説明

自動車バッテリの取り付け/取り外し用工具

本発明は、自動車の駆動モータまたはエンジンに供給するエネルギーの容器の取り付けまたは取り外し用工具(11;31)に関し、容器は、ロック部(2)を用いてピストン(5)によりこのロック部(2)に荷重をかけることで自動車に固定するものである。工具は、少なくとも1つの工具固定手段(17;37)と、ピストン(5)に作用することでロック部(2)にかかる荷重を解放する手段(33)と、バッテリを係止および/または係止解除する手段(18;38)とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の駆動モータまたはエンジンに供給するエネルギーの容器の、例えばその充電および/または取り換えのための取り付けおよび/または取り外し用工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車またはハイブリッド自動車といったある種の自動車は、モータに電力供給するバッテリなど、駆動モータまたはエンジンに供給するエネルギーの容器を備えている。このような容器は、そのエネルギーレベルが低いときには、エネルギーがフルの状態の新しい容器と交換することが有益である場合がある。これは、自動車のタンクに燃料を満たすことができるガソリンスタンドと類似のスタンドで行うことができる。
【0003】
特許文献1は、電気自動車の駆動モータに電力供給するバッテリを交換するためのスタンド、および、そのような交換を行う方法を開示している。記載の交換スタンドでは、運転者が、スタンドの設備に関する車両の大まかな位置決めを、レールの長手方向のストップ部に対して行う。その後、ある程度自動的な段階において、車両でのバッテリの取り外しおよび新しいバッテリの取り付けを行うための可動手段が、自身を車両に対して、センサを用いて位置決めする。そのようなスタンドでの動作に必要なセンサおよび電子手段の数によって、それを信頼性の高いものとすることが難しくなり、これは、その動作があまりロバストではないことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(技術的能力をほとんど必要としない)エネルギー容器交換スタンドの配置展開を容易にするためは、信頼性が高くロバストなエネルギー容器交換システムを提案する必要があり、従って、エネルギー容器を取り外すための高性能な方法および関連する工具を提案する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、エネルギー容器の取り付けまたは取り外しのための、上記欠点を解消する解決法を提供し、先行技術で周知の交換方法を改善することを目的とする。
【0006】
特に、本発明は、エネルギー容器の取り付けまたは取り外しのための、簡単で信頼性の高い工具を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明は、自動車の駆動モータまたはエンジンに供給するエネルギーの容器の取り付けまたは取り外し用工具であって、容器は、ロック部を用いてピストンによりこのロック部に荷重をかけることで自動車に固定されるものであり、工具は、
‐ 少なくとも1つの工具固定手段と、
‐ ピストンに作用して、ロック部にかかる荷重を解放する手段と、
‐ バッテリを係止および/または係止解除する手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
バッテリを係止および/または係止解除する手段は、回転可能なロッドの上部に配置することができる。
【0009】
係止および/または係止解除する手段は、六角形、四角形、正方形、皿形、または平形タイプの、雄型または雌型接続部を備えることができる。
【0010】
ロック部にかかる荷重を解放する手段は、バッテリを係止および/または係止解除する手段のロッドに関して、並進移動可能とすることができる。
【0011】
ロック部にかかる荷重を解放する手段は、ネジ/ジャッキ方式、油圧アクチュエータ、カムシステム、空気圧システム、または梃子により可動とすることができる。
【0012】
ロック部にかかる荷重を解放する手段と、バッテリを係止および/または係止解除する手段は、工具の中央円筒形本体の上部に設けることができる。
【0013】
エネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具は、ロック部にかかる荷重を解放する手段の周りに対称的に分布した2つの工具固定手段を備えることができる。
【0014】
上記少なくとも1つの工具固定手段は、少なくとも1つのトラス頭による接続タイプの、雄型または雌型接続部とすることができる。
【0015】
エネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具は、可搬式で、手動での使用に適したものとすることができ、あるいは電動式とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記のこのような取り付けまたは取り外し用工具は、これにより自動車のバッテリの交換を行うことが可能であり、また、自動車のアフターサービスにおける修理作業用とすることもできる。
【0017】
本発明のこれらの目的、特徴、および効果は、添付の図面を参照して、限定するものではない例として提示される、具体的な実施形態についての以下の記載において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施形態によるバッテリの取り付けまたは取り外しの方法を実施するのに適した係止装置を備えるバッテリの断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態によるバッテリの取り付けまたは取り外しの方法を実施するのに適した工具の上面斜視図である。
