説明

舗装路面給水システム

【課題】都市水環境に寄与する透水性鋪装であって、降水量が少ない日が続く夏季においても、雨水等の水分を舗装体の全域に保水させることができるため、舗装道路の表面からの排熱を防止しヒートアイランド現象を抑制できる透水性鋪装を提供することにある。
【解決手段】 舗装道路と舗装道路に給水を行う給水手段からなる舗装路面給水システムであって、
舗装道路は、舗装体2と、その下の路盤4からなり、
舗装体2は、透水性及び保水性を有するコンクリート舗装層21と、遮水層27との間に、目付量100〜3000g/m2の不織布層26とから構成され、
給水手段3は、給水源35と、給水源35からの水分を舗装体2内部に給水する給水路38と、舗装体2の下側部に設けられた水分量検出器32と、給水制御装置31とを備え、
少なくとも水分量検出器32による舗装体2内部の水分量信号に基づき、給水制御装置31が、給水路を介して舗装体2内部に給水する
ことを特徴とする舗装路面給水システム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、歩道、公園、駐車場等に適用することのできる舗装路面の給水システムに関するものであり、詳しくは、舗装路面に残存する水分を適量に保つことにより、特に夏季における舗装路面の温度上昇を効果的に抑制することができる舗装路面の給水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の都市部における夏季の気温上昇は著しく、ヒートアイランド現象と呼ばれている。このような都市部におけるヒートアイランド現象の発生は、都市活動によって生じる人工排熱、乾燥した舗装路面からの排熱によって引き起こされると言われている。
乾燥した舗装路面からの排熱を防止するため、舗設された透水性コンクリート舗装の空隙に保水材スラリーを流下させ、透水性コンクリート舗装の構成材料の表面を保水材で被覆する保水性の透水性コンクリート舗装が提案されている(特許文献1)。しかし、前記保水性の透水性コンクリート舗装においては、雨水等の保水性には有益ではあるが、降水量が少ない日が続く夏季においては保水性の透水性コンクリート舗装に保水された水分が枯渇されてしまい乾燥した舗装路面からの排熱を十分防止することはできなかった。
また、給水手段を用い雨水等を舗装路面の内部に散布させる保水性舗装システムが提案されている(特許文献2,3)。しかし、雨水等を舗装路面の全面に散布することができないため乾燥した舗装路面からの排熱を十分防止することはできなかった。さらに、舗装路面と路盤の間に給水パイプを埋設する必要があり工事費用が高価になり、舗装路面下に埋設した給水パイプの破断等により雨水等の散布に支障をきたす恐れもあった。
【特許文献1】特開2007―92473号公報
【特許文献2】特開2006―161343号公報
【特許文献3】特開2004―169523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の課題は、降水量が少ない日が続く夏季においても、雨水等の水分を舗装路面の全面に保水させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
舗装道路と舗装道路に給水を行う給水手段からなる舗装路面給水システムであって、
舗装道路は、舗装体と、その下の路盤からなり、
舗装体は、透水性及び保水性を有するコンクリート舗装層と、遮水層との間に、目付量100〜3000g/m2の不織布層とから構成され、
給水手段は、給水源と、給水源からの水分を舗装体内部に給水する給水路と、舗装体の下側部に設けられた水分量検出器と、給水制御装置とを備え、
少なくとも水分量検出器による舗装体内部の水分量信号に基づき、給水制御装置が、給水路を介して舗装体内部に給水する
ことを特徴とする舗装路面給水システム。
【0005】
(作用効果)
舗装体は、透水性及び保水性を有するコンクリート舗装層と、遮水層との間に、目付量100〜3000g/m2の不織布層とから構成されることにより、給水手段により給水された水分をコンクリート舗装層の下面側にある不織布層に浸透させることが可能となる。不織布層に浸透された水分は、毛細管現象によりコンクリート舗装層に浸透し、コンクリート舗装層の内部に保水されることにより乾燥したコンクリート舗装層の内部を冷却することができ、コンクリート舗装層の表面からの排熱を防止することができる。
