説明

自在栓

【課題】自在栓となる風船部分を確実に支持することができ、容器体開口部への装着に際しての取り扱い性や、封止安定性に優れているとともに、容器体の注出口が密閉された状態を保持して、内容物の供給排出や入れ替えなどの処理操作を行うこともできる自在栓を提供する。
【解決手段】大きさ、形状の異なる容器体11の開口部11aにその先端部側が装着されて開口部11aを封止する自在栓10であって、開口部11aに密着して空気圧により膨出又は収縮するバルーン部13と、バルーン部13を貫通して設けられたバルーン支持軸14と、を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料ボトルやドラム缶などの容器体の開口部に装着して保持される自在栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料ボトルなどの容器体にその内容物を残した時に、ボトル注出口に栓となる蓋を締めて保存するが、飲料中の炭酸などが気化して清涼感や風味を失ってしまう場合が多くあった。このため、容器体の開口部に密閉する蓋部材が考案されている。又、空気に触れると酸化してしまうワインなどをワインボトルに保存する場合、残留したワインがボトル内の空気と触れぬように、常に容器内が充填された状態を維持させるために密閉式の栓を開口部に取り付けていた。
例えば、特許文献1(実開平6−78258号公報)には、風船にゴム管と止め具を設けて構成した瓶の栓が記載され、瓶の中の飲み物を新鮮な状態で保存でき、種々の大きさの瓶に使用可能としている。
【特許文献1】実開平6−78258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら特許文献1に記載の瓶の栓では、栓となる風船自体が柔軟でその形を維持し難いために、容器体開口部への装着に際して取り扱いがしづらく容器体への封止性が不確実であるとともに、ロボットアームなどを用いた自動化が困難になったりするという問題があった。さらに、前記風船を用いた栓を使用して瓶の注出口が密閉されても、瓶内部には空気が残留しているため、始めの良好な状態を維持することが困難であるのが現状である。このため、内容物を別の小さな容器に入れ替える手間が必要であると共に、この過程で内容液が漏れたり、入れ替え中に空気に触れて酸化したりする等の問題点があった。
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、栓となる風船自体を確実に支持することができ、容器体開口部への装着に際しての取り扱い性や、封止安定性に優れているとともに、容器体の注出口が密閉された状態を保持して、内容物の供給排出や入れ替えなどの処理操作を行うこともできる自在栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)前記従来の課題を解決するためになされた本発明の自在栓は、大きさ、形状の異なる容器体の開口部にその先端部側が装着されて前記開口部を封止する自在栓であって、前記開口部に密着して空気圧により膨出又は収縮するバルーン部と、前記バルーン部を貫通して設けられたバルーン支持軸と、を有するように構成される。
【0005】
(2)本発明は前記(1)記載の自在栓において、前記容器体に気体又は液体を供給排出する内容物給排管が前記バルーン支持軸を貫通して同軸に設けられていることを特徴とする。
【0006】
(3)本発明は前記(1)又は(2)記載の自在栓において、前記バルーン部が合成ゴム層とシリコンゴム層からなる2層ゴムで形成されていることを特徴とする。
【0007】
(4)本発明は前記(1)〜(3)のいずれかに記載の自在栓において、前記バルーン部内を給排気する給排気部と、前記バルーン部内の空気圧を保持させる逆止弁とを有することを特徴とする。
【0008】
