接するものである。
【0014】
このゴム組成物は、上記化合物を含むため、有害物質であるホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドが室内へ蒸発気化するのを抑制することができる。これにより、人体へ及ぼす被害を大幅に減じることができる。
【実施例】
【0015】
本発明者は、尿素とヒドラゾジカルボンアミドを添加したEPDMゴム組成物(実施例1、実施例2)と、それらを添加しないEPDMゴム組成物(比較例)から蒸発気化するホルムアルデヒドの検出量を測定した。ホルムアルデヒドの検出方法は、JIS A1901に準拠した。ただし、捕集温度は車内環境を考慮して65℃とした。またこの実験は、厚さ2mmの金型に、配合ゴムを充填し、180℃で5分加熱成形した試料を使用して行った。
【0016】
その結果を、表1に示す。この表から、尿素およびヒドラゾジカルボンアミドを1重量部含む本発明に係るゴム組成物から検出されるホルムアルデヒドの量は、それらを含まないゴム組成物から検出されるゴム組成物の1/5に過ぎないことが分かった。
【0017】
なお、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、アゾジカルボンアミドは、いずれも第一級アミノ基を有し、この第一級アミノ基がホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドと化学反応して、それらの蒸発気化を抑制することを確認した。
【0018】
なお、カルシウムシアナミドは、空気中又はゴム組成物中に含まれると水と反応して尿素を生成するため、この尿素が、前述のようにホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドと化学反応して、それらの蒸発気化を抑制することを確認した。
【0019】
【表1】











【産業上の利用可能性】
【0020】
このゴム組成物は、自動車シール材の他に、住宅用目地材など、各種のゴム製品の形成材料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るゴム組成物によって形成した自動車用シール材を取付けた自動車を示す側面図である。
【図2】本発明に係るゴム組成物によって形成した自動車用シール材を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 自動車ドア用シール材
2 自動車ボディ用シール材
3 ドアサッシュ
4 ボディパネル
5 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、カルシウムシアナミド、アゾジカルボンアミドの化合物から選択される一つ以上の化合物を配合剤として含むことを特徴とする自動車ドアシール材用ゴム組成物。
【請求項2】
尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、カルシウムシアナミド、アゾジカルボンアミドの化合物から選択される一つ以上の化合物を配合剤として含み、
前記化合物の添加量が、ゴム組成物全体の0.01%〜5%、好ましくは0.1%〜1.5%であることを特徴とする自動車ドアシール材用ゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−24820(P2008−24820A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198943(P2006−198943)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】