説明

自己診断機能を備えた品質検査装置

【課題】被検査対象に実際の欠陥検出に近い状態で自己診断を行うことができる自己診断機能を備えた品質検査装置を提供する。
【解決手段】被検査対象Sに光を照射する光源10と、光源10から被検査対象Sに照射した光の反射光又は透過光を受光する撮影手段20を備えた品質検査装置1であって、光源10が、複数の発光体11と、複数の発光体11の作動を制御する制御手段30とからなり、制御手段30は、複数の発光体11のうち、発光させる発光体11を選択し、選択された各発光体11の発光量を決定する機能を有するものである。選択する発光体11の位置および数と、選択された各発光体11の発光量を制御すれば、実際に発生する欠陥に類似した擬似欠陥像を被検査対象Sに形成することができる。すると、撮影手段20が正常に撮影を行っているか、又は欠陥の検出が正確に行われているかを的確に判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己診断機能を備えた品質検査装置に関する。さらに詳しくは、フィルム等のシート状製品の欠陥や、印刷パターン等の欠陥を、被検査面の画像を撮影することによって検査する自己診断機能を備えた品質検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送される製品の欠陥を検査する装置では、搬送される製品に対して光を照射して、その反射光や透過光を撮影し、その撮影画像が正常な状態からズレているか否かを判断して、欠陥の存在の有無を検出している。
しかし、かかる検査装置では、撮影機器に異常や故障が生じた場合には、欠陥を検出できなかったり、逆に正常な製品を欠陥と判断したりする場合がある。
そこで、品質検査中に、撮影機器の前に人の手で障害物を挿入する等の方法で欠陥が存在する状況を発生させて、この欠陥が存在する状況を判別できるか否かによって、機器が正常に作動しているか否かを確認することが行われていた。
しかしながら、上記のような動作確認方法では、人手によって欠陥が存在する状況を作り出すので、その作業が煩わしいばかりでなく、その状況を作り出す作業の確実性に乏しく、品質検査装置の動作確認作業の信頼性に乏しいという問題があった。
【0003】
一方、品質検査装置において、動作確認作業を自動で行えるようにした技術として、特許文献1の技術が開発されている。
特許文献1は、被検査面を撮影手段によって撮影したときにおける多階調画像データの濃度レベルに基づいて欠陥箇所を判定する品質検査装置に関するものであり、動作確認の際に、被検査面に照射する光の照度変化を用いる技術が開示されている。
そして、この文献には、被検査面に照射する光の照度を変化させて、その濃度の違い、つまり、撮影手段が受光する光量の変化を検出できるか否かによって撮影装置の動作を確認している。このため、確認作業を簡単に行うことができるし、しかも、光源の損傷も検出することができる旨の記載がある。
【0004】
しかるに、上記方法では、被検査面に照射する光の照度を変化させているだけであるので、撮影機器が特定の閾値を境として明暗を検出できるか否かの診断はできるものの、被検査対象に実際に発生する欠陥を検出できるか否かまでは診断することができない。
しかも、被検査面に光を照射する光源として蛍光灯を使用しているので、被検査面全体を同じ照度にすることはできても、被検査面の一部を他の部分と異なる照度にすることはできない。したがって、実際に発生する欠陥に類似した状態を被検査面上に形成することは不可能である。
【0005】
【特許文献1】特開平9−226099号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、被検査対象に欠陥が発生した状態と近似した状態で自己診断を行うことができる自己診断機能を備えた品質検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の自己診断機能を備えた品質検査装置は、被検査対象に光を照射する光源と、該光源から被検査対象に照射した光の反射光又は透過光を受光する撮影手段を備えた品質検査装置であって、前記光源が、複数の発光体と、該複数の発光体の作動を制御する制御手段とからなり、該制御手段は、前記複数の発光体から発光体を選択し、該選択された各発光体の発光量を制御するものであることを特徴とする。