【図3】図3は、バッテリと、本発明の第1の実施形態によるバッテリの取り付けまたは取り外しの方法を実施するのに適した工具との協働の詳細についての上面斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態によるバッテリの取り付けまたは取り外しの方法を実施するのに適した手動用工具の上面斜視図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態によるバッテリの取り付けまたは取り外しの方法を実施するのに適した手動用工具の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、リアトランク内またはシャーシの下に配置されたエネルギー供給容器を備えるあらゆる車両に適用される。以下の説明では、車両の駆動モータまたはエンジンに電力供給するバッテリの取り外しについての説明により、エネルギー容器の取り外しについての説明を行う。しかしながら、本発明は、あらゆるタイプの供給容器に適用されるものであり、さらに、逆の動作によるそのような供給容器の取り付けに適用されるものである。
【0020】
本発明は、図1に例として示すようなバッテリを固定する原理に関する。バッテリ1はロック部2により係止されており、このロック部は、バッテリを係止する機能を実現するためのラッチ部を形成する自動車のボディシェル10と協働する第1の端部3と、ロック部2を動かすための接続手段を備える第2の端部4とを有している。ロック部2は、その係止または係止解除の機能を実現するため、バッテリ上に回転可能に取り付けられている。バッテリは、さらに、ロック部2を係止位置にしっかりと保持するために、バネなどの弾性要素6を介してロック部2に作用するピストン5を備えている。
【0021】
より包括的には、以下で説明するバッテリを取り外す方法は、付属する回転ロック部と、そのロック部に荷重をかけるデバイスとの組み合わせにより、上記タイプのバッテリを固定するあらゆる方式に適応するものである。
【0022】
バッテリ1を取り外す方法は、例えば図2に示すような後述の工具11を使用して実現される。この方法は、工具11によって自動的に実行される以下の2つの主要なステップを含んでいる。
E1:ピストン5をロック部2に対して相対的に移動させて、ロック部との係合を外すように、ピストン5に作用を及ぼす;
E2:ロック部がラッチ部から外れて、係止解除されるように、ロック部2を回転させる。
【0023】
第1のステップE1は、単にピストン5を押すことで、これを弾性手段6の力に逆らって並進移動させることとすることができる。第2のステップE2は、ロック部を4分の1回転または半回転以下の回転をさせることとすることができる。
【0024】
この方法は、上記の信頼性が高く高性能な取り外し方法を実行する前に、確実に工具がバッテリ1に対して、特にその係止システムに対して正しく位置決めされるように、車両のボディシェルまたはバッテリの対応する要素7に工具11を固定する準備ステップE0を含むことができる。
【0025】
工具11を固定するための要素7はトラス頭の形態とすることができ、これらは、好ましくは、アクセス可能であって、掃除しやすい形状であり、これにかかる大きな応力に対して耐性があり、あまりかさばらないように配置される。効果的には、工具が安定して保持されるように、2つのトラス頭をロック部の周りに対称的に分布させる。代わりに、他のいずれかの数のトラス頭およびあらゆる形状の固定要素7を、本発明の概念から逸脱することなく許容することができる。
【0026】
工具は、2つのタイプの動きに従って、すなわち並進移動か、トラス頭の平面内での回転か、いずれかによってトラス頭に固定することができる。
【0027】
そして、この取り外し方法は、係止解除されたバッテリを取り出す最後のステップE4を含んでいる。このためには、工具11を、そして同時にバッテリを、単に並進移動させて引き戻すだけでよい。
【0028】
このように、バッテリを取り外す方法のこれらのステップは、工具11を動かすことによって実現され、これは、電気式または油圧式の個別のアクチュエータを用いるか、あるいはカム操作のダイナミクスを用いるなどして、いくつかの方法で実行することができる。
【0029】
図2は、本発明によるバッテリの取り外し方法を自動的に実行することができる工具11の第1の実施形態を示している。
【0030】
工具11は、ロック部2の接続部と協働するため、円筒形の垂直ロッド12に取り付けられた上端部14を有している。この協働を、より具体的に、工具11がロック部2に近づく段階にある図3に示しており、ロック部は、下側接続部4と2つの側方トラス形接続要素7のみ示している。工具11の端部14は、接続要素18の周りに対称的に配置された2つのスロット17を備えており、接続要素は、対応するロッドを受け取ることができるホゾ穴の形態で、ロック部2の接続要素4の表面の下に配置されて、図示していない皿形/平形タイプの協働を形成する。各スロット17は、トラス頭7に略対応する大きさの略円弧状の部分19を有しており、この円弧状部分19を通してトラス頭を挿入することができる。これに続いて、各スロット17は、円弧の一部を成す狭小部20を有し、その中で、開口部19を通して挿入されたトラス頭の狭小部8が動くことができる。このようにして、工具11を固定するステップE0では、トラス頭がこれらの開口部に挿入されるまで、開口部19がトラス頭に近づけられて、その後、スピンドル12を回転させることで、トラス頭7により工具11を係止して固定する。あるいは、このような固定を、他の幾何学的形状および/または並進移動など他の動きによって実現することもできる。そしてつぎに、スピンドル12の中心部を垂直方向に並進移動させてピストン5に当接させ、ステップE1に従ってロック部との係合を外す。最後に、接続要素18の回転により、ステップE2に従って、ロック部を回転させて係止解除させる。
【0031】
これらの様々な動きを得るために、工具11は、3つの個別のモータ、例えば電気モータまたは空気モータまたは油圧モータと、工具をトラス頭に固定するための上部リンクロッド21と、ロック部の係止解除のためにスピンドル12の中心部を回転させるための下部リンクロッド22と、スピンドル12を並進移動させるための装置23と、を備える。これら2つの動きを結合させることができることに留意されたい。
【0032】
