説明

自動車用の補助集合装置の駆動装置

本発明は、遊星歯車機構を有する、自動車用の補助集合装置駆動装置であって、遊星歯車機構(P)の第1の要素(S)が、第1の電気機械(EM1)と出力交換し、第2の要素(PT)が、内燃機関(VM)と出力交換し、第3の要素(H1)が、少なくとも1つの補助集合装置(AG)と出力交換する補助集合装置駆動装置に関する。内燃機関の始動中と、第1の電気機械(EM1)による車両の駆動中との両方で高い効率を有するために、補助集合装置駆動装置が、内燃機関(VM)を第1の電気機械(EM1)に結合させることができる第1のクラッチ(KVE)と、遊星歯車機構(P)の第3の要素(H1)を一回転方向にのみ回転させることができるようにする第1のフリーホイール(FAG)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による自動車用の補助集合装置の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば空調圧縮機、ファン、パワーステアリングポンプ、又は油及び水ポンプなどの補助集合装置が自動車で使用され、内燃機関の回転速度に比例する回転速度で補助集合装置が駆動される場合、前記補助集合装置は、広い回転速度範囲にわたって、例えば火花点火エンジンの場合には600〜6000rpmにわたって、すなわち最低回転速度に対して最高回転速度が10倍で、課される要求に対応しなければならない。その結果、例えば、内燃機関のアイドル時に十分なクーラントの流れを送給しなければならない水ポンプは、比較的高い内燃機関回転速度では不必要に多いクーラント量を送給し、それによりかなりの損失が発生する。また、他の補助集合装置は、アイドル状態では不十分な性能しか提供せず、最適な動作範囲内で動作されることはめったにない。
【0003】
内燃機関のアイドル時に補助集合装置を駆動させることができるようにするために、オーバーランニングクラッチによって内燃機関の補助駆動出力を駆動させる個別の電動機を提供することが知られている。
【0004】
オーバーランニングクラッチは、負荷条件が変わる場合に動力伝達装置の一部分を回転運動から切り離すデバイスである。オーバーランニングクラッチは、例えば、ローラ型オーバーランニングクラッチ、プレート型オーバーランニングクラッチ、又はクランプボディ型オーバーランニングクラッチとして設計されることがある。クランプボディ型オーバーランニングクラッチは、内側リングと、外側リングと、ケージ内に取り付けられたクランプボディとから構成される。駆動が内側リングによって行われる場合、ばねが、内側リングと外側リングとの間でクランプボディをわずかに押し、それにより、クランプボディは、それらの回転により、それらの受入れ空間内に移動する。クランプボディの受入れ空間には、ばねから離れる方向にテーパが付いているので、伝達されるトルクは、内側リングが外側リングに対してさらに回転されるにつれて大きくなる。形成されるクランプウェッジの入射角の適切な選択により、この設計は、物理的な設計により、最良の潤滑の場合でさえ全くスリップがなく、自己ロック状態が存在する。このために、テーパ角は、摺動摩擦係数μのアークタンジェント以下であるように選択されなければならない。回転方向が逆の場合、又は外側回転速度が内側回転速度よりも大きい場合、クランプボディが、ばねの方向に転がり、クランプ作用がなくなる。
【0005】
原動機としても、さらに発電機としても動作される電気機械は、同様に、発電機モードで必要なのとは異なる伝達比を原動機動作で必要とするという問題を有する。これは通常、電気機械の過剰寸法を原動機らす。例えば、スタータ/発電機は、発電機モードで必要とされるよりも高い伝達比をスタータモードで必要とし、これは、スタータ動作に関して過剰寸法設計をもたらす。
【0006】
また、このとき、補助集合装置を供給するのに十分な電気エネルギーが利用可能であるので、特にハイブリッド車で使用される電気補助集合装置も知られている。しかし、前記電気補助集合装置は高価である。
【0007】
特許文献1が、入力ベースと2つの出力ベースとを有する重畳歯車機構を有する自動車用の補助集合装置の駆動装置であって、入力ベースが、内燃機関に回転可能に接続され、第1の出力ベースが、補助集合装置の連結体に回転可能に接続され、第2の出力ベースが、発電機として動作される誘導機に回転可能に接続される補助集合装置の駆動装置を開示する。補助集合装置の連結体の回転速度は、重畳歯車機構によって連続可変可能に制御することができ、それにより、前記補助集合装置の連結体は、できるだけ理想的な均一な範囲内で動作される。しかし、連続可変動作では、誘導機械の発電機出力は、補助集合装置の連結体のトルク要求への依存により、限られた程度でしか制御することができない。