説明

自己診断可能な電子回路及び磁界検出装置

【課題】 従来に比べて、信頼性の高い自己診断可能な電子回路及び磁界検出装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 検出回路21と、検出回路からの検出信号を増幅させるオペアンプ23と、検出回路と前記オペアンプとの間に接続されたマルチプレクサ22と、オペアンプからの検出信号を演算処理するマイクロプロセッサ24と、を有する。そして、高電圧の第1の診断信号と低電圧の第2の診断信号を夫々生成するための診断回路25を有する。診断回路25はマルチプレクサ22に接続され、マルチプレクサ22により選択された各診断信号32,33がオペアンプ23を介してマイクロプロセッサ24に入力可能とされている。マイクロプロセッサ24では、第1の診断信号及び第2の診断信号に基づいて、電子回路が正常に機能しているか否かを診断可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路が正常に機能しているか否かを判断できる自己診断可能な電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば磁界検出のための検出回路を有する電子回路において、磁界検出信号のみを取得可能な構成では、電子回路内にて故障が生じていても、マイクロプロセッサは、その磁界検出信号を正しいものとして演算処理を行ってしまい、信頼性に劣る構成となっていた。
【0003】
例えば特許文献1には、マルチプレクサ方式電圧測定素子の測定チャネルに、0ボルトの基準電圧を測定するチャネルを設けておき、この基準電圧を測定し、測定結果と基準電圧値とを比較することにより、電圧測定デバイスが正常に通信することが出来ているかどうか判断する構成が開示されている(特許文献1の[0029]欄参照)。
【0004】
しかしながら特許文献1に記載された構成のように、一つの基準電圧のみでは、例えばマルチプレクサが故障していて切換がうまくいかずにロック状態となり、たまたま一つの基準電圧に合った測定結果が出続けると、正常と判断されてしまい、信頼性を十分に向上させることができない。
【0005】
また特許文献1では、例えば電子回路内にオペアンプが接続された構成で、前記オペアンプが故障していても、基準電圧を0Vにしているため、オペアンプの故障を適切に判断することができない。
【0006】
また特許文献2に記載された発明は、外部負荷の種類に応じて複数の駆動電圧を切り替えるように構成された電子回路構成であり、駆動電圧の切換が正常に行われたか否かを一対の分圧抵抗により分圧することで得られる分圧値に基づいて判断している(特許文献2の[0068]欄参照)。
【0007】
しかしながら特許文献2においても、特許文献1と同様に、ひとつの基準電圧(分圧値)でのみ判断しており、信頼性を十分に向上させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−113699号公報
【特許文献2】特開2008−59517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の問題点を解決するためのものであり、従来に比べて、信頼性の高い自己診断可能な電子回路及び磁界検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、検出回路と、前記検出回路からの検出信号を増幅させるオペアンプと、前記検出回路と前記オペアンプとの間に接続されたマルチプレクサと、前記オペアンプからの検出信号を演算処理するマイクロプロセッサと、を有する電子回路において、
高電圧の第1の診断信号と低電圧の第2の診断信号を夫々生成するための診断回路を有し、
前記診断回路は前記マルチプレクサに接続され、前記マルチプレクサにより選択された各診断信号が前記オペアンプを介して前記マイクロプロセッサに入力可能とされており、
前記マイクロプロセッサでは、前記第1の診断信号及び前記第2の診断信号に基づいて、前記電子回路が正常に機能しているか否かを診断可能とされていることを特徴とするものである。
【0011】