図4および図5は、本発明の第2の実施形態により、バッテリを手動で取り付けおよび/または取り外しする工具31を示している。この工具は、ベース34を有し、その上に中央円筒形本体32が延出しており、これは第1の中心ロッドを備えて、その上端は、ロック部の対応する接続要素と協働するための接続要素38を形成している。この接続は、本実施形態では、皿形/平形タイプのものである。この中心ロッドは、その下部に作動要素40を有し、これはベース34の下にあって、手動で回転させるように構成されている。この中心ロッドの周囲には、ネジ/ジャッキ方式で並進移動させることができる相補要素があり、その上端部33をピストンに当接させることで、ロック部にかかる荷重が解放されるようになっている。あるいは、このような可動性を、油圧アクチュエータ、カムシステム、空気圧システム、または梃子など、他の解決法により得ることもできる。最後に、工具31は、2つの円筒形側部35を有し、これらの上部に、バッテリに設けられた固定要素7と協働する固定要素37を備えている。本実施形態では、これらの固定要素37は、その周辺部に開口部39を有し、これは図3に示すようなトラス頭タイプの接続要素の幅広の下部との結合を可能とするものであり、さらに、そのようなトラス頭の狭小部8を通すことができる上向き開口部を有する。また、このような幾何学的形状により、バッテリ上において工具は、円筒部35の軸に対して平行な方向が略垂直となるように維持される。
【0033】
このように、第2の実施形態による工具は、迅速な処理と純粋に手動での使用に適したものである。人間工学的な手動での使用を可能にするこの工具は、可搬式工具である。より具体的には、アフターサービスにおける販売店での自動車修理用であり、あるいは、組立工場で使用することもできる。
【0034】
以上、例として2つのタイプの工具について説明を行った。他の幾何学的形状を想定することも可能である。上記説明から、本発明は、最終的に、バッテリの取り付けまたは取り外し用の、つぎの3つの主要な手段を備える工具に関するものであることが明らかである。
‐ 工具をバッテリまたはボディシェルに固定するための少なくとも1つの手段。バッテリに固定することによって、ボディシェルへの大きな荷重の伝達を回避することができる。この固定手段は、荷重を工具からバッテリへ伝達させて取り除くためのサポートとして機能する。
‐ ロック部にかかる荷重を解放する手段であって、これは垂直方向に並進移動が可能な要素で構成することができる。
‐ バッテリを係止および/または係止解除する手段であって、これはロック部を回転させることによるものとすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車を駆動モータまたはエンジンに供給するエネルギーの容器の取り付けまたは取り外し用工具(11,31)であって、ピストン(5)により荷重をかけるロック部(2)を用いることで自動車にエネルギーの容器を固定するものであり、
少なくとも1つの工具固定手段(17;37)と、
ピストン(5)に作用して、ロック部(2)にかかる荷重を解放する手段(33)と、
バッテリを係止および/または係止解除する手段(18;38)と
を備えることを特徴とする工具。
【請求項2】
バッテリを係止および/または係止解除する手段(18;38)を、回転可能なロッドの上部に含むことを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具。
【請求項3】
係止および/または係止解除する手段(18;38)が、六角形、四角形、正方形、皿形、または平形タイプの、雄型または雌型接続部を含むことを特徴とする、請求項2に記載のエネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具。
【請求項4】
ロック部(2)にかかる荷重を解放する手段(33)が、バッテリを係止および/または係止解除する手段(18;38)のロッドに関して、並進移動可能であることを特徴とする、請求項2または3に記載のエネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具。
【請求項5】
ロック部(2)にかかる荷重を解放する手段(33)が、ネジ/ジャッキ方式、油圧アクチュエータ、カムシステム、空気圧システム、または梃子により可動であることを特徴とする、請求項4に記載のエネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具。
【請求項6】
ロック部(2)にかかる荷重を解放する手段(33)と、バッテリを係止および/または係止解除する手段(18;38)とが、工具の中央円筒形本体(12;32)の上部に設置されていることとを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具。
【請求項7】
ロック部(2)にかかる荷重を解放する手段(33)の周りに対称的に分布した2つの工具固定手段(17;37)を備えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具。
【請求項8】
少なくとも1つの工具固定手段(17;37)が、少なくとも1つのトラス頭による接続タイプの雄型または雌型接続部であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具。
【請求項9】
可搬式であって、手動での使用に適したものであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のエネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具。
【請求項10】
電動式であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のエネルギー供給容器の取り付けまたは取り外し用工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−515341(P2013−515341A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545376(P2012−545376)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052677
【国際公開番号】WO2011/083228
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(507308902)ルノー エス.ア.エス. (281)
【Fターム(参考)】