説明

自蔵創傷手当て装置

複合創傷手当て装置は、外部の蠕動真空ポンプの使用を介して創傷の治癒を促進する。外部の蠕動ポンプは真空圧を創傷に加え、創傷流体または滲出物を創傷床から離れるように効果的に吸い出す。外部の蠕動ポンプは創傷手当てに留められ、かつ、ポータブルであり、好適には、支持バッグで患者に担持され、このことが患者の移動を可能にする。さらに、患者は、滲出物が創傷から除去されている間、いかなる時点においても拘束される必要はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本特許出願は、2006年9月7日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第60/714,912号の優先権と利益とを主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、開放創を処置する装置に関し、さらに詳細には、外部のポータブルポンプシステムを有する自蔵創傷手当てに関しており、該外部のポータブルポンプシステムは、患者によって支持される収集キャニスターの中に創傷の流体を吸い出す。
【背景技術】
【0003】
創傷が閉鎖するまで創傷の中心に向かう、創傷に隣接した上皮および皮下の組織の移動を、創傷閉鎖は含む。残念ながら、大きな創傷または感染した創傷では、閉鎖は困難である。そのような創傷において、鬱血の領域(すなわち、組織の局所的な腫れが組織に対する血流を制限する範囲)が、創傷の表面の近くに形成される。充分な血流がなければ、創傷を囲んでいる上皮および皮下の組織は、減少した酸素と栄養としか受け取れないだけでなく、細菌感染と成功裏に戦うことがあまりできなくもなり、従って、自然に創傷を閉鎖することがあまりできなくなる。そのような創傷は、長年、医療従事者に対して課題を提示してきた。
【0004】
創傷手当てが、開放創の治癒を保護および/または促進するために、医療業界において使用されてきた。1つのポピュラーな技術は、陰圧療法の使用であり、吸引または真空療法としても公知である。過度の創傷流体、すなわち、滲出物が除去されることを可能にしながら、同時に、創傷を孤立させて創傷を保護し、結果として、回復時間に影響するように、様々な陰圧デバイスが開発されてきた。様々な創傷手当てが、開放創の治癒を高めるように改変されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
創傷手当てを使用するときに、継続的に対処される必要のある課題は、使用の容易さ、創傷を治癒する効率、可搬性、および陰圧制御能力を含む。従って、開放創に対する陰圧創傷手当てを常に改善する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な実施形態に従って、創傷手当て装置は、創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材と、創傷手当て部材からの流体の除去を促進するように大気圧よりも低い圧力を加えるために、創傷手当て部材と流体連通しており、かつ、患者の体で担持されているポータブル真空ポンプと、患者の体で担持されており、かつ、創傷手当て部材から除去された流体を収集するために真空ポンプと流体連通している収集キャニスターとを含む。好適には、真空源は、蠕動真空ポンプを含み、約20mmHgと約500mmHgとの間、さらに好適には、約75mmHg〜約125mmHgの範囲にある、大気圧よりも低い圧力を生成するように適合されている。収集キャニスターは、創傷手当て部材から除去する流体を含む吸収材を含み得る。好適には、装置はまた、本体支持バッグを含んでおり、該本体支持バッグは、患者に取り付けるように適合されている。本体支持バッグは、収集キャニスターおよび真空ポンプのうちの少なくとも1つを保持するポーチを有し得る。
【0007】
真空ポンプは、好適には、制御手段を含み、該真空ポンプの動作を制御する。圧力センサは、制御手段に組み込まれ、創傷手当て部材に対する所定の位置における圧力を検出し、かつ、対応する信号を制御手段に送信し得る。制御手段は、真空源の出力を制御または変更するように適合されたコントローラを含み得る。真空ポンプは、好適には、自蔵バッテリを含む。
【0008】
好適な創傷手当て部材は、創傷床に隣接して配置可能な下側部材と、下側部材に隣接して配置可能な上側吸収材部材と、上部部材とを含む。上側吸収材部材は、フォーム、不織布の複合織物、セルロース織物、高吸収性ポリマ、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される材料を含む。上側吸収材部材はまた、薬物、抗感染薬、殺菌剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、創面切除剤、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子および栄養剤のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0009】
