説明

自動車用ガラスラン

【課題】製造が容易で、ドアガラス5の昇降時の摺動抵抗を軽減することができるガラスランを提供する。
【解決手段】自動車用ガラスランにおいて、ガラスラン10の本体は、車外側側壁20と、車内側側壁30と、底壁40とからなる断面略コ字形をなし、車外側側壁20と車内側側壁30には、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31を設ける。ガラスラン10の本体は、熱可塑性エラストマー又は合成ゴムのソリッド材で形成され、ドアガラス5と摺動する摺動面に低摺動層23、33、43をガラスラン10の車外側シールリップ21、車内側シールリップ31及び底壁40と一体的に形成するとともに、低摺動層を成形時に発泡させて、低摺動層の表面に凹凸を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内するガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、自動車のドア1のドアフレーム2の内周にドアガラス5の昇降を案内するガラスラン110が取付けられている。その従来のガラスラン110の全体を図3に示し、従来のガラスラン110がドアフレーム2の直線状部に取付けた状態の断面図を図5に示す。
【0003】
従来、ガラスラン110は、図4に示すように、ドアフレーム2のチャンネル内に取付けられて、ドアガラス5の昇降を案内するとともに、ドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。さらに、ガラスラン110は、図3に示すように、押出成形により成形された直線状部111からなるドアフレーム2の上辺部と、同じく押出成形されたフロント側縦辺部及びリヤ側縦辺部を、型成形によってドアフレーム2のコーナー部2bの形状に合わせて形成されたコーナー部112で接続している。
なお、ドア1と車体との間のシールは、ドアパネルおよびドアフレーム2の外周に取付けられたドアウエザストリップ(図示せず)および/または車体の開口部のフランジに取付けられたオープニングトリムウエザストリップ(図示せず)によりなされている。
【0004】
ガラスラン110の直線状部111の本体は、図5に示すように、車外側側壁120と、車内側側壁130と、底壁140からなる断面略コ字状をなしている。車外側側壁120の先端付近から車外側シールリップ121が本体の断面略コ字状の内側に向けて延出するように設けられている。また、車内側側壁130にもその先端付近から車内側シールリップ131が断面略コ字状の内側に向けて延出するように設けられている。
【0005】
ガラスラン110の本体の車外側側壁120、車内側側壁130と底壁140はドアフレーム2に設けられたチャンネル103内に挿入され、各壁の外面の少なくとも一部がチャンネル103の内面に圧接され、ガラスラン110を保持している。なお、図5に示すように、チャンネル103は、ドアフレーム2の先端を折り曲げて形成される場合や、別部材で形成されたチャンネル103をドアフレーム2の先端の部位に嵌め込んで形成される場合がある。
【0006】
ドアガラス5は、このガラスラン110の本体の断面略コ字状の内側を摺動するとともに、上記車外側シールリップ121と車内側シールリップ131によってドアガラス5の端部の両側面がシールされて保持されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、チャンネル103内にガラスラン110を装着したときに、チャンネル103内にガラスラン110を係止して保持するために、ガラスラン110の直線状部では、車内側側壁130と車外側側壁120にそれぞれ車内側保持リップ134と車外側保持リップ124が設けられている。
【0007】
このガラスラン110の本体の車外側側壁120、車内側側壁130と底壁140は、通常のゴムのソリッド材で形成されている。そして、車外側側壁120、車内側側壁130と底壁140のドアガラス5と摺動する面には、摺動抵抗を下げるために、それぞれ低摺動面123、133、143が設けられている。
しかしながら、この低摺動面123、133、143は、発泡体をバフがけして滑剤を含浸推進せしめたものや、シリコーンコーティングをしたものであるため、製造に手間がかかり、滑剤を長期間作用させることも充分ではなかった。
【0008】
また、ガラスランのドアガラス5との摺動面に粒子径の異なる2種類のマイクロカプセルを、接着材により固着させて低摺動面とするものがある(例えば、特許文献2参照。)。この場合には、低摺動面を接着剤でコーティングをして、固着のために接着剤を加熱をする手間がかかり、コストも上昇している。
【0009】
