説明

自動車

【課題】車外を照明するランプと、衝突時の衝撃を吸収するバンパとを有する自動車において、バンパとランプとの間の隙間を小さくすることを可能とする。
【解決手段】ランプ1のケーシング3と、バンパ2のバンパカバー6とに、互いに係合するランプ係合部11とバンパ係合部12とを設け、バンパカバー6をバンパ係合部12とランプ係合部11だけを介してケーシング3に対して位置決めし、ケーシング3とバンパカバー6の間の隙間Gを小さくすることを可能とする。バンパ係合部12は、ランプ係合部11に対して、自動車の前後方向に摺動可能に嵌合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外を照明するランプと、衝突時の衝撃を吸収するバンパとを有する自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の前部又は後部には、車外を照明するランプ、例えばヘッドランプやリヤコンビネーションランプが設けられていると共に、衝突時の衝撃を緩和するためのバンパが設けられている(特許文献1参照)。
【0003】
図1は、本発明に係る自動車の一例を示す外観斜視図であり、図2は図1のII−II線拡大断面図であって、これらの図については後に詳しく説明する。一方、図7は、従来の自動車の一例を示す、図2と同様な断面図である。図7に示した自動車は、図示していないボルトによって車体に固定されたヘッドランプ1Aと、同じく図示していないボルトにより車体に固定された前部側のバンパ2Aとを有している。ヘッドランプ1Aは、ケーシング3Aと、そのケーシング内に配置された図示していない電球とを有し、ケーシング3Aは、前面レンズ4Aと、これに固定されたリフレクタ5Aとから構成されている。また、バンパ2Aはバンパカバー6Aを有している。
【0004】
ヘッドランプ1Aは、車体の一部を構成するサイドステー7Aの上方に位置し、そのサイドステー7Aに係止された保持部材10Aと、ヘッドランプ1Aのリフレクタ5Aに一体に付設された取付部9Aとが嵌合することにより、ヘッドランプ1Aがサイドステー7Aに対して位置決めされる。また、サイドステー7Aの上面に固着されたアッパリテーナ8Aにバンパカバー6Aの後端部24Aが前方から差し込まれて、バンパカバー6Aが、アッパリテーナ8Aに位置決めされている。サイドステー7Aは車体を構成する図示していないサイドメンバに固着されている。この状態で、バンパカバー6Aの上部17Aと、これに対向したヘッドランプ1Aのケーシング部分18Aとの間に隙間GAが形成される。
【0005】
自動車の製造時に、先ずヘッドランプ1Aが車体に固定され、次いでバンパ2Aが車体に固定される。その際、バンパカバー6Aの後端部24Aがアッパリテーナ8Aに差し込まれて係止される。
【0006】
上述のように、従来の自動車においては、バンパカバー6Aの後端部24Aが、サイドステー7Aに固着されたアッパリテーナ8Aに差し込まれて位置決めされている。一方、ヘッドランプ1Aは、保持部材10Aを介してサイドステー7Aに対して位置決めされている。このため、バンパカバー6Aと、ヘッドランプ1Aのケーシング3Aとの間には、アッパリテーナ8A、サイドステー7A及び保持部材10Aが介在し、バンパカバー6Aとケーシング3Aの間には多数の部材が存在する。このため、これらの部材の公差の積み上げによって、バンパカバー6Aとケーシング3Aとの相対位置が大きくばらつき、場合によっては、バンパカバー6Aの上部17Aとヘッドランプ1Aのケーシング部分18Aとの間に隙間ができず、バンパカバー6Aをヘッドランプ1Aの下方に組み付けることができなくなるおそれがある。そこで従来は、隙間GAが、例えば3mm程の大きな値となるように、ヘッドランプ1Aを含めた各部材の形態を設計していた。このため、実際には、各部材の形態のばらつきによって、バンパカバー6Aとヘッドランプ1Aとの間に3mmよりも大きな隙間GAが形成されることがあり、これによって自動車の外観が大きく低下するおそれがあった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−67308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来の欠点を除去した自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、冒頭に記載した形式の自動車において、前記ランプのケーシングと前記バンパのバンパカバーとに、互いに係合するランプ係合部とバンパ係合部をそれぞれ設け、該ランプ係合部とバンパ係合部は、ランプのケーシングとバンパカバーとの間の上下方向の隙間をほぼ一定に保つと共に、バンパカバーがランプのケーシングに対して前後方向に動くことを許容するように、互いに係合していることを特徴とする。
【0010】
