説明

自動車用ウェザーストリップ

【課題】比較的比重の低い材料を採用することで軽量化を図りつつも、シール性および遮音性を向上させることのできる自動車用ウェザーストリップを提供する。
【解決手段】中空状のメインシールリップ12を低比重材料からなる外層12aと、その低比重材料よりも比重の大きい高比重材料からなる内層12bとの二層構造のものとして形成し、メインシールリップ12のうち取付基部10から立ち上がる室内側および室外側のそれぞれの周壁部14,15について、内層12bの肉厚T1を両周壁部14,15に跨る円弧状頂壁部16における内層12bの肉厚T2よりも大きく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアの周縁部に装着される自動車用ウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自動車用ウェザーストリップの材料として発泡体が用いられているが、近年、主に軽量化のためにより発泡率が高く比重の低い発泡体の使用が検討されている。しかしながら、このような材料は比較的軟質であるため、当該材料を自動車用ウェザーストリップに単に適用すると、遮音性が低下する上に必要なリップ反力を確保できなくなるという問題があった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載のように、ウェザーストリップにおける中空シール部のうち、室内側の付根部と相手側部材に対する弾接開始点との間の部分であって、且つ相手側部材に弾接しない部分を他の部分よりも発泡率が低く硬質な発泡体によって構成したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−236163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、中空シール部のうち硬質な発泡体で形成された部分と他の部分との境界が外部に露出し、その境界で色艶が変化することになるため見栄えの面で好ましくない。その上、中空シール部のうち硬質な発泡体で形成された部分と他の部分とで硬軟の程度が著しく相違することになるため、上記中空シール部が相手側部材との当接をもって撓み変形したときに、当該中空シール部のうち硬質な発泡体で形成された部分と他の部分との境界部分で皺が発生し、この皺によってシール性および遮音性が損なわれてしまう虞があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、主に、比較的比重の低い材料を採用することで軽量化を図りつつも、シール性および遮音性を向上させることのできる自動車用ウェザーストリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、自動車用ドアの周縁部に取り付けられる取付基部と、その取付基部から一体に突出形成された中空状のシールリップと、を備え、ドア閉時に上記シールリップを相手側となるシール面に圧接させることによりシールするようにした自動車用ウェザーストリップであって、上記シールリップは、相手側となるシール面側に向かって立ち上がる室内側および室外側のそれぞれの周壁部とそれら両者に跨る円弧状頂壁部を有し、且つそれら両周壁部および円弧状頂壁部が、低比重材料からなる外層と、その低比重材料よりも比重の大きい高比重材料からなる内層との二層構造のものとなっていて、さらに、上記シールリップのうち室内側および室外側のそれぞれの周壁部について、内層の肉厚を他の部位における内層の肉厚よりも大きく設定してあることを特徴としている。
【0008】
具体的には、例えば請求項2に記載の発明のように、上記シールリップは、その断面形状が略長円形をなすとともにその長径方向を突出方向として上記取付基部から一体に突出形成され、且つドア閉時に相手側となるシール面との圧接をもって当該シールリップの根元部から短径方向に撓み変形するようになっていて、ドア閉時に上記円弧状周壁部が相手側となるシール面に圧接する一方で上記両周壁部は相手側となるシール面に圧接しないように設定し、さらに室外側の周壁部はドア閉時に相手側となるシール面とほぼ平行となるように設定するとよい。
【0009】