(5)本発明は前記(1)〜(4)のいずれか記載の自在栓において、前記容器体が飲料物などのペットボトルやワインボトル、エンジンオイルで満たされたエンジンルーム、上下水道管などの配管部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自在栓は、空気圧により膨出又は収縮するバルーン部を貫通して設けられたバルーン支持軸を有しており、バルーン支持軸により支持されたバルーン部を確実に支持して自在栓を取り扱うことができるので、容器体開口部への装着に際しての取り扱い性や、封止安定性に優れた自在栓を提供することができる。また、前記容器体に気体又は液体を供給排出する内容物給排管を前記バルーン支持軸に貫通して同軸に設けることもできるので、自在栓が装着された容器体の密閉状態を保持したまま、内容物の供給排出や残留気体の入れ替えなどの処理操作を行え。優れた汎用性を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る自在栓は、大きさ、形状の異なるボトル容器やドラム缶などの容器体の開口部にその先端部側が装着されて前記開口部を封止するための自在栓であって、前記開口部に密着して空気圧により膨出又は収縮する紡錘状のバルーン部と、前記バルーン部を貫通して設けられたバルーン支持軸と、を有して構成される。これによって、バルーン支持軸に支持されたバルーン部を確実に容器体開口部に挿入して、バルーン部を空気圧により膨張させることによって容器体を密封状態に保持させることができる。
【0011】
自在栓は、それぞれの口径が異なるようなワインボトルやドラム缶、排水管などの開口部に挿入して用いることのできる栓部材であって、挿入後にバルーン部を空気圧で膨らませることによって、開口部にバルーン部を密着させて封止させる機能を有している。
【0012】
バルーン部は、紡錘状や球形状に形成されたゴム膜材などからなり、その密閉された内部に空気が圧入されることによって全体を膨張させることができる。こうして、容器体における開口部の大きさ、形状、などが種々あっても、それらの開口部にフレキシブルに対応できる。また、ゴム膜部材の柔軟性によって、容器体に付加される機械的振動を吸収して、容器体への損傷や負担が著しく減少させ安全に保持することができる。
【0013】
バルーン支持軸は、球形状などに形成された前記バルーン部を貫通して棒状に配置されて自在栓の骨格構造を形成してそのハンドリング性や強度を確保する機能を有するものである。バルーン支持軸の基部側は容器体開口部に蓋状に冠着されるとともに、バルーン支持部の先端側はバルーン部から突出して容器体内に向けて挿入される。
【0014】
本実施形態の自在栓は、前記容器体に気体又は液体を供給排出する内容物給排管が前記バルーン支持軸を貫通して同軸に設けることもできる。これによって、容器体を密閉状態で保持したまま、その内容物の供給排出や残留気体の入れ替えなどの処理操作を行うことを可能としている。例えば、この内容物給排管を介して容器体内の内容物や空気部分を調整するワイン製造工場などにおけるワインボトルの長期保存管理や、ドラム缶、排水管などにおける洗浄処理作業などに適用することもできる。
内容物給排管は、プラスチック材や金属材からなるパイプ類であって前記バルーン支持軸内に同軸に配置され、容器体内を密封シールするための開閉バルブやコック類が必要に応じて設けられる。そして、コネクタチューブなどを介して内容物給排管に接続される内容物供給タンクやエアコンプレッサ、吸引ポンプなどから所定の内容物や調整用空気を容器体内に送り込んだり、容器体内を減圧、真空抜きして内容物である飲料食物などの腐食を防止したりすることができる。
【0015】
さらに本実施形態の自在栓は、前記バルーン部が合成ゴム層とシリコンゴム層からなる2層ゴムで形成することもできる。これによって、それぞれ形状・口径などの異なる容器体の注入口にフレキシブルに対応できるとともに、合成ゴムの有する伸縮性、引裂き強度の特徴と、シリコンゴムの有する復元性、反発弾性、耐光性などの特徴とを融合させた複合ゴムとすることによって、軽量で気密性が高く、絶縁性と振動吸収性に優れた自在栓を提供することができる。また、シリコンゴムの使用により、耐熱・耐寒・耐油・耐アルカリ・耐弱酸性に優れた特徴を活かせるとともに、ゴムに関する疾患やゴムアレルギー等に対応する可能性も備えることができる。なお、2層ゴムはその内張り側を合成ゴム、外張り側をシリコンゴムとして、シリコンゴムの耐候性(耐紫外線、耐油、など)を活かしつつ、廉価な合成ゴムを用いて経済性に優れたものとすることができる。シリコンゴム(シリコーンゴム)は、ケイ素樹脂の一種であるシリコーンを主成分とするゴム状合成樹脂であって、耐熱、耐水、耐薬品性に優れ、医療用としても広く用いられる安全な素材である。
