自動車組立設備
【課題】自動車組立設備における組付ライン及びサブラインの設計の自由度を高め、設備スペースを縮小する。
【解決手段】サブラインSEにおいて台車10を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインUにおいて台車10を搬送する組付ライン駆動手段(リフタ60)とを別個に設けたことにより、各ラインにおいて台車10の搬送速度や台車間のピッチ、あるいは各ラインのレイアウトを個別に設定することができるため、設備設計の自由度が高められる。
【解決手段】サブラインSEにおいて台車10を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインUにおいて台車10を搬送する組付ライン駆動手段(リフタ60)とを別個に設けたことにより、各ラインにおいて台車10の搬送速度や台車間のピッチ、あるいは各ラインのレイアウトを個別に設定することができるため、設備設計の自由度が高められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体にエンジンやリアアクスルユニット等の部品を組み付ける自動車組立設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に従来例として示されている自動車組立設備(エンジン搭載装置)では、車体を連続的に搬送するメインラインと、メインラインに一部が沿うように配置され、エンジンユニットを搭載した搭載台車を搬送しながら、メインラインにおいて搬送される車体にエンジンユニットを組み付ける組付ライン(エンジン搭載ライン)と、準備台車上でエンジンユニットを組み立てるサブライン(エンジンユニット準備ライン)とを有する。このような自動車組立設備では、サブラインで組み立てられたエンジンユニットを、サブラインの準備台車から組付ラインの搭載台車に移載する移載ステーションが必要となり、設備スペースが大きくなる。
【0003】
そこで、同文献では、図14に示すように、搭載台車Dを搬送するループコンベヤCを、メインラインMに一部が沿うように配置し、このループコンベヤCの搭載台車D上でエンジンユニットの組立を行うようにした自動車組立設備が提案されている。このように、台車(搭載台車)をループコンベヤで搬送しながら、この台車上で部品の組立及び当該部品の車体への組付を行うことにより、上述の組立設備のようにサブラインの準備台車上で組み立てた部品を組付ラインの搭載台車に移載する工程が不要となるため、移載工程の省略により組立工数を削減できると共に、移載ステーションの省略により設備スペースが縮小できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−66806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の自動車組立設備では、組付ライン及びサブラインにおいて、ループコンベヤ上に配された複数の台車を一つの駆動手段(駆動コンベヤ、図14では省略している)で搬送しているため、組付ライン及びサブラインの設計が著しく制限されることとなる。
【0006】
例えば、上記のようにループコンベヤC上の複数の台車Dを一つの駆動手段で搬送すると、図14に示すように複数の台車D間のピッチを一定にせざるを得ない。組付ラインでは、メインラインにおいて搬送される車体のピッチに合わせて台車を搬送する必要があるため、台車間のピッチが比較的大きくなる。一方、サブラインでは、部品の組付作業が可能なピッチで台車を搬送すればよいため、通常、組付ラインにおける台車間のピッチよりも台車間のピッチは小さくて良い。しかし、上記のように台車間のピッチが一定であると、比較的大きい組付ラインにおけるピッチに合わせて全ての台車間のピッチを設定する必要があるため、サブラインにおけるピッチが無用に大きくなって設備スペースが大きくなる。
【0007】
また、ループコンベヤC上の台車Dを一つの駆動手段で搬送する場合、ループコンベヤCは滑らかに連続した形状(上記特許文献ではトラック形、図14参照)にする必要がある。このようなループコンベヤCは、メインラインMに沿った領域Tの前後の領域Q1,Q2においてメインラインMと非常に近接しているため、この領域Q1,Q2では、ループコンベヤCが邪魔になって作業者による組付作業や部品棚等の設置が困難となる。このため、設備内のデッドスペースが増えて設備スペースが大きくなる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、自動車組立設備における組付ライン及びサブラインの設計の自由度を高め、設備スペースを縮小することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、車体を搬送するメインラインと、複数の台車を搬送しながら各台車上で部品を組み立てるサブラインと、前記部品を搭載した前記台車をメインラインに沿って搬送しながら前記部品を前記車体に組み付ける組付ラインとを備えた自動車組立設備であって、サブラインにおいて前記台車を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインにおいて前記台車を搬送する組付ライン駆動手段とを別個に設けたことを特徴とする。
【0010】
このように、本発明は、サブラインにおいて台車を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインにおいて台車を搬送する組付ライン駆動手段とを別個に設けたことにより、サブライン及び組付ラインのそれぞれにおいて、台車の搬送速度や台車間のピッチ、あるいは各ラインのレイアウトを自由に設定することができるため、上記特許文献1のようにループコンベヤ上に配された複数の台車を一つの駆動手段で搬送する場合と比べて、設備設計の自由度が高められる。
【0011】
例えば、サブライン駆動手段と組付ライン駆動手段とを別個に設けることで、サブラインにおける台車間のピッチと組付ラインにおける台車間のピッチとを異ならせることができる。これにより、各ラインの台車をそれぞれ必要最小限のピッチで配置することができ、無駄なスペースを減らして設備スペースを縮小することができる。さらに、サブラインでは、組み立てる部品の種類によって必要となる台車間のピッチが異なることが多いため、サブライン内に、台車間のピッチが異なる複数の領域を設けることで、各領域で、組み立てる部品の種類に合わせて必要最小限のピッチを設定することができ、設備スペースをさらに縮小することができる。
【0012】
また、サブライン駆動手段と組付ライン駆動手段とを別個に設けることで、台車を搬送する経路を必ずしも滑らかに連続する必要はなくなるため、例えば、組付ラインに前記台車を供給する方向、及び、組付ラインから前記台車を排出する方向の少なくとも一方を、組付ラインにおける前記台車の搬送方向と交差する方向とすることができる。これにより、各ラインのレイアウトの自由度が高まり、自動車組立設備内のデッドスペースを減らして設備スペースを縮小することが可能となる。
【0013】