別の好適な実施形態において、創傷手当て装置は、創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材と、創傷手当て部材からの流体の除去を促進するように大気圧よりも低い圧力を加えるために、該創傷手当て部材と流体連通し、かつ、真空ポンプを動作するための自蔵バッテリを有するポータブル真空ポンプと、創傷手当て部材から除去された流体を収集するために真空ポンプと流体連通している収集キャニスターと、患者の体に装着可能であり、かつ、収集キャニスターおよび真空ポンプのうちの少なくとも1つを保持するポーチを有する本体支持バッグとを備えている。
【0010】
創傷の治癒を促進する方法がまた開示される。該方法は、創傷床に対して創傷手当て部材を配置するステップと、創傷手当て部材からの流体の除去を促進するように大気圧よりも低い圧力を加えるために、創傷手当て部材と流体連通しているポータブル真空ポンプを導入するステップと、創傷手当て部材から除去された流体を収集するために真空ポンプと流体連通している収集キャニスターを接続するステップと、保持ポーチを有する本体支持バッグを患者の体に取り付けるステップと、収集キャニスターおよび真空ポンプのうちの少なくとも1つを、本体支持バッグの保持ポーチの中に配置するステップとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
対象の創傷手当ての様々な実施形態が図面を参照して本明細書に記述される。
【0012】
本開示の複合創傷手当て装置は、外部の蠕動真空ポンプの使用を介して、創傷の治癒を促進する。外部の蠕動真空ポンプは、創傷に減圧を加えて創傷床から創傷流体または滲出物を効果的に吸い出す。外部の蠕動真空ポンプは創傷手当てにつながれ、かつ、ポータブルであり、好適には患者によって担持され、このことが患者の移動を可能にする。さらに、治療の間および滲出物が創傷から取り除かれている間のいかなる時点においても、患者は拘束される必要はない。
【0013】
ここで図1を参照すると、本開示の好適な実施形態に従った創傷手当て装置100が例示されている。創傷手当て装置100は、複合創傷手当て102と、創傷手当て102につながれたポンプシステム104とを含む。創傷手当て102は、並列されたまたは重ねられた関係で配置された複数の層を有するものの形式である。複数の層は、限定するものではないが、基部層106と、パッキング/吸収材層108と、無孔の粘着性上部層110とを含む。
【0014】
基部層106は創傷床「w」と直接的に接触する。基部層106は、一般的に、多孔性の非粘着性のものである。本明細書において使用される場合、「非粘着性」は創傷床において、またはその周囲において組織に粘着しない材料を指す。本明細書において使用される場合、「多孔性」は多数の小さい穿孔または細孔を含む材料を指し、該多数の小さい穿孔または細孔は、あらゆる種類の創傷流体が上の手当て層まで材料を通過することを可能にする。創傷の滲出物が創傷床に戻るように流れないように、多孔性の材料を通る創傷流体の通過は好適には一方向性である。この方向性の流れの特徴は、材料層の中に付与された方向性のアパーチャ、基部層106に対する異なる吸収作用の材料の積層、または方向性の流れを助長する特定の材料の選択の形式であり得る。基部層106として使用される例示的な材料は、Tyco Healthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標XEROFLO(登録商標)の下で販売されている接触層を含む。
【0015】
さらに、ヒドロゲルおよび薬物のような薬剤が、基部層106に結合またはコーティングされ、創傷における生物汚染度を減少させ、治癒を促進し、手当ての交換または除去と関連する痛みを減少させる。薬物は、例えば、抗菌剤、成長因子、抗生物質、鎮痛剤などを含む。さらに、鎮痛剤が使用されるときには、鎮痛剤は、手当ての除去または交換に先立ち、その薬剤の放出を可能にするメカニズムを含み得る。
【0016】
基部層106に近い層は、パッキング/吸収材層108である。パッキング/吸収材層108は、創傷流体を吸収および捕獲して排出することを意図されている。パッキング/吸収材層108として使用される例示的な材料は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって商標KERLIX(登録商標)の下で販売されている抗菌性の手当てを含む。パッキング/吸収材層108は任意の適切な形状に形成され得るということを、当業者は認識する。形状に関して唯一必要なことは、パッキング/吸収材層108が特定の形状の創傷に適合することに適していることである。
【0017】