このように、本発明では、高電圧と低電圧の2つの診断信号に基づいてマイクロプロセッサにより電子回路が正常に機能しているか否かを判断しているので、従来に比べて信頼性の高い自己診断可能な電子回路を構成できる。また検出回路と診断回路とをマルチプレクサに接続して、一つのオペアンプ及びマイクロプロセッサを設けた構成であるため、回路構成が複雑にならずコストアップを抑制することができる。
【0012】
本発明では、前記マイクロプロセッサでは、前記診断回路の入力電圧に応じて、前記マイクロプロセッサに入力された前記第1の診断信号と比較するための第1の基準電圧と、前記マイクロプロセッサに入力された前記第2の診断信号と比較するための第2の基準電圧とを夫々、補正可能とされていることが好ましい。これにより、より信頼性の高い自己診断可能な電子回路を構成できる。
【0013】
また本発明では、前記マイクロプロセッサは、前記マイクロプロセッサに入力された前記第1の診断信号及び前記第2の診断信号に基づいて、前記電子回路が正常に機能しているか否かを診断するための自己診断部を有し、
前記自己診断部には、前記マイクロプロセッサに入力された前記第1の診断信号及び前記第2の診断信号が正常範囲内か否かを評価するための評価部と、
前記評価部により前記第1の診断信号及び前記第2の診断信号が正常範囲から逸脱したときに所定のカウンター値を蓄積していくためのカウンター部とを有し、
前記カウンター値が所定以上となったときに異常と判断してエラー信号を出力することが好ましい。これにより、評価部にて、第1の診断信号や第2の診断信号が正常範囲から外れていると判断しても、直ぐにエラー信号を出さずにカウンター値が所定以上になったときに初めてエラー信号を出すことで、電子回路の駆動安定性を向上させることができる。
【0014】
また本発明では、前記診断回路は、抵抗分圧回路により、高電圧の前記第1の診断信号及び低電圧の前記第2の診断信号を夫々、出力可能とされていることが好ましい。これにより簡単な診断回路を構成でき、回路構成が複雑にならずコストアップを抑制することができる。
【0015】
また本発明では、前記検出回路を、複数の磁界検出素子のブリッジ回路にて構成にできる。
【0016】
また本発明における磁界検出装置は、
磁気センサと磁石とが間隔を空けて対向配置されており、前記磁気センサは前記磁石から発生する磁界の変化を検知するためのものであり、
前記磁気センサに、上記の前記磁界検出素子を含む前記電子回路が構成されていることを特徴とするものである。これにより、誤った磁界検出を行うリスクを効果的に回避でき、磁界検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、高電圧と低電圧の2つの診断信号に基づいてマイクロプロセッサにより電子回路が正常に機能しているか否かを判断しているので、従来に比べて信頼性の高い自己診断可能な電子回路を構成できる。また検出回路と診断回路とをマルチプレクサに接続して、一つのオペアンプ及びマイクロプロセッサを設けた構成であるため、回路構成が複雑にならずコストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】磁界検出装置の斜視図、
【図2】本実施形態における電子回路図
【図3】本実施形態におけるマイクロプロセッサの構成図、
【図4】磁石の回転に伴う磁界の変化に基づき、図2に示す検出回路からオペアンプを経て生成されるSIN信号と、COS信号のイメージ図((a)がSIN信号で、(b)がCOS信号)、
【図5】本実施形態における電子回路が正常に機能しているか否かを自己診断するためのフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態における磁界検出装置の斜視図である。
図1に示す磁界検出装置9は、磁気センサ10と、磁石14とを有して構成される。図1に示すように磁気センサ10はプリント配線基板11と、プリント配線基板11に電気接続されたセンサ素子12とを有して構成されている。磁気センサ10と磁石14とは間隔を空けて配置されている(非接触)。
【0020】
図2は、磁気センサ10内に組み込まれる電子回路20の回路図である。