また、図6と図7に示すように、フランジ7に取付けられて、スライドパネル4との間をシールする装飾体210があるが、この装飾体210は、装飾部220とフランジ7へ取付ける係合部230を有するが、装飾部220の表面には、意匠面223を有する。意匠面223は、熱膨張性カプセル224が含有されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、この場合には、意匠面の表面は熱膨張性カプセル224による凹凸で、布目調の外観が得られることを目的としており、装飾部220の全面に亘り布目調が形成され、ドアガラス5との摺動性を改良するものではない。
【0010】
さらに、図8に示すように、ガラスラン310において、車外側側壁320、車内側側壁330と底壁340、車外側シールリップ321、車内側シールリップ331等を、EPDMゴムを主成分にする組成物に、マイクロカプセル311を発泡剤として混入させたものを使用して形成するものがある(例えば、特許文献4参照。)。
この場合は、ガラスラン310の全体の重量を軽量化させるために、ガラスランの本体の全体を発泡させるものであるため、ドアガラス5との摺動面の摺動抵抗を減少させるためには不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭62−253518号公報
【特許文献2】特開平9−290646号公報
【特許文献3】特開2009−126166号公報
【特許文献4】特開平6−183305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、製造が容易で、ドアガラス5の昇降時の摺動抵抗を軽減することができるガラスランを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランにおいて、
ガラスランの本体は、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略コ字形をなし、車外側側壁と車内側側壁には、それぞれ本体の断面略コ字状の本体の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、車外側シールリップと車内側シールリップによりドアガラスの端部の車外側面及び車内側面をシールし、
ガラスランの本体は、熱可塑性エラストマー又は合成ゴムのソリッド材で形成され、ドアガラスと摺動するガラスランの摺動面に低摺動層をガラスランと一体的に形成するとともに、低摺動層を成形時に発泡させて、低摺動層の表面に凹凸を設けたことを特徴とする自動車用ガラスランである。
【0014】
請求項1の本発明では、ガラスランの本体は、熱可塑性エラストマー又は合成ゴムのソリッド材で形成されるため、ガラスランの本体の剛性が大きくて、車外側シールリップと車内側シールリップによるドアガラスの保持力が大きく、車外側側壁、車内側側壁と底壁がドアフレームにも強く嵌合されることができる。
【0015】
ドアガラスと摺動するガラスランの摺動面に低摺動層をガラスランと一体的に形成するとともに、低摺動層を成形時に発泡させて、低摺動層の表面に凹凸を設けた。このため、ガラスランの本体を形成すると同時に低摺動層の形成とその発泡を行うことができ、製造が容易で、手間も少ない。低摺動層を発泡させて、その表面に凹凸を設けて摺動抵抗を減少させるため、表面が摩耗しても、その下から常に凹凸面が生じるので、低摺動層の摺動抵抗を長期間低く維持することができる。
【0016】
請求項2の本発明は、ガラスランの本体は、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はEPDMゴムのソリッド材で形成され、低摺動層は、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はEPDMゴムを基材とする自動車用ガラスランである。
【0017】
請求項2の本発明では、ガラスランの本体は、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はEPDMゴムのソリッド材で形成されているため、柔軟性と耐候性に優れた、製造コストの低いガラスランを得ることができる。
低摺動層は、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はEPDMゴムを基材とするため、ガラスランの本体及び車外側シールリップと車内側シールリップと強固に固着して、柔軟性に優れた低摺動層を得ることができる。
【0018】
請求項3の本発明は、低摺動層は、マイクロカプセルを含有した発泡体である自動車用ガラスランである。
【0019】