【0006】
また、不織布層の下面側に給水された水分の路盤への浸透を防止する遮水層を有することにより、給水手段から給水された水分の路盤への浸透を防止することができ、給水された水分は効率よくコンクリート舗装層に浸透し、保水される。
【0007】
舗装体の下側部に設けられた水分量検出器により舗装体内部の水分量を計測し、水分量検出器の舗装体内部の水分量信号に基づきコンクリート舗装層の下面側にある不織布層に給水を行うことにより、降水量が少ない日が続く夏季においても、給水手段によって給水された水分がコンクリート舗装層に浸透し、保水されることにより、コンクリート舗装層の表面からの排熱を防止することができる。
一方、降水量が多い雨季においては、十分な雨水等がコンクリート舗装層及び不織布層に保水されていることから、給水手段を停止し過剰な給水を行うことを防止することができる。
【0008】
さらに、本発明は、コンクリート舗装層の表面からの排熱を防止することによるヒートアイランド対策の他に、コンクリート舗装が透水性及び保水性を有することから、雨水流出の抑制、降雨時の下水道の負担軽減、歩行者の雨天時の通行快適性・安全性の向上、車両の水はね低減、夜間時の車両ヘッドライトによる眩惑の低減、地下水の枯渇の防止にも効果を有する。
【0009】
<請求項2記載の発明>
コンクリート舗装層は、4〜7号砕石の骨材表面上にバインダー被膜を施し、さらに、バインダー被膜上をセメント(C)とフライアッシュ(F)の配合比(F/C)が1.4〜2.0重量比の保水性被膜で覆われていることを特徴とする請求項1記載の舗装路面給水システム。
【0010】
(作用効果)
コンクリート舗装層が、4〜7号砕石の骨材表面上にバインダー被膜を施していることにより、空隙率15〜30%の透水性能が高いコンクリート舗装層の実現が可能になる。また、骨材の表面をセメント(C)とフライアッシュ(F)の配合比(F/C)が1.4〜2.0重量比の保水性被膜で覆うことにより透水性のコンクリート舗装層にさらなる保水性とコンクリート舗装層の表面への揚水を付与することができる。
【0011】
<請求項3記載の発明>
給水手段は、舗装体の内部の温度を計測する内部温度検出器を有し、内部温度検出器の舗装体の内部温度信号を加味して、給水制御装置が、舗装体内部に給水する水分量を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の舗装路面給水システム。
【0012】
(作用効果)
内部温度検出器により舗装体の内部の温度を計測し、内部温度検出器の舗装体の内部温度信号を加味して、給水制御装置が、舗装体内部に給水する水分量を制御することより、例えば、舗装体の内部の温度が高い場合には、多量の水分を不織布層に給水することにより、舗装体の内部の温度を短時間で下げることが可能になり、一方、舗装体の内部の温度が低い場合には、少量の水分を不織布層に給水することにより地下水等の水分を涵養にすることができる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
給水手段は、舗装体の外部の温度を計測する外部温度検出器と舗装体の内部の温度を計測する内部温度検出器とを有し、外部温度検出器の舗装体の外部温度信号と、内部温度検出器の舗装体の内部温度信号との差分を加味して、給水制御装置が、舗装体内部に給水する水分量を制御することを特徴とする請求項1及至3記載の舗装路面給水システム。
【0014】
(作用効果)
舗装体の外部の温度を計測する外部温度検出器と舗装体の内部の温度を計測する内部温度検出器とを有し、外部温度検出器の舗装体の外部温度信号と、内部温度検出器の舗装体の内部温度信号との差分を加味して、給水制御装置が、舗装体内部に給水する水分量を制御することにより、ヒートアイランド現象を効果的に防止することができる。
ヒートアイランド現象は、日射により暖められた舗装体の内部の高い温度が舗装体の外部に伝播されることにより引き起こされるものであり、舗装体の内部温度と舗装体の外部温度の差分に応じ給水手段から給水する水分量を制御することにより、効果的にヒートアイランド現象を防止することが可能である。
【0015】
さらに、外部温度検出器の外部温度信号からは種々の情報を把握することができ、例えば、冬季においては舗装体の表面外部の温度が氷点下に近い場合、給水手段から温水を給水することにより舗装体の表面の凍結を防止することができる等の効果を有する。
【0016】