つまり、少なくとも請求項1に記載の発明では、室内側および室外側のそれぞれの周壁部において、高比重材料からなる内層の肉厚を他の部位における肉厚よりも大きくすることで遮音性および剛性を高めている一方で、他の部位においては高比重材料からなる内層の肉厚を比較的小さくすることで柔軟性または変形容易性を具備させてある。そして、ドア閉時には、上記両周壁部がその撓み変形に基づく復元力によって上記シールリップのうち内層の肉厚が小さい部分を相手側となるシール面に押し付けるように作用する一方で、上記シールリップのうち内層の肉厚が小さい部分は、上記シール面に倣って柔軟に変形しつつ、比較的軟質な外層をもって上記シール面に対して密に圧接することになる。なお、上記シールリップの外面はその全域が低比重材料をもって構成されているため、外観品質が損なわれることはない。
【0010】
また、外層および内層の材質としてより具体的には、硬軟の程度と重量とのバランスを考慮すると、請求項3に記載の発明のように、外層を形成している低比重材料は比重が0.2〜0.5の発泡体であり、内層を形成している高比重材料は比重が0.65〜0.9の発泡体であることが好ましい。
【0011】
その上で、上記シールリップのうち室内側および室外側のそれぞれの周壁部における内層の肉厚としては、請求項4に記載の発明のように、必要なリップ反力を確保する上で総肉厚の50%以上に設定してあることが望ましく、また、高比重材料が外部に露出することを防止する上で総肉厚の80%以下に設定してあることが望ましい。
【0012】
さらに、上記シールリップのうち室内側および室外側のそれぞれの周壁部を除いた他の部位における内層の肉厚としては、その柔軟性または変形容易性の程度を考慮すると、請求項5に記載の発明のように総肉厚の20〜40%に設定してあることが望ましい。
【0013】
一方、内層の肉厚が変化する部位において、ドア閉時における折れ曲がりや皺の発生を防止する上では、請求項6に記載の発明のように、一方の肉厚から他方の肉厚に漸次変化する肉厚徐変部を形成することが望ましく、また、請求項7に記載の発明のように、内層の肉厚が大きい部分では、内層の肉厚が小さい部分に対する肉厚の比を3以下に設定し、肉厚の変化の度合いを比較的小さくしてあることがより望ましい。
【0014】
他方、特に遮音性を重視する場合には、例えば請求項8に記載の発明のように、上記シールリップのうち室外側の周壁部からそれに連続する円弧状頂壁部の少なくとも一部にまで内層の肉厚が大きい部分を形成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較的硬質であって且つ遮音性に優れた内層の肉厚を上記両周壁部において他の部分よりも大きく設定することにより、低比重材料の使用によって軽量化を図りつつも、シール性および遮音性を向上させることができるようになる。
【0016】
特に、請求項6,7に記載の発明によれば、内層の肉厚が変化する部位において、ドア閉時における折れ曲がりや皺の発生をより効果的に防止してシール性および遮音性をさらに向上させることができるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図であって、本発明に係る自動車用ウェザーストリップが装着された自動車の側面図。
【図2】図1のA−A断面図であって、ドア開状態を示す図。
【図3】図1のA−A断面図であって、ドア閉状態を示す図。
【図4】本発明の第1の実施の形態における撓み荷重特性を比較例1〜3と比較したグラフ。
【図5】比較例1〜3の説明図であって、図1のA−A断面に相当する断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態における遮音特性を比較例1と比較したグラフ。
【図7】本発明の第2の実施の形態を示す図であって、図1のA−A断面に相当するドア開状態の断面図。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示す図であって、図1のA−A断面に相当するドア閉状態の断面図。
【図9】本発明の第3の実施の形態を示す図であって、図1のA−A断面に相当するドア開状態の断面図。
【図10】本発明の第3の実施の形態を示す図であって、図1のA−A断面に相当するドア閉状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜3は本発明の好ましい第1の実施の形態を示す図であって、図1は本発明に係る自動車用ウェザーストリップが装着された自動車の側面図、図2は図1におけるA−A断面図であって、ドア開状態を示す図、図3は図1におけるA−A断面図であって、ドア閉状態を示す図である。なお、図2,3における矢印Cは、ドア閉じ方向を示している。
【0019】