組付ラインUでは、例えば図12に示すように、台車(リフタ60のみを示す)の両側に、作業者による組付作業エリアAが設けられる。通常、組付ラインUへの台車供給路UI及び組付ラインからの台車排出路UOは、台車が頻繁に搬送されるため、作業者の侵入を禁止するデッドスペースとなっている。このため、例えば図12に示すように、組付作業エリアAの途中に台車排出路UOが設けられると、組付作業エリアAが台車排出路UOにより分断されるため、作業性が極めて悪くなる。また、例えば図13に示すように、組付作業エリアAの下流側(図中左側)に台車排出路UOを設けると、作業者は組付作業エリアAよりも下流側には移動できないため、組付作業エリアA内で組付作業が完了しなかった場合には、ライン全体を停止させて組付を完了させる必要がある。
【0014】
そこで、図11に示すように、組付ラインUの台車供給路UI及び台車排出路UOを共に組付作業エリアAの上流側(図中右側)に配置すれば、台車供給路UIや台車排出路UOで組付作業エリアAが分断されないため、作業性の低下を回避できる。また、組付作業エリアAより下流側に作業者が移動することが可能であるため、組付作業エリアA内で組付作業が完了しなかった場合は、車体を搬送したまま組付作業エリアAより下流側の領域で組付作業を完了させることができる。
【0015】
このような自動車組立設備において、前記部品を前記車体に組み付けた後、空になった台車を組付ライン駆動手段により台車排出路UOの位置まで搬送すれば、別途の駆動手段を要することなく台車を排出位置まで搬送することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の自動車組立設備によれば、組付ライン及びサブラインの設計の自由度を高め、設備スペースを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自動車組立設備の平面図である。
【図2】引き込み装置の平面図である。
【図3】(a)は台車10及び部品台車40の斜視図であり、(b)は両者を一体化した状態の斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は供給装置の平面図である。
【図5】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図6】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図7】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図8】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図9】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図10】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図11】組付ラインを拡大した平面図である。
【図12】他の例の組付ラインを拡大した平面図である。
【図13】他の例の組付ラインを拡大した平面図である。
【図14】従来の自動車組立設備の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示す自動車組立設備100は、車体Bのフロント側部分にエンジンユニットEを、車体Bのリア側部分にリアアクスルユニットRを組み付ける設備である。この自動車組立設備100は、車体Bを吊り下げ状態で搬送するメインラインMと、エンジンユニットEを組み立てるエンジンサブラインSEと、リアアクスルユニットRを組み立てるリアアクスルサブラインSRと、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRをメインラインMに沿って搬送しながら車体Bに組み付ける組付ラインUとを備える。尚、図1では、車体B、エンジンユニットE、及び、リアアクスルユニットRの図示を省略している。
【0020】
エンジンユニットEは、エンジンサブラインSEにおいて台車10を搬送しながらこの台車10の上で組み立てられる。組み立てられたエンジンユニットEは、台車10に搭載されたまま供給手段(本実施形態では供給装置50)により組付ラインUに供給され、メインラインMに沿って搬送されながら車体Bに組み付けられる。エンジンユニットEが車体に組みつけられたら、排出手段(本実施形態では引き込み装置30)により空の台車10が組付ラインUから排出されて再びエンジンサブラインSEに供給され、この台車10の上で新たなエンジンユニットEの組付作業が行われる。この自動車組立設備100では、エンジンサブラインSEにおいて台車10を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインUにおいて台車10を搬送する組付ライン駆動手段とが別個に設けられる。
【0021】
エンジンサブラインSEは、引き込み装置30により組付ラインUから引き込まれた空の台車10を第1組立エリアSE1まで搬送する予備搬送エリアSE0と、台車10を搬送しながらエンジンユニットEの組立作業を行う第1組立エリアSE1及び第2組立エリアSE2と、組み立てられたエンジンユニットEを搭載した台車10をストックするストックエリアSE3と、ストックエリアSE3の台車10を組付ラインUに供給する供給装置50とを有する。
【0022】
引き込み装置30は、組付ラインUから空の台車10を排出してエンジンサブラインSEに供給するものであり、具体的には、図2に示すように、台車10を保持する保持部31と、保持部31を組付ラインUと接近・離反する方向(図2の上下方向)にスライドさせるスライド機構32とを備える。保持部31は、略コの字型をなした一対の係合爪31aと、一対の係合爪31aを互いに離反する方向(図2の左右方向)に移動させるシリンダ31bとを有する。スライド機構32には、例えばロッドレスシリンダが使用される。
【0023】
引き込み装置30による台車10の引き込みは、次のようにして行われる。まず、図2(a)に示す待機状態では、スライド機構32により保持部31を後退させ、且つ、保持部31のシリンダ31bを後退させている。この待機状態から、図2(b)に示すように、スライド機構32により保持部31を組付ラインU側に突出させ、台車10の一対の脚軸の間に保持部31を配置する。このとき、保持部31の重みでアーム33が撓まないように、保持部31に自重を支える支持部(例えば車輪付きの支持柱、図示省略)を設けてもよい。そして、図2(c)に示すように、保持部31のシリンダ31bを突出させて一対の係合爪31aで台車10の一対の脚軸を内側から係合保持する。このとき、略コの字型の係合爪31aの爪幅(両突出部の幅)を台車10の脚軸の直径よりも大きくすることで、係合爪31aと台車10の脚軸との位置がずれた場合でも、係合爪31aで台車10の脚軸を確実に係合保持できる。その後、図2(d)に示すように、スライド機構32により保持部31を後退させ、係合爪31aで係合保持した台車10をスライドさせる。以上により、空の台車10が組付ラインUから排出されてエンジンサブラインSEに供給される。
【0024】
