説明

自吸式ポンプ

【課題】移送流体が気液混合状態になったときでも安定した移送流体の吐出を行うことができる自吸式ポンプを提供する。
【解決手段】円板部26bが有する最も内側の段部には、リア側にインペラ29の回転時にインペラ29がフロント側に移動したときに擦接するライナーリング50が設置されている。フロント隔壁26と対向する位置に設置されたインペラ29のカバー部材37は、円板の中心部37aがフロント隔壁26の円筒部26aの開口とほぼ同じ大きさで開口しており、その縁37aは、フロント隔壁26側に突出するようリング状に形成されている。逆流防止用突部37aは、フロント隔壁26のライナーリング50の内側に所定の隙間を介して挿入されるよう配されている。カバー部材37のライナーリング50と対向する位置に、インペラ29がフロント側に移動したときにライナーリング50に擦接するマウスリング51が装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼び水を貯蔵するタンク室を備え、このタンク室内に回転駆動されるインペラを配した自吸式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移送流体を吸入口から吸い込んで吐出口に排出することにより移送流体を所定の場所に移送する自吸式ポンプが知られている。このような自吸式ポンプでは、運転を開始するにあたってタンク室内に呼び水が導入され、タンク室内に配されたインペラを回転駆動させることによりタンク内に残留する気体を呼び水と共に吐出口より排出し、タンク内に移送流体のみを満たしていく自吸運転を行う。
【0003】
この種の自吸式ポンプとしては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この自吸式ポンプは、合成樹脂製の第1ケーシングと第2ケーシングとを仕切る仕切板のマウス部の内径と、このマウス部に先端が挿入されるインペラ(羽根車)の外径の隙間を小さくして、ポンプ室から上記隙間を介して吸込側に逆流する移送流体を制限して、揚水性能及びポンプ効率を向上させようとするものである。
【特許文献1】特開2005−48675公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した自吸式ポンプでは、マウス部の内径とインペラの外径の寸法管理が難しいという欠点がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、吸込側への移送流体の逆流を制限してポンプの効率を向上させることが可能な自吸式ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自吸式ポンプは、移送流体の吸入口と吐出口を有するケーシングと、このケーシングの内部を区画してポンプ室を形成すると共に前記吸入口に連通する導入口をポンプ室のフロント側に形成するフロント隔壁と、前記ポンプ室の内部に前記導入口と同軸で回転自在に収容され、前記フロント隔壁の導入口と対向する部分に前記移送流体を導入するための開口部が形成されてこの開口部から導入された移送流体を外周から吐出するインペラと、このインペラを回転自在に且つ回転軸方向にスライド自在に支持する支持部材と、前記インペラを回転駆動する回転駆動手段と、前記フロント隔壁の導入口及び前記インペラの開口部の少なくとも一方に前記回転軸と平行な方向に突設され前記フロント隔壁の導入口と前記インペラの開口部との間の回転軸方向の環状隙間をその内周側及び外周側の少なくとも一方から非接触で覆う逆流防止用突部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
先発明によれば、支持部材に回転自在及びスライド自在に保持されたインペラが回転して自吸運転を開始すると、運転当初の吸い上げ運転時は、インペラに軸推力が発生していないため、フロント隔壁の導入口とインペラの開口部との間に環状隙間が形成され、ポンプ室の液体がこの隙間を介して真空度の上がった導入口側に逆流しようとする。しかし、フロント隔壁の導入口及びインペラの開口部の少なくとも一方に、上記環状隙間を内周側及び外周側の少なくとも一方から非接触で覆う逆流防止用突部が形成されているので、この突部が逆流しようとする流体に対してはラビリンス構造となり、逆流が制限されることになる。これにより、導入口側の真空度低下を防止して速やかなるポンプ始動が実現される。ポンプが始動された後は、インペラに軸推力が発生し、フロント隔壁の導入口とインペラの開口部との間の環状隙間が閉じられ、この部分での流体の逆流は防止される。この結果、ポンプ効率を最大限高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自吸式ポンプの全体構成を示す断面図である。
