説明

航空機で携帯電話を使用するための装置及び方法

本発明は、航空機、陸上車両、船舶または宇宙船中の携帯電話を固定移動無線ネットワーク8に接続するための装置及び方法に関する。空中の移動無線基地局は移動無線データをIPデータに変換し、IP接続を介して地上局に送信する。IPデータは地上局で移動無線データに変換して戻され、固定移動無線ネットワーク8に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定移動無線ネットワーク、航空機、陸上車両、船舶または宇宙船に置かれた携帯電話ないしはセルラー電話(cellular phone)を接続するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、航空機で携帯電話を使用することができない。一方では、機上電子システムとの相互作用が懸念されており、他方では、特に、人の住んでいない地域や洋上を飛行する長距離飛行の場合には、携帯電話がログインできる移動無線ネットワークがない。
【0003】
現在、多くの航空会社の航空機は、飛行中に乗客が音声通信及び/またはデータ通信を行える専用の通信システムを装備している。一般に、これらのシステムは、全座席(または少なくとも数列の座席)に対応する端子を装備しなくてはならないので、調達するのに費用がかかる。接続費用も高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、乗物の乗客と外部にいる人、コンピュータなどとの簡便な通信を提供する、冒頭に述べた種類の装置及び方法を作り出すという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、
乗物上に、
a)少なくとも1つの移動無線基地局(mobile radio base station)、
b)移動無線データ(mobile radio data)をIPプロトコルに変換する、またその逆変換を行うための装置ないしはデバイス、
c)地上局とIPデータを送受信するためのデバイス
を備え、
固定した場所に、
d)乗物の対応するデバイスとIPデータを送受信するためのデバイス、
e)IPデータを移動無線データに変換する、またその逆変換を行うデバイス、
f)固定移動無線ネットワークと移動無線データを送受信するためのデバイス
を備える、装置を用いて、本発明によって達成される。
【0006】
本発明による方法は、以下のステップからなる。
aa)携帯電話が、乗物上に配置された移動無線基地局によって形成されたローカル移動無線セルでログインするステップ、
bb)移動無線データをIPプロトコルに変換する、またその逆変換を行うステップ、
cc)地上局とIPデータを送受信するステップ、
ee)IPデータを移動無線データに変換する、またその逆変換を行うステップ。
ff)固定移動無線ネットワークと移動無線データを送受信するステップ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
はじめに、本発明で使用されるいくつかの用語の説明をする。本発明は、全種類の乗物で使用できる。とりわけ、固定移動無線ネットワークの範囲からも離れている航空機または船舶で使用できる。本発明は、たとえば、人口が少ないために移動無線ネットワークによって十分にカバーされていない地域を移動する鉄道車両、及び/または乗物内部のファラデー遮蔽によって問題が起こる鉄道車両などの陸上車両にも使用できる。宇宙船は地球大気圏外を移動する乗物である。
【0008】
固定移動無線ネットワーク(stationary mobile radio network)は、多数の固定基地局が移動無線セル(mobile radio cell)を形成する、通常の陸上移動無線ネットワークである。固定移動無線ネットワークは、GSM、UMTSまたは他の従来の標準規格による移動無線ネットワークであってもよい。固定移動無線ネットワークは、好ましくは、移動無線データがディジタル形式で送信される、ディジタル移動無線ネットワークである。
【0009】
本発明によれば、1つ(またはおそらくそれ以上)の移動無線基地局が乗物に配置される。これは乗物内部に、乗物の乗客の携帯電話がログインできるローカル移動無線セルを形成する。基地局の容量、すなわちログインさせることができる携帯電話の最大数は、同時に電話をかけるかまたはデータを送信する、乗物の乗客の想定数に適合される。たとえば航空機では、アンテナを備えた移動無線基地局が、乗客及び乗客の携帯電話のすぐ近くに配置されているため、携帯電話は非常に低出力で送信できるので、乗物に搭載された残りの電子機器との相互作用が最小限になる。必要ならば、乗物上の残りの電子機器をさらに遮蔽することもできる。
【0010】
本発明によれば、基地局によって受信される移動無線データは、IPプロトコルに変換される。IPプロトコルは、当業者には公知のインターネットのデータプロトコルである。
【0011】