図1,2に示すように、自動車用ドアであるフロントドア1は、図示外のウインドウレギュレータを収容するドア本体2と、側面視略アーチ状のドアサッシュ3とによって構成されており、それらドア本体2およびドアサッシュ3を含むフロントドア1の周縁部には閉ループ状のウェザーストリップ6が装着されている。そして、このウェザーストリップ6によってフロントドア1と車体4側のドア開口縁部5との間をシールするようになっている。
【0020】
ドアサッシュ3のうちドア閉時に車体4側のドア開口縁部5と近接対峙することになる外周面には、ウェザーストリップ6のうち後述するサブシール部7を嵌合保持するための溝状をなす第1リテーナ部3aと、ドアサッシュ3の幅方向で第1リテーナ部3aの車室内側に形成され、ウェザーストリップ6のうち後述するメインシール部8を嵌合保持するための溝状をなす第2リテーナ部3bと、が形成されている。両リテーナ部3a,3bは上下に段違いの関係となるように設定されていて、ドアサッシュ3のうち両リテーナ部3a,3b同士の間にはドアサッシュ3の幅方向で車室外側に向かって上方に傾斜した傾斜面3cが形成されている。
【0021】
一方、車体4側のドア開口縁部5には、ウェザーストリップ6のうち後述するサブシール部7がドア閉時に弾接することになる第1シール面5aと、その第1シール面5aのうち車室内側の縁部からドアサッシュ3側に曲折していて、ウェザーストリップ6のうち後述するメインシール部8がドア閉時に弾接することになる段状の第2シール面5bと、が形成されている。
【0022】
他方、ウェザーストリップ6は、図2に示す断面形状を基本として長手方向で略均一な断面形状に押出成形されたものであって、TPOに代表されるような樹脂材料の発泡体またはEPDMに代表されるようなゴム材料の発泡体によって形成されている。また、このウェザーストリップ6は、上述したようにドアサッシュ3側の第2リテーナ部3bに保持されたメインシール部8と、同じく上述したようにドアサッシュ3側の第1リテーナ部3aに保持されたサブシール部7と、を備えており、それら両シール部7,8は、ドアサッシュ3側の傾斜面3cに沿って延びているブリッジ部9によって一体に連結されている。
【0023】
両シール部7,8は、それぞれ対応するリテーナ部3a,3bに嵌合する取付基部10,11を中心として構成されている点で共通しており、メインシール部8は、その取付基部10から一体に突出形成された中空状のメインシールリップ12を有している一方、サブシール部7は、その取付基部11から車室外側へ向けて斜めに突出形成された舌片状のサブシールリップ13を有している。なお、ブリッジ部9のうちメインシール部8側の付根部の裏面には、ドアサッシュ3の傾斜面3cに圧接するシールビード9aが形成されている。
【0024】
メインシールリップ12は、取付基部10の一部を含む断面形状が長円形もしくは楕円形を呈しているとともに、その長径方向を突出方向として車体4側の第2シール面5bに向かって突出形成されたものであって、取付基部10から第2シール面5bに向かって立ち上がる車室外側および車室内側のそれぞれの周壁部14,15と、それら両周壁部14,15に跨る円弧状頂壁部16と、を備えている。
【0025】
また、このメインシールリップ12は、当該メインシールリップ12の全体として、発泡率を比較的高く設定した低比重材料からなる外層12aと、その低比重材料よりも発泡率を低くすることで上記低比重材料よりも比重を大きく設定した高比重材料からなる内層12bとの二層構造のものとして形成されている。つまり、メインシールリップ12の外面が外層12aをもって形成されている一方、メインシールリップ12の内面が内層12bをもって形成されており、当然のことながら内層12bは外部に露出しないようになっている。なお、メインシールリップ12の内層12bおよび外層12aはいわゆる二重押出成形法をもってウェザーストリップ6の他の部位と同時に押出成形されたものであって、ウェザーストリップ6のうちメインシールリップ12を除く部位、すなわちメインシール部8における取付基部10のほかサブシール部7およびブリッジ部9は、メインシールリップ12の外層12aと同様の低比重材料をもって形成されている。
【0026】
より具体的には、硬軟の程度と重量とのバランスを考慮し、比重が0.2〜0.5の比較的発泡率の高い発泡体を低比重材料として外層12aを形成している一方、比重が0.65〜0.9の比較的発泡率の低い発泡体を高比重材料として内層12bを形成している。
【0027】