【0016】
また、本実施形態の自在栓は、前記バルーン部内を給排気する給排気部と、前記バルーン部内の空気圧を保持させる逆止弁とを有することができる。これによって、空気を送り込むためのエアコンプレッサや長いホース類を自在栓に接続することなく、自在栓を用いて容器体を手軽に密閉、開放することができる。
【0017】
給排気部は、例えば、使用者が上下動させるだけで作動する蛇腹式の空気ポンプなどであって、バルーン部を支持するバルーン支持軸の基部に固定もしくは着脱可能に設けて操作することができる。
【0018】
逆止弁は、バルーン部内に圧入された空気を逃がさず保持するための弁体であって、その側部などに設けられたピン孔にクリップなどの先端を差し込むことで空気を抜いてバルーン部を萎ませることができるようになっている。
【0019】
さらに、本実施形態の自在栓は、前記容器体が飲料物などのペットボトルやワインボトル、エンジンオイルで満たされたエンジンルーム、上下水道管などの配管部材であることにも特徴を有している。これによって、容器内の減圧や内容物の調整などによる各種処理操作を行なったり、配管の詰まりに対して配管内の圧力を増減させることで管壁に付着した堆積物などを有効に除去したりすることができ、汎用性に優れた自在栓を提供することができる。
【0020】
(実施例1)
図1は本発明の実施例に係る自在栓が適用される容器体を示す説明図であり、図2はこの自在栓の動作状態を示す説明図である。以下図面を参照して実施例1の自在栓について具体的に説明する。
図1及び図2に示すように実施例1の自在栓10は、ドラム缶やワインボトルなどの容器体11の開口部11aに挿入して用いられ、その高さが約100mm、開口部11aに挿入される胴体部分の直径が約10mmの略紡錘状に形成された栓部材である。
この自在栓10は、容器体11の開口部11aに冠着される略円盤状の基部12と、基部12を貫通するように棒状に立設されたバルーン支持軸13と、バルーン支持軸13の周囲に配設され2層ゴムにより略球形状に形成されたバルーン部14と、バルーン支持軸13の軸芯を貫通して形成され図示しない内容物貯留タンクなどに連接される内容物給排管15と、バルーン部14内の空気を給排気するための給排気管16とを有している。
【0021】
バルーン部14は、内張り側となる合成ゴム層と外張り側となるシリコンゴム層の2層ゴムを素材としており、全体の長さが約100mm、収縮時の胴体直径が約10mmとなる略紡錘状に形成されて、その中心軸を貫通するバルーン支持軸13によって上下端側が支持されるようになっている。ちなみに、この合成ゴム層(G)とシリコンゴム層(S)の厚みの比(G/S)は例えば0.5〜5の範囲であって、2層ゴム層全体の厚み(T)は約0.5〜2mmであり、これら、S/G、Tの値は自在栓が適用される容器体などの用途、サイズ、形状などに応じて、適宜、所定値に設定することが望ましい。
【0022】
容器体11の開口部11aに冠着される略円盤状の基部12はプラスチック材や金属材などからなり、バルーン部14に空気を給排して2層ゴムを膨張又は収縮させるための給排気管16と、内容物給排管15が同軸に形成されたバルーン支持軸13とが配置されている。バルーン支持軸13を兼ねた内容物給排管15は、基部12から下方に垂設されその下端が注出口又は注入口となっており、容器体11に保持させるドラム缶液や空気などの出し入れが行えるようになっている。
【0023】
自在栓10は、給排気管16を介して空気をバルーン部14に圧入又は排気することにより、図2に示すように2層ゴムからなるゴム膜を膨張(図2(a))、収縮(図2(b))させることによって、自在栓10を容器体11の開口部11aに密封状態又は取り出し自在な状態に保持させるのである。給排気管16は図示しないコンプレッサやポンプ、圧縮空気タンクなどに連結されており、バルブ操作などを介してバルーン部14へ空気の給排が制御される。
【0024】
図3は実施例1の自在栓10をそれぞれ開口部の形状などが異なる容器体に適用した場合の断面説明図である。
図3(a)は自在栓10の胴部を容器体開口部の中途に位置付けて密閉保持した例を示し、図3(b)は自在栓10の基部12を容器体開口部まで押し込んで位置付けた例を示している。また、図3(c)及び図3(d)はそれぞれ開口部の形状が異なる容器体に自在栓10を押し込んで位置付けた例を示している。すなわち、実施例1の自在栓10は、気体で膨らませた2層ゴムにより、軽量で気密性と絶縁性に優れ、振動吸収率が非常に高いことに加えて、種類や形状、口径の異なる容器体の開口部(注入口)にフレキシブルに対応させることが可能となっている。