請求項3の本発明では、低摺動層は、マイクロカプセルを含有した発泡体であるため、化学発泡剤で発泡させた場合と比べて、発泡ガスが逃げにくく、発泡径を大きくして、表面粗度を上げることができる。また、押出機のシリンダー内で低摺動層の基材を溶融させて、かつ、マイクロカプセルを混入分散させることができ、混入作業が容易であり、押出後には、均一な発泡体を得ることができる。マイクロカプセルによる発泡のため、マイクロカプセルが膨張時には略球状に膨らみ、どの方向の変形に対しても力が偏ることがないため、均一表面状態を得ることができる。
【0020】
請求項4の本発明は、マイクロカプセルを低摺動層の基材に混入時には、15〜40μmの球体であり、膨張後に平均発泡セル径40〜120μmの球体セルを形成させるものである自動車用ガラスランである。
【0021】
請求項4の本発明では、マイクロカプセルを低摺動層の基材に混入時には、15〜40μmの球体であり、膨張後に平均発泡セル径40〜120μmの球体セルを形成させる。このため、マイクロカプセルを低摺動層の基材に混入するときは比重が低く混入することが容易であり、押出成形後には充分な発泡径を有することができる。このため、低摺動層の摩擦抵抗を減少させることができる。
マイクロカプセルによる発泡セルの直径が40μm未満では、低摺動層の表面粗度が小さくて充分な低摺動性を得ることができなく、120μmを超える場合には、発泡セルの安定性が低下する。
【0022】
請求項5の本発明は、低摺動層の表面粗さは、50〜100μmであり、低摺動層の発泡倍率は、1.1〜1.8である自動車用ガラスランである。
【0023】
請求項5の本発明では、低摺動層の表面粗さは、50〜100μmであるため、充分な低摺動性を得ることができる。低摺動層の表面粗さが50μm未満では充分な低摺動性を得ることができなく、100μmを超える場合には、発泡セルの安定性が低下する。
低摺動層の発泡倍率は、1.1〜1.8であるため、低摺動層の適切な表面粗さを得ることができ、充分な低摺動性を得ることができる。発泡倍率が1.1未満では充分な低摺動性を得ることができなく、発泡倍率は、1.8を超える場合には、発泡セルの安定性が低下する。
【0024】
請求項6の本発明は、低摺動層は、底壁、車外側シールリップ及び車内側シールリップのドアガラスと摺動する摺動面に形成された自動車用ガラスランである。
【0025】
請求項6の本発明では、低摺動層は、底壁、車外側シールリップ及び車内側シールリップのドアガラスと摺動する摺動面に形成されたため、ドアガラスの先端部側面を挟持しつつ、ドアガラスの昇降をスムースにすることができるとともに、ドアガラスの先端が底壁に当接した場合にもスムースに昇降することができる。また、ドアガラスと接触するガラスランの全ての部分に低摺動層を形成することができる。
【0026】
請求項7の本発明は、底壁に形成された低摺動層の膜厚は、0.5〜1.0mmであり、車外側シールリップと車内側シールリップに形成された低摺動層の膜厚は、0.1〜0.4mmである自動車用ガラスランである。
【0027】
請求項7の本発明では、底壁に形成された低摺動層の膜厚は、0.5〜1.0mmであるため、ドアガラスの先端が底壁に強く当接しても、低摺動層が摩耗することがなく、長期間摺動抵抗を低くすることができる。
車外側シールリップと車内側シールリップに形成された低摺動層の膜厚は、0.1〜0.4mmであるため、ドアガラスの側面の先端部分が摺動しても、長期的に充分な低摺動性を維持することができる。
【0028】
請求項8の本発明は、低摺動層は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを100重量部と、オレフィン系熱可塑性樹脂を5〜14重量部と、マイクロカプセルを1〜5重量部とを含有するマイクロカプセル発泡組成物で形成された自動車用ガラスランである。
【0029】
請求項8の本発明では、低摺動層は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを100重量部と、オレフィン系熱可塑性樹脂を5〜14重量部と、マイクロカプセルを1〜5重量部とを含有するマイクロカプセル発泡組成物である。このため、押出機のシリンダー内でオレフィン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系熱可塑性樹脂を溶融させて、かつ、マイクロカプセルを混入分散させることができ、混入作業が容易であり、押出後には、均一な発泡体の低摺動層を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
ドアガラスと摺動する摺動面に低摺動層をガラスランの本体と一体的に形成するとともに、低摺動層を成形時に発泡させて、低摺動層の表面に凹凸を設けたため、ガラスランを形成すると同時に低摺動層とその発泡を行うことができ、製造が容易で、手間も少ない。低摺動層を発泡させて、その表面に凹凸を設けて摺動抵抗を減少させるため、表面が摩耗しても、その下から常に凹凸面が生じるので、低摺動層の摺動抵抗を低く長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態であるドアフレームの縦辺部にガラスランを装着した状態の断面図であり、図4におけるA−Aに沿った断面図である。