連続可変トランスミッションを用いた動作から直接トランスミッションを用いた動作に切り換えるためには、不利なことに、複数のクラッチが切り換えられる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許発明第43 33 907 C2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、請求項1の前段に記載の自動車用の補助集合装置の駆動装置であって、内燃機関の始動中と、さらに、第1の電気機械による車両の駆動時との両方で高いレベルの効率を有する補助集合装置の駆動装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的は、請求項1の特徴を有する自動車用の補助集合装置の駆動装置によって実現される。それによれば、補助集合装置の駆動装置は、内燃機関を第1の電気機械に結合させることができる第1のクラッチと、遊星歯車機構の第3の要素が一回転方向にのみ回転することができるようにする第1のオーバーランニングクラッチとを有する。
【0011】
内燃機関を第1の電気機械に結合させることができる第1のクラッチの使用により、第1の電気機械は、内燃機関を直接駆動させることができ、それにより、特に内燃機関の高温始動中に効率が高められ、遊星歯車機構が保護される。同様に、このようにすると、第1のクラッチが閉じられるとき、第1の電気機械の発電機出力は、少なくとも1つの補助集合装置のトルク要求に依存しない。これは、第1の電気機械を、補助集合装置から独立して、発電機として又は原動機として動作するように制御することができ、したがって、第1の電気機械の追加の駆動トルクによるブースト動作が可能であるという利点をもたらす。さらに、第1のクラッチの切換えが、連続可変動作と直接動作との簡単な切換えを可能にする。
【0012】
少なくとも1つの補助集合装置に動力伝達可能に接続される遊星歯車機構の第3の要素が一回転方向にのみ回転することができるようにする第1のオーバーランニングクラッチは、有利には、第1の電気機械による内燃機関の始動中に、特に低温始動中に、伝達比、したがってトルク倍増を可能にする。このようにすると、有利には、内燃機関の始動が可能であり、内燃機関は、注入プロセスが始まる前に、そのアイドル回転速度まで加速される。これは、内燃機関の従来の始動に比べて減少された排気ガス放出と、快適さに関して改善された始動プロセスとをもたらし、特に始動/停止動作において非常に有利である。
【0013】
遊星歯車機構は、有利には、
−第1のクラッチが開かれているときに、第1の電気機械による内燃機関の始動中、特に低温始動中に、より高いトルクを可能にし、
−少なくとも1つの補助集合装置の駆動中、特に内燃機関がアイドル状態にあるときに、内燃機関と第1の電気機械との間でのトルク分配を可能にし、且つ
−補助集合装置の駆動装置の連続可変制御を可能にし、その結果、少なくとも1つの補助集合装置の動作範囲を、その回転速度範囲に関して狭めることができる。
【0014】
本発明による補助集合装置により、有利には、ハイブリッド動力伝達装置の以下の機能を実現することができる。
−第1の電気機械の発電機動作による発電機機能(従来式の駆動による車両のオルタネータはもはや必要ない)
−電気機械によって内燃機関を始動させることによる始動/停止機能
−第1の電気機械の追加の駆動トルクによるブースト機能、及び
−内燃機関が停止状態にあるときの、第1の電気機械による少なくとも1つの補助集合装置の駆動。
【0015】
補助集合装置が、遊星歯車機構の第1の要素をハウジング部分に関して固定保持することができる第1のブレーキを有する場合、少なくとも1つの補助集合装置の回転速度を増加させることができる。これは、低い内燃機関回転速度で、特に、電気エネルギーを発生するためのさらなる電気機械を車両動力伝達装置が有するときに、特に有利である。
【0016】
補助集合装置が、遊星歯車機構の第2の要素が一方向でのみ回転することができるようにする第2のオーバーランニングクラッチを有する場合、内燃機関が停止状態にあるときでさえ、少なくとも1つの補助集合装置に動力伝達可能に接続された第3の要素を駆動させることができる。これは、純粋に電気的に駆動させることができる車両で特に有利であり、なぜなら、このとき、例えばパワーステアリングシステムのパワーステアリングポンプを駆動させる必要があるからである。ここで、例えば空調システム及びパワーステアリングシステムなどの補助集合装置は、例えばパワーステアリングポンプ出力が増加される期間中に空調圧縮機の出力が減少されるように動作される。このようにすると、補助集合装置に必要とされる全出力を制限することができる。
【0017】
補助集合装置の駆動装置が、2つの遊星歯車セットと2つのリングギアとを有する拡張された遊星歯車構成を有し、第1の遊星歯車セットのみが遊星歯車機構の第1の要素及び第3の要素と噛合し、第2の遊星歯車セットが第1の遊星歯車セット及び第4の要素と噛合する場合、有利には、第4の要素をハウジング部分に関して固定保持することができる第2のブレーキが、始動クラッチとなることができる。ここで、補助集合装置の駆動装置が稼動しているとき、内燃機関を、第1の電気機械によって始動伝達比を用いて始動させることができる。前記内燃機関の始動は、低い振動を特徴とする。