メインシールリップ12における内層12bおよび外層12aを含む総肉厚Tは、当該メインシールリップ12の全体にわたって略均一に設定されており、その総肉厚Tはドア閉時におけるメインシールリップ12の撓み量を考慮して2mmに設定してある。
【0028】
また、両周壁部14,15における内層12bの肉厚T1は、円弧状頂壁部16における内層12bの肉厚T2よりも大きく設定してある。具体的には、両周壁部14,15における内層12bの肉厚T1は、総肉厚Tの50〜80%の範囲、すなわち1〜1.6mmの範囲に設定してある。ここで、両周壁部14,15における内層12bの肉厚T1をこのように設定しているのは、両周壁部14,15における所定の剛性および遮音性を確保するためにはその肉厚T1が総肉厚Tの50%以上(1mm以上)であることが望ましく、また、内層12bの外部への露出を防止する上では内層12bの肉厚T1が総肉厚Tの80%以下(1.6mm以下)であることが望ましいからである。一方で、円弧状頂壁部16における内層12bの肉厚T2は、その円弧状頂壁部16における柔軟性または変形容易性を考慮し、総肉厚の20〜40%の範囲、すなわち0.4〜0.8mmの範囲に設定してある。
【0029】
その上で、両周壁部14,15における内層12bの肉厚T1は、円弧状頂壁部16における内層12bの肉厚T2に対する比が3以下となるように設定することが望ましい。これは、肉厚T1の肉厚T2に対する比が3を超えると、両周壁部14,15と円弧状頂壁部16とで硬軟の程度が著しく相違することになり、メインシールリップ12の撓み変形時に両者の境界部分で折れ曲がりや皺が発生し易くなるためである。
【0030】
さらに、メインシールリップ12のうち内層12bの肉厚が変化する部分、すなわち両周壁部14,15と円弧状頂壁部16との境界部分には、両周壁部14,15側から円弧状頂壁部16側に向かって内層12bの肉厚が漸次薄肉となる肉厚徐変部17,18がそれぞれ形成されている。
【0031】
したがって、以上のように構成したウェザーストリップ6はドア閉時にフロントドア1の周縁部と車体4側のドア開口縁部5との間に挟み込まれ、図3に示すように、当該ウェザーストリップ6のうちサブシールリップ13が第1シール面5aに圧接しつつその根元部から撓み変形する一方、ウェザーストリップ6のうちメインシールリップ12が第2シール面5bに圧接しつつその根元部から短径方向に撓み変形することになる。
【0032】
詳しくは、ドア開状態からフロントドア1がドア閉じ方向Cに変位すると、まずメインシールリップ12の円弧状頂壁部16のうち車室内側の半部の外面が第2シール面5bに当接し、フロントドア1のさらなる閉止動作により、両周壁部14,15がドアサッシュ3の幅方向で車室外側に撓み変形する一方、円弧状頂壁部16が第2シール面5aに倣って柔軟に撓み変形することになる。そして、ドア閉時においては、両周壁部14,15のこのような撓み変形に基づく復元力により、円弧状頂壁部16のうち車室内側の半部が第2シール面5bに押し付けられることになる。
【0033】
また、このドア閉時においては、両周壁部14,15が第2シール面5bに圧接することはなく、特に車室外側の周壁部15は第2シール面5bと略平行な姿勢をとることになる。さらに、円弧状頂壁部16のうち車室外側の半部は、当該円弧状頂壁部16のうち第2シール面5bに圧接する車室内側の半部と車室外側の周壁部15との間において、第2シール面5bに対して略面直角な姿勢をとることになる。なお、ドア閉時において、撓み変形した車室外側の周壁部15がブリッジ部9に当接することはなく、また、両周壁部14,15と円弧状頂壁部16との境界部分に折れ曲がりや皺が発生することもない。
【0034】
図4は、ウェザーストリップ6におけるリップ反力に相当する撓み荷重を測定した結果を示すグラフであって、後述する比較例1〜3のものと本実施の形態とを比較したものである。なお、図4における横軸は、ドア閉じ方向Cにおけるフロントドア1の建付けの誤差を示すものであって、ウェザーストリップ6の撓み量に相当している。つまり、フロントドア1の建付けが誤差なくなされて図3に示す幅寸法dが所定の基準値となる状態を0とし、幅寸法dが狭まる方向(ドア閉じ方向C)におけるフロントドア1の建付けの誤差をプラス、幅方向dが広がる方向におけるフロントドア1の建付けの誤差をマイナスとして示してある。
【0035】