予備搬送エリアSE0には、適宜の駆動手段で空の台車10が第1組立エリアSE1へ向けて搬送され、本実施形態では、図1に示すように、予備搬送エリアSE0における台車10の搬送ラインを、第2組付ラインSE2及びストックエリアSE3を結ぶ直線状の搬送ラインとの間隔が下流側へ向けて広がるように蛇行させている。これにより、サブラインSEのうち、組付ラインUへの台車供給部及び台車排出部を隣接させた場合であっても、部品の組立作業が行われる第1組立エリアSE1と第2組立エリアSE2との間に作業スペースを確保できる。予備搬送エリアSE0における台車10の搬送経路の途中で、台車10に部品台車40が取付けられる。部品台車40は、図3(a)に示すような平面視で略コの字型をなし、その内側に台車10を収容可能となっている(図3(b)参照)。部品台車40に設けられた部品台41には、第1部品棚P1にストックされた各種部品(図示省略)が搭載され、各種部品を搭載した部品台車40が部品棚P1から搬出されて台車10に取付けられる。
【0025】
第1組立エリアSE1には、サブライン駆動手段として例えばチェーンコンベヤ(図示省略)が設けられる。このチェーンコンベヤにより台車10及び部品台車40を搬送しながら、第2ストック棚P2にストックされたエンジン(図示省略)を台車10上に搭載すると共に、第3ストック棚P3にストックされたトランスミッション(図示省略)を、台車10上に搭載したエンジンにボルトで結合する。このエンジン及びトランスミッションに、部品台車40の部品台41に搭載された各種部品(例えば、エンジンワイヤー、スターター、コンプレッサーなど)が組み付けられる。第1組立エリアSE1では、台車10の搬送方向と直交する方向の両側から各種部品が組み付けられる。すなわち、第1組立エリアSE1では、台車10の搬送方向からは組付作業が行われないため、第1組立エリアSE1において搬送される複数の台車10及び部品台車40を、隣接した状態で搬送することができる。
【0026】
第1組立エリアSE1の下流端部に達した台車10及び部品台車40は、第2組立エリアSE2に移送される。このとき、第1組立エリアSE1から第2組立エリアSE2に台車10及び部品台車40を移送する手段は特に限定されず、本実施形態では、図2に示す引き込み装置30と同様の構成の押し出し装置30’及び30’’(詳細な図示は省略)で移送される。
【0027】
第2組立エリアSE2には、サブライン駆動手段として例えばフロアコンベヤ(図示省略)が設けられる。このフロアコンベヤにより台車10及び部品台車40を搬送しながら、エンジン及びトランスミッションに各種部品(例えば、サスペンションメンバー、ドライブシャフトなど)を組み付け、エンジンユニットEの組立が完了する。このとき、例えばドライブシャフトは、台車10の搬送方向両側からエンジンに組み付けられるため、台車10及び部品台車40の搬送方向両側に作業者が作業するスペースを確保する必要がある。従って、第2組立エリアSE2における複数の台車10間のピッチは、第1組立エリアSE1におけるピッチと比べて大きくなる(図1参照)。
【0028】
第2組立エリアSE2でエンジンユニットEの組立が完了したら、台車10及び部品台車40が第2組立エリアSE2から搬出され、エンジンユニットEを搭載した台車10から部品台車40が分離される。台車10から分離された空の部品台車40は、第1部品棚P1に返却される。エンジンユニットEを搭載した台車10は、適宜の手段(例えばスロープ)でストックエリアSE3に搬送される。本実施形態では、図1に示すように、ストックエリアSE3に3台の台車10がストックされる。
【0029】
ストックエリアSE3にストックされた台車10は、供給装置50により組付ラインUに供給される。台車10は、組付ラインUに対して任意の方向から供給することができ、本実施形態では組付ラインUに対して直交する方向から台車10を供給している。供給装置50は、例えば図4に示すように、台車10の脚部を係合保持する保持部51と、保持部51を台車供給方向(組付ラインUと直交する方向)にスライドさせるスライド機構52とを有する。保持部51は、ストックエリアSE3にストックされた3台の台車10と同じピッチで配され、各台車10の一対の脚部を係合保持する略コの字型の一対の係合爪51aと、各係合爪51aを台車10に向けて突出あるいは後退させるシリンダ51bとを備える。各保持部51は支持部53で接続され、支持部53がスライド機構52でスライド可能となっている。
【0030】
供給装置50による組付ラインUへの台車10の供給は、次のような手順で行われる。まず、図4(a)に示すように、ストックエリアSE3にストックされた各台車10の側方に保持部51を配置し、この状態で保持部51のシリンダ51bを突出させて、係合爪51aで台車10の脚部を係合保持する(図4(a)の点線参照)。次に、図4(b)に示すように、スライド機構52で各保持部51及び台車10を組付ラインU側にスライドさせ、先頭の台車10が組付ラインU上に配置されたらスライド機構52を停止させる。その後、図4(c)に示すように、保持部51のシリンダ51bを後退させると共に、スライド機構52を組付ラインUから離反する側(図中で下方)にスライドさせ、各保持部51を元の位置に戻す。各保持部51が元の位置に戻るまでに、第2組立エリアSE2からエンジンユニットEを搭載した新たな台車10(図3(c)の点線で示す台車)が搬送され、ストックエリアSE3にストックされる。以上の動作を繰り返すことにより、台車10が組付ラインUに順次供給される。
【0031】
リアアクスルユニットRは、リアアクスルサブラインSRにおいて台車20を搬送しながらこの台車20の上で組み立てられる。図1に示す第4部品棚P4には、リアアクスルユニットRの各部品がストックされている。リアアクスルサブラインSRで組み立てられたリアアクスルユニットRは、台車20に搭載されたまま組付ラインUに供給され、メインラインMに沿って搬送されながら車体Bに組み付けられる。リアアクスルユニットRが車体Bに組み付けられたら、空の台車20が再びリアアクスルサブラインSRに供給され、この台車20の上で新たなリアアクスルユニットRの組付作業が行われる。この自動車組立設備100では、リアアクスルサブラインSRにおいて台車20を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインUにおいて台車20を搬送する組付ライン駆動手段とが別個に設けられる。尚、リアアクスルサブラインSRにおける台車20のサブライン駆動手段は、エンジンサブラインSEにおける各種駆動手段を適宜採用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、組付ラインUにおけるエンジンユニットE及びリアアクスルユニットRの車体Bへの組付手順を、図5〜10を用いて説明する。尚、ここでは、メインラインMの車体Bの搬送方向前方(図中左側)を単に「前方」と言い、その反対側(図中右側)を「後方」と言う。
【0033】
組付ラインUでは、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットR(図中では、簡略化して矩形で表している)を、組付ライン駆動手段により車体Bと同期して搬送しながら持ち上げ、車体Bに下方から組み付ける。本実施形態では、組付ライン駆動手段として、図5に示すように、一対の昇降台61,62を備えたリフタ60が設けられる。リフタ60は、組付ラインU内において前後方向に往復動可能とされる。昇降台61,62は、制御部(図示省略)の自動制御により、あるいは、作業者のスイッチ操作により、昇降可能とされる。