【0018】
内燃機関を第1の電気機械に結合させることができる第1のクラッチの、遠心クラッチとしての設計は、かなりのコスト上の利点をもたらす。この場合、少なくとも1つの補助集合装置を全動作範囲内で連続可変可能に要求に応じて駆動させることができる能力、及び最大回転速度の制限がなくなる。
【0019】
本発明のさらなる利点は、本説明及び図面から分かる。本発明の具体的な例示的実施形態が、図面に簡略化された形式で例示され、以下の説明でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】遊星歯車機構と、第1の電気機械と内燃機械とを結合するための第1のクラッチと、リングギアの回転方向を決定するための第1のオーバーランニングクラッチとを有する、本発明による補助集合装置の駆動装置の概略図である。
【図2】図1による補助集合装置の駆動装置における、少なくとも1つの補助集合装置と、内燃機関と、第1の電気機械との回転速度を例示する図である。
【図3】図1及び2による補助集合装置の駆動装置に関する4つの例示構成を示す表である。
【図4】固定されるように太陽歯車を保持するための追加の第1のブレーキを有する、図1による補助集合装置の駆動装置の概略図である。
【図5】図4による補助集合装置の駆動装置における、少なくとも1つの補助集合装置と、内燃機関と、第1の電気機械との回転速度を例示する図である。
【図6】遊星歯車キャリアの回転方向を決定するための追加のオーバーランニングクラッチを有する、図1による補助集合装置の駆動装置の概略図である。
【図7】図6による補助集合装置の駆動装置における、少なくとも1つの補助集合装置と、内燃機関と、第1の電気機械との回転速度を例示する図である。
【図8】第2のリングギアを第2のブレーキによって固定保持することができる、2つの遊星歯車セットと2つのリングギアとを有する拡張された遊星歯車機構を有する、図6による補助集合装置の駆動装置の概略図である。
【図9】図8による補助集合装置の駆動装置における、少なくとも1つの補助集合装置と、内燃機関と、第1の電気機械との回転速度を例示する図である。
【図10】第2の電気機械にも動力伝達可能に接続される駆動トランスミッションの入力シャフトに遊星歯車キャリアを第2のクラッチによって接続させることができるようにする、図6による補助集合装置の駆動装置の概略図である。
【図11】動力伝達装置遊星歯車機構の第3のリングギアに遊星歯車キャリアを第2のクラッチによって接続させることができるようにする、図1による補助集合装置の駆動装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、太陽歯車Sと、それらの軸で遊星歯車キャリアPT内に取り付けられた第1の遊星歯車セットPR1と、第1のリングギアH1とを備える遊星歯車構造Pを有する自動車用の補助集合装置の駆動装置を示す。ここで、第1の電気機械EM1が、太陽歯車Sに動力伝達可能に接続され、内燃機関VMが、遊星歯車キャリアPTに動力伝達可能に接続され、少なくとも1つの補助集合装置AGが、第1のリングギアH1に動力伝達可能に接続される。内燃機関VMは、第1のクラッチKVE、例えばプレート型クラッチによって、第1の電気機械EM1に結合させることができる。一端が第1のリングギアH1に接続され、他端がハウジング部分に接続される第1のオーバーランニングクラッチFAGにより、第1のリングギアH1が一方向でのみ、具体的には内燃機関VMの駆動方向でのみ回転することができるという効果が得られる。
【0022】
これは、図2で直線1によって示されるように、第1のクラッチKVEが開かれているときに第1の電気機械EM1によって内燃機関VMを始動させるためにレバー作用をもたらす、すなわち、遊星歯車キャリアPTでのトルクが約3倍に増加される。前記伝達比によって、少なくとも1つの補助集合装置AGを駆動させるために3〜6kWの機械的出力を発生することができる第1の電気機械EM1は、難なく内燃機関VMを始動させることができる。
【0023】
特に好ましくは低温始動中に適用される始動プロセス中、内燃機関VMは、最初に、燃料の注入が開始される前に、通常のアイドル回転速度にされる。これは、スタータを使用する従来の始動プロセスに比べて低い排気ガス放出、及び快適さの改善をもたらす。このようにすると、内燃機関VMは、排気ガス規制値を考慮して、より頻繁に始動/停止動作で稼動させることができる。
【0024】