第2発明の自己診断機能を備えた品質検査装置は、第1発明において、前記制御手段には、選択する発光体および該選択する発光体の発光状態に関する発光体情報と、該発光体情報に基づいて発光体を発光させたときに前記撮影手段に入光する光の状態に関する比較情報とを含む診断用データが記憶されている欠陥情報記憶部と、該欠陥情報記憶部に記憶されている前記診断用データの発光体情報に基づいて、前記複数の発光体の発光を制御する発光体制御部とが設けられており、前記撮影手段からの出力に関する出力情報と前記診断用データの比較情報とを比較する比較手段を備えていることを特徴とする。
第3発明の自己診断機能を備えた品質検査装置は、第2発明において、前記制御手段は、前記光源からの光によって前記被検査対象上に形成される像が、該被検査対象に生じる欠陥と類似した形状となるように、前記発光体を選択し、該選択された発光体の発光状態を制御することを特徴とする。
第4発明の自己診断機能を備えた品質検査装置は、第2発明において、前記制御手段は、前記光源からの光によって前記被検査対象上に形成される像が、該被検査対象に生じる欠陥と類似したコントラストを形成するように、前記発光体を選択し、該選択された発光体の発光状態を制御することを特徴とする。
第5発明の自己診断機能を備えた品質検査装置は、第1発明において、前記制御手段には、選択する発光体および該選択する発光体の発光状態に関する発光体情報と、該発光体情報に基づいて発光体を発光させたときに前記撮影手段に入光する光の状態に関する比較情報とを含む診断用データが記憶されている欠陥情報記憶部と、該欠陥情報記憶部に記憶されている前記診断用データの発光体情報に基づいて、前記複数の発光体の発光を制御する発光体制御部とが設けられており、前記撮影手段からの出力に関する出力情報と前記診断用データの比較情報とを比較する比較手段を備えており、前記発光体情報は、前記選択された発光体を発光させたときに前記撮影手段に入光する光の状態が、前記被検査対象に欠陥が存在する場合に前記撮影手段に入光する光の状態と同じ状態となるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、選択する発光体の位置および数と、選択された各発光体の発光量を制御すれば、被検査対象に欠陥が存在する場合と同等の光量の光を撮影手段に入光させることができる。すると、撮影手段が正常に撮影を行っているか、又は欠陥の検出が正確に行われているかを的確に判断することができる。
第2発明によれば、発光体情報に基づいて発光体制御部が発光体を発光させれば、発光体からの光により所定の像、例えば、実際に発生する欠陥に類似した擬似欠陥像が被検査対象上に形成されるので、この像を撮影した撮影手段の出力に基づいて形成される画像情報と像情報とを比較手段が比較すれば、両情報の一致不一致を判断することができる。すると、両情報が一致していれば装置が正常であり、不一致であれば装置に何らかの異常があることを判断することができる。しかも、発光させる発光体の選択および、画像情報と像情報との比較を自動で行うことができるので、装置の性能確認が容易になる。
第3発明によれば、実際の欠陥と類似した形状を有する像が被検査対象上に形成されるので、装置によってその形状を有する欠陥を検出できるか否かを診断することができる。すると、特定の形状を有する欠陥に対する検査が正確に行われているか否かだけでなく、装置がどの程度の欠陥形状まで検出できるかを検査することも可能となる。
第4発明によれば、実際の欠陥と類似したコントラストを有する像が被検査対象上に形成されるので、装置によってかかるコントラストを有する欠陥を検出できるか否かを診断することができる。すると、特定のコントラストを有する欠陥に対する検査が正確に行われているか否かだけでなく、装置がどの程度のコントラストまで検出できるかを把握することが可能となる。
第5発明によれば、発光体情報に基づいて発光体制御部が発光体を発光させれば、撮影手段に入光する光の状態を、被検査対象上に欠陥が存在する場合と類似した状態をすることできるから、かかる光が入光した撮影手段からの出力情報と比較情報とを比較すれば、両情報の一致不一致を判断することができる。すると、両情報が一致していれば装置が正常であり、不一致であれば何らかの異常があることを判断することができる。しかも、特定の形状を有する欠陥に対する検査が正確に行われているか否かだけでなく、装置がどの程度の欠陥形状まで検出できるかを検査することも可能となる。そして、発光させる発光体の選択および、撮影手段の出力情報と比較情報との比較を自動で行うことができるので、装置の性能確認が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態の自己診断機能を備えた品質検査装置1の概略斜視図である。図2は(A)は、光源10と、撮影手段20のラインセンサ21およびレンズ21rの位置関係を示した概略説明図であり、(B)は品質検査装置1の概略ブロック図である。
【0010】
