説明

自動食器洗浄機用洗浄剤組成物

【課題】自動食器洗浄機、特に洗浄時間の短い、業務用自動食器洗浄機における洗浄において、被洗物(特にグラス、クリスタルグラス)を腐食することなく、さらに石灰被膜やウォータースポットを形成することなく、優れた洗浄性能を有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)アルカリ金属炭酸塩を20〜80質量%、(B)キレート剤を1〜40質量%、(C)ノニオン界面活性剤を0.1〜10質量%、(D)酵素を0.1〜5質量%、及び(E)ポリカルボン酸またはその塩を0.1〜10質量%を含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物であって、前記(B)成分のキレート剤の、pH8.0〜11.0の範囲内いずれかのpHにおける、Pb(II)に対する安定度定数が10.0以下および/またはCa(II)に対する安定度定数が6.0以下であり、かつCa(II)に対する安定度定数が2.5以上であることを特徴とする前記組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動食器洗浄機の分野、特に業務用自動食器洗浄機においては、苛性ソーダのような高アルカリ性を有する基剤やニトリロ三酢酸塩(NTA)、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)といった強力なキレート剤を用いた洗浄剤が使用されてきた。しかし、このような洗浄剤をグラス(特にクリスタルグラス)に供すると、強力なキレート剤による被洗物中の金属イオンの引き抜きとアルカリによる侵食作用の相乗効果により、白やけ等の経時的な腐食を引き起こすという問題があった。このような現象は、近年の洗浄機の低水量化(すすぎ時間、水量短縮)の傾向により、一層大きな問題となっている。
【0003】
また、グラス洗浄においては、硬度の高い水を使用したときの石灰被膜形成やウォータースポットの抑制が重要である。これらの防止のためにキレート剤の配合量を増加することは前記腐食の問題により適切ではない。また、このようなウォータースポットに関して、タンパク分解酵素と酸素漂白剤等を使用することにより抑制できると報告されている(特許文献1)。しかし、これらは家庭用食器洗浄乾燥機のように、洗浄ごとにすべての洗浄液が入れ替わり洗浄時間の長い(例えば5〜20分)場合に使用されるものであり、業務用自動食器洗浄機のような、同じ洗浄液がほとんど入れ替わることなく繰り返し使用される場合には有効ではない。
【0004】
また、業務用自動食器洗浄機においては、その洗浄時間の短さ(1分30秒以下)や、他の配合成分の影響による酵素の安定性の問題から、酵素による洗浄は効果が充分に発揮できないものと考えられていた。
【0005】
【特許文献1】特開平9−111294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、自動食器洗浄機、特に洗浄時間の短い、業務用自動食器洗浄機における洗浄において、被洗物(特にグラス、クリスタルグラス)を腐食することなく、さらに石灰被膜やウォータースポットを形成することなく、優れた洗浄性能を有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、キレート剤の条件安定度定数と、酵素を使用する配合に着目することにより、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(A)アルカリ金属炭酸塩を20〜80質量%、
(B)キレート剤を1〜40質量%、
(C)ノニオン界面活性剤を0.1〜10質量%、
(D)酵素を0.1〜5質量%、および
(E)成分として、ポリカルボン酸またはその塩を0.1〜10質量%
を含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物であって、(B)成分のキレート剤の、pH8.0〜11.0の範囲内いずれかのpHにおける、Pb(II)に対する安定度定数が10.0以下および/またはCa(II)に対する安定度定数が6.0以下であり、かつCa(II)に対する安定度定数が2.5以上であることを特徴とする前記組成物を提供するものである。
【0008】
また本発明は、前記自動食器洗浄機用洗浄剤組成物が、グラス用である自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
また本発明は、前記自動食器洗浄機用洗浄剤組成物が、業務用自動食器洗浄機用である自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものである。
また本発明は、前記(B)成分のキレート剤が、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、グルタミン酸二酢酸、クエン酸、アスパラギン酸二酢酸、エチレンジアミンジマロン酸、ヒドロキシイミノジコハク酸、イミノジコハク酸、エチレンジアミンジコハク酸、これらのアルカリ金属塩およびトリポリリン酸ソーダからなる群の1種または2種以上から選択される自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供するものある。