パッキング/吸収材層108のさらなる使用は、創傷床における感染の発生率を減少させることである。従って、パッキング/吸収材層108は薬物を用いて処理される。薬物は、例えば、殺菌剤または他の適切な抗菌剤もしくは抗菌剤の組み合わせのような抗感染剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、鎮痛剤、ビタミンのような治癒因子、成長因子、栄養剤など、および等浸透圧の塩水を用いた単純な流水洗浄を含む。
【0018】
さらに図1を続けて参照すると、上部層110は、創傷床「w」を囲む創傷手当て102の周囲を含み、創傷床「w」の周囲に密封封鎖を提供する。上部層110は、創傷床「w」を囲む範囲に結合される粘着剤を含み得るか、または粘着剤を有する追加の層を組み込み得る。粘着剤は、創傷床「w」の皮膚を囲んでいる組織「t」、例えば、創傷周囲の範囲に合った接着を提供し、接触悪化を伴うことなく、皮膚での使用に耐えることができなければならない(例えば、粘着剤は、好適には、刺激することなくかつ感作しないものであるべきである)。粘着剤は半透過性であり、接触された皮膚が呼吸し水分を透過することが可能であり得る。あるいは、粘着剤は不透過性であり得る。さらに、粘着剤は、加熱または所与の流体溶液もしくは化学反応のような外部刺激によって活性化または不活性化され得る。粘着剤は、例えば、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によるULTEC Hidrocollid Dressingを含む。
【0019】
上部層110は、好適には、パッキング/吸収材層108の近位に取り付けられたシートの形式である。好適な実施形態において、上部層110の周辺部分110Pは、粘着剤を含み、創傷床「w」付近で組織「t」に固定される。周辺部分110Pは、所望される場合には、基部層102の周辺に固定され得る。リムーバブルライナーがまた、使用に先立ち、上部層110の接着面を保護するために使用され得ることが見込まれる。
【0020】
上部層110は、例えば、弾力的なまたはエラストマーのような可撓性の材料を組み込み得、該可撓性の材料は、創傷手当て102の上部を封鎖する。一実施形態において、上部層110は、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.による商標POLYSKIN II(登録商標)の下で製造されている透明な手当てを含む。POLYSKIN(登録商標) IIは透明な半透過性の材料であり、それが創傷部位での水分と酸素との交換を可能にし、細菌および流体の汚染に対するバリアを提供する。代替案において、上部層110は不透過性であり得る。上部層110の透明性が創傷手当ての状態、さらに詳細には、創傷手当ての層の飽和レベルの状態の視覚的な表示を提供する。上部層110はさらに、創傷手当て102の内側と流体連通する真空ポートまたはコネクタ112を含む。真空ポート112は、別個のコンポーネントであって、上部層110に取り付けられ、かつ、従来的な手段で接続されるか、または上部層110と共に一体に形成される、別個のコンポーネントであり得る。真空ポート112は、中に作られた弁、例えば、一方向弁を有し、滲出物が一方向だけに、すなわち、創傷手当て102を離れてポンプシステム104に向かって流れることを可能にする。真空ポート112は、記述されるように、ポンプシステム104に解放可能に接続されるように適合されており、かつ、ポンプシステムに対する解放可能な接続のための構造を含み得るか、または含まないこともあり得る。
【0021】
さらに図1を参照すると、ポンプシステム104が記述されている。ポンプシステム104は、真空源114と、創傷手当て102の真空ポート112に真空源114の入口側を接続する入口管116と、出口管120によって真空源114の出口側に接続された収集器キャニスター118とを含む。代替案において、収集キャニスター118は、真空源114と創傷手当て102との間に「直線に並んで」配置され得る。真空源114は、任意のタイプのポンプであり得、該任意のタイプのポンプは、生体適合性があり、適切な治療の真空レベルを維持するかまたは引き出す。好適には、達成される真空レベルは、約20mmHgと約500mmHgとの間の範囲、さらに好適には、約75mmHgと約124mmHgとの間の範囲にある。ポンプ114は、取り外し可能、再利用可能、および/または再充電可能であり得る。一般的に、ポンプ114は、ダイアフラムタイプまたは蠕動タイプなどのポンプであり、該ポンプ114において、運動部分は、例えば、創傷手当て102を有する真空領域のような減圧範囲または領域を作成することによって、創傷床から創傷手当ての中に滲出物を吸い出す。この減圧範囲は、好適には、創傷床「w」と連通して、そこからパッキング/吸収材層108の中への流体の除去を促進する。ポンプ114は当業者には公知の任意の手段によって作動され得る。本開示の好適な実施形態において、ポンプ114は蠕動ポンプである。1つの適切な蠕動ポンプは、TycoHealthcareの一部門であるKendall Corp.によって製造されるKangaroo PET Enternal Feeding Pumpである。別の適切なポンプは、Watson Marlow LTD of Englandによって製造されるthe model 101 V/R pmy MK2であり得る。好適には、蠕動ポンプは、約20mmHg〜約500mmHgの範囲にある大気圧よりも低い圧力を生成する。適切なダイアフラムポンプは、KNF Neuberger of Germanyによって製造されるmodel NMP 850 KNDCを含む。