図1において、符号Sは、フィルム等の光透過性を有するシート状の部材などの被検査対象を示している。
図1に示すように、本実施形態の自己診断機能を備えた品質検査装置1(以下、単に品質検査装置1という)は、光源10と、被検査対象Sを透過した透過光を受光する撮影手段20とを備えており、両者が前記被検査対象Sを挟むように配設されている。
【0011】
なお、以下では、撮影手段20が被検査対象Sを透過した透過光を受光する場合を説明するが、被検査対象Sに対して光源10を撮影手段20と同側に配置し、撮影手段20が被検査対象Sで反射した反射光を受光するように光源10および撮影手段20を配置してもよい。
【0012】
図1に示すように、光源10は、被検査対象Sの裏面に向けて光を放出する、例えば、蛍光灯やLED等の発光体11を複数備えている。この複数の発光体11は、被検査対象Sの幅方向および搬送方向に沿って並んで配設されている。例えば、図1であれば、光源10は、被検査対象Sの幅方向に沿って23個の発光体11が配置された列が、搬送方向に4列並ぶように構成されている。
また、この光源10にはコンピュータ等の制御手段30が電気的に接続されており、この制御手段30によって、複数の発光体11が発光するタイミングや、複数の発光体11から被検査対象Sに照射される光量が制御されている。
【0013】
なお、制御手段30は後述する比較手段40と電気的に接続されているが、その理由は後述する。
また、発光体11の数は撮影手段20の撮影領域A(図3、図4参照)に合わせて適宜設定すればよい。つまり、光源10は、撮影手段20の撮影領域A全域に光を照射できるように構成されていればよい。したがって、撮影領域Aの搬送方向の長さが短い場合には、発光体11は必ずしも被検査対象Sの搬送方向に複数列設けなくてもよい。例えば、発光体11としてLEDを採用した場合には、被検査対象Sにおいて、一つの発光体11により光が照射される領域の搬送方向の長さW2(図3、図4参照)は、5〜10mm程度となる場合がある。かかる場合には、撮影手段20の撮影領域Aの搬送方向の長さW1が1mm程度であれば、発光体11を一列しか設けなくても、撮影領域Aの全域に光を照射できる。
【0014】
図1および図2に示すように、被検査対象Sに対して前記光源10と反対側には、撮影手段20が配設されている。
図2に示すように、撮影手段20は、被検査対象Sで透過した透過光を受光するラインセンサ21と、このラインセンサ21に透過光を集光して入光するレンズ21rとを備えている。なお、図1において、符号22は撮影手段20を制御する制御部を示しており、この制御部22は後述する比較手段40と電気的に接続されているが、その理由は後述する。
【0015】
図2(A)に示すように、ラインセンサ21は、一列に並んで配置された複数の撮像素子21sを有するものであり、複数の撮像素子21sが被検査対象Sの幅方向(図2(A)では左右方向)に並ぶように配設されている。そして、ラインセンサ21は、その各撮像素子21sの光軸LAが、被検査対象Sにおいて複数の発光体11によって光が照射される部分を通過するように配設されている。つまり、ラインセンサ21の各撮像素子21sの光軸LAが、複数の発光体11によって被検査対象Sに形成される像を通過するように配設されている。
なお、各撮像素子21sの光軸LAとは、各撮像素子21sとレンズ21rの中心を結ぶ線を意味しており、各撮像素子21sは光軸LAと被検査対象Sとの交点部分を撮影するのである(図2(A))。
【0016】
以上のごとき構成であるから、光源10から被検査対象Sに光を照射すれば、被検査対象Sを透過した光を撮影手段20の複数の撮像素子21sによって撮影することができる。
そして、光源10の複数の発光体11から常に一定の光量の光を被検査対象Sに照射しておけば、被検査対象Sに欠陥などが無ければ、被検査対象Sを透過する光量も常に一定になる。よって、撮影手段20が受光する光量もほぼ一定に保たれる。
一方、被検査対象Sに凹凸等の欠陥が存在すれば、欠陥の影響によって被検査対象Sを透過する光量が変化する。よって、撮影手段20が受光する光量も変化する。
したがって、撮影手段20が受光する光量に基づいて、被検査対象Sに欠陥が存在するか否かを検出することができる。
【0017】
なお、上記例では、撮影手段20としてラインセンサを採用した場合を説明したが、撮影手段20はラインセンサに限られず、CCDエリアカメラや、その他のレンズ等を使用した撮影手段等も採用することができる。
【0018】
本実施形態の品質検査装置1では、装置が正常に作動しているか、また、被検査対象Sの欠陥を正確に検出できているか、を診断する機能を備えている。