【0009】
また本発明は、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を使用して、洗浄時間が1分30秒以下で洗浄する工程を有する自動食器洗浄機による洗浄方法であって、
前記洗浄剤組成物が、
(A)アルカリ金属炭酸塩を20〜80質量%、
(B)キレート剤を1〜40質量%、
(C)ノニオン界面活性剤を0.1〜10質量%、
(D)酵素を0.1〜5質量%、および
(E)ポリカルボン酸またはその塩を0.1〜10質量%
を含有し、前記(B)成分のキレート剤の、pH8.0〜11.0の範囲内いずれかのpHにおける、Pb(II)に対する安定度定数が10.0以下および/またはCa(II)に対する安定度定数が6.0以下であり、かつCa(II)に対する安定度定数が2.5以上であることを特徴とする、前記洗浄方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、自動食器洗浄機、特に洗浄時間の短い、業務用自動食器洗浄機における洗浄において、グラス、特にクリスタルグラス等の被洗物を腐食することなく、さらに石灰被膜やウォータースポットを形成することがなく、優れた洗浄性能を有する自動食器洗浄機用洗浄剤を得たことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、必須の構成成分として、(A)成分のアルカリ金属炭酸塩を20〜80質量%、(B)成分の、pH8.0〜11.0の範囲内いずれかのpHにおける、Pb(II)に対する安定度定数が10.0以下および/またはCa(II)に対する安定度定数が6.0以下であり、かつCa(II)に対する安定度定数が2.5以上であるキレート剤を1〜40質量%、(C)成分のノニオン界面活性剤を0.1〜10質量%、(D)成分の酵素を0.1〜5質量%、(E)成分のポリカルボン酸またはその塩を0.1〜10質量%含有してなることを特徴とするものである。
【0012】
次に、本発明の(A)成分について説明する。
本発明の(A)成分はアルカリ金属炭酸塩である。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等があげられ、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
(A)成分のアルカリ金属炭酸塩の含有量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中、20〜80質量%であるが、洗浄力、および他の洗浄成分とのバランスや経済性の点から好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜60質量%である。20質量%より少ないと洗浄性の点で好ましくなく、80質量%を超えると他の洗浄成分とのバランスや経済性の点で好ましくない。
【0014】
次に、本発明の(B)成分について説明する。
本発明の(B)成分は、pH8.0〜11.0の範囲内いずれかのpHにおける、Pb(II)に対する安定度定数が10.0以下および/またはCa(II)に対する安定度定数が6.0以下であり、かつCa(II)に対する安定度定数が2.5以上であるキレート剤である。
【0015】
安定度定数とは、錯体の安定度を示す尺度であり、水和金属イオン(本発明の場合、二価のCaイオンと二価のPbイオン)と配位子(キレート剤)とから錯体が生成するときの平衡定数として示される。配位子(キレート剤)をL、金属イオンをM、錯体をMLnとしたとき、その安定度数βは以下の式で表される:
【0016】
Kn=[MLn]/[M][L]
β=logKn
【0017】
該キレート剤としては、pH8.0〜11.0の範囲内いずれかのpHにおける、Pb(II)に対する安定度定数が10.0以下であるか、および/またはCa(II)に対する安定度定数が6.0以下であり、かつCa(II)に対する安定度定数が2.5以上であればよく、詳しくは、グラス(クリスタルグラス)の腐食の抑制にはPb(II)の安定度定数が10.0以下であること、および/またはCa(II)の安定度定数が6.0以下であることが必要であり、スケール防止のためにはCa(II)の安定度定数が2.5以上であることが必要である。つまり本願発明で使用するキレート剤は、pH8.0〜11.0のいずれかで常にCa(II)の安定度定数が2.5以上であることが必要である。グラス製品、特にクリスタルグラスには、その中にPbを含んでいる。本願発明で規定するキレート剤について、安定度定数Pb(II)が10以下、および/またはCa(II)の安定度定数が6.0以下であれば、ガラス中の金属、特にPbの溶出を抑制し、グラスの表面の侵食を防止する。なお、Ca(II)の安定度定数が2.5以上であれば、硬度が高い水においても十分な洗浄力が期待できる。
【0018】