<請求項5記載の発明>
水分量検出器が、給水路とは反対側に位置する不織布層の端部の水分量を計測することを特徴とする請求項1及至4記載の舗装路面給水システム。
【0017】
(作用効果)
水分量検出器により給水路とは反対側に位置する不織布層の端部の水分量を計測することにより、舗装体に保水される水分量を迅速かつ正確に把握することができる。
透水性コンクリート舗装道路においては、保水されている水分は毛細管現象により約3〜5cm舗装道路表面に浸透させることができると言われている。しかし、毛細管現象による浸透にはバラツキがあり、しかも透水性コンクリート舗装層に水分が浸透するには一定以上の時間がかかる。
従って、水分量センサーにより給水管とは反対側に位置する均一材料からなる不織布層の端部の水分量を観測することにより、舗装体に保水される水分量を迅速かつ正確に把握することができる。
【0018】
<請求項6記載の発明>
給水路が、不織布層に当接又は不織布層内に埋設されていることを特徴とする請求項1及至5記載の舗装路面給水システム。
【0019】
(作用効果)
給水路の給水口が不織布層に当接又は不織布層内に設置されていることにより、給水手段から水分を迅速に不織布層に給水し、不織布層により透水性コンクリート舗装層の下面側の全域に水分を浸透させることができる。
【0020】
<請求項7記載の発明>
舗装体には、0.5〜1.5%の横断勾配が設けられ、給水側が高く、給水側と反対側が低いことを特徴とする請求項1及至6記載の舗装路面給水システム。
【0021】
(作用効果)
舗装体に0.5〜1.5%の横断勾配が設けられていることにより、給水手段から給水された水分を透水性コンクリート舗装層の下面側に埋設された不織布層の全域に水分を浸透させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり、本発明によれば、降水量が少ない日が続く夏季においても、雨水等の水分を舗装道路の全域に保水させることができるため、舗装道路の表面からの排熱を防止しヒートアイランド現象を抑制できる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、本発明に係る舗装路面給水システム1の全体を示す概略図である。
【0024】
舗装路面給水システム1は、図1に示すように、舗装道路と舗装道路に給水を行う給水手段3から構成されている。
【0025】
舗装道路は、路盤4の上に舗装体2が敷設され、舗装体2は、後述するコンクリート舗装21と、給水された水分をコンクリート舗装21の下面全域に浸透させる不織布層26と、給水された水分の路盤への浸透を防止する遮水層27の3層から構成されている。
【0026】
また、給水手段3は、不織布層26の端部の水分量を計測する水分量検出器32と、舗装道路2の内部の温度を計測する内部温度検出器33と、舗装道路2の外部の温度を計測する外部温度検出器34と、前記検出器32、33、34の出力値に応じ、舗装体2に給水する水分量、給水回数を制御する給水制御装置31から構成されている。
【0027】
さらに、給水手段3は、雨水等を貯水する給水源35と、給水源35の雨水等を供給するポンプ36と、給水開閉弁37と、供給された雨水等の水分を舗装体2に給水する給水路38とから構成されている。
また、給水源35には、冬季において貯水された雨水等を暖め温水にするヒーター40が設けられている。
【0028】
なお、図1においては、舗装体2に給水手段3の給水路38を1箇所埋設した例を示しているが、路幅寸法が大きい道路、歩道等、面積が広い公園、駐車場等においては、給水手段3の給水路38を複数個埋設することができることは言うまでもない。
【0029】
また、図1には図示していないが、給水手段3の給水路38とは反対側の舗装体2(図面においては右側)には、雨季における大量の雨水等を暗渠配水管により路盤に埋設されている集中管等に排水することができる。
従って、給水手段3から給水された余剰な水分は、暗渠配水管により路盤に埋設されている集中管等に排水することができことは言うまでもない。
【0030】
給水手段の方法を具体的に説明すると、給水制御装置31は、デフォルト値として予め給水制御装置31に入力された水分量値と水分量検出器32の水分量信号を比較し、水分量検出器32の水分量信号がデフォルト値として入力された水分量値に比較し小さい場合(舗装道路の保水量が少ない状態を示す。)、給水開閉弁37を開く出力信号を出力し、舗装体2に給水を行う。なお、舗装体2への給水する水分量は、種々の外的要因があるため明確ではないが、一日当り約2〜3l/m2が好適である。