【0034】
まず、エンジンサブラインSE及びリアアクスルサブラインSRから、エンジンユニットEを搭載した台車10及びリアアクスルユニットRを搭載した台車20が組付ラインUの所定位置に供給され、この台車10及び台車20の下方にリフタ60が潜り込む(図5参照)。その後、図6に示すように、リフタ60に設けられた一対の昇降台61,62を上昇させ、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRを持ち上げて、これらの部品をリフタ60上に搭載する。本実施形態では、エンジンユニットEは台車10と共に持ち上げられ、リアアクスルユニットRは台車20から分離して持ち上げられる。
【0035】
エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRを搭載したリフタ60の上方位置に、オーバーヘッドコンベヤ70により車体Bが搬送されたら、この車体Bと同期してリフタ60が前方に搬送される(図7参照)。これと共に、リフタ60の昇降台61,62をさらに上昇させ、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRを車体Bの所定位置に組み付ける。リアアクスルユニットRが分離された空の台車20は、別途の駆動手段(図示省略)で組付ラインUから排出され、リアアクスルサブラインSRに供給される。
【0036】
エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRの組付が完了したら、リフタ60を停止させ、昇降台61,62を中間位置まで降下させる(図8参照)。その後、リフタ60を後方に搬送し、台車10の排出位置で停止させる(図9参照)。この排出位置でリフタ60の昇降台61,62を下限位置まで降下させ、昇降台61と台車10とを分離すると共に、台車10を接地させる(図10参照)。このときまでに、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRを搭載した新たな台車10,20が、組付ラインUの所定位置に供給される。その後、リフタ60をさらに後方に搬送して新たな台車10,20の下方に潜りこませると共に、組付ラインUの排出位置に残された台車10を、引き込み装置30(図1及び図3参照)により組付ラインUから排出し、エンジンサブラインSEの予備搬送エリアSE0に供給する。
【0037】
以上のように、自動車組立設備100では、サブライン及び組付ラインで台車を循環して搬送しながら、当該台車上で各部品(エンジンユニットE及びリアアクスルユニットR)の組立及び車体Bへの組付が行われる。これにより、各部品を台車間で移載する作業及び設備を省略し、作業の容易化及び設備の簡略化が図られる。
【0038】
このように台車10,20を循環搬送する設備で、サブラインにおいて台車10,20を搬送するサブライン駆動手段(第1組立エリアSE1のチェーンコンベヤ、及び、第2組立エリアSE2のフロアコンベヤ)と、組付ラインUにおいて台車10,20を搬送する組付ライン駆動手段(リフタ60)とを別個に設けることで、設備の設計の自由度が高められる。例えば、エンジンサブラインSEにおける台車10間のピッチと組付ラインUにおける台車10間のピッチとを異ならせることができるため、それぞれのラインで必要最小限のピッチに設定することができ、設備をコンパクトにすることができる。また、上記のように、第1組立エリアSE1のサブライン駆動手段と第2組立エリアSE2のサブライン駆動手段とを別個に設けることで、各組立エリアで台車10間のピッチを個々に設定できるため、各組立エリアで台車10間のピッチを必要最小限の値に設定することで設備をさらにコンパクト化することができる。
【0039】
また、サブライン駆動手段と組付ライン駆動手段とを別個に設けることで、エンジンサブラインSEと組付ラインUとを滑らかに連続させる必要はなく、組付ラインUに対して交差する方向から(本実施形態では直角方向から)台車を供給及び排出することができる。これにより、各ラインのレイアウト(特に組付ラインUへの台車の供給方向及び排出方向)の自由度が高まり、自動車組立設備内のデッドスペースを減らして設備スペースを縮小することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、図11に拡大して示すように、組付ラインUへの台車供給路UI、及び、組付ラインUからの台車排出路UOを、共に組付作業エリアAの上流側に設けている。これにより、台車排出路UOあるいは台車供給路UIにより組付作業エリアAが分断されず、作業性が確保される。また、組付作業エリアAの下流側に台車排出路UOや台車供給路UIが無いので、組付作業エリアA内で組付作業が完了しない場合でも、車体Bの搬送と共に作業者が組付作業エリアAから下流側に移動しながら組付作業を継続することができるため、ラインを止めることなく組付を完了させることができる。
【0041】
このように、組付作業エリアAの上流側に台車排出路UOを設けた場合、組付ラインUの下流端まで搬送された台車10を、台車排出路UOまで戻す作業が必要となる。本実施形態では、空になった台車10をリフタ60で台車排出路UOの位置まで搬送しているため、別途の搬送装置を設けることなく台車10を組付ラインUの排出位置まで搬送することができる。
【符号の説明】
【0042】
100 自動車組立設備
10,20 台車
30 引き込み装置
40 部品台車
50 供給装置
60 リフタ
61,62 昇降台
M メインライン
SE エンジンサブライン
SE0 予備搬送エリア
SE1 第1組立エリア
SE2 第2組立エリア
SE3 ストックエリア
SR リアアクスルサブライン
U 組付ライン
A 組付作業エリア
B 車体
E エンジンユニット
R リアアクスルユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体にエンジンやリアアクスルユニット等の部品を組み付ける自動車組立設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に従来例として示されている自動車組立設備(エンジン搭載装置)では、車体を連続的に搬送するメインラインと、メインラインに一部が沿うように配置され、エンジンユニットを搭載した搭載台車を搬送しながら、メインラインにおいて搬送される車体にエンジンユニットを組み付ける組付ライン(エンジン搭載ライン)と、準備台車上でエンジンユニットを組み立てるサブライン(エンジンユニット準備ライン)とを有する。このような自動車組立設備では、サブラインで組み立てられたエンジンユニットを、サブラインの準備台車から組付ラインの搭載台車に移載する移載ステーションが必要となり、設備スペースが大きくなる。
【0003】