具体的なキレート剤の例を挙げると、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸及びそのアルカリ金属塩(HIDA)[pH=10.5での、Ca(II)の安定度定数=4.6、Pb(II)の安定度定数=9.4]、イミノ二酢酸及びそのアルカリ金属塩(IDA)[pH=10.5での、Ca(II)の安定度定数=3.41、Pb(II)の安定度定数=7.45]、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩(GLDA)[pH=8.0での、Ca(II)の安定度定数=4.9、pH=9.0での、Ca(II)の安定度定数=5.6、pH=10.0での、Ca(II)の安定度定数=5.9、pH=10.5での、Ca(II)の安定度定数=5.9、Pb(II)の安定度定数=9.2、pH=11.0での、Ca(II)の安定度定数=5.9]、クエン酸及びそのアルカリ金属塩[pH=8.0〜11.0での、Ca(II)の安定度定数=2.5、pH=8.0での、Pb(II)の安定度定数=4.2、pH=9.0での、Pb(II)の安定度定数=4.5、pH=10.0での、Pb(II)の安定度定数=5.3、pH=10.5での、Pb(II)の安定度定数=5.64、pH=11.0での、Pb(II)の安定度定数=6.3]等が挙げられ、さらには、トリポリリン酸ソーダ(STPP)[pH=10.5での、Ca(II)の安定度定数=5.7]、アスパラギン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩(ASDA)[pH=10.5での、Ca(II)の安定度定数=5.8]、エチレンジアミンジマロン酸及びそのアルカリ金属塩(EDDM)[pH=10.5での、Ca(II)の安定度定数=4.86]、ヒドロキシイミノジコハク酸及びそのアルカリ金属塩[pH=10.5での、Ca(II)の安定度定数=4.8]、イミノジコハク酸及びそのアルカリ金属塩[pH=10.5での、Ca(II)の安定度定数=4.0]、エチレンジアミンジコハク酸及びそのアルカリ金属塩(EDDS)[pH=10.5での、Ca(II)の安定度定数=4.7]等が挙げられる。特にヒドロキシエチルイミノ二酢酸及びそのアルカリ金属塩(HIDA)、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩(GLDA)が好ましい。これらキレート剤は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(B)成分の含有量は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中、1〜40質量%であり、グラス(特にクリスタルグラス)への腐食の点から5〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。1質量%より少ないとスケール防止能の点で好ましくなく、40質量%を超えるとグラス(特にクリスタルグラス)への腐食の点で好ましくない。
【0020】
次に本発明の(C)成分について説明する。
本発明の(C)成分は、ノニオン界面活性剤である。ノニオン界面活性剤は従来公知のものが使用できるが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマー、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ミスチリン酸ジエタノールアミド、ミスチリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルグルコシド類、アミンオキサイド類、等があげられ、特に、洗浄性との点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマーが好ましい。これらノニオン界面活性剤は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(C)成分の含有量は、0.1〜10質量%であり、洗浄性と他の成分とのバランスや経済性の点から、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0022】
次に本発明の(D)成分について説明する。
本発明の(D)成分は酵素であり、セルラーゼ、プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、アミラーゼ、プルラナーゼ、イソプルラナーゼリパーゼ等の、従来公知の各種洗剤や洗浄剤に使用されているものが使用でき、好ましくはプロテアーゼである。これら酵素は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(D)成分の含有量は0.1〜5質量%であり、洗浄性と他の成分とのバランスや経済性の点から、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0024】
次に本発明の(E)成分について説明する。