【0031】
一方、水分量検出器32の水分量信号がデフォルト値として入力された水分量値に比較し大きい場合(舗装道路の保水量が多い状態を示す。)、給水開閉弁37を閉じる出力信号を出力し、舗装体2に給水を停止する。
【0032】
水分量検出器32のコンクリート舗装21への埋設位置には特に制限はない。コンクリート舗装21においては、コンクリート舗装21の表面から約3〜5cm下方にあるコンクリート舗装21に保水された水分が毛細管現象によりコンクリート舗装21の表面に浸透されると言われている。しかし、毛細管現象による浸透にはバラツキがあり、しかもコンクリート舗装層に水分が浸透するには一定以上の時間がかかるため、水分量検出器32をコンクリート舗装21内に埋設した場合にはコンクリート舗装21に保水された水分量を迅速かつ適切に把握することが困難である。
【0033】
そこで、水分量検出器32の測定端子を給水路38の給水口39とは反対側に位置する不織布層26の端部に当接または埋設した方が、コンクリート舗装21に保水された水分量を迅速かつ適切に把握することができるためより好適である。
【0034】
また、給水路38の給水口39のコンクリート舗装21への埋設位置には特に制限はない。しかし、後述するコンクリート舗装21においては、コンクリート舗装の構成材料(骨材)22に保水材を被覆することから、コンクリート舗装21の空隙が若干少なくなっており、給水路38の給水口39をコンクリート舗装21に埋設した場合、コンクリート舗装21の全域に給水される水分の浸透が遅くなる。
【0035】
そこで、給水路38の給水口39を不織布層26に当接又は不織布層26内に埋設することにより、給水路38の給水口39から給水された水分を不織布層26によりコンクリート舗装層21の下面側の全域に水分を浸透させることができるためより好適であり、給水路38の給水口39は不織布層26の奥行きにわたり一定ピッチで不織布層26に当接又は不織布層26内に埋設するのが特に好適である。
【0036】
さらに、舗装体2には、給水側が高く、給水側と反対側が低くなるように0.5〜1.5%の横断勾配が設けることが、給水路38の給水口39から給水された水分をコンクリート舗装層21の下面側の全域に水分を浸透させることができるためより好適である。
ここで、横断勾配が0.5%以下の場合、重力による水分の浸透の促進効果を十分得ることができず、横断勾配が1.5%以上の場合、歩行者の雨天時の通行快適性・安全性が阻害する恐れがある。
【0037】
給水制御装置31は、デフォルト値として予め給水制御装置31に入力された舗装体2の内部の温度値と内部温度検出器33の内部温度信号を比較し、内部温度検出器33の内部温度信号がデフォルト値として入力された内部の温度値に比較し大きい場合(舗装道路の内部の温度が高い状態を示す。)、給水開閉弁37を開く出力信号を出力保持し、舗装体2に給水する水分量を多くする。
【0038】
一方、内部温度検出器33の内部温度信号がデフォルト値として入力された内部の温度値に比較し小さい場合(舗装道路の内部の温度が低い状態を示す。)、給水開閉弁37を閉じる出力信号を出力し、舗装体2に給水を停止する。
【0039】
給水制御装置31は、デフォルト値として予め給水制御装置31に入力された舗装体2の外部温度と舗装体2の内部温度の差分値と、外部温度検出器34の外部温度信号と内部温度検出器33の内部温度信号の差分値を比較し、外部温度検出器34の外部温度信号と内部温度検出器33の内部温度信号の差分値がデフォルト値より大きい場合(舗装道路の内部の温度が舗装道路の外部の温度より非常に高い状態を示す。)、給水開閉弁37を開く出力信号を出力保持し、舗装体2に給水する水分量を多くする。
【0040】
一方、外部温度検出器34の外部温度信号と内部温度検出器33の内部温度信号の差分値がデフォルト値に比較し小さい場合(舗装道路の内部の温度が舗装道路の外部の温度とほぼ同じ温度の状態を示す。)、給水開閉弁37を閉じる出力信号を出力し、舗装体2に給水を停止する。
【0041】
以上、水分量検出器32の出力値、内部温度検出器33の出力値、外部温度検出器34の出力値と内部温度検出器33の出力値の差分値に応じて、給水手段3から給水する水分量を制御する方法について述べたが、日照量計により日照量を計測し、日照量計の出力値に応じて水分量を制御する方法を用いることができることは言うまでもない。