【図2】本発明の実施の形態であるガラスランの低摺動層の部分の部分断面図である。
【図3】本発明の実施の形態であるガラスランの正面図である。
【図4】自動車ドアの正面図である。
【図5】従来のガラスランを装着した状態の断面図である。
【図6】従来のトリムをサンルーフに装着した状態の断面図である。
【図7】従来のトリムの発泡部分の部分断面図である。
【図8】従来の他のガラスランの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態を、図1〜図4に基づき説明する。
図4は、自動車のフロントのドア1の正面図であり、図3は、ドア1のドアフレーム2に取付けるフロントドアのガラスラン10の正面図である。図4に示すように、ドア1の上部にはドアフレーム2が設けられ、ドアガラス5が昇降自在に取付けられる。すなわち、ドアフレーム2の内周には、ガラスラン10が取付けられ、ドアガラス5の昇降を案内するとともに、ドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。
【0033】
ガラスラン10は、図3に示すように、全体として押出成形で形成された直線状部11と、ドアフレーム2のコーナー部2bに取付けられ、上記の直線状部11を接続し、型成形で形成されるコーナー部12からなる。
直線状部11は、ドアフレーム2の上辺部に取付けられる部分と、ドアフレーム2のリヤ側縦辺部に取付けられる部分と、ドアフレーム2のフロント側縦辺部をなすディビジョンサッシュに取付けられる部分とからなる。本発明は、直線状部11のいずれの部分にも使用することができる。
【0034】
これらの押出成形部分をドアフレーム2に対応した形状となるように、フロント側とリヤ側のそれぞれのコーナー部分において、型成形により成形して直線状部11を接続してコーナー部12が形成されている。なお、ガラスラン10のコーナー部12は、ドアフレーム2のコーナー部2bの部分に装着される。
以下に、フロント側のドア1の縦辺部に装着されるガラスラン10を例に取り説明する。
図1は、本発明の実施の形態であるドアフレーム2の縦辺に取付けられたガラスラン10の図4のA−A線に沿った断面図である。
本発明は、フロント側のドア1の縦辺部以外にも上辺部やリヤ側のドア1のガラスラン10にも使用することができる。
【0035】
ドアフレーム2の縦辺部に取付けられるガラスラン10の直線状部11の断面形状は、図1に示すように、ガラスラン10の本体が車外側側壁20と、車内側側壁30と、底壁40とから断面略コ字状に形成されている。
ガラスラン10の本体は、ドアフレーム2の上辺部に取付けられる部分も縦辺部に取付けられる部分も基本的には、ほぼ同様な断面略コ字形の断面形状を有している。
【0036】
ドアフレーム2は、内部にチャンネル3を有し、チャンネル3は、断面略コ字形に形成される。ドアフレーム2のアウターパネル2cとドアインナーパネル2dのそれぞれの先端からチャンネル3が折り曲げられて形成されている。チャンネル3を別部材で形成し、ドアフレーム2に溶接等により固着してもよい。その断面略コ字形の内部にガラスラン10の本体が嵌挿されて、車外側側壁20と、車内側側壁30と、底壁40がチャンネル3のそれぞれの内面に当接している。
【0037】
車外側側壁20の外面には、車外側第1保持リップ24と車外側第2保持リップ25が形成され、チャンネル3に当接して、車外側側壁20を保持している。
同様に、車内側側壁30の外面には、車内側第1保持リップ34と車内側第2保持リップ35が形成され、チャンネル3に当接して、車内側側壁30を保持している。
【0038】
車外側側壁20と車内側側壁30のそれぞれの先端の内側から車外側シールリップ21と車内側シールリップ31が、ガラスラン10の本体の断面略コ字状の内側に向けて斜め方向に延設されている。車外側シールリップ21と車内側シールリップ31により、ドアガラス5の先端部の両側面を保持する。また、ドアガラス5の昇降に応じて、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31がドアガラス5の両側面に当接して、ドアガラス5の昇降(摺動)をガイドするとともに、ドアフレーム2とドアガラス5との間のシールをすることができる。
【0039】
なお、車外側シールリップ21の内面、又は車外側側壁20の内面に低摺動部材層や突条を形成することもできる。この場合には、ドアガラス5がガラスラン10の本体内部に進入したときに、車外側側壁20の内面と車外側シールリップ21の内面が密着することを防止できる。