本発明の(E)成分はポリカルボン酸またはその塩であり、その例としては、ポリアクリル酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸―アクリル酸エステル共重合体等及びこれらのアルカリ金属塩等があげられ、好ましくはポリアクリル酸ナトリウムである。これらポリカルボン酸またはその塩は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリカルボン酸のまたはその塩の重量平均分子量は1500〜10000が好ましく、3000〜5000がより好ましい。
【0025】
また、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤には、上記(A)〜(E)成分以外に、さらに任意成分として、アクリル酸スルホン酸共重合体等の水溶性高分子、硫酸ナトリウム(芒硝)、硫酸カリウム等の無機塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、スルホン化フタロシアニン塩、過酸化水素等の漂白剤、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、低級アルキルエトキシレート、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の可溶化剤、硫酸アンモニウム、尿素、塩酸グアジニン、炭酸グアジニン、スルファミン酸グアジニン、二酸化チオ尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の塩素捕捉剤、色素、香料、水等を配合することができる。
【0026】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、石灰被膜形成やウォータースポットの抑制に優れ、さらにグラス(特にクリスタルグラス)を腐食しないため、グラス洗浄用の自動食器洗浄機用洗浄剤として好ましく使用することができる。
【0027】
また本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、洗浄時間が1分30秒以下の洗浄時間の短い自動食器洗浄機において好ましく使用することができる。あるいは、業務用自動食器洗浄機のような同じ洗浄液がほとんど入れ替わることなく繰り返し使用される場合においても好ましく使用することができる。
【0028】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、洗浄機での洗浄時に、水に溶解もしくは希釈して使用する。その濃度は、洗浄液がpH8.0〜11.0の範囲となるように適宜選択すればよいが、好ましくは0.04〜0.2質量%である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は特に記載が無い限り質量基準である。
【0030】
実施例
表1に記載した配合割合(質量%)で、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を調製した。得られた自動食器洗浄機用洗浄剤組成物用いて、下記の洗浄機及び洗浄剤濃度で洗浄試験を行い、下記の評価基準で洗浄力試験(1)、洗浄力試験(2)、クリスタルグラス腐食性試験および安定性について評価した。結果を表1に示す。同様に表1に記載した配合の比較品で試験を行なった。
【0031】
<洗浄条件>
洗浄機名:業務用食器洗浄機SANYO DW−DR62
洗浄剤濃度:0.1%(対タンク内水量)洗浄液のpHは10.5であった。
【0032】
<洗浄力試験(1)>
評価方法:
被洗物(クリスタルグラス)の内側にマヨネーズ2gを均一に塗布し室温で2時間乾燥した後、自動食器洗浄機を用いて、60℃で40秒間洗浄、80℃で8秒間濯ぎ、乾燥した。このクリスタルグラスについて暗室内において蛍光灯を反射させ、表面のスポット、フィルム(皮膜)の発生を目視にて評価した。
【0033】
評価基準:
◎ スポット、フィルムは見られない。
○ スポットが少しだけ見られる。
△ ややスポットやフィルムが見られる。
× スポット、フィルムが多く見られる。
【0034】
<洗浄力試験(2)>
評価方法:
洗浄タンク内に汚れ(スキムミルク:マーガリン=1:2を洗浄液中0.1質量%になるように添加)を添加した後、清浄な被洗物(クリスタルグラス)について、洗浄(60℃40秒)→濯ぎ(80℃8秒)→乾燥の工程を繰り返し100サイクル行なった。これについて上記、洗浄力試験(1)と同様に表面のスポット、フィルムについて評価した。
【0035】
<クリスタルグラス腐食性試験>
評価方法:
洗浄ラックにクリスタルグラスをラックの所定の位置に設置し、洗浄(67℃45秒)、濯ぎ(80℃8秒)、インターバル(60秒)の工程を500サイクル繰り返し行った後、クリスタルグラスの腐食を以下の基準で目視判定した。
【0036】
評価基準:
◎ 腐食がなかった。
○ 腐食がほとんどなかった。
△ 腐食があった。
× 腐食が著しかった。
【0037】
<酵素安定性試験>
評価方法:プロテアーゼのタンパク質分解活性測定法