また、給水制御装置31のタイマーに応じて、日射が少ない夜間においては給水制御装置31の稼働を休止する制御を行うことにより電力の消費を低減できることも言うまでもない。
【0042】
以下、本実施形態に係る舗装体2を構成するコンクリート舗装層21、不織布層26、遮水層27について説明する。
【0043】
(コンクリート舗装層21)
図2には、本実施形態に係る舗装体2を構成する透水性及び保水性を有するコンクリート舗装層21の第1形態を、図3には、本実施形態に係る舗装体2を構成する透水性及び保水性を有するコンクリート舗装層21の第2形態を示している。
【0044】
コンクリート舗装層21の第1形態は、コンクリート舗装層21を形成する構成材料(骨材)22の表面を、バインダー被膜23で被覆し、さらに、バインダー被膜23を保水材被膜24で被覆したものである。
【0045】
より詳しく説明すると、構成材料(骨材)22には相互の構成材料(骨材)22を結合しコンクリート舗装層21を形成するために、構成材料(骨材)22の表面には、樹脂入りセメントペースト(セメントモルタル)からなるバインダー被膜23が設けられ、さらに、バインダー被膜23の表面には、保水材被膜24が被覆されている。
構成材料(骨材)22は、4〜7号の砕石からなり、バインダー被膜23は、樹脂系バインダーの他、普通ポルトランドセメントを使用することもでき、樹脂入りセメントペースト(セメントモルタル)が最も好適であり、構成材料(骨材)22とバインダー被膜23からなる透水性コンクリート舗装層21は15〜30%の空隙率を有する。
空隙率が15%より小さいと、透水性能を十分確保することができず雨水流出の抑制効果等が十分行えない。一方、空隙率が30%より大きいとコンクリート舗装層21の強度が下がり重量車両の走行時にコンクリート舗装層21の変形等が生じる恐れがある。
【0046】
保水材被膜24は、セメントと木質粉体と樹脂系バインダーあるいはセメントとフライアッシュと樹脂系バインダーから構成される。
【0047】
セメントは、コンクリート舗装層21の構成材料(骨材)22と同一材料を選択するのが好ましい。
【0048】
木質粉体は、スギ、ヒノキ等木材を原材料とする木質チップとセメントとを圧縮成型して製造された木質系セメントボード等の家屋外壁ボードの製造過程で発生する不良品やトリミング、カット加工した際の端材をフレーカーで破砕し、さらにハンマーミルで粉砕した際に発生する微粉体のうち、比重を利用してセメントと分離して集塵機で回収した微粉状の木粉で、その粒径は10μm以下の略球形をなす粉体である。
【0049】
また、木質粉体に代えてフライアッシュを使用することが保水性を向上する上でより好適である。
【0050】
樹脂系バインダーは、天然または合成のゴム、例えばSBR(スチレンブタジエンゴム)またはNBR(ブタジエンアクリロニトリルゴム)であっても良く、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂であっても良い。これらのポリマー系混和剤は、通常、エマルジョンの形で添加される。例えば、このポリマー系混和剤として、商品名パーミファルト(SBR系ラテックス)((株)佐藤渡辺製)が好適である。
【0051】
コンクリート舗装層21の構成材料(骨材)22のバインダー被膜23の表面上に保水材被膜24を施すには、セメントとフライアッシュと樹脂系バインダーに水を加えスラリー状にして、コンクリート舗装層21に流し込んで行う。
この際、セメント(C)とフライアッシュ(F)の配合量F/Cを1.4〜2重量比に、セメント(C)とフライアッシュ(F)と水(W)の配合量W/(C+F)を60〜90重量%にすることによりコンクリート舗装層21の構成材料(骨材)22のバインダー被膜23の表面上に均一に保水性被膜24を施すことができるので好適である。
配合量F/Cが1.4重量%より小さい場合には、保水性能が十分得られず、一方、配合量F/Cが2.0重量%より大きい場合には、コンクリート舗装層21の構成材料(骨材)22のバインダー被膜23の付着力が低減するため長期間にわたる保水性能の維持が困難になる。