図2に示すように電子回路20は、磁界検知部としての検出回路21と、マルチプレクサ22と、オペアンプ(差動増幅器)23と、マイクロプロセッサ24と、診断回路25とを有して構成されている。
【0021】
図2に示すように検出回路21は、複数の磁界検出素子S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8のブリッジ回路26,27により構成されている。
【0022】
図2に示すように磁石14(図2では模式的に点線で示す)が回転すると、各磁界検出素子S1〜S8の電気特性が変化し、第1のブリッジ回路26からは磁界検出信号としてSIN+信号とSIN-信号が出力され、第2のブリッジ回路27からは磁界検出信号としてCOS+信号とCOS-信号が出力される。SIN+信号とSIN-信号、及び、COS+信号とCOS-信号は夫々、位相が180度ずれている。またSIN+信号とCOS+信号、及びSIN-信号とCOS-信号は夫々、位相が90度ずれている。
【0023】
図2に示すマルチプレクサ22により、SIN+信号とSIN-信号とが選択されて、オペアンプ23に入力されると、オペアンプ23にて図4(a)に示すように増幅されたSIN信号34を得ることができる。
【0024】
また図2に示すマルチプレクサ22により、COS+信号とCOS-信号とが選択されて、オペアンプ23に入力されると、オペアンプ23にて図4(b)に示すように増幅されたCOS信号35を得ることができる。
【0025】
なお図2に示すように例えば、各ブリッジ回路26,27の入力電圧(電源電圧)は5Vであり、よって図4(a)(b)に示すように中点電位は2.5Vである。
【0026】
オペアンプ23により生成されたSIN信号34及びCOS信号35が、例えば、マイクロプロセッサ24の図3に示す演算処理部19にディジタル信号に変換された状態で入力され、演算処理部19にて、「arc tan」関数にて磁石の角度が演算され、角度値を示す出力がおこなわれる。例えば、図示しないD/A変換部においてアナログ値に変換され、電圧値として出力される。このとき、出力電圧は、磁石14が1回転する間に、その角度変化に対して比例的に変化する電圧、すなわち角度変化に対して一次関数で変化する電圧、または一次関数に近似して変化する電圧となり、磁石14の回転角や角速度の信号43として機器本体側の制御部(例えばECU)44に送信される。
【0027】
図2に示す複数の磁界検出素子S1〜S8の素子構成は、磁石14の回転に伴う磁場変化を受けて電気特性が変化するものであれば特に限定されない。例えば、磁界検出素子S1〜S8はGMR素子であり、固定磁性層/非磁性層/フリー磁性層の積層構造を有する。GMR素子は、固定磁性層の固定磁化方向(PIN方向)と、外部磁界の方向により磁化方向が変動するフリー磁性層の磁化方向との磁化関係で電気抵抗が変動する素子である。そして、各磁界検出素子S1〜S8の抵抗変化に基づいて各ブリッジ回路26,27から得られる出力が中点電位から変動し、磁石14の回転に伴って第1ブリッジ回路26からSIN+信号とSIN-信号、及び、第2ブリッジ回路27からCOS+信号とCOS-信号が夫々出力される。このとき、各ブリッジ回路26,27における直列接続された磁界検出素子の間、及び第1ブリッジ回路26と第2ブリッジ回路27との間で、磁界検出素子の固定磁性層の固定磁化方向(PIN方向)を異ならせて、第1ブリッジ回路26からSIN+信号とSIN-信号、及び、第2ブリッジ回路27からCOS+信号とCOS-信号が夫々出力されるように調整されている。
【0028】
図2に示すように本実施形態の電子回路20は、診断回路25を有する。診断回路25は、3つの固定抵抗28a〜28cが直列に接続され、固定抵抗28aと固定抵抗28bとの間、及び固定抵抗28bと固定抵抗28cとの間から夫々、異なる分圧抵抗を得るための分圧抵抗回路を構成している。
【0029】
図2に示すように、固定抵抗28a側に入力端子30が接続され、固定抵抗28c側にグランド端子31が接続されている。入力端子30は、第1ブリッジ回路26及び第2ブリッジ回路27と共通化することができる。よって、第1ブリッジ回路26及び第2ブリッジ回路27の入力電圧が5Vであれば、診断回路25の入力電圧も5Vである。