そこで、同文献では、図14に示すように、搭載台車Dを搬送するループコンベヤCを、メインラインMに一部が沿うように配置し、このループコンベヤCの搭載台車D上でエンジンユニットの組立を行うようにした自動車組立設備が提案されている。このように、台車(搭載台車)をループコンベヤで搬送しながら、この台車上で部品の組立及び当該部品の車体への組付を行うことにより、上述の組立設備のようにサブラインの準備台車上で組み立てた部品を組付ラインの搭載台車に移載する工程が不要となるため、移載工程の省略により組立工数を削減できると共に、移載ステーションの省略により設備スペースが縮小できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−66806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の自動車組立設備では、組付ライン及びサブラインにおいて、ループコンベヤ上に配された複数の台車を一つの駆動手段(駆動コンベヤ、図14では省略している)で搬送しているため、組付ライン及びサブラインの設計が著しく制限されることとなる。
【0006】
例えば、上記のようにループコンベヤC上の複数の台車Dを一つの駆動手段で搬送すると、図14に示すように複数の台車D間のピッチを一定にせざるを得ない。組付ラインでは、メインラインにおいて搬送される車体のピッチに合わせて台車を搬送する必要があるため、台車間のピッチが比較的大きくなる。一方、サブラインでは、部品の組付作業が可能なピッチで台車を搬送すればよいため、通常、組付ラインにおける台車間のピッチよりも台車間のピッチは小さくて良い。しかし、上記のように台車間のピッチが一定であると、比較的大きい組付ラインにおけるピッチに合わせて全ての台車間のピッチを設定する必要があるため、サブラインにおけるピッチが無用に大きくなって設備スペースが大きくなる。
【0007】
また、ループコンベヤC上の台車Dを一つの駆動手段で搬送する場合、ループコンベヤCは滑らかに連続した形状(上記特許文献ではトラック形、図14参照)にする必要がある。このようなループコンベヤCは、メインラインMに沿った領域Tの前後の領域Q1,Q2においてメインラインMと非常に近接しているため、この領域Q1,Q2では、ループコンベヤCが邪魔になって作業者による組付作業や部品棚等の設置が困難となる。このため、設備内のデッドスペースが増えて設備スペースが大きくなる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、自動車組立設備における組付ライン及びサブラインの設計の自由度を高め、設備スペースを縮小することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、車体を搬送するメインラインと、複数の台車を搬送しながら各台車上で部品を組み立てるサブラインと、前記部品を搭載した前記台車をメインラインに沿って搬送しながら前記部品を前記車体に組み付ける組付ラインとを備えた自動車組立設備であって、サブラインにおいて前記台車を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインにおいて前記台車を搬送する組付ライン駆動手段とを別個に設けたことを特徴とする。
【0010】
このように、本発明は、サブラインにおいて台車を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインにおいて台車を搬送する組付ライン駆動手段とを別個に設けたことにより、サブライン及び組付ラインのそれぞれにおいて、台車の搬送速度や台車間のピッチ、あるいは各ラインのレイアウトを自由に設定することができるため、上記特許文献1のようにループコンベヤ上に配された複数の台車を一つの駆動手段で搬送する場合と比べて、設備設計の自由度が高められる。
【0011】
例えば、サブライン駆動手段と組付ライン駆動手段とを別個に設けることで、サブラインにおける台車間のピッチと組付ラインにおける台車間のピッチとを異ならせることができる。これにより、各ラインの台車をそれぞれ必要最小限のピッチで配置することができ、無駄なスペースを減らして設備スペースを縮小することができる。さらに、サブラインでは、組み立てる部品の種類によって必要となる台車間のピッチが異なることが多いため、サブライン内に、台車間のピッチが異なる複数の領域を設けることで、各領域で、組み立てる部品の種類に合わせて必要最小限のピッチを設定することができ、設備スペースをさらに縮小することができる。
【0012】
また、サブライン駆動手段と組付ライン駆動手段とを別個に設けることで、台車を搬送する経路を必ずしも滑らかに連続する必要はなくなるため、例えば、組付ラインに前記台車を供給する方向、及び、組付ラインから前記台車を排出する方向の少なくとも一方を、組付ラインにおける前記台車の搬送方向と交差する方向とすることができる。これにより、各ラインのレイアウトの自由度が高まり、自動車組立設備内のデッドスペースを減らして設備スペースを縮小することが可能となる。
【0013】
組付ラインUでは、例えば図12に示すように、台車(リフタ60のみを示す)の両側に、作業者による組付作業エリアAが設けられる。通常、組付ラインUへの台車供給路UI及び組付ラインからの台車排出路UOは、台車が頻繁に搬送されるため、作業者の侵入を禁止するデッドスペースとなっている。このため、例えば図12に示すように、組付作業エリアAの途中に台車排出路UOが設けられると、組付作業エリアAが台車排出路UOにより分断されるため、作業性が極めて悪くなる。また、例えば図13に示すように、組付作業エリアAの下流側(図中左側)に台車排出路UOを設けると、作業者は組付作業エリアAよりも下流側には移動できないため、組付作業エリアA内で組付作業が完了しなかった場合には、ライン全体を停止させて組付を完了させる必要がある。
【0014】
そこで、図11に示すように、組付ラインUの台車供給路UI及び台車排出路UOを共に組付作業エリアAの上流側(図中右側)に配置すれば、台車供給路UIや台車排出路UOで組付作業エリアAが分断されないため、作業性の低下を回避できる。また、組付作業エリアAより下流側に作業者が移動することが可能であるため、組付作業エリアA内で組付作業が完了しなかった場合は、車体を搬送したまま組付作業エリアAより下流側の領域で組付作業を完了させることができる。
【0015】
このような自動車組立設備において、前記部品を前記車体に組み付けた後、空になった台車を組付ライン駆動手段により台車排出路UOの位置まで搬送すれば、別途の駆動手段を要することなく台車を排出位置まで搬送することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の自動車組立設備によれば、組付ライン及びサブラインの設計の自由度を高め、設備スペースを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自動車組立設備の平面図である。
【図2】引き込み装置の平面図である。
【図3】(a)は台車10及び部品台車40の斜視図であり、(b)は両者を一体化した状態の斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は供給装置の平面図である。