【0022】
入口管116および出口管120は、エラストマーおよび/またはポリマの材料から製作される任意の適切な可撓性の管であり得る。入口管116は、好適には、摩擦嵌合、差込ピン連結、スナップフィットなどを含む従来の手段を介して、真空ポンプ112に解放可能に接続される。収集キャニスター118は、任意の可撓性の使い捨てポーチなどであり得る。収集キャニスター118は、高吸収性ポリマ(SAP)のような高吸収性の材料、シリカゲル、ポリアクリル酸ナトリウム、カリウムポリアクリルアミド(pottasium polyacrylamid)および関連する化合物を含むことによって、創傷の排液または破片を固め得るかまたは含み得る。収集キャニスター118は、好適には、患者が収集キャニスター118の残りの収容量と滲出物の質とを決定することを助けるために、キャニスター118の内側を見ることを可能にするように透明である。
【0023】
図2を参照すると、ポンプシステム104は、好適には、内部の自蔵バッテリ源122と、創傷手当ての中の圧力を監視する圧力センサまたはトランスデューサ124と、自蔵調整または制御手段126とを含む。圧力センサ124は、好適には、創傷手当て102の中に配置され、電気配線128(図1)を通じて制御手段126と電気的に接続している。1つの適切な圧力センサは、the Dynamic ICP Pressure Sensor of the Pressure Division of PCB Piezotronics,Inc.である。圧力センサ124はまた、創傷手当て102における漏れを検出することを助ける情報を提供する。電気配線128は、真空ポート112と入口管116とを通過させられ得るか、または入口管116の外表面を通され得る。あるいは、電気配線128は真空ポート112および/または入口管116の壁の中のコンジットまたはチャネルを通過し得る。図1Aは、電気配線128が管116のチャネルまたは管116の中央管腔を通過する様々な配置を例示している。制御手段126は、好適には、ポンプ114のポンプ筐体の中に組み込まれる。制御手段126は、処理および駆動のソフトウェアまたは回路網を含むモータコントローラ/ドライバ130を組み込み、圧力センサ124および/または動作時間の制約などを含む他の動作パラメータによって感知された圧力に応答して、ポンプ114のモータに対する駆動電圧を制御または変更し得る。例えば、モータコントローラ/ドライバは、起動後の所定の期間だけ稼動するようにプログラムされ得る。ポンプ114のモータの出力は、制御手段126によって制御されると、増加もしくは減少、または開始もしくは停止され得る。調整または制御手段126はまた、視覚的、聴覚的、触覚的な感覚的警報(例えば、振動など)のような警報を有し、特定の状態(例えば、所望の真空レベル、真空の損失、または漏れ)を満たしたときに患者に示し得る。制御停止スイッチ130がまたポンプシステムの中に組み込まれ、制御手段126から入力することなく所望に応じて、患者が、任意的に、ポンプの動作を開始または終了させることを可能にし得る。ワイヤレス手段がまた、制御手段126を介してポンプ114を動作することが想定される。
【0024】
ここで図3を参照すると、少なくともキャニスターおよび/またはポンプ114を支持する本体支持バッグ134が例示されている。記述されているように、ポンプシステム104は、患者の体に取り付けるために、自蔵ポータブルユニットになるように適合されている。この点に関して、ポンプシステム104は、少なくとも部分的には、本体支持バッグ134によって担持または支持され得る。本体支持バッグ134は、概して、ポーチ136と、ポーチ136を患者の体に固定する少なくとも1つのストラップ138、好適には2つのストラップとを含む。本体支持バッグ134は、少なくとも収集キャニスター118および/またはポンプ114を収容し格納するように意図されている。本体支持バッグ134は患者の腰の辺りに付けられ得る。これは、本体支持バッグ134が創傷の位置に従って必要とされる管の長さを減少し得るという点でのぞましい。さらに、ポーチ136は患者の腹部に隣接して位置を定められ得、このことは、システムを隠す能力の顕著な向上を与え得る。入口管116と出口管120とは、テープなどを用いて体に固定され得るか、任意的に、固定されず患者の着衣の下に置かれ得る。従って、本体支持バッグ134は、患者が拘束または制限なく動くことを可能にし、かつ、創傷の排液および治癒の間、完全にポータブルな能力を患者に提供する。