以下に、この診断機能を実現する構成を説明する。
【0019】
上述したように、光源10は、被検査対象Sの幅方向および搬送方向に沿って並んで配設された複数の発光体11を備えており、この複数の発光体11は制御手段30によって制御されている。
【0020】
この制御手段30は、欠陥情報記憶部31と、発光体制御部32とを備えている。
【0021】
まず、欠陥情報記憶部31には、発光体制御部32が発光体11の制御に使用する複数の診断用データDが記憶されたものである。各診断用データDは、発光体11の発光状態(発光消灯または発光量等)に関する発光体情報Nと、この発光体情報Nに基づいて発光体11を発光または消灯させたときに被検査対象S上に形成される像(以下、単に欠陥像という)に関する像情報Zとが、関連付けられて記録されているデータである。
【0022】
例えば、図3(A)に示すように発光体11が配置されている場合において、診断用データD1の発光体情報N1として、図3(A)の状態で発光体11を点灯させる情報(発光体L1〜L7が消灯、その他が品質検査時の光量(光量100%)で発光)が記憶されている場合には、診断用データD1の像情報Z1として、領域A(撮影手段20が撮影する領域)内の欠陥像(図3(B)の領域A内の像)に関する情報が、発光体情報N1と関連付けて診断用データD1に記憶されている。
また、図4(A)に示すように発光体11が配置されている場合において、診断用データD2の発光体情報N2として、図4(A)の状態で発光体11を点灯させる情報(発光体L1〜L2が光量200%で発光、発光体L6〜L7が消灯、その他が光量100%発光)が記憶されている場合には、診断用データD2の像情報Z2として、領域A内の欠陥像(図4(B)の領域A内の像)に関する情報が、発光体情報N2と関連付けて診断用データD2に記憶されている。
【0023】
なお、発光体情報Nには、点灯または消灯させる発光体、各発光体の光量、各発光体が点灯または消灯する期間およびタイミング等が含まれる。
また、像情報Zに記憶されている領域A内の欠陥像に関する情報とは、関連する発光体情報Nに基づいて発光体11を発光させたときにおいて、正常な撮影手段20の各撮像素子21sが出力する信号強度と各撮像素子21sが撮影する被検査対象S上の位置とが関連づけて記憶された情報を意味している。具体的には、像情報Z1であれば、図3(C)に示すような信号強度(例えば電圧値)と撮影位置との関係を示すグラフを像情報Z1に基づいて形成できるような情報が記憶されており、像情報Z2であれば、図4(C)に示すような信号強度と撮影位置との関係を示すグラフを像情報Z2に基づいて形成できるような情報が記憶されている。
【0024】
発光体制御部32は、前記欠陥情報記憶部31に記憶されている診断用データDを呼び出して、その診断用データDに記録されている発光体情報Nに基づいて、複数の発光体11の発光消灯および発光量を制御するものである。具体的には、前述した診断用データD1を呼び出した場合には、発光体情報N1に基づいて発光体L1〜L7を消灯させその他の発光体を光量100%で発光させるように制御し、診断用データD2を呼び出した場合には、発光体情報N2に基づいて発光体L1〜L2を光量200%で発光させ発光体L6〜L7を消灯させその他の発光体を光量100%で発光させるように制御するのである。
なお、発光体制御部32は、欠陥情報記憶部31から呼び出した診断用データDの像情報Zを後述する比較手段40に供給する機能も有している。
【0025】
また、撮影手段20の制御部22は、撮影手段20の複数の撮像素子21sから送られる出力信号に基づいて、画像情報Fを形成するものである。この画像情報Fとは、複数の撮像素子21sから送られる信号強度(例えば電圧値)と、各撮像素子21sが撮影する被検査対象S上の位置および撮影した時間とが関連づけて記憶された情報である。
なお、制御部22は、この画像情報Fを比較手段40に供給する機能も有している。
【0026】
つぎに、比較手段40について説明する。
図2(B)に示すように、比較手段40は、撮影手段20および制御手段30に電気的に接続されている。この比較手段40は、撮影手段20の制御部22から供給される画像情報Fと、制御手段30の発光体制御部32から供給される像情報Zを比較して、両者の一致不一致を判断するものである。この両者の一致不一致の判断は、例えば、同じ撮影位置における信号強度を比較して両者のズレが所定の範囲内にあるか否かによって判断する方法が採用されるが、これらの方法に限定されない。
【0027】
本実施形態の品質検査装置1では、上記のごとき構成を有しているので、以下の手順で診断が行われる。
【0028】