図2は、少なくとも1つの補助集合装置AG、内燃機関VM、及び第1の電気機械EM1の回転速度状態を示す。回転速度が、垂直軸にrpm単位でプロットされる。少なくとも1つの補助集合装置AG、内燃機関VM、及び第1の電気機械EM1の間の水平軸における間隔は、遊星歯車機構Pの伝達比から生じ、特定の動作点に関係する回転速度を直線によってつなぐことができる。したがって、2つの既知の回転速度から、第3の要素の回転速度が得られる。
【0025】
直線2は、要求に応じて、例えばパワーステアリングポンプ又は空調圧縮機の出力要求が増加された場合にのみ、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構が第1の電気機械EM1によってサポートされ、且つ内燃機関VMがアイドル状態(約600rpm)にある状態を示す。構成及び動作状態によっては、第1の電気機械EM1は、前記ブーストモードで、要求された出力に対して20〜40%だけ寄与すればよい。ここでも同様に、第1のクラッチKVEが開かれている。
【0026】
内燃機関VMの回転速度がアイドル回転速度未満に低下する場合、例えば車両が停止状態になるとき、第1の電気機械EM1は、発電機動作から原動機動作に切り換わるべきである。
【0027】
図1及び図2の例示的実施形態によれば、内燃機関VMが、通常動作の下限での回転速度900rpmであり、且つ第1の電気機械EM1が停止している場合、少なくとも1つの補助集合装置AGを駆動するために生じる回転速度は、1200rpmである(直線5)。
【0028】
直線3によって例示される少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の前記回転速度よりも上では、第1のクラッチKVEを閉じることができ、それにより、独立した発電機又はブースト動作を可能にする。
【0029】
前記回転速度よりも下では、少なくとも1つの補助集合装置AGの出力要求の際に、第1のクラッチKVEが開かれ、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の回転速度は、前記回転速度が1200rpm未満に低下しないように第1の電気機械EM1によって制御される。したがって、補助集合装置に関する回転速度範囲は、下方向で制限される。
【0030】
少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の前記連続可変制御によって、例えば直線4によって図示されるように、同様に、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の最大回転速度を4500rpmの回転速度に制限することができる。ここでは、第1の電気機械EM1が、発電機として動作され、電気機械EM1の出力は、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構のトルク要求に依存する。前記制限された制御性は、自動車の動力伝達装置にあるさらなる電気機械によって長期的に補償することができる。
【0031】
さらに、このようにすると、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の回転速度を要求に応じて制御することができる。
【0032】
少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構を、内燃機関VMによってだけでなく、第1の電気機械EM1によっても駆動させることができることにより、アイドル状態にあるときでさえ全ての補助集合装置の機能を保証することができるように内燃機関VMが設計される必要はもはやない。
【0033】
図3の表は、図1及び2による例示的実施形態に従う、本発明による補助集合装置の駆動装置に関する4つの例示構成を示し、内燃機関VMのアイドル回転速度は600rpmであり、内燃機関VMの最大回転速度は6000rpmであり、少なくとも1つの補助集合装置AGの最大機械的出力要求は6kWである。
【0034】
表の列1による基本構成では、
−第1のリングギアH1の歯と太陽歯車Sの歯との比が、3.0であり、
−内燃機関VMの通常動作範囲の下限が、900rpmであり、
−少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の動作範囲の得られる下限が、1200rpmであり、
−少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の動作範囲の上限が、6000rpmであり、
−ここから得られる、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の上限nA_hiと下限nA_loとの比が、5.0であり、
−内燃機関VMがアイドル状態にあるときの電気機械EM1の(負の)回転速度が、1200rpmであり、
−内燃機関VMの始動中の電気機械EM1の回転速度が、1800rpmであり、
−電気機械EM1の最大速度が、6000rpmであり、
−内燃機関VMがアイドル状態にあるときの電気機械EM1の出力比率が、33%、すなわち2kWの機械的出力である。