また、ドアガラス5がガラスラン10の本体内で車内側に大きく変位したときに、車内側シールリップ31が車内側側壁30に密着することを防止して、異音の発生防止と、ドアガラス5の側端部を保持することができる。また、ドアガラス5を車外側に位置させることができる。さらに、車内側シールリップ31の先端を車内側側壁30方向に屈曲させて、車内側側壁30の内面に当接できるようにしてもよい。
【0040】
車外側側壁20と車内側側壁30のそれぞれの先端の外側から、それぞれ車外側カバーリップ22と車内側カバーリップ32が外側横方向に延設されている。車外側カバーリップ22と車内側カバーリップ32が、チャンネル3の車外側と車内側の側壁のそれぞれの先端であるアウターパネル2cとインナーパネル2dとの連結部分をカバーしている。
【0041】
車外側側壁20の先端にドアフレーム2の先端をカバーする車外側カバーリップ22を形成し、車内側側壁30の先端に車内側カバーリップ32を形成したため、ドアフレーム2を両カバーリップで覆い、ガラスラン10をチャンネル3内に保持するとともに、見栄えを良くすることができる。
【0042】
本実施の形態では、ガラスラン10の車内側側壁30と車内側シールリップ31は、それぞれ車外側側壁20と車外側シールリップ21よりも大きく、肉厚に形成される。このため、ドアガラス5を確実に保持できるとともに、ドアガラス5を車外方向に位置させることができ、ドアガラス5とドアフレーム2との間の段差を小さくすることができ、風切り音を小さくして、見栄えを良くすることができる。また、ドアフレーム2又はドアモールの車外側の面積を小さくすることができ、デザイン的にも好ましい。
【0043】
車外側側壁20は車外側連結部26で、車内側側壁30は車内側連結部36とそれぞれ底壁40と連結されている。車外側連結部26と車内側連結部36は、車内側側壁30および車外側側壁20との連続部では屈曲が容易にできるように溝部が形成されている。そのため、製造時に、車外側側壁20と車内側側壁30が底壁40とハ字形に開いていても、チャンネル3内へガラスラン10を取付けるときに、車外側側壁20及び車内側側壁30と底壁40の間が撓みやすくなり、取付けが容易になる。
底壁40は、略板状に形成され、底壁40の外面には凸部41、41が形成され、チャンネル3の内面に当接して、ドアフレーム2とガラスラン10の間をシールしている。
【0044】
ガラスラン10の本体である車外側側壁20、車内側側壁30及び底壁40と、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31、車外側カバーリップ22と車内側カバーリップ32は、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はEPDMゴムのソリッド材で形成することができる。
【0045】
この場合には、ガラスランの本体の剛性が大きくて、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31によるドアガラス5の保持力が大きく、車外側側壁20、車内側側壁30と底壁40がドアフレーム2にも強く嵌合されることができる。また、弾性に優れているので、ガラスラン10がドアガラス5の昇降に応じて、ドアガラス5を保持して、シールすることができる。また、ドアフレーム2の湾曲形状に応じて、ガラスラン10を湾曲させて嵌め込むことができる。また、いずれもオレフィン系材料であり、耐候性に優れたガラスラン10を得ることができる。
【0046】
車外側シールリップ21と車内側シールリップ31のドアガラス5が摺動する面(図1における外面)には、それぞれ車外側低摺動層23と車内側低摺動層33が設けられている。また、同様に底壁40のドアガラス5の先端が当接する面(図1における上面)には底壁低摺動層43が設けられている。
【0047】
車外側低摺動層23、車内側低摺動層33及び底壁低摺動層43は、ガラスラン10の本体を押出成形するときに、ガラスラン10の本体と同時に2層成形で押し出されるとともに、押出と同時に低摺動層に混入された発泡材料が発泡して、発泡層として形成される。このため、各低摺動層の表面には凹凸が形成され、表面の摺動抵抗を低くすることができる。発泡による凹凸のため、表面が摩耗しても、その下から常に凹凸面が生じるので、低摺動層の低摺動性を長期間維持することができる。また、押出と同時に発泡するため、特に発泡工程を必要としないで、製造工程も短く、製造が容易である。
【0048】