また、上記自動車において、前記ランプ係合部とバンパ係合部には、該ランプ係合部とバンパ係合部が互いに係合したとき、ランプ係合部に対してバンパ係合部を前後方向に位置決めする位置決め手段が設けられているように構成することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バンパカバーが、ランプのケーシングに対して、バンパ係合部とランプ係合部のみを介して上下方向に位置決めされるので、そのケーシングとバンパカバーとの間の隙間が過度に大きくなったり、バンパカバーをランプの下方に装着できなくなる不具合の発生を阻止できる。しかも、バンパに衝撃力が加えられて、バンパカバーが車体に対して後方にずれ動いたとき、バンパ係合部がランプ係合部に対して後方に移動するので、ランプに大きな外力が加えられることを阻止でき、ランプの損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0013】
前述のように、図1は本発明に係る自動車の一例を示す外観斜視図であり、図2は図1のII−II線拡大断面図である。これらの図における符号Frは、自動車の前進方向を示しており(図3乃至図6においても同じ)、本明細書における「前」「後」は、この前進方向Frを基準とした前後を意味する。また、図1における符号Wは、自動車の車幅方向を示している(図3、図4及び図6においても同じ)。
【0014】
図1及び図2に示した自動車も、従来の自動車と同じく、車外を照明するランプの一例であるヘッドランプ1と、衝突時の衝撃を吸収する前部側のバンパ2とを有し、そのヘッドランプ1とバンパ2は、図示していないボルトによってそれぞれ車体に固定されている。
【0015】
ヘッドランプ1は、ケーシング3とそのケーシング3の内部に配置された図示していない電球を有し、ケーシング3は、例えば硬質ガラスより成る前面レンズ4と、その前面レンズ4に例えば接着剤により固定されたリフレクタ5とから構成されている。
【0016】
また、バンパ2は、バンパカバー6と、その後方に配置された図示していないバンパアブソーバと、さらにその後方に配置された同じく図示していないバンパリインホースとを有している。
【0017】
バンパカバー6はヘッドランプ1の下方に位置し、同じくそのヘッドランプ1の下方に車体の一部を構成するサイドステー7が位置している。また、ここに示したヘッドランプ1も、そのケーシング3のリフレクタ5に一体に形成された取付部9と、サイドステー7に係止された保持部材10とが嵌合することにより、サイドステー7に対して位置決めされている。
【0018】
一方、図3及び図4にも示すように、ヘッドランプ1のケーシング3には、一対のランプ係合部11が一体に設けられ、バンパカバー6には、一対のバンパ係合部12が一体に設けられている。図に一例として示した各ランプ係合部11は、下部に開口部13を有し、内部が中空に形成された小さな箱状に形成され、その上壁部14が、ヘッドランプ1のケーシング3を構成する前面レンズ4の下面に固着されている。かかるランプ係合部11の内部の中空部は前後方向に延びている。また、図に一例として示した各バンパ係合部12は、一対の脚部15とその脚部15の上端に一体に設けられた板状の係合片16とを有し、両脚部15の下端がバンパカバー6の上面に固着されている。かかるバンパ係合部12の係合片16も前後方向に延びている。
【0019】
図3は、自動車の製造工場において、バンパ2を車体に対して組付けるときの様子を示している。ヘッドランプ1は既に車体に固定されており、この状態で、バンパ2をヘッドランプ1の下方にもたらし、バンパ2を矢印Aで示すように後方側に押し込む。このとき、図4に示したように、バンパ係合部12の係合片16がランプ係合部11の内部に挿入される。その際、ランプ係合部11には、その下部には前後方向に延びる開口部13が形成されているので、バンパ係合部12の脚部15がランプ係合部11に干渉することはない。このように、ランプ係合部11とバンパ係合部12とを図2及び図4に示したように互いに係合させることにより、バンパカバー6をヘッドランプ1に対して位置決めすることができる。この状態で、バンパ2を車体に対してボルトによって固定する。
【0020】
上述のようにバンパカバー6をヘッドランプ1に対して位置決めしたとき、図2に示すように、バンパカバー6の上部17と、これに対向したヘッドランプ1のケーシング部分18との間にわずかな上下方向の隙間Gが形成される。このように、バンパカバー6とヘッドランプ1の間に、車外から目視される隙間Gが形成されるのである。その際、バンパカバー6は、両係合部11,12を介してではあるが、直接的にヘッドランプ1のケーシング3に連結されて、ケーシング3に対して位置決めされているので、隙間Gの大きさは、常にほぼ一定に保たれる。バンパカバー6と、ケーシング3との間に、従来のように多数の部材が介在していないので、バンパカバー6とケーシング3の相対位置を常に高い精度で正しく保つことができ、その両者間の隙間Gを常にほぼ一定に保つことができるのである。このため、隙間Gを過度に大きく設定する必要はなく、その隙間Gを常に小さく保つことができる。このようにして自動車の外観を向上させることができるのである。しかも、従来、必ず必要とされていたアッパリテーナ8A(図7)が不要となるので、自動車の部品点数を減少することができる。
【0021】