【0035】
少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の回転速度範囲を縮小し、すなわち上限nA_hiと下限nA_loとの比をより一層低減し、それにより補助集合装置の効率をさらに改善するために、表の第2及び第3の列は、それぞれ、回転速度下限nA_loの増加と、回転速度上限nA_hiの減少とを伴う例示構成を示す。その結果、増加された回転速度下限nA_loが1333rpmであるとき、上限nA_hiと下限nA_loとの比が4.5であり、内燃機関VMがアイドル状態にあるときの第1の電気機械EM1の増加された出力比率は40%である。減少された回転速度上限nA_hiが4500rpmであるとき、上限nA_hiと下限nA_loとの比はさらに低く3.75となり、電気機械EM1の最大回転速度は10500rpmである。
【0036】
同様に、第1のリングギアH1の歯数と太陽歯車Sの歯数との比がより高く5.0であるとき、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の上限nA_hiと下限nA_loとの比が5.0であり、電気機械EM1の(負の)回転速度は、−2400rpmであり、電気機械EM1の出力比率は、内燃機関VMがアイドル状態にあるときに40%である。内燃機関VMの始動中の電気機械EM1の回転速度は、3000rpmである。
【0037】
少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の回転速度範囲をさらに縮小するために、
1)下限nA_loをさらに増加すること、又は
2)上限nA_hiをさらに減少すること
ができる。
【0038】
1)に関して、内燃機関VMの回転速度が、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の動作範囲の下限よりも低い場合、第1のクラッチKVEが切離し、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構が、第1の電気機械EM1によってサポートされる。ここで、内燃機関VMの通常動作範囲の下限よりも上では、第1の電気機械EM1が発電機として動作し、前記回転速度よりも下では、第1の電気機械EM1が原動機として動作するが、トルクは、少なくとも1つの補助集合装置AGの出力要求に依存し、それにより出力フローの制御が妨げられる。したがって、前記動作モードは、短い段階に関してのみ、又は自動車の動力伝達装置にある第2の電気機械と組み合わせてのみ好適である。
【0039】
2)に関して、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の回転速度上限nA_hiを制限する際、第1の電気機械EM1が、前記範囲内で発電機として動作され、少なくとも1つの補助集合装置AGの出力要求への依存により、搭載電気システム用の発電機出力の制御が妨げられることに留意すべきである。ここで、同様に、第1の電気機械EM1の最大回転速度も考慮される。
【0040】
基本的には、始動/停止機能がアイドル段階を短縮するので、下限nA_loにおいて、より余裕があることは明らかである。
【0041】
図1では、第1の電気機械EM1と、内燃機関VMと、遊星歯車機構Pの太陽歯車Sとが同軸に配列されている。しかし、同様に、第1の電気機械EM1を前記軸の外側に配置して、ベルト駆動機構、チェーン駆動機構、又は歯車駆動機構によって遊星歯車機構Pの太陽歯車Sに接続することもできる。このとき、第1の電気機械EM1の伝達比の選択によって、さらなる最適化の可能性が生み出される。
【0042】
内燃機関VMを第1の電気機械EM1に結合させることができる第1のクラッチKVEは、好ましくは、ポジティブロック設計である。遠心クラッチとしての第1のクラッチKVEの設計は、かなりのコスト上の利点をもたらす。この場合、少なくとも1つの補助集合装置AGを全動作範囲内で連続可変可能に要求に応じて駆動させることができる能力、及び補助集合装置AGの最大回転速度を制限することができる能力がなくなる。
【0043】
図4は、本発明による補助集合装置の駆動装置を示し、この補助集合装置の駆動装置は、図1による補助集合装置の駆動装置の要素と、追加として、第1のブレーキKGEとを有し、このブレーキKGEによって、遊星歯車機構Pの太陽歯車Sをハウジング部分に関して固定保持することができる。
【0044】
図5における直線6及び7によって明らかに示されるように、太陽歯車Sが第1のブレーキKGEによって固定保持され、それにより第1の電気機械EM1が固定保持されるとき、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の回転速度を、内燃機関VMの回転速度に関して増加させることができる。これは、特に、内燃機関VMの低い回転速度で有利である。前記固定制動状態では第1の電気機械EM1が電気エネルギーを発生することができないことは、例えば、自動車の動力伝達装置にある第2の電気機械によって補償することができる。