【0025】
(実施例2)
ここで、図4は実施例2の自在栓20を用いたワインボトルの管理方法の一例を示す説明図である。実施例2の自在栓20は、容器体となるワインボトル21に冠着される略円盤状の基部12と、基部12を貫通するように垂設されたバルーン支持軸13と、バルーン支持軸13の周囲に配設され2層ゴムからなるバルーン部14と、このバルーン支持軸を貫通して形成された内容物給排管15と、バルーン部14内の空気を給排気する給排気管16との構成に加えて、給排気管16の基端に設けられ空気ポンプ22やコンプレッサなどが連接される逆止弁23と、内容物給排管15の供給口に設けられて開閉操作され図示しないワインタンクに連接されるバルブ24とを備えている。なお、以降の説明において実施例1の自在栓10と同様の機能を有するものについては、同一の符号を付してこの詳しい説明を省略する。
【0026】
ワイン工場などにおいてワイン液を管理する場合は、まず、図4(a)に示すようにワインボトル21の開口部上方に自在栓20を位置付ける。このときバルーン部14は開口部21aに挿入されるような縮径状態に保持されている。
こうして、ワインボトル21の開口部21aに自在栓20の基部12が冠着される位置まで自在栓20が挿入される(図4(b))。次に、バルーン部14内の空気を給排気する給排気管16基端の逆止弁23に空気ポンプ22を装着して、蛇腹式の空気ポンプ22を上下動させることでバルーン部14に空気を送り込んで、バルーン部14を開口部21aに密着させるように膨張させる。これによって、図4(c)に示すように自在栓20がワインボトル21に密封した状態で固定される。
【0027】
続く図4(d)では、空気ポンプ22を逆止弁23から必要に応じて取り外す。このとき、バルーン部14内の空気は逆止弁23を介して抜けることがなく密閉状態が保持されている。こうして、内容物給排管15に固定されたバルブ24と図示しないワイン工場に設けたワインタンクなどとを輸送用パイプ25を介して接続する。
【0028】
次に輸送用パイプ25を介してワインタンク内のワイン液をワインボトル21に注ぎ込んだ後(図4(d))、輸送用パイプ25の基端側接続部をワインタンクから図示しないガス供給装置や空気コンプレッサなどに切り換えて、ワインボトル21内のワイン保持環境を所定条件に調整する処理などを行うことができる。
【0029】
このような調整処理がなされた後、図4(e)に示すように輸送用パイプ25をバルブ24から取り外して、所定のワイナリーなどに自在栓20が装着されたワインボトル21を貯蔵する(図4(f))。
以上説明したように、実施例2の自在栓20を介した一連の処理は、その時点におけるワイン液の熟成度合いに応じて適宜実施することができ、作業の効率化を図ることができる。
【0030】
(実施例3)
図5は実施例3の自在栓30の説明図である。本発明に係る実施例3の自在栓30は、容器体となるドラム缶31の開口部に冠着される円盤状基部32と、円盤状基部32に棒軸状に略垂設されるバルーン支持軸33と、バルーン支持軸33の周囲に配設され2層ゴムからなるバルーン部34と、バルーン部34内の空気を給排気する給排気部35と、給排気部35の基端に設けられた逆止弁36と、逆止弁36に固定配置された空気圧入ポンプ37とを備えている。
バルーン支持軸33は、円盤状基部32の略中心位置から垂直又は斜めに立設された中実状もしくはパイプ状の支持体であって、その上端部及び下端部が紡錘状に形成されたバルーン部34にそれぞれ接着固定されることによって封止されている。
逆止弁36は空気圧入ポンプ37により膨張したバルーン部34の空気を閉じ込める機能を備えるとともに、ピン先などをその開放口に押し込むことで空気をバルーン部34から抜いて自在栓30をドラム缶31から取り外すこともできるような構造を備えている。
【0031】