この自吸式マグネットポンプは、ケーシング1と、このケーシング1のリア側に装着されたポンプ本体2とを備えて構成されている。以下、自吸式マグネットポンプを単に「ポンプ」と称する。
【0010】
ケーシング1は、仕切り壁5によってフロント側の第1ケーシング3とリア側の第2ケーシング4に区画されている。第1ケーシング3のフロント側の端面の上部には、吸入口3aがフロント側に向けて突設されている。この吸入口3aの先端部には、フランジ6が設けられている。吸入口3aには、ポンプ下方部から第1ケーシング3の上部に至るまで垂直に延び、吸入口3aの高さで吸入口3aに向かって略90度折り曲げられた吸入管7の先端部が接続されている。この吸入管7の先端部には、フランジ7aが一体形成されており、吸入管7のフランジ7aと吸入管3aのフランジ6とは、Oリング8を介して図示しないネジ等により締結されている。この第1ケーシング3の上面には、第1タンク室9内に呼び水となる液体を導入するための吸液孔3bが形成されている。なお、この吸液孔3bにはOリング10を介してバルブ11が嵌められており、バルブ11によって吸液孔3bの開閉を行うことができる。
【0011】
第1タンク室9は、図面の紙面と直交する方向に縦方向に延びる3つの室を有し、図では真ん中の吸入室9Aのみ図示されている。図示しない両側の室は、上側仕切り板12で区画された連通室9Bを介して連通されると共に、上端で吸入室9Aと連通している。これにより、呼び水となる液体は3つの室に溜まり、ポンプ始動に必要な十分の量が確保されると共に、ポンプ運転時は吸入室9Bの液体移動が支配的となる。なお、上側仕切り板12には、仕切り板5に接する位置に上下方向に貫通する孔12aが形成されている。これにより、上段の吸入室9A及びその両側の室は可端でも連通している。連結室9Bの下側には、下側仕切り板13を介して下段タンク室9Cが設けられている。また、下段タンク室9Cの底面に接する位置には、外部に突出する排水口3cが形成されており、排水口3cに嵌合されたバルブ14を開くことにより、排水口3cから移送流体の排水を行うことができる。
【0012】
第1ケーシング3と第2ケーシング4とを仕切る仕切り板5には、下端が上側仕切り板12に接する円形の吸入孔5aが設けられている。仕切り板5の吸入孔5aの下側位置には、下段タンク室9Cと第2ケーシング4とを底面付近において連結する孔5bが形成されている。これにより、下段タンク室9Cに設けられた排水口3cを開くと、第2ケーシング4内の底面付近に溜まった移送流体を、排水孔3cを介して排出することができる。
【0013】
第2ケーシング4は、その内部に移送流体及びポンプ本体2の一部を収容する第2タンク室20を備えて構成されている。第2タンク室20の内部空間は、仕切り板21等によって渦流を発生させる下段タンク室20Bと、この下段タンク室20Bに連通する吐出室20Aとに分割されている。
【0014】
第2ケーシング4の上端には、上部に突出した突出口4aが形成されており、この吐出口4aの先端部にはフランジ22が設けられている。吐出口4aには、ポンプ上端から上方に延びる吐出管23の後端部が接続されている。この吐出管23の後端部にはフランジ23aが一体形成されており、吐出管23のフランジ23aと吐出口4aのフランジ22とは、Oリング24を介してネジ等(図示せず)により連結されている。
【0015】
第2ケーシング4の下方には、リア側の側面に開口部4bが形成され、この開口部4bから下段タンク室20B内にポンプ本体2のポンプ室部分が装着されている。
【0016】
図2は、図1におけるポンプ本体2の部分を拡大した断面図である。ポンプ本体2は、第2ケーシング4の内部を区画して内部にポンプ室28を形成するフロント隔壁26と、ポンプ室28と連通しリア側側面の開口部4bからリア側に突出する円柱状空間を形成する樹脂等の非磁性材料からなる有底円筒状のリア隔壁27と、このリア隔壁27のリア側底面からフロント側に突設された支持軸39と、この支持軸39に円筒状の軸受40を介して回転且つスライド自在に同軸支持された円筒状の従動回転体30と、この従動回転体30のフロント側に同軸且つ一体的に装着されてポンプ室28内で回転するインペラ29と、リア隔壁27を介して従動回転体30と磁気結合されて従動回転体30を回転駆動する駆動回転体33と、この駆動回転体33を回転駆動するモータ34と、駆動回転体33の外側を覆う円筒状の駆動体ケーシング31とを備えて構成されている。
【0017】
フロント隔壁26は、フロント側が仕切り板5に形成された吸入孔5aに接続され基端側がポンプ室28への移送流体の導入口26cとなる円筒部26aと、この円筒部26aの基端側から拡径してポンプ室28のフロント側壁部を形成する円板部26bとを有する。フロント隔壁26の導入口26cにはライナーリング50が装着されている。フロント隔壁26の円板部26bの下方位置には、第2ケーシング4の下段タンク室20Bとポンプ室28とを連通する孔26d,26eが形成されている。フロント隔壁26の円板部26bは、第2ケーシング4のリア側の側面に形成された開口部4bに沿って第2ケーシング4の内側に向けて突設されたリング状隔壁4dと嵌合してポンプ室28を形成している。第2ケーシング4の開口部4bの縁には、段部4cが形成され、この段部4cにリア隔壁27の開口縁部27aがOリング25を介して嵌合されることにより、リア隔壁27の内部が密閉されている。