【0025】
図4は、本体支持バッグの代替の実施形態を例示している。この実施形態に従って、本体支持バッグ140は患者の肩に取り付けるように適合されており、ポーチ142を有する。他の点においては、本体支持バッグ140は図3の本体支持バッグと同様に機能する。
【0026】
使用において、創傷手当て装置100は、図1に示されているような創傷床「w」の中に配置され、上に記述されたように創傷「w」の付近に固定される。ポンプ114および/または収集キャニスター118は本体支持バッグ134のポーチ136(または支持バッグ140)の中に配置される。本体支持バッグ134、140は、ストラップ134を用いて、腰、肩、足などのいずれかの付近で患者に取り付けられる。入口管114と出口管120とは、テープなどを用いて患者の体に固定され得る。その後、ポンプ114は、創傷手当て装置100の中に、大気圧よりも低い圧力(すなわち、真空状態)の領域を作成することを開始させられる。ポンプ114は、手動の制御停止スイッチ130を介して開始され得るか、または圧力センサ124を介して始められ得、該圧力センサ124は、創傷手当て装置100の中の大気圧よりも低い圧力への不足を検出し、対応する信号を制御手段126に送信する。次に、制御手段126はポンプ114を作動する。創傷手当て102の中の大気圧よりも低い圧力が増加すると、上部層110とパッキング/吸収材層108とが崩壊する。流体が創傷床「w」から離れて、創傷手当て102のパッキング/吸収材層106の中に吸い出される。これらの流体および/または滲出物は、ポンプ114の負のポンピングエネルギーの下で、パッキング/吸収材層106から除去され得る。流体は、収集キャニスター118の中に収集されるように、入口管116と出口管120とを介して送達される。所望のレベルの大気圧よりも低い圧力が、例えば、圧力センサ124によって検出されたときに達成されると、圧力センサ124は信号を制御手段126に送信する。制御手段126は、ポンプ114の動作を終了し得るか、または代替的にポンプ114の速度または出力を変更し得る(例えば、減少させる)かのいずれかである。この真空状態において、創傷流体と滲出物とがパッキング/吸収材層106の中に継続的に吸い出される。しばらくすると、創傷手当て102は、圧力センサ124によって検出されるかまたは患者によって視覚的に検出されたときに、真空状態をなくし得る。所望の真空レベルを失ったときには、圧力センサ124は,信号を制御手段126に送信して、ポンプ114の出力を作動または増加させる。ポンプ114はパッキング/吸収材層108から流体を除去して、創傷手当て102の中に真空状態を再確立する。上に示されたように、代替案においては、例えば、収集キャニスター118が一杯であるということを患者が分かると、ポンプ114は手動の制御停止スイッチ130を介して開始され得る。このプロセスは、1つの適用または一連の適用の間の創傷の治癒の間に数回継続し得る。
【0027】
創傷が完全に治癒されると、創傷閉鎖装置とポンプシステムが始末され得る。本体支持バッグはまた、次の使用のために始末または掃除され得る。ポンプは殺菌され再利用もされ得る。
【0028】
図5は、本開示の別の実施形態を例示する。この実施形態に従って、創傷手当て装置200はマイクロポンプ202を含み、該マイクロポンプ202は吸収材層204の中に取り付けるように適合されている。マイクロポンプ202は、約1インチ〜3インチの範囲にある長さを有し、好適には約1インチを上回ることのない比較的小さい直径を有する。マイクロポンプ202は、任意のタイプのポンプであり得、該任意のタイプのポンプは、生体適合性があり、適切な治療の真空レベルを維持するかまたは引き出す。マイクロポンプ202は、取り外し可能、再利用可能、および/または再充電可能であり得る。マイクロポンプ202は、ダイアフラムタイプ、蠕動タイプまたは回転タイプなどのポンプであり得、該マイクロポンプ202において、運動部分は、例えば、創傷手当て装置200を有する真空領域のような減圧範囲または領域を作成することによって、創傷床から創傷手当ての中に滲出物を吸い出す。この減圧範囲は、好適には、創傷床「w」と連通して、そこから吸収材層204の中への流体の除去を促進する。マイクロポンプ202は当業者には公知の任意の手段によって作動され得る。本開示の好適な実施形態において、マイクロポンプ202は蠕動ポンプである。1つの適切な蠕動ポンプは、Piab Vacuum Products in Hingham、MAによって製造される。好適には、蠕動ポンプは、約20mmHg〜約500mmHgの範囲にある、大気圧よりも低い圧力を生成する。
【0029】