次にこれらのIPデータは、対応するデバイスによって地上局に送信される。対応するデバイスは、たとえば衛星を介して切り替えられる、地上局への接続である。特別な利点は、IPデータを送信するための無線接続が、それぞれ、すでに乗物に存在するか、または導入されつつあるという事実である。これらのIP接続が、一方では、乗物上のシステムの通信のために、たとえば地上のモニタ装置と一緒に使用され、他方では、航空機の乗客に乗物上でのインターネットアクセスを提供する。航空機と地上との間のIP接続を確立するための対応するシステムが、たとえば、ボーイング(Boeing)社によってコネクション(Connexion)という名で提供されている。
【0012】
それゆえ本発明は、航空機と地上局との間で、IP形式で移動無線データを安価に送信するためにも、どんな場合でも存在しているか、または他の理由で導入されるものである、このIPデータ接続を利用できる。
【0013】
地上局では、IPデータは、再び移動無線データ(たとえばGSMまたはUMTSデータ)に変換される。全IPデータから対応するデータを「濾波する(filter)」ために、すでにインターネットIP電話に使用されている、従来技術であって当業者に公知のIPコールマネージャ(IP call manager)を使用できる。
【0014】
次に再変換された移動無線データは、地上局の対応するデバイスによって固定移動無線ネットワークに送られる。このために、移動無線ネットワークのオペレータとの回線接続があるか、または、言わば移動無線ネットワークのために乗物に置かれている携帯電話をシミュレートする対応する移動無線局を単に使用できる。対応する、いわゆる移動無線ゲートウェイは、市販されている。GSMネットワークのために、選択可能な数のチャネルでローカル固定移動無線ネットワークとの接続を確立できるGSMゲートウェイがある。
【0015】
本発明によって、乗物にいる乗客は対応する移動無線ネットワークのエリアにある地上にいるかのように、乗物内で電話をかけることができる。乗客は、地上でも発生する移動無線の接続費用を負担するだけである。地上局が、乗物の乗客のホームネットワークの陸上地域に配置されていると、乗客は、ホームネットワークでの通話で負担するようなわずかな費用で電話をかけることができる。さらに、(携帯電話、乗物上で提供されるインターネットアクセスの使用など)どちらを使用したいかに関係なく、一般に、IP接続を使用するための単一の定額課金として航空会社から課金されるIP接続用費用もあり得る。本発明によれば、様々な国の移動無線ネットワークのエリアに多くの地上局を提供することができる。一般に、航空機には様々な国から来ている乗客が機乗しているので、全乗客は乗客自身のホームネットワークか、またはいずれの場合にも、本発明による対応するゲートウェイ及び接続を介して、最も割の良い移動無線ネットワークにログインできる。
【0016】
一方におけるIPデータ用の地上の送受信局と、他方におけるIPデータを移動無線データに変換するためのデバイス及び移動無線ゲートウェイ用のデバイスとを、互いに空間的に離間させ、かつ、たとえば、インターネットを介して互いに接続させることができる。それゆえ、IPデータ用の地上の単一の送受信局を、たとえば、移動無線データに変換するための及び移動無線ゲートウェイ用の異なる固定移動無線ネットワークのエリアに位置する、空間的に離間しているデバイスと接続させることもできる。
【0017】
乗物では、移動無線ピコセルが好ましくは形成される。これは非常に小さいセルであり、それゆえ基地局は非常に低い送信電力のみを必要とする。必要ならば、大きな乗物、たとえば大きな航空機や船では、移動無線ピコセルを多数形成することもできる。
【0018】
乗物上の移動無線基地局とIPデータ用の乗物上の送受信局との間の接続を、乗物のイントラネットを介して確立することができる。一般に、航空機には、どんな場合でもイントラネット及びIPデータ送受信局が存在するか、または後から取り付けられているので、乗物上に本発明によるシステムを後から取り付けるには、移動無線基地局及び移動無線データをIPプロトコルに変換する、またその逆変換を行うためのデバイスが必要なだけである。
【0019】
以下、本発明による装置を模式的に示す図面を参照して本発明を説明する。
【0020】
航空機上に、GSM用のピコセルを形成するGSM基地局1が配置される。この基地局1は、機内イントラネットを介して、GSMデータをIPデータに変換する、またその逆変換を行うGSM/IPコンバータ2に接続される。IPコールマネージャ3が航空機のイントラネットまたはイーサネットにIP電話データを送り、それぞれ、ネットワークから受信した対応するIP電話データを受ける。地上局への接続が、4で示される機内アンテナを介した衛星を介して確立される。地上にある送受信局は、インターネットを介してIPコールマネージャ5に接続される。送受信局は、言わば、インターネットから対応するIPデータを濾波し、IPデータをIP/GSMコンバータ6を介してGSMデータに変換して戻す。IP/GSMコンバータ6は、固定移動無線ネットワーク8への接続を確立するGSMゲートウェイ7に接続される。説明した手順は、同様に固定移動無線ネットワーク8から航空機の携帯電話へ送られるGSMデータに対して、逆に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による装置を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0022】