【0018】
従動回転体30は、円筒状回転体30aと、この円筒状回転体30aの外周側に埋め込まれた従動マグネット41とを有する。従動回転体30のフロント側の端部には、インペラ29が装着されている。インペラ29は、円板35と、この円板35のフロント側に形成された複数枚の羽根36と、これら複数の羽根36を円板35と対になって挟み込むように接合された環状のカバー部材37とを有する。カバー部材37の中心には、開口部37aが形成され、この開口部37aの周縁部に、フロント隔壁26のライナーリング50と対向するようにマウスリング51が装着されている。
【0019】
一方、円板35の中心軸の基端側には、支持軸39の先端部とピンポイント接触するスラスト軸受38が設けられている。スラスト軸受38が支持軸39の先端面と接している状態でライナーリング50とマウスリング51との間には、所定の環状隙間が形成されている。これにより、インペラ29が支持軸39に沿ってフロント側に移動した場合には、マウスリング51がライナーリング50に摺接し、インペラ29が支持軸に沿ってリア側に移動した場合には、スラスト軸受38が支持軸39の先端面とピンポイント接触することになる。また、インペラ29の開口部37aには、フロント側に突出してライナーリング50とマウスリング51の間の環状隙間を内周側から非接触で覆うリング状の逆流防止用突部37bが形成されている。
【0020】
駆動回転体33は、円筒状回転体33aとその内周側に埋め込まれた駆動マグネット42を有する。駆動回転体33のリア側面には、モータ34の回転軸が固定されている。駆動マグネット42は、リア隔壁27を介して従動マグネット41と磁気結合され、モータ34からの回転駆動力によって従動マグネット41を回転駆動する。
【0021】
次にこのように構成されたポンプの動作を説明する。
【0022】
まず、自吸運転に先立ち、第1ケーシング3の吸液孔3bから呼び水となる移送流体が導入され、吸入管7、第1ケーシング3及び第2ケーシング4内に移送流体が満たされる。このとき、第1ケーシング3内の移送流体の液位は、吸入口3aの最下点の高さに等しく、その上は気体で満たされる。
【0023】
次に、モータ34によって駆動回転体33を回転駆動すると、従動回転体30を介してインペラ29が回転駆動され、自吸運転が開始される。これにより、第1タンク室9内の移送流体と残留気体は、インペラ29の開口部37aに吸入され、インペラ29の遠心力によってインペラ29の外周側から吐出されることにより、第2タンク室20に移送される。
【0024】
このように第1タンク室9から第2タンク室20に移送された移送流体及び気体は、第2タンク室20の液面において気液分離を繰り返し、分離された気体は、吐出口4aより吐出側に排出される。自吸運転を開始した運転当初の吸い上げ運転時は、インペラ29にフロントに向かう軸推力が発生せず、逆にリア側に向かう軸推力が発生するため、スラスト軸受38が支持軸38の先端面に接する位置までインペラ29が後退し、フロント隔壁の導入口とインペラの開口部との間に最大の環状隙間が形成される。これにより、ポンプ室28内の一部気泡を含む液体がこの環状隙間を介して真空度の上がった導入口26c側に逆流しようとする。
【0025】
しかし、インペラ29の先端に、環状隙間を内周側から非接触で覆う逆流防止用突部37bが形成されているので、この突部37bが逆流しようとする流体に対してはラビリンス構造となり、逆流が制限されることになる。
【0026】
これにより、導入口26c側の真空度低下を防止して速やかなるポンプ始動が実現される。ポンプが始動された後は、インペラ29にフロントに向かう向きの軸推力が発生し、インペラ29がフロント側にスライドして、ライナーリング50とマウスリング51とが接触し、両者の間の環状隙間が閉じられる。よって、この部分での流体の逆流は防止される。この結果、ポンプ効率を最大限高めることができる。
【0027】
表1は、吸い上げ高さが4mのときの従来のポンプ及び本発明の第1の実施形態に係るポンプの自吸運転時間を計測したものである。このように、従来のポンプに比べ、本発明の第1の実施形態に係るポンプはラビリンス構造を有することによってテスト1回目においては13.40%、テスト2及び3回目においては20.45%自吸運転時間が短縮された。
【0028】
【表1】

