説明

自動車用ドアのガラスラン

【課題】
材料比重を下げながら剛性を確保して垂れ下がりを防止でき、軽量化,低コスト化を実現できる自動車用ドアのガラスランを提供することを課題としている。
【解決手段】
押出成形により形成された直線部8と、型成形により形成されるコーナ部11とを、該コーナ部11の型成形時に接続してなる自動車用ドア1のガラスラン7において、前記型成形時にビード8h,8h′を前記コーナ部11から直線部8に延びるように一体形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアのガラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ドアのドアフレームの内周には、ドアガラスの昇降を案内するとともに、ドアガラスとドアフレームとの間をシールするガラスランが配設されている。従来のガラスランとして、例えば、発泡性樹脂の押出成形材からなる直線部と、同様の材料の型成形により形成されるコーナ部とを一体的に接続することにより構成され、ドアフレームの内周に装着されるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−228725
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述のガラスランは、ガラス昇降による荷重がかかるので、ドアフレームを構成するインナパネルに形成された支持爪に引っ掛ける等により比較的強固に支持される必要がある。一方、最近では、発泡性樹脂の発泡率を上げて材料比重を下げることにより、ガラスランの軽量化及び低コスト化を図ることが行われている。このように低比重化した場合、ガラスラン自体の剛性が低下するので、前記支持爪の個所数を増やすことが必要となる。さらに例えば、ドアフレームの前側コーナ部においては、ドアミラーやドアヒンジの取り付け剛性を確保する等のために、インナパネルの肉厚を途中から厚くする差厚鋼板を採用する場合があり、このような差厚鋼板においては前記支持爪の形成が困難となり、ガラスランが垂れ下がり、外観が悪化するおそれがある。
【0005】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、材料比重を下げながら剛性を確保して垂れ下がりを防止でき、軽量化,低コスト化を実現できる自動車用ドアのガラスランを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1発明は、押出成形により形成された直線部と、型成形により形成されるコーナ部とを、該コーナ部の型成形時に接続することにより構成され、ドアフレームの内周に取り付けられる自動車用ドアのガラスランにおいて、前記型成形時に前記コーナ部から直線部に延びるように一体形成されたビードを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の自動車用ドアのガラスランにおいて、前記ビードに、前記ドアのフレーム部材に係止する係止部を一体形成したことを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の自動車用ドアのガラスランにおいて、前記ドアのフレーム部材がリインホースメントであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係るガラスランによれば、コーナ部から直線部に延びるように一体形成されたビードを備えたので、コーナ部と直線部との接続部の剛性を向上できる。従って、発泡率を上げて比重を小さくした場合であっても必要な剛性を確保でき、最小の支持爪により支持でき、支持爪を増加することなく軽量化,低コスト化を図ることができる。
【0010】
また、ビードを、コーナ部の型成形時に同時に一体形成したので、ビードを、製造工数を増加することなく形成でき、コスト増加を回避できる。
【0011】
請求項2の発明では、ビードに係止部を一体形成したので、別途に係止部を設ける必要がなく、また係止部がビードひいては直線部とコーナ部との接続部の剛性向上に寄与し、前記接続部の剛性をより一層向上できる。さらにまた、ドアのフレーム部材によりビードを強固に支持でき、ガラスランの垂れ下りを確実に防止できる。
【0012】
請求項3の発明では、ドアのフレーム部材をリインホースメントとしたので、ガラスランをフレーム部材に挟持させる際の組付け性を向上でき、またフレーム部材とリインホースメントの間隔があるので、ガラスランを成形する金型の形状上の自由度が高くなり、耐久性を向上でき、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1によるガラスランが装着された自動車用ドアを車室内側から見た模式側面図である。
