説明

自然エネルギー取出装置

【課題】 河川流や潮流の深さ方向の運動エネルギー取り出し領域が広く、橋脚等の既存の水流上方の固定構造物に簡便に取り付けられる自然エネルギー取出装置を提供する。
【解決手段】 浮体と、浮体に固定されて下方へ延びる縦回転軸水車と、浮体の上端に係合し浮体の回転運動エネルギーを被駆動機器の駆動トルクに変換する動力伝達装置と、一端が動力伝達装置を水平軸線回りに軸支すると共に、他端が水流上方の固定構造物によって水平軸線回りに軸支された腕部材とを備え、浮体と縦回転軸水車とが河川流や潮流の中に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然エネルギー取出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浮体を形成する横回転軸水車と、横回転軸水車の回転軸の一端に係合する増速ギヤ発電機組立体と、横回転軸水車の回転軸の他端に係合する増速ギヤ発電機組立体と、一端が前記一対の増速ギヤ発電機組立体のケーシングに固定され他端が水流上方の固定構造物によって水平軸線回りに軸支された一対の腕部材とを備え、横回転軸水車が河川水面に浮いていることを特徴とする水流発電装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−040217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水流発電装置には、河川流の表層の運動エネルギーは取り出せるが、中層や底層の運動エネルギーを取り出せないという問題がある。また、横回転軸水車の両端に係合する一対の増速ギヤ発電機組立体のケーシングと水流上方の固定構造物とを連結する一対の腕部材の間隔が広いので、橋脚等の水流上方の固定構造物に取り付け難いという問題がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、河川流や潮流の深さ方向の運動エネルギー取り出し領域が広く、橋脚等の水流上方の固定構造物に簡便に取り付けられる自然エネルギー取出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、浮体と、浮体に固定されて下方へ延びる縦回転軸水車と、浮体の上端に係合し浮体の回転運動エネルギーを被駆動機器の駆動トルクに変換する動力伝達装置と、一端が動力伝達装置を水平軸線回りに軸支すると共に、他端が水流上方の固定構造物によって水平軸線回りに軸支された腕部材とを備え、浮体と縦回転軸水車とが河川流や潮流の中に配設されることを特徴とする自然エネルギー取出装置を提供する。
本発明の自然エネルギー取出装置においては、縦回転軸水車を用いて河川流や潮流の運動エネルギーを取り出すので、水流の表層のみならず中層や底層のエネルギーも取り出すことができる。従って、本発明の自然エネルギー取出装置は、河川流や潮流の深さ方向の運動エネルギー取り出し領域が広い。また、縦回転軸水車の上端に動力伝達装置が係合するので、動力伝達装置を水流上方の固定構造物に連結する一対の腕部材の間隔は、横置水車の両端に係合する増速ギヤ発電機組立体のケーシングを水流上方の固定構造物に連結する一対の腕部材の間隔に比べて狭い。従って、本発明の自然エネルギー取出装置は橋脚等の水流上方の固定構造物に簡便に取り付けることができる。
本発明の好ましい態様においては、自然エネルギー取出装置は縦回転軸水車の縦回転軸下端部に固定され或いは縦回転軸下端から吊り下げられた錘を備える。
縦回転軸水車の縦回転軸下端部に錘を固定し或いは縦回転軸下端から錘を吊り下げることにより、水流による縦回転軸水車の過大な傾斜を抑制し、前記過大な傾斜による水流の運動エネルギー取出効率の低下を抑制できる。
本発明の好ましい態様においては、縦回転軸水車は縦回転軸から径方向に延び羽根に連結して羽根を支持するアームを備え、翼型断面のカバーがアームに固定されている。
本発明の好ましい態様においては、縦回転軸水車は縦回転軸から径方向に延び羽根に連結して羽根を支持するアームを備え、翼型断面のカバーがアームに取り付けられており、前記カバーの全体がアームの長手軸線回りに回動可能であるか、又は前記カバーの後縁部がアームの長手軸線に平行な軸線回りに回動可能である。
縦回転軸水車が縦回転軸から径方向に延び羽根に連結して羽根を支持するアームを備える場合、アームの流体抵抗を低減させるために、アームに翼型断面のカバーを取り付けるのが望ましい。
カバーのアスペクト比が大きい場合、誘導抵抗が小さく揚抗比が大きいので、カバーをアームに固定し、カバーに発生する揚力を縦回転軸水車のトルクに寄与させるのが望ましい。カバーのアスペクト比が小さい場合には、誘導抵抗が大きく揚抗比が小さいので、カバーを回動自在とし、或いはカバーの後縁部を回動自在としてカバーによる揚力発生、ひいては誘導抵抗発生を抑制するのが望ましい。