【0045】
図6は、第2のオーバーランニングクラッチFVGを有する本発明による補助集合装置の駆動装置を示し、このオーバーランニングクラッチFVGによって、遊星歯車キャリアPTは、ハウジング部分に関して一回転方向にのみ回転することができる。それにより、内燃機関VMが停止状態にあるときでさえ、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動装置を第1の電気機械EM1によって駆動させることができる。ここで、第2のオーバーランニングクラッチFVGは、図7の直線8によって例示されるように、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構のトルクをサポートする。
【0046】
これは、純粋に電気的に駆動させることができる車両、すなわちいわゆる完全ハイブリッド車で特に有利であり、なぜなら、このとき、例えば、車両が純粋に電力の下で走行している状態でパワーステアリングシステムのパワーステアリングポンプを駆動させる必要があるからである。ここで、例えば空調システム及びパワーステアリングシステムなどの補助集合装置は、例えばパワーステアリングポンプ出力が増加される期間中に空調圧縮機の出力が減少されるように動作される。このようにすると、補助集合装置に必要とされる全出力を制限することができる。
【0047】
また、第2のオーバーランニングクラッチFVGは、例えば利用可能な設置空間に関して好適である場合には、内燃機関VMの駆動出力シャフト(クランクシャフト)に沿った何らかの他の点に配置されてもよい。
【0048】
また、第2のオーバーランニングクラッチFVGによる遊星歯車キャリアPTのサポートのさらなる利点が、純粋に電気的に駆動される車両で提供される。
【0049】
図7で直線8によって示されるような動作状態から、すなわち少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構が第1の電気機械EM1によって駆動される状態から始めて、内燃機関VMを始動すべき場合、これは、図2の直線1によって示されるように可能である。
【0050】
しかし、このとき、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構が、始動プロセス中に停止している必要がある。例えばパワーステアリングシステムに関してここから生じ得る問題は、パワーステアリングシステム用の蓄圧器によって補償することができる。これは、同様に、図1に従う本発明による補助集合装置の駆動装置にも当てはまる。
【0051】
図7の直線8によって示されるような動作状態から始めて、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構が駆動している状態で内燃機関VMを始動させることが有利となる。
【0052】
これに関する1つの解決策は、第1のクラッチKVEを閉じ、それにより、図7の直線9によって示されるように内燃機関VMを始動することである。しかし、このとき、図2の直線1の場合と同様に、始動中に伝達比が存在しない。さらに、第1のクラッチKVEを閉じることで、運転の快適さに関する制限をもたらすことがあり、高い負荷により、動作面での信頼性も重要となることがある。
【0053】
図8は、2つの遊星歯車セットPR1、PR2と、2つのリングギアH1、H2とを有する拡張された遊星歯車機構Pを有する本発明による補助集合装置の駆動装置を示し、第2のリングギアH2は、第2のブレーキBSによってハウジング部分に関して固定保持することができる。
【0054】
2つの遊星歯車セットPR1、PR2の遊星歯車は、各場合に、それらの軸で遊星歯車キャリアPT内に取り付けられる。第1の遊星歯車セットPR1の遊星歯車は、太陽歯車S及び第1のリングギアH1、並びに第2の遊星歯車セットPR2の遊星歯車と噛合する。また、第2の遊星歯車セットPR2の遊星歯車は、第2のリングギアH2と噛合する。
【0055】
図6による例示的実施形態に対応する要素は、同一の参照符号を付されている。配置及び動作モードに関して、図6の記載を参照する。
【0056】
図9の直線8は、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構の回転速度に関して、図7の直線8と同じ内燃機関VM及び第1の電気機械EM1の状態を表す。したがって、ここでは、内燃機関VMが停止状態にあり、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動装置が第1の電気機械EM1によって駆動される。ここで、少なくとも1つの補助集合装置AGの駆動機構を停止させる必要なく内燃機関VMを始動させるために、第2のリングギアH2を固定保持する第2のブレーキBSを始動クラッチとして使用することができる。すなわち、直線8による状態から始めて、第2のブレーキBSが閉じられ、その結果、回転速度線10が点BSを通過する。したがって、第2のリングギアH2が停止状態になる。これは、第1のクラッチKVEによる第1の電気機械EM1への内燃機関VMの直接結合とは対照的に、始動伝達比を生み出す。前記内燃機関の始動は、低い振動によって特徴付けられる。