図2に示すように、車外側低摺動層23、車内側低摺動層33及び底壁低摺動層43は、マイクロカプセル50を含有した発泡体であることが好ましい。マイクロカプセル50を発泡させた場合は、化学発泡剤で発泡させた場合と比べて、発泡ガスが逃げにくく、発泡径を大きくして、表面粗度を上げることができる。また、押出機のシリンダー内で低摺動層の基材を溶融させて、かつ、マイクロカプセル50を混入分散させることができ、混入作業が容易であり、押出後には、均一な発泡体を得ることができる。マイクロカプセル50による発泡のため、マイクロカプセル50が膨張時には略球状に膨らみ、どの方向の変形に対しても力が偏ることがないため、均一な表面状態を得ることができる。そのため、優れた低摺動性を得ることができる。
また、マイクロカプセル50による発泡の代わりに、化学発泡剤を使用することができる。化学発泡剤を使用した場合には、化学発泡剤による気泡がマイクロカプセル50による気泡と同様に、低摺動層内に発生して、各低摺動層の表面には凹凸が形成され、表面の摺動抵抗を低くすることができる。
【0049】
各低摺動層の材料は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを100重量部と、オレフィン系熱可塑性樹脂を5〜14重量部と、マイクロカプセル50を1〜5重量部とを含有するマイクロカプセル発泡組成物で形成されていることが好ましい。
この場合は、押出機のシリンダー内でオレフィン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系熱可塑性樹脂を溶融させて、かつ、マイクロカプセル50を混入分散させることができ、混入作業が容易であり、押出後には、均一な発泡体の低摺動層を得ることができる。
【0050】
上記のオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリプロピレンからなる樹脂分が25%〜35%であり、EPDMゴムを主材とするゴム分が75%〜65%であるものを使用することが好ましい。本実施の形態では、EPDM成分が75部とポリプロピレン成分が25部を含有する熱可塑性エラストマー100重量部に対して、オレフィン系熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン樹脂を12重量部と、発泡剤としての熱膨張タイプのマイクロカプセル50を、3重量部含有したマイクロカプセル発泡組成物を使用する。
【0051】
上記マイクロカプセル50は、発泡前には、熱可塑性高分子の球状のセルの中に低沸点の炭化水素を封じ込めた粒径15〜40μmの微粒子である。セルの材質としては、熱可塑性樹脂を使用し、例えば、アクリロニトリル共重合体を使用することができる。
マイクロカプセル50としては、例えば、積水化学工業株式会社製のADVANCELL(登録商標)、松本油脂製薬株式会社のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)、日本フィライト株式会社のEXPANCEL(登録商標)等を使用することができる。
【0052】
なお、マイクロカプセル50は、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂を混練したものに混入してもよいが、まず、熱可塑性樹脂にマイクロカプセル50を混入したペレットを作成し、このペレットと熱可塑性エラストマーを混練すると、マイクロカプセル50が均一に分散することができる。このため、混入作業が容易であり、低摺動層は、均一な発泡体となることができるため、均一な低摺動性を維持することができる。
【0053】
上記マイクロカプセル50の直径は、上記のように低摺動層の基材に混入時には、15〜40μmであるが、ガラスランの本体と低摺動層を押出成形した後は、押出成形時に上記組成物が溶融するときの熱で加熱され、平均発泡セル径が40〜120μmに膨張して球状セルを形成する。
マイクロカプセル50による発泡セルの直径が40μm未満では、低摺動層の表面粗度が小さくて充分な低摺動性を得ることができなく、120μmを超える場合には、発泡セルの安定性が低下する。
【0054】
マイクロカプセル50による発泡セルの平均発泡セル径が40〜120μmになったときは、車外側低摺動層23、車内側低摺動層33及び底壁低摺動層43の表面粗さは、50〜100μmにすることができる。この場合は、各低摺動層は、ドアガラス5との接触面積が小さくなり、充分な低摺動性を得ることができる。低摺動層の表面粗さが50μm未満では充分な低摺動性を得ることができなく、100μmを超える場合には、発泡セルの安定性が低下する。
【0055】
また、上記の場合には、各低摺動層の発泡倍率は、1.1〜1.8にすることができる。この場合は、各低摺動層の適切な表面粗さを得ることができ、充分な低摺動性を得ることができる。発泡倍率が1.1未満では充分な低摺動性を得ることができなく、発泡倍率は、1.8を超える場合には、発泡セルの安定性が低下する。
【0056】