【図5】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図6】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図7】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図8】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図9】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図10】組付ラインにおける部品の車体への組付工程を示す側面図である。
【図11】組付ラインを拡大した平面図である。
【図12】他の例の組付ラインを拡大した平面図である。
【図13】他の例の組付ラインを拡大した平面図である。
【図14】従来の自動車組立設備の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示す自動車組立設備100は、車体Bのフロント側部分にエンジンユニットEを、車体Bのリア側部分にリアアクスルユニットRを組み付ける設備である。この自動車組立設備100は、車体Bを吊り下げ状態で搬送するメインラインMと、エンジンユニットEを組み立てるエンジンサブラインSEと、リアアクスルユニットRを組み立てるリアアクスルサブラインSRと、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRをメインラインMに沿って搬送しながら車体Bに組み付ける組付ラインUとを備える。尚、図1では、車体B、エンジンユニットE、及び、リアアクスルユニットRの図示を省略している。
【0020】
エンジンユニットEは、エンジンサブラインSEにおいて台車10を搬送しながらこの台車10の上で組み立てられる。組み立てられたエンジンユニットEは、台車10に搭載されたまま供給手段(本実施形態では供給装置50)により組付ラインUに供給され、メインラインMに沿って搬送されながら車体Bに組み付けられる。エンジンユニットEが車体に組みつけられたら、排出手段(本実施形態では引き込み装置30)により空の台車10が組付ラインUから排出されて再びエンジンサブラインSEに供給され、この台車10の上で新たなエンジンユニットEの組付作業が行われる。この自動車組立設備100では、エンジンサブラインSEにおいて台車10を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインUにおいて台車10を搬送する組付ライン駆動手段とが別個に設けられる。
【0021】
エンジンサブラインSEは、引き込み装置30により組付ラインUから引き込まれた空の台車10を第1組立エリアSE1まで搬送する予備搬送エリアSE0と、台車10を搬送しながらエンジンユニットEの組立作業を行う第1組立エリアSE1及び第2組立エリアSE2と、組み立てられたエンジンユニットEを搭載した台車10をストックするストックエリアSE3と、ストックエリアSE3の台車10を組付ラインUに供給する供給装置50とを有する。
【0022】
引き込み装置30は、組付ラインUから空の台車10を排出してエンジンサブラインSEに供給するものであり、具体的には、図2に示すように、台車10を保持する保持部31と、保持部31を組付ラインUと接近・離反する方向(図2の上下方向)にスライドさせるスライド機構32とを備える。保持部31は、略コの字型をなした一対の係合爪31aと、一対の係合爪31aを互いに離反する方向(図2の左右方向)に移動させるシリンダ31bとを有する。スライド機構32には、例えばロッドレスシリンダが使用される。
【0023】
引き込み装置30による台車10の引き込みは、次のようにして行われる。まず、図2(a)に示す待機状態では、スライド機構32により保持部31を後退させ、且つ、保持部31のシリンダ31bを後退させている。この待機状態から、図2(b)に示すように、スライド機構32により保持部31を組付ラインU側に突出させ、台車10の一対の脚軸の間に保持部31を配置する。このとき、保持部31の重みでアーム33が撓まないように、保持部31に自重を支える支持部(例えば車輪付きの支持柱、図示省略)を設けてもよい。そして、図2(c)に示すように、保持部31のシリンダ31bを突出させて一対の係合爪31aで台車10の一対の脚軸を内側から係合保持する。このとき、略コの字型の係合爪31aの爪幅(両突出部の幅)を台車10の脚軸の直径よりも大きくすることで、係合爪31aと台車10の脚軸との位置がずれた場合でも、係合爪31aで台車10の脚軸を確実に係合保持できる。その後、図2(d)に示すように、スライド機構32により保持部31を後退させ、係合爪31aで係合保持した台車10をスライドさせる。以上により、空の台車10が組付ラインUから排出されてエンジンサブラインSEに供給される。
【0024】
予備搬送エリアSE0には、適宜の駆動手段で空の台車10が第1組立エリアSE1へ向けて搬送され、本実施形態では、図1に示すように、予備搬送エリアSE0における台車10の搬送ラインを、第2組付ラインSE2及びストックエリアSE3を結ぶ直線状の搬送ラインとの間隔が下流側へ向けて広がるように蛇行させている。これにより、サブラインSEのうち、組付ラインUへの台車供給部及び台車排出部を隣接させた場合であっても、部品の組立作業が行われる第1組立エリアSE1と第2組立エリアSE2との間に作業スペースを確保できる。予備搬送エリアSE0における台車10の搬送経路の途中で、台車10に部品台車40が取付けられる。部品台車40は、図3(a)に示すような平面視で略コの字型をなし、その内側に台車10を収容可能となっている(図3(b)参照)。部品台車40に設けられた部品台41には、第1部品棚P1にストックされた各種部品(図示省略)が搭載され、各種部品を搭載した部品台車40が部品棚P1から搬出されて台車10に取付けられる。
【0025】
第1組立エリアSE1には、サブライン駆動手段として例えばチェーンコンベヤ(図示省略)が設けられる。このチェーンコンベヤにより台車10及び部品台車40を搬送しながら、第2ストック棚P2にストックされたエンジン(図示省略)を台車10上に搭載すると共に、第3ストック棚P3にストックされたトランスミッション(図示省略)を、台車10上に搭載したエンジンにボルトで結合する。このエンジン及びトランスミッションに、部品台車40の部品台41に搭載された各種部品(例えば、エンジンワイヤー、スターター、コンプレッサーなど)が組み付けられる。第1組立エリアSE1では、台車10の搬送方向と直交する方向の両側から各種部品が組み付けられる。すなわち、第1組立エリアSE1では、台車10の搬送方向からは組付作業が行われないため、第1組立エリアSE1において搬送される複数の台車10及び部品台車40を、隣接した状態で搬送することができる。
【0026】
第1組立エリアSE1の下流端部に達した台車10及び部品台車40は、第2組立エリアSE2に移送される。このとき、第1組立エリアSE1から第2組立エリアSE2に台車10及び部品台車40を移送する手段は特に限定されず、本実施形態では、図2に示す引き込み装置30と同様の構成の押し出し装置30’及び30’’(詳細な図示は省略)で移送される。
【0027】