比較例1〜3におけるウェザーストリップ19は、図5に示すように、サブシール部20とメインシール部21およびブリッジ部22を有している点で本実施の形態と共通している一方で、メインシールリップ23を二層構造とせずに単一の発泡体をもって構成した点で本実施の形態と異なっているものであって、そのうち比較例1は、メインシールリップ23の肉厚T3を本実施の形態と同様の2mmに設定し、且つウェザーストリップ19の全体を比重が0.6の発泡体をもって形成したものである。また、比較例2は、メインシールリップ23の肉厚T3を本実施の形態と同様の2mmに設定し、且つ軽量化のために比重が0.4の発泡体をもってウェザーストリップ19の全体を形成したものである。さらに、比較例3は、ウェザーストリップ19の全体を比重が0.4の発泡体をもって形成し、且つメインシールリップ23の肉厚T3を本実施の形態よりも厚肉な2.6mmに設定したものである。
【0036】
図4に示すように、比較例1では、良好な撓み荷重特性を示すものの、本実施の形態におけるウェザーストリップ6の大部分を構成する低比重材料よりも比重の大きい材料をもって形成されているため、軽量化の観点から好ましくない。
【0037】
また、比較例2では、本実施の形態におけるウェザーストリップ6の大部分を構成する低比重材料と略同等の比重の発泡体をもって形成されているため、軽量化の面では好ましいものの、そのウェザーストリップを構成する材料が比較的軟質であるため、比較例1のものと比較して撓み荷重が著しく低くなり、シール性を確保する上で好ましくない。
【0038】
さらに、比較例3では、比較例2のものよりもメインシールリップ23の肉厚T3を厚肉に設定することにより、比較例2よりも撓み荷重を増大させることはできるものの、特に建付けの誤差が2mm以上になると、両周壁部24,25のうち車外側の周壁部25の内面が円弧状頂壁部26の内面と当接して撓み荷重が比較例1のものよりも著しく大きくなることから、ドア閉じ性の面で好ましくない。
【0039】
これらの各比較例に対し、本実施の形態におけるウェザーストリップ6では、当該ウェザーストリップ6の大部分を比較例2のものと略同等の低比重材料によって構成することで軽量化を図りつつも、当該ウェザーストリップ6の撓み荷重に特に大きく影響することになる両周壁部14,15における内層12bの肉厚T1を比較的大きく設定することで、比較例1のものと略同等の撓み荷重特性を得られることが確認できた。
【0040】
また、本実施の形態におけるウェザーストリップ6の遮音効果は、比較例1と比較した図6に示す実験結果をみると、両周壁部14,15における内層12bの肉厚T1を比較的大きく設定したことにより、比較例1と略同等の高い遮音性が得られることが明らかである。
【0041】
したがって、本実施の形態によれば、比較的硬質であって且つ遮音性に優れた内層12bの肉厚T1を、リップ反力および遮音性に特に大きく影響することになる両周壁部14,15において円弧状周壁部16における内層12bの肉厚T2よりも大きく設定することにより、低比重材料の使用によって軽量化を図りつつもシール性および遮音性を向上させることができる。
【0042】
また、円弧状頂壁部16における内層12bの肉厚T2を比較的小さく設定することにより、ドア閉時に当該円弧状頂壁部16が相手側となる第2シール面5bに倣って柔軟に変形するようになるばかりでなく、比較的軟質な外層12aが第2シール面5bに密に圧接することになるため、シール性をより効果的に向上させることができるメリットがある。
【0043】
さらに、両周壁部14,15における内層12bの肉厚T1を、円弧状周壁部16における内層12bの肉厚T2に対する比が3以下となるように設定するとともに、両周壁部14,15と円弧状周壁部16との境界部分に肉厚徐変部17,18を設定することにより、硬軟の程度が変化することになる両周壁部14,15と円弧状周壁部16との境界部分において、ドア閉時に折れ曲がりや皺が発生することを効果的に防止してシール性および遮音性をさらに向上させることができるメリットがある。
【0044】
なお、本実施の形態では、ゴム材料または樹脂材料の発泡体を低比重材料としてメインシールリップ12の内層12bを形成しているが、樹脂材料またはゴム材料からなる非発泡なソリッド体によってメインシールリップ12の内層12bを形成することも可能である。
【0045】
図7,8は本発明の第2の実施の形態を示す図である。そのうち図7は図1におけるA−A断面に相当する断面図であって、ドア開状態を示す図、図8は図7に示す断面のドア閉状態を示す断面図である。
【0046】