また、配合量W/(C+F)が60重量%より小さい場合には、スラリーの粘度が高くコンクリート舗装層21の構成材料(骨材)22のバインダー被膜23の表面上に均一に保水性被膜24を施すことができなくなり、一方、配合量W/(C+F)が90重量%より大きい場合には、スラリーの粘度が小さくコンクリート舗装層21の構成材料(骨材)22のバインダー被膜23の表面上に保水性被膜24が形成することができない。
【0052】
コンクリート舗装層21の第2形態は、さらに、コンクリート舗装層21の下面部に所定の厚さの保水材層25を設けたものである。保水材層25は、保水材被膜24と同様に、木質粉体と樹脂系バインダーまたはフライアッシュと樹脂系バインダーから構成される。
【0053】
(不織布層26)
不織布層26は、コンクリート舗装層21及び遮水層27に密着しやすい構造のもの、すなわち柔らかいものであることが要求され、好ましくは、保水性能が高い高吸湿繊維からなる不織布が好適である。また、不織布層26は、単層の不織布でもよく、2層、3層等の複数層の不織布から構成されるものでもよい。
【0054】
不織布としては、目付量100〜3000g/m2のものが給水された水分を透水性コンクリート舗装層21の下面部の全域に浸透させる上で好適であり、タフネス(抗張積)が高く破断しにくく、耐久性に優れ、長期の負荷・繰り返し荷重に対して厚さ保持率・伸縮率の変化が少ない長繊維不織布が好適であり、例えば、スパンボンド法により製造されたポリエステルがある。
【0055】
なお、不織布に代えて織布、親水性樹脂を使用することもでき、例えば、商品名:カルドレーン等で知られる合成樹脂製の帯板状排水材がある。
【0056】
(遮水層27)
遮水層27は、不織布層27及び路盤4に密着しやすい構造のもの、即ち柔らかいものであることが要求される。
【0057】
以下、本実施形態に係る給水手段3を構成する給水源35、給水路38について説明する。
【0058】
(給水源35)
給水源35は、雨水等を貯水できるものであれば特に制限がなく、舗装体2上の大量の雨水を貯水する硬質合成樹脂、鉄筋コンクリートから成り、舗装体2の所定間隔毎に地中に埋設されたものであっても良く、防火用水槽であっても良い。
【0059】
(給水路38)
給水路38は、給水源35に貯水された雨水等をポンプ36、給水開閉弁37を経て舗装体2内に給水できるものであれば特に制限がなく、一定ピッチで給水口39が設けられたものであればよく、特に、給水路38を不織布層26に当接して使用する場合、給水路38の一定方向、例えば、下半周面にのみ給水口39が設けられているものがより好適である。
【0060】
なお、給水制御装置31、水分量検出器32、内部温度検出器33、外部温度検出器34、ポンプ36、給水開閉弁37、ヒーター40については特に制限がなく、ポンプ36としては、遠心ポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプ等のいずれも使用でき、給水開閉弁37としては、電気弁、圧力制御弁等のいずれも使用でき、ヒーター40としては簡易投げ込みヒーター等を使用できる。
【0061】
図4は、本実施形態の本発明に係る舗装路面給水システム1の効果を確認した測定結果である。
本測定は、横断勾配1.0%の舗装道路2(サイズ 幅3m×奥行き4.8m×厚み8cm)の試料を作成し、給水手段3から4l/m2の水分を舗装体2に給水し、その後、給水を行わず継続観察した測定結果である。なお、給水、水分量、日射量、降雨は指標(参考値)として示している。
【0062】
コンクリート舗装層21(サイズ 幅3m×奥行き4.8m×厚み8cm)には、図3に示したコンクリート舗装層21の第2形態を使用した。
【0063】
不織布層26には、目付量600g/m2の長繊維不織布(商品名称:ツインガードTS600Bポリエステルスパンボンド不織布、東洋紡製)を使用し、水分量検出器32には、土壌水分センサー(商品名称:TDR土壌水分センサーC−CS−616、クリマテック製)を使用し、不織布層26の端部の水分量を測定した。
【0064】
内部温度検出器33には、熱電対を使用し、熱電対をエポキシ樹脂で被覆し舗装体2の表面中心部に粘着し、舗装体2の内部(表面)温度を測定した。
【0065】
外部温度検出器34には、熱電対を使用し、舗装体2の表面中心部から上方の日陰の場所に保持し、舗装体2の外気温を測定した。なお、熱電対に代えてサーミスター、側温抵抗体等のセンサーを使用することも可能である。
【0066】