吸収材層204は好適にはフォームを満たした手当てであり、該フォームを満たした手当ては透明である。フォームは、弾力性かつ液体吸収性で多孔性の、ポリマを基にしたフォームであり得る。フォームは分配可能な液体であり得、該分配可能な液体は、少なくとも部分的には、結晶状の配置に凝固し、滲出物の流出を可能にする中空のチューブを画定する。フォームは創傷床の中に分配され、フォームチャネルから空気を排出するために潜在的に崩壊可能である。フォームは膨張可能な親水性のフォームであり得、該膨張可能な親水性のフォームは、創傷から流体を吸収し、かつ、創傷の湿った状態を維持することが可能である。フォームによって画定される中空のチューブまたは隙間はまた、電力、熱、冷気、および超音波を伝える手段を提供する。中空のチューブまたは隙間はまた、組織の成長のための生体活性の足場を提供する。透明な薄いフィルムの上部層205が創傷範囲の周囲に固定されて創傷を囲い込む。
【0030】
自蔵バッテリ源と制御回路網とが筐体206の中に取り付けられ得、該筐体206は、ベルト208に接続されている。ベルト208は、患者の体、例えば、腰の範囲の周囲に取り付けるように適合されており、患者の周囲に固定するVELCRO(登録商標)手段を含み得る。ベルト208はさらに、キャニスター210を支持し得、該キャニスター210は、ポンプ202からチューブ212を通って流体の滲出物を収容する。チューブ214は筐体206からポンプ202まで伸びており、ポンプを動作するために、電子ワイヤなどを組み込み得る。代替案において、チューブ212は、例えば、管腔の中に電気ワイヤを組み込み、筐体からポンプ202およびキャニスター210まで伸びている。
【0031】
創傷手当て装置は外部の手段または塗布を組み込み、組織の成長および/または治癒を刺激し得るということがさらに想定されている。例えば、補助的な処置装置が創傷手当て装置に組み込まれ、例えば、創傷範囲における電気、熱または振動エネルギーを導くなどの、組織の処置のための電気的または機械的エネルギーを伝え、および/または皮膚を通して人間の体に様々な薬剤を導入し得る。補助的な処置装置は、参照番号216で概略的に示されているような、ポンプ202の筐体の中に組み込まれ、上に述べられた制御手段を介して動作され得る。1つの適切な補助的な処置装置は、超音波トランスデューサを含み得る。酸素、化学物質、細菌および/または温度のセンサを含む他のタイプのセンサがまた、創傷手当て装置への組み込みを想定されている。創傷範囲付近での酸素の検出は、医師が創傷の治癒の状態を決定することを助ける。上昇された温度の存在が感染を示し得る。ポンプシステムは、ワイヤレスの手段を介してコンピュータと通信する回路網、例えば、ハンドヘルドのPALM(登録商標)デバイスを組み込み得る。
【0032】
本開示が例示されかつ記述されてきたが、本開示の精神を全く逸脱することなく、様々な改変および置換が行われ得るので、示された詳細に限定されることは意図されていない。例えば、2006年9月6日に出願された米国仮特許出願第60/714,812号に対する優先権を主張する、Express Mail Certificate No.EL 985194525 USの下で本明細書と共に同時に出願された同一出願人に譲渡された国際出願の主題と、2006年9月7日に出願された米国仮特許出願第60/714,805号に対する優先権を主張する、Express Mail Certificate No.EL 985194508の下で本明細書と共に同時に出願された同一出願人に譲渡された国際出願の主題とが、本開示に援用される(各出願の全内容は本明細書において援用されている)ことが想定されている。従って、本明細書において開示された本発明のさらなる改変および均等物が、単に普通の実験を行って、当業者に見出され得、そのような全ての改変および均等物は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の精神および範囲を逸脱することはないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本開示の原理に従った自蔵創傷手当て装置の部分断面図であり、創傷手当て部材、ポンプシステムおよび収集キャニスターを例示している。
【図1A】図1Aは、図1の1A−1A線に沿って取られた断面図であり、創傷手当て装置の真空チューブを例示している
【図2】図2は、ポンプシステムの概略図である。
【図3】図3は、収集キャニスターおよび/またはポンプシステムを含むための本体支持バッグを例示している図である。
【図4】図4は、図3の本体支持バッグの代替的な実施形態を例示している図である。
【図5】図5は、自蔵創傷手当て装置の代替的な実施形態を例示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷手当て装置であって、該創傷手当て装置は、
創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材と、