【図2】前記ガラスランの装着状態を示す模式斜視図である。
【図3】前記ガラスランの側面図である。
【図4】前記ガラスランのドアフレームへの装着状態を示す断面正面図(図2のIV-IV線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1ないし図4は、本発明の実施例1による自動車用ドアのガラスランを説明するための図である。
【0016】
図において、1は自動車用フロントドアであり、該フロントドア1は、ドアガラス昇降機構等が内蔵されたドア本体2と、該ドア本体2の上部にドアサッシュをなすように形成されたドアフレーム3とを有する。
【0017】
前記ドアフレーム3は、前記ドア本体2の、前縁から立ち上がる前辺部4と、後縁から立ち上がる後辺部5と、該後辺部5,前辺部4の上端部同士を連結する上辺部6とを有する。該上辺部6の前,後端部と前辺部4,後辺部5との接続部は比較的急角度の前,後コーナ3a,3bとなっている。
【0018】
前記上辺部6は、図4示すように、アウタパネル6aと、インナパネル6bとからなり、その外周縁部6cがヘミング加工により結合されている。ここで、前記インナパネル6bの前記前コーナ3a部分には、肉厚を他の部分より厚くした差厚鋼板が採用されている。また、前記前コーナ3a内には、ドアミラーリインホースメント13が配設されている。このドアミラーリインホースメント13には、前記前コーナ3aから上辺部6の前端部に渡るように延長部13′が形成されている。この延長部13′には、複数の突部13a,13bが形成され、該突部13a,13bはインナパネル6bにスポット溶接により結合されている。
【0019】
そして前記フロントドア1には、ガラスラン7が、前記ドアフレーム3の内周及び前記ドア本体2の前縁部、後縁部の上下方向略半部に渡るように配置されている。前記ガラスラン7は、前記ドアフレーム3の上辺部6に沿うように配置された上辺直線部8と、前記ドアフレーム3の前辺部4からドア本体2の前縁部に渡る前辺直線部9と、前記ドアフレーム3の後辺部5からドア本体2の後縁部に渡る後辺直線部10と、前記ドアフレーム3の前,後コーナ3a,3bに配置された前コーナ部11,後コーナ部12とを有する。
【0020】
前記ガラスラン7の、上辺直線部8、前辺直線部9及び後辺直線部10は、発泡性樹脂の押出成形により形成されたものである。また前記前,後のコーナ部11,12は、型成形により形成されたものである。具体的には、前記前コーナ部11は、これに対応した形状のキャビティを有する金型14内に前記上辺直線部8の前端部8a及び前辺直線部9の上端部9aを挿入配置し、この状態で上記同様の発泡性樹脂を射出することにより形成されたものであり、前記上辺直線部8及び前辺直線部9に一体的に結合されている。なお、後コーナ部12も同様である。
【0021】
前記ガラスラン7の前記上辺直線部8は、図4に示すように、ドアガラス1aの全閉時にこれの上端部が当接する基部8bと、これの外端,内端から下方に屈曲して延びる外側壁8c,内側壁8dと、外側壁8c,内側壁8dに一体形成され、前記ドアガラス1aに摺接する外側,内側シールリップ8e,8fとを有する。また前記外側壁8cは、これの下端部に一体形成された前爪8c′とで前記ドアフレーム3のアウタパネル6aの下縁6dを挟持している。また前記内側壁8dは、これの下端部に一体形成された後爪8d′とでインナパネル6bの下縁6eを挟持し、これによりガラスラン7の上辺直線部8を所定位置に支持している。
【0022】
なお、前記差厚鋼板からなるインナパネル6bの前記厚肉となっていない部分の下縁6eには、支持爪6fが形成されており、該支持爪6fにより前記内側壁8d内に形成された突部8gを支持し、前記上辺直線部8が垂れるのを防止している。
【0023】
そして本実施例の上辺直線部8の内側壁8dにはビード8hが正面視で概ね半円形状をなすように、かつ前記前コーナ部11から後方に延びるように一体形成されている。また前記ビード8hには、係止部8iが正面視で概ね三角形状をなすように突設されている。この係止部8iは、前記延長部13′の下縁13cに当接しており、これにより前記上辺直線部8は下方に垂れないように支持されている。なお、前記ビード8hの一部をなすビード8h′が前記前コーナ部11に形成されており、該ビード8h′には、前記同様の係止部8i′も形成されており、該係止部8iも前記下縁13cに当接している。
【0024】