【0030】
図2に示す診断回路25により、固定抵抗28aと固定抵抗28bとの間の接続部から得られる第1の診断信号32は高電圧となり、固定抵抗28bと固定抵抗28cとの間の接続部から得られる第2の診断信号33は低電圧となる。オペアンプ23を介した後の、第1の診断信号32は中点電位(2.5V)より高く、第2の診断信号33は中点電位(2.5V)より低い方が望ましい。
【0031】
図2に示すマルチプレクサ22では、マイクロプロセッサ24からチャンネルセレクト信号36を受けて、第1のブリッジ回路26により生成されたSIN+信号とSIN-信号、第2ブリッジ回路27により生成されたCOS+信号とCOS-信号、診断回路25により生成された第1の診断信号32及び第2の診断信号33を順次、選択してオペアンプ23に送る。
【0032】
図3に示すように、マイクロプロセッサ24には、オペアンプ23により増幅されたSIN信号34、COS信号35、第1の診断信号32、第2の診断信号33が順次、入力され、SIN信号34とCOS信号35は、上記したように、演算処理部19に送られる。
【0033】
一方、第1の診断信号32と第2の診断信号33は、マイクロプロセッサ24の自己診断部37に送られる。図5に示すフローチャートも交えながら以下、電子回路20が正常に機能しているか否かを診断する自己診断方法について説明する。
【0034】
図3に示すように、自己診断部37は評価部38、カウンター部39及び基準電圧調整部40等を有して構成される。評価部38では、マイクロプロセッサ24に入力された第1の診断信号32が第1の基準電圧に対して正常範囲内にあるか否か、及び、マイクロプロセッサ24に入力された第2の診断信号33が第2の基準電圧に対して正常範囲内にあるか否かが評価される。
【0035】
各診断信号32,33と比較するための第1の基準電圧及び第2の基準電圧はマイクロプロセッサ24内に記憶されており、第1の基準電圧は、電子回路20が正常に機能した状態で、マイクロプロセッサ24に入力される第1の診断信号32の電圧値に一致し、第2の基準電圧は、電子回路20が正常に機能した状態で、マイクロプロセッサ24に入力される第2の診断信号33の電圧値に一致している。
【0036】
図3に示す基準電圧調整部40では、診断回路25の入力電圧が変動したときに、それに応じて、第1の基準電圧と第2の基準電圧とを夫々補正する。各基準電圧を入力電圧に対する所定の割合(パーセント)で規制することで、入力電圧の変動に応じて、第1の基準電圧及び第2の基準電圧を高精度に調整することができる。
【0037】
図3に示すカウンター部39は、評価部38にて第1の診断信号32や第2の診断信号33が正常範囲から逸脱していると判断された場合に、ある所定のカウンター値を蓄積し、あるいは、正常範囲内であるとカウンター値を減少させる機能を備える。
【0038】
図5のフローチャートに示すようにカウンター値は、最初、ゼロである。図2に示す診断回路25により生成された高電圧の第1の診断信号32と、低電圧の第2の診断信号33が、マルチプレクサ22により夫々、選択され、オペアンプ23を介してマイクロプロセッサ24にて読み取られると、マイクロプロセッサ24の評価部38では、第1の診断信号32を第1の基準電圧と比較して正常範囲内にあるか否か評価し、第2の診断信号33を第2の基準電圧と比較して正常範囲内にあるか否か評価する(図5のステップST1,ST2)。例えば「正常範囲」は基準電圧からある程度の幅を有している。
【0039】
第1の診断信号32及び第2の診断信号33が正常範囲内であると、現時点でのカウンター部39のカウンター値がゼロよりも大きいか否かを判断し(図5のステップST3)、カウンター値がゼロであれば、マイクロプロセッサ24により磁界検出信号であるSIN信号34、COS信号35が読み取られる(図5のステップST4)。そして、磁石14の回転角度や角速度の計算(図5のステップST5)を経て、CAN送信タイミングであれば(図5のステップST6)、磁石14の回転角度や角速度の信号が、図1の磁界検出装置9を組み込んだ電子機器や車載機器等に送信される(図5のステップST7)。CAN送信タイミングでなければ(図5のステップST6)、再び、ステップST1に戻る。また、図5のステップST3で、カウンター値が0よりも大きければ、カウンター値を1つ減らして(ステップST11)、ステップST4へ移行する。