自在栓30は図5(a)に示すようにドラム缶31などの開口部に挿入される。そして、円盤状基部32に固定配置された空気圧入ポンプ37を上下動させることによって、図5(b)に示すように空気流通孔38を介して吸入した空気でバルーン部34を膨張させることによってドラム缶31開口部との密封状態を保持させることができる。また、逆止弁36の封止効果を解除することで、自在栓30をドラム缶31から取り外すこともできる。なお、実施例2の場合と同様に、バルーン支持軸33に内容物給排管を設けて、ドラム缶31に保持される内容物の処理を行うことも可能である。
以上説明したように実施例3の自在栓30にはそのバルーン部34を膨張、収縮させるための空気圧入ポンプ37と逆止弁36を備えているので、野外や家庭などの環境などであっても、コンプレッサなどを要することなくドラム缶31やワインボトルなどに自在栓30を適用してその操作を確実に行うことができる。
【0032】
(実施例4)
図6は実施例4に係る自在栓40の使用形態の説明図である。本発明に係る実施例4の自在栓40は、上下水道管などの配管部材に取り付けられそのメンテナンス作業などに適用できる。このような自在栓40は図示するように、上下水道管などの開口部41に冠着される円盤状基部42と、円盤状基部42にパイプ状に垂設され内容物給排管を兼ねたバルーン支持軸43と、バルーン支持軸43の周囲にそのゴム膜が膨張収縮自在に配設され開口部41内側面に密着して封止するバルーン部44とを備えて構成されている。
図6(a)に示すように、自在栓40は内容物給排管を兼ねたバルーン支持軸43を介して、汚泥などが堆積付着した配管部材内を減圧又は加圧したり、洗浄液などを流し込んだりすることによって配管内の洗浄などのメンテナンス作業を行うことができる。この場合、コンプレッサ45を用いてバルーン部44を開口部41内側面に固定するとともに、吸引ポンプや供給ポンプなどのポンプ装置46をバルーン支持軸43に接続して、配管内の圧力を変動させ、このような圧力変動操作を繰り返すことによって、堆積物などを流動させ配管内の洗浄を効果的に行うことが可能である。
【0033】
こうして、実施例4の自在栓40によれば、工事現場などにおける異なる形状や口径の開口部にフレキシブルに対応させることができる。さらに、バルーン部44を合成ゴムとシリコンゴムとからなる2層ゴムとすることもできるので合成ゴムの伸縮性や引裂き強度の利点に加えて、シリコンゴムの復元性、反発弾性、耐光性の利点を融合させて、軽量で気密性、絶縁性、振動吸収率に優れたものとすることができる。このように、自在栓40は配管部材のみならず、エンジンルームなどのメンテナンスにも適用可能であり、封止部分がゴム材で形成されているために容器体となる構造体への損傷、負担を著しく減少させるような優れた効果も有している。
【0034】
(実施例5)
図7〜図15は実施例5に係る自在栓50の使用形態の説明図である。図7に示すように実施例5の自在栓50は、作業者が手で拡縮操作してその吸気、給気などが可能なハンドポンプ51と、ハンドポンプ51と自在栓50の間に接続される逆止弁52及び二方弁53と、ボトル容器54内の内容物を分離するための分離器55などをアタッチメント部材として備えている。そして、これらアタッチメント部材をそれぞれ組み合わせて自在弁50に接続して用いることによって。ボトル容器54などにおける内容物の各種処理作業が可能になっている。なお、自在栓50は、実施例1の自在栓10とその基本構成は略同様であるので、同様の機能を有するものについては同一の符号を付してその説明を省略するものとする。
【0035】
図8、図9は自在栓50のバルーン部14に連通するように逆止弁52、二方弁53、給排気管16を介してハンドポンプ51に装着して、自在栓50をそれぞれ口径の異なるボトル容器54、55に取り付ける方法の説明図である。すなわち、図8(a)、図9(a)に示すように二方弁53と逆止弁52を介してハンドポンプ51が給排気管16に装着された自在栓50をボトル容器54、55の開口部に挿入する。しかる後に、図8(b)、図9(b)に示すようにハンドポンプ51を拡縮して、バルーン部14を膨張させることで、そのバルーン面を開口部内壁に密着させることで固定させるのである。
【0036】