まず、自己診断を行う場合には、欠陥情報記憶部31に記憶されている診断用データDが発光体制御部32に呼び出される。そして、診断用データDの発光体情報Nに基づいて、光源10の発光体11が点灯または消灯される。
一方、診断用データDの像情報Zは、発光体制御部32から比較手段40に供給される。
【0029】
光源10の発光体11が点灯または消灯すると、所定の像が被検査対象S上に形成される。この像は、撮影手段20の複数の撮像素子21sによって撮影され、制御部22によって画像情報Fが形成される。
そして、この画像情報Fは、制御部22から比較手段40に供給される。
【0030】
像情報Zと画像情報Fとが比較手段40に供給されると、比較手段40では、この両情報を比較して両者の一致不一致が判断される。
そして、両者が一致する場合には、診断用データDの像情報Zとして記憶されている欠陥像と類似する欠陥については、品質検査装置1が正常に検出できると判断される。つまり、品質検査装置1は正常に作動していると判断されるのである。
【0031】
例えば、診断用データD1の発光体情報N1に基づいて光源10の発光体11が発光した場合には、図3(B)における領域A内の欠陥像と類似する欠陥、つまり、光を透過しないほぼ幅Wの異物が存在している状況を被検査対象S上に形成することができる。よって、かかる大きさを有する異物が存在する場合に、品質検査装置1がこの異物を正常に検出できるか否かを判断できる。
【0032】
また、診断用データD2の発光体情報N2に基づいて光源10の発光体11が発光した場合には、図4(B)における領域A内の欠陥像と類似するコントラストを発生させる欠陥、つまり、光量の強い部分と弱い分が隣接して存在するかのように光を透過させる欠陥が存在している状況を被検査対象S上に形成することができる。よって、かかるコントラストを発生させる欠陥が存在する場合に、品質検査装置1がこの欠陥を正常に検出できるか否かを判断できる。
なお、図4(B)のごときコントラストは、ふくれや打コンのような凹凸欠陥がシートなどに存在した場合に生じる可能性がある。
【0033】
以上のごとくであるから、本実施形態の品質検査装置1では、品質検査装置1の自己診断機能を実行させるだけで、品質検査装置1が正常に作動しているか否かを簡単に判断できる。すると、始業前点検を毎日行う場合でも、品質検査装置1の性能確認が簡単になるから、作業者の負担を軽減することができる。
【0034】
そして、光源10の点灯消灯を制御して欠陥に類似した像を被検査対象S上に形成しているだけであるから、短時間で性能確認が行える。すると、連続運転されるラインなどでも、ロットの切替等ように、作業手順の上で必ずラインを停止させなければならない短い時間を利用して性能確認が行うことができるから、検査のためにラインを停止しなくてもよくなり、品質検査装置1の性能確認を行うことによる生産効率の低下を防ぐことができる。
【0035】
また、光源10の発光体11の点灯消灯を、診断用データDに基づいて、時間の経過とともに変化させた場合には、発光体11の点灯消灯の変化に応じて欠陥像も変化させることができる。例えば、図5(A)では、黒い点が消灯している発光体11、白い点が点灯している発光体11を示しているが、発光体11の点灯消灯をT1からT6まで順に変化させれば、欠陥像を、発光体11の点灯消灯の変化に応じて図5(B)のように変化させることができる。
かかる方法で形成される欠陥像は、領域A内の像が時間とともに変化する欠陥、言い換えれば、被検査対象Sの搬送にともなって移動する欠陥と類似した像となる。具体的には、搬送方向の長さが領域Aの搬送方向の長さW1よりも長い欠陥が、被検査対象Sとともに流れている状況と類似した像となる。
すると、被検査対象Sを搬送するラインなどを作動させなくても、品質検査装置1の自己診断機能を実行させるだけで、品質検査装置1が、搬送されるシート等の被検査対象Sに生じる欠陥を正常に検出できる否かの診断も簡単に行うことができる。
【0036】
そして、被検査対象S上に、所定の周期で繰り返して像を形成して撮影手段20により連続して撮影を行えば、品質検査装置1が対応できるライン速度を自己診断機能を使用して調べることができる。
【0037】
また、品質検査装置1において、制御手段22に、撮影手段20の出力信号に基づいて、その出力信号の信号強度や、所定の信号強度の出力信号が分布する領域(例えば、幅サイズ(被検査対象Sの幅方向の長さ)等)、所定の信号強度の出力信号が継続する期間を判断する論理回路を設けてもよい。
【0038】
例えば、図5(B)に示すような欠陥の場合、各撮像素子21sのシャッタスピードと撮像素子21sが撮影できる幅(制御手段22の分解能に相当する)とに応じて、欠陥等は複数のエリアaに分割された状態で撮影されることになる。