【0029】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る自吸式ポンプの拡大断面図である。なお、インペラの形状以外は第1の実施形態と同一構成であるためその説明を省略する。
【0030】
第1の実施形態では、フロント隔壁26とインペラ29の間の環状隙間を内周側から覆う逆流防止用突部37bのみが形成されていたが、第2の実施形態では、この環状隙間を内周側から覆う逆流防止用突部37Abと、外周側から覆逆流防止弁37Acがインペラ29側に設けられている。
【0031】
インペラ29Aの有するカバー部材37Aの開口部37Aaの縁には、フロント隔壁26側に突出したリング状の第1の逆流防止用突部37Abが形成され、その外周には一段リア側に下がったマウスリング51を介して、フロント隔壁26側に突出したリング状の逆流防止用突部29Abが形成されている。すなわち、逆流防止用突部29Ab、29Acがマウスリング51を介して2重に形成されている。この第1の逆流防止用突部29Aaと第2の逆流防止用突部29Abとの隙間には、相手側のフロント隔壁26から突出するライナーリング50が所定の隙間を介して配されている。この逆流防止用突部29Ab、29Acとライナーリング50との環状隙間は、複数段のクランク状に形成されている。
【0032】
このように、インペラ29A側に2重の逆流防止用突部を形成することにより、フロント隔壁26とインペラ29Aとの隙間のラビリンス構造を更に複雑に構成することができ、これにより、この環状隙間に停留する気体のインペラ29Aの吸入側への逆流を更に効果的に防止することができる。
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係る自吸式ポンプの拡大断面図である。なお、フロント隔壁及びインペラの形状以外は第1の実施形態と同一構成であるためその説明を省略する。
【0033】
第3の実施形態では、第1の実施形態においてインペラ29側に一体形成されていた逆流防止用突部がフロント隔壁26B側に配されている。
【0034】
フロント隔壁26Bは、円筒部26Baと、この開口端に接続されリア側になるに従って径が大きくなる複数段の円板部26Bbとを備えている。この円板部26Bbの内径には、リア側に突出するリング状の逆流防止用突部26Bcが形成されている。この逆流防止用突部26Bcは、相手側のインペラ29Bに設けられたマウスリング51の内周側に所定の隙間を介して挿入されるよう配されている。なお、インペラ29Bには、逆流防止用突部は設けられていない。
【0035】
このように、フロント隔壁26B側に逆流防止用突部26Bcを設けるようにしても本発明の効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態に係る自吸式ポンプの拡大断面図である。第3の実施形態では、フロント隔壁26Bとインペラ29Bの間の環状隙間を内周側から覆う逆流防止用突部26Bcのみが形成されていたが、第4の実施形態では、フロント隔壁29Cにフロント隔壁26Bとインペラ29Bの間の環状隙間の内周を覆う逆流防止用突部26Ccと、外周を覆う逆流防止用突部29Cdが設けられている。
【0036】
フロント隔壁26Cは、円筒部26Caと、この開口端に接続されリア側になるに従って径が大きくなる複数段の円板部26Cbとを備えている。円板部26Cbの内径には、リア側に突出するリング状の第1の逆流防止用突部26Ccが形成され、第1の逆流防止用突部26Ccの外周には、ライナーリング50を介してリア側に突出するリング状の第2の逆流防止用突部26Cdが形成されている。リア側に突出した第1の逆流防止用突部26Ccと第2の逆流防止用突部26Cdの間には、相手側のインペラ29から突出したマウスリング50が介在している。そのため、第1の逆流防止用突部26Cc、第2の逆流防止用突部26Cd及びマウスリング50との間には、複数段のラビリンス構造が形成される。
【0037】
このように、フロント隔壁側に複数の逆流防止用突部を設けるように構成しても、本発明の効果を奏することができる。
(第5の実施形態)
図6は、本発明の第5の実施形態に係る自吸式ポンプの拡大断面図である。なお、フロント隔壁の形状以外は第1の実施形態と同一構成であるためその説明を省略する。
【0038】
第1の実施形態では、インペラ29側に逆流防止用突部29bが形成されていたが、第5の実施形態では、インペラ29側に設けられた逆流防止用突部29aに加え、更にフロント隔壁26D側にも逆流防止用突部26Dcが形成されている。なお、インペラ29の構成は第1の実施形態と同一であるためその説明を省略する。
【0039】
フロント隔壁26Dは、円筒部26Daと、円筒部26Daのリア側に接続される複数段の円板部26Dbとを備えている。この円板部26Dbの内径には、ライナーリング50が設けられ、このライナーリング50の外周には、リア側に突出したリング状の逆流防止用突部26Dcが形成されている。このように、フロント隔壁26D及びインペラ29の両側に逆流防止用突部を設けるように構成しても、本発明の効果を奏することができる。