本発明においては、上記自然エネルギー取出装置を備え、被駆動機器は発電機であることを特徴とする水流発電装置を提供する。
本発明に係る水流発電装置は、河川流や潮流の深さ方向の運動エネルギー取り出し領域が広く、橋脚等の水流上方の固定構造物に簡便に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】水流発電装置として具現化された本発明の実施例に係る自然エネルギー取出装置の斜視図である。
【図2】水流発電装置として具現化された本発明の実施例に係る自然エネルギー取出装置が備えるアームとアームに取り付けた翼型断面のカバーの部分構造図である。(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図3】水流発電装置として具現化された本発明の実施例に係る自然エネルギー取出装置が備えるアームとアームに取り付けた翼型断面のカバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
水流発電装置として具現化された本発明の実施例に係る自然エネルギー取出装置を説明する。
図1に示すように、水流発電装置Aは、円筒状の浮体1と、浮体1の下端に固定されて下方へ延びる縦回転軸水車2と、浮体1の上端に係合する図示しない増速ギヤと増速ギヤによって回転駆動される発電機とを有する増速ギヤ発電機組立体3と、一端が増速ギヤ発電機組立体3のケーシング3aを水平軸線X回りに軸支すると共に、他端が水流上方の固定構造物Bによって水平軸線Xと平行に延在する水平軸線Y回りに軸支された一対の腕部材4とを備えている。
縦回転軸水車2の縦回転軸2a下端から錘5が吊り下げられている。
浮体1と縦回転軸水車2とは、河川流や潮流の中に配設されている。
浮体1の浮力によって水流発電装置Aは水流中に浮いており、増速ギヤ発電機組立体3は水面より上方に在る。
【0008】
水流発電装置Aにおいては、水流中に置かれた縦回転軸水車2が回転し、縦回転軸水車2の上端に固定された浮体1が回転し、腕部材4を介して固定構造物Bによって支持されると共に浮体1に係合する増速ギヤ発電機組立体3の発電機が発電する。
図1で実線で示すように、水流によって付勢された縦回転軸水車2が、水平軸線X回りに揺動して下流側へ傾斜するので、縦回転軸水車2には水流による過大な水平力は印加されない。この結果、腕部材4と増速ギヤ発電機組立体3のケーシング3aとの係合部や、腕部材4と固定構造物Bとの係合部の損傷が防止される。
縦回転軸水車2の縦回転軸2a下端から吊り下げられた錘5によって復原モーメントが発生し、水流による縦回転軸水車2の過大な傾斜が抑制され、過大な傾斜による発電効率の低下が抑制される。縦回転軸2aの下端から錘5を吊り下げるのに代えて、縦回転軸2aの下端部に錘5を固定しても良い。
水位の変動は、腕部材4が水平軸線Y回りに揺動することによって吸収されるので、水位変動があっても、浮体1と縦回転軸水車2とは水流中に在り続けることができる。
河川の河口付近や海峡等に水流発電装置Aが設置された場合、潮の干満によって水流方向が逆転するが、図1に一点鎖線で示すように、増速ギヤ発電機組立体3のケーシング3aが水平軸線X回りに回動し、前記ケーシング3aに従動して縦回転軸水車2が水平軸線X回りに揺動して下流側へ傾斜するので、縦回転軸水車2には水流による過大な水平力は印加されない。この結果、腕部材4と増速ギヤ発電機組立体3のケーシング3aとの係合部や、腕部材4と固定構造物Bとの係合部の損傷が防止される。
水流発電装置Aにおいては、縦回転軸水車2を用いて河川流や潮流の運動エネルギーを取り出すので、水流の表層のみならず中層や底層のエネルギーも取り出すことができる。従って、水流発電装置Aは、河川流や潮流の深さ方向の運動エネルギー取り出し領域が広い。増速ギヤ発電機組立体3は水面より上方に在るので、発電機収容空間が浸水するおそれは無い。また、水流発電装置Aにおいては、縦回転軸水車2の上端に固定された浮体1の上端に増速ギヤ発電機組立体3が係合しているので、増速ギヤ発電機組立体3のケーシング3aを水流上方の固定構造物Bに連結する一対の腕部材4の間隔は、横回転軸水車の両端に係合する増速ギヤ発電機組立体のケーシングを水流上方の固定構造物に連結する一対の腕部材の間隔に比べて狭い。従って、水流発電装置Aは橋脚等の水流上方の固定構造物Bに簡便に取り付けることができる。
【0009】
水流発電装置Aにおいて、図1に二点鎖線で示すように、縦回転軸水車2の縦回転軸2aから径方向に延び縦回転軸水車2の羽根である長尺の翼2bに連結して翼2bを支持するアーム2cが配設されている場合には、アーム2cの流体抵抗を低減させるために、アーム2cに翼型断面のカバーを取り付けるのが望ましい。