図7,8に示す第2の実施の形態のウェザーストリップ27は、メインシール部28におけるメインシールリップ29が低比重材料からなる外層29aと高比重材料からなる内層29bとの二層構造のものとなっている点で上述した第1の実施の形態と共通している一方、内層29bの肉厚が大きい部分を、両周壁部30,31のうち車室外側の周壁部31からそれに連続する円弧状頂壁部32の一部にまで延長して形成している点で上述した第1の実施の形態と異なっている。具体的には、円弧状頂壁部32のうちドア閉時に第2シール面5bに当接しない車室外側の半部において、内層29bの肉厚を両周壁部30,31と同様の肉厚に設定している。また、この第2の実施の形態では、ドア閉時におけるウェザーストリップ27の撓み荷重が過大となるのを防止すべく、車室外側の周壁部31と円弧状頂壁部32との境界部分に、その曲率を上述した第1の実施の形態のものよりも大きく設定した屈曲部33を形成してある。なお、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
【0047】
したがって、この第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と略同様の効果が得られるのは勿論のこと、内層29bの肉厚が大きい部分を円弧状頂壁部32の一部にまで延長して形成することにより、上述した第1の実施の形態と比較して遮音性をより向上させることができるメリットがある。
【0048】
図9.10は本発明の第3の実施の形態を示す図である。そのうち図9は図1におけるA−A断面に相当する断面図であって、ドア開状態を示す図、図10は図9に示す断面のドア閉状態を示す断面図である。
【0049】
図9に示すように、第3の実施の形態におけるウェザーストリップ34は、ドアサッシュ45のリテーナ部45aに取り付けられる取付基部35と、車体46側のドア開口縁部47のうち第1シール面47aに向かって取付基部35から突設された舌片状のサブシールリップ36と、車体46側のドア開口縁部47のうち第2シール面47bに向かって取付基部35から突設された中空状のメインシールリップ37と、を備えている。
【0050】
メインシールリップ37は、取付基部35から車室内側に向けて延出し、その先端がドアサッシュ45に着座する底壁部38と、その底壁部38の先端からドア開口縁部47の第2シール面47b側に向けて立ち上がる車室内側の周壁部39と、取付基部35からドア開口縁部47の第2シール面47b側に向けて立ち上がる車室外側の周壁部40と,車室内外側のそれぞれの周壁部39,40に跨る円弧状頂壁部41と、を備えていて、全体として断面略D字状を呈している。
【0051】
また、メインシールリップ37の両周壁部39,40および円弧状頂壁部41が、低比重材料からなる外層37aと高比重材料からなる内層37bとからなる二層構造のものとして形成され、且つウェザーストリップ34の他の部位、すなわちメインシールリップ37の底壁部38のほか取付基部35およびサブシールリップ36が、外層37aと同様の低比重材料をもって形成されていることは上述した第1の実施の形態と同様である。また、外層37aおよび内層37bの比重および肉厚も上述した第1の実施の形態と同様に設定してあり、メインシールリップ37のうち内層37bの肉厚が変化する部分には、両周壁部39,40側から円弧状頂壁部41側に向かって内層37bの肉厚が漸次薄肉となる肉厚徐変部42,43がそれぞれ形成されている。
【0052】
さらに、内層37bのうち肉厚が大きい部分を車室外側の周壁部40からそれに連続する円弧状頂壁部41の一部にまで延長して形成している点、および車室外側の周壁部40と円弧状頂壁部41との境界部分に曲率を比較的大きく設定した屈曲部44を形成してある点は上述した第2の実施の形態と同様である。
【0053】
そして、この第3の実施の形態では、図10に示すように、ドア閉時にドアサッシュ45と車体46側のドア開口縁部47との間にウェザーストリップ34が挟み込まれ、当該ウェザーストリップ34のサブシールリップ36が第1シール面47aに圧接しつつその根元部から撓み変形する一方、ウェザーストリップ34のメインシールリップ37は第2シール面47bに圧接しつつドア閉じ方向Cに押し潰されることになる。詳しくは、円弧状頂壁部41が、ドア閉時に第2シール面47bに倣って柔軟に撓み変形しつつ、両周壁部39,40の撓み変形に基づく復元力によって第2シール面47bに押し付けられることになる。したがって、本実施の形態においても上述した第2の実施の形態と略同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0054】
1…フロントドア(自動車用ドア)
5b…第2シール面