【0040】
なお、以上の実施形態に設けられた逆流防止用突部の数は1つ又は2つに限定されるものではなく、任意の数の逆流防止用突部をフロント隔壁側若しくはインペラ側の少なくとも一方に形成することができる。
【0041】
また、逆流防止用突部は、フロント隔壁及びインペラと一体形成されていなくてもよく、別部材を取り付けるように構成してもよい。更に、逆流防止用突部の形状は、必ずしもリング状に形成される必要はなく、フロント隔壁及びインペラとの間の環状隙間にラビリンス構造を形成するものであればどのような形状であってもよい。
【0042】
また、以上の実施形態では、従動回転体30が支持軸39に対して回転する構造のポンプについて本発明を適用したが、従動回転体と一体に一体に回転する回転軸を有するポンプにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態に係る自吸式ポンプの断面図である。
【図2】図1の拡大断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る自吸式ポンプの拡大断面図である。
【図4】第3の実施形態に係る自吸式ポンプの拡大断面図である。
【図5】第4の実施形態に係る自吸式ポンプの拡大断面図である。
【図6】第5の実施形態に係る自吸式ポンプの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…ケーシング
2…ポンプ本体
3…第1ケーシング
4…第2ケーシング
5…仕切り板
9…第1ポンプ室
20…第2ポンプ室
29…インペラ
50…ライナーリング
51…マウスリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送流体の吸入口と吐出口を有するケーシングと、
このケーシングの内部を区画してポンプ室を形成すると共に前記吸入口に連通する導入口をポンプ室のフロント側に形成するフロント隔壁と、
前記ポンプ室の内部に前記導入口と同軸で回転自在に収容され、前記フロント隔壁の導入口と対向する部分に前記移送流体を導入するための開口部が形成されてこの開口部から導入された移送流体を外周から吐出するインペラと、
このインペラを回転自在に且つ回転軸方向にスライド自在に支持する支持部材と、
前記インペラを回転駆動する回転駆動手段と、
前記フロント隔壁の導入口及び前記インペラの開口部の少なくとも一方に前記回転軸と平行な方向に突設され前記フロント隔壁の導入口と前記インペラの開口部との間の回転軸方向の環状隙間をその内周側及び外周側の少なくとも一方から非接触で覆う逆流防止用突部と
を備えたことを特徴とする自吸式ポンプ。
【請求項2】
前記フロント隔壁は、前記導入口にライナーリングを有し、
前記インペラは、前記開口部に前記ライナーリングと摺接可能なマウスリングを有し、
前記逆流防止用突部は、前記ライナーリングと前記マウスリングの環状隙間をその内周側及び外周側の少なくとも一方から覆うものである
ことを特徴とする請求項1記載の自吸式ポンプ。
【請求項3】
前記ケーシングのリア側に前記ポンプ室と連通する円柱状空間を形成する有底円筒状のリア隔壁を有し、
前記支持部材は、前記リア隔壁のリア側の底面からフロント側に突設された支持軸を備え、
前記回転駆動手段は、前記インペラと一体に設けられ前記リア隔壁と前記支持軸との間の環状空間に配置され前記支持軸に回転自在に支持された従動回転体、前記リア隔壁の外周側に配置され前記従動回転体と磁気結合された駆動回転体、及び前記駆動回転体を回転駆動するモータを有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の自吸式ポンプ。
【請求項4】
前記ケーシングは、呼び水を収容可能なフロント側の第1タンク室とリア側の第2タンク室とに区画され、
前記第1タンク室は、その上方部で前記移送流体の吸入口と連通すると共にその下方部で前記フロント隔壁の導入口と連通し、
前記第2タンク室は、前記ポンプ室と連通すると共にその上方部で前記移送流体の吐出口と連通する
ものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の自吸式ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−50958(P2008−50958A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226059(P2006−226059)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000127352)株式会社イワキ (23)
【Fターム(参考)】