【0057】
図10は、図6による補助集合装置の駆動装置の要素を有する本発明による補助集合装置の駆動装置を示し、遊星歯車キャリアPT、及びしたがって内燃機関VMの駆動出力シャフトを、第2のクラッチKVMと、好ましくはねじれ振動減衰器とによって、駆動トランスミッションGのトランスミッション入力シャフトGEに接続することができる。
【0058】
駆動トランスミッションGは、駆動出力側で車軸歯車機構に接続され、それにより自動車の車輪を駆動させる。駆動トランスミッションGとして、好ましくは変速トランスミッションが利用される。しかし、連続可変トランスミッションを駆動トランスミッションGとすることもできる。
【0059】
また、第2の電気機械EM2が、トランスミッション入力シャフトGEに動力伝達可能に接続され、この第2の電気機械EM2は、発電機としても原動機としても動作させることができる。例えば、第2のクラッチKVMが開かれる場合、車両は、第2の電気機械EM2のみによって駆動させることができる。第2のクラッチKVMが開かれると、駆動トルクを、内燃機関VMから、及び/又は第1の電気機械EM1から、及び/又は第2の電気機械EM2から与えることができる。この場合、1つ又は両方の電気機械EM1、EM2を発電機として動作させることもできる。同様に、第2のクラッチKVMが閉じられると、第2の電気機械EM2が、内燃機械VMを始動させることができる。
【0060】
図6による補助集合装置の駆動装置の要素と組み合わせるのではなく、第2のクラッチKVMの駆動出力側に配置される要素を、図1、4、又は8による補助集合装置の駆動装置の要素と組み合わせることもできる。
【0061】
図11は、図1による補助集合装置の駆動装置の要素を有する本発明による補助集合装置の駆動装置を例示し、遊星歯車キャリアPT、及びしたがって内燃機関VMの駆動出力シャフトを、第2のクラッチKVMによって、動力伝達装置の遊星歯車機構TPの第3のリングギアTHに接続することができる。また、遊星歯車キャリアPTは、動力伝達装置の遊星歯車機構TPの何らかの他の要素に接続することもできるが、これは、伝達比条件があまり有利でなくなる。
【0062】
第3のリングギアTHに接続された第3のオーバーランニングクラッチFV2によって、ハウジング部分に対する第3のリングギアTHの回転は、一方向でのみ可能になる。
【0063】
第2の電気機械EM2は、動力伝達装置の遊星歯車機構TPの太陽歯車TSに接続される。動力伝達装置の遊星歯車機構TPの遊星歯車キャリアは、駆動トランスミッションGのトランスミッション入力シャフトGEに接続される。
【0064】
さらに、遊星歯車キャリアTPT、及びしたがってトランスミッション入力シャフトGEは、第3のクラッチKEGによって、太陽歯車TS、及びしたがって第2の電気機械EM2に直接結合させることができる。
【0065】
したがって、第3のクラッチKEGが開かれ、且つ第2のクラッチKVMが開かれるとき、第2の電気機械EM2によって、動力伝達装置の遊星歯車機構TPを介して伝達比を用いて、自動車を純粋に電気的に駆動させることができる。この場合、少なくとも1つの補助集合装置AGを、第1の電気機械EM1又は内燃機関VMによって駆動させることができる。
【0066】
同様に、第3のクラッチKEGが開かれ、第2のクラッチKVMが閉じられた状態では、自動車を連続可変伝達比で駆動させることができる。このとき、トランスミッション入力シャフトGEの回転速度を、第2の電気機械EM2及び内燃機関VMの回転速度によって制御することができる。前記モードでは、ギアニュートラル機能が同様に可能であり、その際、内燃機関VM及び第2の電気機械EM2の回転速度は、トランスミッション入力シャフトGEの回転速度がゼロであり、したがって自動車が停止状態になるように設定される。
【0067】
第3のクラッチKEGが閉じられ、且つ第2のクラッチKVMが開かれるとき、第2の電気機械EM2によって伝達比なしで自動車を純粋に電気的に駆動することができる。
【0068】
第3のクラッチKEGが閉じられ、且つ第2のクラッチKVMが閉じられるとき、トランスミッション入力シャフトGEと、内燃機関VMと、第2の電気機械EM2とが同じ回転速度を有し、内燃機関VM及び/又は第2の電気機械EM2によって自動車を駆動させることができる。
【0069】
また、上述した全ての駆動モードにおいて、1つ又は両方の電気機械EM1、EM2を発電機として動作させることもできる。