【0040】
図5に示すように、ステップST2で、第1の診断信号32あるいは、第2の診断信号33が正常範囲から逸脱していると判断されると、カウンター部39でのカウンター値が例えば3増える(図5のステップST8)。
【0041】
続いてカウンター値が所定のエラー閾値以上であるか否か判断され(図5のステップST9)、カウンター値がエラー閾値を越えていればエラー確定となる(図5のステップST10)。エラー信号45は、図1の磁界検出装置9を組み込んだ電子機器や車載機器等の制御部に送信される(図3参照)。エラー信号45を制御部にてどのように取り扱うかは任意に決定される。例えばエラー信号45を受けて、電子機器や車載機器の駆動を完全に停止させることができる。
【0042】
また図5に示すように、ステップST9で、カウンター値がエラー閾値を下回っていれば、ステップST4に移行される。
【0043】
このように、評価部38にて、第1の診断信号32や第2の診断信号33が正常範囲から外れていると判断されても、直ぐにエラー信号を出さずにカウンター値が所定以上になったときに初めてエラー信号(図5のステップST9,ST10)を出すことで、電子回路20内に故障は無く、ノイズ等により、たまたま異常な診断信号を出力しても即座にエラーにしないため、電子回路20の駆動安定性を向上させることができる。
【0044】
本実施形態では、高電圧と低電圧の2つの診断信号32,33に基づいてマイクロプロセッサ24により電子回路20が正常に機能しているか否かを判断している点に特徴的構成がある。
【0045】
従来では、診断回路25を設けず、検出回路21からの検出信号のみを処理していたため、マルチプレクサ22やオペアンプ23などに故障があってもマイクロプロセッサ24は、検出回路21からの検出信号が正しいものとして演算及び所定の出力処理を行ってしまうため、信頼性に劣っていた。
【0046】
あるいは従来では、1つの診断電圧をマイクロプロセッサに入力して、前記マイクロプロセッサ内で設定された基準電圧と比較して、電子回路内に故障があるか否か自己診断する回路構成もある。しかし診断電圧を一つだけにすると、例えば、マルチプレクサ22がロックする故障を起こしたときに、たまたま、マイクロプロセッサ24に設定された基準電圧と一致した電圧が入力され続けると、マイクロプロセッサ24は電子回路20が正常に動作していると誤った判断をしてしまう。
【0047】
これに対して本実施形態では、高電圧と低電圧の2つの診断信号32,33に基づいてマイクロプロセッサ24により電子回路20が正常に機能しているか否かを判断するので、上記のような問題は生じず、従来に比べて信頼性の高い自己診断可能な電子回路20を構成できる。すなわち、高電圧と低電圧の二つの診断信号32,33を用いることで、電子回路20が故障して正常に機能しなくなったとき、マイクロプロセッサ24に入力される第1の診断信号32あるいは第2の診断信号33の少なくとも一方が、必ず基準電圧と比較して正常範囲から逸脱するため、高精度に電子回路20の状態を調べることが可能にある。
【0048】
また図2にように、検出回路21と診断回路25とをマルチプレクサ22に接続して、一つのオペアンプ23及びマイクロプロセッサ24を設けた構成であるため回路構成が複雑化せず、コストアップを抑制することができる。
【0049】
また本実施形態では図3に示すように、マイクロプロセッサ24の自己診断部37には基準電圧調整部40が設けられており、基準電圧調整部40では診断回路25の入力電圧に応じて、マイクロプロセッサ24に入力された第1の診断信号と比較するための第1の基準電圧と、マイクロプロセッサ24に入力された第2の診断信号と比較するための第2の基準電圧とをそれぞれ、補正可能としている。これにより、より信頼性の高い自己診断可能な電子回路20を構成できる。
【0050】