図1から分かるように水流発電装置Aの稼働時に縦回転軸水車2は下流側に傾斜するので、図2(a)に示すように、アーム2cに取り付けた翼型断面のカバー6は相対水流に対して迎角を持ち、揚力を発生させると共に翼端部に誘導抵抗も発生させる。従って、揚力と誘導抵抗とが縦回転軸水車2のトルクに与える影響を考慮する必要がある。
図2(b)に示すように、揚力はカバー6の前縁方向へ傾斜するので縦回転軸水車2のトルクに寄与する。カバー6のアスペクト比を大きくすれば誘導抵抗が小さくなり揚抗比が大きくなるので、アーム2cに固定されたカバー6は縦回転軸水車2のトルク発生に寄与する。
カバー6のアスペクト比が小さい場合には、誘導抵抗が大きくなり揚抗比が小さくなるので、カバー6は縦回転軸水車2のトルク発生に対する抵抗となる。この場合には、図3(a)、(b)に示すように、カバー6をアーム2cの長手軸線回りに回動自在とし、カバー6が相対水流に対して迎角を持たないようにして、カバー6による揚力発生、ひいては誘導抵抗発生を抑制するのが望ましい。尚、カバー6の前縁内部又は前縁外部に、釣合錘7を設ける必要がある。
カバー6のアスペクト比が小さい場合に、図3(c)、(d)に示すように、弦長方向中央部がアーム2cに固定されたカバー6の後縁部6aをアーム2cの長手軸線と平行に延在する軸線回りに回動自在とし、後縁部6aが相対水流に対して迎角を持たず、後縁部6aでの揚力発生、ひいては誘導抵抗発生が抑制されるようにして、カバー6に発生する誘導抵抗を低減させても良い。尚、カバー後縁部6aの前縁部に、釣合錘8を設ける必要がある。
上記実施例では、浮体1の回転運動エネルギーを増速ギヤ発電機組立体3の発電機の駆動トルクに変換し、最終的に電気エネルギーとして取り出したが、浮体1の回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換することなく、ポンプ、圧縮機等の駆動トルクに直接変換しても良く、或いは別置きのフライホイール等のエネルギー貯蔵装置の駆動トルクに直接変換しても良い。
本発明で使用する縦回転軸水車は、特定型式のものに限定されない。ダリウス型、ジャイロミル型、サポニウス型、クロスフロー型等、種々型式のものを使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、橋脚等の水流上方の固定構造物に取り付けて使用する小型の水流発電装置等の自然エネルギー取出装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0011】
A 水流発電装置
B 固定構造物
X、Y 水平軸線
1 浮体
2 縦回転軸水車
2a 縦回転軸
2b 翼
2c アーム
3 増速ギヤ発電機組立体
3a ケーシング
4 腕部材
5 錘
6 カバー
7、8 釣合錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体と、浮体に固定されて下方へ延びる縦回転軸水車と、浮体の上端に係合し浮体の回転運動エネルギーを被駆動機器の駆動トルクに変換する動力伝達装置と、一端が動力伝達装置を水平軸線回りに軸支すると共に、他端が水流上方の固定構造物によって水平軸線回りに軸支された腕部材とを備え、浮体と縦回転軸水車とが河川流や潮流の中に配設されることを特徴とする自然エネルギー取出装置。
【請求項2】
縦回転軸水車の縦回転軸下端部に固定され或いは縦回転軸下端から吊り下げられた錘を備えることを特徴とする請求項1に記載の自然エネルギー取出装置。
【請求項3】
縦回転軸水車は縦回転軸から径方向に延び羽根に連結して羽根を支持するアームを備え、翼型断面のカバーがアームに固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自然エネルギー取出装置。
【請求項4】
縦回転軸水車は縦回転軸から径方向に延び羽根に連結して羽根を支持するアームを備え、翼型断面のカバーがアームに取り付けられており、前記カバーの全体がアームの長手軸線回りに回動可能であるか、又は前記カバーの後縁部がアームの長手軸線に平行な軸線回りに回動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自然エネルギー取出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の自然エネルギー取出装置を備え、被駆動機器は発電機であることを特徴とする水流発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−32773(P2013−32773A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148095(P2012−148095)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【出願人】(512153795)合同会社アルバトロス・テクノロジー (2)
【Fターム(参考)】