ここで前記ビード8h,8h′及び係止部8i,8i′は、前記金型14の内面に該ビードや係止部に対応する形状のキャビティを延長形成することにより、前記前コーナ部11を形成する際に同時に射出成形されたものである。
【0025】
本実施例に係るガラスラン7によれば、ビード8h,8h′を前コーナ部11から上辺直線部8に延びるように一体形成したので、前コーナ部11と上辺直線部8との接続部自体の剛性を向上できる。従って、発泡率を上げて比重を小さくした場合であっても必要な剛性を確保でき、最小の支持爪により支持でき、支持爪を増加することなく軽量化,低コスト化を図ることができる。
【0026】
なお、本実施例では、上辺直線部8については、発泡性樹脂の発泡率を上げて材料比重を下げることにより、ガラスランの軽量化及び低コスト化を図っている。一方、コーナ部11,12に付いては、発泡率を上げないことにより、シールリップ8e,8fの剛性を確保し、もってシール性を確保している。
【0027】
また、ビード8h,8h′に係止部8i,8i′を一体形成したので、別途に係止部を設ける必要がない。また係止部8i,8i′を、ドアミラーリインホースメント13の延長部13′の下縁13cに支持させるようにしたので、支持部材を別個に設ける必要がないとともに、ガラスランを強固に支持できる。
【0028】
さらに前記係止部8i,8i′を、インナパネル6bの下縁6eから離れた位置に設定されているドアミラーリインホースメント13の延長部13′の下縁13cに支持させたので、係止部8i、8i′と後爪8d′との間隔L1を大きくでき、後爪8d′と突部8gでインナパネル6bの下縁6eを挟持する際の組付け性を向上できる。また、前記間隔L1を大きくできるので、金型14の自由度が高くなり、例えば図示しない構成部材(中板)の板厚を厚くすることができ、金型14の耐久性を向上できるとともに、生産性を向上できる。
【0029】
また、ビード8h,8h′及び係止部8i,8i′を、前コーナ部11の型成形時に一体形成したので、ビード及び係止部を、製造工数を増加することなく形成でき、コスト増加を回避できる。
【0030】
また係止部8i,8i′がビードひいては上辺直線部8と前コーナ部11との接続部の剛性向上に寄与し、より一層剛性を高めることができる。
【0031】
なお、前記実施例では、係止部8i、8i′をドアミラーリインホースメント13の延長部13′により支持させたが、これは、ドアフレーム部材の何れかにより支持させるようにすれば良い。例えば図4に二点鎖線で示すように、係止部8i′′をインナパネル6b側に位置させることにより、インナパネル6bの下部6e′付近により支持させるようにしても良い。
【0032】
また、前記実施例では、ビード8h,8h′を正面視で概ね半円形状をなすように形成したが、これを三角形状あるいは長方形状をなすように形成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 自動車用ドア
3 ドアフレーム
7 ガラスラン
8 上辺直線部(直線部)
8h,8h′ ビード
8i,8i′ 係止部
11 前コーナ部(コーナ部)
13′ ドラミラーリインホースメントの延長部(フレーム部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形により形成された直線部と、型成形により形成されるコーナ部とを、該コーナ部の型成形時に接続することにより構成され、ドアフレームの内周に取り付けられる自動車用ドアのガラスランにおいて、
前記型成形時に前記コーナ部から直線部に延びるように一体形成されたビードを備えたことを特徴とする自動車用ドアのガラスラン。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用ドアのガラスランにおいて、
前記ビードに、前記ドアのフレーム部材に係止する係止部を一体形成した
ことを特徴とする自動車用ドアのガラスラン。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車用ドアのガラスランにおいて、
前記ドアのフレーム部材がリインホースメントである
ことを特徴とする自動車用ドアのガラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−116275(P2012−116275A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266626(P2010−266626)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】