第2組立エリアSE2には、サブライン駆動手段として例えばフロアコンベヤ(図示省略)が設けられる。このフロアコンベヤにより台車10及び部品台車40を搬送しながら、エンジン及びトランスミッションに各種部品(例えば、サスペンションメンバー、ドライブシャフトなど)を組み付け、エンジンユニットEの組立が完了する。このとき、例えばドライブシャフトは、台車10の搬送方向両側からエンジンに組み付けられるため、台車10及び部品台車40の搬送方向両側に作業者が作業するスペースを確保する必要がある。従って、第2組立エリアSE2における複数の台車10間のピッチは、第1組立エリアSE1におけるピッチと比べて大きくなる(図1参照)。
【0028】
第2組立エリアSE2でエンジンユニットEの組立が完了したら、台車10及び部品台車40が第2組立エリアSE2から搬出され、エンジンユニットEを搭載した台車10から部品台車40が分離される。台車10から分離された空の部品台車40は、第1部品棚P1に返却される。エンジンユニットEを搭載した台車10は、適宜の手段(例えばスロープ)でストックエリアSE3に搬送される。本実施形態では、図1に示すように、ストックエリアSE3に3台の台車10がストックされる。
【0029】
ストックエリアSE3にストックされた台車10は、供給装置50により組付ラインUに供給される。台車10は、組付ラインUに対して任意の方向から供給することができ、本実施形態では組付ラインUに対して直交する方向から台車10を供給している。供給装置50は、例えば図4に示すように、台車10の脚部を係合保持する保持部51と、保持部51を台車供給方向(組付ラインUと直交する方向)にスライドさせるスライド機構52とを有する。保持部51は、ストックエリアSE3にストックされた3台の台車10と同じピッチで配され、各台車10の一対の脚部を係合保持する略コの字型の一対の係合爪51aと、各係合爪51aを台車10に向けて突出あるいは後退させるシリンダ51bとを備える。各保持部51は支持部53で接続され、支持部53がスライド機構52でスライド可能となっている。
【0030】
供給装置50による組付ラインUへの台車10の供給は、次のような手順で行われる。まず、図4(a)に示すように、ストックエリアSE3にストックされた各台車10の側方に保持部51を配置し、この状態で保持部51のシリンダ51bを突出させて、係合爪51aで台車10の脚部を係合保持する(図4(a)の点線参照)。次に、図4(b)に示すように、スライド機構52で各保持部51及び台車10を組付ラインU側にスライドさせ、先頭の台車10が組付ラインU上に配置されたらスライド機構52を停止させる。その後、図4(c)に示すように、保持部51のシリンダ51bを後退させると共に、スライド機構52を組付ラインUから離反する側(図中で下方)にスライドさせ、各保持部51を元の位置に戻す。各保持部51が元の位置に戻るまでに、第2組立エリアSE2からエンジンユニットEを搭載した新たな台車10(図3(c)の点線で示す台車)が搬送され、ストックエリアSE3にストックされる。以上の動作を繰り返すことにより、台車10が組付ラインUに順次供給される。
【0031】
リアアクスルユニットRは、リアアクスルサブラインSRにおいて台車20を搬送しながらこの台車20の上で組み立てられる。図1に示す第4部品棚P4には、リアアクスルユニットRの各部品がストックされている。リアアクスルサブラインSRで組み立てられたリアアクスルユニットRは、台車20に搭載されたまま組付ラインUに供給され、メインラインMに沿って搬送されながら車体Bに組み付けられる。リアアクスルユニットRが車体Bに組み付けられたら、空の台車20が再びリアアクスルサブラインSRに供給され、この台車20の上で新たなリアアクスルユニットRの組付作業が行われる。この自動車組立設備100では、リアアクスルサブラインSRにおいて台車20を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインUにおいて台車20を搬送する組付ライン駆動手段とが別個に設けられる。尚、リアアクスルサブラインSRにおける台車20のサブライン駆動手段は、エンジンサブラインSEにおける各種駆動手段を適宜採用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、組付ラインUにおけるエンジンユニットE及びリアアクスルユニットRの車体Bへの組付手順を、図5〜10を用いて説明する。尚、ここでは、メインラインMの車体Bの搬送方向前方(図中左側)を単に「前方」と言い、その反対側(図中右側)を「後方」と言う。
【0033】
組付ラインUでは、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットR(図中では、簡略化して矩形で表している)を、組付ライン駆動手段により車体Bと同期して搬送しながら持ち上げ、車体Bに下方から組み付ける。本実施形態では、組付ライン駆動手段として、図5に示すように、一対の昇降台61,62を備えたリフタ60が設けられる。リフタ60は、組付ラインU内において前後方向に往復動可能とされる。昇降台61,62は、制御部(図示省略)の自動制御により、あるいは、作業者のスイッチ操作により、昇降可能とされる。
【0034】
まず、エンジンサブラインSE及びリアアクスルサブラインSRから、エンジンユニットEを搭載した台車10及びリアアクスルユニットRを搭載した台車20が組付ラインUの所定位置に供給され、この台車10及び台車20の下方にリフタ60が潜り込む(図5参照)。その後、図6に示すように、リフタ60に設けられた一対の昇降台61,62を上昇させ、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRを持ち上げて、これらの部品をリフタ60上に搭載する。本実施形態では、エンジンユニットEは台車10と共に持ち上げられ、リアアクスルユニットRは台車20から分離して持ち上げられる。
【0035】
エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRを搭載したリフタ60の上方位置に、オーバーヘッドコンベヤ70により車体Bが搬送されたら、この車体Bと同期してリフタ60が前方に搬送される(図7参照)。これと共に、リフタ60の昇降台61,62をさらに上昇させ、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRを車体Bの所定位置に組み付ける。リアアクスルユニットRが分離された空の台車20は、別途の駆動手段(図示省略)で組付ラインUから排出され、リアアクスルサブラインSRに供給される。
【0036】
エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRの組付が完了したら、リフタ60を停止させ、昇降台61,62を中間位置まで降下させる(図8参照)。その後、リフタ60を後方に搬送し、台車10の排出位置で停止させる(図9参照)。この排出位置でリフタ60の昇降台61,62を下限位置まで降下させ、昇降台61と台車10とを分離すると共に、台車10を接地させる(図10参照)。このときまでに、エンジンユニットE及びリアアクスルユニットRを搭載した新たな台車10,20が、組付ラインUの所定位置に供給される。その後、リフタ60をさらに後方に搬送して新たな台車10,20の下方に潜りこませると共に、組付ラインUの排出位置に残された台車10を、引き込み装置30(図1及び図3参照)により組付ラインUから排出し、エンジンサブラインSEの予備搬送エリアSE0に供給する。