また本実施形態では、診断回路25は、抵抗分圧回路により、高電圧の第1の診断信号32と、低電圧の第2の診断信号を夫々、出力可能とされている。これにより簡単な診断回路25を構成でき、回路構成が複雑にならずコストアップを抑制することができる。
【0051】
そして本実施形態における電子回路20を、磁石14と対向配置される磁気センサ10内に組み込むことで、誤った磁界検出を行うリスクを回避でき、磁界検出精度を向上させることが可能である。
本実施形態における電子回路20は、磁気センサ10以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
9 磁界検出装置
10 磁気センサ
11 プリント配線基板
14 磁石
20 電子回路
21 検出回路
22 マルチプレクサ
23 オペアンプ
24 マイクロプロセッサ
25 診断回路
26、27 ブリッジ回路
28a〜28c 固定抵抗
32 第1の診断信号
33 第2の診断信号
34 SIN信号
35 COS信号
37 自己診断部
38 評価部
39 カウンター部
40 基準電圧調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出回路と、前記検出回路からの検出信号を増幅させるオペアンプと、前記検出回路と前記オペアンプとの間に接続されたマルチプレクサと、前記オペアンプからの検出信号を演算処理するマイクロプロセッサと、を有する電子回路において、
高電圧の第1の診断信号と低電圧の第2の診断信号を夫々生成するための診断回路を有し、
前記診断回路は前記マルチプレクサに接続され、前記マルチプレクサにより選択された各診断信号が前記オペアンプを介して前記マイクロプロセッサに入力可能とされており、
前記マイクロプロセッサでは、前記第1の診断信号及び前記第2の診断信号に基づいて、前記電子回路が正常に機能しているか否かを診断可能とされていることを特徴とする自己診断可能な電子回路。
【請求項2】
前記マイクロプロセッサでは、前記診断回路の入力電圧に応じて、前記マイクロプロセッサに入力された前記第1の診断信号と比較するための第1の基準電圧と、前記マイクロプロセッサに入力された前記第2の診断信号と比較するための第2の基準電圧とを夫々、補正可能とされている請求項1記載の自己診断可能な電子回路。
【請求項3】
前記マイクロプロセッサは、前記マイクロプロセッサに入力された前記第1の診断信号及び前記第2の診断信号に基づいて、前記電子回路が正常に機能しているか否かを診断するための自己診断部を有し、
前記自己診断部には、前記マイクロプロセッサに入力された前記第1の診断信号及び前記第2の診断信号が正常範囲内か否かを評価するための評価部と、
前記評価部により前記第1の診断信号及び前記第2の診断信号が正常範囲から逸脱したときに所定のカウンター値を蓄積していくためのカウンター部とを有し、
前記カウンター値が所定以上となったときに異常と判断してエラー信号を出力する請求項1又は2に記載の自己診断可能な電子回路。
【請求項4】
前記診断回路は、抵抗分圧回路により、高電圧の前記第1の診断信号及び低電圧の前記第2の診断信号を夫々、出力可能とされている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自己診断可能な電子回路。
【請求項5】
前記検出回路は、複数の磁界検出素子のブリッジ回路により構成される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自己診断可能な電子回路。
【請求項6】
磁気センサと磁石とが間隔を空けて対向配置されており、前記磁気センサは前記磁石から発生する磁界の変化を検知するためのものであり、
前記磁気センサに、請求項5に記載された前記磁界検出素子を含む前記電子回路が構成されていることを特徴とする磁界検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−149999(P2012−149999A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8803(P2011−8803)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】