6…ウェザーストリップ
10…取付基部
12…メインシールリップ
12a…外層
12b…内層
14…室内側の周壁部
15…室外側の周壁部
16…円弧状頂壁部
17…室内側の肉厚徐変部
18…室外側の肉厚徐変部
27…ウェザーストリップ
29…メインシールリップ
29a…外層
29b…内層
30…室内側の周壁部
31…室外側の周壁部
32…円弧状頂壁部
34…ウェザーストリップ
35…取付基部
37…メインシールリップ
37a…外層
37b…内層
39…室内側の周壁部
40…室外側の周壁部
41…円弧状頂壁部
42…室内側の肉厚徐変部
43…室外側の肉厚徐変部
44…屈曲部
47b…第2シール面
T…総肉厚
T1…周壁部における内層の肉厚
T2…円弧状頂壁部における内層の肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドアの周縁部に取り付けられる取付基部と、
その取付基部から一体に突出形成された中空状のシールリップと、
を備え、
ドア閉時に上記シールリップを相手側となるシール面に圧接させることによりシールするようにした自動車用ウェザーストリップであって、
上記シールリップは、相手側となるシール面側に向かって立ち上がる室内側および室外側のそれぞれの周壁部とそれら両者に跨る円弧状頂壁部を有し、且つそれら両周壁部および円弧状頂壁部が、低比重材料からなる外層と、その低比重材料よりも比重の大きい高比重材料からなる内層との二層構造のものとなっていて、
さらに、上記シールリップのうち室内側および室外側のそれぞれの周壁部について、内層の肉厚を他の部位における内層の肉厚よりも大きく設定してあることを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【請求項2】
上記シールリップは、その断面形状が略長円形をなすとともにその長径方向を突出方向として上記取付基部から一体に突出形成され、且つドア閉時に相手側となるシール面との圧接をもって当該シールリップの根元部から短径方向に撓み変形するようになっていて、
ドア閉時に上記円弧状周壁部が相手側となるシール面に圧接する一方で上記両周壁部は相手側となるシール面に圧接しないように設定し、さらに室外側の周壁部はドア閉時に相手側となるシール面とほぼ平行となるように設定してあることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ウェザーストリップ。
【請求項3】
外層を形成している低比重材料は比重が0.2〜0.5の発泡体であり、内層を形成している高比重材料は比重が0.65〜0.9の発泡体であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用ウェザーストリップ。
【請求項4】
上記シールリップのうち室内側および室外側のそれぞれの周壁部では、内層の肉厚が総肉厚の50〜80%の範囲に設定してあることを特徴とする請求項3に記載の自動車用ウェザーストリップ。
【請求項5】
上記シールリップのうち室内側および室外側のそれぞれの周壁部を除いた他の部位では、内層の肉厚が総肉厚の20〜40%の範囲に設定してあることを特徴とする請求項3または4に記載の自動車用ウェザーストリップ。
【請求項6】
内層の肉厚が変化する部位において、一方の肉厚から他方の肉厚に漸次変化する肉厚徐変部を形成してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自動車用ウェザーストリップ。
【請求項7】
内層の肉厚が大きい部分では、内層の肉厚が小さい部分に対する肉厚の比を3以下に設定してあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自動車用ウェザーストリップ。
【請求項8】
上記シールリップのうち室外側の周壁部からそれに連続する円弧状頂壁部の少なくとも一部にまで内層の肉厚が大きい部分を形成してあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の自動車用ウェザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−11602(P2011−11602A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156456(P2009−156456)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】