該創傷手当て部材からの流体の除去を促進するように大気圧よりも低い圧力を加えるために、該創傷手当て部材と流体連通しているポータブル真空ポンプであって、該真空ポンプは、患者の体で担持されるように適合されている、ポータブル真空ポンプと、
該患者の該体で担持され、かつ、該創傷手当て部材から除去された流体を収集するために該真空ポンプと流体連通している収集キャニスターと
を備えている、創傷手当て装置。
【請求項2】
前記真空源は、蠕動真空ポンプを含む、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項3】
前記真空ポンプは、約20mmHgと約500mmHgとの間の範囲にある、大気圧よりも低い圧力を生成するように適合されている、請求項2に記載の創傷手当て装置。
【請求項4】
前記収集キャニスターは、前記創傷手当て部材から除去された前記流体を収容する吸収材を含む、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項5】
本体支持バッグを含んでおり、該本体支持バッグは、前記患者に取り付けるように適合されており、かつ、前記収集キャニスターおよび前記真空ポンプのうちの少なくとも1つを保持するポーチを有する、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項6】
前記真空ポンプは、制御手段を含み、該真空ポンプの動作を制御する、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項7】
前記創傷手当て部材に対する所定の位置における圧力を検出し、かつ、対応する信号を前記制御手段に送信するように適合された圧力センサを含む、請求項6に記載の創傷手当て装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記真空源の出力を制御または変更するように適合されたコントローラを含む、請求項6に記載の創傷手当て装置。
【請求項9】
前記真空ポンプは、自蔵バッテリを含む、請求項1に記載の創傷手当て装置。
【請求項10】
前記創傷手当て部材は、前記創傷床に隣接して配置可能な下側部材と、該下側部材に隣接して配置可能な上側吸収材部材と、上部部材とを含む、請求項11に記載の創傷手当て装置。
【請求項11】
前記上側吸収材部材は、フォーム、不織布の複合織物、セルロース織物、高吸収性ポリマ、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される材料を含む、請求項10に記載の創傷手当て装置。
【請求項12】
前記上側吸収材部材は、薬物、抗感染薬、殺菌剤、ポリヘキサメチレンビグアニド(以下では「PHMB」)、抗生物質、鎮痛剤、治癒因子、ビタミン、成長因子および栄養剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の創傷手当て装置。
【請求項13】
創傷手当て装置であって、該創傷手当て装置は、
創傷床に対して配置するような大きさにされた創傷手当て部材と、
該創傷手当て部材からの流体の除去を促進するように大気圧よりも低い圧力を加えるために、該創傷手当て部材と流体連通しているポータブル真空ポンプであって、該真空ポンプは、該真空ポンプを動作するための自蔵バッテリを有する、ポータブル真空ポンプと、
該創傷手当て部材から除去された流体を収集するために該真空ポンプと流体連通している収集キャニスターと、
患者の体に装着可能な本体支持バッグであって、該本体支持バッグは、該収集キャニスターおよび該真空ポンプのうちの少なくとも1つを保持するポーチを含む、本体支持バッグと
を備えている、創傷手当て装置。
【請求項14】
創傷の治癒を促進する方法であって、該方法は、
創傷床に対して創傷手当て部材を配置するステップと、
該創傷手当て部材からの流体の除去を促進するように大気圧よりも低い圧力を加えるために、該創傷手当て部材と流体連通しているポータブル真空ポンプを導入するステップと、
該創傷手当て部材から除去された流体を収集するために該真空ポンプと流体連通している収集キャニスターを接続するステップと、
患者の体に本体支持バッグを取り付けるステップであって、該本体支持バッグは保持ポーチを含む、ステップと、
該収集キャニスターおよび該真空ポンプのうちの少なくとも1つを、該本体支持バッグの該保持ポーチの中に配置するステップと
を包含する、方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−509570(P2009−509570A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530191(P2008−530191)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/034825
【国際公開番号】WO2007/030599
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】