各撮像素子21sの出力値は各エリアa内に存在する欠陥の面積に応じて変化するので、出力値が閾値を超えている欠陥エリアと、出力値が閾値を超えていない正常エリアに分類することができる。例えば、エリア内全体やエリア内の大部分に欠陥が存在するエリア(例えば図5のエリアa1)は欠陥エリアに分類され、エリア内に欠陥が存在しないエリア(例えば図5のエリアa2)は正常エリアa2に分類される。なお、エリア内に存在する欠陥が少ないまたは僅かであるエリア(例えば図5のエリアa3)は、設定する閾値によっていずれにも分類することができる。
すると、各撮像素子21sの出力値が入力される論理回路を設け、この論理回路が、欠陥エリアの幅サイズ(幅方向に沿って並んでいる欠陥エリアの数)や、欠陥エリアの搬送方向長さ(搬送方向に沿って並んでいる欠陥エリアの数)、また、所定の期間内に存在する欠陥エリアの面積(欠陥エリアの総数)に対応する電圧値等の信号を出力するようにする。
この場合には、論理回路が出力する信号が制御手段22から比較手段40に供給されるようにしておけば、論理回路からの出力信号と像情報Zとを比較手段40で比較することができるから、品質検査装置1の論理回路の診断も可能である。
【0039】
なお、上記の場合には、比較手段40内で像情報Zを回路などによって処理して、その処理された結果を制御手段22の論理回路の出力信号と比較するようにしてもよいし、制御手段22の論理回路の出力信号と直接比較できる情報を像情報Zに含ませていてもよい。
【0040】
また、自己診断は、検査したい欠陥に相当する像情報Zが含まれている診断用データDを選択して、その欠陥像について診断ができるようにしてもよいが、自動で自己診断を行う場合には、全ての診断用データDが連続して診断されるようになっているのが好ましい。この場合には、とりあえず全ての診断用データDについて診断を行った上で、各診断用データDで診断を行ったときにおける結果が比較手段40に記録されるようになっていてもよいし、異常が検出されるとその段階で診断を停止するようにしてもよい。
【0041】
光源10の発光体11は、その点灯消灯を短時間で切り換えることができ、また、光量を調整できるものであれば、特に限定されないが、LED等の指向性の高い光源を使用すれば、欠陥像の形状やコントラストの調整を容易かつ精度よくに行うことができる。すると、実際の欠陥の形状やコントラストにより近づけることができるので、好適である。
【0042】
なお、上記例では、被検査対象Sが存在する状態において自己診断を行う場合を説明したが、図1のごとき本実施形態の品質検査装置1の場合、光源10からの光は被検査対象Sの存在有無に係わらず撮影手段20に入光させることができる。この場合には、光源10を制御すれば、光源10と撮影手段20との間に被検査対象Sが存在しない状態でも、被検査対象Sが存在する場合と同様に自己診断を行うことができる。
例えば、撮影手段20の撮像素子21rに入光する光の状態(光量や入光時間等)が、被検査対象S上に所定の欠陥が存在するときに各撮像素子21rに入光する光の状態と同じ状態となるように発光体11を発光させるようにする。そして、かかる状態を形成する発光体11の状態を発光体情報Nとし、このときに各撮像素子21rから出力される信号の情報が含まれる比較情報を、発光体情報Nと関連づけて診断用データDとして記憶させておけば、被検査対象Sがない状態でも、被検査対象Sが存在する場合と同様に自己診断を行うことができる。
【0043】
ただし、品質検査装置1の撮影手段20が被検査対象Sで反射した反射光を受光するように光源10および撮影手段20を配置している場合には、光源10からの光を反射する物体がなければ、撮影手段20の撮像素子21rに光が入光せず、自己診断を行うことができない。しかし、かかる構成の場合でも、光源10と撮影手段20との間に、発光体11からの光を反射する自己診断用のシートを配置すれば、被検査対象Sが存在しない状態でも自己診断を行うことは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の自己診断機能を備えた品質検査装置は、フィルム等のシート状製品の欠陥や、印刷パターン等の欠陥を検査する装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態の自己診断機能を備えた品質検査装置1の概略斜視図である。
【図2】(A)は、光源10と、撮影手段20のラインセンサ21およびレンズ21rの位置関係を示した概略説明図であり、(B)は品質検査装置1の概略ブロック図である。