また、図2及び図5に矢印Fで示したように、バンパ2に対して前方から衝撃力が加えられ、これによってバンパカバー6が車体に対して後方側にずれ動くと、バンパ係合部12も後方側へ移動するが、このときバンパ係合部12はランプ係合部11に対して摺動するので、ランプ係合部11とケーシング3に対して大きな荷重が作用することはない。また、図5に示したように、バンパ係合部12がランプ係合部11から外れたとしても、そのバンパ係合部12は、バンパカバー6と共に、ケーシング3の傾斜面19に沿って移動するので、そのケーシング3に大きな荷重が加えられることはない。このようにして、ヘッドランプ1が損傷する不具合を防止することができる。
【0022】
上述のように、本例の自動車においては、ランプ1のケーシング3とバンパ2のバンパカバー6とに、互いに係合するランプ係合部11とバンパ係合部12がそれぞれ設けられ、該ランプ係合部11とバンパ係合部12は、ランプ1のケーシング3とバンパカバー6との間の上下方向の隙間Gをほぼ一定に保つと共に、バンパカバー6がランプ1のケーシング3に対して前後方向に動くことを許容するように、互いに係合している。バンパ係合部12は、ランプ係合部11に対して自動車の前後方向に摺動可能に嵌合しているのである。かかる構成により、互いに最も接近したバンパカバー6の上部17と、これに対向したケーシング部分18との間の隙間Gを小さく保ち、かつ衝突時にも、ヘッドランプ1が損傷することを防止することができる。
【0023】
また、図6に示したバンパ係合部12には、その係合片16の車幅方向Wの各端部に、矢印B方向に弾性変形可能な羽根部20が形成されている。一方、ランプ係合部11の車幅方向Wの各側壁21には、係止孔22がそれぞれ形成されている。バンパを車体に組み付けるとき、バンパ係合部12を矢印Aで示したように後方側へ移動させて、ランプ係合部11内に挿入し、バンパ係合部12をランプ係合部11に係合させると、バンパ係合部12の羽根部20に突設された各爪部23が、ランプ係合部11の各係止孔22に係合する。これにより、ランプ係合部11に対してバンパ係合部12が前後方向に位置決めされ、これによってバンパカバー6が前後方向に正しく位置決めされる。バンパカバー6に対して前方より衝撃力が加えられたときは、バンパ係合部12の各羽根部20が弾性変形して、その各羽根部20に突設された爪部23が係止孔22から外れるので、支障なくバンパ係合部12はランプ係合部11に対して後方側へ移動することができる。
【0024】
上述のように、ランプ係合部11とバンパ係合部12には、該ランプ係合部11とバンパ係合部12が互いに係合したとき、ランプ係合部11に対してバンパ係合部12を前後方向に位置決めする位置決め手段が設けられており、本例の自動車においては、バンパ係合部12に付設された爪部23を有する一対の羽根部20と、ランプ係合部11に形成された係止孔22が、その位置決め手段を構成している。
【0025】
以上、車体の前部に設けられるフロント側のバンパとヘッドランプに本発明を適用した例を説明したが、本発明は車体の後部側に設けられるバンパとランプに対しても適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】自動車の外観を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線拡大断面図である。
【図3】バンパをヘッドランプの下方に組み付けるときの様子を示した斜視図である。
【図4】ランプ係合部と、これに係合したバンパ係合部との拡大斜視図である。
【図5】バンパに対して前方から衝撃力が加えられたときの様子を示す図2と同様の断面図である。
【図6】ランプ係合部とバンパ係合部の他の例を示す斜視図である。
【図7】従来の自動車の構造を示す、図2と同様な断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ランプ
2 バンパ
3 ケーシング
6 バンパカバー
11 ランプ係合部
12 バンパ係合部
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外を照明するランプと、衝突時の衝撃を吸収するバンパとを有する自動車において、
前記ランプのケーシングと前記バンパのバンパカバーとに、互いに係合するランプ係合部とバンパ係合部をそれぞれ設け、該ランプ係合部とバンパ係合部は、ランプのケーシングとバンパカバーとの間の上下方向の隙間をほぼ一定に保つと共に、バンパカバーがランプのケーシングに対して前後方向に動くことを許容するように、互いに係合していることを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記ランプ係合部とバンパ係合部には、該ランプ係合部とバンパ係合部が互いに係合したとき、ランプ係合部に対してバンパ係合部を前後方向に位置決めする位置決め手段が設けられている請求項1に記載の自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−307941(P2008−307941A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155482(P2007−155482)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】