図10はバルーン部14に送風して自在栓50をボトル容器54に固定した後、自在栓50の内容物給排管15に分離器55及びハンドポンプ57を逆止弁52を介して装着した状態の説明図であり、図11はハンドポンプ51を取り外しして二方弁53から空気を逃がすことでバルーン部14を縮小させて自在栓50を取り外し可能にした状態の説明図である。このように、ハンドポンプ51の操作によってバルーン部14を膨張させたり、バルーン部14に接続する二方弁53を開放することで、自在栓50のボトル容器54への密封固定操作及びその取り外し操作が可能になっている。このように取り外された自在栓50は、図12に示すようにボトル容器54、56などに再度装着して用いることができる。
【0037】
以上のようにして装着された自在栓50を用いることによって、図13に示すような容器内減圧操作や、図14に示すような容器内への添加物混合操作、図15に示すような容器内容物の抽出操作などを行うことができる。
容器内減圧操作は、バルーン部14を膨張させたボトル密封状態において、吸引用として機能させるハンドポンプ57を操作してワインボトルなどのボトル容器54に充満したガスの排出を行うものである(図13参照)。なお、この場合、ハンドポンプ57に接続される逆止弁52は、そのハンドポンプ本体への吸気方向に対して機能するように設定され、ハンドポンプ51に接続される逆止弁52はそのハンドポンプ本体から吐気方向に対して機能するように設定されている。
【0038】
容器内添加物混合操作は、ハンドポンプ56を取り外した後、密封状態に保持されたボトル容器54内に分離器55内の添加物を二方弁53を介して供給して、成分調整などを行うものである(図14参照)。この場合、ハンドポンプ57は、分離器55から取り外した状態で、分離器55と内容物給排管15との間に配置された二方弁53を開閉することで所定量の添加物の流下量が制御される。
【0039】
容器内容物の抽出操作は、ボトル容器54を反転させ、その下方の開口部から分離器55を介して内容物の一部を抜き取る操作であり、分離器55と内容物給排管15との間に配設された二方弁53を開放することで、外気と遮断したまま所定量の内容物を分離器55に導入して貯留することを可能にしている(図15参照)。
【0040】
図16〜図18はボトル容器の筐体が大きくその反転が不可能な場合における自在栓50の使用形態の説明図である。ここでは、内容物給排管15に三方分岐部58を取り付けることで吸引用となる2基のハンドポンプ57、59を設けるとともに、ボトル容器60の開口部に挿入される自在栓50の内容物給排管15の下端がボトル容器底部に近接するように設けられている。
なお、ハンドポンプ59は逆止弁52と二方弁53とを介して三方分岐部58の一方に接続される。ハンドポンプ57は逆止弁52、分離器55、二方弁53、を介して他方の三方分岐部58に接続されており、この三方分岐部58の残りの下端が自在栓50の内容物給排管15に連接されている。図示するようにボトル容器60を反転させることなく容器内の内容物を分離器55内に抽出することができるようになっている。
【0041】
こうして、図17に示すように三方分岐部58を切り換えて、ハンドポンプ59を吸引操作することによってボトル容器60内を減圧した後、二方弁53を閉鎖する。つぎに図18に示すように三方分岐部58を切り換えて、他方のハンドポンプ57を吸引操作することによって、ボトル容器60内の内容物が分離器55に取り込まれるのである。
【0042】
本発明は以上説明したように、空気圧により膨出又は収縮するバルーン部を貫通するようにバルーン支持軸を設けたことを要旨とするものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。すなわち、本発明によれば、栓となるバルーン部をバルーン支持部により支持することによって容器体開口部への装着に際しての取り扱い性や、封止安定性を高めることができる。さらに、このバルーン支持軸に内容物給排管を設けることで容器体の開港部が密閉された状態を保持しつつ、内容物の供給排出や入れ替えなどの処理操作を行うことも可能にするものである。
【0043】
なお、本発明の実施例に記載された自在栓は、本発明から生じる最も好適な構成のものを列挙したに過ぎず、本発明は本実施例に記載された形状やサイズのものに限定されるものではない。例えば、本実施例においてバルーン部を2層ゴムによる構成のものとしたが、合成ゴムやシリコンゴムなどによる単層構造としたものにも本発明を適用することもできる。また、自在栓が適用される容器体としては、ワインボトルや上下水道管などの他にもペットボトルなどの飲料容器や自動車用エンジンなどの各種原料タンクにも広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1に係る自在栓が適用される容器体を示す説明図である。