【図3】本実施形態の品質検査装置1において自己診断を行う状況の概略説明図であって、(A)は発光状況の説明図であり、(B)は被検査対象S上に形成される像の説明図であり、(C)は撮影手段20の出力信号の説明図である。
【図4】本実施形態の品質検査装置1において自己診断を行う他の状況の概略説明図であって、(A)は発光状況の説明図であり、(B)は被検査対象S上に形成される像の説明図であり、(C)は撮影手段20の出力信号の説明図である。
【図5】本実施形態の品質検査装置1において自己診断を行う他の状況の概略説明図であって、(A)は発光状況の説明図であり、(B)は被検査対象S上に形成される像の説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 品質検査装置
10 光源
11 発光体
20 撮影手段
21 ラインセンサ
21s 撮像素子
30 制御手段
31 欠陥情報記憶部
32 発光体制御部
S 被検査対象
F 画像情報
N 発光体情報
Z 像情報
H 比較情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象に光を照射する光源と、該光源から被検査対象に照射した光の反射光又は透過光を受光する撮影手段とを備えた品質検査装置であって、
前記光源が、
複数の発光体と、
該複数の発光体の作動を制御する制御手段とからなり、
該制御手段は、
前記複数の発光体から発光体を選択し、該選択された各発光体の発光状態を制御するものである
ことを特徴とする自己診断機能を備えた品質検査装置。
【請求項2】
前記制御手段には、
選択する発光体および該選択する発光体の発光状態に関する発光体情報と、該発光体情報に基づいて発光体を発光させたときに該発光体からの光により前記被検査対象上に形成される像に関する像情報とを含む診断用データが記憶されている欠陥情報記憶部と、
該欠陥情報記憶部に記憶されている前記診断用データの発光体情報に基づいて、前記複数の発光体の発光を制御する発光体制御部とが設けられており、
前記撮影手段からの出力に基づいて形成される画像情報と前記診断用データの像情報とを比較する比較手段を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を備えた品質検査装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記光源からの光によって前記被検査対象上に形成される像が、該被検査対象に生じる欠陥と類似した形状となるように、前記発光体を選択し、該選択された発光体の発光状態を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の自己診断機能を備えた品質検査装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記光源からの光によって前記被検査対象上に形成される像が、該被検査対象に生じる欠陥と類似したコントラストを形成するように、前記発光体を選択し、該選択された発光体の発光状態を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の自己診断機能を備えた品質検査装置。
【請求項5】
前記制御手段には、
選択する発光体および該選択する発光体の発光状態に関する発光体情報と、該発光体情報に基づいて発光体を発光させたときに前記撮影手段に入光する光の状態に関する比較情報とを含む診断用データが記憶されている欠陥情報記憶部と、
該欠陥情報記憶部に記憶されている前記診断用データの発光体情報に基づいて、前記複数の発光体の発光を制御する発光体制御部とが設けられており、
前記撮影手段からの出力に関する出力情報と前記診断用データの比較情報とを比較する比較手段を備えており、
前記発光体情報は、
前記選択された発光体を発光させたときに前記撮影手段に入光する光の状態が、前記被検査対象に欠陥が存在する場合に前記撮影手段に入光する光の状態と同じ状態となるように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を備えた品質検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−257905(P2009−257905A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106646(P2008−106646)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(591114641)株式会社ヒューテック (19)
【Fターム(参考)】