【0037】
以上のように、自動車組立設備100では、サブライン及び組付ラインで台車を循環して搬送しながら、当該台車上で各部品(エンジンユニットE及びリアアクスルユニットR)の組立及び車体Bへの組付が行われる。これにより、各部品を台車間で移載する作業及び設備を省略し、作業の容易化及び設備の簡略化が図られる。
【0038】
このように台車10,20を循環搬送する設備で、サブラインにおいて台車10,20を搬送するサブライン駆動手段(第1組立エリアSE1のチェーンコンベヤ、及び、第2組立エリアSE2のフロアコンベヤ)と、組付ラインUにおいて台車10,20を搬送する組付ライン駆動手段(リフタ60)とを別個に設けることで、設備の設計の自由度が高められる。例えば、エンジンサブラインSEにおける台車10間のピッチと組付ラインUにおける台車10間のピッチとを異ならせることができるため、それぞれのラインで必要最小限のピッチに設定することができ、設備をコンパクトにすることができる。また、上記のように、第1組立エリアSE1のサブライン駆動手段と第2組立エリアSE2のサブライン駆動手段とを別個に設けることで、各組立エリアで台車10間のピッチを個々に設定できるため、各組立エリアで台車10間のピッチを必要最小限の値に設定することで設備をさらにコンパクト化することができる。
【0039】
また、サブライン駆動手段と組付ライン駆動手段とを別個に設けることで、エンジンサブラインSEと組付ラインUとを滑らかに連続させる必要はなく、組付ラインUに対して交差する方向から(本実施形態では直角方向から)台車を供給及び排出することができる。これにより、各ラインのレイアウト(特に組付ラインUへの台車の供給方向及び排出方向)の自由度が高まり、自動車組立設備内のデッドスペースを減らして設備スペースを縮小することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、図11に拡大して示すように、組付ラインUへの台車供給路UI、及び、組付ラインUからの台車排出路UOを、共に組付作業エリアAの上流側に設けている。これにより、台車排出路UOあるいは台車供給路UIにより組付作業エリアAが分断されず、作業性が確保される。また、組付作業エリアAの下流側に台車排出路UOや台車供給路UIが無いので、組付作業エリアA内で組付作業が完了しない場合でも、車体Bの搬送と共に作業者が組付作業エリアAから下流側に移動しながら組付作業を継続することができるため、ラインを止めることなく組付を完了させることができる。
【0041】
このように、組付作業エリアAの上流側に台車排出路UOを設けた場合、組付ラインUの下流端まで搬送された台車10を、台車排出路UOまで戻す作業が必要となる。本実施形態では、空になった台車10をリフタ60で台車排出路UOの位置まで搬送しているため、別途の搬送装置を設けることなく台車10を組付ラインUの排出位置まで搬送することができる。
【符号の説明】
【0042】
100 自動車組立設備
10,20 台車
30 引き込み装置
40 部品台車
50 供給装置
60 リフタ
61,62 昇降台
M メインライン
SE エンジンサブライン
SE0 予備搬送エリア
SE1 第1組立エリア
SE2 第2組立エリア
SE3 ストックエリア
SR リアアクスルサブライン
U 組付ライン
A 組付作業エリア
B 車体
E エンジンユニット
R リアアクスルユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を搬送するメインラインと、台車を搬送しながら当該台車上で部品を組み立てるサブラインと、前記部品を搭載した前記台車をメインラインに沿って搬送しながら前記部品を前記車体に組み付ける組付ラインとを備えた自動車組立設備であって、
サブラインにおいて前記台車を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインにおいて前記台車を搬送する組付ライン駆動手段とを別個に設けた自動車組立設備。
【請求項2】
サブラインにおける前記台車間のピッチと、組付ラインにおける前記台車間のピッチとを異ならせた請求項1記載の自動車組立設備。
【請求項3】
サブライン内に、前記台車間のピッチが異なる複数の領域を設けた請求項2記載の自動車組立設備。
【請求項4】
組付ラインに前記台車を供給する方向、及び、組付ラインから前記台車を排出する方向の少なくとも一方を、組付ラインにおける前記台車の搬送方向と交差する方向とした請求項1〜3の何れかに記載の自動車組立設備。
【請求項5】
組付ラインに前記台車を供給するための台車供給路、及び、組付ラインから前記台車を排出するための台車排出路を、組付ラインにおける組付作業エリアの上流側に配した請求項1〜4の何れかに記載の自動車組立設備。
【請求項6】
前記部品を前記車体に組み付けた後、空になった前記台車を組付ライン駆動手段により前記台車排出路の位置まで搬送するようにした請求項1〜5の何れかに記載の自動車組立設備。
【請求項1】
車体を搬送するメインラインと、台車を搬送しながら当該台車上で部品を組み立てるサブラインと、前記部品を搭載した前記台車をメインラインに沿って搬送しながら前記部品を前記車体に組み付ける組付ラインとを備えた自動車組立設備であって、
サブラインにおいて前記台車を搬送するサブライン駆動手段と、組付ラインにおいて前記台車を搬送する組付ライン駆動手段とを別個に設けた自動車組立設備。
【請求項2】
サブラインにおける前記台車間のピッチと、組付ラインにおける前記台車間のピッチとを異ならせた請求項1記載の自動車組立設備。
【請求項3】
サブライン内に、前記台車間のピッチが異なる複数の領域を設けた請求項2記載の自動車組立設備。
【請求項4】
組付ラインに前記台車を供給する方向、及び、組付ラインから前記台車を排出する方向の少なくとも一方を、組付ラインにおける前記台車の搬送方向と交差する方向とした請求項1〜3の何れかに記載の自動車組立設備。
【請求項5】
組付ラインに前記台車を供給するための台車供給路、及び、組付ラインから前記台車を排出するための台車排出路を、組付ラインにおける組付作業エリアの上流側に配した請求項1〜4の何れかに記載の自動車組立設備。
【請求項6】
前記部品を前記車体に組み付けた後、空になった前記台車を組付ライン駆動手段により前記台車排出路の位置まで搬送するようにした請求項1〜5の何れかに記載の自動車組立設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−110636(P2011−110636A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267633(P2009−267633)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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