底壁40に形成された底壁低摺動層43の膜厚は、0.5〜1.0mmが好ましい。この場合は、ドアガラス5の昇降時にその先端が強く底壁低摺動層43に当接しても、底壁低摺動層43が摩耗することがない。
車外側シールリップ21の車外側低摺動層23と車内側シールリップ31の車内側低摺動層33に形成された低摺動層の膜厚は、0.1〜0.4mmが好ましい。この場合は、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31の柔軟性を維持しつつ、ドアガラス5の側面の先端部分が摺動しても、長期的に充分な摺動性を維持することができる。
【0057】
低摺動層は、上記のように、マイクロカプセル50を膨張させて、比重が0.6〜0.8とすることができるとともに、オレフィン系熱可塑性樹脂を混入させて引張強度が4.5〜8MPa、破断伸びが400〜550%の物性を有することができる。この場合は、低摺動層の強度を長期間維持することができる。
【符号の説明】
【0058】
2 ドアフレーム
10 ガラスラン
20 車外側側壁
21 車外側シールリップ
23 車外側低摺動層
30 車内側側壁
31 車内側シールリップ
33 車内側低摺動層
40 底壁
43 底壁低摺動層
50 マイクロカプセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランにおいて、
上記ガラスランの本体は、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略コ字形をなし、上記車外側側壁と車内側側壁には、それぞれ上記本体の断面略コ字状の本体の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、該車外側シールリップと車内側シールリップにより上記ドアガラスの端部の車外側面及び車内側面をシールし、
上記ガラスランの本体は、熱可塑性エラストマー又は合成ゴムのソリッド材で形成され、上記ドアガラスと摺動する上記ガラスランの摺動面に低摺動層をガラスランと一体的に形成するとともに、該低摺動層を成形時に発泡させて、低摺動層の表面に凹凸を設けたことを特徴とする自動車用ガラスラン。
【請求項2】
上記ガラスランの本体は、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はEPDMゴムのソリッド材で形成され、上記低摺動層は、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はEPDMゴムを基材とする請求項1に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項3】
上記低摺動層は、マイクロカプセルを含有した発泡体である請求項1又は2に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項4】
上記マイクロカプセルは、上記低摺動層の基材に混入時には、15〜40μmの球体であり、膨張後に平均発泡セル径40〜120μmの球体セルを形成させるものである請求項3に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項5】
上記低摺動層の表面粗さは、50〜100μmであり、上記低摺動層の発泡倍率は、1.1〜1.8である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項6】
上記低摺動層は、上記底壁、上記車外側シールリップ及び上記車内側シールリップの上記ドアガラスと摺動する摺動面に形成された請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項7】
上記底壁に形成された上記低摺動層の膜厚は、0.5〜1.0mmであり、上記車外側シールリップと車内側シールリップに形成された上記低摺動層の膜厚は、0.1〜0.4mmである請求項6に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項8】
上記低摺動層は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを100重量部と、オレフィン系熱可塑性樹脂を5〜14重量部と、マイクロカプセルを1〜5重量部とを含有するマイクロカプセル発泡組成物で形成された請求項1乃至7のいずれか一項に記載の自動車用ガラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−192756(P2012−192756A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56224(P2011−56224)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】