1 GSM基地局
2 GSM/IPコンバータ
3,5 IPコールマネージャ
4 機内アンテナ
6 IP/GSMコンバータ
7 GSMゲートエェイ
8 固定移動無線ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定した場所に、
a)乗物の対応するデバイスとIPデータを送受信するためのデバイス、
b)IPデータを移動無線データに変換する、またその逆変換を行うためのデバイス(6)、及び
c)固定移動無線ネットワークと移動無線データを送受信するためのデバイス(7)
を備える、固定移動無線ネットワーク(8)に、航空機、陸上車両、船舶または宇宙船に置かれた携帯電話を接続するための装置において、
乗物上に、
d)地上局とIPデータを送受信するためのデバイス(4)、
e)少なくとも1つの移動無線基地局、
f)移動無線データをIPプロトコルに変換する、またその逆変換を行うためのデバイス(2)、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記移動無線基地局(1)は乗物上に移動無線ピコセルを形成することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記デバイスb)と前記デバイスc)との間の接続は、乗物のイントラネットを介して確立されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記デバイスb)はIPコールマネージャ(3)を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記デバイスc)は、1つ以上の交換局を介して送受信するために構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記交換局は衛星を含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記デバイスd)は、1つ以上の交換局を介して送受信するために構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記交換局は衛星を含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記デバイスd)と前記デバイスe)との間の接続は、インターネットを介して確立されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記デバイスe)はIPコールマネージャ(5)を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記デバイスf)は、固定移動無線ネットワーク(8)と無線でまたは有線で移動無線データを送受信することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
異なる固定移動無線ネットワーク(8)エリアに、空間的に離間して配置される多くの前記デバイスe)及び前記デバイスf)を有することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
航空機、陸上車両、船舶または宇宙船中の携帯電話を固定移動無線ネットワーク(8)に接続するための方法であって、
aa)携帯電話が、乗物上に配置された移動無線基地局(1)によって形成されたローカル移動無線セルでログインするステップ、
bb)移動無線データをIPプロトコルに変換する、またその逆変換を行うステップ、
cc)地上局とIPデータを送受信するステップ、
ee)IPデータを移動無線データに変換する、またその逆変換を行うステップ、
ff)固定移動無線ネットワークと移動無線データを送受信するステップ、
を備える方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−509551(P2007−509551A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536065(P2006−536065)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012041
【国際公開番号】WO2005/041445
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(503371373)ルフトハンザ・テッヒニク・アクチェンゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】LUFTHANSA TECHNIK AG
【Fターム(参考)】