また、本実施形態の本発明に係る舗装路面給水システム1の効果を確認するため、給水手段3から水分を給水しないアスファルト舗装道路、パーミアコン舗装道路の其々の舗装道路の表面中心部の温度を測定した。
【0067】
結果は、図4に示すように給水手段3で水分を給水することにより、不織布層26の水分量が迅速に増加し、その後、毛細管現象によりコンクリート舗装層21に水分が浸透していくことが確認できた。
【0068】
また、図4に示すように、コンクリート舗装層21の内部(表面)温度が、アスファルト舗装道路の内部(表面)温度、パーミアコン舗装道路の内部(表面)温度より低いことから毛細管現象によりコンクリート舗装層21に浸透した水分がコンクリート舗装層21の内部温度の上昇を防止していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、舗装路面給水システムに適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る舗装路面給水システムの全体を示す概略図である。
【図2】本発明に係るコンクリート舗装層の第1形態を示す拡大図である。
【図3】本発明に係るコンクリート舗装層の第2形態を示す拡大図である。
【図4】本発明に係る効果確認結果である
【符号の説明】
【0071】
1…舗装路面給水システム、2…舗装体、3…給水手段、4…路盤、21…コンクリート舗装層、22…構成材料(骨材)、23…バインダー被膜、24…保水性被膜、25…保水材層、26…不織布層、27…遮水層、31…給水制御装置、32…水分量検出器、33…内部温度検出器、34…外部温度検出器、35…給水源、36…ポンプ、37…給水開閉弁、38…給水路、39…給水口、40…ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装道路と舗装道路に給水を行う給水手段からなる舗装路面給水システムであって、
舗装道路は、舗装体と、その下の路盤からなり、
舗装体は、透水性及び保水性を有するコンクリート舗装層と、遮水層との間に、目付量100〜3000g/m2の不織布層とから構成され、
給水手段は、給水源と、給水源からの水分を舗装体内部に給水する給水路と、舗装体の下側部に設けられた水分量検出器と、給水制御装置とを備え、
少なくとも水分量検出器による舗装体内部の水分量信号に基づき、給水制御装置が、給水路を介して舗装体内部に給水する
ことを特徴とする舗装路面給水システム。
【請求項2】
コンクリート舗装層は、4〜7号砕石の骨材表面上にバインダー被膜を施し、さらに、バインダー被膜上をセメント(C)とフライアッシュ(F)の配合比(F/C)が1.4〜2.0重量比の保水性被膜で覆われていることを特徴とする請求項1記載の舗装路面給水システム。
【請求項3】
給水手段は、舗装体の内部の温度を計測する内部温度検出器を有し、内部温度検出器の舗装体の内部温度信号を加味して、給水制御装置が、舗装体内部に給水する水分量を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の舗装路面給水システム。
【請求項4】
給水手段は、舗装体の外部の温度を計測する外部温度検出器と舗装体の内部の温度を計測する内部温度検出器とを有し、外部温度検出器の舗装体の外部温度信号と、内部温度検出器の舗装体の内部温度信号との差分を加味して、給水制御装置が、舗装体内部に給水する水分量を制御することを特徴とする請求項1及至3記載の舗装路面給水システム。
【請求項5】
水分量検出器が、給水路とは反対側に位置する不織布層の端部の水分量を計測することを特徴とする請求項1及至4記載の舗装路面給水システム。
【請求項6】
給水路が、不織布層に当接又は不織布層内に埋設されていることを特徴とする請求項1及至5記載の舗装路面給水システム。
【請求項7】
舗装体には、0.5〜1.5%の横断勾配が設けられ、給水側が高く、給水側と反対側が低いことを特徴とする請求項1及至6記載の舗装路面給水システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−215853(P2009−215853A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63576(P2008−63576)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【出願人】(592090315)株式会社佐藤渡辺 (10)
【Fターム(参考)】