洗浄液の1%水溶液1mLと、0.6%カゼイン水溶液とをpH7.5、30℃の条件下で10分間反応させた後、タンパク質沈殿試薬(TCA混液)5mLを添加、30℃、30分間放置した後、ろ過した。このろ液1mLに0.55MのNa2CO3溶液5mL、3倍希釈のFolin試薬1mLを添加し、30℃、30分反応させた。この反応液の660nmにおける吸光度を測定し、1mLの酵素液で1分間に1ugのチロシンに相当するタンパク質を分解する酵素活性を1単位として力価を求めた。また、この力価より洗浄剤中の初期の酵素活性を100として40℃60日間保存後の残存率を求めた。
【0038】
評価基準:
◎ 80〜100%残存する。
○ 60〜80%残存する。
△ 30〜60%残存する。
× 30%以下残存する。
【0039】
【表1】

【0040】
*1:HIDA=ヒドロキシエチルイミノ二酢酸ナトリウム [洗浄時のpHでのPb
(II)の安定度定数=9.4、Ca(II)の安定度定数=4.6]
*2:IDA=イミノ二酢酸ナトリウム [洗浄時のpHでのPb(II)の安定度定数が7.45、Ca(II)の安定度定数=3.41]
*3:クエン酸ソーダ[洗浄時のpHでのPb(II)の安定度定数=5.64、Ca
(II)の安定度定数=2.5]
*4:グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩(GLDA)[洗浄時のpHでのPb(II)の安定度定数=9.2、Ca(II)の安定度定数=5.9]
*5:STPP=トリポリリン酸ソーダ[洗浄時のpHでのCa(II)の安定度定数=5.7]
*6:ノニオン界面活性剤 R-O-(EO)(PO)-Hで表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(但し、Rは炭素数12〜14のアルキル基、平均付加モル数mは約8、nは約5である)
*7:重量平均分子量5000のポリアクリル酸ソーダ
*8:EDTA・4Na=エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩[洗浄時のpHでのPb(II)の安定度定数=17.9、Ca(II)の安定度定数=10.4]
*9:NTA・3Na=ニトリロ三酢酸ナトリウム塩[洗浄時のpHでのPb(II)の安定度定数=11.2、Ca(II)の安定度定数=6.4]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ金属炭酸塩を20〜80質量%、
(B)キレート剤を1〜40質量%、
(C)ノニオン界面活性剤を0.1〜10質量%、
(D)酵素を0.1〜5質量%、および
(E)ポリカルボン酸またはその塩を0.1〜10質量%
を含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物であって、
前記(B)成分のキレート剤の、pH8.0〜11.0の範囲内いずれかのpHにおける、Pb(II)に対する安定度定数が10.0以下および/またはCa(II)に対する安定度定数が6.0以下であり、かつCa(II)に対する安定度定数が2.5以上であることを特徴とする前記組成物。
【請求項2】
前記自動食器洗浄機用洗浄剤組成物が、グラス用である請求項1記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記自動食器洗浄機用洗浄剤組成物が、業務用自動食器洗浄機用である請求項1または2記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(B)成分のキレート剤が、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、グルタミン酸二酢酸、クエン酸、アスパラギン酸二酢酸、エチレンジアミンジマロン酸、ヒドロキシイミノジコハク酸、イミノジコハク酸、エチレンジアミンジコハク酸、これらのアルカリ金属塩およびトリポリリン酸ソーダからなる群の1種または2種以上から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項5】
自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を使用して、洗浄時間が1分30秒以下で洗浄する工程を有する自動食器洗浄機による洗浄方法であって、
前記洗浄剤組成物が、
(A)アルカリ金属炭酸塩を20〜80質量%、
(B)キレート剤を1〜40質量%、
(C)ノニオン界面活性剤を0.1〜10質量%、
(D)酵素を0.1〜5質量%、および
(E)ポリカルボン酸またはその塩を0.1〜10質量%
を含有し、前記(B)成分のキレート剤の、pH8.0〜11.0の範囲内いずれかのpHにおける、Pb(II)に対する安定度定数が10.0以下および/またはCa(II)に対する安定度定数が6.0以下であり、かつCa(II)に対する安定度定数が2.5以上であることを特徴とする、前記洗浄方法。

【公開番号】特開2006−265463(P2006−265463A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88732(P2005−88732)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【出願人】(593085808)ADEKAクリーンエイド株式会社 (25)
【Fターム(参考)】