【0070】
また、図1による補助集合装置の駆動装置の要素と組み合わせるのではなく、第2のクラッチKVMの駆動出力側に配置される要素を、図4、6、又は8による補助集合装置の駆動装置の要素と組み合わせることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車機構(P)を有する自動車用の補助集合装置の駆動装置であって、
前記遊星歯車機構(P)の第1の要素(S)が、第1の電気機械(EM1)に動力伝達可能に接続され、第2の要素(PT)が、内燃機関(VM)に動力伝達可能に接続され、第3の要素(H1)が、少なくとも1つの補助集合装置(AG)に動力伝達可能に接続される補助集合装置の駆動装置であって、
前記内燃機関(VM)の動力を前記第1の電気機械(EM1)の動力と結合させることができる第1のクラッチ(KVE)と、
前記遊星歯車機構(P)の前記第3の要素(H1)が一回転方向にのみ回転することができるようにする第1のオーバーランニングクラッチ(FAG)と、を備えることを特徴とする補助集合装置の駆動装置。
【請求項2】
前記第1の要素(S)が、前記遊星歯車機構(P)の太陽歯車であり、前記第2の要素(PT)が、遊星歯車キャリアであり、且つ、前記第3の要素(H1)が、第1のリングギアであることを特徴とする請求項1に記載の補助集合装置の駆動装置。
【請求項3】
前記遊星歯車機構(P)の前記第1の要素(S)をハウジング部分に固定保持することができる第1のブレーキ(KGE)を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の補助集合装置の駆動装置。
【請求項4】
前記遊星歯車機構(P)の前記第2の要素(PT)が一回転方向にのみ回転することができるようにする第2のオーバーランニングクラッチ(FVG)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の補助集合装置の駆動装置。
【請求項5】
前記遊星歯車機構が、2つの遊星歯車セット(PR1、PR2)を有し、さらに第4の要素(H2)も有し、前記第4の要素を、第2のブレーキ(BS)によってハウジング部分に固定保持することができ、前記第1の遊星歯車セット(PR1)が、前記遊星歯車機構(P)の前記第3の要素(H1)と噛合し、前記第2の遊星歯車セット(PR2)が、前記第4の要素(H2)と噛合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の補助集合装置の駆動装置。
【請求項6】
前記第1の遊星歯車セット(PR1)が前記第1の要素(S)と噛合し、前記第2の遊星歯車セット(PR2)が前記第1の遊星歯車セット(PR1)と噛合するように、前記第1及び前記第2の遊星歯車セット(PR1、PR2)がそれぞれ配置されることを特徴とする請求項5に記載の補助集合装置の駆動装置。
【請求項7】
前記第4の要素(H2)が、第2のリングギアであることを特徴とする請求項5又は6に記載の補助集合装置の駆動装置。
【請求項8】
前記遊星歯車機構(P)の前記第2の要素(PT)を、第2のクラッチ(KVM)によって、駆動トランスミッション(G)のトランスミッション入力シャフト(GE)に接続することができ、第2の電気機械(EM2)が、前記トランスミッション入力シャフト(GE)に動力伝達可能に接続されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の補助集合装置の駆動装置。
【請求項9】
前記遊星歯車機構(P)の前記第2の要素(PT)を、第2のクラッチ(KVM)により、動力伝達装置の遊星歯車機構(TP)の要素(TH)に接続することができ、前記動力伝達装置の遊星歯車機構(TP)の前記要素(TH)が、第3のオーバーランニングクラッチ(FV2)により、一回転方向にのみ回転することができることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の補助集合装置の駆動装置。
【請求項10】
前記第1のクラッチ(KVE)が、遠心クラッチであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の補助集合装置の駆動装置。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−500205(P2010−500205A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523188(P2009−523188)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006924
【国際公開番号】WO2008/017436
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】