【図2】同自在栓の動作状態を示す説明図である。
【図3】同自在栓を異なる容器体に適用した場合の説明図である。
【図4】実施例2の自在栓を用いたワインボトル管理方法の説明図である。
【図5】実施例3に係る自在栓の説明図である。
【図6】実施例4に係る自在栓の使用形態の説明図である。
【図7】実施例5に係る自在栓のアタッチメント部材の説明図である。
【図8】同自在栓をボトル容器に取り付ける方法の説明図である。
【図9】同自在栓をボトル容器に取り付ける方法の説明図である。
【図10】同自在栓を用いたバルーン送風固定方法の説明図である。
【図11】同自在栓を用いたバルーン排気方法の説明図である。
【図12】同自在栓のボトル容器装着前の説明図である。
【図13】同自在栓を用いた容器内減圧方法の説明図である。
【図14】同自在栓を用いた容器内添加物処理の説明図である。
【図15】同自在栓を用いた容器内容物抽出処理の説明図である。
【図16】同自在栓における使用形態の説明図である。
【図17】同自在栓における使用形態の説明図である。
【図18】同自在栓における使用形態の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10 実施例1の自在栓
11 容器体
11a 開口部
12 基部
13 バルーン支持軸
14 バルーン部
15 内容物給排管
16 給排気管
20 実施例2の自在栓
21 ワインボトル
21a 開口部
22 空気ポンプ
23 逆止弁
24 バルブ
25 輸送用パイプ
30 実施例3の自在栓
31 ドラム缶
32 円盤状基部
33 バルーン支持軸
34 バルーン部
35 給排気部
36 逆止弁
37 空気圧入ポンプ
38 空気流通孔
40 実施例4の自在栓
41 上下水道管などの開口部
42 円盤状基部
43 バルーン支持軸
44 バルーン部
45 ハンドポンプ
46 ポンプ装置
50 実施例5の自在栓
51 ハンドポンプ
52 逆止弁
53 二方弁
54 ボトル容器(容器体)
55 分離器
56 ボトル容器(容器体)
57 ハンドポンプ
58 三方分岐部
59 ハンドポンプ
60 ボトル容器(容器体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きさ、形状の異なる容器体の開口部にその先端部側が装着されて前記開口部を封止する自在栓であって、前記開口部に密着して空気圧により膨出又は収縮するバルーン部と、前記バルーン部を貫通して設けられたバルーン支持軸と、を有することを特徴とする自在栓。
【請求項2】
前記容器体に気体又は液体を供給排出する内容物給排管が前記バルーン支持軸を貫通して同軸に設けられていることを特徴とする請求項1記載の自在栓。
【請求項3】
前記バルーン部が合成ゴム層とシリコンゴム層からなる2層ゴムで形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の自在栓。
【請求項4】
前記バルーン部内を給排気する給排気部と、前記バルーン部内の空気圧を保持させる逆止弁とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自在栓。
【請求項5】
前記容器体が飲料物などのペットボトルやワインボトル、エンジンオイルで満たされたエンジンルーム、上下水道管などの配管部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自在栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−202912(P2009−202912A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47612(P2008−47612)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(506124044)丸大鐵工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】